JP3385937B2 - ポリエーテルイミド除湿膜 - Google Patents

ポリエーテルイミド除湿膜

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリエーテルイミ
ド除湿膜に関する。更に詳しくは、毛管凝縮作用による
と考えられるポリエーテルイミド除湿膜に関する。
【0002】
【従来の技術】圧縮空気は、各種産業分野で使用されて
おり、その用途は多岐にわたっている。その一方で、空
圧機器は多用するニーズに応えるため、より精密化され
るようになってきており、このような背景の下にあっ
て、圧縮空気中の特定成分、殊に水分は機器の故障をひ
き起す大きな原因ともなっている。また、半導体分野等
では、使用される空気の清澄さが製品歩留りに大きく関
与していることも事実である。
【0003】現在、圧縮空気中の除湿には、主に冷凍式
のものが用いられているが、脱フロンとの観点から、近
年は膜を用いたドライヤーが上市されるようになってき
ている。実際に市販されている除湿膜には、フッ素系、
イミド系およびウレタン系の中空糸膜があるが、これら
の中空糸膜中フッ素系およびウレタン系のものは、圧縮
空気中にかなりの量で含まれている油分に対する耐性が
なく、長期にわたる使用で膜性能が劣化してくるという
問題がみられる。
【0004】また、中空糸膜の除湿性能という点からみ
ると、フッ素系膜はイオン中和法、またイミド系膜およ
びウレタン系膜は溶解・拡散法を採用しており、後者の
方法による除湿法は水蒸気と空気との分離係数は大きい
ものの、水蒸気透過係数が小さいため膜面積を多く必要
とし、モジュールの大型化が避けられないという欠点を
有している。
【0005】こうした問題点を解決することを目的と
し、特に耐油性という観点から中空糸膜素材をイミド系
としたものについて更に検討するに、ポリイミド樹脂は
元来溶媒等に不溶性のため、それから直接製膜すること
は困難であり、そこでポリイミドの前駆体であるポリア
ミック酸を溶媒中で合成し、キャストとして溶媒を除去
して製膜した後、約200〜300℃程度に加熱してイミド化
する方法が一般にとられている。しかしながら、このよ
うな製膜方法によったのでは、分離性能を制御し得る中
空糸膜を製造することは容易ではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、有機
溶媒可溶性のイミド系素材から乾湿式法によって製膜さ
れた中空糸膜であって、除湿膜として有効に使用し得る
ものを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる本発明の目的は、
ポリエーテルイミドを18〜30重量%の割合で溶解させた
紡糸原液から乾湿式紡糸された中空糸膜よりなるポリエ
ーテルイミド除湿膜によって達成される。かかる中空糸
膜は、その内表面側がポリビニルピロリドンによって被
覆され、あるいはそこに保湿剤を含浸させて用いること
が好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】ポリエーテルイミドとしては、次
の一般式で表されるくり返し単位 を有するものが用いられ、実際には市販品、例えば次の
一般式で表されるくり返し単位 を有するゼネラル・エレクトリック社製品ULTEM1000な
どをそのまま用いることができる。
【0009】ポリエーテルイミドやポリアミドイミド
は、イミド系の素材でありながらそれら自体が溶媒に溶
解する性質を有しているため、乾湿式法による中空糸膜
の製膜が容易であり、しかも耐薬品性の点ですぐれてい
る。
【0010】かかるポリエーテルイミドやポリアミドイ
ミド単独から製膜された中空糸膜をモジュール化し、除
湿膜として使用した場合、モジュールの入口側から送り
込ました水蒸気飽和空気(湿度18%RH、圧力0.4MPa)の1次
側空気出口(モジュール出口)における湿度は、ポリエー
テルイミドが1〜3%RHであるのに対し、ポリアミドイミ
ドは数%RHの水準にあり、除湿膜として十分なる性能を
有するものとはいい難い。
【0011】従って、ポリエーテルイミドから製膜され
た中空糸膜が除湿膜として用いられるが、これらの中空
糸膜をモジュール化し、モジュールの入口から送り込ん
だ水蒸気含有空気を中空糸膜で除湿し、1次側空気出口
(モジュール出口)で乾燥空気として取得する際、除湿さ
れた水蒸気は中空糸膜を透過し、モジュール胴部の2次
側から排出される。実際には、2次側へ水蒸気が滞留し
てくると、1次側との水蒸気の分圧差(除湿の駆動力)が
なくなってくるため、得られた乾燥空気の一部を2次側
へ流すことにより、恒常的な除湿を図っている。
【0012】実際には、このような操作が行われている
が、このような乾燥空気の一部還元を行わずに、純粋に
流量計によってモジュール2次側への空気透過量のみを
測定すると、ポリエーテルイミドから製膜された中空糸
膜にあっては、その値がかなり大きなものとなり、この
ことはそれだけ1次側で取得される乾燥空気量が少なく
なり、歩留りが悪いことになる。
【0013】従って、同程度の除湿性能であれば、モジ
ュール2次側への空気透過量が少ない方が望ましく、こ
のため中空糸膜の内表面側をポリビニルピロリドンで被
覆する方法あるいは中空糸膜に保湿剤を含浸せしめる方
法がとられ、これらの方法をとることによって、モジュ
ール2次側への空気透過量を大幅に減少せしめることが
できる。
【0014】ポリエーテルイミドは、それの良溶媒であ
るジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエ
チルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、N-メチル-2
-ピロリドン、モルホリン、ジオキサン、ジクロロメタ
ン等の有機溶媒、好ましくは非プロトン性極性溶媒中
に、その溶液濃度が約18〜30重量%、好ましくは約20〜2
5重量%を占めるような割合で溶解させて用いられる。こ
の製膜原液(ドープ液)の濃度をこれ以上に高めると、モ
ジュール2次側空気透過量は0に近付くものの、1次側出
口における空気湿度が高くなり、一方これ以下の濃度で
は、1次側出口における空気湿度が高くなるばかりでは
なく、モジュール2次側空気透過量も著しく高くなる。
【0015】ポリエーテルイミドから製膜された中空糸
膜は、好ましくは次のような処理がなされた上で除湿膜
として用いられる。 (1)その内表面側へのポリビニルピロリドンの被覆:この
被覆は、ポリビニルピロリドン水溶液を乾湿式紡糸時に
芯液として用いることによって行われる。ポリビニルピ
ロリドンとしては、その分子量が約10,000〜1,200,00
0、好ましくは約10,000〜50,000のものが、約1〜15重量
%、好ましくは約3〜10重量%の水溶液として芯液に用い
られる。
【0016】ポリビニルピロリドンは、親水性の高分子
であって水との親和性が高く、吸湿力も高いため、膜表
面のコーティング剤として最適であり、しかもこのもの
はフィルム形成性にすぐれているため、膜の内表面を均
一に被覆することが容易である。
【0017】このようなポリビニルピロリドンを中空糸
膜の内表面側に被覆することにより、膜内面への水の吸
着性が向上し、内部の膜細孔において毛管凝縮を呈し易
くなると共に、より大きい細孔においてはマスク的作用
により、膜のバリア性が向上するものと思われる。な
お、ポリビニルピロリドンの被覆は、中空糸膜の製膜後
あるいはモジュール化後に行うこともできる。
【0018】(2)保湿剤の含浸:保湿剤としては、グリセ
リン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の
多価アルコールが用いられ、それの含浸は濃度約5〜50
重量%、好ましくは約10〜30重量%の保湿剤水溶液中に、
製膜中または製膜後の中空糸膜を浸漬することによって
行われる。保湿剤の含浸によって、水蒸気透過における
膜のバリア性の向上、膜への柔軟性付与による耐折性、
換言すればくり返し耐圧性の向上、中空糸膜束製造の際
における乾燥時の固着防止などが図られる。
【0019】毛管凝縮作用を利用した分離膜では、細孔
の均一性が求められるものの、必ずしもそのような膜が
得られる訳ではない。そこで、水との親和性が高く、水
蒸気を吸着し易い保湿剤を膜に含浸させることにより、
膜への水蒸気取込み性を損なわずに、より孔径の大きな
孔部のマスキングを行うことができる。また、その部位
においては、液膜的な作用も呈し、水蒸気透過に寄与し
ているものと考えられる。
【0020】これらの方法で処理された中空糸膜は、こ
れを束ねてモジュール化し、その中空糸膜内に湿潤圧縮
空気等を膜の1次側入口(中空糸膜内部側)に流すことに
より、この間に中空糸膜を透過した水蒸気がモジュール
の胴部から排出され、膜の1次側出口からは常に乾燥し
た圧縮空気等を得ることができる。
【0021】
【発明の効果】連続的かつ恒常的に除湿を可能とする分
離膜において、分離膜が水との親和性の良好なポリエー
テルイミドから製膜され、更にこの分離膜について、そ
の内表面側へのポリビニルピロリドンの被覆または保湿
剤の含浸を行うことにより、除湿能力を一段と高めるこ
とができるようになる。
【0022】
【実施例】次に、実施例について本発明を説明する。
【0023】実施例1 ポリエーテルイミド(ULTEM1000)20重量%を溶解させたジ
メチルアセトアミド溶液をドープ液とし、ポリビニルピ
ロリドン(分子量10,000)の5重量%水溶液を芯液に用い
て、2重環状ノズルから乾湿式紡糸した。得られた中空
糸膜(外径570μm、内径350μm)を水洗した後、50℃のオ
ーブン中で乾燥し、内表面側がポリビニルピロリドンで
被覆されたポリエーテルイミド中空糸膜を得た。
【0024】このポリエーテルイミド中空糸膜を500本
束ねてモジュール化し(径30mm,長さ250mm)、そのモジュ
ールに25℃の水中を通過させた水蒸気飽和空気(湿度18%
RH)を配管内圧力4Kg/cm2、供給空気流量10L/分の条件下
で送り込み、モジュール2次側(胴部側)への空気透過量
を測定し、225ml/分の値を得た。なお、1次側空気出口
の湿度は1.2%RHに低下していた。
【0025】実施例2 実施例1において、芯液として水を用いて得られたポリ
エ−テルイミド中空糸膜のモジュールについては、モジ
ュール2次側への空気透過量5580ml/分、また1次側空気
出口の湿度1.5%RHという値が得られた。
【0026】実施例3 実施例2のポリエ−テルイミド中空糸膜を20重量%グリセ
リン水溶液中に浸漬し、含浸させたものを用いると、モ
ジュール2次側への空気透過量7ml/分、また1次側空気出
口の湿度1.4%RHという値が得られた。
【0027】なお、耐折回数は、未含浸物が2回である
のに対し100回以上という値が得られ、圧縮空気等の使
用条件によりくり返し圧力が加わる場合にも、膜の柔軟
性が確保された。
【0028】比較例 ポリアミドイミド(アモコ・ジャパン製品トーロン4000
T)20重量%を溶解させたジメチルアセトアミド溶液より
なるドープ液および水芯液をそれぞれ用いて得られたポ
リアミドイミド中空糸膜のモジュールについては、モジ
ュール2次側への空気透過量3000ml/分、また1次側空気
出口の湿度が5.6%RHという値が得られた。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−222717(JP,A) 特開 平5−177111(JP,A) 特開 平8−131793(JP,A) 特開 平8−99026(JP,A) 特開 平10−52631(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 53/22 B01D 67/00 - 71/82 510

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリエーテルイミドを18〜30重量%の割
    合で溶解させた紡糸原液から乾湿式紡糸された中空糸膜
    よりなるポリエーテルイミド除湿膜。
  2. 【請求項2】 中空糸膜の内表面側がポリビニルピロリ
    ドンによって被覆された請求項1記載のポリエーテルイ
    ミド除湿膜。
  3. 【請求項3】 ポリビニルピロリドンによる被覆がポリ
    ビニルピロリドン水溶液よりなる芯液を用いた乾湿式紡
    糸により行われた請求項記載のポリエーテルイミド除
    湿膜。
  4. 【請求項4】 保湿剤が含浸されている中空糸膜よりな
    る請求項1記載のポリエーテルイミド除湿膜。
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