JP3376927B2 - 制動力制御装置 - Google Patents

制動力制御装置

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JP3376927B2
JP3376927B2 JP29548998A JP29548998A JP3376927B2 JP 3376927 B2 JP3376927 B2 JP 3376927B2 JP 29548998 A JP29548998 A JP 29548998A JP 29548998 A JP29548998 A JP 29548998A JP 3376927 B2 JP3376927 B2 JP 3376927B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、制動力制御装置に
関し、特に、車両用制動装置において制動力を制御する
のに好適な制動力制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば特開平10−4496
5号に開示される制動力制御装置が公知である。この制
動力制御装置は、ブレーキ操作量に応じた液圧を発生す
るマスタシリンダと、マスタシリンダ圧を検出するマス
タ圧センサと、指令値に応じたブレーキ液圧を発生する
油圧アクチュエータとを備えている。制動力制御装置
は、マスタシリンダ圧に基づいてブレーキ踏力を検出す
ると共に、ブレーキ踏力に対して所定の倍力比を有する
液圧(以下、アシスト油圧と称す)がホイルシリンダに
供給されるように油圧アクチュエータを制御する。以
下、ブレーキ操作に応じてホイルシリンダにアシスト油
圧を供給するための制御を、制動補助制御と称す。制動
補助制御によれば、運転者のブレーキ操作を補助して、
大きな制動力を発生させることができる。
【0003】上記従来の装置において、マスタ圧センサ
の異常や液圧回路を構成する制御弁の異常等のシステム
異常が生ずると、上記の制動補助制御を適正に実行でき
なくなる。このため、上記従来の装置では、システム起
動に先だってシステム異常の有無を判別することしてい
る。そして、システム異常が検出されない場合には、シ
ステムが起動され、制動補助制御が開始される。一方、
システム異常が検出された場合は、システムの起動は行
われず、制動補助制御の実行は禁止される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の制動力制御
装置において、システムが起動されていない状態では、
マスタシリンダ圧が直接ホイルシリンダに供給される。
一方、上述の如く、システムが起動されると、以後、制
動補助制御が実行されることにより、ブレーキ操作に応
じて高圧のアシスト油圧がホイルシリンダに供給される
状態となる。このため、システム起動が行われた時点で
ブレーキ操作が行われていると、ホイルシリンダ圧が、
マスタシリンダ圧に等しい液圧から高圧のアシスト油圧
へ急激に立ち上がる。この場合、制動力が急変すること
により、乗員に違和感を与えてしまう。
【0005】本発明は、上述の点に鑑みてなされたもの
であり、システム起動状態においてシステム非起動状態
よりもブレーキ操作に対して大きな制動力を発生する制
動力制御装置において、ブレーキ操作中にシステムが起
動された場合に、制動力が急変するのを防止することを
目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的は、請求項1
に記載する如く、システム起動状態においてシステム非
起動状態よりもブレーキ操作量に対して大きな制動力を
発生する制動補助制御を実行する制動力制御装置であっ
て、車両走行中にブレーキ操作が行われている状況下で
システム起動が行われた場合に、前記制動補助制御の開
始時における制動力の増加勾配を前記ブレーキ操作量に
応じた制動力と前記制動補助制御によって加えられた制
動力との差に比例した勾配とする増加勾配抑制手段を備
える制動力制御装置により達成される。また、上記の目
的は、請求項2に記載する如く、システム起動状態にお
いてシステム非起動状態よりもブレーキ操作量に対して
大きな制動力を発生する制動補助制御を実行する制動力
制御装置であって、 車両走行中にブレーキ操作が行われ
ている状況下でシステム起動が行われた場合に、前記制
動補助制御の開始時における制動力の増加勾配を予め定
められた一定の勾配とする増加勾配抑制手段を備える制
動力制御装置により達成される。 さらに、上記の目的
は、請求項3に記載する如く、システム起動状態におい
てシステム非起動状態よりもブレーキ操作量に対して大
きな制動力を発生する制動補助制御を実行する制動力制
御装置であって、 車両走行中にブレーキ操作が行われて
いる状況下でシステム起動が行われた場合に、前記制動
補助制御の開始時における制動力の増加勾配を時間の経
過に伴って次第に大きくなる勾配とする増加勾配抑制手
段を備える制動力制御装置により達成される。
【0007】請求項1乃至3のそれぞれに記載された
明において、制動力制御装置は、システム起動状態でシ
ステム非起動状態よりもブレーキ操作量に対して大きな
制動力を発生する制動補助制御を実行する。このため、
ブレーキ操作が行われている状況下でシステム起動が行
われると、制動力は増加する。増加勾配抑制手段は、車
両走行中にブレーキ操作が行われている状況下でシステ
ム起動が行われた場合に、制動補助制御の開始時におけ
る制動力の増加勾配を所定値以下に抑制する。この抑制
は、制動力の増加勾配を、1)ブレーキ操作量に応じた
制動力(すなわち、ホイルシリンダ圧によって発生する
制動力)と制動補助制御によって加えられた制動力(す
なわち、アシスト油圧によって発生する制動力)との差
に比例した勾配とすることによって、2)予め定められ
た一定の勾配とすることによって、又は、3)時間の経
過に伴って次第に大きくなる勾配とすることによって、
それぞれ実現される。従って、請求項1乃至3のそれぞ
れに記載された発明によれば、かかる場合に、制動力が
急変することが防止される。
【0008】また、請求項に記載する如く、請求項1
乃至3のいずれか一記載の制動力制御装置において、緊
急制動時には、前記増加勾配抑制手段による前記増加勾
配の抑制の度合いを小さくする抑制度合い減少手段を備
える制動力制御装置は、緊急制動時に大きな制動力を確
保するうえで有効である。本発明において、抑制度合い
減少手段は、緊急制動時(例えば、運転者が急ブレーキ
操作を行った場合や車両前方の所定距離内に障害物が検
出された場合)には、増加勾配抑制手段による制動力の
増加勾配の抑制の度合いが小さくする。このため、大き
な制動力が要求される緊急制動時には、制動力の急変を
防止することよりも、制動力を速やかに増加することが
優先される。
【0009】また、上記の目的は、請求項に記載する
如く、システム起動状態においてシステム非起動状態よ
りもブレーキ操作量に対して大きな制動力を発生する制
動補助制御を実行する制動力制御装置であって、車両走
行中にブレーキ操作が行われている状況下でシステム起
動が行われる場合には、当該ブレーキ操作中は制動補助
制御の実行を禁止する制御禁止手段を備える制動力制御
装置によっても達成される。
【0010】本発明において、制御禁止手段は、車両走
行中にブレーキ操作が行われている状況下でシステム起
動が行われる場合には、当該ブレーキ操作中は制動補助
制御の実行を禁止する。従って、本発明によれば、かか
る場合に、制動補助制御による制動力の増加が防止され
る。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例である
制動力制御装置のシステム構成図である。本実施例の制
動力制御装置は、電子制御ユニット(以下、ECUと称
す)10により制御される。図1に示す如く、制動力制
御装置は、ブレーキペダル12を備えている。ブレーキ
ペダル12には、マスタシリンダ14が連結されてい
る。マスタシリンダ14はブレーキペダル12に付与さ
れる踏力に応じた液圧(以下、マスタシリンダ圧PM/C
と称す)を発生する。
【0012】マスタシリンダ14は、油圧通路15を介
して、油圧アクチュエータ18に接続されている。油圧
通路15には、制御バルブ16が配設されている。制御
バルブ16は常態で開弁状態をとり、ECU10からオ
ン信号を供給されることにより閉弁する電磁開閉バルブ
である。従って、制御バルブ16にオン信号が供給され
ることにより、油圧アクチュエータ18とマスタシリン
ダ14との連通が遮断される。油圧アクチュエータ18
には、また、例えば液圧ポンプ等の液圧供給源20が連
通している。液圧供給源20は、ECU10からオン信
号を供給されることにより作動し、油圧アクチュエータ
18に所定の高圧を供給する。油圧アクチュエータ18
には、更に、各輪のホイルシリンダ22が連通してい
る。なお、図1には、1輪分のホイルシリンダ22のみ
を示している。
【0013】油圧アクチュエータ18は、液圧供給源2
0から供給された高圧を液圧源としてホイルシリンダ2
2に供給する液圧を制御する液圧制御回路を備えてい
る。従って、制御バルブ16がオン(閉弁)され、か
つ、液圧供給源20が作動している状態(以下、ポンプ
圧供給状態と称す)では、ECU10から、液圧制御回
路が備える各電磁バルブに供給する制御信号に基づい
て、ホイルシリンダ圧PW/Cを任意の液圧に制御するこ
とができる。
【0014】油圧アクチュエータ18は、また、油圧通
路15とホイルシリンダ22とを連通する油路を備えて
いる。従って、液圧供給源20が停止され、かつ、制御
バルブ16がオフ(開弁)された状態では、ホイルシリ
ンダ22にはマスタシリンダ圧PM/C が供給される。こ
の状態を、以下、マスタ圧供給状態と称す。また、ホイ
ルシリンダ22の液圧を、以下、ホイルシリンダ圧P
W/C と称す。
【0015】ECU10には、マスタシリンダ圧PM/C
に応じた信号を発生するマスタシリンダ圧センサ24、
ホイルシリンダ圧PW/C に応じた信号を発生するホイル
シリンダ圧センサ26、ブレーキペダル12のペダルス
トロークSに応じた信号を発生するストロークセンサ2
8、及び、各車輪の車輪速VWに応じた信号を発生する
車輪速センサ30が接続されている。ECU10は、こ
れらセンサの出力信号に基づいて、マスタシリンダ圧P
M/C 、ホイルシリンダ圧PW/C 、ペダルストロークS、
及び、車輪速VWを検出する。なお、ECU10は、マ
スタシリンダ圧PM/C 及びペダルストロークSに基づい
てブレーキ踏力を検知すると共に、車輪速VWに基づい
て車速Vを検知する。
【0016】本実施例において、システム異常が検出さ
れない正常時には、ECU10は、ブレーキ操作が行わ
れると、上記のポンプ圧供給状態を実現すると共に、ブ
レーキ踏力に対して所定の倍力比を有する液圧(以下、
アシスト油圧PA と称す)がホイルシリンダ22に供給
されるように、油圧アクチュエータ18に制御信号を供
給する。以下、ブレーキ操作に応じて、ホイルシリンダ
22にアシスト油圧P A を供給すべく実行される上記制
御を、制動補助制御と称す。制動補助制御の実行中は、
ブレーキ操作が行われるとアシスト油圧PA に応じた制
動力が発生する。従って、本実施例の制動力制御装置に
よれば、運転者によるブレーキ操作を補助して大きな制
動力を発生することができる。
【0017】また、ブレーキ操作中に車輪のロック傾向
が検出された場合には、ECU10は油圧アクチュエー
タ18に供給する制御信号に基づいて、車輪のスリップ
率が所定値を越えないようにホイルシリンダ圧PW/C
適宜増減させる。かかる制御によれば、車輪のロックを
防止するアンチロックブレーキシステムとしての機能を
実現することができる。同様に、車両挙動の不安定化傾
向、又は、過剰な駆動トルクに起因するスリップが検出
された場合には、これらの不安定化傾向又はスリップが
収束するようにホイルシリンダ圧PW/C を制御すること
で、車両安定化制御又はトラクションコントロールを実
現することができる。このように、本実施例の制動力制
御装置では、ECU10が油圧アクチュエータ18に供
給する制御信号に基づいて、ブレーキ操作量とは無関係
にホイルシリンダ圧PW/C を制御できるため、各種の自
動ブレーキ制御を実現することが可能となっている。
【0018】本実施例において、ECU10への通電が
開始された場合(例えば、制動力制御装置を搭載する車
両のイグニッションスイッチがオンされた場合や、電源
ラインが瞬断後に回復した場合)、ECU10は、先
ず、イニシャルチェックを実行することにより、システ
ム異常の有無を判別する。ECU10は、イニシャルチ
ェックにおいてシステム異常が検出されない場合に、シ
ステム起動を行い、上記の制動補助制御の実行を許可す
る。具体的には、ECU10は、イニシャルチェックの
終了後、制動補助制御を実現するためのブレーキ制御ル
ーチンを起動する。
【0019】一方、イニシャルチェックにおいてシステ
ム異常が検出されると、ECU10は、システム起動を
行わず、上記ブレーキ制御ルーチンの実行を禁止する。
この場合、ブレーキ操作の有無にかかわらず、制動力制
御装置は、マスタ圧供給状態に維持される。上記の如
く、マスタ圧供給状態では、ホイルシリンダ22にはマ
スタシリンダ圧PM/C が供給される。従って、本実施例
の制動力制御装置によれば、システム非起動状態では、
マスタシリンダ圧PM/C に等しいホイルシリンダ圧P
W/C が発生する。
【0020】上述の如く、本実施例の制動力制御装置に
おいて、システム非起動状態では、マスタ圧供給状態が
維持されることにより、ホイルシリンダ22にはマスタ
シリンダ圧PM/C が供給され、一方、システム起動状態
では、制動補助制御が実行されることにより、ホイルシ
リンダ22にはマスタシリンダ圧PM/C より大きなアシ
スト油圧PA が供給される。従って、ブレーキ操作が行
われた状態でシステム起動が行われた場合、制動補助制
御により直ちにホイルシリンダ22にアシスト油圧PA
が供給されると、ホイルシリンダ圧PW/C はマスタシリ
ンダ圧PM/C に等しい液圧からアシスト油圧PA へ急激
に増大することになる。この場合、システム起動時に制
動力が急変することにより、乗員に違和感を与えてしま
う。特に、車両走行中にブレーキ操作が行われている状
況下で、ECU10への電源の瞬断等によりシステム起
動が行われる場合には、制動力の急変によって乗員に大
きな違和感を与えると共に、車両挙動の不安定化を招く
ことにもなる。
【0021】これに対して、本実施例の制動力制御装置
は、車両走行中にブレーキ操作が行われている状況下で
システムが起動された場合に、アシスト油圧PA を緩や
かに増加させることにより、システム起動時における制
動力の急変を防止し得る点に特徴を有している。図2
は、本実施例の制動力制御装置において、ブレーキ操作
が行われている状況下でシステム起動が行われた場合
の、ホイルシリンダ圧PW/C の時間変化の一例を示す。
なお、図2において、システム起動と同時にアシスト油
圧PA をホイルシリンダ22に供給した場合のホイルシ
リンダ圧PW/C の時間変化を破線で示している。
【0022】図2に例示する状況下では、時刻t0 にお
いて、ブレーキ操作が開始されている。上述の如く、シ
ステム起動前は、ホイルシリンダ圧PW/C はマスタシリ
ンダ圧PM/C と等圧に維持される。このため、ブレーキ
操作の実行に伴って、ホイルシリンダ圧PW/C は圧力P
0 に向けて上昇している。時刻t1 において、ECU1
0への通電が開始されると、ECU10はシステムのイ
ニシャルチェックを開始する。そして、ECU10は、
イニシャルチェックが終了した時刻t2 において、シス
テム起動を行う。この場合、ブレーキ操作が行われてい
るため、直ちにアシスト油圧PA をホイルシリンダ22
に供給したのでは、図2に破線で示す如く、ホイルシリ
ンダ圧PW/C が急激に立ち上がり、制動力の急変により
乗員に違和感を与えてしまうことは上記した通りであ
る。本実施例の制動力制御装置では、図2に実線又は一
点鎖線で示す如く、システム起動後、ホイルシリンダ圧
W/C をアシスト油圧PA に向けて緩やかに増加させる
ことにより、制動力の急変を防止する。以下、ブレーキ
操作中にシステム起動が行われた場合にホイルシリンダ
圧PW/C を緩やかに増加させるべく実行される制御を、
増加勾配抑制制御と称す。
【0023】図3は、本実施例の制動力制御装置におい
て、上記の機能を実現すべくECU10が実行するブレ
ーキ制御ルーチンのフローチャートを示す。図3に示す
ルーチンは、イニシャルチェックの終了後、システム異
常が検出されなかった場合に、所定の時間間隔で繰り返
し実行される定時割り込みルーチンである。図3に示す
ルーチンが起動されると、先ずステップ100の処理が
実行される。
【0024】ステップ100では、ブレーキ操作が行わ
れているか否かが判別される。その結果、ブレーキ操作
が行われていなければ、以後、何ら処理が実行されるこ
となく今回のルーチンは終了される。一方、ステップ1
00において、ブレーキ操作が行われていれば、次にス
テップ102の処理が実行される。ステップ102で
は、アシスト油圧PA (すなわち、制動補助制御におけ
るホイルシリンダ圧PW/C の目標値)が演算される。具
体的には、ステップ102では、マスタシリンダ圧P
M/C 及びペダルストロークSに基づいてブレーキ踏力が
求められ、このブレーキ踏力に所定の倍力比を乗ずるこ
とによりアシスト油圧P A が求められる。
【0025】ステップ104では、車速Vが所定値V0
を上回っているか否かが判別される。その結果、V>V
0 が不成立であれば、車両は停止中であると判断され
る。この場合、次にステップ105において、目標ホイ
ルシリンダ圧PF がアシスト油圧PA に等しい値に設定
された後、ステップ106の処理が実行される。ステッ
プ106では、ホイルシリンダ圧PW/C が目標ホイルシ
リンダ圧PF に一致するように油圧アクチュエータ18
を制御する処理が実行される。具体的には、ステップ1
06では、制御バルブ16をオン(閉弁)状態とし、液
圧供給源20を作動させ、かつ、ホイルシリンダ圧P
W/C が目標ホイルシリンダ圧PF に一致するように、油
圧アクチュエータ18が備える電磁バルブに制御信号を
供給する処理が実行される。従って、ステップ105に
続いてステップ106の処理が実行されることで、ホイ
ルシリンダ22にアシスト油圧PA を供給する制御、す
なわち、制動補助制御が実現される。
【0026】一方、ステップ104において、V>V0
が成立する場合は、車両走行中であると判断されて、次
にステップ108の処理が実行される。ステップ108
では、現在のホイルシリンダ圧PW/C が現在値PC とし
て記憶される。ステップ108に続くステップ110で
は、今回のルーチンが、ECU10への通電開始後、最
初に起動されたルーチンであるか否かが判別される。そ
の結果、今回のルーチンがECU10への通電開始後、
最初に起動されたルーチンであれば、ブレーキ操作が行
われ、かつ、車両が走行している状態でシステムが起動
されたことになる。この場合、増加勾配抑制制御の実行
が必要であると判断され、次にステップ112におい
て、初回制御フラグFA がオン状態にセットされる。ス
テップ112の処理が終了すると、次にステップ114
において、ホイルシリンダ圧PW/C の現在値PC (すな
わち、システム起動直後のホイルシリンダ圧PW/C )が
変数Psに記憶される。ステップ114の処理が終了す
ると、次にステップ116の処理が実行される。
【0027】一方、ステップ110において、今回のル
ーチンがECU10への通電開始後、最初に起動された
ルーチンでなければ、次にステップ118の処理が実行
される。ステップ118では、初回制御フラグFA がオ
ン状態であるか否かが判別される。その結果、初回制御
フラグFA がオン状態でなければ、次に、上記ステップ
106において、アシスト油圧PA をホイルシリンダ2
2に供給する処理が実行される。一方、ステップ118
において、初回制御フラグFA がオン状態にセットされ
ていれば、増加勾配抑制制御の実行が必要であると判断
され、次にステップ116の処理が実行される。
【0028】ステップ116では、目標ホイルシリンダ
圧PF が次式に従って演算される。 PF =K・(PA −Ps )+PC ・・・(1) (1)式において、Kは増加勾配抑制制御におけるホイ
ルシリンダ圧PW/C の増加勾配に対応する値であり0<
K<1の範囲で選択される。例えば、K=0.1とした
場合は、本ルーチンが10回実行されることにより、目
標ホイルシリンダ圧PF がPS からアシスト油圧PA
で増加することになる。
【0029】ステップ116に続くステップ120で
は、目標ホイルシリンダ圧PF がアシスト油圧PA に達
したか否かが判別される。その結果、PF ≧PA が成立
すれば、増加勾配抑制制御は終了すべきと判断され、次
にステップ122において、初回制御フラグFA がオフ
状態にリセットされる。ステップ122の処理が終了す
ると、次にステップ106の処理が実行される。一方、
ステップ120において、PF ≧Pr が不成立であれ
ば、ステップ122はスキップされて、次にステップ1
06の処理が実行される。
【0030】ステップ106では、上述の如く、ホイル
シリンダ圧PW/C が目標ホイルシリンダ圧PF に一致す
るように油圧アクチュエータ18を制御する処理が実行
される。従って、ステップ120又はステップ122に
続いてステップ106の処理が実行されることで、制動
補助制御の開始時に増加勾配抑制制御を実現することが
できる。ステップ106の処理が終了すると、今回のル
ーチンは終了される。
【0031】上述の如く、本実施例によれば、車両走行
中にブレーキ操作が行われている状態でシステム起動が
行われる場合に、増加勾配抑制制御が実行される。増加
勾配抑制制御が実行されると、図2に実線で示す如く、
ホイルシリンダ圧PW/C が係数Kに応じた勾配で緩やか
に増加することで、制動力の急変が防止される。従っ
て、本実施例の制動力制御装置によれば、車両走行中に
ブレーキ操作が行われている状態でシステム起動が行わ
れた場合に、運転者に対して違和感を与えるのを防止す
ることができると共に、車両挙動が不安定化するのを防
止することができる。
【0032】なお、上記実施例では、増加勾配抑制制御
において、システム起動時のホイルシリンダ圧Ps とア
シスト油圧PA との差に比例した勾配でホイルシリンダ
圧P W/C を直線的に増加させるものとした。しかしなが
ら、本発明はこれに限定されるものではなく、ホイルシ
リンダ圧PW/C を予め定めた一定の勾配で増加させるこ
ととしてもよい。あるいは、図2に一点鎖線で示す如
く、ホイルシリンダ圧P W/C の増加勾配を、時間の経過
に伴って次第に大きくなるように変化させてもよい。
【0033】ところで、運転者が大きな制動力を要求す
る緊急ブレーキ操作を行っている場合は、運転者への違
和感を防止するよりも、大きな制動力を確保することを
優先するべきである。同様に、車両前方の所定距離内に
障害物が存在する場合も、緊急制動が必要とされるの
で、大きな制動力を確保することを優先すべきである。
従って、緊急ブレーキ操作が検出された場合(例えば、
アシスト油圧PA が所定値を越えている場合や、マスタ
シリンダ圧PM/C 若しくはペダルストロークS、又はこ
れらの変化速度が所定値を越えている場合等)、及び、
車両前方の所定距離内に障害物が検出された場合に、増
加勾配抑制制御におけるホイルシリンダ圧の増加勾配を
大きく(すなわち、増加勾配の抑制度合いを小さく)
し、あるいは、増加勾配抑制制御の実行を禁止すること
としてもよい。
【0034】なお、上記実施例においては、ECU10
が図3に示すルーチンのステップ100、104、11
0〜118の処理を実行することにより請求項に記載し
た増加勾配抑制手段が実現されている。次に、本発明の
第2実施例について説明する。本実施例の制動力制御装
置は、図1に示すシステム構成において、ECU10が
図3に示すブレーキ制御ルーチンに代えて図4に示すブ
レーキ制御ルーチンを実行することにより実現される。
なお、本実施例の制動力制御装置は、車両走行中にブレ
ーキ操作が行われた状況下でシステム起動が行われた場
合は、そのブレーキ操作中における制動補助制御の実行
を禁止することにより、制動力の急変を防止し得る点に
特徴を有している。図4に示すルーチンは、イニシャル
チェックの終了後、システム異常が検出されなかった場
合に、所定の時間間隔で繰り返し実行される定時割り込
みルーチンである。図4に示すルーチンが起動される
と、先ずステップ200の処理が実行される。
【0035】ステップ200では、ブレーキ操作が実行
されているか否かが判別される。その結果、ブレーキ操
作が実行されていなければ、次にステップ202におい
て、禁止フラグFI がオフ状態にリセットされた後、今
回のルーチンは終了される。なお、後述の如く、禁止フ
ラグFI はオン状態にセットされた場合に、制動補助制
御の実行を禁止するフラグである。従って、ステップ2
00及び202の処理が実行されることで、システム起
動後にブレーキ操作がいったん解除されると、以後、制
動補助制御の実行が許可される。一方、ステップ200
において、ブレーキ操作が実行されていれば、次にステ
ップ204の処理が実行される。
【0036】ステップ204では、車速Vが所定値V0
を上回っているか否かが判別される。その結果、V>V
0 が成立すれば、車両走行中であると判断されて、次に
ステップ206の処理が実行される。ステップ206で
は、上記図3に示すステップ102と同様の手法で、ア
シスト油圧PA が演算される。ステップ206に続くス
テップ208では、ホイルシリンダ圧PW/C がアシスト
油圧PA に一致するように油圧アクチュエータ18を制
御する処理が実行される。従って、ステップ206及び
208の処理によれば、制動補助制御が実現される。ス
テップ208の処理が終了すると、今回のルーチンは終
了される。一方、ステップ204においてV>V0 が不
成立であれば、車両停止中であると判断されて、次にス
テップ210の処理が実行される。
【0037】ステップ210では、今回のルーチンが、
ECU10への通電開始後、最初に起動されたルーチン
であるか否かが判別される。その結果、ECU10への
通電後、最初に起動されたルーチンであれば、ブレーキ
操作が行われ、かつ、車両が走行している状態でシステ
ム起動が行われたことになる。この場合、制動補助制御
の実行を禁止すべきと判断され、次にステップ212に
おいて禁止フラグFIがオン状態にセットされた後、今
回のルーチンは終了される。上記ステップ200、20
4、210、及び212の処理によれば、車両走行中に
ブレーキ操作が行われている状況下でシステム起動が行
われた場合に、制動補助制御の実行が禁止される。一
方、ステップ210において、今回のルーチンがECU
10への通電後、最初に起動されたルーチンでなけれ
ば、次にステップ214の処理が実行される。
【0038】ステップ214では、禁止フラグFI がオ
ン状態であるか否かが判別される。その結果、禁止フラ
グFI がオン状態であれば、制動補助制御が実行される
ことなく、今回のルーチンは終了される。一方、ステッ
プ214において、禁止フラグFI がオン状態でなけれ
ば、次に上記ステップ206及び208の処理、すなわ
ち、制動補助制御を実現するための処理が実行された
後、今回のルーチンは終了される。
【0039】上述の如く、図4に示すルーチンによれ
ば、車両走行中にブレーキ操作が行われている状況下で
システム起動が行われた場合に、制動補助制御の実行が
禁止され、その後、ブレーキ操作が解除されると制動補
助制御の実行が許可される。すなわち、車両走行中にブ
レーキ操作が行われている状況下でシステム起動が行わ
れた場合に、そのブレーキ操作中における制動補助制御
の実行が禁止される。従って、本実施例の制動力制御装
置によれば、上記の如き状況下でシステム起動が行われ
た場合に、制動力が急変するのを防止することができ、
これにより、乗員に対して違和感を与えるのを防止する
ことができると共に、車両挙動が不安定化するのを防止
することができる。
【0040】なお、上記第2実施例においては、ECU
10がステップ200、204、210〜214の処理
を実行することにより、請求項に記載した制御禁止手段
が実現されている。ところで、上記第1及び第2実施例
では、車両走行中にブレーキ操作が行われた状況下でシ
ステム起動が行われた場合にのみ増加勾配抑制制御を実
行し、又は、制動補助制御の実行を禁止することとした
が、本発明はこれに限定されるものではなく、車両停止
中に、又は、ブレーキ操作が実行されていない状況下で
システム起動が行われた場合に、増加勾配抑制制御を実
行し、又は、制動補助制御の実行を禁止することとして
もよい。
【0041】また、上記第1及び第2実施例では、本発
明が液圧式制動装置に適用された場合について説明した
が、本発明はこれに限定されるものではなく、電動モー
タによりブレーキパッドを駆動して制動力を発生する型
式の制動装置に適用することもできる。
【0042】
【発明の効果】上述の如く、請求項1乃至3及び記載
の発明によれば、車両走行中にブレーキ操作が行われて
いる状況下でシステム起動が行われる場合に、制動力が
急変するのを防止することができる。従って、本発明に
よれば、かかる場合に、運転者に違和感を与えるのを防
止することができる。
【0043】また、請求項記載の発明によれば、大き
な制動力が要求される緊急制動時には、運転者に対する
違和感の防止よりも、制動力の速やかな増加を優先する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である制動力制御装置のシス
テム構成図である。
【図2】ブレーキ操作が行われている状況下でシステム
が起動された場合のホイルシリンダ圧PW/C の時間変化
を例示する図である。
【図3】本実施例においてECUが実行するブレーキ制
御ルーチンのフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施例においてECUが実行する
ブレーキ制御ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
10 ECU 14 マスタシリンダ 18 油圧アクチュエータ 22 ホイルシリンダ

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 システム起動状態においてシステム非起
    動状態よりもブレーキ操作量に対して大きな制動力を発
    生する制動補助制御を実行する制動力制御装置であっ
    て、 車両走行中にブレーキ操作が行われている状況下でシス
    テム起動が行われた場合に、前記制動補助制御の開始時
    における制動力の増加勾配を前記ブレーキ操作量に応じ
    た制動力と前記制動補助制御によって加えられた制動力
    との差に比例した勾配とする増加勾配抑制手段を備える
    ことを特徴とする制動力制御装置。
  2. 【請求項2】 システム起動状態においてシステム非起
    動状態よりもブレーキ操作量に対して大きな制動力を発
    生する制動補助制御を実行する制動力制御装置であっ
    て、 車両走行中にブレーキ操作が行われている状況下でシス
    テム起動が行われた場合に、前記制動補助制御の開始時
    における制動力の増加勾配を予め定められた一定の勾配
    とする増加勾配抑制手段を備える ことを特徴とする制動
    力制御装置。
  3. 【請求項3】 システム起動状態においてシステム非起
    動状態よりもブレーキ操作量に対して大きな制動力を発
    生する制動補助制御を実行する制動力制御装置であっ
    て、車両走行中にブレーキ操作が行われている状況下でシス
    テム起動が行われた場合に、前記制動補助制御の開始時
    における制動力の増加勾配を時間の経過に伴って次第に
    大きくなる勾配とする増加勾配抑制手段を備える ことを
    特徴とする制動力制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか一記載の制動
    力制御装置において、 緊急制動時には、前記増加勾配抑制手段による前記増加
    勾配の抑制の度合いを小さくする抑制度合い減少手段を
    備えることを特徴とする制動力制御装置。
  5. 【請求項5】 システム起動状態においてシステム非起
    動状態よりもブレーキ操作量に対して大きな制動力を発
    生する制動補助制御を実行する制動力制御装置であっ
    て、 車両走行中にブレーキ操作が行われている状況下でシス
    テム起動が行われる場 合には、当該ブレーキ操作中は前
    記制動補助制御の実行を禁止する制御禁止手段を備える
    ことを特徴とする制動力制御装置。
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