JP3383085B2 - 架橋ポリアミノ酸(塩)吸水性樹脂およびその製造方法 - Google Patents

架橋ポリアミノ酸(塩)吸水性樹脂およびその製造方法

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JP3383085B2 JP20059794A JP20059794A JP3383085B2 JP 3383085 B2 JP3383085 B2 JP 3383085B2 JP 20059794 A JP20059794 A JP 20059794A JP 20059794 A JP20059794 A JP 20059794A JP 3383085 B2 JP3383085 B2 JP 3383085B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、架橋ポリアミノ酸
(塩)吸水性樹脂およびその製造方法に関するものであ
る。さらに詳しくは、水性液体の吸水能力に優れ、か
つ、生分解性を備える架橋ポリアミノ酸(塩)吸水性樹
脂およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、吸水性樹脂は、紙オムツや生理用
品等の衛生材料としての利用のみならず、体液吸収材等
の医療分野、シーリング材(止水材)や結露防止材等の
土木・建築分野、鮮度保持材等の食品分野、溶剤から水
を除去する脱水剤等の工業分野、緑化等の農業・園芸分
野等、非常に多種多様な分野に利用されている。そし
て、これらの用途に応じた全合成若しくは半合成の吸水
性樹脂が種々提案されている。
【0003】これら提案されている種々の吸水性樹脂の
うち、一般に、架橋ポリアクリル酸(塩)系の全合成の
吸水性樹脂が吸水能力に優れ、かつ、安価であるため、
幅広く用いられている。ところが、架橋ポリアクリル酸
(塩)系の吸水性樹脂(例えば、特開昭62-54751号公
報)は、吸水状態では光分解性を若干備えるものの、生
分解性を殆ど備えていない。従って、該吸水性樹脂を廃
棄物として処理する際に、例えば埋め立て処分を行う
と、土中の細菌や微生物等により分解されないので、環
境汚染等の環境衛生問題を引き起こす。即ち、架橋ポリ
アクリル酸(塩)系の吸水性樹脂は、廃棄処分に難点を
有している。
【0004】そこで、生分解性を備える吸水性樹脂とし
て、例えば、(架橋)デンプン誘導体、(架橋)カルボ
キシメチルセルロース、架橋ヒアルロン酸塩、架橋アル
ギン酸塩等の半合成の吸水性樹脂が種々提案されている
(例えば、特開昭 49-128987号公報、特開昭50-85689号
公報、特開昭 54-163981号公報、特開昭 56-5137号公
報、特開昭56-28755号公報、特開昭 57-137301号公報、
特開昭 58-1701号公報、特開昭60-58443号公報、特開昭
60-94401号公報、特開昭61-89364号公報、特開平4-1614
31号公報、特開平 5-49925号公報、特開平5-123573号公
報、特公昭 55-500785号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の吸水性樹脂、即ち、半合成の吸水性樹脂は、非架橋
の場合には生分解性を備えるものの、吸水能力に劣って
いる。また、該半合成の吸水性樹脂を架橋させて吸水能
力を向上させると、架橋後の吸水性樹脂の生分解性が著
しく低下する。従って、上記従来の吸水性樹脂は、吸水
能力および生分解性の何れか一方が劣っており、両方を
満足させる性能を備えることができないという問題点を
有している。このため、上記従来の吸水性樹脂は、適用
可能な分野が限られている。
【0006】尚、天然物に親水性モノマーをグラフト重
合させた吸水性樹脂も提案されている(例えば、特開昭
56-76419号公報)。しかしながら、該吸水性樹脂は、吸
水能力および生分解性の両方が不充分である。
【0007】このため、吸水能力および生分解性の両方
に優れた吸水性樹脂、および、その製造方法が嘱望され
ている。即ち、本発明は、上記従来の問題点に鑑みなさ
れたものであり、その目的は、吸水能力および生分解性
の両方に優れ、しかも、加圧下においても吸水能力を維
持することができる吸水性樹脂およびその製造方法を提
供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は、上記目
的を達成すべく、吸水能力および生分解性の両方に優れ
た吸水性樹脂およびその製造方法について鋭意検討した
結果、酸性ポリアミノ酸を塩基性ポリアミノ酸と混合
し、加熱することにより得られる架橋ポリアミノ酸
(塩)吸水性樹脂が、上記従来の吸水性樹脂が備えてい
ない優れた性能を備えていることを見い出し、本発明を
完成するに至った。
【0009】即ち、請求項1記載の発明の架橋ポリアミ
ノ酸(塩)吸水性樹脂は、上記の課題を解決するため
に、酸性ポリアミノ酸を塩基性ポリアミノ酸により架橋
させてなることを特徴としている。
【0010】請求項2記載の発明の架橋ポリアミノ酸
(塩)吸水性樹脂は、上記の課題を解決するために、請
求項1記載の架橋ポリアミノ酸(塩)吸水性樹脂におい
て、酸性ポリアミノ酸 100重量部に対する塩基性ポリア
ミノ酸の割合が、 0.1重量部〜100重量部の範囲内であ
ることを特徴としている。
【0011】請求項3記載の発明の架橋ポリアミノ酸
(塩)吸水性樹脂は、上記の課題を解決するために、請
求項1または2記載の架橋ポリアミノ酸(塩)吸水性樹
脂において、酸性ポリアミノ酸がポリアスパラギン酸
(塩)であることを特徴としている。
【0012】請求項4記載の発明の架橋ポリアミノ酸
(塩)吸水性樹脂は、上記の課題を解決するために、生
理食塩水の吸水倍率が5 g/g以上、加圧下の保水量が7.
0 g/g〜20.0 g/gの範囲内、かつ、生分解率が10%以上
であることを特徴としている。
【0013】また、請求項5記載の発明の架橋ポリアミ
ノ酸(塩)吸水性樹脂の製造方法は、上記の課題を解決
するために、酸性ポリアミノ酸を塩基性ポリアミノ酸と
混合し、加熱することを特徴としている。
【0014】請求項6記載の発明の架橋ポリアミノ酸
(塩)吸水性樹脂の製造方法は、上記の課題を解決する
ために、請求項5記載の架橋ポリアミノ酸(塩)吸水性
樹脂の製造方法において、酸性ポリアミノ酸と塩基性ポ
リアミノ酸との混合物に、アミノ酸を添加することを特
徴としている。
【0015】請求項7記載の発明の架橋ポリアミノ酸
(塩)吸水性樹脂の製造方法は、上記の課題を解決する
ために、請求項5または6記載の架橋ポリアミノ酸
(塩)吸水性樹脂の製造方法において、加熱温度が 100
℃〜 300℃の範囲内であることを特徴としている。
【0016】以下に本発明を詳しく説明する。本発明に
おいて原料として用いられる酸性ポリアミノ酸は、特に
限定されるものではないが、優れた生分解性を備えるた
めに、直鎖状の化合物が好ましい。尚、本発明における
酸性ポリアミノ酸とは、一分子中のカルボキシル基の個
数が、アミノ基の個数よりも多いポリアミノ酸を示す。
【0017】上記の酸性ポリアミノ酸としては、具体的
には、例えば、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン
酸、アスパラギン酸とグルタミン酸との共重合体、酸性
アミノ酸と他のアミノ酸との共重合体、および、これら
の塩類やエステル類等が挙げられる。これら酸性ポリア
ミノ酸は、単独で使用してもよく、また、二種類以上を
適宜混合して使用してもよい。これら酸性ポリアミノ酸
のうち、ポリアスパラギン酸、および、この塩類やエス
テル類が好ましい。また、上記の塩類としては、例え
ば、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、ア
ンモニウム塩等が挙げられる。
【0018】上記酸性ポリアミノ酸の分子量は、数千〜
数千万の範囲内が好ましく、数万〜数百万の範囲内がよ
り好ましい。酸性ポリアミノ酸の分子量が上記の範囲内
よりも小さい場合には、得られる架橋ポリアミノ酸
(塩)吸水性樹脂(以下、単に吸水性樹脂と記す)の吸
水能力が所望の性能に達しないため、好ましくない。ま
た、酸性ポリアミノ酸の分子量が上記の範囲内よりも大
きい場合には、得られる吸水性樹脂の生分解性が劣るた
め、好ましくない。尚、酸性ポリアミノ酸の製造方法等
は、特に限定されるものではない。
【0019】本発明において酸性ポリアミノ酸の架橋に
用いられる塩基性ポリアミノ酸は、特に限定されるもの
ではない。尚、本発明における塩基性ポリアミノ酸と
は、一分子中のアミノ基の個数が、カルボキシル基の個
数よりも多いポリアミノ酸を示す。
【0020】上記の塩基性ポリアミノ酸としては、具体
的には、例えば、グリシン−リジン、リジン−グリシ
ン、アラニン−リジン、リジン−フェニルアラニン等
の、塩基性アミノ酸を含む二量体、ポリリジン、ポリア
ルギニン、リジンとアルギニンとの共重合体、塩基性ア
ミノ酸と他のアミノ酸との共重合体等が挙げられる。こ
れら塩基性ポリアミノ酸は、単独で使用してもよく、ま
た、二種類以上を適宜混合して使用してもよい。また、
塩基性ポリアミノ酸は、無機酸や有機酸等との間で塩を
形成していてもよい。
【0021】上記塩基性ポリアミノ酸の分子量は、数百
〜数十万の範囲内が好ましく、二量体程度の低分子量の
オリゴペプチドがより好ましい。塩基性ポリアミノ酸の
分子量が上記の範囲内よりも小さい場合には、得られる
吸水性樹脂の吸水能力が所望の性能に達しないため、好
ましくない。また、塩基性ポリアミノ酸の分子量が上記
の範囲内よりも大きい場合には、得られる吸水性樹脂の
生分解性が劣るため、好ましくない。尚、塩基性ポリア
ミノ酸の製造方法等は、特に限定されるものではない。
【0022】酸性ポリアミノ酸に対する塩基性ポリアミ
ノ酸の使用量は、特に限定されるものではなく、酸性ポ
リアミノ酸の種類、或いは、用いる塩基性ポリアミノ酸
の種類に応じて、適宜設定すればよい。具体的には、例
えば、酸性ポリアミノ酸 100重量部に対して、塩基性ポ
リアミノ酸は、 0.1重量部〜 100重量部の範囲内で用い
ればよく、好ましくは1重量部〜50重量部の範囲内で用
いればよい。塩基性ポリアミノ酸の使用量が 0.1重量部
よりも少ない場合には、得られる吸水性樹脂の吸水能力
が所望の性能に達せず、吸水後の吸水性樹脂がべたつく
ため、好ましくない。また、塩基性ポリアミノ酸の使用
量が 100重量部よりも多い場合には、得られる吸水性樹
脂の吸水能力が劣るため、好ましくない。
【0023】本発明にかかる吸水性樹脂は、酸性ポリア
ミノ酸を塩基性ポリアミノ酸と混合し、加熱することに
よって、即ち、酸性ポリアミノ酸を塩基性ポリアミノ酸
により架橋させることによって得られる。つまり、両者
を混合し、加熱すると、酸性ポリアミノ酸が有するカル
ボキシル基と、塩基性ポリアミノ酸が有するアミノ基と
の間で脱水反応(熱縮合反応)が起こり、アミド結合が
形成される。そして、塩基性ポリアミノ酸は、少なくと
も2個以上のアミノ基を有しているので、上記アミド結
合を形成することにより、2分子以上の酸性ポリアミノ
酸を架橋させて網目構造を形成することができる。従っ
て、塩基性ポリアミノ酸は、酸性ポリアミノ酸に対し
て、ジアミン型の架橋剤として作用している。尚、酸性
ポリアミノ酸エステルを用いた場合には、該酸性ポリア
ミノ酸エステルと塩基性ポリアミノ酸との間で熱縮合反
応が起こり、アミド結合が形成される。
【0024】このように、本発明にかかる吸水性樹脂
は、アミド結合によって架橋され、網目構造を形成して
いるので、土中の細菌や微生物等が生産する酵素によ
り、比較的容易に架橋点が開裂する。それゆえ、本発明
にかかる吸水性樹脂は、優れた生分解性を示すようにな
っている。
【0025】尚、赤外吸収スペクトル(IR)等を用い
ることにより、例えば、酸性ポリアミノ酸エステルと塩
基性ポリアミノ酸とを混合し、加熱するとエステル結合
が消失することを確認することができる。これにより、
酸性ポリアミノ酸と塩基性ポリアミノ酸との間で上記ア
ミド結合が形成されていることを確認することができ
る。
【0026】本発明にかかる吸水性樹脂の製造方法にお
いては、酸性ポリアミノ酸を塩基性ポリアミノ酸により
架橋させる際に、第三の成分としてアミノ酸を添加して
もよい。上記のアミノ酸としては、α−アミノ酸、β−
アミノ酸、γ−アミノ酸、或いは、不飽和アミノ酸等が
使用可能である。これらアミノ酸としては、特に限定さ
れるものではないが、具体的には、例えば、グリシン、
アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシ
ン、バリン、メチオニン、シスチン、システイン、セリ
ン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、α−
アミノアジピン酸、アミノマロン酸、α−アミノピメリ
ン酸、α−アミノセバシン酸、β−メチルグルタミン
酸、オルニチン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、β
−アラニン、β−フェニルアラニン、β−アミノ酪酸、
α−メチル−β−アミノプロピオン酸、イソセリン、β
−チロシン、タウリン、α−アミノアクリル酸、α−ア
ミノクロトン酸等が挙げられる。これらアミノ酸は、単
独で使用してもよく、また、二種類以上を適宜混合して
使用してもよい。また、光学異性体が存在するアミノ酸
においては、d体、l体、両者の混合物の何れも使用す
ることができる。上記のアミノ酸を添加することによ
り、アミノ酸と、酸性ポリアミノ酸または塩基性ポリア
ミノ酸との間でアミド結合が形成され、主鎖が延びるの
で、吸水性樹脂の吸水倍率等の吸水能力がより一層向上
する。
【0027】アミノ酸を添加する場合に、酸性ポリアミ
ノ酸に対する該アミノ酸の使用量は、特に限定されるも
のではなく、酸性ポリアミノ酸や塩基性ポリアミノ酸の
種類、或いは、用いるアミノ酸の種類に応じて、適宜設
定すればよい。具体的には、例えば、酸性ポリアミノ酸
100重量部に対して、アミノ酸は、1重量部〜 100重量
部の範囲内で用いればよい。アミノ酸の使用量が1重量
部よりも少ない場合には、アミノ酸の添加による効果が
殆ど発揮されないため、好ましくない。また、アミノ酸
の使用量が 100重量部よりも多い場合には、得られる吸
水性樹脂の吸水能力が劣るため、好ましくない。
【0028】酸性ポリアミノ酸を塩基性ポリアミノ酸に
よって架橋させる際には、均一な架橋反応が行われるよ
うに、両者を均一に、かつ、充分に混合することが好ま
しい。酸性ポリアミノ酸と塩基性ポリアミノ酸との混合
方法は、特に限定されるものではなく、例えば、両者を
固体同士で混合する方法(乾式混合方法)、両者をスラ
リー状態で混合する方法、何れか一方をスラリー状態と
し、これに他方を添加して混合する方法、両者を水溶液
状態で混合する方法、何れか一方を水溶液状態とし、こ
れに他方を添加して混合する方法等、種々の方法を採用
することができる。これら混合方法のうち、両者を水溶
液状態で混合する方法、何れか一方を水溶液状態とし、
これに他方を添加して混合する方法が好ましい。
【0029】尚、酸性ポリアミノ酸と塩基性ポリアミノ
酸との混合物に、アミノ酸を添加する場合においても、
上記の混合方法を採用することができる。この場合、ア
ミノ酸を、予め、酸性ポリアミノ酸に添加してもよく、
また、塩基性ポリアミノ酸に添加してもよい。さらに、
アミノ酸を両者の混合物に添加してもよい。要するに、
アミノ酸は、加熱する前に添加されていればよい。
【0030】上記の混合方法、つまり、吸水性樹脂の製
造方法において、溶媒である水は、必要に応じて使用さ
れる。そして、上記の製造方法における水の使用量は、
酸性ポリアミノ酸や塩基性ポリアミノ酸の種類や溶解度
等を考慮に入れて適宜設定すればよい。
【0031】例えば酸性ポリアミノ酸や塩基性ポリアミ
ノ酸を水溶液とする場合には、酸性ポリアミノ酸水溶液
や塩基性ポリアミノ酸水溶液の濃度は、特に限定される
ものではない。但し、濃度が極端に低い場合には、該水
溶液の量が多くなると共に、水を除去するために、例え
ば水溶液を長時間加熱しなければならないので、製造効
率が低下する。また、濃度が極端に高い場合には、該水
溶液の粘度が高くなり、水溶液、つまり、酸性ポリアミ
ノ酸と塩基性ポリアミノ酸とを均一に、かつ、充分に混
合することが困難となるため、好ましくない。
【0032】上記の加熱温度は、 100℃〜 300℃の範囲
内であることが好ましく、 200℃〜300℃の範囲内であ
ることがより好ましい。上記範囲内の温度で加熱するこ
とにより、酸性ポリアミノ酸と塩基性ポリアミノ酸との
間で架橋反応が起こり、アミド結合が形成される。即
ち、三次元の網目構造が形成される。架橋反応を行う際
の加熱温度が 100℃よりも低い場合には、上記の架橋反
応が殆ど進行しないため、好ましくない。また、加熱温
度が 300℃よりも高い場合には、酸性ポリアミノ酸や塩
基性ポリアミノ酸等が分解し、着色するため、好ましく
ない。尚、加熱方法は、特に限定されるものではなく、
例えば、遠赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射す
る方法、或いは、熱風乾燥機、減圧乾燥機を用いる方法
等、種々の方法を採用することができる。
【0033】加熱時間は、特に限定されるものではな
く、酸性ポリアミノ酸および塩基性ポリアミノ酸等の種
類、加熱温度、所望する吸水性樹脂の物性等に応じて、
適宜設定すればよい。具体的には、例えば、加熱温度が
200℃〜 300℃の範囲内である場合には、加熱時間は、
1分間〜1000分間、好ましくは5分間〜 500分間とすれ
ばよい。
【0034】そして、本発明にかかる吸水性樹脂の製造
方法としては、酸性ポリアミノ酸を水溶液とし、この水
溶液に塩基性ポリアミノ酸と、必要に応じてアミノ酸と
を添加して均一にかつ充分に混合した後、この混合物を
加熱して架橋反応を行うと共に、該混合物から水を除去
して混合物を乾燥させることにより固形物、即ち、吸水
性樹脂を得る方法が好ましい。また、混合物を乾燥させ
る際には、水が5重量%以下となるように、つまり、吸
水性樹脂の含水率が5重量%以下となるようにすること
が好ましい。含水率を5重量%以下にすることにより、
加圧下の保水能力に優れた吸水性樹脂を得ることができ
る。尚、上記の混合物から水を除去する際には、例え
ば、吸引濾過等の固液分離操作を行ってもよい。
【0035】以上の方法により得られる吸水性樹脂は、
水性液体(生理食塩水)の吸水倍率が5 g/g以上、か
つ、生分解率が10%以上である。また、加圧下において
も、自重の数倍以上の水性液体を保持可能である。従っ
て、吸水性樹脂は、吸水能力および生分解性の両方に優
れ、しかも、加圧下においても吸水能力を維持すること
ができる。尚、吸水性樹脂のこれら諸性能の測定方法
は、後段の実施例にて詳述する。
【0036】尚、上記の吸水性樹脂は、所定形状に造粒
されていてもよく、また、不定形破砕状、球状、鱗片
状、繊維状、棒状、塊状等、種々の形状であってもよ
い。さらに、吸水性樹脂は、1次粒子であってもよく、
また、1次粒子の造粒体であってもよい。吸水性樹脂を
所定形状に造粒する場合の粒径および造粒方法は、特に
限定されるものではない。また、上記の吸水性樹脂に、
その吸水特性、例えば水性液体の浸透性や分散性、吸水
速度等を向上させるために、種々の加工や修飾(モディ
ファイ)等を施してもよい。
【0037】以上の方法により得られる吸水性樹脂は、
紙オムツや生理用品、各種清浄用具等の衛生材料等の衛
生分野としての利用のみならず、以下に示すような非常
に多種多様な分野に利用することができる。
【0038】即ち、吸水性樹脂は、外科手術時の体液吸
収材、創傷保護材等の医療分野;シールド工法時のシー
リング材(止水材)、コンクリート養生材、ゲル水嚢、
結露防止材等の土木・建築分野;肉や魚等のドリップ吸
収材や鮮度保持材、野菜等の鮮度保持材等の食品分野;
溶剤から水を除去する脱水剤等の工業分野;緑化等を行
う際の土壌保水材や植物栽培用保水材、種子コーティン
グ材等の農業・園芸分野等、さらには、油水分離材、廃
液吸収材、防振材、防音材、家庭用雑貨品、玩具、人工
雪等、非常に多種多様な分野に利用することができる。
【0039】上記の吸水性樹脂は、土中の細菌や微生物
等により分解可能な生分解性を有しているので、土中に
埋めるだけで分解される。このため、廃棄処分が簡単で
あり、かつ、安全性に優れ、環境汚染等の環境衛生問題
を引き起こすこともない。従って、吸水性樹脂は、従来
より知られている吸水性樹脂の全ての用途に適用可能で
ある。
【0040】吸水性樹脂は、生分解性や安全性に特に優
れているので、上記分野のうち、衛生分野、医療分野、
食品分野に好適である。尚、吸水性樹脂は、これらの用
途に応じた最適な諸性能が得られるように、その組成
(つまり、酸性ポリアミノ酸や塩基性ポリアミノ酸等の
種類)を適宜選択すればよい。
【0041】さらに、吸水性樹脂に、加工性の改良およ
び品質性能の向上のために、必要に応じて、シリカ微粒
子等の無機微粒子や、パルプ繊維等からなる充填剤;活
性炭や鉄フタロシアニン誘導体、植物性精油等を吸着さ
せたゼオライト等を主体とする消臭剤または脱臭剤;芳
香剤;銀や銅、亜鉛等の金属等を主体とする抗菌剤、殺
菌剤、防カビ剤、防腐剤;脱酸素剤(酸化防止剤);界
面活性剤;発泡剤;香料等を添加してもよい。これら添
加剤を添加することにより、吸水性樹脂に種々の機能を
付与することができる。上記添加剤の添加量は、添加剤
の種類にもよるが、吸水性樹脂に対して0.01重量%〜5
重量%程度の範囲内とすればよい。尚、添加剤の添加方
法は、特に限定されるものではない。
【0042】
【作用】上記の構成によれば、吸水性樹脂は、酸性ポリ
アミノ酸を塩基性ポリアミノ酸により架橋させてなって
おり、生理食塩水の吸水倍率が5 g/g以上、かつ、生分
解率が10%以上である。従って、吸水性樹脂は、吸水能
力および生分解性の両方に優れ、しかも、加圧下におい
ても吸水能力を維持することができる。上記の吸水性樹
脂は、紙オムツや生理用品等の衛生材料等の衛生分野と
しての利用のみならず、例えば、医療分野、土木・建築
分野、食品分野、工業分野、農業・園芸分野等、さらに
は、油水分離材、廃液吸収材、防振材、防音材、家庭用
雑貨品、玩具、人工雪等、非常に多種多様な分野に利用
することができる。吸水性樹脂は、土中の細菌や微生物
等により分解可能な生分解性を有しているので、土中に
埋めるだけで分解される。このため、廃棄処分が簡単で
あり、かつ、安全性に優れ、環境汚染等の環境衛生問題
を引き起こすこともない。
【0043】また、上記の方法によれば、酸性ポリアミ
ノ酸を塩基性ポリアミノ酸と混合し、加熱して架橋させ
るので、上述した優れた性能を備えた吸水性樹脂を製造
することができる。
【0044】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明を
さらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限
定されるものではない。尚、吸水性樹脂の諸性能は、以
下の方法により測定した。また、比較例に記載の「部」
は、「重量部」を示している。
【0045】(a)吸水倍率 吸水性樹脂 0.2gを不織布製のティーバッグ式袋(40mm
×150 mm)に均一に入れ、 0.9重量%塩化ナトリウム水
溶液(生理食塩水)中に浸漬した。60分後にティーバッ
グ式袋を引き上げ、一定時間水切りを行った後、該ティ
ーバッグ式袋の重量W1 (g) を測定した。また、同様
の操作を吸水性樹脂を用いないで行い、そのときのティ
ーバッグ式袋の重量W0 (g) を測定した。そして、こ
れら重量W1 ・W0 から、次式、 吸水倍率 (g/g)=(重量W1(g) −重量W0(g) )/吸
水性樹脂重量(g) に従って吸水倍率 (g/g)を算出した。
【0046】(b)加圧下の保水量 上記吸水倍率を測定した後の、膨潤した吸水性樹脂の入
ったティーバッグ式袋を遠心分離機にセットした。そし
て、1500 rpmの回転数(遠心力: 200G)で10分間脱水
した後、該ティーバッグ式袋の重量W3 (g) を測定し
た。また、同様の操作を、吸水性樹脂が入っていないテ
ィーバッグ式袋についても行い、そのときのティーバッ
グ式袋の重量W2 (g) を測定した。そして、これら重
量W3 ・W2 から、次式、 加圧下の保水量 (g/g)=(重量W3(g) −重量W2(g)
)/吸水性樹脂重量(g) に従って、加圧下の保水量 (g/g)を算出した。
【0047】(c)生分解率 生分解試験は、修正MITI(Ministry of Internation
al Trade and Industry)試験に従って実施した。即ち、
JIS K−0102における生物化学酸素消費量の項
に規定されている組成液としての基礎培養液 200mlに、
試験物質としての吸水性樹脂を 100 ppmとなるように添
加すると共に、活性汚泥を30 ppmとなるように添加し
た。その後、この基礎培養液を暗所下で25℃に保ち、攪
拌しながら28日間にわたって培養した。そして、上記培
養期間中、活性汚泥により消費された酸素量を定期的に
測定し、生物化学的酸素要求量(BOD:Biochemical
Oxygen Demand )曲線を求めた。
【0048】生分解率(%)は、上記のBOD曲線から
得られる試験物質(吸水性樹脂)の生物化学的酸素要求
量A(mg)と、BOD曲線から得られるブランク、つま
り、基礎培養液の酸素消費量B(mg)と、試験物質を完全
酸化させる場合に必要な全酸素要求量(TOD:Total
Oxygen Demand )C(mg)とから、次式、 生分解率(%)={(A−B)/C}× 100 に従って算出した。
【0049】〔実施例1〕100mlビーカーに水5gを入
れ、これに、酸性ポリアミノ酸としてのポリアスパラギ
ン酸ナトリウム(分子量:8万)0.60g、塩基性ポリア
ミノ酸としてのグリシン−リジン(二量体)一塩酸塩0.
26g、および、アミノ酸としてのl−アスパラギン酸0.
29gを溶解させることにより、水溶液を調製した。
【0050】次いで、上記の水溶液を乾燥機を用いて、
200℃で4時間加熱することにより、乾燥物とした。こ
の乾燥物を粉砕し、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性
樹脂の吸水倍率、加圧下の保水量、および、生分解率
(以下、諸性能と記す)を測定した。これらの値(以
下、単に結果と記す)を表1に合わせて記載した。
【0051】〔実施例2〕実施例1におけるグリシン−
リジン(二量体)一塩酸塩0.26gに代えて、塩基性ポリ
アミノ酸としてのポリリジン0.12gを用い、加熱時間を
4時間から2時間に変更した以外は、実施例1と同様の
反応および操作を行い、吸水性樹脂を得た。得られた吸
水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記
載した。
【0052】〔実施例3〕100mlビーカーに水5gを入
れ、これに、酸性ポリアミノ酸としての50%部分中和ポ
リアスパラギン酸ナトリウム(分子量:8万)0.55g、
および、塩基性ポリアミノ酸としてのグリシン−リジン
(二量体)一塩酸塩0.26gを溶解させることにより、水
溶液を調製した。
【0053】次いで、上記の水溶液を乾燥機を用いて、
200℃で2時間加熱することにより、乾燥物とした。こ
の乾燥物を粉砕し、吸水性樹脂を得た。得られた吸水性
樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合わせて記載し
た。
【0054】〔実施例4〕実施例3におけるグリシン−
リジン(二量体)一塩酸塩0.26gに代えて、塩基性ポリ
アミノ酸としてのポリリジン0.10gを用いた以外は、実
施例3と同様の反応および操作を行い、吸水性樹脂を得
た。得られた吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表
1に合わせて記載した。
【0055】〔比較例1〕実施例1におけるグリシン−
リジン(二量体)一塩酸塩0.26gに代えて、グリシン
0.081gおよびリジン 0.159gを用いた以外は、実施例
1と同様の反応および操作を行い、比較用の化合物を得
た。しかしながら、この比較用化合物は、水に可溶であ
り、従って、吸水性樹脂として使用不可能であった。
【0056】〔比較例2〕攪拌機、還流冷却器、滴下ロ
ート、および窒素ガス吹き込み管を取り付けた2Lの四
ツ口丸底フラスコを反応器とした。この反応器に、シク
ロヘキサン1150ml、および、エチルセルロース(ハーキ
ュリーズ社製:商品名 エチルセルロースN−200)
9.0gを仕込んだ。次いで、反応系に窒素ガスを吹き込
んで溶存酸素を追い出した後、反応液を75℃に昇温させ
た。
【0057】一方、98重量%水酸化ナトリウム65.8gを
イオン交換水 200gに溶解させて水酸化ナトリウム水溶
液を調製した。そして、別のフラスコに入ったアクリル
酸 150gを、フラスコを冷却しながら、上記の水酸化ナ
トリウム水溶液を用いて中和した。アクリル酸ナトリウ
ム水溶液の濃度は45重量%であった。次いで、この水溶
液に、重合開始剤である過硫酸カリウム 0.5gおよび
N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.15gを添加し
た。アクリル酸に対する重合開始剤の割合は、 0.1重量
%であった。そして、水溶液に窒素ガスを吹き込んで溶
存酸素を追い出した。
【0058】この水溶液を上記の滴下ロートに入れ、1
時間かけて該水溶液を反応液に滴下した。滴下終了後、
反応液を75℃に保ちながら、1時間反応を続けた。そし
て、反応終了後、シクロヘキサンを減圧下に留去し、膨
潤ポリマーを取り出した。
【0059】得られた膨潤ポリマーを、80℃〜 100℃で
減圧乾燥することにより、比較用の吸水性樹脂を得た。
得られた比較用吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を
表1に合わせて記載した。
【0060】〔比較例3〕攪拌機、温度計、および窒素
ガス吹き込み管を取り付けた反応器に、トウモロコシデ
ンプン50部および水 300部を仕込んだ。この反応液を、
窒素気流下、50℃で1時間攪拌した。続いて、反応液を
30℃に冷却した後、アクリル酸20部、アクリル酸ナトリ
ウム80部、N,N−メチレンビスアクリルアミド0.02
部、および、重合開始剤である過硫酸アンモニウム 0.1
部および亜硫酸水素ナトリウム0.01部を添加して重合を
開始した。そして、反応温度30℃〜80℃で4時間反応さ
せた後、含水ゲル重合体を取り出した。
【0061】得られた含水ゲル重合体を、 120℃で熱風
乾燥した。次いで、乾燥物を粉砕して、デンプングラフ
ト重合体からなる比較用の吸水性樹脂を得た。得られた
比較用吸水性樹脂の諸性能を測定した。結果を表1に合
わせて記載した。
【0062】
【表1】
【0063】実施例1〜実施例4および比較例2〜比較
例3の結果から明らかなように、本実施例にかかる吸水
性樹脂は、従来の吸水性樹脂と比較して、吸水能力であ
る吸水倍率、および、生分解性の両方に優れ、しかも、
加圧下においても吸水能力を維持可能であることがわか
った。
【0064】
【発明の効果】上記の構成によれば、架橋ポリアミノ酸
(塩)吸水性樹脂は、酸性ポリアミノ酸を塩基性ポリア
ミノ酸により架橋させてなっており、生理食塩水の吸水
倍率が5 g/g以上、加圧下の保水量が7.0 g/g 〜20.0 g
/gの範囲内、かつ、生分解率が10%以上である。従っ
て、架橋ポリアミノ酸(塩)吸水性樹脂は、吸水能力お
よび生分解性の両方に優れ、しかも、加圧下においても
吸水能力を維持することができるという効果を奏する。
【0065】上記の架橋ポリアミノ酸(塩)吸水性樹脂
は、紙オムツや生理用品等の衛生材料等の衛生分野とし
ての利用のみならず、例えば、医療分野、土木・建築分
野、食品分野、工業分野、農業・園芸分野等、さらに
は、油水分離材、廃液吸収材、防振材、防音材、家庭用
雑貨品、玩具、人工雪等、非常に多種多様な分野に利用
することができる。架橋ポリアミノ酸(塩)吸水性樹脂
は、土中の細菌や微生物等により分解可能な生分解性を
有しているので、土中に埋めるだけで分解される。この
ため、廃棄処分が簡単であり、かつ、安全性に優れ、環
境汚染等の環境衛生問題を引き起こすこともないという
効果も併せて奏する。
【0066】また、上記の方法によれば、酸性ポリアミ
ノ酸を塩基性ポリアミノ酸と混合し、加熱して架橋させ
るので、上述した優れた性能を備えた架橋ポリアミノ酸
(塩)吸水性樹脂を製造することができる。従って、上
記の方法は、架橋ポリアミノ酸(塩)吸水性樹脂の製造
方法として好適に使用されるという効果を奏する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 林 隆哉 茨城県つくば市観音台1丁目25番地12 株式会社日本触媒 筑波研究所内 (72)発明者 西林 秀幸 兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992番地 の1 株式会社日本触媒 高分子研究所 内 (56)参考文献 国際公開93/20856(WO,A1) 国際公開92/17525(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 69/00 - 69/50

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】酸性ポリアミノ酸を塩基性ポリアミノ酸に
    より架橋させてなることを特徴とする架橋ポリアミノ酸
    (塩)吸水性樹脂。
  2. 【請求項2】酸性ポリアミノ酸 100重量部に対する塩基
    性ポリアミノ酸の割合が、 0.1重量部〜 100重量部の範
    囲内であることを特徴とする請求項1記載の架橋ポリア
    ミノ酸(塩)吸水性樹脂。
  3. 【請求項3】酸性ポリアミノ酸がポリアスパラギン酸
    (塩)であることを特徴とする請求項1または2記載の
    架橋ポリアミノ酸(塩)吸水性樹脂。
  4. 【請求項4】生理食塩水の吸水倍率が5 g/g以上、加圧
    下の保水量が7.0 g/g 〜20.0 g/gの範囲内、かつ、生分
    解率が10%以上であることを特徴とする架橋ポリアミノ
    酸(塩)吸水性樹脂。
  5. 【請求項5】酸性ポリアミノ酸を塩基性ポリアミノ酸と
    混合し、加熱することを特徴とする架橋ポリアミノ酸
    (塩)吸水性樹脂の製造方法。
  6. 【請求項6】酸性ポリアミノ酸と塩基性ポリアミノ酸と
    の混合物に、アミノ酸を添加することを特徴とする請求
    項5記載の架橋ポリアミノ酸(塩)吸水性樹脂の製造方
    法。
  7. 【請求項7】加熱温度が 100℃〜 300℃の範囲内である
    ことを特徴とする請求項5または6記載の架橋ポリアミ
    ノ酸(塩)吸水性樹脂の製造方法。
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