JP3387492B1 - 高圧放電灯及び照明装置 - Google Patents

高圧放電灯及び照明装置

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JP3387492B1
JP3387492B1 JP2001330049A JP2001330049A JP3387492B1 JP 3387492 B1 JP3387492 B1 JP 3387492B1 JP 2001330049 A JP2001330049 A JP 2001330049A JP 2001330049 A JP2001330049 A JP 2001330049A JP 3387492 B1 JP3387492 B1 JP 3387492B1
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Abstract

【要約】 【課題】 従来の高圧放電灯の有する課題である高い最
冷部温度によってもたらされる製造の難易度、破裂、不
純物作用によるランプのブラッキングや結晶化を効果的
に抑制して長寿命・高信頼性の高圧放電灯を提供するこ
とを目的とする。 【解決手段】 高圧放電灯に絞り値0.002≦S
≦0.03の空隙を配設することで、空隙内部の低
温度分布の状態方程式に支配させる系として構成するこ
とにより、圧力調整機構、低負荷始動機構、ハロゲンバ
ッファ機構、不純物ゲッター機構を形成した。これによ
り、放電容器容積のばらつきや不意な圧力変動を吸収
し、破裂確率の高い始動時の負荷緩和を図り、低温部を
用いてハロゲンの経時的低下を補完し、さらに不純物を
捕獲トラップすることができるようになり、高圧放電灯
の製造難易度を克服し、破裂や不純物作用によるランプ
品質低下を抑制して長寿命・高信頼性の高圧放電灯を提
供することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高圧放電灯に関す
る。
【0002】
【従来の技術】プロジェクタなどに代表される投射型デ
ィスプレイ装置では、光源に対しパラボラ・楕円状のリ
フレクター(反射鏡)を配設して平行光や集光光を形成
し、マイクロレンズアレイやロッドレンズなど数十の光
学制御用レンズ界面を通過してスクリーンに投影像を投
射結像させる方式が採られる。このため光出力の基とな
る点光源体には高い輝度性能が求められ、これまで水銀
と金属ハロゲン化物を封入した高圧放電灯としてメタル
ハライドランプが用いられると共に、ランプ効率の向上
やショートギャップ化など、スクリーン照度の向上が図
られてきた。
【0003】このようなプロジェクション装置に対し、
近年顕著に用いられ始めたのが特開平6−52830号
公報にて提案されているような高圧放電灯である。この
ランプは1.5mm前後のショートギャップで構成され
る高圧放電灯であり、点灯中、放電容器内部の金属蒸気
圧を150気圧以上という極めて高い圧力状態に維持す
ることによってアークの広がりを抑制し、高輝度点光源
としての高い性能を有するものである。このランプは、
石英ガラス製放電容器中央の楕円球状の発光管内に一対
のタングステン電極が対向配置され、発光物質として実
質的に水銀、希ガス等が封入されている。発光管の両端
はタングステン電極と導通したモリブデン箔が配設さ
れ、放電容器である石英ガラス部と溶融溶着させること
で水銀蒸気圧の封止を行ない、ランプとしてこれまでに
ない高輝度化を達成している。
【0004】この高圧放電灯における点光源の高輝度化
という命題に対し、これまで数多く検討されてきた技術
課題がランプの最冷部温度とその上方制御である。この
課題の検討目的は、放電空間の最冷部温度が低い場合発
生する発光効率の低下や光束立ち上がりの低下に対する
品質改善である。
【0005】このことは高圧放電灯に共通の傾向であ
り、特に内部の金属蒸気圧が150気圧を超える高圧放
電灯の場合、その高い圧力状態を形成するため最冷部温
度を可能な限り高く維持しようと50〜100mm
さらに小さな放電空間を形成し、できる限り空隙部など
を有しない放電空間を形成してランプ最冷部温度を90
0℃近傍といった高温維持で構成するケースが非常に多
い。
【0006】しかしながら、この高圧放電灯の放電容器
は点光源としての直線透過率を高く維持し、大きな熱衝
撃にも耐えられるよう石英ガラス製とする場合が殆ど
で、石英ガラスを熱的に加工変形させて封止構造を構成
する製法においては、一定量の小さな放電空間を均質に
形成していくことは非常に難しい。
【0007】このことはすなわち、ばらつく容積の空間
に一定量の発光物質を封入することを意味し、容積に対
する発光物質量が少なければ輝度性能の低下を招き、多
過ぎれば破裂を招く結果となる。特に高圧放電灯では、
この傾向が著しい性能低下か、わずかな許容値オーバー
での破裂といった現象となって顕在化する。このことが
高圧放電灯製造の難しさの大きな要因となっている。
【0008】さらに点灯状態における高圧放電灯の内部
は、発光物質による高レベルの圧縮性熱流体として、ア
ークからエネルギー供給を受け前述の最冷部もしくは管
壁温度との熱落差で活発な対流を形成ている。したが
って、管壁負荷や最冷部温度が低いほど高圧放電灯の光
出力性能には変動が生じ易く、ここにも最冷部温度を高
く設定維持しなければならない理由が存在する一方で、
温度的、応力構成的にも限界値に近いところで設計しな
ければならなくなる。高圧放電灯がランプの始動から定
常状態に移るとき破裂が多いのは、発光物質による圧縮
性熱流体が未だ不安定で、かつランプ構成が熱歪みを吸
収しきれておらず、かつ温度的にも限界値に近い条件が
そろったことによるものであり、最冷部温度を高く維持
しなければならない高圧放電灯の抱える矛盾と課題解決
の難しさを端的に表している現象となっている。
【0009】また、不純物の作用によるランプの品質劣
化という点で高圧放電灯を見ると、まず放電空間を50
〜100mmといった小さな放電空間に構成すること
で、不純物の作用する力は指数的に上がってしまう。さ
らに高圧放電灯の場合は、高圧状態を形成するために最
冷部温度も高く維持されるため、不純物の活性度も温度
に比例して高い状態にあり、高圧放電灯の不純物に対す
る工程毎の製法が十分でないと、不純物作用によって黒
化や放電容器の失透を招き非常に短命な放電灯となって
しまう。ここにも最冷部温度を高く維持することに対す
る矛盾と高圧放電灯製造の難しさの一要因が存在する。
【0010】以上説明したように、高圧放電灯において
はその高圧状態維持のために最冷部温度を高く設定せざ
るを得ず、その結果、放電空間の製造ばらつきに対する
難易度や、ランプ構成の熱的・応力的な限界値に起因す
る破裂、さらに加速度的に上昇する不純物作用などの問
題が生じていることがわかる。
【0011】これらの問題は、最冷部の温度を低く設定
し、なおかつ放電空間内部を高圧状態に維持できる方法
が存在すれば課題解決できることが明らかであるにもか
かわらず、現段階においては低い最冷部温度で放電空間
内部の高圧状態を維持する手法が見つかっていない。こ
れが従来の高圧放電灯の有する大きな課題である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】そこで発明者らは、こ
の高圧放電灯の最冷部温度を高く維持しなければ放電空
間内部の高圧状態を形成できず、高いレベルのランプ性
能が維持できないという不文律と、この不文律がもたら
している一連の問題に対して疑問を持ち、種々の構造を
試行錯誤し、鋭意研究を積み重ねていくことに着手し
た。その結果、最冷部温度を非常に低く設定しても、放
電空間内部の高圧状態を形成できる放電灯構成が、ある
限られた放電空間条件の中で存在することを見出した。
【0013】本発明が解決しようとする課題は、従来の
高い最冷部温度で構成される高圧放電灯の有する製造難
易度・破裂・不純物作用などの一連の問題を一掃するこ
とである。したがって本発明の目的は、低い最冷部温度
を保有する高圧放電灯が限られた条件下で主要放電空間
内部の高圧状態を形成し、高いランプ性能を維持しうる
ことを示した上で、高圧放電灯製造の難易度を軽減せし
め、破裂を抑制し、不純物作用によるランプのブラッキ
ングや結晶化を効果的に抑制して長寿命・高信頼性の高
圧放電灯を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題に
基づきなされたもので、非導電性材料からなり一対の電
極が対向配置された放電容器内に0.10mg/mm3
上の水銀、希ガス、及びハロゲンを封入した高圧放電灯
において、前記放電容器には、対向配置された電極の少
なくとも一方の電極の周囲に空隙部を形成し、この空隙
部は、点灯時、主要放電空間に臨む高圧領域から電極固
定端方向に形成される低圧領域の方向に圧力分布が形成
され、前記低圧領域にて、放電空間の圧力変動を調整す
ることを特徴とする。
【0015】本発明の高圧放電灯を点灯状態にすると、
当該空隙部を含む放電容器内部でアーク温度から場合に
よっては液相水銀を含む温度範囲に制御された最冷部温
度までの非常に幅の広い温度分布を形成して安定し、点
灯状態に至る。従来の放電灯では、この最冷部の温度の
影響で、主要放電空間の内圧が上がらず、ランプ特性を
著しく低下させたのであるが、前記空隙部では、軸方向
の温度分布に従い水銀の蒸発温度を中心に、その平衡状
態が自然決定するとともに、水銀の蒸発温度以上の領域
においては、各定点箇所で高圧放電灯の温度分布として
は相対的に低温度分布の状態方程式(PV=nRT、
P:圧力、V:体積、n:モル数、R:気体定数、T:
絶対温度)に支配されながら圧力分布を形成する。その
上で、本発明の構成条件である絞り値S/Sが0.
002≦S/S≦0.03の条件を満たし、かつ当
該空隙部の長さをL(mm)、入力電力をW(w)としたと
き、0.016≦L/W≦0.20を満たせば、点灯
時、放電状態にある主要放電空間の温度低下はなく、常
時、主要放電空間は、高圧状態を維持できる。即ち、低
温度領域を有している一方で、主要放電空間での温度・
圧力低下を引き起こさないということが可能になるので
ある。このことは、従来の放電空間内の全体をできるだ
け温度差、圧力差を無くし、高温、高圧に維持すること
とは、大きくことなった構成となっている。
【0016】本発明は、非導電性材料からなる放電容器
と該放電容器内に対向配置された一対の電極と発光物質
として0.10mg/mm以上の水銀と、原子モル濃
度1.1×10-4〜2.0×10-2μmol/mm
のハロゲンとを封入し、0.5W/mm以上の管壁負
荷で、点灯時の主要放電空間内圧力が70気圧以上で構
成される高圧放電灯であって、前記電極周囲に空隙部を
配設し、当該空隙部は放電容器の軸方向放電空間の最大
断面積値をS(mm)、当該空隙部の一個当りの開
口面積をS(mm)としたとき、その絞り値S
が0.002≦S/S≦0.03の条件を満た
し、かつ当該空隙部の長さをL(mm)、入力電力をW
(w)としたとき、0.016≦L/W≦0.20の条件
下で空隙部長さを設定したことを特徴とする。
【0017】本発明の高圧放電灯を点灯状態にすると、
当該空隙部を含む放電容器内部でアーク温度から場合に
よっては液相水銀を含む温度範囲に制御された最冷部温
度までの非常に幅の広い温度分布を形成して安定し点灯
する。空隙内部は約900℃から前記水銀の状態平衡ラ
インを含む最冷部温度までの低温度分布を形成して安定
する。当該空隙部の構成条件が、0.002≦S/S
≦0.03、0.016≦L/W≦0.20の条件下
であれば、空隙部内部の発光物質は、軸方向の温度分布
に従い水銀の蒸発温度を中心に、その液相・気相の平衡
状態が自然決定するとともに、水銀の蒸発温度以上の領
域においては、各定点箇所で低温度分布の状態方程式で
支配されながら圧力分布を形成するため、空隙部末端部
は主要放電空間の光出力性能に影響を与えることなく低
温度化できることとなる。このため、水銀の蒸発温度以
下の最冷部温度を保有するランプであっても、主要放電
空間は高圧状態を維持し、高圧放電灯特有の高度に水銀
が励起された発光スペクトルを得ることができる。
【0018】このことは、まず従来技術で掲げた放電空
間のばらつきに対する製造の難易度を極端に軽減する。
すなわち、本発明に関わる低温部から高温部までの広い
温度域を有する高圧放電灯であれば、相対的に過剰な発
光物質が封入されてしまった場合であっても、空隙部内
部が水銀の蒸発温度を中心に、その液相・気相の平衡状
態が自然決定するとともに、水銀の蒸発温度以上の領域
においては、各定点箇所で低温度分布の状態方程式に従
って安定するので、不意急激な圧力上昇も、水銀の液相
転換と低温度分布の状態方程式で支配された低圧領域の
圧力吸収作用で効果的に吸収され、主要放電空間の圧力
上昇分はわずかなものとなり圧力調整機構として作用す
る。このため、放電空間がばらついた場合においても、
その破裂を効果的に防止することができる。
【0019】また、本発明の高圧放電灯の最冷部温度レ
ベルは従来の高圧放電灯と比較しても格段に低く設定す
ることができるが、発光物質の高レベル圧縮性熱流体の
安定性という意味では光出力性能に変動が生じやすいは
ずである。しかしながら、上記の構成条件であれば、空
隙部の最冷部温度が光出力変動へ及ぼす影響はほぼ否定
できるレベルに達する上、空隙部に形成された圧力調整
機構の効果で光出力はむしろ安定化する傾向にある。そ
の上で温度的・熱応力的に限界に近いところでランプを
構成しても、前述した圧力調整機構が不意な圧力変動を
効果的に吸収してしまうため、従来の高圧放電灯で発生
していたようなランプの始動から定常状態に移るケース
での破裂を効果的に抑制することができる。
【0020】また、点灯時の空隙部に液相水銀が存在し
うる構成の場合、空隙部内の圧力分布は、液相水銀に隣
接した低温度分布の状態方程式に準じて形成されるた
め、不意な圧力上昇や過剰な発光物質封入に対して、水
銀の液相転換と低圧領域の圧力吸収作用により、いっそ
う安定した圧力調整を行えるものである。
【0021】また、空隙部は二重円柱状の隙間として構
成され、その隙間厚みTは30≦T(μm)≦200と
することが望ましい。30μmより小さいと空隙部の体
積が小さくなり空隙部内で低温度分布の状態方程式の作
用がもたらす圧力調整機能が充分に発揮できず、また、
200μmより大きいと主要放電空間への低温度分布の
影響度が相対的に増大し、ランプ性能を単に低下させる
ことになる。
【0022】さらに、本発明における高圧放電灯の構成
条件であれば、ランプ消灯時は、空隙部内部への順次発
光物質の再凝固・回帰現象が起こり、点灯に直接寄与し
ていた発光物質の一部も空隙部内部に回収されることと
なる。この状態よりランプの再点灯を行うと、空隙部温
度分布は放電現象を起こしている電極先端の温度とその
熱伝導に牽引されながら温度分布を形成していく。空隙
部内部の圧力状態は、その時の温度分布に従って平衡状
態及び気相の状態方程式に準じた圧力状態を形成してい
くため、放電空間に発光物質が集中している場合に比べ
て圧力負荷は大きく軽減された状態でランプの熱的平衡
状態に移行していくことが可能である。これにより、ま
だランプ構成部品が熱歪みを吸収していない点灯初期状
態で大きな圧力負荷をかけることのない低負荷スタータ
が実現でき、点灯動作による破裂を効果的に抑制した高
圧放電灯を提供することができる。
【0023】前述したように本発明における高圧放電灯
の構成条件であれば、放電空間を50〜100mm
いった小さな空間に構成したとしても、発光状態として
は高圧のままで空隙部にて極端に温度の低い低温度帯を
保有することができる。このことは、これまでアークに
よって活性化されランプ放電空間内でさまざまな悪影響
を発生させていた不純物やランプの構成部品によって形
成される金属化合物を低温度帯に徐々に集積・トラップ
させることができることを意味する。具体的には水や酸
素、炭素、その他の異物質や、それらのランプの構成部
品元素との化合物であり、それらを最終的には低温度帯
にて捕らえることができ、小さな放電空間で高い圧力発
光状態を構成しても、不純物作用による黒化や放電容器
の失透を効果的に抑制することができる。
【0024】さらに、本発明における高圧放電灯におけ
る空隙部は、ランプ軸部に配設し、電極の熱伝導性によ
って点灯中の空隙部末端温度を制御したことを特徴とす
る。これにより、ランプ光出力性能を最大限阻害させず
に空隙部構造を付与できるばかりでなく、金属熱伝導の
安定性をそのまま空隙部温度の安定性として確保するこ
とができ、安定した圧力調整機構を構成することができ
る。
【0025】また、当該する空隙部の末端部を金属コイ
ルによって終端規定し、空隙部は閉塞体として別途構成
したことで、空隙部の長さは閉塞体に施される孔部深さ
と終端に挿入固定される金属コイルの長さによって正確
に構成できることとなり、前述した空隙部温度の安定性
を安定して量産提供することができる。
【0026】さらに、閉塞体として空隙部構造が付与さ
れた電極体を放電灯の製造工程にて、放電容器と溶接す
ることにより、モリブデン箔によるシュリンクシールと
は異なって、発光部である放電容器の膨出部(主要放電
空間)を殆ど変形させずに高圧放電灯の閉鎖系を構成す
ることが可能となる。これにより、石英ガラスを中心と
した加工方法のネックである加工後の放電空間体積のば
らつきを最大限抑制することができる。したがってばら
つきなく製造された放電空間に圧力調整機構を付与する
ことができることとなり、極めて均質な光出力性能を有
する高圧放電灯を提供することができる。
【0027】さらに、本発明の高圧放電灯に用いた閉塞
体にはSiO−Mo系の傾斜機能材料を用い、空隙部
構造が付与可能な閉塞体として焼成・燒結させている。
本発明に用いた傾斜機能材料は、主要放電空間に臨む一
端が非導電性、他方が導電性となっており、中間部は金
属含有率として材料特性が徐変した特殊材料である。こ
のため、理論上の封止構造を完全に維持して導電性部で
の電気導通がとれる構造となっている上、空隙部が配設
される中間層部には金属が徐変特性に従って所定量含ま
れる。このため、石英ガラス100%の加工と異なり孔
の加工後の精度が非常に高く構成でき、本発明に提示す
るような空隙部を付与するには好適で、精緻な空隙部構
造を安定して提供することができる。
【0028】また、精緻な空隙・閉塞体構造としての好
適な実施態様としては、タングステン電極が閉塞体に高
い中心精度で固定され、かつ閉塞体シールにより放電容
器をほとんど変形させずに封着するため、対向する電極
の偏芯は極力防止できることとなる。
【0029】本発明に関わる高圧放電灯においては、点
灯時、空隙部を構成する閉塞体孔部と、中心に配設され
たタングステン電極とは非接触で構成することにより、
放電灯点灯による高温化したタングステン電極心棒部の
熱によって、集積・トラップした不純物の再活性と反応
を確率的に回避・減少させることができる。
【0030】さらに本発明に関わる高圧放電灯において
は、最冷部温度が場合によっては液相水銀も存在しうる
ような温度範囲にて構成されるため、過剰なハロゲンを
投入してもハロゲンを空隙低温部に退避させることがで
きる。このため空隙部にはハロゲンバッファーの機能を
形成することが可能となり、主要放電空間内における遊
離ハロゲンの経時的低下を防止する機構として利用する
ことができる。主要放電空間内部の作用ハロゲンの経時
的低下に伴うタングステン輸送力の低下に対し、空隙部
に退避貯留されていたハロゲンが、それを補う可逆的動
作をすることとなり、性能の長期維持が可能となって長
寿命化されたランプを提供することができる。
【0031】さらに本発明に関わる高圧放電灯において
は、当該空隙部で制御された最冷部温度と空隙部を構成
する電極や傾斜機能材料からなる閉塞体の熱伝導性を用
い、ランプ消灯後の放電灯冷却速度を加速せしめたこと
を特徴とする。これにより、放電灯消灯直後の高い絶縁
破壊電圧は、そもそも低温度分布域である閉塞体空隙部
の金属熱伝導性によって急速に引き下げられる結果とな
り、従来の高圧放電灯に比してより早い再点灯が可能と
なり、優れた再点灯性を保有する高圧放電灯を供給する
ことができる。本効果は、傾斜機能材料からなる閉塞体
を利用した場合に特に、有効に作用する。
【0032】また、本発明に関わる高圧放電灯において
は、前記空隙部の周囲は意図的に1mm以下の薄肉部を
配設したことを特徴とする。この薄肉部は、同じく本発
明の圧力調整機構のメカニズムが空隙部内部の低温度分
布の状態方程式で支配されていることによって実現可能
となったもので、これにより、ランプが万一不意不所望
な圧力変動を発生させた場合であっても、ランプを破裂
させず薄肉部からのリークで点灯停止させる機構を形成
することができる。
【0033】さらに、本発明に関わる高圧放電灯におい
ては、薄肉部の周囲空間は外部接続線部までの間におい
て閉鎖系を構成し、光出力に対し実質的に寄与できない
放電灯軸部のみ二重閉鎖系を形成することにより、薄肉
部よりリークした発光物質は当該する閉鎖系内部におい
て再凝固・捕獲され、アークチューブより外部に一切発
光物質を排出することなく点灯停止でき、プロジェクタ
等周囲に人の存在が多い製品に用いる放電灯として好適
な環境品質を提供することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】以上、説明した本発明の構成・作
用をより一層明らかにするために、以下本発明の好適な
実施例について説明する。図1は本発明の高圧放電灯の
説明図である。図2は本発明の高圧放電灯における空隙
部の詳細構造を示した実施例である。図3は本発明の高
圧放電灯を用いた照明装置の説明図である。図4は本発
明の高圧放電灯における空隙絞り値の実験結果例であ
る。図5は本発明の高圧放電灯の圧力調整特性図であ
る。図6は本発明の高圧放電灯の始動・再点灯特性を示
す実験結果である。図7は本発明の高圧放電灯の寿命特
性図である。図8は本発明の高圧放電灯の不純物除去特
性を示すスペクトル特性図である。図9は従来の高圧放
電灯の説明図である。
【0035】先ず、従来の高圧放電灯構造について、説
明する。図9に示す従来の高圧放電灯では、放電容器1
1によって形成される放電空間12内に、一対のタング
ステン電極13が対向配置され、このタングステン電極
13はモリブデン箔14に溶接部15を介して連接・導
通を取る。モリブデン箔14はさらに外部リード線16
に連接されて放電灯全体としての電気的連接をなす。モ
リブデン箔14部は、外周に位置する放電容器の一部で
ある石英管を熱によって溶かして溶着され、放電容器1
1の膨出部17が放電空間12を形成することとなる。
放電空間12内にはランプの製造工程内で発光物質とし
て、水銀、希ガス、ハロゲンなどが封入され、外部から
の電力供給により放電現象を起こす。放電現象によって
生まれたアークは点灯時の熱を媒体としてさらに水銀の
蒸気圧を高め、点灯中の放電空間内部の圧力は100気
圧以上に達して安定化する。この放電空間内の圧力がさ
らにアークの広がりを押し縮め、水銀原子の励起発光も
単なる輝線スペクトルから連続スペクトルを形成するよ
うになり、ここに色バランスの取れた高い圧力発光の高
輝度点光源が発生することとなる。
【0036】このように従来の高圧放電灯は高い圧力状
態を形成して安定発光させるために、外径がφ10mm
程度の比較的小さな放電容器の形状で構成し、閉塞部で
あるタングステン電極芯棒18の周囲も様々な技法・技
術を駆使して封止しようとするケースが多い。これは、
発光時の最冷部温度をできる限り高く維持するための実
施様態ばかりでなく、モリブデン箔を放電による高熱か
ら守り、変性や剥離を回避させることも意図して行われ
る。しかしながら電極芯棒の周囲を正確に加熱封止して
いくことは困難で、結果的に幾ばくかの不均質な隙間を
生じてしまうケースもある。このやむを得ず生じてしま
った隙間は、最終封止部であるモリブデン箔の封止位置
をできる限り放電空間近傍に配設させたり、隙間部へ事
前に小径の二次コイルを配設して積極的に当該部の温度
上昇をはかり、最冷部温度の低下を制限規定しようとす
る傾向が一般的で、本発明の空隙コンセプトとは全く違
った実施態様となっている。
【0037】このように構成された高圧放電灯の性能の
バックグラウンドには、発光物質の逃げ場をなくして高
い圧力発光を達成しようとする考え方が存在する。この
発光構造であれば、自然すべての発光物質がアークの略
近傍に存在せざるを得ない構成となって、封入する発光
物質の量や形成される放電空間の容積ばらつきにより製
造の難易度が自然に上がり、点灯中の不安定発光に対し
ても少々のことで破裂をきたす結果となる。
【0038】次に、本発明の高圧放電灯について説明す
るが、従来例と同じ部位には、同じ符号を用いる。図1
は本発明の高圧放電灯の説明図である。まず、石英ガラ
ス製の放電容器11は球状や楕円球状をしており、その
内部にはタングステンからなる電極13が対向配置され
ている。また、放電容器内に形成される主要放電空間1
2内には、放電用ガスとしてアルゴンガスが所定圧力で
封入されていると共に、発光金属として、実質的に水
銀、及びハロゲンサイクルを廻して、容器内の黒化を防
止する目的のハロゲンが臭化水銀の形で封入されてい
る。なお、放電用ガスとしての不活性ガスとしては、ア
ルゴンのほかにヘリウム、クリプトン、キセノン、ラド
ンなどの不活性ガスを1つまたは複数選択封入してもよ
い。また、ハロゲンの形態としては、金属臭化物の他、
金属沃化物などの化合物や、臭化メチレンなどと不活性
ガスの混合ガスの形態で封入しても良い。尚、ハロゲン
量としては、原子モル濃度1.1×10-4〜2.0×
10-2μmol/mmのハロゲンが封入されていれば
良い。また、水銀量は、点灯時の水銀蒸気の圧力を高く
することにより、放射光について、可視光領域、特に、
赤色領域での連続スペクトルを増加させ、演色性を改善
するために0.10mg/mm以上とし、また、管壁
負荷についても、高い水銀蒸気圧を得るために放電容器
の壁面の温度を高くする必要があるので、0.5W/m
以上とすることが必要である。
【0039】ここで、放電容器11の両端には閉塞体2
1が配設されている。本閉塞体21の基体は、放電容器
と同等成分からモリブデンやタングステンなどの導通金
属へ機能傾斜した、いわゆる傾斜機能材料である。ここ
で使用する傾斜機能材料は、放電容器と同じ材質である
シリカと導電性金属のモリブデンを焼結したものであ
り、その混合比率を連続的もしくは段階的に変化させし
め、結果として主要放電空間12側を非導電性、他方を
導電性としたものである。この傾斜機能材料からなる閉
塞体21のシリカ側は、放電容器11に少なくとも2m
m以上全周にわたって溶着してシール部22が構成さ
れ、これにより発光物質は完全な閉鎖系の中に閉じ込め
られる。さらに本閉塞体21は、外部に臨む閉塞体21
の導電性金属比率の高い導電性部21にて外部接続線
16と電気的連接をなすが、この閉塞体21と外部接続
線16の間には、二重閉鎖用モリブデン箔23が存在
し、箔シール体と閉塞体21の外周と放電容器により囲
まれた閉鎖系Eを形成し、点灯動作のための電力が供給
され、放電ランプとしての基本構造を成している。尚、
閉塞体21の孔部21aには、電極18が端部を閉塞体
の導電性部21aに位置させ、コイル24により圧入固
定し、電気導通を図っている。
【0040】図2は、図1の空隙部の詳細構造を示した
実施例の説明図である。閉塞体21は本発明の空隙構造
の基をなす孔加工を施した傾斜機能材料を用いて構成さ
れる。当該する閉塞体21の孔部21aには、タングス
テン電極固定とともに空隙部の長さを規定し、空隙最冷
部の温度を正確に規定するための金属コイル24が挿入
され、空隙部25は二重円柱状の隙間の構成となる。こ
の隙間厚みT(孔部内半径から電極外半径を引いたも
の)は、30≦T(μm)≦200μmが望ましい。こ
の範囲の放電空間に対しては、ちらつきなどの要因にな
る主要放電空間での大きな圧力変動を及ぼすことがな
い。実施例における金属コイル2はタングステンを用
いているが、空隙最冷部の温度は前述の説明の通りかな
り低温に制御されているため、モリブデン、ニオブ、タ
ンタルなど他の高融点金属を用いることも可能である。
【0041】なお、本発明の高圧放電灯における空隙部
25は閉塞体21として放電容器に溶着封止されるが、
このとき形成したシール部22以外の空隙部25は、閉
塞体21で構成した薄肉部26となる。本発明における
高圧放電灯におけるこの薄肉部26の厚みは1mm以下
で制御されている。薄肉部の厚みを1mm以下としたの
は、発明者らが種々に試行錯誤を繰り返した結果1mm
以下であれば、ランプの不意不所望な圧力変動に対し、
破裂でなく当該薄肉部からのリークで点灯停止させるこ
とができることを見出したことによるものである。即
ち、主要放電空間で破裂を引き起こす圧力変動が有った
場合、その圧力変動は、空隙部で形成されている低温度
分布の状態方程式によって形成された低圧領域による緩
和作用によって吸収される。さらに、液相水銀を含む場
合においては、蒸発水銀の液相転換による圧力緩和作用
も加わって大きな圧力調整効果が得られる。なお、液相
水銀が存在するランプ構成における空隙末端部の温度
は、水銀の蒸発温度より80K下方の温度とすることが
望ましい。この数値よりも低い空隙末端部の温度の場
合、必要以上の水銀を封入しなければならず、放電灯構
成としては望ましくない。高圧放電灯に発生する圧力変
動が、前述の調整作用でも緩和できなくなると、前記薄
肉部が、破壊の起点となり、リークを起こし、主要放電
空間領域からの破裂を防止できるものである。この薄肉
部からリークした発光物質は、二重閉鎖用モリブデン箔
23によって構成された閉鎖系Eの中で再凝固し、発光
物質を一切人間の周囲環境に排出することはなく、プロ
ジェクタ等周囲に人の存在が多い製品に用いる放電灯と
して好適な環境品質を提供することができる。
【0042】図3は、上記構成の高圧放電灯を反射面3
1aが放物面もしくは楕円、あるいはそれらを構成して
なる反射鏡31に搭載した照明装置30を示すもので、
ランプアーク軸と反射鏡光軸とを併せて口金32にセラ
ミックス系接着材33を使って一体化させている。以下
に説明する評価は、この反射鏡を備えた構造にて行って
いる。
【0043】図4は、本発明の高圧放電灯における空隙
絞り値の実験結果例である。引用した特性図は150W
−ACタイプの高圧放電灯での空隙絞り値S/S
空隙長さ比L/Wを条件変更しながら水銀量の変化に対
する調整力が存在するかどうかを試験したものである。
代表的な構成として、例えば、電極としては、φ0.5
のタングステン芯線先端部にタングステンコイルを固定
し、その電極を、傾斜機能材料からなる外径φ2.0の
閉塞体に固定している。なお、傾斜機能材料からなる閉
塞体には、深さ18mm、内径φ0.62の孔が配設さ
れ、末端部にφ60μm、7mmの金属コイルを用い
て、タングステン電極が固定されている。このように構
成された閉塞体は、放電容器(主要放電空間内径φ4.
5mm)に溶着固定され、ギャップ長1.5mmに設定
した管壁負荷2.5W/mmの放電灯とした。尚、放
電灯内には、アルゴン200torr、水銀38mg、
臭化水銀0.1mgの発光物質を封入している。この放
電灯の空隙絞り値は、0.007、空隙長さ比は、0.
07であり、有効な圧力調整力を持っていた。空隙絞り
値S/Sは、閉塞体の孔内径を振ったものを用いた
り、放電容器内径を振ったものを用いた。また、空隙部
長さは、金属コイルの長さを調整することにより調整し
た。図より空隙絞り値S/Sが0.002未満の場
合ではどのように空隙長さを変えても発光物質に対する
圧力的調整力は得ることができない。これは放電空間の
水銀濃度に比べて、空隙の開口面積が小さすぎるために
発生しているものである。また、空隙絞り値S/S
が0.03より大きい場合、空隙長さ比L/Wが大きく
なるにつれ、調整力のないゾーンから性能の低下を発生
させるゾーンへと移行して好適な条件が得られない。こ
れは、空隙開口面積が主要放電容器の最大断面積S
対して大きすぎ、低温度帯の影響によって主要放電空間
の圧力状態が低下したためである。また、空隙長さ比が
0.25を超える場合、点灯時の圧力分布系に必要以上
の液体水銀が含まれてしまうため放電灯の仕様としては
望ましくない。空隙絞り値が0.002≦S/S
0.03、空隙長さ比が0.016≦L/W≦0.20
の条件下であれば、主要放電空間の高圧状態を維持した
まま有効な圧力調整機能を享受することができ、放電空
間のばらつきや不意な圧力上昇に対しても効果的に破裂
を抑制することが可能である。また、空隙長さ比L/W
を同じ構成の放電灯において、Lを固定し、入力電力を
調整することをした場合でも、上記条件下であれば、良
好なランプ性能を確保できる。評価では、100〜18
0Wの範囲、即ち、空隙長さ比0.06〜0.11で実
施したが、輝度性能は線型変化を示し、良好な結果が得
られた。このことは、1つのランプにおける入力電力の
増減による調光が、従来、定格電力の±10%と言われ
たものを越える調光性能をもたらす放電灯を提供できる
ことを意味する。
【0044】図5は、本発明の高圧放電灯の圧力調整特
性を示した特性図である。これは、放電空間のばらつき
を軽微同等なものとしてとらまえ、異なる空隙長さ比を
有する2種類の高圧放電灯が、どこまで発光物質の圧力
調整・吸収ができるかを試験したものである。発光物質
として、水銀の量を主要放電空間の容積当りの水銀量濃
度比として、その比を大きくしながら評価した。なお、
圧力調整できたかどうかの判断基準は、破裂のないこと
はもちろん、発光スペクトルとして同等で一定の光学出
力性能を有することを条件としている。図より明らかに
空隙長さ比の小さな放電灯の方が、圧力調整の幅も、発
光物質の封入量自身も小さい結果となっている。これは
空隙長さ比の小さなランプは空隙内で形成される低温度
分布の下限が高いために起こる事象である。しかしなが
ら、ランプのスペクトルとしては、空隙長さ比を変えて
も発光物質封入量を変化させても同等で、結果スクリー
ン照度性能であるANSILMも性能比1.0〜1.1
までのゾーンに入っている。これらのことから、本発明
の高圧放電灯は放電空間容積のばらつきを吸収するだけ
でなく、さらに過剰な発光物質封入がなされた場合であ
ってもその圧力調整特性が有効に作用しており、非常に
有効な破裂抑制手段であることがわかる。図中の破線
は、従来のモリブデン箔を用いて空隙部を持たない高圧
放電灯の水銀量特性を示し、圧力調整特性が殆ど得られ
ない構成であることが判る。また、空隙部の長さで評価
すると3mmより小さい空隙部は、従来の放電灯に近
い、調整範囲を殆どもたないものとなる。また、空隙長
さ比0.06の高圧放電灯における水銀量特性は、水銀
量濃度比分布の値も高く、かつその分布域の長さも長
い。これは、本発明の空隙構造における低温度分布の状
態方程式に支配された低圧分布の調整効果に加え、その
末端部に液相水銀が存在していることを間接的に示唆す
るもので、水銀蒸気の液相転換によってさらに大きな調
整効果が得られる結果となっている。
【0045】図6は、本発明の高圧放電灯の始動・再点
灯特性を示した特性図である。電力は150W、ギャッ
プ長1.3mm、空隙絞り値0.007で、空隙長さ比
L/Wだけが0.02、0.07と異なる2種類の高圧
放電灯の始動特性を比較試験したものである。ランプの
光束立上がり特性は、点灯させるバラストの立上がり制
限電流値によっても大きく異なるが、小さな制限電流設
定で立ち上げる場合と異なり、ランプの立上がりは初期
の20秒程度までほぼ同等で推移し、徐々にランプ電圧
が安定へ向かう速度に差がつく傾向となっている。98
%の立上がりまでに必要とする時間は5秒差がつく結果
となった一方で、初期破裂の確率は、従来の放電灯で
は、50%程度あったものが、空隙長さ比0.02で2
7%、空隙長さ比0.07で0%と低負荷始動の良好な
特性が得られる。また、消灯後のランプの再点灯性につ
いても、空隙長さ比を0.07と大きく取り最冷部温度
もランプの自然冷却能力自体も高めた高圧放電灯は、比
して消灯後の冷却速度がはるかに速く、絶縁破壊電圧が
点灯有効値に達するまでの時間が24秒と、空隙長さ比
0.02のものと比べて46.7%短縮され、良好な再
点灯性を提供できることとなった。冷却速度の向上に
は、空隙部とともに良熱伝導性の金属コイルを配置した
電極、傾斜機能材料よりなる閉塞体が有効に機能してい
る。従って、上記した低負荷スタータ機構を付与するに
は、空隙絞り比0.005以上、空隙長さ比0.02以
上が特に望ましい。
【0046】図7は、本発明の高圧放電灯における寿命
特性を示している。点灯電力は150W、ギャップ長
1.5mm、絞り値0.007の高圧放電灯において、
空隙長さ比を0.015から0.15まで4段階に変え
てその特性を見ている。図より空隙長さ比0.015の
ランプは点灯初期より黒化が促進する傾向にあり、10
00時間から2000時間までの間でクリストバライト
を急成長させてランプ寿命を終えている。一方で、空隙
長さ比が0.07を超えるとランプに黒化の傾向がなく
なり、また、失透の発生時間も相対的に遅れる傾向を持
つ。これらのことは、空隙長さ比を本発明に記載する条
件にて設定し低い最冷部温度を保有させることで、不純
物や黒化要因である電極金属化合物などの捕獲・回収の
効果を示唆している。また、空隙長さ比を0.15に設
定した高圧放電灯においては、空隙長さ比0.07で構
成した高圧放電灯よりもその寿命特性が改善傾向にあ
り、封入したハロゲンのバッファー効果を示唆してい
る。従って、本発明の構成条件よる高圧放電灯は、長寿
命に好適な高圧放電灯を提供することができ、上記した
ハロゲンバッファーの機構を付与するには、空隙絞り比
0.002以上、空隙長さ比0.06以上が、特に望ま
しい。
【0047】図8は、本発明の高圧放電灯の不純物除去
特性を示したスペクトル特性図である。発光時の金属蒸
気圧は約170気圧であり、持ち込んだ不純物はタング
ステン電極を用いてのカリウム、ナトリウム、リチウム
水分等であり、初期点灯時のスペクトルとしては特に5
80nm、670nm近傍で確認できる。図7より12
時間点灯後の発光スペクトルからはこれら一連の不純物
発光のスペクトルは確実に低減されており、良好な不純
物の除去特性を得ることができる。なお、空隙長さ比
0.015の短い高圧放電灯へ不純物を持ち込んだケー
スにおいてはその多くが白濁失透を発生させることから
も、本発明の高圧放電灯の良好な不純物除去特性が充分
に提供可能であることがわかる。従って、上記した不純
物の温度ゲッター機構を付与するには、空隙絞り比0.
005以上空隙長さ比0.06以上が、特に望ましい。
【0048】尚、上記例では、対向する2つの電極の周
囲に空隙部を設けたが、空隙部は、少なくとも1つあれ
ば、同様な作用効果を呈する。また、本発明の構成要件
に従った空隙構造を用いた圧力調整機構は、放電灯の点
灯方向によらず同様の作用効果を得られる。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の高圧放電
灯は、放電空間に空隙を用いた低温度分布領域を構成す
ることで放電空間内部に低圧力領域を構成した。これに
より放電灯の最冷部温度が低くても放電空間内部の高圧
状態が維持でき、従来の高圧放電灯に特に顕著な課題で
ある破裂を効果的に防止することのできる高い信頼性を
有するに好適な高圧放電灯を提供できることとなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高圧放電灯の説明図
【図2】本発明の高圧放電灯における空隙部の詳細構造
を示した実施例
【図3】本発明の高圧放電灯を用いた照明装置の説明図
【図4】本発明の高圧放電灯における空隙絞り値の実験
結果例
【図5】本発明の高圧放電灯の圧力調整特性を示した特
性図
【図6】本発明の高圧放電灯の始動・再点灯特性を示す
実験結果
【図7】本発明の高圧放電灯の寿命特性
【図8】本発明の高圧放電灯の不純物除去特性を示した
スペクトル特性図
【図9】従来の高圧放電灯の説明図
【符号の説明】
11…放電容器、 12…主要放電空間、 13…タン
グステン電極、 14…モリブデン箔、 15…溶接
部、 16…外部リード線、 17…放電容器の膨出
部、 18…タングステン電極芯棒部、 21…閉塞
体、 22…シール部、 23…二重閉鎖用モリブデン
箔、 24…金属コイル、 25…空隙部、26…薄肉
部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H05H 1/32 H05H 1/32 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 61/88 F21V 7/06 F21V 7/08 H01J 61/12 H01J 61/36 H05H 1/32

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非導電性材料からなる放電容器と該放電
    容器内に対向配置された一対の電極と発光物質として
    0.10mg/mm以上の水銀と、原子モル濃度1.
    1×10−4〜2.0×10−2μmol/mmのハ
    ロゲンとを封入し、0.5W/mm以上の管壁負荷
    で、点灯時の主要放電空間内圧力が70気圧以上で構成
    される高圧放電灯であって、前記電極周囲に空隙部を配
    設し、当該空隙部は放電容器の軸方向放電空間の最大断
    面積値をS(mm)、当該空隙部の開口面積をS
    (mm)としたとき、その絞り値S/Sが0.0
    02≦S/S≦0.03の条件を満たし、かつ当該
    空隙部の長さをL(mm)、入力電力をW(w)とした
    とき、0.016≦L/W≦0.20の条件下で空隙部
    長さを設定したことを特徴とする高圧放電灯。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の高圧放電灯であって、
    前記点灯時の空隙内部に液相水銀が存在していることを
    特徴とする高圧放電灯。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の高圧放電
    灯であって、前記空隙部は二重円柱状の隙間として構成
    され、その隙間厚みTは30≦T(μm)≦200であ
    ることを特徴とする高圧放電灯。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至の何れか1項に記載の高
    圧放電灯であって、ランプ始動時の発光物質を空隙部に
    退避させ低負荷スタータ機構を形成したことを特徴とす
    る高圧放電灯。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至の何れか1項に記載の高
    圧放電灯であって、ランプに封入されるハロゲンを空隙
    部に退避させハロゲンバッファーの機構を形成したこと
    を特徴とする高圧放電灯。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至の何れか1項に記載の高
    圧放電灯であって、前記空隙部はランプ軸部に配設し、
    電極の熱伝導性によって点灯中の空隙部末端温度を制御
    したことを特徴とする高圧放電灯。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至の何れか1項に記載の高
    圧放電灯であって、前記空隙部の末端部には金属コイル
    が固定されていることを特徴とする高圧放電灯。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至の何れか1項に記載の高
    圧放電灯であって、前記空隙部は放電容器と封着される
    閉塞体に形成したことを特徴とする高圧放電灯。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の高圧放電灯であって、
    前記閉塞体は傾斜機能材料であることを特徴とする高圧
    放電灯。
  10. 【請求項10】 請求項1乃至9の何れか1項に記載の
    高圧放電灯であって、前記空隙部で制御された最冷部温
    度と空隙部を構成する電極及び/又は傾斜機能材料より
    なる閉塞体の熱伝導性を用い、ランプ消灯後の放電灯冷
    却速度を加速せしめたことを特徴とする高圧放電灯。
  11. 【請求項11】 請求項1乃至10の何れか1項に記載
    の高圧放電灯であって、前記空隙部の末端低温度域にお
    いて、不純物の温度ゲッター機構を形成したことを特徴
    とする高圧放電灯。
  12. 【請求項12】 請求項又は請求項9に記載の高圧放
    電灯であって、前記空隙部の周囲に1mm以下の薄肉部
    を形成したことを特徴とする高圧放電灯。
  13. 【請求項13】 請求項12に記載の高圧放電灯であっ
    て、当該薄肉部の周囲空間は外部接続線までの間におい
    て閉鎖系を構成したことを特徴とする高圧放電灯。
  14. 【請求項14】 反射面が放物面もしくは楕円、あるい
    はそれらを構成してなる反射鏡と、請求項1乃至1
    何れか1項に記載の高圧放電灯とが、ランプアーク軸と
    反射鏡光軸を併せて一体化されていることを特徴とする
    照明装置。
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