JP3387123B2 - 透明導電膜の製造方法 - Google Patents

透明導電膜の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は透明導電膜の製造方法に
関する。詳しくは熱分解法により形成された酸化錫薄膜
を、非質晶Si太陽電池用の基板として利用するため
に、表面改質した透明導電膜の製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】酸化錫膜は、透明導電性を有する材料の
一つであり、その化学的耐久性の高さとあいまって広い
分野で応用されている。その中でも特に低コスト太陽電
池として広く期待されている、非晶質シリコン等を用い
た薄膜型太陽電池では、その光入射側の透明電極として
使われている。 【0003】非晶質Si太陽電池では透明電極の上にプ
ラズマCVD法等で活性非晶質Si層を形成するのであ
るが、この際CVDの強い還元性雰囲気で透明電極材料
が劣化することが長い間、問題視されてきた。酸化イン
ジウム錫は初期電気的特性は優れているものの、還元さ
れた金属インジウムが活性層へ拡散し、その電気特性に
悪影響を与えるため、この種の材料としてはもっぱら酸
化錫薄膜あるいはフッ素やアンチモンをドープした酸化
錫薄膜が用いられてきた。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記薄
膜型太陽電池用の基板として酸化錫薄膜を用いた場合で
も、拡散による悪影響こそ目立たないものの、還元劣化
は起こり、酸化亜鉛等のより還元劣化されにくい薄膜を
形成し、解決を図る方法(特開昭63-8413)や、酸化錫
の特定の結晶配向性を持たせることで還元劣化性を低減
する方法(特開平2-231773)等が提案された。 【0005】しかし、酸化亜鉛等の薄膜により保護する
方法では、制御性・製造コストの点で問題がある。ま
た、特定の結晶配向性を持たせるためには製造条件の厳
格な管理が必要となり、生産性・再現性等の問題が考え
られる。 【0006】すなわち、低コストで酸化錫薄膜の表面の
還元劣化性を低減する方法が切に求められていた。近年
Sn02膜表面をH2プラズマ処理して、SnOHとSn
を含んだ酸化層を形成することにより、水素プラズマ耐
性を改善する試みが報告された(Technical Digest of
International Conference on PVSEC-5(Kyoto)p.367
(1990))。しかし、条件によっては、たやすく劣化し
てしまうH2プラズマの中で、改善をするのは極めて厳
密な制御が必要なことは、容易に想像できる。再現性の
よい工程によりSn−OH層を作り出す技術が求められ
ていた。 【0007】本発明は前述のごとき従来の透明導電膜が
抱えていた問題点を解決し、還元劣化性を向上した透明
導電膜の製造方法を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、基板上
に熱分解法によりSnO2を主成分とする透明導電性薄
膜を形成後、室温以上の温度に保持し、水蒸気を含む雰
囲気中で処理することを特徴とする透明導電膜の製造方
法である。 【0009】本発明は、形成された酸化錫薄膜表面を水
蒸気雰囲気に暴露することにより表面にSn−OH層を
形成し、還元劣化性を向上させるものである。元来、酸
化錫の如き金属酸化物ではその表面にOH基が存在する
と言われているが、上記水蒸気処理によりOH基濃度が
増加し、耐還元劣化性が向上するものと思われる。この
OH基濃度は軟X線光電子分光法(XPS)により確か
めることができる。すなわち、図2に示すように、酸素
1s軌道から軟X線によって励起された電子の運動エネ
ルギーは、O−Sn結合とO−H結合で異なり、通常の
O−Snのピークの高エネルギー側にO−H結合の信号
が重なってピークが非対称になる。水蒸気処理の効果は
処理温度の上昇とともに顕著となるが、還元劣化性に対
する効果を発揮するには、400℃程度の処理温度が望
ましい。処理工程中にNaの汚染があると、水蒸気処理
の純粋な効果を把握しにくいので、配管系統はNaフリ
ーの材料を用いたが、現実にはNa汚染による効果も含
めOH基増加が高いほうが望ましい。 【0010】SnO2基板の還元劣化性も、H2プラズマ
処理後のXPSにより確認できる。この場合、Snの3
5/2軌道からの信号はSn−O結合からの主成分と、
還元されたことによるSn−Sn結合からの成分(以
下、Sn(red)と呼ぶ)が重畳される。この2つの成
分比からSnO2の還元の程度が明らかとなる。後述の
実施例に明らかなように予めH2O処理された基板では
Sn(red)の成分比が少ない。 【0011】SnO2薄膜をガラス上に得る方法は、真
空蒸着法、スパッタ法等の真空法もあるが、熱分解法が
生産性に優れ、特性も良く好ましい。具体的には、加熱
したガラスに錫化合物蒸気を接触させるCVD法、同じ
く錫化合物を溶媒に溶解混合し加熱したガラスに微小液
滴として接触させる液スプレー法、ミストデポジション
法、また粉末スプレー法等がある。また、電気的特性を
向上させるために通常SnO2薄膜中にフッ素、アンチ
モンを添加することが好んで行われる。 【0012】 【実施例】以下に、本発明を図面を参照して詳細に説明
する。 【0013】図1は、本発明の実施例に用いた水蒸気処
理装置の概略を示す。図2は、水蒸気処理したSnO2
基板および未処理のSnO2基板につき、XPS分析に
おける酸素1sのピーク波形を示す。図3は、水蒸気処
理したSnO2基板および未処理のSnO2基板につき、
水素プラズマ処理を施した後の、XPS分析における錫
3d5/2のピーク波形を示す。図4は、水素プラズマ処
理の暴露時間と、錫3d5/2における還元Sn信号強度
割合との関係を図示したものである。 【0014】ガラス基板としてコーニング社の無アルカ
リガラス(7059)を用意した。これをよく洗浄した後、
550℃に加熱し、モノブチル錫トリクロリドおよび1,
1-ジフルオロエタンの原料を用いて、熱CVD法により
フッ素ドープ酸化錫薄膜を形成した。得られた薄膜の比
抵抗値は4.8×10-4Ωcmであった。 【0015】これを8mm□に切り出し、空気中400
℃、90分間水蒸気処理を行った。図1に、用いた水蒸
気処理装置の概略を示した。蒸発器および配管系、処理
部はすべて(Naを含まない)石英製とした。 【0016】次に水蒸気処理を施した基板、および未処
理の基板を用いて表面状態をXPSにより比較した。図
2では酸素1sピークを示すが、水蒸気処理を施したサ
ンプルではピークの非対称性がより著しく、高結合エネ
ルギー側にO−Hに帰属されると思われる信号が含まれ
ていると考えられる。 【0017】次にこの2種類のサンプルに対し、水素プ
ラズマ処理を以下の条件で行った。 【0018】基板温度 200℃ 高周波電力密度 90mW/cm2 処理圧力 0.15Torr H2 流量 25sccm 暴露時間 1,5,10分 各暴露時間に対応する試料におけるXPS分析を行っ
た。図3に錫3d5/2のピーク信号波形を、また図4に
全信号Sn(total)の強度に対する還元されたSnか
らの信号Sn(red)比、Sn(red)/Sn(total)
をそれぞれ暴露時間の関数として示した。水蒸気処理を
行うことにより、Sn(red)が著しく減少しているこ
とからSnの還元が抑制されていることが示される。水
蒸気処理をしたSnO2膜表面は酸素リッチとなってお
り、水素プラズマへの暴露時間に伴い酸素が著しく離脱
する。 【0019】 【発明の効果】以上詳述したとおり、酸化錫薄膜に室温
以上の温度で水蒸気処理を行うことにより、酸化錫薄膜
表面にSn−OH結合を増加させることができ、もって
水素プラズマ還元劣化を防止することが可能となった。 【0020】この発明により、従来透明電極上に非晶質
Si太陽電池を作製する際の、透明電極の還元劣化が防
止でき、光電変換効率を高めることが可能となった。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施例に用いた水蒸気処理装置の概略
を示す。 【図2】水蒸気処理したSnO2基板および未処理のS
nO2基板につき、XPS分析における酸素1sのピー
ク波形を示す。 【図3】水蒸気処理したSnO2基板および未処理のS
nO2基板につき、水素プラズマ処理を施した後の、X
PS分析における錫3d5/2のピーク波形を示す。 【図4】水素プラズマ処理の暴露時間と、錫3d5/2
おける還元Sn信号強度割合との関係を図示したもので
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 沖 有一朗 広島県二十日市市駅前8−9 (56)参考文献 特開 平2−167841(JP,A) 特開 昭63−242947(JP,A) 特開 昭63−164117(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C03C 15/00 - 23/00 B32B 1/00 - 35/00

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 基板上に熱分解法によりSnO2を主成
    分とする透明導電性薄膜を形成後、室温以上の温度に保
    持し、水蒸気を含む雰囲気中で処理することを特徴とす
    る透明導電膜の製造方法。
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CN117985948A (zh) * 2024-02-02 2024-05-07 湖南旗滨光能科技有限公司 一种tco导电玻璃及其制备方法以及应用

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