JP3379748B2 - 固体電解質型窒素酸化物センサ - Google Patents

固体電解質型窒素酸化物センサ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体電解質型窒素
酸化物センサに関する。
【0002】
【従来の技術】NASICON(Na1+xZr23-x
x12、xは1または2)を用いる固体電解質型セン
サとしては二酸化炭素センサが良く知られているが、最
近このNASICONを窒素酸化物センサとして応用す
る試みがなされるようになってきた。ここで一般的な固
体電解質型窒素酸化物センサについて説明する。図6
(a)及び(b)にその例を示す。図中符号1’で示さ
れるのはNASICON固体電解質、符号2’は多孔質
白金などの貴金属電極、3’は硝酸バリウム等金属硝酸
塩などの検知極副電極、4’はヒータ基板であって、セ
ンサ素子の温度が低い場合には、素子を加熱して固体電
解質におけるイオン伝導に適した温度に保温する。
【0003】しかしながら、これらセンサは100℃か
ら300℃近傍までは比較的良好な感度を有しているが
300℃付近以上においては、硝酸塩が溶融してしまう
ため窒素酸化物に対する感度が著しく低下する。また動
作温度が低すぎる(250℃未満)と電解質自体の安定
性に欠けるため、低濃度での起電力ドリフトや感度低下
が生じる。これらを解決し、高温で安定に使用できると
センサとして特開平8−62178号公報に記載された
ペロブスカイト型の複合酸化物を電極とするセンサが提
案されている。しかしながら、ペロブスカイト型の複合
酸化物を電極とするセンサの場合、一酸化窒素に対する
感度と二酸化窒素に対する感度とが逆特性であり、これ
らが共存するガスでは感度相殺が生じ、測定値の信頼性
が乏しくなると云った欠点を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
を解決する、すなわち350℃程度までの高温下でも低
濃度の窒素酸化物測定に対して充分な測定安定性を有
し、一酸化窒素及び二酸化窒素に対しても特性が同一な
優れた窒素酸化物センサを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の固体電解質型窒
素酸化物センサは、請求項1に記載の通り、NASIC
ON固体電解質と対電極とを有する固体電解質型窒素酸
化物センサにおいて、基準電極が高活性を有する酸化触
媒層により被覆され、検知電極が酸化錫(IV)からな
る層、あるいは酸化錫(IV)を有する層により被覆さ
れている構成を有する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明において、検知電極は酸化
錫(IV)からなる層、あるいは酸化錫(IV)を有す
る層により被覆されていることが必要である。このよう
な構成は例えば酸化錫(IV)を適当なバインダーと共
に電極に塗布して被覆するなどにより可能となる。ここ
で、詳細は不明であるがこのような構成により、酸化錫
(IV)と検知電極との界面にNOxガスが介在した際
に生じる電子授受により、基準電極との間の電位差を変
化させると考えられる。ここで、窒素酸化物は通常、燃
焼により発生する。そのときには酸素、窒素以外の何ら
かのガスも同時に発生する。例えば燃焼器を例に取れ
ば、一酸化炭素、二酸化炭素、水素等が挙げられる。表
1にFE給湯器(13A都市ガス)の排気ガスの解析結
果を示す。なお、表中、最大燃焼、最小燃焼とはそれぞ
れその燃焼器の最大燃焼、最小燃焼を示す。
【0007】
【表1】
【0008】固体電解質型センサの場合、集電体として
働く電極面が露出されている場合には二酸化炭素を除く
殆どのガスに対し感度を有する。ここで、本発明に係る
固体電解質型窒素酸化物センサでは基準電極が高活性を
有する酸化触媒層により被覆されているため基準電極に
は一酸化炭素あるいは水素等の雑ガスは到達することが
できず、このため、これら雑ガスに対するセンサ感度、
すなわちノイズを除去することができる。なお、検知電
極側では、一酸化炭素による電位変化は極めて小さいた
め問題のないレベルに抑えられる。また水素ガスに対し
てはやや感度が大きいものの、燃焼で発生する水素ガス
のレベルが低いことを考慮すると実用には差し支えな
い。なお、二酸化炭素の場合には検知電極及び基準電極
で共にわずかに感度を有するが、相殺されるため影響を
受けることがない。
【0009】本発明で高活性を有する酸化触媒層とは、
例えば白金、パラジウム及びそれらの酸化物などの化合
物等のいわゆる貴金属触媒を担持した多孔質担体により
構成することができる。多孔質担体としては、セラミッ
ク系担体、例えばアルミナ等を用いることができる。本
発明のセンサは、使用時にはNASICON固体電解質
のイオン伝導性に適した温度に保つことが必要である。
このために、センサを外部から加熱しても良いが、通常
はセンサ自体にヒータを設けることが低消費電力、コン
パクト化の点で好ましい。本発明のセンサにおいて、セ
ンサの汚染や部材の不足を避けるため、センサ全体を多
孔質体で被覆することが望ましい。この場合、シリカ
系、アルミナ系などのセラミック接着剤を用いて被覆す
ることができる。なお、一酸化窒素成分の酸化促進する
ため、この多孔質層がアルミナやムライトセラミック層
からなるものであることが望ましい。
【0010】
【実施例】本発明の固体電解質型窒素酸化物センサの具
体例について以下説明する。 〔センサの製作〕ナトリウム、ケイ素、ジルコニウム、
リンを含む市販の酸化物原料を所定の比率で混合し、直
径10mmのペレットを作製し、これを1100℃で焼
成してNASICON焼結体を作製した。この焼結体を
3mm角、厚さ0.5mmに研磨、切断し、以下NAS
ICONチップとして用いた。このチップの一面にスク
リーン印刷によって一対の金電極を設けた。この一方の
電極にα−テレピネオールをバインダーとして酸化錫
(IV)を混合して作製したペーストを塗布し、800
℃付近で焼成して検知電極とした。一方の金電極に5%
酸化パラジウム(II)を担持させたアルミナペースト
を塗布し、800℃付近で焼成して基準電極とした。次
いで、アルミナ基板上にに白金ヒータをスパッタ法によ
り設けて作製したヒータ基板を取り付け、さらに市販の
セラミック接着剤(セメダイン社製AZボンド)でコー
ティングして固体電解質型窒素酸化物センサを得た。
【0011】このもののモデル断面図を図1(a)に示
した。図中符号1を付して示してあるのがNASICO
N固体電解質、2は電極、3は検知電極側酸化錫(I
V)被覆層、4は基準電極側の酸化パラジウム触媒層
で、5重量%の酸化パラジウム(II)を担持する多孔
質アルミナからなる層である。符号5はヒータ基板、さ
らに6はセンサ全体を保護する多孔質セラミック層であ
る(なお、図1(b)にモデル断面図を示したように構
成することも可能である)。
【0012】〔センサの評価〕上記で作製したセンサの
評価を行った。まず270℃における二酸化窒素に対す
る感度を調べた。結果を図2に示す。図2により二酸化
窒素の濃度変化に対して対数的な関係を有することが判
る。なお、NASICONを固体電解質として用いる窒
素酸化物センサとしては、NASICONの安定温度域
の下限が250℃程度であり、それ以下の温度では0ガ
ス(ゼロガス)である空気中でも、起電力のドリフト、
感度飽和点が確認しにくい。次に、このセンサの二酸化
窒素に対する感度の温度依存性を調べた。結果を図3に
示す。
【0013】図3によりこのセンサの二酸化窒素に対す
る感度は250℃以上350℃以下で最大となることが
判る。従って従来技術の二酸化窒素センサでは測定がで
きなかった300℃以上での精度の良い測定が可能であ
ることが判る。上記250℃以上350℃以下の最大感
度付近におけるガス選択制については、実際の測定環境
を考慮する必要がある。
【0014】一方、270℃における一酸化窒素に対す
る感度を調べた。結果を図4に示す。図4より、一酸化
窒素の濃度変化に対して、二酸化窒素の場合と同様に、
対数的な関係を有することが判る。なお、一酸化窒素に
対する感度は二酸化窒素に対する感度に比べ若干高い
が、これらのセンサ出力は順特性であり、両者が共存し
ているガスを測定対照した場合にも、そのNOx濃度を
良好に検知することができる。
【0015】また雑ガスに対する感度を調べた。水素、
二酸化炭素及び一酸化炭素に対するセンサ出力を図5に
示す。図5より、二酸化炭素及び一酸化炭素に対して本
発明に係る固体電解質型窒素酸化物センサが殆ど感度を
有しないことが判る。一方、水素ガスに対してはやや感
度を有するが、通常の燃焼ガス中の水素ガス濃度を考慮
すると充分実用できることが判る。
【0016】
【発明の効果】本発明の固体電解質型窒素酸化物センサ
は、350℃程度までの高温下でも低濃度の窒素酸化物
測定に対して充分な測定安定性を有し、一酸化窒素及び
二酸化窒素に対しても特性が同一な優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明の固体電解質型窒素酸化物センサ
の一例のモデル断面図である。 (b)本発明の固体電解質型窒素酸化物センサの他の例
のモデル断面図である。
【図2】実施例の固体電解質型窒素酸化物センサの27
0℃における二酸化窒素に対する感度を示す図である。
【図3】実施例の固体電解質型窒素酸化物センサの二酸
化窒素に対する感度の温度依存性を調べた結果を示す図
である。
【図4】実施例の固体電解質型窒素酸化物センサの27
0℃における一酸化窒素に対する感度を示す図である。
【図5】実施例の固体電解質型窒素酸化物センサの雑ガ
スに対する感度を調べた結果を示す図である。
【図6】一般的な固体電解質型窒素酸化物センサの断面
を示すモデル図である。
【符号の説明】
1 NASICON固体電解質 2 電極 3 検知電極側酸化錫(IV)被覆層 4 基準電極側酸化パラジウム層 5 ヒータ基板 6 多孔質セラミック層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−62178(JP,A) 特開 平6−123726(JP,A) 特開 平4−142455(JP,A) 特開 平9−80019(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/416 G01N 27/406

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 NASICON固体電解質と対電極とを
    有する固体電解質型窒素酸化物センサにおいて、基準電
    極が高活性を有する酸化触媒層により被覆され、検知電
    極が酸化錫(IV)からなる層、あるいは酸化錫(I
    V)を有する層により被覆されていることを特徴とする
    固体電解質型窒素酸化物センサ。
  2. 【請求項2】 全体が多孔質材料で被覆されていること
    を特徴とする請求項1に記載の固体電解質型窒素酸化物
    センサ。
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