JP3391572B2 - タイヤ用ゴム組成物 - Google Patents

タイヤ用ゴム組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、操縦安定性及び省燃費
性に優れるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の操縦安定性は、タイヤのゴム材
料の粘弾性と密接な関係があることが知られている。す
なわち、走行時にはタイヤの温度が上昇し、タイヤに使
用されているゴム配合のほとんど全ては高温になるに従
い弾性率が低下する傾向にある。このことは、走行時の
タイヤの温度変化により自動車の操縦安定性が低下する
ことにつながり望ましくない。従って、操縦安定性を確
保するためには、熱安定性に優れたゴム組成物が求めら
れる。ここで、加硫ゴムの粘弾性特性に影響を与える主
要な要因として、ゴムの加硫状態がある。
【0003】最も基本的な硫黄と加硫促進剤とから構成
される硫黄加硫系による加硫物は、一般にポリスルフィ
ド結合を主体とするため、熱安定性に劣るという欠点が
ある。一方、硫黄加硫系のゴム配合の熱安定性を改良す
る目的で、EV加硫系が古くから知られている。EV加
硫系は、加硫剤である硫黄の配合量をできるだけ少なく
し、単位架橋あたりの硫黄の数をできるだけ少なくする
加硫方法であるが、通常の硫黄加硫に比べて、摩耗抵
抗が小さい、疲労寿命が短い、金属等との接着に難
点があるという欠点がある。
【0004】硫黄加硫系の他に、硫黄を用いない有機過
酸化物加硫がある。元来、有機過酸化物による加硫物
は、熱安定性に優れていることは周知であるが、耐疲労
性に問題がある。硫黄加硫と有機過酸化物加硫とは、互
いに妨害しあう場所があることが知られているが、一定
条件下では両加硫を併存して使用することが可能であ
る。例えば、S.P.Manic et al;R.C.T. vol.42,p744(196
9)に、硫黄加硫系の加硫反応がイオン反応で進行する条
件下で、カーボンブラックが存在しないゴム組成物、具
体的には、天然ゴム、硫黄、MBT、DCP、酸化亜
鉛、ステアリン酸を含有したゴム組成物の加硫が開示さ
れている。このゴム組成物はカーボンブラックが存在し
ていない場合であるが、カーボンブラック配合の場合で
も、有機過酸化物による加硫の架橋効率を高める架橋助
剤として少量の硫黄が添加されることが知られている
(L.P.Lenas;R.C.T.Vol.37, p229(1961)) 。
【0005】また、1993年国際ゴム技術会議の報告N
o.126において、G.I.Brodsky らにより、EPD
M、BR、NRのブレンドゴムからなるゴム成分を用
い、カーボンブラック配合下で、硫黄加硫系(加硫促進
剤あり)と有機過酸化物加硫を併用して作成したタイヤ
サイドウォールにおいて、疲労性、引き裂き強度、圧縮
永久性を改良した報告がなされている(S.D.Tobing;Rubb
er World Vol.197(5)p33(1988),G.I.Brodsky;I.R.C.'93
No.126)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、G.I.Brodsky
らが提案しているゴム組成物は、ゴム成分にEPDMを
含有しているため、タイヤトレッドに適用した場合、カ
ット、チッピング、かけ、耐摩耗性、トレッドの剥離等
の問題を生じる。一方、近年の自動車に対する省燃費の
要請に伴うタイヤの省燃費化の要求により、70℃付近の
tanδが小さいゴム組成物が強く望まれている。
【0007】本発明は、このような事情に鑑みてなされ
たものであり、その目的とするところは、硫黄量と有機
過酸化物の活性酸素を適正範囲とすることにより、硫黄
加硫系と有機過酸化物加硫の双方の特性を生かして、熱
安定性、及び省燃費に優れるタイヤを提供できるゴム組
成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のタイヤ用ゴム組
成物は、ゴム成分が、天然ゴム及び合成イソプレンゴム
からなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム0〜90
重量%と、スチレンーブタジエンゴム及びブタジエンゴ
ムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム10〜
100重量%とからなり、加硫材として、硫黄及び加硫
促進剤からなる硫黄加硫系と、有機過酸化物とを配合
し、前記硫黄を前記ゴム成分100重量部あたり0.3
〜5重量部配合し、前記有機過酸化物を、活性酸素が硫
黄含有総量(硫黄加硫系に用いられる硫黄の他、加硫促
進剤として含硫黄化合物を用いた場合には加硫促進剤中
の硫黄量も加えた量)の1.0〜3.2重量%となる量
を配合することを特徴とする。
【0009】すなわち、本発明に用いられるゴム成分
は、スチレン−ブタジエンゴムのみ、ブタジエンゴムの
み、スチレン−ブタジエンゴムと天然ゴムのブレンド、
スチレン−ブタジエンゴムと合成イソプレンゴムのブレ
ンド、スチレン−ブタジエンゴムと天然ゴムと合成イソ
プレンゴムのブレンド、ブタジエンゴムと天然ゴムのブ
レンド、ブタジエンゴムと合成イソプレンゴムのブレン
ド、ブタジエンゴムと天然ゴムと合成イソプレンゴムの
ブレンド、スチレン−ブタジエンゴムとブタジエンゴム
と天然ゴムと合成イソプレンゴムのブレンドの組合わせ
が挙げられる。
【0010】このように、ゴム成分として、二重結合の
含有率が大きいゴムの組合せを用いることにより、他の
ゴム等との接着性能を高められる。本発明のゴム組成物
には、加硫剤として、硫黄加硫系と有機過酸化物が配合
される。硫黄加硫系とは、硫黄と加硫促進剤との組合せ
をいう。硫黄の配合量は、ゴム成分100重量部に対し
て0.3〜5重量部である。0.3重量部未満では架橋
密度が低くなりすぎ、5重量部を超えると硬くなりすぎ
るからである。加硫促進剤としては、一般に公知の加硫
促進剤を用いることができ、具体的には、メルカプトベ
ンゾチアゾール,ジベンゾチアジルジスルフィド,N−
シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアミド,N−
tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンア
ミドを使用し得る。加硫促進剤の配合量は、硫黄の配合
量にもよるが、一般にゴム成分100重量部あたり0.
3〜1.8重量部である。
【0011】本発明に用いられる有機過酸化物として
は、特に限定しないが、通常のゴム加硫に使用されるも
の、具体的には、ジクミルペルオキシド、2,2−ビス
(第3ブチルペルオキシ)オクタン、2,5−ジメチル
−2,5−ジ(第3ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,
3−ビス(第3ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼ
ン等が挙げられる。
【0012】有機過酸化物の配合量は、活性酸素が硫黄
含有総量の1.0〜3.2重量%となる量である。ここ
で、硫黄含有総量とは、ゴム組成物中に含まれる硫黄分
の含有量をいい、硫黄加硫系に用いられる硫黄の他、加
硫促進剤として含硫黄化合物を用いた場合には加硫促進
剤中の硫黄量も加えた量である。活性酸素とは、前記有
機過酸化物から生成される遊離ラジカルをいう。活性酸
素が硫黄含有総量の1.0重量%未満では熱安定性及び
省燃費性の改良効果が小さすぎ、3.2重量%を超える
と熱安定性及び省燃費性の改良効果が認められないばか
りでなく、耐摩耗性が悪くなるからである。
【0013】さらに、本発明のゴム組成物には、補強剤
としてカーボンブラックを配合することが望ましい。カ
ーボンブラックとしては窒素吸着比表面積が50〜25
0m 2 /g、DBP吸油量が60〜150ml/gの特
性を有するカーボンブラックが好ましい。窒素吸着比表
面積が50m2 /g、DBP吸油量が60ml未満では
耐摩耗性が劣り、250m2 /gを超えると分散が悪く
なるからである。DBP吸油量が150ml/gを超え
ると粘度が上昇して、加工性が悪くなる傾向にあるから
である。尚、カーボンブラックとして、例えば、HAF
のように、硫黄分を含有するカーボンブラックを用いる
場合には、カーボンブラック中の硫黄量は上記有機過酸
化物の配合量の基準となる硫黄総量に加味される。
【0014】本発明のゴム組成物には、さらに必要に応
じて、軟化剤、老化防止剤等が適宜配合され得る。以上
のような組成を有するタイヤ用ゴム組成物は、タイヤの
種々の部分に用いることが可能であるが、特にタイヤト
レッドに好適である。
【0015】
【実施例】以下に、本発明を具体的実施例に基づいて説
明する。表1に示す配合組成を有するゴム組成物No.
1〜6を調製した。ゴム組成物No.1は、タイヤ用ゴ
ム組成物の基礎的な配合である。No.3,4,5が本
発明にかかるゴム組成物であり、No.1,2,6は比
較例である。
【0016】ゴム成分としては、s−SBR単独を用い
た。用いたs−SBRは、溶液重合スチレン−ブタジエ
ンゴムであり、その組成はスチレン含有量29%、ビニ
ル含有量39%である。有機過酸化物としては、日本油
脂株式会社製のパークミルD(D.C.P)を用いた。
この化合物の活性酸素は5.77重量%であり、その量
は、表1の有機過酸化物の欄の下段に示されている。ま
た、加硫促進剤として、N−シクロヘキシル−2−ベン
ゾチアジル・スルフェンアミド(Acc.cz)を用い
た。この加硫促進剤中には24.2重量%の硫黄分が含
まれている。また、カーボンブラックとしてはHAFを
用いた。このHAFには、0.5重量%の硫黄分が含ま
れ、窒素吸着比表面積が76m2 /g、DBP吸油量が
100ml/gの特性を有する。
【0017】従って、 表1中の硫黄含有総量とは、加
硫剤として配合された硫黄(2重量部)と、加硫促進剤
として配合されたAcc.czの硫黄成分量(1×0.
242=0.242重量部)とカーボンブラック中の硫
黄成分量(35×0.005=0.175重量部)の和
(2+0.242+0.175)で、2.42重量部で
ある。
【0018】各ゴム組成物を160℃で30分間の条件
で加硫し、加硫ゴムの熱安定性、省燃費性及び耐摩耗性
を評価した。評価結果を合わせて、表1に示す。尚、熱
安定性の指標としては、20℃と90℃の弾性率比(E
* (90)/E * (20)を用いた。この弾性率比の値
が大きい程良好である。また、省燃費性の指標として
は、70℃のtanδ(tanδ(70))を用いた。
値が小さい程、良好である。耐摩耗性は、BS規格90
3partA9C法によりアクロン摩耗試験機で測定
し、ゴム組成物No.1の測定値を100とした場合の
指数で表示した。耐摩耗性の指数が大きい程、耐摩耗性
が良好であることを示す。
【0019】さらに、硫黄含有総量に対する活性酸素の
量(重量%)に対する(E* (90)/E* (20)及
びtanδ(70)の関係を表すグラフを、それぞれ図
1及び図2に表した。
【0020】
【表1】
【0021】表1からわかるように、ゴム組成物No.
3,4,5は、熱安定性の指標であるE* (90)/E
* (20)の値が高く、熱安定性に優れている。又、ゴ
ム組成物No.3,4,5は、省燃費性の指標であるt
anδ(70)の値が小さく、省燃費性に優れているこ
とがわかる。従って、本発明の実施例に該当するゴム組
成物No.3,4,5は、熱安定性、省燃費性の双方に
優れていることがわかる。また、耐摩耗性については、
ゴム組成物No.3は良好であり、ゴム組成物No.
4,5はNo.1よりも劣っていたが、実用上許容範囲
内である。さらに、図1及び図2から、硫黄含有総量に
対する活性酸素の量が1.0〜3.2重量%の範囲(矢
印)内では、(E* (90)/E* (20)が高く(図
1参照)、tanδ(70)の値が小さい(図2参照)
ことがわかる。
【0022】
【発明の効果】本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加硫剤
として硫黄加硫系と有機過酸化物を併用し、しかも有機
過酸化物の量を硫黄総量に対して適正量を選択している
ので、熱安定性、省燃費性の指標となる高温でのtan
δという粘弾性特性が優れている。
【0023】従って、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用
いれば、操縦安定性、省燃費性、耐摩耗性に優れたタイ
ヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】活性酸素と熱安定性との関係を示すグラフであ
る。
【図2】活性酸素と省燃費性との関係を示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 9/00 C08L 7/00 C08K 3/04 C08K 3/06 C08K 5/14

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゴム成分が、天然ゴム及び合成イソプレ
    ンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム0
    〜90重量%と、スチレンーブタジエンゴム及びブタジ
    エンゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のゴム
    10〜100重量%とからなり、 加硫材として、硫黄及び加硫促進剤からなる硫黄加硫系
    と、有機過酸化物とを配合し、 前記硫黄を前記ゴム成分100重量部あたり0.3〜5
    重量部配合し、 前記有機過酸化物を、活性酸素が硫黄含有総量(硫黄加
    硫系に用いられる硫黄の他、加硫促進剤として含硫黄化
    合物を用いた場合には加硫促進剤中の硫黄量も加えた
    量)の1.0〜3.2重量%となる量を配合することを
    特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
  2. 【請求項2】 ゴム成分100重量部に対し、窒素吸着
    表面積50〜250m2/g、DBP吸油量が60〜1
    50mlであるカーボンブラックを20〜150重量部
    配合したことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴ
    ム組成物。
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