JP3576343B2 - 木材含浸処理用硬化性組成物 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、木材に含浸させ硬化させることにより木材の諸性質を改善することができる木材含浸処理用硬化性組成物に関するものであり、本発明の組成物は、住宅設備及び建築材料等に使用される木材の改質に使用することができ、これらを使用する分野で賞用され得るものである。
尚、本明細書においては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリルと表し、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【0002】
【従来の技術】
従来より、木材の寸法安定性、硬度、耐吸水性、耐吸湿性及び耐摩耗性等を改良するために、木材に樹脂又はモノマー等からなる木材含浸処理用組成物を含浸させ、硬化させる方法が知られている。この方法により得られる木材プラスチック複合体は、WPC(ウッド プラスチック コンビネーション)と呼ばれ、種々の建築材料等に利用されている。
【0003】
これまで知られている代表的なWPCとしては、内孔充填型WPC、バルキング型WPC、水酸基置換型WPC及びグラフト型WPCがあった。
【0004】
内孔充填型WPCとは、細胞の内孔に樹脂を充填し、これにより木材内部の水分や蒸気の移動を阻害し、寸法安定性等の性能を向上させるものである。内孔充填型WPCで使用される代表的な組成物としては、不飽和ポリエステル等の反応性樹脂やメタクリル酸メチル等のモノマーを、スチレンや有機溶剤により希釈されたものが知られている。しかしながら、これらの反応性樹脂又はモノマーからなる組成物は、木材の細胞内孔を十分に充填することが困難であるため、満足な性能を有するWPC化木材を得ることができなかった。又、これらの組成物は、反応性が充分でないために、未硬化モノマーが木材中に残ってしまい、硬化後に行われる切削工程や研磨工程で、未硬化モノマーが木屑に含まれてしまい、悪臭の問題を発生させていた。又、組成物において、反応性樹脂又はモノマーを溶解させている有機溶剤やスチレン等のモノマーは、揮発性が高いために引火の危険性があり、又悪臭の問題もあった。
【0005】
一方バルキング型WPCとは、細胞の細胞壁中のセルロースの非結晶領域を膨潤させた状態で、樹脂により固定するもので、これにより外部からの水分の侵入を阻害し、寸法安定性等の性能を向上させるものである。バルキング型WPCで使用される代表的な化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート及びポリエチレングリコールジアクリレート等がある(特開平5−220712号公報)。一般的にこれらの化合物は、水溶液として使用されており、水は木材の膨潤剤として機能している。しかしながら、ポリエチレングリコールを使用する場合は、その分子量が小さいと、経時的にポリエチレングリコールがブリードしてくるという耐久性の点で問題があり、他方その分子量が大きいと、木材への含浸量が少なくなるために、高い性能のWPC化木材が得られなくなるという欠点を有するものであった。又、ポリエチレングリコールモノメタクリレートやポリエチレングリコールジアクリレートを使用する場合は、その分子量が小さいと水との親和性が悪く、水溶液にすることが困難であり、又分子量が大きいと、前記と同様に木材への含浸量が少なくなるために、高い性能のWPC化木材が得られないというものであった。
【0006】
水酸基置換型WPCとは、木材細胞の細胞壁中におけるセルロースの水酸基を疎水性の基に置き換え、処理木材への水分の浸透を防ぎ、さらに寸法安定性を付与するものである。この方法に使用される代表的な化合物としては、無水酢酸が知られており、これにより水酸基がアセチル化処理される。しかしながら、このような処理を施したとしても、得られるWPC化木材は、外部からの水分の浸透を充分に阻止することが難しく、又寸法安定性が満足なものではなかった。さらに、アセチル化処理を行った場合には、副生する酢酸による臭気が問題になる場合もあった。
【0007】
グラフト型WPCとは、木材細胞の細胞壁中におけるセルロースの水酸基同士、又はセルロースの水酸基と樹脂とを結合させる方法で、細胞壁の動きを固定することにより、寸法安定性を付与するものである。公知の方法としては、多価カルボン酸と多価アルコールを木材中に含浸させ、脱水縮合する方法(特開昭64−8001号公報)や、木材中のセルロースの水酸基に二塩基酸無水物を付加し、カルボン酸含有エステル化木材を形成させ、その後エポキシ化合物を含浸させる方法(特開昭63−54204号公報)や、木材中に二塩基酸無水物とジエポキシ化合物、又は水酸基と反応性基とを併せ持つ化合物を含浸、硬化させる方法(特開平4−259506号公報)が知られている。しかしながらこれらの化合物を使用する方法では、これらの方法で使用される化合物が細胞壁に充分に浸透しないため、木材に充分なバルキングを発生させることは難しく、結果として寸法安定性に優れるWPC化木材が得られ難かった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、低揮発性で取り扱いが容易で、木材への含浸性に優れ、反応性が高く、含浸処理した木材に耐湿性、寸法安定性を付与することができる木材含浸処理用硬化性組成物を見い出すため鋭意検討を行ったのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するため鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表される化合物を含有する組成物、さらに好ましくは当該化合物のカルボキシル基が有機アミン又はアンモニア水で中和された水溶液を、木材に含浸させ、硬化させることが非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【化2】
【0011】
但し、式(1)において、R1 〜R5 は以下に示す基であり、a=0又は1、b=0又は1で、かつa+b=1又は2である。
R1 及びR2 :水素原子又はメチル基であり、それらは同一であっても異なっていても良い。
R3 及びR4 :二塩基酸無水物又は二塩基酸からジカルボニルオキシ基又は2個のカルボキシル基を除いた炭素数2〜8の残基であり、それらは同一であっても異なっていても良い。
R5 :2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物から2個のグリシジル基を除いた残基である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の木材含浸処理用硬化性組成物における必須成分の上記一般式(1)で表される化合物〔以下化合物(1)という〕は、2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物の2個のエポキシ基に対して、(メタ)アクリル酸を等モル付加反応させて得られる化合物の水酸基に、さらに二塩基酸無水物又は二塩基酸が付加又はエステル化したものである。
【0013】
上記一般式(1)において、R3 及びR4 は、二塩基酸無水物又は二塩基酸からジカルボニルオキシ基又は2個のカルボキシル基を除いた炭素数2〜8の残基であり、それらは同一であっても異なっていても良い。R3 及びR4 の具体例としては、炭素数が2〜8である、直鎖状又は分岐状アルキレン基、不飽和二重結合を有する直鎖状又は分岐状アルキレン基、環状アルキレン基、不飽和二重結合を有する環状アルキレン基又は芳香族基等がある。
【0014】
直鎖状又は分岐状アルキレン基としては−CH2 CH2 −、−CH2 CH(CH3 )−等が挙げられ、不飽和二重結合を有する直鎖状アルキレン基としては、−CH=C−、−CH=C(CH3 )−、−CH2 −C(=CH2 )−等が挙げられる。
【0015】
環状アルキレン基としては、下記のものがその例として挙げられる。
【0016】
【化3】
【0017】
不飽和二重結合を有する環状アルキレン基としては、下記のものがその例として挙げられる。又、当該環状アルキレン基は、塩素の様なハロゲン原子が付加したものであっても良い。
【0018】
【化4】
【0019】
芳香族基としては、下記のものがその例として挙げられる。
【0020】
【化5】
【0021】
ここで化合物(1)の原料の二塩基酸無水物又は二塩基酸〔以下二塩基酸(無水物)と表す〕としては、例えば、コハク酸(無水物)、マレイン酸(無水物)、イタコン酸(無水物)、フタル酸(無水物)、テトラヒドロフタル酸(無水物)、ヘキサヒドロフタル酸(無水物)、4−メチルテトラヒドロフタル酸(無水物)、4−メチルヘキサヒドロフタル酸(無水物)、3−メチルテトラヒドロフタル酸(無水物)、ナジック酸(無水物)、メチルナジック酸(無水物)及びクロレンド酸(無水物)等が挙げられる。
【0022】
又、上記一般式(1)において、R5 は、2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物から2個のグリシジル基を除いた残基であり、具体的には、−OCH2 CH2 O−、−OCH2 CH(CH3 )O−、−OCH2 C(CH3 )2 CH2 O−、−O(CH2 )4 O−、−O(CH2 )5 O−及び−O(CH2 )6 O−等のアルキレンジオキシ基、−O(CH2 CH2 O)2 −、−O(CH2 CH2 O)3 −、−O(CH2 CH2 O)4 −、−O(CH2 CH2 O)n −、−O〔CH2 CH(CH3 )O〕2 −、−O〔CH2 CH(CH3 )O〕3 −及び−O〔CH2 CH(CH3 )O〕n −等のポリオキシアルキレンオキシ基、例えば下記一般式で表される、ビスフェノール型基又はアルキレンオキサイドが付加したビスフェノール型基、
【0023】
【化6】
【0024】
(R6 は水素原子又はメチル基であり、Rはエチレン基又はプロピレン基であり、mは0〜20の整数である。)
【0025】
並びに例えば下記一般式で表される、水添ビスフェノール型基又はアルキレンオキサイドが付加した水添ビスフェノール型基である。
【0026】
【化7】
【0027】
(R7 は水素原子又はメチル基であり、Rはエチレン基又はプロピレン基であり、pは0〜20の整数である。)
【0028】
これらのR5 中でも、アルキレンジオキシ基及びポリオキシアルキレンオキシ基が好ましく、より好ましくは化合物(1)の水溶性に優れる点で、O(CH2 CH2 O)n 〔n=1〜150〕で表されるエチレンジオキシ基、ポリオキシエチレンオキシ基である。
【0029】
又、式(1)において、a=0又は1、b=0又は1で、かつa+b=1又は2である。即ち、化合物(1)は、2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物(以下単にエポキシ化合物という)の(メタ)アクリル酸付加物において、2個の水酸基の少なくとも1個に、二塩基酸(無水物)が付加又はエステル化したものである。
【0030】
ここで化合物(1)の原料のエポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ブタンジオールのジグリシジルエーテル、ペンタンジオールのジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル及びネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、並びにジエチレングリコールのジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。又、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びビスフェノールFのジグリシジルエーテル等のビスフェノール型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル及びビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル等のビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及び水添ビスフェノールFのジグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、並びに水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル及び水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0031】
化合物(1)は、従来より知られた方法により製造されたものであればよく、その方法としては、反応器に、無溶剤で、又は有機溶媒を使用して、エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸、触媒及び重合禁止剤を加え、70〜140℃で加熱攪拌し、エポキシ化合物のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を付加反応させて、エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸を付加物を得た後、反応液にさらに二塩基酸(無水物)、好ましくは二塩基酸無水物を加え、同様の反応温度で攪拌を行して、付加反応を行う方法等が挙げられる。有機溶媒を使用した場合は、反応後に必要に応じて減圧蒸留により該溶媒を除くこともできる。有機溶剤としては、(メタ)アクリル酸と反応しないものを使用し、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。触媒としては、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン及びN,Nージメチルアニリン等の3級アミン類、テトラジエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロミド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類、ジエチルアンモニウムクロリド等の2級アミンの塩酸塩類、並びにトリフェニルフォスフィン等のリン化合物類等が挙げられる。又、重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、フェノチアジン及びN−ニトロソフェニ−ルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の反応割合は、エポキシ化合物1モルに対して(メタ)アクリル酸を2倍モル又はそれ以上であり、又エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸付加物に対する二塩基酸(無水物)の反応割合は、エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸付加物1モルに対して二塩基酸(無水物)を1〜2倍モル又はそれ以上であるが、実際の反応においてはそれぞれの化合物の反応性を勘案して、その仕込量を適宜増減させることもできる。
【0032】
○その他の配合物
本発明の木材含浸処理用組成物には、必要に応じて種々の成分を配合することができる。例えば組成物の粘度を低下させるために、有機溶媒、反応性希釈剤又は水を配合できる。
【0033】
有機溶媒としては、例えばメチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル及び酢酸ブチル等の酢酸エステル類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ類、並びにメチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等のセロソルブアセテート類等を挙げることができ、これらは2種以上を併用することもできる。
化合物(1)の製造において、有機溶媒を使用した場合には、反応後除去することなくそのまま組成物の有機溶媒として使用することもできる。
これらの有機溶媒の中でもアルコール類を使用することが、木材を膨張させることができ、組成物の木材への含浸性を向上させることができるため好ましい。
【0034】
又、反応性希釈剤の代表例は、分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、粘度が25℃で50cps以下のものが、組成物の粘度を低下させる効果が大きいため好ましい。分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等がある。これらの分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物は市販されており、例えばテトラヒドロフルフリルアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製ビスコート150〕、フェノキシエトキシエチルアクリレート〔東亞合成(株)製アロニックスM101〕、ネオペンチルグリコールジアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製ビスコート215〕、ヘキサンジオールジアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製ビスコート230〕等がある。これらの他にも、メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのコハク酸付加物及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのコハク酸付加物等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのコハク酸付加物、(メタ)アクリル酸のフェニルグリシジルエーテル付加物、ポリエステル(メタ)アクリレート、並びにウレタン(メタ)アクリレート等がある。これらは、2種以上を併用することもできる。
【0035】
反応性希釈剤を配合する場合の割合は、化合物(1)10重量部に対して100重量部以下、又有機溶剤を配合する場合の割合は、化合物(1)又はこれと反応性希釈剤(以下これらを硬化性成分という)の合計量10重量部に対して100重量部以下とすることが好ましい。
【0036】
又、本発明においては、希釈剤として水を使用することが、木材を膨張させることができ、組成物の木材への含浸性を向上させることができるために好ましい。
水を使用する場合の割合は、硬化性成分10重量部に対して100重量部以下とすることが好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。水の割合が100重量部を超えると、組成物の硬化性が低下する場合がある。
この場合、反応性希釈剤を併用するときは、上記挙げた例の中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート及びポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等の親水性の(メタ)アクリレートを配合することが好ましい。
【0037】
本発明の第3発明は、希釈剤として水を用いる組成物において、組成物に含まれる化合物(1)の一部又は全部が、有機アミン又はアンモニアで中和されたものを含有するものである。化合物(1)のカルボキシル基を有機アミン又はアンモニアの塩とすることにより、水への溶解性に優れたものとすることができる。組成物に含まれる化合物(1)の一部又は全部を、有機アミン又はアンモニアで中和する方法としては、常法に従えば良く、例えば有機アミン又はアンモニアの水溶液中に化合物(1)を配合することにより得ることができる。組成物中の化合物(1)に対する、有機アミン又はアンモニアの割合としては、化合物(1)の1モルに対して、0.5〜2モルが好ましく、より好ましくは等モルである。有機アミン又はアンモニアの割合の割合が0.5モルに満たないと、水への溶解性を充分改善することができなくなる場合があり、他方2モルを超えると、得られる組成物又は含浸処理木材に臭気の問題が発生する場合がある。ここで使用できる有機アミンは、種々の化合物が使用でき、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン及びモルフォリン等の3級アミン類、ジエチルアミン及びジエタノールアミン等の2級アミン、並びにモノエタノールアミン等の1級アミン等が挙げられる。これらの中でも、沸点が120℃以下の有機アミンを使用することが、組成物を木材に含浸させた後加熱による硬化において、アミンを蒸発させることができる、これにより得られる含浸処理木材が臭気がなく、耐水性に優れるため好ましい。
【0038】
本発明の組成物には、貯蔵中のゲル化を防止し貯蔵安定性を増すために、安定剤を配合することができる。好適な安定剤としては、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルハイドロキノン及びカテコール等のフェノール類、ベンゾキノン、ナフトキノン及びジフェニルベンゾキノン等のキノン類、フェノチアジン、並びに銅塩等が挙げられる。これらの安定剤の使用量は、硬化性成分100重量部に対して0.00001〜0.01重量部とするのが好ましい。
【0039】
○使用方法
本発明の組成物を木材に含浸させる方法としては、種々の方法が使用でき、例えば、減圧含浸法、加圧含浸法及び常圧浸漬法等が挙げられる。
改質できる木材の種類は、多岐にわたっており、広葉樹、針葉樹及びその他の木材に使用することができる。
本発明の組成物の木材への含浸深さは、特に限定されず、木材の種類、改質目的に応じて種々設定すればよい。特に本発明の組成物は、木材の木質部、導管部及び細胞壁に対して優れた含浸性を有し、その含浸処理木材は高い硬度、寸法安定性及び耐湿性等を有する。
【0040】
木材に含浸させた組成物を硬化させる方法としては、種々の方法が採用でき、組成物にラジカル重合開始剤を配合して、加熱や光により硬化させることができる。又、光による硬化と熱による硬化を併用することもできる。
【0041】
加熱炉、赤外線、マイクロ波等の熱エネルギー源を使用して熱硬化させる場合は、熱重合開始剤を配合する。好適に用いられる熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物としては、アゾビスイソブチロニトリル及び2,2−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ系化合物類、メチルエチルケトンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド等のアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド及びトルオイルパーオキサイド等のアシルパーオキサイド類、並びにクミルパーオキシオクトエート及びブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル類等が挙げられ、無機過酸化物としては、過硫酸アンモニウム及び過硫酸カリウム等が挙げられる。
【0042】
常温で放置して硬化させる場合、又は100℃以下の比較的低温で加熱硬化させる場合には、上記熱重合開始剤と共に重合促進剤を配合することが好ましく、好ましい重合促進剤として例えばコバルト、鉄、マンガン等の金属とナフテン酸、リノール酸、アセチルアセトン等との有機金属塩類、ジメチルパラトルイジン、アスコルビン酸等の還元性アミン類及びその他の還元物質等が挙げられる。
【0043】
紫外線又は可視光線の照射により硬化させる場合には、一般的に使用されている光開始剤や増感剤を配合する。好ましい光開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン〔チバガイギー製イルガキュアー907〕、ベンジルジメチルケタール〔チバガイギー製イルガキュアー651〕、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔チバガイギー製イルガキュアー184〕、ジエトキシアセトフェノン〔ファーストケミカル製ファーストキュアーDEAP〕、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン〔チバガイギー製ダロキュアー1173〕、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン〔チバガイギー製イルガキュアー2959〕、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン〔チバガイギー製イルガキュアー369〕、並びにカンファーキノン等が挙げられる。
【0044】
これら熱重合開始剤及び重合促進剤、並びに光開始剤及び増感剤の配合量は、常法に従えば良く、例えば硬化性成分100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましい。0.01重量部未満では、充分に重合させることができず、20重量部を越えると、硬化性成分の量が相対的に減少するため、硬化物の特性が低下する恐れがある。特に好ましい開始剤の使用量としては、0.1〜10重量部である。
組成物を電子線や放射線の照射により硬化させる場合には、重合開始剤の使用を省略することができる。
【0045】
本発明の組成物では、化合物(1)中のカルボキシル基と木材中のセルロースの水酸基との反応を好ましく進行させるため、加熱により硬化させることが好ましい。この場合の加熱温度としては、100℃以上が好ましい。
【0046】
又、化合物(1)中のカルボキシル基と木材中のセルロースの水酸基とを反応を促進させる目的で、組成物中に種々のエステル化触媒を配合することもできる。エステル化触媒として種々のものが使用でき、硫酸、p−トルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸等の酸触媒が好ましい。
エステル化触媒の配合割合は、硬化性成分100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましい。0.01重量部未満では、組成物を充分に重合させることができず、他方20重量部を越えると、硬化性成分の量が相対的に減少するため、硬化物の特性が低下する恐れがある。特に好ましい触媒の使用量としては、0.1〜10重量部である。
【0047】
本発明の木材含浸処理用組成物には、上記の他、必要に応じて汎用の各種(メタ)アクリレート系オリゴマー、染料、顔料等、並びに木材への含浸量の調節のためにフィラー及びポリマー等を配合することもできる。
【0048】
【作用】
本発明の組成物は、低揮発性で取り扱いが容易であり、木材への含浸性に優れ、反応性が高く、含浸処理した木材に耐湿性、寸法安定性を付与することができる。
特に化合物(1)のカルボキシル基を有機アミン又はアンモニアで中和した水溶液とした場合には、組成物の硬化後に水分を乾燥により蒸発させても、木材が水を含んでいた時の膨潤状態の同じ寸法を保つことができる。これは化合物(1)が木材の細胞壁内への浸透性に優れることと、化合物(1)が2つの(メタ)アクリロイル基、即ち2官能(メタ)アクリレートであるため、その硬化物が橋架けした三次元状のポリマーとなり、細胞壁からのポリマーの流出も非常に少なくなり、この嵩効果により含浸処理木材の寸法安定性も向上するものと考えられる。さらに化合物(1)中のカルボキシル基と木材のセルロース中の水酸基とがエステル結合を形成するため、寸法安定性の持続性もさらに向上する。
【0049】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、各例における部又は%は、特に断わらない限り重量基準である。
【0050】
○評価方法
各例で得た木材含浸用処理組成物をカラマツ材の木口試験片(2×2×10cm)に減圧法によって含浸させ、120℃で1時間の加熱処理を行い、組成物を硬化、乾燥させることにより含浸処理木材を製造した。
以下に各評価方法について示す。
【0051】
・T方向バルキング率
T方向バルキング率は、木口試験片の接線方向の膨潤率で示しており、水のみで膨潤させた時を100%としている。
【0052】
・ASE(寸法安定性)
含浸処理木材を温度103℃で24時間乾燥させた後、温度20℃で湿度94%の条件下に30日間保持し、寸法安定性を測定した。
寸法安定性は、次式で表されるASE値で示した。
【0053】
【式1】
【0054】
ここで、SO は未含浸処理木材の膨潤率(%)を示し、Sは含浸処理木材の膨潤率(%)を示す。尚、ここでいう膨潤率は、吸湿試験前後の木材の体積変化の割合である。
【0055】
・乾湿繰り返し後、ASE
含浸硬化させた木材片を、−20℃で2時間、60℃で2時間を5サイクル繰り返して行った後、ASEを測定した。
【0056】
・硬化状況
含浸処理木材を切断して、内部の組成物の硬化状態を目視で調べた。
硬化性:○は硬化が充分であることを意味し、×は硬化が不充分であることを意味する。
【0057】
○合成例1
撹拌器、温度計及び上部に冷却管を備えたフラスコに、ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル(分子量230)230g(1モル)、アクリル酸(分子量72)144g(2モル)、触媒としてトリフェニルフォスフィン5.7g(反応物全体に対して1%)及び重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.29g(反応物全体に対して500ppm)を仕込んだ後、撹拌下加熱し、反応温度80〜90℃で10時間反応を行った。反応液に、無水コハク酸(分子量100)200g(2モル)を加え、さらに3時間80℃で攪拌して、ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレートのコハク酸2モル変性物を得た。これを化合物Aとする。
【0058】
○合成例2
ジエチレングリコールのジグリシジルエーテル(分子量218 n=2)218g(1モル)、アクリル酸144g(2モル)、触媒としてトリフェニルフォスフィン5.1g(反応物全体に対して1%)、重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.26g(反応物全体に対して500ppm)及びテトラヒドロ無水フタル酸(分子量152)152g(1モル)を使用した以外は合成例1と同様の条件で反応を行いジエチレングリコールのジグリシジルエーテルのジアクリレートのテトラヒドロフタル酸1モル変性物を得た。これを化合物Bとする。
【0059】
○合成例3
テトラエチレングリコールのジグリシジルエーテル(分子量306 n=4)306g(1モル)、アクリル酸144g(2モル)、触媒としてトリフェニルフォスフィン4.5g(反応物全体に対して1%)、重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.23g(反応物全体に対して500ppm)及び無水コハク酸(分子量100)100g(1モル)を使用した以外は合成例1と同様の条件で反応を行い、テトラエチレングリコールのジグリシジルエーテルのジアクリレートのコハク酸1モル変性物を得た。これを化合物Cとする。
【0060】
○実施例1
水38.2部に25%アンモニア水11.8部を溶解させ、これに合成例1で得た化合物Aの50部を加えて化合物Aのカルボキシル基を中和した。これに、p−トルエンスルホン酸(以下PTSと略す)2部及び重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを1部をさらに溶解させ、木材含浸処理用硬化性組成物を調製した。
得られた組成物の評価結果を表1に示す。
【0061】
○実施例2及び同3
表1に示す成分を使用する以外は実施例1と同様の操作で、木材含浸処理用硬化性組成物を調製した。
得られた組成物の評価結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
○比較例1
水50部にポリエチレングリコールジアクリレート〔アロニックスM−245、東亞合成(株)製〕50部を溶解させ、さらに重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを1部をさらに溶解させ、木材含浸処理用硬化性組成物を調製した。
得られた組成物についての評価結果を表2に示す。
【0064】
○比較例2
又、水50部及びポリエチレングリコール〔PEG1000、三洋化成工業(株)製〕50部を使用した以外は、比較例1と同様の方法で木材含浸処理用硬化性組成物を調製した。
得られた組成物についての評価結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
1)ブリードが発生した。
【0066】
【発明の効果】
本発明の木材含浸処理用硬化性組成物は、木材への含浸性に優れ、反応性が高く、低揮発性で取り扱いも容易であり、木材へ含浸させ硬化させることにより、木材に耐湿性、寸法安定性及び強度を付与することができ、木材の改質に優れた効果を発揮するものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、木材に含浸させ硬化させることにより木材の諸性質を改善することができる木材含浸処理用硬化性組成物に関するものであり、本発明の組成物は、住宅設備及び建築材料等に使用される木材の改質に使用することができ、これらを使用する分野で賞用され得るものである。
尚、本明細書においては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリルと表し、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表し、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す。
【0002】
【従来の技術】
従来より、木材の寸法安定性、硬度、耐吸水性、耐吸湿性及び耐摩耗性等を改良するために、木材に樹脂又はモノマー等からなる木材含浸処理用組成物を含浸させ、硬化させる方法が知られている。この方法により得られる木材プラスチック複合体は、WPC(ウッド プラスチック コンビネーション)と呼ばれ、種々の建築材料等に利用されている。
【0003】
これまで知られている代表的なWPCとしては、内孔充填型WPC、バルキング型WPC、水酸基置換型WPC及びグラフト型WPCがあった。
【0004】
内孔充填型WPCとは、細胞の内孔に樹脂を充填し、これにより木材内部の水分や蒸気の移動を阻害し、寸法安定性等の性能を向上させるものである。内孔充填型WPCで使用される代表的な組成物としては、不飽和ポリエステル等の反応性樹脂やメタクリル酸メチル等のモノマーを、スチレンや有機溶剤により希釈されたものが知られている。しかしながら、これらの反応性樹脂又はモノマーからなる組成物は、木材の細胞内孔を十分に充填することが困難であるため、満足な性能を有するWPC化木材を得ることができなかった。又、これらの組成物は、反応性が充分でないために、未硬化モノマーが木材中に残ってしまい、硬化後に行われる切削工程や研磨工程で、未硬化モノマーが木屑に含まれてしまい、悪臭の問題を発生させていた。又、組成物において、反応性樹脂又はモノマーを溶解させている有機溶剤やスチレン等のモノマーは、揮発性が高いために引火の危険性があり、又悪臭の問題もあった。
【0005】
一方バルキング型WPCとは、細胞の細胞壁中のセルロースの非結晶領域を膨潤させた状態で、樹脂により固定するもので、これにより外部からの水分の侵入を阻害し、寸法安定性等の性能を向上させるものである。バルキング型WPCで使用される代表的な化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート及びポリエチレングリコールジアクリレート等がある(特開平5−220712号公報)。一般的にこれらの化合物は、水溶液として使用されており、水は木材の膨潤剤として機能している。しかしながら、ポリエチレングリコールを使用する場合は、その分子量が小さいと、経時的にポリエチレングリコールがブリードしてくるという耐久性の点で問題があり、他方その分子量が大きいと、木材への含浸量が少なくなるために、高い性能のWPC化木材が得られなくなるという欠点を有するものであった。又、ポリエチレングリコールモノメタクリレートやポリエチレングリコールジアクリレートを使用する場合は、その分子量が小さいと水との親和性が悪く、水溶液にすることが困難であり、又分子量が大きいと、前記と同様に木材への含浸量が少なくなるために、高い性能のWPC化木材が得られないというものであった。
【0006】
水酸基置換型WPCとは、木材細胞の細胞壁中におけるセルロースの水酸基を疎水性の基に置き換え、処理木材への水分の浸透を防ぎ、さらに寸法安定性を付与するものである。この方法に使用される代表的な化合物としては、無水酢酸が知られており、これにより水酸基がアセチル化処理される。しかしながら、このような処理を施したとしても、得られるWPC化木材は、外部からの水分の浸透を充分に阻止することが難しく、又寸法安定性が満足なものではなかった。さらに、アセチル化処理を行った場合には、副生する酢酸による臭気が問題になる場合もあった。
【0007】
グラフト型WPCとは、木材細胞の細胞壁中におけるセルロースの水酸基同士、又はセルロースの水酸基と樹脂とを結合させる方法で、細胞壁の動きを固定することにより、寸法安定性を付与するものである。公知の方法としては、多価カルボン酸と多価アルコールを木材中に含浸させ、脱水縮合する方法(特開昭64−8001号公報)や、木材中のセルロースの水酸基に二塩基酸無水物を付加し、カルボン酸含有エステル化木材を形成させ、その後エポキシ化合物を含浸させる方法(特開昭63−54204号公報)や、木材中に二塩基酸無水物とジエポキシ化合物、又は水酸基と反応性基とを併せ持つ化合物を含浸、硬化させる方法(特開平4−259506号公報)が知られている。しかしながらこれらの化合物を使用する方法では、これらの方法で使用される化合物が細胞壁に充分に浸透しないため、木材に充分なバルキングを発生させることは難しく、結果として寸法安定性に優れるWPC化木材が得られ難かった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、低揮発性で取り扱いが容易で、木材への含浸性に優れ、反応性が高く、含浸処理した木材に耐湿性、寸法安定性を付与することができる木材含浸処理用硬化性組成物を見い出すため鋭意検討を行ったのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記問題点を解決するため鋭意検討した結果、下記一般式(1)で表される化合物を含有する組成物、さらに好ましくは当該化合物のカルボキシル基が有機アミン又はアンモニア水で中和された水溶液を、木材に含浸させ、硬化させることが非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
【化2】
【0011】
但し、式(1)において、R1 〜R5 は以下に示す基であり、a=0又は1、b=0又は1で、かつa+b=1又は2である。
R1 及びR2 :水素原子又はメチル基であり、それらは同一であっても異なっていても良い。
R3 及びR4 :二塩基酸無水物又は二塩基酸からジカルボニルオキシ基又は2個のカルボキシル基を除いた炭素数2〜8の残基であり、それらは同一であっても異なっていても良い。
R5 :2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物から2個のグリシジル基を除いた残基である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の木材含浸処理用硬化性組成物における必須成分の上記一般式(1)で表される化合物〔以下化合物(1)という〕は、2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物の2個のエポキシ基に対して、(メタ)アクリル酸を等モル付加反応させて得られる化合物の水酸基に、さらに二塩基酸無水物又は二塩基酸が付加又はエステル化したものである。
【0013】
上記一般式(1)において、R3 及びR4 は、二塩基酸無水物又は二塩基酸からジカルボニルオキシ基又は2個のカルボキシル基を除いた炭素数2〜8の残基であり、それらは同一であっても異なっていても良い。R3 及びR4 の具体例としては、炭素数が2〜8である、直鎖状又は分岐状アルキレン基、不飽和二重結合を有する直鎖状又は分岐状アルキレン基、環状アルキレン基、不飽和二重結合を有する環状アルキレン基又は芳香族基等がある。
【0014】
直鎖状又は分岐状アルキレン基としては−CH2 CH2 −、−CH2 CH(CH3 )−等が挙げられ、不飽和二重結合を有する直鎖状アルキレン基としては、−CH=C−、−CH=C(CH3 )−、−CH2 −C(=CH2 )−等が挙げられる。
【0015】
環状アルキレン基としては、下記のものがその例として挙げられる。
【0016】
【化3】
【0017】
不飽和二重結合を有する環状アルキレン基としては、下記のものがその例として挙げられる。又、当該環状アルキレン基は、塩素の様なハロゲン原子が付加したものであっても良い。
【0018】
【化4】
【0019】
芳香族基としては、下記のものがその例として挙げられる。
【0020】
【化5】
【0021】
ここで化合物(1)の原料の二塩基酸無水物又は二塩基酸〔以下二塩基酸(無水物)と表す〕としては、例えば、コハク酸(無水物)、マレイン酸(無水物)、イタコン酸(無水物)、フタル酸(無水物)、テトラヒドロフタル酸(無水物)、ヘキサヒドロフタル酸(無水物)、4−メチルテトラヒドロフタル酸(無水物)、4−メチルヘキサヒドロフタル酸(無水物)、3−メチルテトラヒドロフタル酸(無水物)、ナジック酸(無水物)、メチルナジック酸(無水物)及びクロレンド酸(無水物)等が挙げられる。
【0022】
又、上記一般式(1)において、R5 は、2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物から2個のグリシジル基を除いた残基であり、具体的には、−OCH2 CH2 O−、−OCH2 CH(CH3 )O−、−OCH2 C(CH3 )2 CH2 O−、−O(CH2 )4 O−、−O(CH2 )5 O−及び−O(CH2 )6 O−等のアルキレンジオキシ基、−O(CH2 CH2 O)2 −、−O(CH2 CH2 O)3 −、−O(CH2 CH2 O)4 −、−O(CH2 CH2 O)n −、−O〔CH2 CH(CH3 )O〕2 −、−O〔CH2 CH(CH3 )O〕3 −及び−O〔CH2 CH(CH3 )O〕n −等のポリオキシアルキレンオキシ基、例えば下記一般式で表される、ビスフェノール型基又はアルキレンオキサイドが付加したビスフェノール型基、
【0023】
【化6】
【0024】
(R6 は水素原子又はメチル基であり、Rはエチレン基又はプロピレン基であり、mは0〜20の整数である。)
【0025】
並びに例えば下記一般式で表される、水添ビスフェノール型基又はアルキレンオキサイドが付加した水添ビスフェノール型基である。
【0026】
【化7】
【0027】
(R7 は水素原子又はメチル基であり、Rはエチレン基又はプロピレン基であり、pは0〜20の整数である。)
【0028】
これらのR5 中でも、アルキレンジオキシ基及びポリオキシアルキレンオキシ基が好ましく、より好ましくは化合物(1)の水溶性に優れる点で、O(CH2 CH2 O)n 〔n=1〜150〕で表されるエチレンジオキシ基、ポリオキシエチレンオキシ基である。
【0029】
又、式(1)において、a=0又は1、b=0又は1で、かつa+b=1又は2である。即ち、化合物(1)は、2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物(以下単にエポキシ化合物という)の(メタ)アクリル酸付加物において、2個の水酸基の少なくとも1個に、二塩基酸(無水物)が付加又はエステル化したものである。
【0030】
ここで化合物(1)の原料のエポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ブタンジオールのジグリシジルエーテル、ペンタンジオールのジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル及びネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、並びにジエチレングリコールのジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。又、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びビスフェノールFのジグリシジルエーテル等のビスフェノール型ジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル及びビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル等のビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及び水添ビスフェノールFのジグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、並びに水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル及び水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル等の水添ビスフェノールのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0031】
化合物(1)は、従来より知られた方法により製造されたものであればよく、その方法としては、反応器に、無溶剤で、又は有機溶媒を使用して、エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸、触媒及び重合禁止剤を加え、70〜140℃で加熱攪拌し、エポキシ化合物のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を付加反応させて、エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸を付加物を得た後、反応液にさらに二塩基酸(無水物)、好ましくは二塩基酸無水物を加え、同様の反応温度で攪拌を行して、付加反応を行う方法等が挙げられる。有機溶媒を使用した場合は、反応後に必要に応じて減圧蒸留により該溶媒を除くこともできる。有機溶剤としては、(メタ)アクリル酸と反応しないものを使用し、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトン等が挙げられる。触媒としては、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン及びN,Nージメチルアニリン等の3級アミン類、テトラジエチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロミド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類、ジエチルアンモニウムクロリド等の2級アミンの塩酸塩類、並びにトリフェニルフォスフィン等のリン化合物類等が挙げられる。又、重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、フェノチアジン及びN−ニトロソフェニ−ルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。
エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸の反応割合は、エポキシ化合物1モルに対して(メタ)アクリル酸を2倍モル又はそれ以上であり、又エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸付加物に対する二塩基酸(無水物)の反応割合は、エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸付加物1モルに対して二塩基酸(無水物)を1〜2倍モル又はそれ以上であるが、実際の反応においてはそれぞれの化合物の反応性を勘案して、その仕込量を適宜増減させることもできる。
【0032】
○その他の配合物
本発明の木材含浸処理用組成物には、必要に応じて種々の成分を配合することができる。例えば組成物の粘度を低下させるために、有機溶媒、反応性希釈剤又は水を配合できる。
【0033】
有機溶媒としては、例えばメチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル及び酢酸ブチル等の酢酸エステル類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール及びイソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ類、並びにメチルセロソルブアセテート及びエチルセロソルブアセテート等のセロソルブアセテート類等を挙げることができ、これらは2種以上を併用することもできる。
化合物(1)の製造において、有機溶媒を使用した場合には、反応後除去することなくそのまま組成物の有機溶媒として使用することもできる。
これらの有機溶媒の中でもアルコール類を使用することが、木材を膨張させることができ、組成物の木材への含浸性を向上させることができるため好ましい。
【0034】
又、反応性希釈剤の代表例は、分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、粘度が25℃で50cps以下のものが、組成物の粘度を低下させる効果が大きいため好ましい。分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等がある。これらの分子中に(メタ)アクリロイル基を有する化合物は市販されており、例えばテトラヒドロフルフリルアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製ビスコート150〕、フェノキシエトキシエチルアクリレート〔東亞合成(株)製アロニックスM101〕、ネオペンチルグリコールジアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製ビスコート215〕、ヘキサンジオールジアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製ビスコート230〕等がある。これらの他にも、メチル(メタ)アクリレート及びエチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのコハク酸付加物及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのコハク酸付加物等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのコハク酸付加物、(メタ)アクリル酸のフェニルグリシジルエーテル付加物、ポリエステル(メタ)アクリレート、並びにウレタン(メタ)アクリレート等がある。これらは、2種以上を併用することもできる。
【0035】
反応性希釈剤を配合する場合の割合は、化合物(1)10重量部に対して100重量部以下、又有機溶剤を配合する場合の割合は、化合物(1)又はこれと反応性希釈剤(以下これらを硬化性成分という)の合計量10重量部に対して100重量部以下とすることが好ましい。
【0036】
又、本発明においては、希釈剤として水を使用することが、木材を膨張させることができ、組成物の木材への含浸性を向上させることができるために好ましい。
水を使用する場合の割合は、硬化性成分10重量部に対して100重量部以下とすることが好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。水の割合が100重量部を超えると、組成物の硬化性が低下する場合がある。
この場合、反応性希釈剤を併用するときは、上記挙げた例の中でも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノヒドロキシモノ(メタ)アクリレート及びポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等の親水性の(メタ)アクリレートを配合することが好ましい。
【0037】
本発明の第3発明は、希釈剤として水を用いる組成物において、組成物に含まれる化合物(1)の一部又は全部が、有機アミン又はアンモニアで中和されたものを含有するものである。化合物(1)のカルボキシル基を有機アミン又はアンモニアの塩とすることにより、水への溶解性に優れたものとすることができる。組成物に含まれる化合物(1)の一部又は全部を、有機アミン又はアンモニアで中和する方法としては、常法に従えば良く、例えば有機アミン又はアンモニアの水溶液中に化合物(1)を配合することにより得ることができる。組成物中の化合物(1)に対する、有機アミン又はアンモニアの割合としては、化合物(1)の1モルに対して、0.5〜2モルが好ましく、より好ましくは等モルである。有機アミン又はアンモニアの割合の割合が0.5モルに満たないと、水への溶解性を充分改善することができなくなる場合があり、他方2モルを超えると、得られる組成物又は含浸処理木材に臭気の問題が発生する場合がある。ここで使用できる有機アミンは、種々の化合物が使用でき、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン及びモルフォリン等の3級アミン類、ジエチルアミン及びジエタノールアミン等の2級アミン、並びにモノエタノールアミン等の1級アミン等が挙げられる。これらの中でも、沸点が120℃以下の有機アミンを使用することが、組成物を木材に含浸させた後加熱による硬化において、アミンを蒸発させることができる、これにより得られる含浸処理木材が臭気がなく、耐水性に優れるため好ましい。
【0038】
本発明の組成物には、貯蔵中のゲル化を防止し貯蔵安定性を増すために、安定剤を配合することができる。好適な安定剤としては、例えばハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルハイドロキノン及びカテコール等のフェノール類、ベンゾキノン、ナフトキノン及びジフェニルベンゾキノン等のキノン類、フェノチアジン、並びに銅塩等が挙げられる。これらの安定剤の使用量は、硬化性成分100重量部に対して0.00001〜0.01重量部とするのが好ましい。
【0039】
○使用方法
本発明の組成物を木材に含浸させる方法としては、種々の方法が使用でき、例えば、減圧含浸法、加圧含浸法及び常圧浸漬法等が挙げられる。
改質できる木材の種類は、多岐にわたっており、広葉樹、針葉樹及びその他の木材に使用することができる。
本発明の組成物の木材への含浸深さは、特に限定されず、木材の種類、改質目的に応じて種々設定すればよい。特に本発明の組成物は、木材の木質部、導管部及び細胞壁に対して優れた含浸性を有し、その含浸処理木材は高い硬度、寸法安定性及び耐湿性等を有する。
【0040】
木材に含浸させた組成物を硬化させる方法としては、種々の方法が採用でき、組成物にラジカル重合開始剤を配合して、加熱や光により硬化させることができる。又、光による硬化と熱による硬化を併用することもできる。
【0041】
加熱炉、赤外線、マイクロ波等の熱エネルギー源を使用して熱硬化させる場合は、熱重合開始剤を配合する。好適に用いられる熱重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物としては、アゾビスイソブチロニトリル及び2,2−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ系化合物類、メチルエチルケトンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド等のアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド及びトルオイルパーオキサイド等のアシルパーオキサイド類、並びにクミルパーオキシオクトエート及びブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル類等が挙げられ、無機過酸化物としては、過硫酸アンモニウム及び過硫酸カリウム等が挙げられる。
【0042】
常温で放置して硬化させる場合、又は100℃以下の比較的低温で加熱硬化させる場合には、上記熱重合開始剤と共に重合促進剤を配合することが好ましく、好ましい重合促進剤として例えばコバルト、鉄、マンガン等の金属とナフテン酸、リノール酸、アセチルアセトン等との有機金属塩類、ジメチルパラトルイジン、アスコルビン酸等の還元性アミン類及びその他の還元物質等が挙げられる。
【0043】
紫外線又は可視光線の照射により硬化させる場合には、一般的に使用されている光開始剤や増感剤を配合する。好ましい光開始剤としては、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン〔チバガイギー製イルガキュアー907〕、ベンジルジメチルケタール〔チバガイギー製イルガキュアー651〕、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔チバガイギー製イルガキュアー184〕、ジエトキシアセトフェノン〔ファーストケミカル製ファーストキュアーDEAP〕、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン〔チバガイギー製ダロキュアー1173〕、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン〔チバガイギー製イルガキュアー2959〕、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン〔チバガイギー製イルガキュアー369〕、並びにカンファーキノン等が挙げられる。
【0044】
これら熱重合開始剤及び重合促進剤、並びに光開始剤及び増感剤の配合量は、常法に従えば良く、例えば硬化性成分100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましい。0.01重量部未満では、充分に重合させることができず、20重量部を越えると、硬化性成分の量が相対的に減少するため、硬化物の特性が低下する恐れがある。特に好ましい開始剤の使用量としては、0.1〜10重量部である。
組成物を電子線や放射線の照射により硬化させる場合には、重合開始剤の使用を省略することができる。
【0045】
本発明の組成物では、化合物(1)中のカルボキシル基と木材中のセルロースの水酸基との反応を好ましく進行させるため、加熱により硬化させることが好ましい。この場合の加熱温度としては、100℃以上が好ましい。
【0046】
又、化合物(1)中のカルボキシル基と木材中のセルロースの水酸基とを反応を促進させる目的で、組成物中に種々のエステル化触媒を配合することもできる。エステル化触媒として種々のものが使用でき、硫酸、p−トルエンスルホン酸及びメタンスルホン酸等の酸触媒が好ましい。
エステル化触媒の配合割合は、硬化性成分100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましい。0.01重量部未満では、組成物を充分に重合させることができず、他方20重量部を越えると、硬化性成分の量が相対的に減少するため、硬化物の特性が低下する恐れがある。特に好ましい触媒の使用量としては、0.1〜10重量部である。
【0047】
本発明の木材含浸処理用組成物には、上記の他、必要に応じて汎用の各種(メタ)アクリレート系オリゴマー、染料、顔料等、並びに木材への含浸量の調節のためにフィラー及びポリマー等を配合することもできる。
【0048】
【作用】
本発明の組成物は、低揮発性で取り扱いが容易であり、木材への含浸性に優れ、反応性が高く、含浸処理した木材に耐湿性、寸法安定性を付与することができる。
特に化合物(1)のカルボキシル基を有機アミン又はアンモニアで中和した水溶液とした場合には、組成物の硬化後に水分を乾燥により蒸発させても、木材が水を含んでいた時の膨潤状態の同じ寸法を保つことができる。これは化合物(1)が木材の細胞壁内への浸透性に優れることと、化合物(1)が2つの(メタ)アクリロイル基、即ち2官能(メタ)アクリレートであるため、その硬化物が橋架けした三次元状のポリマーとなり、細胞壁からのポリマーの流出も非常に少なくなり、この嵩効果により含浸処理木材の寸法安定性も向上するものと考えられる。さらに化合物(1)中のカルボキシル基と木材のセルロース中の水酸基とがエステル結合を形成するため、寸法安定性の持続性もさらに向上する。
【0049】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、各例における部又は%は、特に断わらない限り重量基準である。
【0050】
○評価方法
各例で得た木材含浸用処理組成物をカラマツ材の木口試験片(2×2×10cm)に減圧法によって含浸させ、120℃で1時間の加熱処理を行い、組成物を硬化、乾燥させることにより含浸処理木材を製造した。
以下に各評価方法について示す。
【0051】
・T方向バルキング率
T方向バルキング率は、木口試験片の接線方向の膨潤率で示しており、水のみで膨潤させた時を100%としている。
【0052】
・ASE(寸法安定性)
含浸処理木材を温度103℃で24時間乾燥させた後、温度20℃で湿度94%の条件下に30日間保持し、寸法安定性を測定した。
寸法安定性は、次式で表されるASE値で示した。
【0053】
【式1】
【0054】
ここで、SO は未含浸処理木材の膨潤率(%)を示し、Sは含浸処理木材の膨潤率(%)を示す。尚、ここでいう膨潤率は、吸湿試験前後の木材の体積変化の割合である。
【0055】
・乾湿繰り返し後、ASE
含浸硬化させた木材片を、−20℃で2時間、60℃で2時間を5サイクル繰り返して行った後、ASEを測定した。
【0056】
・硬化状況
含浸処理木材を切断して、内部の組成物の硬化状態を目視で調べた。
硬化性:○は硬化が充分であることを意味し、×は硬化が不充分であることを意味する。
【0057】
○合成例1
撹拌器、温度計及び上部に冷却管を備えたフラスコに、ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル(分子量230)230g(1モル)、アクリル酸(分子量72)144g(2モル)、触媒としてトリフェニルフォスフィン5.7g(反応物全体に対して1%)及び重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.29g(反応物全体に対して500ppm)を仕込んだ後、撹拌下加熱し、反応温度80〜90℃で10時間反応を行った。反応液に、無水コハク酸(分子量100)200g(2モル)を加え、さらに3時間80℃で攪拌して、ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのジアクリレートのコハク酸2モル変性物を得た。これを化合物Aとする。
【0058】
○合成例2
ジエチレングリコールのジグリシジルエーテル(分子量218 n=2)218g(1モル)、アクリル酸144g(2モル)、触媒としてトリフェニルフォスフィン5.1g(反応物全体に対して1%)、重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.26g(反応物全体に対して500ppm)及びテトラヒドロ無水フタル酸(分子量152)152g(1モル)を使用した以外は合成例1と同様の条件で反応を行いジエチレングリコールのジグリシジルエーテルのジアクリレートのテトラヒドロフタル酸1モル変性物を得た。これを化合物Bとする。
【0059】
○合成例3
テトラエチレングリコールのジグリシジルエーテル(分子量306 n=4)306g(1モル)、アクリル酸144g(2モル)、触媒としてトリフェニルフォスフィン4.5g(反応物全体に対して1%)、重合防止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.23g(反応物全体に対して500ppm)及び無水コハク酸(分子量100)100g(1モル)を使用した以外は合成例1と同様の条件で反応を行い、テトラエチレングリコールのジグリシジルエーテルのジアクリレートのコハク酸1モル変性物を得た。これを化合物Cとする。
【0060】
○実施例1
水38.2部に25%アンモニア水11.8部を溶解させ、これに合成例1で得た化合物Aの50部を加えて化合物Aのカルボキシル基を中和した。これに、p−トルエンスルホン酸(以下PTSと略す)2部及び重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを1部をさらに溶解させ、木材含浸処理用硬化性組成物を調製した。
得られた組成物の評価結果を表1に示す。
【0061】
○実施例2及び同3
表1に示す成分を使用する以外は実施例1と同様の操作で、木材含浸処理用硬化性組成物を調製した。
得られた組成物の評価結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
○比較例1
水50部にポリエチレングリコールジアクリレート〔アロニックスM−245、東亞合成(株)製〕50部を溶解させ、さらに重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを1部をさらに溶解させ、木材含浸処理用硬化性組成物を調製した。
得られた組成物についての評価結果を表2に示す。
【0064】
○比較例2
又、水50部及びポリエチレングリコール〔PEG1000、三洋化成工業(株)製〕50部を使用した以外は、比較例1と同様の方法で木材含浸処理用硬化性組成物を調製した。
得られた組成物についての評価結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
1)ブリードが発生した。
【0066】
【発明の効果】
本発明の木材含浸処理用硬化性組成物は、木材への含浸性に優れ、反応性が高く、低揮発性で取り扱いも容易であり、木材へ含浸させ硬化させることにより、木材に耐湿性、寸法安定性及び強度を付与することができ、木材の改質に優れた効果を発揮するものである。
Claims (3)
- 一般式(1)で表される化合物において、R5 が下記構造からなることを特徴とする請求項1記載の木材含浸用硬化性樹脂組成物。
O(CH2 CH2 O)n
但し、n=1〜150である。 - 組成物に含まれる一般式(1)で表される化合物の一部又は全部が、有機アミン又はアンモニアで中和されたものを含有する水溶液からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の木材含浸処理用硬化性組成物。
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- 1996-12-16 JP JP35318296A patent/JP3576343B2/ja not_active Expired - Fee Related
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