JP4086641B2 - 硬化性組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化性組成物に関する。より詳しくは、重合性二重結合を分子内に2つ有する化合物を含む硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種用途において有用な化合物としては、加熱や活性エネルギー線の照射によって架橋構造を形成し硬化する組成物等を構成するものが重要であり、その技術は、住設分野、土木・建築分野、電気・電子・情報分野、輸送分野等における複合材料マトリックス、注型材料、インキ、コーティング剤、塗料、接着剤等の各種用途に用いられ、工業的に非常に有用なものである。このような硬化性組成物において、反応性を有する官能基を複数個有する化合物を用いることによって、作業時には低粘度であるため様々な形状への加工が可能で、硬化後には架橋構造を形成してガラス転移点(Tg)が高く、耐熱性や耐溶剤性等の物性に優れた硬化物を得ることができる。
【0003】
このような硬化性組成物の具体例としては、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等の硬化性化合物を含有するものが知られており、このような硬化性化合物は様々な用途に応じて使い分けられている。これらのうち特に(メタ)アクリロイル基を有する化合物等は優れた硬化性を有しており、各種の塗料、接着剤、レジスト、印刷インキ等の幅広い用途に用いられている。
【0004】
ところで、反応性を有する官能基を複数個有する化合物に関し、2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペン酸を調製する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法においては、オキサジメタクリル酸化合物のエステルを塩基性溶液により加水分解して塩を形成し、その後に酸性化することにより2,2′−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペン酸が生成されることとなる。
しかしながら、オキサジメタクリル酸化合物のエステルを塩基性溶液により加水分解して得られる塩は、中間体として生成するものであり、このような化合物を硬化性組成物に適用することについては開示されていないことから、加熱や活性エネルギー線の照射による硬化が可能である硬化性組成物が形成されるようにしたうえで、硬化後の耐水性や耐熱性を良好なものとするための工夫の余地があった。
【0005】
なお、従来の硬化性組成物には低粘度化のためにしばしばトルエンやメチルエチルケトンといった有機溶剤や、スチレンやメタクリル酸メチルのような揮発性の高い反応性希釈剤が使用されている。
しかしながら、近年環境問題から有機溶剤や高揮発性の反応性希釈剤に替えて水を希釈剤として用いた硬化性組成物が求められている。更に、省エネルギーの問題から感光性組成物の設計が方策として注目されている。このような水系の硬化性組成物における硬化性化合物がエステル結合を有する化合物の場合、加水分解を受けて加熱や活性エネルギー線の照射による硬化性が低下したり、硬化物の耐水性や耐熱性が低下したりする傾向があり、これらの点において工夫の余地があった。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第5442109号明細書(第1欄)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、各種用途に有用なものであって、加熱や活性エネルギー線の照射による硬化が可能で、硬化後の耐水性や耐熱性を良好なものとすることができる硬化性組成物を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、重合性二重結合を分子内に2つ有する化合物を含む硬化性組成物において、2つのアクリル酸塩がα位において炭素−酸素−炭素骨格により結合された構造を有し、アクリル酸塩の構造におけるカルボン酸塩が、−COOXにより表される化合物を含むとともに、重合開始剤を含む硬化性組成物が従来技術にはない新規なものであり、優れた硬化特性を有することから、工業的に各種用途において有用なものとなる可能があることを見出し、上記課題を解決することができることに想到した。すなわち重合性二重結合を分子内に2つ有し、−COOXにより表される基を分子内に2つ有する化合物と重合開始剤を含む硬化性組成物が、加熱や活性エネルギー線の照射による硬化が可能で、硬化後の耐水性や耐熱性が良好であり、住設分野、土木・建築分野、電気・電子・情報分野、輸送分野等における複合材料マトリックス、注型材料、インキ、コーティング剤、塗料、接着剤等の各種用途において、硬化物物性に優れた有用な化合物であることを見出した。また、このような化合物は、水系溶媒中で保存される場合、経時後の硬化性に優れていることも見出し、更に、このような化合物と(メタ)アクリルアミド類を含む硬化性組成物や、塩基性化合物を含む硬化性組成物が有用であることも見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、下記一般式(1);
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1及びR2は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表す。Xは、一価又は二価の陽イオンを表す。)で表される化合物と重合開始剤とを含む硬化性組成物である。
以下に、本発明を詳述する。
【0012】
本発明における一般式(1)で表される化合物において、R1及びR2は同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表し、Xは一価又は二価の陽イオンを表す。Xは一価又は二価の陽イオンであれば特に限定されないが、Na+、K+、Rb+、Cs+、Fr+、Be2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Ra2+、NH4 +、NHR3 +、NH2R2 +、NH3R+(Rは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基)等が好ましい。より好ましくは、一般式(1)中のXが、アルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオンであることである。
【0013】
本発明における一般式(1)で表される化合物の製造方法としては、特に限定されないが、下記一般式(2);
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、R3及びR4は、同一若しくは異なって、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜18のアリール基を表す。R5及びR6は、同一若しくは異なって、有機残基を表す。)で表されるエーテルダイマーエステルを加水分解することにより製造することができる。
上記エーテルダイマーエステルは、(a)α−ヒドロキシアルキルアクリレート2分子を三級アミン触媒の存在下に反応させる;(b)アクリル酸エステルとホルマリンを三級アミン触媒で反応させる;(c)α−ヒドロキシアルキルアクリレートとα−ハロアルキルアクリレートとを反応させることにより、製造することができる。
【0016】
また本発明の一般式(1)で表される化合物は、水溶性のものであることが好ましい。水溶性を有するとは、本発明による化合物を25℃の水に溶解した場合において、その1質量%以上が水に溶解することを意味する。好ましくは、2.5質量%以上、より好ましくは、5質量%以上となるように溶解した場合である。
【0017】
本発明においては、水を含む硬化性組成物とすることが好ましい。これにより、水を溶媒とした水系の硬化性組成物とすることが可能となり、環境問題に充分に対応することができるものとなる。この場合、本発明における一般式(1)で表される化合物と水の好ましい混合比は特に限定されないが、質量比で、好ましくは0.1/99.9以上であり、また、99.9/0.1以下であり、より好ましくは1/99以上であり、また、70/30以下であり、最も好ましくは2/98以上であり、また、60/40以下である。
【0018】
本発明においては、一般式(1)で表される化合物を熱や光により硬化させるために、(熱又は光)重合開始剤が用いられる。
上記熱重合開始剤としては、公知のものを使用でき、具体的には、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエー卜、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物等が好適である。また、熱重合時には硬化促進剤を混合して使用してもよく、硬化促進剤としては、ナフテン酸コバルトやオクチル酸コバルト等又は3級アミン等が好適である。熱重合開始剤の添加量としては、組成物中の重合性成分100質量部に対し、0.01質量部以上とすることが好ましく、また、10質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは0.05質量部以上であり、また、5質量部以下である。最も好ましくは0.1質量部以上であり、また、3質量部以下である。
【0019】
本発明においては、重合開始剤が光重合開始剤である形態が好適である。
上記光重合開始剤としては、公知のものを使用でき、具体的には、以下のような化合物が好適である。これらは1種又は2種以上の混合物として使用される。
ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)アセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類。
【0020】
2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−(1−t−ブチルジオキシ−1−メチルエチル)ベンゾフェノン、3,3′,4,4′−テトラキス(t−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシルカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;アシルフォスフィンオキサイド類及びキサントン類。
【0021】
また水を溶媒とした水系の硬化性組成物とする場合には、水溶性の光重合開始剤を用いることが好ましく、具体的には、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、イルガキュアー2959)又はそれの水酸基へ(ポリ)エチレングリコール鎖を導入したもの、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、イルガキュアー184)の水酸基及び/又はフェニル基へ(ポリ)エチレングリコール鎖を導入したもの、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンのフェニル基へ−OCH2COO-Na+を導入したもの、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、ダロキュアー1173)の水酸基及び/又はフェニル基へ(ポリ)エチレングリコール鎖を導入したもの、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンのフェニル基へ−OCH2COO-Na+を導入したもの等のα−ヒドロキシアルキルアセトフェノン類;2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、イルガキュアー907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製、イルガキュアー369)等のα−アミノアルキルフェノン類のアミノ基を四級アンモニウム塩化したもの等が挙げられる。
【0022】
上記光重合開始剤の添加量としては、上記組成物中の重合性成分化合物100質量部に対し、0.01質量部以上とすることが好ましく、また、30質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは0.05質量部以上であり、また、20質量部以下、最も好ましくは0.1質量部以上であり、また、10質量部以下である。
【0023】
本発明における一般式(1)で表される化合物を光により硬化させる場合、光重合開始剤とともに塩基性化合物を用いることができる。塩基性化合物としてはアミン化合物を用いることが好ましく、上記アミン化合物としては、特に制限されないが、具体的には、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレンイミン等が挙げられる。これらの中で特に三級アミン化合物が好適である。
【0024】
また水を溶媒とした水系の硬化性組成物とする場合には、前述の水溶性光重合開始剤とともに水溶性の三級アミン化合物を用いることが好ましい。
具体的には、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、メチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、メチルジブタノールアミン、エチルジエタノールアミン、エチルジイソプロパノールアミン、エチルジブタノールアミン、プロピルジエタノールアミン、プロピルジイソプロパノールアミン、プロピルジブタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルブタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエチルイソプロパノールアミン、ジエチルブタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、ジプロピルイソプロパノールアミン、ジプロピルブタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ジブチルイソプロパノールアミン、ジブチルブタノールアミン、メチルエチルエタノールアミン、メチルエチルイソプロパノールアミン、メチルエチルブタノールアミン、ベンジルジエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、テトラエタノールエチレンジアミン、テトラプロパノールエチレンジアミン等が挙げられる。また、これら水酸基含有三級アミン化合物にエチレンオキサイドを付加させてポリエチレングリコール鎖を導入したもの、水酸基含有三級アミン化合物に水酸基と反応性を有する官能基を含有するモノマーを付加させて重合性二重結合を導入したもの、ポリマー又はオリゴマーに三級アミノ基を導入したもの等も用いることができる。これらのアミン化合物は1種又は2種以上を用いることができる。
【0025】
上記アミン化合物の使用量は、組成物中の重合性成分化合物100質量部に対し、0.005質量部以上とすることが好ましく、また、15質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは0.025質量部以上であり、また、10質量部以下であり、最も好ましくは0.05質量部以上であり、また、5質重部以下である。
【0026】
本発明における一般式(1)で表される化合物はまた、他の重合性モノマー、オリゴマー、ポリマーと共存させてもよい。すなわち本発明の硬化性組成物は、これらのものを含んでいてもよい。
他の重合性モノマーとしては、以下のような化合物が好適である。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジt−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−(イソブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(イソブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N−(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、3−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−1H−インドール−5−イル]−N−4−メトキシベンジル)(メタ)アクリルアミド、2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フリル)(メタ)アクリルアミド、3−(メタ)アクリルアミド−N,N−ジメチルプロピルアミン、2−(メタ)アクリルアミドグリコール酸一水和物、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等の単官能(メタ)アクリルアミド類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル等の単官能ビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の単官能N−ビニル化合物類;スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル等の単官能ビニル化合物類;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、無水イタコン酸、イタコン酸、イタコン酸ジメチル、メチレンマロン酸、メチレンマロン酸ジメチル、桂皮酸、桂皮酸メチル、クロトン酸、クロトン酸メチル等の単官能α,β−不飽和化合物類。
【0027】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;ジビニルベンゼン等の多官能ビニル化合物類;N,N′−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N′−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミドと多官能ビニルエーテルとの反応物等の多官能(メタ)アクリルアミド類。
【0028】
上記他の重合性モノマーの使用量としては、上記一般式(1)で表される化合物100質量部に対し、1質量部以上とすることが好ましく、また、500質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは5質量部以上であり、また、200質量部以下であり、最も好ましくは10質量部以上であり、また、100質量部以下である。
【0029】
これらの中でも、特にアクリルアミド類、すなわちアクリルアミド系の重合性モノマーを用いることが好ましく、具体的には、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、N,N′−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミドと多官能ビニルエーテルとの反応物等が好適である。
【0030】
上記重合性オリゴマー又はポリマーとしては、飽和及び不飽和の多塩基酸又はその無水物酸(例えば、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸等)と飽和又は不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールベンゼン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等)と(メタ)アクリル酸との反応で得られるポリエステル(メタ)アクリレート;飽和又は不飽和の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等)との反応で得られるウレタンポリ(メタ)アクリレート;多価エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシ(メタ)アクリレート;ポリシロキサンと(メタ)アクリル酸との反応によって得られるポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート等が好適である。
【0031】
上記重合性オリゴマー又はポリマーの使用量としては、上記一般式(1)で表される化合物100質量部に対し、1質量部以上とすることが好ましく、また、200質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは5質量部以上であり、また、100質量部以下であり、最も好ましくは10質量部以上であり、また、50質量部以下である。
【0032】
本発明における重合性モノマー、オリゴマー、ポリマーは水溶性のものであることが好ましい。水溶性を有するとは、化合物を25℃の水に溶解した場合において、その1質量%以上が水に溶解することを意味する。好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは、5質量%以上となるように溶解した場合である。
上記化合物に水溶性を付与する方法としては、(1)化合物中にポリエチレングリコール鎖を導入する方法、(2)水酸基を導入する方法、(3)カルボン酸塩、スルホン酸塩、アミン塩等の塩を導入する方法等が好適であるが、これらの中でも(1)が好ましい。
【0033】
本発明の硬化性組成物には保存安定性を向上させるために重合禁止剤を使用することができる。
【0034】
上記重合禁止剤としては、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等のキノン系重合禁止剤;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤;アルキル化ジフェニルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン等のアミン系重合禁止剤;4−ヒドロキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル類;ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤等が好適である。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、アルキル化ジフェニルアミン、4−ヒドロキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等のN−オキシル類が好ましい。
【0035】
上記重合禁止剤の添加量としては、組成物中の重合性成分化合物の種類等に応じて適宜設定すればよいが、重合抑制効果、収率、生産性及び経済性の点から、一般式(1)で表わされる化合物100質量部に対して、0.001質量部以上とすることが好ましく、また、5質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.005質量部以上であり、また、1質量部以下であり、特に好ましくは0.01質量部以上であり、また、0.1質量部以下である。
【0036】
本発明の硬化性組成物では特に溶剤を使用する必要はないが、有機溶剤1種又は2種以上を使用することもできる。有機溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒類:クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等が好適である。
【0037】
上記有機溶剤の使用量としては、一般式(1)で表される化合物の種類や組み合わせ等により適宜設定すればよいが、収率、生産性及び経済性の点から、組成物中の重合性成分100質量部に対して、0質量部以上とすることが好ましく、また、200質量部以下とすることが好ましい。より好ましくは、0質量部以上であり、また、100質量部以下であり、特に好ましくは、0質量部以上であり、また、70質量部以下である。
【0038】
本発明の硬化性組成物はまた、必要に応じて各種添加剤や強化材を含んでいてもよい。添加剤や強化材としては、例えば、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填剤、増粘剤、増感剤、顔料や染料等の着色剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、界面活性剤、湿潤剤、分散安定剤、揺変化剤、導電性付与剤、乾燥防止剤、浸透剤、pH調整剤、金属封鎖剤、防菌防かび剤、その他の公知の添加剤等が好適である。また、各種強化繊維を補強用繊維として用い、繊維強化複合材料とすることができる。
【0039】
本発明の硬化性組成物、すなわち本発明の一般式(1)で表される化合物と重合開始剤とを含み、好ましくは、更に、(メタ)アクリルアミド類や塩基性化合物を含む硬化性組成物は、上述した用途に好適なものである。
なお、このような硬化性組成物において、好ましい形態は、上述したような光硬化性を有する形態である。
また一般式(1)で表される化合物とアクリルアミド類とを含む硬化性組成物は、アクリルアミド類の作用により一般式(1)で表される化合物の硬化性が高められたものであり、重合開始剤を含まない場合においても硬化性を有し、電子線等により硬化する可能性がある。このような一般式(1)で表される化合物とアクリルアミド類とを含む硬化性組成物もまた、上述した用途に好適に適用することができるものである。
【0040】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を意味するものとする。
【0041】
実施例1〜16及び比較例1〜4
表1〜表3に示す配合で硬化性組成物(感光性組成物)を調製し、以下の方法で評価を行った。結果を表1〜表3に示す。
【0042】
〔UV硬化性〕
表1〜表3に示す硬化性組成物を調合し、ガラス基材上に該硬化性組成物をのせてUVを照射した。(UV照射装置:250W超高圧水銀灯、主波長365nm) エネルギーが0.2J/cm2ごとに硬化度合いを指触で評価した。評価方法は、○=固化、△=ゲル状、×=未硬化(液状)とした。
〔耐加水分解性〕
上記硬化性組成物を密封容器に入れて50℃で30日間保存した後、同様のUV硬化性試験を行った。
また、ガラス基材上に硬化性組成物を塗布し、1J/cm2のエネルギーで硬化させた硬化塗膜を25℃の水中に5分間浸漬した後、その外観を目視で評価した。評価方法は、○=変化なし、△=膨潤、×=溶解とした。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
表1〜表3中の配合物について、以下に説明する。
OBPA−Na:2,2′−〔オキシビス(メチレン)〕ビス−2−プロピオン酸ナトリウム
OBPA−K:2,2′−〔オキシビス(メチレン)〕ビス−2−プロピオン酸カリウム
OBPA−NH4:2,2′−〔オキシビス(メチレン)〕ビス−2−プロピオン酸アンモニウム
PEGDA:ポリエチレングリコール(数平均分子量=600)のジアクリレート
イルガキュア2959(商品名):1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン (チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
【0047】
本発明において、一般式(1)で表される化合物及び重合開始剤を用いた実施例1〜16は比較例1〜3に比較して、UV硬化性に優れ、また、経時後のUV硬化性(耐加水分解性)及び硬化物の耐水性に優れることがわかった。また、ジアクリレ−トを用いた比較例4に比較して、経時後のUV硬化性(耐加水分解性)及び硬化物の耐水性に優れることがわかった。
【0048】
【発明の効果】
本発明の硬化性組成物は、上述のような構成であるので、加熱や活性エネルギー線の照射による硬化が可能で、硬化後の耐水性や耐熱性が良好であり、住設分野、土木・建築分野、電気・電子・情報分野、輸送分野等における複合材料マトリックス、注型材料、インキ、コーティング剤、塗料、接着剤等の各種用途に好適に用いることができるものである。
Claims (6)
- 前記一般式(1)中のXは、アルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオンである
ことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。 - 前記重合開始剤は、光重合開始剤である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性組成物。 - 更に、(メタ)アクリルアミド類を含む
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物。 - 更に、塩基性化合物を含み、
該塩基性化合物としてはアミン化合物を用いる
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の硬化性組成物。 - 更に、水を含む
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の硬化性組成物。
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