JP3375546B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

合金化溶融亜鉛めっき鋼板

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、合金化溶融亜鉛め
っき鋼板に係わり、特に、自動車の車体または部品用鋼
板として使用するのに好適で、めっき密着性や摺動性に
優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関する。 【0002】 【従来の技術】合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下、単に
めっき鋼板ということあり)は、安価で耐食性に優れて
いるため、主に自動車の車体用鋼板として用いられてい
る。この耐食性の他に、自動車の車体用鋼板として必要
な特性は、「プレス加工性」に優れていることである。
「プレス加工性」は、プレス加工時に不具合が生じない
かどうかで評価される特性であり、この不具合の1つと
して、「めっき密着性」が劣ることにより生じるパウダ
リングという現象がある。パウダリングとは、めっき層
が粉状または塊状に剥離する現象である。この現象が生
じると、剥離部分の耐食性が劣化したり、剥離しためっ
き片により該鋼板自体に疵が生じるといった問題があっ
た。このパウダリングの原因は、めっき層と地鉄との界
面に硬くて脆いГ相が生成することにより、「めっき密
着性」が劣化するからであると言われている。 【0003】一方、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のプレス
加工時のもう一つの大きな不具合として、鋼板の割れ発
生が挙げられる。この原因は摩擦係数で代表させる「摺
動性」が劣る(摩擦係数が大きい)ことであり、めっき
層の表面に軟質な合金相であるζ相が生成し、このζ相
が該めっき鋼板のプレス加工時に割れを引き起こすので
ある。また、ζ相が多いと、フレーキングと称される箔
状の剥離が起きることも知られている。 【0004】そこで、例えば、特公平3−55544号
公報は、このГ相を極力減らし、かつζ相を含有しない
合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提案している。確かに、
「めっき密着性」を劣化させるГ相を極力減らし、且つ
「摺動性」を劣化させるζ相を含有しない合金化溶融亜
鉛めっき鋼板が工程的に安定して製造できれば、自動車
の車体用鋼板を供給する者にとっては、非常に好ましい
ことである。 【0005】しかしながら、合金化溶融亜鉛めっき鋼板
は、鋼板の溶融亜鉛めっき後に加熱拡散処理を施し、表
面のめっき層と地鉄との間でFeを相互に拡散させ、つ
まり合金化して製造するものであるから、Fe−Zn2
元系状態図に存在する前記合金相がめっき層内に現れる
ことは不可避である。そして、めっき層の表層に出現す
るFe含有率の低いζ相を抑制しようとすると、どうし
てもめっき層と地鉄との界面にFe含有率の高いГ相が
厚く成長し、一方、このГ相の生成を抑止しようとする
と、ζ相が厚く生成してしまう関係は、回避できないも
のであった。 【0006】また、特公平3−55543号公報は、ζ
相からなる結晶を主体とした合金化溶融亜鉛めっき鋼板
を提案している。しかしながら、該めっき鋼板は、上述
したζ相の結晶粒が大きくなり過ぎるために、「摺動
性」と「耐フレーキング性」等に劣るものであった。 【0007】さらに、めっき後に表面粗度の比較的大き
なロールを用いて調質圧延(スキンパスという)を施
し、めっき層の表面に凹凸を形成させて、「塗装鮮映
性」や「摺動性」、「プレス加工性」を改善する技術も
存在する。これは、冷延鋼板の製造においては、従来よ
り該スキンパスで適切な凹凸を表面に転写する技術があ
るが、これを、合金化溶融亜鉛めっき鋼板にも適用する
試みである。なお、合金化溶融亜鉛めっき層の表面に
は、もともと「アウト・バースト」と呼ばれる凸部と
「クレータ」と呼ばれる凹部とがある。しかしながら、
かかる凹凸や形状が、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の特性
に及ぼす影響については未解明であった。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる事情
に鑑み、「プレス加工性」、つまり「摺動性」と「めっ
き密着性」が共に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提
供することを目的としている。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記従来
技術では回避できなかっためっき層におけるГ相とζ相
の相反する関係から脱却する手段の発見に鋭意努力し
た。その際、相構造ではなく、他の要因に着眼して、め
っき鋼板の「めっき密着性」と「摺動性」の改善を追求
した。その結果、前記スキンパスを施す以前の合金化溶
融亜鉛めっきの形状そのものが「めっき密着性」と「摺
動性」に大きく影響していることを見出し、本発明に至
った。 【0010】すなわち、本発明は、Feを8〜13重量
%含むめっき層を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板にお
いて、前記めっき層の表面に存在する凹部の面積率が、
めっき層全表面に対して30%以上であり、鋼板の摺動
後の非摺動面積率が15%以上であることを特徴とする
合金化溶融亜鉛めっき鋼板である。ここで、凹部とは、
めっき層表面の粗さにおける凹部であるが、前記スキン
パスを施した後のめっき鋼板を走査型電子顕微鏡で観察
した時に明瞭に観察できる。なお、その観察方法は後述
する。 【0011】また、非摺動面積率とは、めっき鋼板を金
型と接触させて摺動し、金型と接触していない部分の面
積を全表面の面積に対して求めたものである。なお、こ
の非摺動面積率は、非接触部残存面積率、あるいは非接
触面積率とも言われている。その測定方法は、後の実施
例で述べる。かかる本発明によれば、めっき層の表面に
凹部を多く独立して有しているので、めっき鋼板の「め
っき密着性」が良くなる。また、絞り成形で摺動して
も、独立した凹部が、凸部によって仕切られて油だまり
部となり、「摺動性」も改善される。 【0012】 【発明の実施の形態】以下、発明をなすに至った経緯も
まじえ、本発明の実施の形態を説明する。まず、発明者
は、前記スキンパスで表面粗度の比較的大きなロールを
用い、合金化後のめっき鋼板を圧延して、めっき層表面
の形状を改善することについて検討した。 【0013】その結果、スキンパスは、鋼板にめっきの
付着及びその合金化を施した後になされるものであり、
地鉄との界面に生成するГ相に影響を与えるものではな
く、「めっき密着性」にあまり効果が期待できないこと
がわかった。また、めっき層の表面形状には影響を与え
るが、本来めっき層の表面の凹凸は著しく大きい(例え
ば、粗度Rzで10〜15μm)ので、スキンパスによ
ってもロール凹部のめっき層表面への転写は期待でき
ず、ただ凸部をつぶして平滑にする作用のみであった。
このことは、スキンパス後のめっき層を観察すれば、す
ぐに理解できる。例えば、図2において黒く見える部分
がロールの当っている部分であり、非常に局所的であ
る。これは、めっき層表面の本来の凹凸がスキンパスロ
ールの凹凸よりも遥かにシャープで深いからである。し
たがって図2に示すめっき鋼板では凹部面積率は後述す
る黒白2値化し求めると15%であった。通常、スキン
パスでは、鋼板の伸び率は0.8%程度であるが、これ
を超えて10%程度になるように圧延しても、本来のめ
っき層表面に形成されている凹部を消すことはできなか
った。これは、めっき層が著しく硬く、地鉄の方が柔ら
かいことに原因があるので、スキンパスでめっき層の表
面に凹凸をつけるという考えは、殆ど意味をなさないこ
とを示唆している。 【0014】そこで、発明者は、めっき層の表面形状そ
のものを従来と異なるものに変更させることに着目し、
鋭意研究を行った。その結果、地鉄の結晶粒界に沿った
凸部と結晶粒内の面上に対応する凹部とからなり、深い
凹部が独立をしためっき層の形成に成功し、かかるめっ
き層を有する鋼板を本発明としたのである。その際、凹
部の面積率がめっき層全表面に対して30%以上である
ことが必要である。つまり、地鉄の結晶粒界と結晶粒内
の面上にそれぞれ形成されるめっき層の相違に着目し、
粒界上に凸部、粒内面上に凹部を形成することで、めっ
き鋼板の「めっき密着性」と「摺動性」の改善ができ
た。これは、同時に、粒界上にГ相を局在化、網目状化
させることにより、従来と同じГ量であっても「めっき
密着性」を向上させることである。なお、「めっき密着
性」には、所謂「耐パウダリング性」や塗装後の「耐チ
ッピング性」、剪断エッジの「耐剥離性」等が含まれ
る。また、同時に、結晶粒内の面の上にζ相を局在化さ
せることで、凹部の面積を広げ、めっき層の先端にまで
到達しない、または到達し難いように深くした。その結
果、この凹部は、めっき鋼板のプレス成形時に油溜りと
して作用し、従来多発していた金型の肩かじりを防止で
き、該めっき鋼板の「摺動性」が改善できた。 【0015】勿論、前記したように、従来の合金化溶融
亜鉛めっき鋼板にも、アウト・バーストという凸部とク
レータという凹部とが存在していた。そして、地鉄粒界
上にアウト・バーストが生成すると言われていた。しか
しながら、それは、本発明に係る地鉄粒界に沿って細か
く連なっているような凸部ではなく、アウト・バースト
が広く拡がってしまい、めっき層表面での凹部の存在比
率は圧倒的に小さかった。それに対して、本発明に係る
凹部は、地鉄の結晶粒の粒面に相当する部分に相当し、
めっき層そのものが薄くなって著しく凹んでいる部分で
ある。この本発明に係るめっき層の表面形状を図1に示
すが、図2の従来のめっき層表面に比べ、凹部の輪郭が
明確で、それぞれが独立していることがわかる。図1の
めっき鋼板の場合凹部面積率は70%であった。なお、
めっき層の表面形状がかかる状態であれば、プレス加工
等によって表面が潰されると、凹凸の差はさらに明確に
なるだろうという意味を込め、発明者は、かかる表面状
態を『リング・パターン』と名付けている。 【0016】本発明では、この凹部の面積率を30%以
上にすることが必要である。好ましくは40%以上〜7
0%以下に限定するのが良い。30%以上であれば、め
っき鋼板の「めっき密着性」を劣化させる厚いГ相が粒
内面上の凹部により分断され、局在化、網目状化し、
「めっき密着性」が改善するからである。また、同時
に、凹部の存在により「摺動性」が改善される。さら
に、凹部の外周には凸部が存在し、この凸部がリング状
に連なっていることが好ましい。凹部に油が封じ込めら
れ油だまりとなるからである。例えば、楕円に換算し、
1個の凹部の単径が20μm以上の形態であることが好
ましい。単径が20μm未満では、厚いГ相の分断と凹
部の摺動性改善効果(摩擦抵抗が小さくなる効果)が小
さくなるからである。なお、200μm以上では、油溜
りの効果が小さくなるために好ましくない。また、凹部
の面積率は、70%を超えることは実際上困難である。 【0017】さらに、本発明は、めっき層のFe含有率
が8重量%未満では、ζ相の量が多くなり過ぎて「摺動
性」等が劣化し、13重量%を超えると、Г相の生成量
が多くなり、「めっき密着性」が劣化するので、めっき
層中のFe濃度を8〜13重量%とする。加えて、鋼板
へのめっき付着量が多いと、Г相あるいはζ相が多くな
り易く、20〜60g/m2 の範囲が好適である。これ
は、「耐食性」、「溶接性」の面からも好ましい。な
お、めっき付着量が45g/m2 以上と比較的多い場合
には、前記めっき層のFe含有率を12重量%未満とす
るのが好ましい。 【0018】さらに加えて、めっき層中のAl濃度は、
0.15重量%未満では凹部が生成し難くなり、また、
0.30重量%を超えると、連続式合金化溶融亜鉛めっ
き製造ラインで合金化できなくなるので、めっき層中の
Al濃度も0.15〜0.30重量%が適切である。 【0019】次に、本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき
鋼板の製造について説明する。上記しためっき層のFe
濃度とAl濃度以外にも、該めっき浴に被めっき材であ
る鋼板を浸漬する前に行う焼鈍終了後から浸漬直前まで
の該鋼板の表面状態が重要である。というのは、地鉄か
ら垂直方向へ合金化反応を起こさせる必要があるからで
ある。すなわち、めっき浴へ浸漬する直前に、少しでも
地鉄表面が酸化されていると、めっき後に、その部分で
の合金化が速くなり過ぎ、水平方向への成長が起こって
しまう。このために、浸漬前の鋼板が500℃から60
0℃の温度領域にある時には、雰囲気中の酸素濃度を4
0ppm以下、好ましくは10ppm以下と低く保つの
が好ましい。さらに、微酸化を防止するために、この雰
囲気中の水素濃度を、4容量%以上、好ましくは7容量
%以上と高くするのが良い。 【0020】合金化溶融亜鉛めっき層は、地鉄と溶融亜
鉛めっきとを加熱し、相互拡散によりZn−Fe合金め
っきとしたものであるから、地鉄の影響を受け得る。特
に、極低炭素鋼やTi添加量が多い鋼板の場合には、合
金化速度が局所的に速く、本発明のようなめっき層表面
の形状が得られ難い。かかる場合には、前記した微酸化
防止と共に、めっき浴への浸入板温を浴温よりも+25
〜75℃と著しく高くするのが好ましい(従来は、めっ
き浴の温度と浸入板温はほぼ同じにする)。 【0021】なお、めっき層表面が本発明に係る形状に
なる理由は、以下のように推定される。従来から行って
いる通常のめっき方法では、めっき層より多数の場所の
結晶粒界でアウト・バーストが速く成長し、その部分か
ら結晶が水平方向に成長してしまい、凸部が大きく拡が
る。凹部は、当然、面積的に少なくなる。そこで、本発
明では、前記したように、めっき浴へ浸漬する前に、鋼
板表面の微酸化を防ぎ、浸入板温を高くすることで、粒
界上のアウト・バーストの成長を遅くするようにしたの
である。それでも、粒内の合金化反応よりも速いため
に、結晶は凸状に成長するが、水平方向まではあまり拡
がらない。同時に、地鉄結晶粒内の面上では、相対的に
合金化速度は遅いけれども、合金化反応時に垂直方向へ
の成長が生じる。 【0022】加えて、本発明では、めっき層の合金化温
度を460〜500℃とするのが適切であり、470〜
490℃がより好ましい。460℃未満では、ζ相が多
くなり易く、500℃以上では、ζ相が少なくなり、Г
相が生成し易くなるからである。 【0023】ところで、一般にめっき鋼板をプレス加工
する時には、めっき層の表面は金型と接触して摺動し、
ある程度損傷する。そして、該めっき鋼板の「プレス加
工性」を問題にする場合には、この状態での「摺動性」
が特に重要である。そこで、発明者は、この「摺動性」
についても鋭意検討した。その結果、摺動後の凹部の非
接触残存面積率が15%以上であることが必要である。
より好ましくは、30%以上〜70%以下であることを
知った。15%以上とすることにより前記凹部が油溜り
として働くように、該凹部が、金型と接触する凸部と明
確に区分されるようにしたのである。つまり、めっき層
の表面に凹部が独立した形状で分散した状態にしたので
ある。なお、めっき鋼板の実用上は、実際にプレス加工
した後の摺動部分で評価するのが良いが、プレス加工の
条件によって変化する。したがって、本発明では、1例
として実験室で行う摺動試験を行なった部分で評価し
た。本発明に係るめっき鋼板と従来のめっき鋼板を比較
するため、それらのめっき層表面摺動後の状態を図3及
び図4に示す。図3より、本発明に係るめっき鋼板で
は、白く見える凹部が黒く見える凸部によって分断され
た前記『リング・パターン』が観察できる。なお、非接
触残存面積率を70%超とすることは、実際上困難であ
る。 【0024】また、「めっき密着性」を重視し、しかも
製造し易くするには、合金化温度を低下させることが良
いが、ζ相が生成し易くなる。ζ相の結晶構造は単斜晶
系であるが、通常細長い柱状晶として観察される。本発
明では、ζ相は凹部に主として存在しており、図5
(a)から明らかなように、地鉄とほぼ垂直に成長して
いる。一方、従来のめっき層では、図5(b)に示すよ
うに細長い結晶が観察でき、結晶が水平方向に成長して
いる。かかる場合は、「摺動性」は劣化する傾向があ
る。その理由は、すぐそばに存在する凸部に、ζ相が混
ざるためと思われる。全ての凹部でζ相が垂直になって
いなくても、凹部の細長く水平に見えるζ相の面積比率
が20%以下、好ましくは10%以下なら「摺動性」に
とって好ましい。 【0025】以上述べためっき層の表面形態と合わせて
考えると、従来では、ζ相は、結晶軸と平行な細長い面
がめっき表層に露出しており、これがめっき鋼板の「摺
動性」を劣化させることで「プレス加工性」を劣化させ
ていたと思われる。本発明では、ζ相の結晶が微細で、
かつ地鉄からほぼ垂直に成長しており、しかも、めっき
層の最先端にまで到達していないか、し難いために凹部
に存在している。その結果、ζ相は金型と接触せず、
「摺動性」が劣化しないものと推定される。さらに、凹
部では、Feの拡散速度が遅いためにζ相が生成してし
まうが、凸部では、相対的に拡散速度が速いために、ζ
相が生成し難い。本発明では、ζ相を検出できるほどの
存在を許容できるようにしたことにより、Г相の生成が
抑制できるようになった。 【0026】本発明の対象とする合金化溶融亜鉛めっき
層では、Fe,Al以外の成分は、特に規定しない。例
えば、Pb、Cd、Sn、Mg、Mn、Cr、にRE
M、Bi、Sb、P、S、Oなどを不可避的、または少
量添加されていても、本質的には発明の効果は変わらな
いからである。 【0027】 【実施例】連続鋳造で得たTi−Nb添加極低炭素鋼
(ULC−IF)の鋳片を圧延して鋼帯とし、連続溶融
亜鉛めっきライン(CGL)にて、800〜850℃で
再結晶焼鈍を行なった。その後、460℃のめっき浴に
連続的に浸漬して、溶融亜鉛めっきを行ない、引き上げ
た鋼帯を、インラインで470〜490℃に10〜20
秒間加熱し、合金化処理を行なった。さらに、該鋼帯
に、通常のスキンパス処理を施した。その際、めっき層
中のAl含有率は、めっき浴中のAl濃度によって、め
っき層中のFe含有率は、合金化炉の加熱条件を適宜選
定して調整された。また、鋼帯の進行速度は、80〜1
50m/minの範囲で、適宜選定した。本発明の効果
は、スキンパスを経過した鋼帯から試験片を採取し、下
記の性能試験によって評価された。 【0028】「めっき密着性としての耐パウダリング
性」の評価試験 上記で得た合金化溶融亜鉛めっき鋼板を90度曲げ曲げ
戻しを施し、圧着側のをテープ剥離して、亜鉛の剥離量
を蛍光X線にて測定した。蛍光X線によるカウント数
(C.P.S. )を、次のように分類し、良否を判定した。【0029】「凹部の面積率」電子顕微鏡のSEM観察
(200倍)(印加電圧25kv)により観察し、凹部
(白く見える部分)と凸部(黒く見える部分)を観察
し、凹部(白く見える部分)と凸部(黒く見える部分)
を画像解析で2値化し(黒と白)、白い部分を凹部面積
率として求めた。 【0030】「摺動後の非接触残存面積率」後述する平
面摺動試験2回後の前記SEM観察により、金型に接触
した部分(黒く見える部分)と非接触部(白く見える部
分)とを画像解析で2値化し(黒と白)、白い部分を非
接触残存面積率として求めた。 【0031】「平面摺動試験」めっき鋼板に洗浄油(プ
レトンR303)を塗油し、押え圧200kgfとした
平面摺動試験で、同じ面繰り返し摺動した。 【0032】「摺動性(摩擦係数)」前記平面摺動試験
において、同一個所を10回摺動試験し、10回目の摩
擦係数を測定した。摩擦係数が0.125以下は、摺動
性が優れたものに相当する。 【0033】上記評価試験の結果を一括して表1に示
す。表1より、本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板
は、いずれも「めっき密着性」に優れ、同時に「摺動
性」にも優れていることが明らかである。なお、比較例
4は、実プレスで割れが発生したものであり、摺動部の
非接触残存面積率は、10%であった。実施例4は、実
プレスで「プレス加工性」が良かったものであり、摺動
部の非接触残存面積率は、35%であった。 【0034】 【表1】 【0035】 【発明の効果】以上説明したように、本発明により、
「めっき密着性」及び「摺動性」が共に優れた合金化溶
融亜鉛めっき鋼板を、提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の電子
顕微鏡観察結果を示す図である。 【図2】従来の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の電子顕微鏡
観察結果を示す図である。 【図3】本発明に係る合金化溶融亜鉛めっき鋼板の摺動
試験後に、電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。 【図4】従来の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の摺動試験後
に、電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。 【図5】合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層表面を電
子顕微鏡で観察し、凹部のζ相の形状を示す図であり、
(a)は本発明に係る、(b)は従来のめっき鋼板に相
当する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飛山 洋一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 技術研究所内 (56)参考文献 特開 平3−211266(JP,A) 特開 平7−18403(JP,A) 特開 平7−173595(JP,A) 特開 平8−27556(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/00 - 2/40

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 Feを8〜13重量%含むめっき層を有
    する合金化溶融亜鉛めっき鋼板において、 前記めっき層の表面に存在する凹部の面積率が、めっき
    層全表面に対して30%以上であり、かつ鋼板の摺動後
    の非摺動面積率が15%以上であることを特徴とする合
    金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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