JP3381011B2 - 析出硬化型ステンレス鋼 - Google Patents
析出硬化型ステンレス鋼Info
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Description
【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】この発明は、優れた耐食性および
強度を有するとともに、靱性を向上させた析出硬化型ス
テンレス鋼に関するものである。 【０００２】 【従来の技術】周知のように、Ｃｒを多量に添加したス
テンレス鋼は、他の鉄鋼材料に比べ耐食性が優れてお
り、腐食環境下で、広く使用されている。ところで、一
般にステンレス鋼は、マルテンサイト系を除いて、引張
強度は４０〜６０ｋｇｆ／ｍｍ2 程度であり、引張強度
が５０〜１００ｋｇｆ／ｍｍ2程度、あるいはこれ以上
の高強度鋼に比べて、強度の点で劣っている。また、マ
ルテンサイト系ステンレス鋼は、高い強度を有するもの
の、耐食性の点で、他のステンレス鋼に比べ大きく劣っ
ている。 【０００３】これらのステンレス鋼に対し、耐食性の犠
牲をできるだけ小さくして、強度を向上させた材料が望
まれ、その結果、時効硬化を利用して強度を向上させた
析出硬化型ステンレス鋼が開発されている。その一例で
あるマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼は、優れ
た強度と耐食性を有しており、引張強度が１４０ｋｇｆ
／ｍｍ2 以上で、耐食性も１８−８ステンレス鋼と同等
のものが開発されている。そして、このステンレス鋼
は、上記特性を生かして、特に耐食性が必要で、なおか
つ強度が必要な部材として有効に利用されている。 【０００４】 【発明が解決しょうとする課題】上記したように、析出
硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼によれば、強度の
点で他の高強度鋼に比べて遜色のない、十分に満足でき
る特性が得られている。しかし、シャルピー衝撃値で代
表される靱性値においては、他の高強度鋼に比べて、そ
の値はかなり低く靱性の点で劣っている。このため、使
用条件の厳しい構造用鋼への採用や大きな衝撃的外力を
受ける用途への利用は困難であり、使用分野が制限され
るという問題点がある。この発明は、上記課題を解決す
ることを基本的な目的とし、析出硬化型ステンレス鋼と
して本来有する耐食性および強度を損なうことなく、靱
性の向上を図った新規な析出硬化型ステンレス鋼を提供
しようとするものである。 【０００５】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本願発明の析出硬化型ステンレス鋼は、重量％で
Ｃ：０．０５％以下，Ｃｒ：１２．５〜１３．５％，Ｎ
ｉ：７．５〜８．６％，Ｍｏ：２〜２．５％，Ｂｅ：
０．２〜０．４％を含有し、残部がＦｅおよび不可避的
不純物からなることを特徴とするものである。 【０００６】 【作用】すなわち、本願発明鋼はＡＳＴＭ規格Ａ７０５
ＸＭ−１３番をベースとし、Ａｌに替えてＢｅを添加含
有させ、時効処理により析出硬化させたものである。Ｂ
ｅは、Ａｌに比べ、時効硬化性が大きく、少量の添加で
ベース成分が本来有する耐食性などの優れた特性はその
まま確保され、耐食性、強度、靱性のいずれにおいても
優れた材料が得られる。以下に、上記成分範囲の限定理
由を述べる。 Ｃ：０．０５％以下 本願発明鋼において、Ｃの添加含有は強度を向上させる
が、靱性および耐食性を低下させるので、これらの兼ね
合いを考慮して、Ｃ含有量の上限を０．０５％とした。 【０００７】Ｃｒ：１２．５〜１３．５％ Ｃｒは、本願発明鋼における基本構成成分であって、十
分な耐食性を得るためには、１２．５％以上含有させる
必要がある。また、δ−フェライトの晶出を抑制して脆
化を防止するためにはＣｒ含有量を１３．５％以下に抑
える必要がある。 Ｎｉ：７．５〜８．６％ Ｎｉは、所望の耐食性および靱性を確保するために、
７．５％以上含有させる必要がある。また、Ｎｉはマル
テンサイト変態点を低下させて、残留オーステナイトを
生成し、強度の低下を招くので所望の強度を確保するた
めには、Ｎｉ含有量の上限を８．６％とする。 Ｍｏ：２〜２．５％ Ｍｏは、マトリックスに固溶してマルテンサイトの強度
を向上させるが、その含有量が２％未満では、本願発明
鋼の所望の強度が得られず、また、２．５％を越えて含
有させると炭化物を過剰に析出して、靱性が低下する。 【０００８】Ｂｅ：０．２〜０．４％ Ｂｅは、優れた時効硬化特性を有することから、Ａｌに
替えて添加されるが、 Ｂｅ含有量が０．２％未満で
は、時効処理後において、充分に析出硬化されず、 所
望の強度が得られない。一方、Ｂｅ含有量が０．４％を
越えると過度の析出 硬化により、所望の靱性が得られ
ない。なお、適正な強度と靱性を得るために はＢｅの
含有量の範囲を０．２５〜０．３５％にするのが望まし
い。なお、上記ステンレス鋼に含有される不可避的不純
物として、Ｓｉ：０．１％以下，Ｍｎ：０．１％以下，
Ｐ：０．０１％以下，Ｓ：０．０１％以下，Ａｌ：０．
０５％以下，Ｎ：０．０１％以下を例示することができ
る。但し、不可避的不純物としては、上記範囲および成
分に限定されるものではなく、要は不可避的に含有され
る不純物を総称するものである。 【０００９】 【実施例】以下に、この発明の実施例を、本発明の範囲
外である比較例と比較しつつ、説明する。なお、比較例
は、ＡＳＴＭ規格Ａ７０５−ＸＭ１３番に準じた成分を
有する析出型ステンテス鋼である。表１に示すように、
本発明鋼（試材Ｎｏ．１〜３）と、比較鋼（試材Ｎｏ．
４，５）とを、真空溶解炉でそれぞれ溶解し、５０ｋｇ
の鋼塊（径１５０ｍｍ）を溶製した。得られた鋼塊を、
幅１３０ｍｍ、厚さ３０ｍｍの断面を有する平板に鍛造
した後、溶体化、焼入れ、時効処理の熱処理を施して供
試材とした。上記熱処理後の供試材にて、機械的性質を
知るために、引張試験およびシャルピー衝撃試験を実施
した。得られた結果は、表２に示すとおりである。表２
から明らかなように、本願発明鋼はいずれも、比較鋼と
同等、もしくはそれ以上の強度を有し、しかも室温の切
欠き靱性（シャルピー吸収エネルギー）は比較鋼よりも
優れている。 【００１０】 【表１】【００１１】 【表２】 【００１２】 【発明の効果】以上説明したように、本願発明の析出硬
化型ステンレス鋼によれば、析出硬化型ステンレス鋼と
して従来得られていた強度、耐食性を損なうことなく、
靱性を向上させることができる。その結果、耐食性、強
度に加え、強靱性が要求される材料への使用が可能とな
り、使用分野が拡大されて、利用の活発化が図られる。
強度を有するとともに、靱性を向上させた析出硬化型ス
テンレス鋼に関するものである。 【０００２】 【従来の技術】周知のように、Ｃｒを多量に添加したス
テンレス鋼は、他の鉄鋼材料に比べ耐食性が優れてお
り、腐食環境下で、広く使用されている。ところで、一
般にステンレス鋼は、マルテンサイト系を除いて、引張
強度は４０〜６０ｋｇｆ／ｍｍ2 程度であり、引張強度
が５０〜１００ｋｇｆ／ｍｍ2程度、あるいはこれ以上
の高強度鋼に比べて、強度の点で劣っている。また、マ
ルテンサイト系ステンレス鋼は、高い強度を有するもの
の、耐食性の点で、他のステンレス鋼に比べ大きく劣っ
ている。 【０００３】これらのステンレス鋼に対し、耐食性の犠
牲をできるだけ小さくして、強度を向上させた材料が望
まれ、その結果、時効硬化を利用して強度を向上させた
析出硬化型ステンレス鋼が開発されている。その一例で
あるマルテンサイト系析出硬化型ステンレス鋼は、優れ
た強度と耐食性を有しており、引張強度が１４０ｋｇｆ
／ｍｍ2 以上で、耐食性も１８−８ステンレス鋼と同等
のものが開発されている。そして、このステンレス鋼
は、上記特性を生かして、特に耐食性が必要で、なおか
つ強度が必要な部材として有効に利用されている。 【０００４】 【発明が解決しょうとする課題】上記したように、析出
硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼によれば、強度の
点で他の高強度鋼に比べて遜色のない、十分に満足でき
る特性が得られている。しかし、シャルピー衝撃値で代
表される靱性値においては、他の高強度鋼に比べて、そ
の値はかなり低く靱性の点で劣っている。このため、使
用条件の厳しい構造用鋼への採用や大きな衝撃的外力を
受ける用途への利用は困難であり、使用分野が制限され
るという問題点がある。この発明は、上記課題を解決す
ることを基本的な目的とし、析出硬化型ステンレス鋼と
して本来有する耐食性および強度を損なうことなく、靱
性の向上を図った新規な析出硬化型ステンレス鋼を提供
しようとするものである。 【０００５】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本願発明の析出硬化型ステンレス鋼は、重量％で
Ｃ：０．０５％以下，Ｃｒ：１２．５〜１３．５％，Ｎ
ｉ：７．５〜８．６％，Ｍｏ：２〜２．５％，Ｂｅ：
０．２〜０．４％を含有し、残部がＦｅおよび不可避的
不純物からなることを特徴とするものである。 【０００６】 【作用】すなわち、本願発明鋼はＡＳＴＭ規格Ａ７０５
ＸＭ−１３番をベースとし、Ａｌに替えてＢｅを添加含
有させ、時効処理により析出硬化させたものである。Ｂ
ｅは、Ａｌに比べ、時効硬化性が大きく、少量の添加で
ベース成分が本来有する耐食性などの優れた特性はその
まま確保され、耐食性、強度、靱性のいずれにおいても
優れた材料が得られる。以下に、上記成分範囲の限定理
由を述べる。 Ｃ：０．０５％以下 本願発明鋼において、Ｃの添加含有は強度を向上させる
が、靱性および耐食性を低下させるので、これらの兼ね
合いを考慮して、Ｃ含有量の上限を０．０５％とした。 【０００７】Ｃｒ：１２．５〜１３．５％ Ｃｒは、本願発明鋼における基本構成成分であって、十
分な耐食性を得るためには、１２．５％以上含有させる
必要がある。また、δ−フェライトの晶出を抑制して脆
化を防止するためにはＣｒ含有量を１３．５％以下に抑
える必要がある。 Ｎｉ：７．５〜８．６％ Ｎｉは、所望の耐食性および靱性を確保するために、
７．５％以上含有させる必要がある。また、Ｎｉはマル
テンサイト変態点を低下させて、残留オーステナイトを
生成し、強度の低下を招くので所望の強度を確保するた
めには、Ｎｉ含有量の上限を８．６％とする。 Ｍｏ：２〜２．５％ Ｍｏは、マトリックスに固溶してマルテンサイトの強度
を向上させるが、その含有量が２％未満では、本願発明
鋼の所望の強度が得られず、また、２．５％を越えて含
有させると炭化物を過剰に析出して、靱性が低下する。 【０００８】Ｂｅ：０．２〜０．４％ Ｂｅは、優れた時効硬化特性を有することから、Ａｌに
替えて添加されるが、 Ｂｅ含有量が０．２％未満で
は、時効処理後において、充分に析出硬化されず、 所
望の強度が得られない。一方、Ｂｅ含有量が０．４％を
越えると過度の析出 硬化により、所望の靱性が得られ
ない。なお、適正な強度と靱性を得るために はＢｅの
含有量の範囲を０．２５〜０．３５％にするのが望まし
い。なお、上記ステンレス鋼に含有される不可避的不純
物として、Ｓｉ：０．１％以下，Ｍｎ：０．１％以下，
Ｐ：０．０１％以下，Ｓ：０．０１％以下，Ａｌ：０．
０５％以下，Ｎ：０．０１％以下を例示することができ
る。但し、不可避的不純物としては、上記範囲および成
分に限定されるものではなく、要は不可避的に含有され
る不純物を総称するものである。 【０００９】 【実施例】以下に、この発明の実施例を、本発明の範囲
外である比較例と比較しつつ、説明する。なお、比較例
は、ＡＳＴＭ規格Ａ７０５−ＸＭ１３番に準じた成分を
有する析出型ステンテス鋼である。表１に示すように、
本発明鋼（試材Ｎｏ．１〜３）と、比較鋼（試材Ｎｏ．
４，５）とを、真空溶解炉でそれぞれ溶解し、５０ｋｇ
の鋼塊（径１５０ｍｍ）を溶製した。得られた鋼塊を、
幅１３０ｍｍ、厚さ３０ｍｍの断面を有する平板に鍛造
した後、溶体化、焼入れ、時効処理の熱処理を施して供
試材とした。上記熱処理後の供試材にて、機械的性質を
知るために、引張試験およびシャルピー衝撃試験を実施
した。得られた結果は、表２に示すとおりである。表２
から明らかなように、本願発明鋼はいずれも、比較鋼と
同等、もしくはそれ以上の強度を有し、しかも室温の切
欠き靱性（シャルピー吸収エネルギー）は比較鋼よりも
優れている。 【００１０】 【表１】【００１１】 【表２】 【００１２】 【発明の効果】以上説明したように、本願発明の析出硬
化型ステンレス鋼によれば、析出硬化型ステンレス鋼と
して従来得られていた強度、耐食性を損なうことなく、
靱性を向上させることができる。その結果、耐食性、強
度に加え、強靱性が要求される材料への使用が可能とな
り、使用分野が拡大されて、利用の活発化が図られる。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項１】 重量％でＣ：０．０５％以下，Ｃｒ：１
２．５〜１３．５％，Ｎｉ：７．５〜８．６％，Ｍｏ：
２〜２．５％，Ｂｅ：０．２〜０．４％を含有し、残部
がＦｅおよび不可避的不純物からなる析出硬化型ステン
レス鋼。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP23243494A JP3381011B2 (ja) | 1994-09-02 | 1994-09-02 | 析出硬化型ステンレス鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP23243494A JP3381011B2 (ja) | 1994-09-02 | 1994-09-02 | 析出硬化型ステンレス鋼 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH0874004A JPH0874004A (ja) | 1996-03-19 |
| JP3381011B2 true JP3381011B2 (ja) | 2003-02-24 |
Family
ID=16939206
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP23243494A Expired - Fee Related JP3381011B2 (ja) | 1994-09-02 | 1994-09-02 | 析出硬化型ステンレス鋼 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3381011B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| DE29517799U1 (de) * | 1995-11-09 | 1996-02-08 | Vacuumschmelze Gmbh, 63450 Hanau | Hochfeste korrosionsbeständige Maraging-Legierung |
| DE10001650A1 (de) * | 2000-01-17 | 2001-07-26 | Vacuumschmelze Gmbh | Federstahl vom Maraging-Typ |
| DE10242322A1 (de) * | 2002-09-12 | 2004-04-01 | Vacuumschmelze Gmbh & Co. Kg | Golfschlägerkopf aus Maraging Stahl |
-
1994
- 1994-09-02 JP JP23243494A patent/JP3381011B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH0874004A (ja) | 1996-03-19 |
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Legal Events
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Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091220 Year of fee payment: 7 |
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