JP3382861B2 - 窒素酸化物吸蔵触媒の機能状態検出装置 - Google Patents

窒素酸化物吸蔵触媒の機能状態検出装置

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JP3382861B2
JP3382861B2 JP29971898A JP29971898A JP3382861B2 JP 3382861 B2 JP3382861 B2 JP 3382861B2 JP 29971898 A JP29971898 A JP 29971898A JP 29971898 A JP29971898 A JP 29971898A JP 3382861 B2 JP3382861 B2 JP 3382861B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関等の各種
燃焼機器から排出される窒素酸化物の濃度を検出するた
めに構成されたNOxセンサを用いて窒素酸化物吸蔵触
媒の機能状態を検出する窒素酸化物吸蔵触媒の機能状態
検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ガソリンを燃料とする内燃機関の
省燃費化,高効率化のため、燃料に対する空気の量が多
い希薄空燃比で運転制御される内燃機関(リーンバーン
エンジンや直噴エンジンなど)が開発されている。そし
て、通常、内燃機関では、排気ガスに含まれるNOxと
未燃成分(HC,CO)とを三元触媒を用いて反応さ
せ、NOxをN2 に還元して排気ガスの浄化を行ってい
るが、希薄空燃比で運転した場合は、排気ガスに多量の
酸素が含まれるため、この酸素と未燃成分とが反応して
しまいNOxを浄化することができなかった。
【0003】これに対して、三元触媒中に、排気ガス中
のNOxを硝酸塩として蓄積するNOx吸蔵材を設け
た、いわゆるNOx吸蔵触媒が知られている。ただし、
そのNOx蓄積量には限界があるため、NOx吸蔵触媒
を用いる場合は、NOxの蓄積量が限界に達する前に、
一時的に、内燃機関に供給する燃料混合気の空燃比を燃
料の多いリッチ空燃比に制御して、内燃機関から未燃成
分を多量に含む排気ガスを排出させ、この未燃成分とN
Ox吸蔵触媒に蓄積されたNOxとを反応させることに
より、再びNOxを蓄積可能な状態にNOx吸蔵触媒を
リフレッシュする制御が行われている。
【0004】そして、このリフレッシュ動作は、一定時
間毎に定期的に行うか、又は内燃機関の排気通路のNO
x吸蔵触媒の下流側にNOxセンサを装着してNOx吸
蔵触媒からのNOxの漏出量を検出し、NOxの漏出量
が規定量以上となった時に必要に応じて行われる。
【0005】このような用途に使用可能なNOxセンサ
として、例えば、ヨーロッパ特許出願公開明細書067
8740A1,SAE paper No.96033
4P137〜142 1996等に開示されているよう
に、第1拡散律速層を介して被測定ガス側に連通された
第1測定室と、この第1測定室に第2拡散律速層を介し
て連通された第2測定室とを、酸素イオン伝導性の固体
電解質層にて形成し、第1測定室には、固体電解質層を
多孔質の電極で挟むことにより第1酸素ポンピングセル
と酸素濃度測定セルとを形成し、更に、第2測定室に
は、同じく固体電解質層を多孔質の電極で挟むことによ
り第2酸素ポンピングセルを形成したものが知られてい
る。
【0006】このNOxセンサでは、被測定ガスである
内燃機関等からの排気中に存在するNOx以外の他のガ
ス成分(酸素、一酸化炭素、二酸化炭素等)に影響され
ることなく、被測定ガス中のNOx濃度を検出できるよ
うに、次のような制御が行われる。
【0007】即ち、酸素濃度測定セルからの出力電圧が
予め設定された一定値となるように第1酸素ポンピング
セルに電流(以下、第1ポンプ電流という)を流すこと
により、第1測定室内の酸素濃度(ひいては第2測定室
に流れ込む被測定ガス中の酸素濃度)を、第1測定室内
において窒素酸化物(特に一酸化窒素NO)が分解する
程度の極めて低濃度に制御する。これと共に、その低酸
素濃度に制御された被測定ガスが流入する第2測定室側
で、第2酸素ポンピングセルに第2測定室内の酸素を汲
み出す方向に一定電圧を印加して、第2測定室から酸素
を汲み出すように制御する。すると、第2酸素ポンピン
グセルは、該第2酸素ポンピングセルを構成する多孔質
電極の触媒機能によって、被測定ガス中のNOxを窒素
と酸素とに分解し、このNOxの分解により得られた酸
素を第2測定室から抜き取る。この時、第2酸素ポンピ
ングセルに流れる電流値から、被測定ガス中のNOx濃
度を検出するのである。
【0008】しかし、NOxセンサでは、上述のよう
に、第1測定室内で窒素酸化物が分解される程度に第1
ポンプ電流を制御しても、第1測定室にて完全には酸素
を除去することはできず、第2測定室内に流れ込む被測
定ガス中には若干ながら酸素が残留してしまい、この残
留する酸素の影響を受けて、第2酸素ポンピングセルを
流れる第2ポンプ電流はオフセットを有することにな
る。しかもこの第2ポンプ電流のオフセットは、NOx
濃度がゼロであっても生じてしまう性質のものである。
【0009】ここで、図6は、被測定ガス中の酸素濃度
と第1ポンプ電流との関係、及びNOx濃度と第2ポン
プ電流との関係を模式的に表したグラフであり、図7
は、NOxを含まない試験用ガスを被測定ガスとして、
上述のようにNOxセンサを用いた場合の第2ポンプ電
流のオフセットの測定結果の例(3個体について測定)
を表わしたものである。
【0010】図7に示す如く、第2ポンプ電流のオフセ
ットは、被測定ガスの空燃比に対する依存性を有してお
り、内燃機関の運転状態の変化等により空燃比が変化す
ると、これに応じて数〜数十ppm程度変動する。とこ
ろが、NOx吸蔵触媒のリフレッシュ制御を精度よく行
うには、NOx濃度を最低でも100ppm単位で識別
できる程度の性能が要求されるため、上述のNOxセン
サを用いた場合、十分に満足のできる検出精度を得るこ
とができなかった。
【0011】これに対して、本願出願人は、このような
NOxセンサを用いて、希薄空燃比での内燃機関の運転
制御が開始された後に検出される第2ポンプ電流が、予
め設定された固定値分だけ増大した場合に、NOx吸蔵
触媒の吸蔵能力が低下していると判断する方法,装置、
及び同第2ポンプ電流の傾きが許容値より大きい場合
に、NOx吸蔵触媒の吸蔵能力に異常があると判断する
方法,装置についての発明を既に出願している(特願平
9−280551号を参照)。
【0012】即ち、これによれば、第2ポンプ電流の絶
対値ではなく、その相対値を用いているため、第2ポン
プ電流のオフセット分を相殺することができ、NOx濃
度の変化を精度よく検出することが可能となる。そし
て、このように第2ポンプ電流の相対値を用いる場合、
相対値を算出するための基準値を設定する必要がある。
【0013】ここで、図8は、内燃機関が、理論空燃比
での運転制御から希薄空燃比での運転制御に切り換えら
れた時に、NOx吸蔵触媒の下流に取り付けられたNO
xセンサにて検出される第2ポンプ電流IP2の測定結果
を表すグラフである。この図8(a)(b)に示すよう
に、理論空燃比での運転制御から希薄空燃比での運転制
御に切り替わった(時点t0)直後は、排気ガス中の酸
素濃度が大きく変動して第2ポンプ電流も過渡的に変動
するため、この変動が十分に落ち着くような待機時間T
wを設け、この待機時間Twの経過後に最初に検出され
る第2ポンプ電流を基準値IP2sとしていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このように基
準値IP2sを設定した場合、NOx吸蔵材が大量に剥離
する等して、NOx吸蔵触媒の吸蔵能力の低下が著しい
と、図8(c)に示すように、リーン制御に切り替わっ
た直後に、第2ポンプ電流IP2が急激に増大する。この
ため待機時間Twが経過して最初の検出を行う時点t1
では、既に電流値が大きく上昇しているため、この時点
t1での検出値を基準値IP2sとして、それ以降に検出
される第2ポンプ電流IP2の相対値を算出すると、この
相対値は、NOx吸蔵触媒の機能低下を判定する基準と
なる固定値Icを越えることがなく、制御不能に陥る可
能性があるという問題があった。
【0015】そこで本発明は、NOxセンサによるNO
x吸蔵触媒の機能状態を確実に判定可能なNOx吸蔵触
媒の機能状態検出装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
になされた請求項1に記載の発明は、酸素イオン伝導性
の固体電解質層を多孔質の電極で挟んでなる第1酸素ポ
ンピングセル及び酸素濃度測定セルを有し、第1拡散律
速層を介して被測定ガス側に連通された第1測定室と、
酸素イオン伝導性の固体電解質層を多孔質の電極で挟ん
でなる第2酸素ポンピングセルを有し、第2拡散律速層
を介して前記第1測定室と連通された第2測定室とを備
えると共に、前記各セルを所定の活性温度まで加熱する
ヒータを備えたNOxセンサを、内燃機関の排気管に取
り付けられた窒素酸化物吸蔵触媒の下流に配置して、該
窒素酸化物吸蔵触媒の機能状態を検出する検出装置であ
って、前記酸素濃度測定セルの出力電圧が一定値とな
り、且つ前記第1測定室内において窒素酸化物(特に一
酸化窒素NO)が分解する程度に前記第1酸素ポンピン
グセルに第1ポンプ電流を流して、前記第2測定室に流
れ込む被測定ガス中の酸素濃度を制御する第1ポンプ電
流制御手段と、前記第2酸素ポンピングセルに前記第2
測定室から酸素を汲み出す方向に一定電圧を印加する定
電圧印加手段と、被測定ガス中の窒素酸化物濃度に応じ
て前記第2酸素ポンピングセルに流れる第2ポンプ電流
を検出する第2ポンプ電流検出手段と、希薄空燃比によ
る内燃機関の運転制御が開始された後、決められた待機
時間内での前記第2ポンプ電流の最小値を検出する最小
値検出手段と、該最小値検出手段にて検出された前記第
2ポンプ電流の最小値と、前記待機時間後に前記第2ポ
ンプ電流検出手段にて検出される第2ポンプ電流の検出
値との相対値に基づいて、前記窒素酸化物吸蔵触媒の機
能状態を判定する機能状態判定手段とを備えることを特
徴とする。
【0017】このように構成された本発明の検出装置に
おいては、まず、第1ポンプ電流制御手段が、酸素濃度
測定セルの出力電圧が一定値となり、且つ前記第1測定
室内において窒素酸化物が分解する程度に前記第1酸素
ポンピングセルに第1ポンプ電流を流して、前記第2測
定室に流れ込む被測定ガス中の酸素濃度を制御すると共
に、定電圧印加手段が、第2酸素ポンピングセルに第2
測定室から酸素を汲み出す方向に一定電圧を印加する。
即ち、NOxセンサは、NOx濃度を測定する通常の駆
動方法で駆動され、この時、被測定ガス中のNOx濃度
に応じて第2酸素ポンピングセルに流れる第2ポンプ電
流を、第2ポンプ電流検出手段により検出する。
【0018】なお、内燃機関からNOxを多く含んだ排
気ガスが排出される希薄空燃比での運転制御時には、こ
の排気ガス中のNOxは、NOx吸蔵触媒に硝酸塩の形
で蓄積されるが、蓄積された硝酸塩が増加するとNOx
吸蔵触媒の吸蔵能力が徐々に低下する。この吸蔵能力の
低下に伴ってNOx吸蔵触媒から漏出するNOx(即
ち、被測定ガス中のNOx濃度)が増大し、その結果、
第2ポンプ電流も増大する。つまり、第2ポンプ電流
は、NOx吸蔵触媒の機能状態に対応して変化するた
め、この第2ポンプ電流から機能状態を判定することが
できるのである。
【0019】そして、特に、本発明では、最小値検出手
段が、希薄空燃比による内燃機関の運転制御が開始され
た後、決められた待機時間内での第2ポンプ電流の最小
値を検出し、機能状態判定手段が、この第2ポンプ電流
の最小値と、待機時間経過後に第2ポンプ電流検出手段
にて検出される第2ポンプ電流の検出値との相対値に基
づいて、窒素酸化物吸蔵触媒の機能状態を判定する。な
お、待機時間は、理論空燃比から希薄空燃比での運転制
御に切り替わった直後に、排気ガス中の酸素濃度が大き
く変化することによる、第2ポンプ電流の変動が十分に
収束するような長さに設定することが望ましい。
【0020】このように、本発明の検出装置によれば、
第2ポンプ電流の絶対値を用いるのではなく、希薄空燃
比での運転制御を開始後に検出される第2ポンプ電流の
相対値を用いているので、第2ポンプ電流のオフセット
の影響を受けることなく、NOx吸蔵触媒の機能状態を
精度よく判定できる。
【0021】しかも、希薄空燃比での運転制御を開始後
に検出される第2ポンプ電流の最小値を、相対値を算出
する際の基準値としているので、NOx吸蔵触媒の吸蔵
能力が極端に劣化していることにより、待機時間の経過
時点で、既に第2ポンプ電流が大きく増大しているよう
な場合にも、NOx吸蔵触媒の機能状態を確実に判定で
きる。
【0022】その結果、本発明の検出装置を用いれば、
NOx吸蔵触媒を用いた排気ガス浄化系の信頼性を向上
させることができる。次に、請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の検出装置において、前記最小値検出手
段は、希薄空燃比による内燃機関の運転制御の開始を、
前記第1ポンプ電流の変化に基づいて検出することを特
徴とする。
【0023】即ち、酸素濃度測定セルの出力電圧が一定
値となるように第1酸素ポンピングセルに第1ポンプ電
流を流して、第1測定室内の酸素濃度を一定に制御する
第1ポンプ電流制御手段による制御は、第2ポンピング
セルを有さない公知の酸素センサに対する制御と全く同
等であり、従って、第1ポンプ電流は、被測定ガス中の
酸素濃度に比例したものとなる。そして、希薄空燃比で
の運転制御時には、理論空燃比での運転制御時より、被
測定ガス中の酸素濃度が増大するため、第1ポンプ電流
に基づいて、希薄空燃比での運転制御の開始を検出する
ことができるのである。
【0024】このように、本発明の検出装置では、酸素
濃度の検出に、他のセンサを用いることなくNOxセン
サ自身を用いているので、第2ポンプ電流(のオフセッ
ト)に影響を与える環境の変化に正確かつ速やかに対応
することができる。ところで、請求項1に記載の検出装
置において、機能状態判定手段は、例えば、請求項3に
記載のように、第2ポンプ電流の相対値が、予め設定さ
れた固定値を越えると、窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵能力
が低下していると判定するように構成してもよいし、ま
た、請求項4に記載のように、第2ポンプ電流の相対値
の時間変化率が、予め設定された許容値より大きい場合
に、窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵能力に異常があると判定
するように構成してもよい。
【0025】なお、請求項1〜4では、使用するNOx
センサの構成が限定されているが、窒素酸化物濃度を検
出することのできるNOxセンサであれば、どのような
ものを用いても、同様の作用効果を得ることができる。
即ち、請求項5〜記載の発明がこれに対応し、請求項
5記載の発明が請求項1記載の発明と、請求項6記載の
発明が請求項3記載の発明と、請求項7記載の発明が請
求項4記載の発明とそれぞれ同様の効果を得ることがで
きる。但し、請求項5〜記載の発明では、上述の請求
項1,3,4記載の発明についての説明のうち、第1ポ
ンプ電流制御手段,第2ポンプ電流検出手段,定電圧印
加手段についての記載を省略し、「第2酸素ポンピング
セルに流れる第2ポンプ電流」,「第2ポンプ電流検出
手段にて検出される第2ポンプ電流」及び「第2ポンプ
電流」を「NOxセンサにて検出された窒素酸化物濃
度」と読み換え、「第1ポンプ電流」を「被測定ガスの
酸素濃度」と読み換えるものとする。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施例を図面と共
に説明する。図1は本発明が適用された実施例の窒素酸
化物(NOx)吸蔵触媒の機能状態検出装置全体の構成
を表す概略構成図、図2はこの検出装置において用いら
れるNOxセンサ2の取付位置を表す説明図、図3はN
Oxセンサ2の分解斜視図である。
【0027】図1及び図2に示す如く、本実施例の検出
装置は、車両の内燃機関S1に取り付けられた排気管S
2においてNOx吸蔵触媒S3の下流に取り付けられる
NOxセンサ2と、NOxセンサ2を構成する第1酸素
ポンピングセル(以下、第1ポンプセルという)4及び
酸素濃度測定セル(以下、Vsセルという)6への通電
を行うと共に、第1ポンプセル4に流れる電流(以下、
第1ポンプ電流という)IP1を検出する駆動回路40
と、NOxセンサ2を構成する第2酸素ポンピングセル
(以下、第2ポンプセルという)8に定電圧を印加して
そのとき流れる電流(以下、第2ポンプ電流という)I
P2を検出する検出回路42と、NOxセンサ2に設けら
れた一対のヒータ12,14へ通電して各セル4,6,
8を加熱させるヒータ通電回路44と、NOxセンサ2
近傍の温度THを検出する温度センサ46と、内燃機関
S1に取り付けられた吸気管S4の負圧Pbを測定する
圧力センサ47と、内燃機関S1の出力軸の回転数(以
下、エンジン回転数という)Neを検出する回転センサ
48と、駆動回路40及びヒータ通電回路44を制御す
ると共に、駆動回路40及び検出回路42からの検出信
号VIP1 ,VIP2 、各センサ46,47,48からの検
出信号TH,Pb,Neに基づき、NOx吸蔵触媒S3
の機能状態を検出するマイクロコンピュータからなる電
子制御回路(以下、ECUという)50とを備えてい
る。
【0028】また、本実施例の検出装置は、定速走行時
など運転状態が安定している時は希薄空燃比、それ以外
の時には理論空燃比となるように内燃機関S1の運転状
態を制御するエンジン制御装置52から、希薄空燃比で
の運転制御を行っている旨を表す運転制御情報を入力す
るようにされている。
【0029】なお、ここでは、排気管S2を流れる排気
ガスのうち、内燃機関S1から排出されNOx吸蔵触媒
S3に流入するものを、そのまま排気ガスとよび、NO
x吸蔵触媒S3から流出するものを被測定ガスとよぶ。
次に、図3に示す如く、NOxセンサ2において、第1
ポンプセル4は、板状に形成された固体電解質層4aの
両側に、夫々、矩形状の多孔質電極4b,4c及びその
リード部4bl,4clを形成し、更に、多孔質電極4b,
4cの中心部分を貫通するように固体電解質層4aに丸
孔を穿設して、その丸孔に多孔質の充填材を詰めること
により、拡散律速層4dを形成したものである。
【0030】またVsセル6は、第1ポンプセル4の固
体電解質層4aと同形状の固体電解質層6aの両側に、
夫々、円形状の多孔質電極6b,6c及びそのリード部
6bl,6clを形成し、更に、多孔質電極6b,6cの中
心部分を貫通するように固体電解質層6aに丸孔を穿設
して、その丸孔に多孔質の充填材を詰めることにより、
拡散律速層6dを形成したものである。
【0031】そして、このVsセル6の多孔質電極6
b,6cと第1ポンプセル4の多孔質電極4b,4cと
は、固体電解質層4a,6a上での中心位置が略一致
し、Vsセル6と第1ポンプセル4とを積層した際、各
拡散律速層6d,4dが互いに対向するようにされてい
る。また、Vsセル6に形成される円形状の多孔質電極
6b,6cは、第1ポンプセル4に形成される矩形状の
多孔質電極4b,4cよりも小さくなっている。また、
Vsセル6の表裏面には、リード部6bl,6clからの電
流リークを防止するために、リード部6bl,6clを外側
から覆うようにアルミナ等からなる絶縁膜が形成されて
おり、しかも各リード部6bl,6cl間には、後述の通電
制御によって多孔質電極6c側に汲み込まれた酸素の一
部を多孔質電極6b側に漏出させる漏出抵抗部6fが形
成されている。
【0032】このように形成された第1ポンプセル4及
びVsセル6は、上記各固体電解質層4a,6aと同形
状の固体電解質層18を介して積層される。そして、こ
の固体電解質層18の各多孔質電極4c,6bとの対向
位置には、多孔質電極4cよりも大きな矩形状の孔が穿
設されており、この孔が第1測定室20として機能す
る。
【0033】またVsセル6の多孔質電極6c側にも、
上記各固体電解質層4a,6aと同形状の固体電解質層
22が積層される。そして、この固体電解質層22に
は、Vsセル6の拡散律速層6dと同位置に同寸法の丸
孔を穿設して、その丸孔に多孔質の充填材を詰めること
により、拡散律速層22dが形成されている。
【0034】一方、第2ポンプセル8は、第1ポンプセ
ル4と同様、板状に形成された固体電解質層8aの両側
に、夫々、矩形状の多孔質電極8b,8c及びそのリー
ド部8bl,8clを形成したものである。そして、この第
2ポンプセル8は、固体電解質層18と全く同様に形成
された固体電解質層24を介して、固体電解質層22に
積層される。この結果、固体電解質層24に穿設された
矩形状の孔が第2測定室26として機能することにな
る。
【0035】そして、ヒータ12,14を除くNOxセ
ンサ2は、上記各部を積層して一体化した後、所定温度
で焼結することにより、作製される。またこのように積
層される第1ポンプセル4,Vsセル6,第2ポンプセ
ル8の積層体の両側、つまり、第1ポンプセル4と第2
ポンプセル8の外側には、夫々、スペーサ28,29に
より所定間隔を開けて、ヒータ12,14が積層され
る。
【0036】このヒータ12,14は、上記各固体電解
質層4a,6a,8aと同形状のヒータ基板12a,1
4aと、各ヒータ基板12a,14aの上記各セル4,
8との対向面側に形成されたヒータ配線12b,14b
及びそのリード部12bl,14blとからなり、スペーサ
28,29は、このヒータ配線12b,14bが、第1
ポンプセル4及び第2ポンプセル8の多孔質電極4b及
び8cと、夫々、間隙を介して互いに対向するように、
ヒータ配線12b,14bのリード部12bl,14bl側
に配置される。
【0037】ヒータ基板12a,14aは、アルミナで
できており、ヒータ配線は、白金粉末にアルミナを混合
してペースト状としたものを、アルミナのシートにスク
リーン印刷し、焼成して形成する。なお、アルミナシー
トは、焼成によりヒータ基板12a,14a及びスペー
サ28,29となる。そして、ヒータ12,14は、既
に焼成された第1ポンプセル4及び第2ポンプセル8の
両面からセラミック系接着剤を用いて接合され、完全な
NOxセンサ2となる。
【0038】ここで、上記各固体電解質層4a,6a,
8aを構成する固体電解質材料としては、ジルコニアと
イットリアの固溶体やジルコニアとカルシアの固溶体が
代表的なものであるが、他にハフニアの固溶体、ペロブ
スカイト型酸化物固溶体、3価金属酸化物固溶体等も使
用できる。また各固体電解質層4a,6a,8aの表面
に設ける多孔質電極には、触媒機能を有する白金やロジ
ウム或はその合金を使用するのが好ましい。そして、そ
の形成方法としては、たとえば、白金粉末に固体電解質
層と同じ材料の粉末を混合したものをペースト状とし、
固体電解質層上にスクリーン印刷し、次いで焼結する厚
膜形成方法や、蒸着による被膜形成方法が知られてい
る。また、拡散律速層4d,6d,22dは、細い貫通
孔を有するセラミックスや多孔質セラミックスを使用す
るのが好ましい。
【0039】一方、ヒータ12,14のヒータ配線12
b,14bは、セラミックスと白金又は白金合金の複合
材料とし、そのリード部12bl,14blは、抵抗値を低
下してリード部での電気ロスを低減するために、白金又
は白金合金とすることが好ましい。また、ヒータ基板1
2a,14a及びスペーサ28,29には、アルミナ、
スピネル、フォルステライト、ステアタイト、ジルコニ
ア等を用いることができる。
【0040】次に、図1に示す如く、NOxセンサ2の
第1ポンプセル4及びVsセル6の第1測定室20側の
多孔質電極4c,6bは、抵抗器R1を介して接地され
ており、他方の多孔質電極4b及び6cは、駆動回路4
0に接続されている。駆動回路40は、一端に定電圧V
CPが印加され、他端がVsセル6の多孔質電極6cに接
続された抵抗器R2と、−側入力端子に開閉スイッチS
W1を介してVsセル6の多孔質電極6cが接続され、
+側入力端子に基準電圧VCOが印加され、出力端子が抵
抗器R0を介して第1ポンプセル4の多孔質電極4bに
接続された差動増幅器AMPとを備えている。
【0041】この駆動回路40は、ポンプ電流制御手段
に相当するものであり、次のように動作する。即ち、ま
ず抵抗器R2を介してVsセル6に一定の微小電流iCP
を流すことにより、第1測定室20内の酸素をVsセル
6の多孔質電極6c側に汲み込む。この多孔質電極6c
は、固体電解質層22により閉塞されると共に、漏出抵
抗部6fを介して多孔質電極6b側と連通していること
から、微小電流iCPの通電により多孔質電極6c内の閉
塞空間は一定の酸素濃度となり、内部酸素基準源として
機能する。
【0042】またこのようにVsセル6の多孔質電極6
c側が内部酸素基準源として機能すると、Vsセル6に
は、第1測定室20内の酸素濃度と内部酸素基準源側の
酸素濃度との比に応じた起電力が発生し、多孔質電極6
c側電圧Vsは、第1測定室20内の酸素濃度に応じた
電圧となる。そしてこの電圧は、差動増幅器AMPに入
力されることから、差動増幅器AMPからは、基準電圧
VCOとその入力電圧との偏差(VCO−入力電圧)に応じ
た電圧が出力され、この出力電圧が、抵抗器R0を介し
て第1ポンプセル4の多孔質電極4bに印加される。
【0043】この結果、第1ポンプセル4には、第1ポ
ンプ電流IP1が流れ、この第1ポンプ電流IP1により、
Vsセル6に発生した起電力が一定電圧となるように制
御される。なお、この制御により、第1測定室20内の
酸素濃度は、第1ポンプ電流IP1の通電により第1測定
室20内の被測定ガス中のNO成分が分解される程度に
低濃度となるようにされており、この酸素濃度を決定す
る基準電圧VCOには、100mV〜200mV程度の値
が設定される。また、差動増幅器AMPの出力と多孔質
電極4bとの間に設けられた抵抗器R0は、第1ポンプ
電流IP1を検出するためのものであり、その両端電圧V
IP1 は、第1ポンプ電流IP1の検出信号としてECU5
0に入力される。
【0044】一方、NOxセンサ2の第2ポンプセル8
の多孔質電極8b,8c間には、上記検出回路42を構
成する定電圧印加手段としての抵抗器R3を介して、定
電圧VP2が印加される。この定電圧VP2の印加方向は、
第2ポンプセル8において多孔質電極8cから8b側に
電流が流れて、第2測定室26内の酸素が外部に汲み出
されるように、多孔質電極8c側が正極,多孔質電極8
b側が負極となるように設定されている。また、この定
電圧VP2は、第1測定室20から拡散律速層6d,22
dを介して流入してくる第2測定室内の被測定ガス中の
NOx成分を分解して、その酸素成分を汲み出すことが
できる電圧、例えば450mVに設定されている。
【0045】なお、抵抗器R3は、この定電圧VP2の印
加によって第2ポンプセル8に流れる第2ポンプ電流I
P2を電圧VIP2 に変換し、第2ポンプ電流IP2の検出信
号としてECU50に入力するためのものである。この
ように構成された本実施例のNOx吸蔵触媒S3の機能
状態検出装置においては、駆動回路40の動作によっ
て、被測定ガスが拡散律速層(第1拡散律速層)4dを
介して流入する第1測定室20内の酸素濃度が一定酸素
濃度に制御され、その一定酸素濃度に制御された第1測
定室20内の被測定ガスが拡散律速層(第2拡散律速
層)6d,22dを介して第2測定室26に流入するた
め、第1ポンプセル4に流れる第1ポンプ電流IP1は被
測定ガス中の酸素濃度に応じて変化し、第2ポンプセル
8に流れる第2ポンプ電流IP2は被測定ガス中のNOx
濃度に応じて変化するようになり、ECU50側でこれ
ら各電流IP1,IP2を表す検出信号VIP1及びVIP2 を
読み込み、所定の演算処理を実行することにより、被測
定ガス中の酸素濃度及びNOx濃度を測定することがで
きる。
【0046】なお、これら各濃度の測定精度を確保する
には、NOxセンサ2の温度を一定に制御する必要があ
り、このために温度センサ46にて検出される温度TH
が目標温度となるように、ヒータ通電回路44から各ヒ
ータ12,14への通電電流量を制御する。
【0047】ここで、図4は、エンジン制御装置52に
より内燃機関S1が、理論空燃比での運転制御(以下、
通常制御という)から希薄空燃比での運転制御(以下、
リーン制御という)に切り換えられた時に、NOx吸蔵
触媒S3の下流に取り付けられたNOxセンサ2にて検
出される第2ポンプ電流IP2の測定結果を表すグラフで
ある。
【0048】図4(a)(b)に示す如く、内燃機関S
1の制御が通常制御(A/F(空燃比)≒14)からリ
ーン制御に切り替わると、最初は、NOx吸蔵触媒S3
のNOx吸蔵能力に余裕があるため、NOx吸蔵触媒S
3からNOxが殆ど漏れ出ることがない。その後、硝酸
塩としてNOx吸蔵触媒S3上に蓄積されるNOxの量
が増大し、NOx吸蔵触媒S3のNOx吸蔵能力が低下
するに従って、NOx吸蔵触媒S3の下流に漏れ出すN
Ox量、即ち被測定ガス中のNOx濃度が増大し、これ
に伴って第2ポンプ電流IP2も増大する。そして、最終
的にNOx吸蔵触媒S3がNOxを殆ど吸蔵できなくな
ると、被測定ガスのNOx濃度は、NOx吸蔵触媒S3
に流入する排気ガスのNOx濃度とほぼ同じ値になる。
【0049】なお、図4(c)は、燃料に硫黄が含まれ
ている場合に、この硫黄がNOx吸蔵触媒S3に硫酸塩
として蓄積されたり、NOx吸蔵触媒S3が剥離する等
して、NOxの吸蔵能力が著しく低下した時の測定結果
であり、第2ポンプ電流IP2が増大する時の傾きが大き
くなっている。
【0050】以下、このようなNOx吸蔵触媒S3の機
能状態を検出するためにECU50において実行される
機能状態検出処理について、図5に示すフローチャート
に沿って説明する。また、本処理と同時に、温度センサ
46からセンサ温度THを読み込んで、一定の活性化温
度に制御する処理が実行され、本処理は、ヒータ12,
14への通電によりNOxセンサ2が活性化された後に
繰り返し実行される。
【0051】図5に示す如く、本処理では、まずS11
0(Sはステップを表わす)にて、本処理にて使用する
タイマをリセットし、続くS120では、エンジン制御
装置52がリーン制御中であるか否かを判断し、リーン
制御中であると判断されると、S130に移行する。
【0052】なお、このリーン制御中であるか否かの判
断は、エンジン制御装置52から入力される運転制御情
報に基づいて行ってもよいし、検出信号VIP1 を読み込
むことにより、第1ポンプ電流IP1を検出し、この第1
ポンプ電流IP1が希薄空燃比に対応した酸素濃度を示す
ものとなっているか否かにより行ってもよい。
【0053】S130では、先のS110にてリセット
したタイマをスタートし、続くS140では、検出信号
VIP2 を読み込むことにより、第2ポンプ電流IP2を検
出し、この検出値を、その時のタイマ値と共に記憶す
る。そしてS150では、待機時間Twが経過したか否
かを判断し、否定判定された場合は、繰り返しS140
を実行する。
【0054】但し、S150にて否定判定されている
間、S140での第2ポンプ電流IP2の検出は、5〜2
0ms間隔(サンプリングレート50〜200Hz)程
度で繰り返す。また待機時間Twは、通常制御からリー
ン制御への制御切替時に発生する第2ポンプ電流IP2の
変動が十分に収束するような長さに設定する。
【0055】一方、タイマをスタートさせてから待機時
間Twが経過し、S150にて肯定判定されるとS16
0に移行して、待機時間Tw中にS140にて繰り返し
検出され記憶された第2ポンプ電流IP2の中から、その
最小値を、一緒に記憶されたタイマ値と共に抽出し、こ
れを、基準第2ポンプ電流IP2s,及び基準タイマ値T
sとして記憶する(図4(b)(c)参照)。但し、第
2ポンプ電流IP2の最小値が複数存在する場合は、その
中で最後に検出されたものを基準第2ポンプ電流IP2s
とする。
【0056】なお、ここでは、この第2ポンプ電流IP2
の最小値の抽出を、待機時間Tw経過後に行っている
が、待機時間Tw中に、第2ポンプ電流IP2が検出され
る毎に検出値と記憶値とを逐次比較することで行っても
よい。続くS170では、先のS140と同様に検出信
号VIP2 を読み込むことにより第2ポンプ電流IP2を検
出する。なお、このS170は、後述するように、繰り
返し実行されるが、ここでは、S140での検出周期よ
り低速な、20〜1000ms間隔(サンプリングレー
ト1Hz〜50Hz)程度で第2ポンプ電流IP2の検出
を繰り返す。
【0057】次にS180では、圧力センサ47及び回
転センサ48により、それぞれ吸気管負圧Pb及びエン
ジン回転数Neを検出し、続くS190では、吸気管負
圧Pb及びエンジン回転数Neの許容変動幅を算出す
る。この許容変動幅は、S130にてタイマをスタート
させた後、S180にて繰り返し検出される吸気管負圧
Pb及びエンジン回転数Neから、その平均値を各々算
出し、この算出された平均値を中心とした所定範囲(例
えば±10%)を設定値としている。
【0058】なお、許容変動幅は、NOx吸蔵触媒S3
に流入する排気ガスの流量や排気ガス中のNOx濃度,
空燃比等の急激な変動を検出するための基準値であり、
排気ガスの状態を直接検出するのではなく、排気ガスの
状態を決定する要因であるエンジン回転数Neや吸気管
負圧Pbといった内燃機関S1の運転状態から間接的に
検出しているのである。
【0059】つまり、本実施例では、運転状態が変化す
る等して、排気ガスの酸素濃度やNOx濃度が大きく変
化すると、第2ポンプ電流IP2の検出精度を十分な精度
を確保できない場合があるので、誤動作を防止するため
に、十分な精度を確保できる範囲を限定しているのであ
る。
【0060】そして、S200では、先のS180にて
検出された吸気管負圧Pb及びエンジン回転数Neが、
S190にて設定された許容変動幅の範囲内にあるか否
かを判断し、いずれか一方でも範囲内になければ、S2
10に移行してタイマを停止し、続くS220にて、N
Ox吸蔵触媒S3のリフレッシュ要求をエンジン制御装
置52に出力後、本処理を終了する。
【0061】一方、S200にて、吸気管負圧Pb及び
エンジン回転数Neが、いずれも許容変動幅の範囲内に
あると判断された場合は、S230に移行し、S160
にて記憶された基準第2ポンプ電流IP2sと、S170
にて検出された最新の第2ポンプ電流IP2eとの相対値
△IP2(=IP2e−IP2s)を算出する。
【0062】そしてS240では、S230にて算出さ
れた相対値△IP2が、予め設定された固定値Ic以上で
あるか否かを判断し、否定判定された場合は、NOx吸
蔵触媒S3の吸蔵能力は未だ余裕がある(劣化していな
い)ものとして、S170に戻る。
【0063】なお、固定値Icは、NOx吸蔵触媒が、
NOxを全く吸蔵しなくなった時に検出される第2ポン
プ電流IP2より小さければどのような値に設定してもよ
いが、同電流の7〜8割程度に設定することが望まし
い。そして、このS170〜S200,S230,S2
40の処理を繰り返す間、NOx吸蔵触媒S3には、排
気ガス中のNOxが硝酸塩として蓄積されるが、時間が
経過し硝酸塩の蓄積量が増大するに従って、NOxの吸
蔵能力が低下し、NOx吸蔵触媒S3下流の被測定ガス
中のNOx濃度が増大するため、第2ポンプ電流IP2、
延いてはその相対値△IP2が、除々に増大する。その結
果、相対値△IP2が固定値Ic以上となり、S240に
て肯定判断されると、S250に移行してタイマを停止
すると共に、この時のタイマ値Teと、S160にて記
憶された基準タイマ値Tsとに基づき、測定時間△T
(=Te−Ts)を算出し、続くS260では、NOx
吸蔵触媒S3の吸蔵能力の異常を検出するための時間し
きい値Tthを算出する。
【0064】この時間しきい値Tthは、タイマの起動中
にS180にて繰り返し検出される吸気管負圧Pb及び
エンジン回転数Neの各平均値から、排気ガスの流量及
びNOx濃度を推定し、この推定値に基づいて、第2ポ
ンプ電流IP2が固定値Icを越えるのに要する推定時間
を算出し、この算出した推定時間を設定値とする。な
お、時間しきい値Tthは、吸気管負圧Pb及びエンジン
回転数Neの各平均値をパラメータとするマップを予め
用意しておき、このマップを用いて設定してもよい。
【0065】続くS270では、S250にて算出され
た測定時間△Tが、S260にて設定された時間しきい
値Tthより小さいか否かを判断し、否定判断された場合
には、NOx吸蔵触媒S3が硝酸塩の蓄積による機能低
下を起こしているものとしてS220に移行し、NOx
吸蔵触媒S3のリフレッシュ要求をエンジン制御装置5
2へ出力する。
【0066】一方、S270にて肯定判断された場合
は、NOx吸蔵触媒S3が硫酸塩の蓄積やNOx吸蔵材
の剥離等の異常を起こしているものとしてS280に移
行し、触媒焼き切り要求をエンジン制御装置52に出力
後、本処理を終了する。なお、エンジン制御装置52
は、ECU50からリフレッシュ要求を入力すると、一
時的に空燃比がリッチとなるように制御して、内燃機関
S1から未燃ガスを排出させ、この未燃ガスとNOx吸
蔵触媒S3に蓄積された硝酸塩を反応させることで、N
Ox吸蔵触媒S3のリフレッシュを実行する。また、E
CU50から触媒焼き切り要求を入力すると、NOx吸
蔵触媒S3に蓄積された硫酸塩が反応して還元されるよ
うな状態を一時的に作り出すことにより、NOx吸蔵触
媒S3のリフレッシュ(焼き切り処理)を実行する。
【0067】また、本処理において、S120〜S16
0が最小値検出手段、S230〜S270が機能状態検
出手段に相当する。以上説明したように、本実施例のN
Ox吸蔵触媒の機能状態検出装置によれば、第2ポンプ
電流IP2の絶対値を用いるのではなく、第2ポンプ電流
IP2のオフセットが相殺される第2ポンプ電流の相対値
△IP2を用いて、NOx吸蔵触媒S3の機能状態(機能
低下および機能異常)を判定しているので、精度のよい
判定を行うことができる。
【0068】しかも、本実施例では、第2ポンプ電流の
相対値△IP2を算出するための基準値となる基準第2ポ
ンプ電流IP2sとして、リーン制御の開始後、待機時間
Twの間に検出される第2ポンプ電流IP2の最小値を設
定しているので、NOx吸蔵触媒の吸蔵能力が極端に劣
化していることにより、待機時間の経過時点で、既に第
2ポンプ電流IP2が大きく増大しているような場合に
も、NOx吸蔵触媒の機能状態を確実に判定できる。
【0069】その結果、本発明の検出装置を用いれば、
NOx吸蔵触媒を用いた排気ガス浄化系の信頼性を向上
させることができる。また、本実施例では、内燃機関S
1の運転状態を表すパラメータ(吸気管負圧Pb,エン
ジン回転数Ne)を逐次検出し、その検出値が許容変動
範囲から外れている場合には、運転状態が急激に変化し
たものとして、機能状態の判定を中止し、ただちにリフ
レッシュ要求を出力するようにされている。
【0070】従って、装置に負担のかかる触媒焼き切り
要求を無駄に出力してしまうような誤判定を確実に防止
でき、装置の信頼性,耐久性を向上させることができ
る。以上、本発明の一実施例について説明したが、本発
明は上記実施例に限定されるものではなく、様々な態様
にて実施することができる。
【0071】例えば、上記実施例では、第2ポンプ電流
IP2の検出を、待機時間Twの間だけ高速に行っている
が、処理能力に余裕がある場合には、待機時間Tw後の
検出も、同様に高速に行ってもよい。また、上記実施例
では、第2ポンプ電流IP2の検出値をそのまま用いて相
対値△IP2の算出を行っているが、温度センサ46から
のセンサ温度THや被測定ガスの酸素濃度を表す第1ポ
ンプ電流IP1に基づいて第2ポンプ電流IP2を補正し、
この補正された第2ポンプ電流IP2により相対値△IP2
の算出を行うようにしてもよい。この場合、制御中に、
センサ温度THや被測定ガスの酸素濃度(空燃比)の変
動に従って、第2ポンプ電流IP2のオフセットが変動し
たとしても、これを補償して、より精度のよい検出を行
うことができる。
【0072】更に、上記実施例では、基準第2ポンプ電
流IP2sとして、待機時間Tw中での第2ポンプ電流I
P2の最小値を設定しているが、何等かの原因により、基
準第2ポンプ電流IP2sが大きな値に設定され、NOx
吸蔵触媒がNOxを全く吸蔵しない状態になっても第2
ポンプ電流の相対値△IP2が固定値Icを越えることが
できない虞がある場合には、タイマ値の上限を決めてお
き、タイムアウトした場合には、NOx吸蔵触媒S3の
吸蔵能力に異常があるものとして触媒焼き切り要求を出
力するように構成してもよい。
【0073】また更に、上記実施例では、吸気管負圧P
b及びエンジン回転数Neに基づいて時間しきい値を設
定したが、排気ガスの流量やNOx濃度に影響を与える
ものであれば、どのようなパラメータを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の窒素酸化物吸蔵触媒の機能状態検出
装置全体の構成を表わす概略構成図である。
【図2】 実施例のNOxセンサの取付位置を表す説明
図である。
【図3】 実施例のNOxセンサの構成を表わす分解斜
視図である。
【図4】 実施例のNOxセンサから出力される第2ポ
ンプ電流の波形図である。
【図5】 実施例のECUにおいて繰返し実行される機
能状態検出処理を表わすフローチャートである。
【図6】 酸素濃度と第1ポンプ電流との関係、及び窒
素酸化物濃度と第2ポンプ電流との関係を模式的に表す
グラフである。
【図7】 NOxを含まない被測定ガスの酸素濃度(空
燃比)と第2ポンプ電流との関係を表すグラフである。
【図8】 従来技術の問題点を表す説明図である。
【符号の説明】
2…NOxセンサ 4…第1ポンプセル 6…酸素
濃度測定セル 8…第2ポンプセル 12…ヒータ 18,22,
24…固体電解質層 20…第1測定室 26…第2測定室 28…スペ
ーサ 40…駆動回路 42…検出回路 44…ヒー
タ通電回路 46…温度センサ 47…圧力センサ 48…回転
センサ 50…ECU 52…エンジン制御装置 S1
…内燃機関 S2…排気管 S3…NOx吸蔵触媒 S4
…吸気管
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G01N 27/416 G01N 27/46 327N 331 (56)参考文献 特開 平7−63096(JP,A) 特開 平7−208151(JP,A) 特開 平10−71325(JP,A) 特開 平10−212933(JP,A) 特開 平10−259714(JP,A) 特開 平11−148910(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/419 G01N 27/416 G01N 27/26 F01N 3/08 F02D 41/14 F02D 41/02

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸素イオン伝導性の固体電解質層を多孔
    質の電極で挟んでなる第1酸素ポンピングセル及び酸素
    濃度測定セルを有し、第1拡散律速層を介して被測定ガ
    ス側に連通された第1測定室と、酸素イオン伝導性の固
    体電解質層を多孔質の電極で挟んでなる第2酸素ポンピ
    ングセルを有し、第2拡散律速層を介して前記第1測定
    室と連通された第2測定室とを備えると共に、前記各セ
    ルを所定の活性温度まで加熱するヒータを備えたNOx
    センサを、内燃機関の排気管に取り付けられた窒素酸化
    物吸蔵触媒の下流に配置して、該窒素酸化物吸蔵触媒の
    機能状態を検出する検出装置であって、 前記酸素濃度測定セルの出力電圧が一定値となり、且つ
    前記第1測定室内において窒素酸化物が分解する程度に
    前記第1酸素ポンピングセルに第1ポンプ電流を流し
    て、前記第2測定室に流れ込む被測定ガス中の酸素濃度
    を制御する第1ポンプ電流制御手段と、 前記第2酸素ポンピングセルに前記第2測定室から酸素
    を汲み出す方向に一定電圧を印加する定電圧印加手段
    と、 被測定ガス中の窒素酸化物濃度に応じて前記第2酸素ポ
    ンピングセルに流れる第2ポンプ電流を検出する第2ポ
    ンプ電流検出手段と、 希薄空燃比による内燃機関の運転制御が開始された後、
    決められた待機時間内での前記第2ポンプ電流の最小値
    を検出する最小値検出手段と、 該最小値検出手段にて検出された前記第2ポンプ電流の
    最小値と、前記待機時間後に前記第2ポンプ電流検出手
    段にて検出される第2ポンプ電流の検出値との相対値に
    基づいて、前記窒素酸化物吸蔵触媒の機能状態を判定す
    る機能状態判定手段と、 を備えることを特徴とする窒素酸化物吸蔵触媒の機能状
    態検出装置。
  2. 【請求項2】 前記最小値検出手段は、希薄空燃比によ
    る内燃機関の運転制御の開始を、前記第1ポンプ電流の
    変化に基づいて検出することを特徴とする請求項1に記
    載の窒素酸化物吸蔵触媒の機能状態検出装置。
  3. 【請求項3】 前記機能状態判定手段は、前記第2ポン
    プ電流の相対値が、予め設定された固定値を越えると、
    前記窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵能力が低下していると判
    定することを特徴とする請求項1に記載の窒素酸化物吸
    蔵触媒の機能状態検出装置。
  4. 【請求項4】 前記機能状態判定手段は、前記第2ポン
    プ電流の相対値の時間変化率が、予め設定された許容値
    より大きい場合に、前記窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵能力
    に異常があると判定することを特徴とする請求項1に記
    載の窒素酸化物吸蔵触媒の機能状態検出装置。
  5. 【請求項5】 被測定ガス中の窒素酸化物の濃度を検出
    するNOxセンサを、内燃機関の排気管に取り付けられ
    た窒素酸化物吸蔵触媒の下流に配置して、該窒素酸化物
    吸蔵触媒の機能状態を検出する検出装置であって、 希薄空燃比による内燃機関の運転制御が開始された後、
    決められた待機時間内に前記NOxセンサにて検出され
    る窒素酸化物濃度の最小値を検出する最小値検出手段
    と、 該最小値検出手段にて検出された窒素酸化物濃度の最小
    値と、前記待機時間後に前記NOxセンサにて検出され
    る窒素酸化物濃度の検出値との相対値に基づいて、前記
    窒素酸化物吸蔵触媒の機能状態を判定する機能状態判定
    手段と、 を備えることを特徴とする窒素酸化物吸蔵触媒の機能状
    態検出装置。
  6. 【請求項6】 前記機能状態判定手段は、前記窒素酸化
    物濃度の相対値が、予め設定された固定値を越えると、
    前記窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵能力が低下していると判
    定することを特徴とする請求項5に記載の窒素酸化物吸
    蔵触媒の機能状態検出装置。
  7. 【請求項7】 前記機能状態判定手段は、前記窒素酸化
    物濃度の相対値の時間変化率が、予め設定された許容値
    より大きい場合に、前記窒素酸化物吸蔵触媒の吸蔵能力
    に異常があると判定することを特徴とする請求項5に記
    載の窒素酸化物吸蔵触媒の機能状態検出装置。
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