JP3372894B2 - 摺動抵抗を有する制御系の制御装置 - Google Patents
摺動抵抗を有する制御系の制御装置Info
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- JP3372894B2 JP3372894B2 JP14679399A JP14679399A JP3372894B2 JP 3372894 B2 JP3372894 B2 JP 3372894B2 JP 14679399 A JP14679399 A JP 14679399A JP 14679399 A JP14679399 A JP 14679399A JP 3372894 B2 JP3372894 B2 JP 3372894B2
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- G05—CONTROLLING; REGULATING
- G05B—CONTROL OR REGULATING SYSTEMS IN GENERAL; FUNCTIONAL ELEMENTS OF SUCH SYSTEMS; MONITORING OR TESTING ARRANGEMENTS FOR SUCH SYSTEMS OR ELEMENTS
- G05B13/00—Adaptive control systems, i.e. systems automatically adjusting themselves to have a performance which is optimum according to some preassigned criterion
- G05B13/02—Adaptive control systems, i.e. systems automatically adjusting themselves to have a performance which is optimum according to some preassigned criterion electric
- G05B13/0205—Adaptive control systems, i.e. systems automatically adjusting themselves to have a performance which is optimum according to some preassigned criterion electric not using a model or a simulator of the controlled system
- G05B13/0255—Adaptive control systems, i.e. systems automatically adjusting themselves to have a performance which is optimum according to some preassigned criterion electric not using a model or a simulator of the controlled system the criterion being a time-optimal performance criterion
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摺動抵抗を有する
制御系の制御装置に関し、詳しくは、摺動抵抗を有する
制御系をスライディングモード制御法により制御する制
御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、この種の制御装置としては、油圧
制御系に対してスライディングモード制御法を用い制御
するものが提案されている(例えば、特開平8−611
22号公報など)。スライディングモード制御法は、強
いロバスト性を併せ持つ優れた制御系であるが、観測で
きない寄生ダイナミクスや大きなむだ時間が制御系に存
在すると、ロバスト性が著しく減退することが知られて
いる。こうした問題に対して、図11に示すように本来
不連続な切換関数σと操作量uとの関係を図12に示す
ように連続な飽和関数の関係に置き換える方法や(例え
ば、コロナ社出版の野波健蔵と田宏奇との共著「スライ
ディングモード制御」の27ページなど)、偏差が小さ
いときには制御ゲインの切換をソフトウエアからハード
ウエアに変更して切換速度を早くする方法(例えば、特
開平5−88749号公報など)、切換関数が切換平面
をよぎる毎にゲインを小さくする方法(例えば、特開平
2−75001号公報など)が提案されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、飽和関
数の関係に置き換える方法や切換関数が切換平面をよぎ
る毎にゲインを小さくする方法では、フィードバック制
御系が収束状態近傍にあるとき、すなわち切換関数の出
力が値0近傍にあるときには、出力ゲインは値0に近づ
くために、スライディングモード制御の摺動抵抗に対す
る有効性が失われるといった問題があった。例えば、ク
ラッチのスリップ速度x1を0rpmから目標値の20
rpmへステップさせるのに必要な入力値の1.2倍を
摺動抵抗の大きさと仮定すると共にむだ時間を128m
sと仮定してシミュレーションすると、そのシミュレー
ション結果は図13ないし図16のようになる。図13
に示すように、摺動抵抗の存在によりクラッチのスリッ
プ速度x1は目標値に収束しない。なお、図13はクラ
ッチのスリップ速度x1の時間変化を示すグラフであ
り、図14はスリップ速度x1の微分値であるx2の時
間変化を示すグラフであり、図15は操作量uの時間変
化を示すグラフであり、図16は切換関数σの時間変化
を示すグラフである。 【0004】本発明の摺動抵抗を有する制御系の制御装
置は、スライディングモード制御のロバスト性を保持す
ることを目的の一つとする。また、本発明の摺動抵抗を
有する制御系の制御装置は、摺動抵抗の存在による制御
性の悪化を防止することを目的の一つとする。 【0005】 【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本
発明の摺動抵抗を有する制御系の制御装置は、上述の目
的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採っ
た。 【0006】本発明の摺動抵抗を有する制御系の制御装
置は、摺動抵抗を有するクラッチの制御系をスライディ
ングモード制御法により制御する制御装置であって、ク
ラッチのスリップ速度とスリップ速度の目標値との偏差
と、操作量とクラッチスリップ速度の関係を示すスライ
ディング制御におけるクラッチの状態量に基づいて切換
面を演算する切換面演算手段と、該演算された切換面に
所定範囲の傾きを持つ波形の搬送波を付加する搬送波付
加手段と、該搬送波が付加された切換面の値に基づいて
操作量を設定する操作量設定手段と、を備えることを要
旨とする。 【0007】この本発明の摺動抵抗を有するクラッチの
制御系の制御装置では、フィードバック制御系が収束状
態近傍となり切換関数の出力が値0近傍にあるときで
も、搬送波が付加された切換面の値は周期的な値を持つ
から、摺動抵抗を有する制御系であっても良好に制御す
ることができる。また、切換面の値に応じて操作量を変
化させて制御するから、強いロバスト性を保持すること
ができる。 【0008】ここで、「所値範囲の傾きを持つ波形」に
は、垂直に変化する傾きが無限大の波形(例えばディザ
波のような矩形波)は含まれず、有限の傾きを有するサ
イン波や複数のサイン波による合成波,ノコギリ波,台
形波などの様々な周期関数により表わされる波形が含ま
れる。また、「搬送波」であるから、周期的に変化する
ものに限定される。 【0009】 【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を実施
例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である
摺動抵抗を有する制御系の制御装置の概念を例示するブ
ロック図である。なお、この実施例の制御装置は、摺動
抵抗を有する制御系をスライディングモード制御法によ
り制御するものである。図示するように、実施例の制御
装置は、目標値に追従させるべき状態量の実際値と目標
値の偏差を求める(ステップ1)。このステップ1は、
サーボ系で構成するときには、実際値と目標値との偏差
に代えて、目標値に追従させるべき状態量の実際値と、
この実際値と目標値との偏差の時間積分値との偏差を求
めるものにする。 【0010】続いて、求めた偏差から切換面σを計算し
(ステップ2)、この計算した切換面σに搬送波を付加
する(ステップ3)。搬送波は、図2に例示するサイン
波や図3に例示するノコギリ波のように周期関数である
と共に、波形における傾きが有限の値を持つ必要があ
る。即ち、図4に例示するディザ波(矩形波)のよう
に、波形の傾きがプラス無限大あるいはマイナス無限大
と値0しか持たないものは含まれない。この理由につい
ては後述する。なお、搬送波が付加された後の切換面を
以後「修正切換面σ’」と呼ぶことにする。こうして搬
送波を付加すると、搬送波が付加された後の切換面、即
ち修正切換面σ’の値に基づいて操作量uを出力する
(ステップ4)。 【0011】図5は、搬送波としてノコギリ波を用いた
際の本実施例の制御装置における切換面σと修正切換面
σ’と操作量uとの関係を例示する説明図である。図示
するように、修正切換面σ’は、切換面σにノコギリ波
が付加されることにより、切換面σが正から負に変化す
る値0近傍で正の値と負の値とを繰り返すから、操作量
uは、修正切換面σ’の正負によってプラスαとマイナ
スαとを繰り返す。このとき、操作量uのプラスαとマ
イナスαとの時間比は切換面σの値に応じたものとなる
から、切換面σが値0となる状態で安定するようにな
る。これは次のことと同意である。制御が定常状態にあ
るとき、即ち切換面σが値0近傍にあるときには、フィ
ードバック出力としての操作量uの値は、外乱が加わっ
たときでも搬送波の周波数(図5中aまたはbで示した
周期)でプラスαとマイナスαとを規則正しく交互に繰
り返すから、高いロバスト性を保持することができる。
即ち、切換面σが値0近傍にないときには通常のスライ
ディングモード制御法と同様な動きを示し、切換面σが
値0近傍のときにはディザ信号と同様に周期的な動きを
示すのである。更に、切換面σが値0近傍において、σ
の大きさに応じて操作量を変化させることができる。こ
の結果、摺動抵抗に対する制御性の悪化を防止すること
ができると共に、スライディングモード制御の優れたロ
バスト性を保持することができるのである。 【0012】図6は、搬送波としてディザ波(矩形波)
を用いた際に比較例の制御装置における切換面σと切換
平面σ’と操作量uとの関係を例示する説明図である。
図示するように、操作量uは、搬送波(ディザ波)と同
じ波形となり、図5に例示する搬送波としてノコギリ波
を用いる場合と違って、切換面σの値は反映されない。
これが実施例の制御装置における搬送波としてディザ波
が適していない理由である。 【0013】次に、上述した実施例の摺動抵抗を有する
制御系の制御装置をクラッチ制御系に適用した場合につ
いて説明する。次式(1)は、制御対象を線形2次シス
テムとして表わしたものである。ここで、x1はクラッ
チのスリップ速度[rpm]であり、x2はスリップ速
度x1の時間微分[rpm/s]であり、uは操作量、
即ちコントローラ出力[%]であり、a1やa2,bは
状態変数である。 【0014】 【数1】 【0015】この式(1)を目標値追従を考慮すると共
にサーボ系への拡大を考えると、次式(2)のようにな
る。ここで、rはスリップ速度x1の目標値であり、v
はスリップ速度x1と目標値rとの誤差の時間積分値で
ある。 【0016】 【数2】 【0017】式(2)の状態量に対して次式(3)ない
し式(5)のローパスフィルタをかけて切換面σを計算
すると、切換面σは次式(6)で表わされる。ここで、
式(3)ないし式(5)中のFやG,H,Lは係数であ
り、式(6)中のS1やS2はスライディングモード制
御法における係数である。なお、式(6)中の括弧内の
計算は図1のステップ1の偏差の計算に該当し、式
(6)の計算が図1のステップ2の切換面σの計算に該
当する。 【0018】 【数3】 σ=S1(x1’−k・v’)+S2・X2’
(6) 【0019】そして、次式(7)に示すように切換面σ
に搬送波f(ω,t)を付加して修正切換面σ’を計算
し、この修正切換面σ’の値に基づいてフィードバック
出力としての操作量uを次式(8)により出力する。な
お、式(7)による修正切換面σ’の計算が図1のステ
ップ3に該当し、修正切換面σ’の値に基づいて操作量
uを求めるのが図1のステップ4に該当するのは勿論で
ある。 【0020】σ’=σ+f(ω,t) (7) 【数4】 【0021】搬送波f(ω、t)として振幅120周期
0.168秒(5.95Hz)のサイン波を用い、0r
pmのスリップ速度x1の状態のときに目標値rを20
rpmを与えたときのシミュレーション結果を図7ない
し図10に示す。図7はクラッチのスリップ速度x1の
時間変化を表わすグラフであり、図8はスリップ速度X
1の微分値であるX2の時間変化を示すグラフであり、
図9は操作量uの時間変化を示すグラフであり、図10
は修正切換面σ’の時間変化を示すグラフである。図7
に示すように、実施例の制御装置では、図13ないし図
16に例示した従来例の制御装置と違い、クラッチのス
リップ速度x1は目標値rの値20rpmに収束してい
る。 【0022】以上説明したように、実施例の摺動抵抗を
有する制御系の制御装置によれば、スライディングモー
ド制御法における切換面σに波形に有限の傾きを有する
搬送波を付加して修正切換面σ’を求め、この修正切換
面σ’の値に基づいて操作量uを出力することにより、
摺動抵抗を有すると共にむだ時間を有する制御系に対す
る制御性を向上させることができると共に高いロバスト
性を保持することができる。 【0023】実施例の制御装置では、クラッチ制御系を
サーボ系での構成として式を用いて一例を説明したが、
サーボ系の構成にしないものとしてもよい。この場合、
式(6)に代えて次式(9)を用いればよい。 【0024】 σ=S1(x1’−r)+S2・x2’ (9) 【0025】実施例の制御装置では、操作量uの一例と
して式(8)を用いて出力したが、次式(10)を用い
て出力するものとしてもよい。 【0026】 【数5】 【0027】 【0028】以上、本発明の実施の形態について実施例
を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限
定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲
内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論であ
る。
制御系の制御装置に関し、詳しくは、摺動抵抗を有する
制御系をスライディングモード制御法により制御する制
御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、この種の制御装置としては、油圧
制御系に対してスライディングモード制御法を用い制御
するものが提案されている(例えば、特開平8−611
22号公報など)。スライディングモード制御法は、強
いロバスト性を併せ持つ優れた制御系であるが、観測で
きない寄生ダイナミクスや大きなむだ時間が制御系に存
在すると、ロバスト性が著しく減退することが知られて
いる。こうした問題に対して、図11に示すように本来
不連続な切換関数σと操作量uとの関係を図12に示す
ように連続な飽和関数の関係に置き換える方法や(例え
ば、コロナ社出版の野波健蔵と田宏奇との共著「スライ
ディングモード制御」の27ページなど)、偏差が小さ
いときには制御ゲインの切換をソフトウエアからハード
ウエアに変更して切換速度を早くする方法(例えば、特
開平5−88749号公報など)、切換関数が切換平面
をよぎる毎にゲインを小さくする方法(例えば、特開平
2−75001号公報など)が提案されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、飽和関
数の関係に置き換える方法や切換関数が切換平面をよぎ
る毎にゲインを小さくする方法では、フィードバック制
御系が収束状態近傍にあるとき、すなわち切換関数の出
力が値0近傍にあるときには、出力ゲインは値0に近づ
くために、スライディングモード制御の摺動抵抗に対す
る有効性が失われるといった問題があった。例えば、ク
ラッチのスリップ速度x1を0rpmから目標値の20
rpmへステップさせるのに必要な入力値の1.2倍を
摺動抵抗の大きさと仮定すると共にむだ時間を128m
sと仮定してシミュレーションすると、そのシミュレー
ション結果は図13ないし図16のようになる。図13
に示すように、摺動抵抗の存在によりクラッチのスリッ
プ速度x1は目標値に収束しない。なお、図13はクラ
ッチのスリップ速度x1の時間変化を示すグラフであ
り、図14はスリップ速度x1の微分値であるx2の時
間変化を示すグラフであり、図15は操作量uの時間変
化を示すグラフであり、図16は切換関数σの時間変化
を示すグラフである。 【0004】本発明の摺動抵抗を有する制御系の制御装
置は、スライディングモード制御のロバスト性を保持す
ることを目的の一つとする。また、本発明の摺動抵抗を
有する制御系の制御装置は、摺動抵抗の存在による制御
性の悪化を防止することを目的の一つとする。 【0005】 【課題を解決するための手段およびその作用・効果】本
発明の摺動抵抗を有する制御系の制御装置は、上述の目
的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採っ
た。 【0006】本発明の摺動抵抗を有する制御系の制御装
置は、摺動抵抗を有するクラッチの制御系をスライディ
ングモード制御法により制御する制御装置であって、ク
ラッチのスリップ速度とスリップ速度の目標値との偏差
と、操作量とクラッチスリップ速度の関係を示すスライ
ディング制御におけるクラッチの状態量に基づいて切換
面を演算する切換面演算手段と、該演算された切換面に
所定範囲の傾きを持つ波形の搬送波を付加する搬送波付
加手段と、該搬送波が付加された切換面の値に基づいて
操作量を設定する操作量設定手段と、を備えることを要
旨とする。 【0007】この本発明の摺動抵抗を有するクラッチの
制御系の制御装置では、フィードバック制御系が収束状
態近傍となり切換関数の出力が値0近傍にあるときで
も、搬送波が付加された切換面の値は周期的な値を持つ
から、摺動抵抗を有する制御系であっても良好に制御す
ることができる。また、切換面の値に応じて操作量を変
化させて制御するから、強いロバスト性を保持すること
ができる。 【0008】ここで、「所値範囲の傾きを持つ波形」に
は、垂直に変化する傾きが無限大の波形(例えばディザ
波のような矩形波)は含まれず、有限の傾きを有するサ
イン波や複数のサイン波による合成波,ノコギリ波,台
形波などの様々な周期関数により表わされる波形が含ま
れる。また、「搬送波」であるから、周期的に変化する
ものに限定される。 【0009】 【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を実施
例を用いて説明する。図1は、本発明の一実施例である
摺動抵抗を有する制御系の制御装置の概念を例示するブ
ロック図である。なお、この実施例の制御装置は、摺動
抵抗を有する制御系をスライディングモード制御法によ
り制御するものである。図示するように、実施例の制御
装置は、目標値に追従させるべき状態量の実際値と目標
値の偏差を求める(ステップ1)。このステップ1は、
サーボ系で構成するときには、実際値と目標値との偏差
に代えて、目標値に追従させるべき状態量の実際値と、
この実際値と目標値との偏差の時間積分値との偏差を求
めるものにする。 【0010】続いて、求めた偏差から切換面σを計算し
(ステップ2)、この計算した切換面σに搬送波を付加
する(ステップ3)。搬送波は、図2に例示するサイン
波や図3に例示するノコギリ波のように周期関数である
と共に、波形における傾きが有限の値を持つ必要があ
る。即ち、図4に例示するディザ波(矩形波)のよう
に、波形の傾きがプラス無限大あるいはマイナス無限大
と値0しか持たないものは含まれない。この理由につい
ては後述する。なお、搬送波が付加された後の切換面を
以後「修正切換面σ’」と呼ぶことにする。こうして搬
送波を付加すると、搬送波が付加された後の切換面、即
ち修正切換面σ’の値に基づいて操作量uを出力する
(ステップ4)。 【0011】図5は、搬送波としてノコギリ波を用いた
際の本実施例の制御装置における切換面σと修正切換面
σ’と操作量uとの関係を例示する説明図である。図示
するように、修正切換面σ’は、切換面σにノコギリ波
が付加されることにより、切換面σが正から負に変化す
る値0近傍で正の値と負の値とを繰り返すから、操作量
uは、修正切換面σ’の正負によってプラスαとマイナ
スαとを繰り返す。このとき、操作量uのプラスαとマ
イナスαとの時間比は切換面σの値に応じたものとなる
から、切換面σが値0となる状態で安定するようにな
る。これは次のことと同意である。制御が定常状態にあ
るとき、即ち切換面σが値0近傍にあるときには、フィ
ードバック出力としての操作量uの値は、外乱が加わっ
たときでも搬送波の周波数(図5中aまたはbで示した
周期)でプラスαとマイナスαとを規則正しく交互に繰
り返すから、高いロバスト性を保持することができる。
即ち、切換面σが値0近傍にないときには通常のスライ
ディングモード制御法と同様な動きを示し、切換面σが
値0近傍のときにはディザ信号と同様に周期的な動きを
示すのである。更に、切換面σが値0近傍において、σ
の大きさに応じて操作量を変化させることができる。こ
の結果、摺動抵抗に対する制御性の悪化を防止すること
ができると共に、スライディングモード制御の優れたロ
バスト性を保持することができるのである。 【0012】図6は、搬送波としてディザ波(矩形波)
を用いた際に比較例の制御装置における切換面σと切換
平面σ’と操作量uとの関係を例示する説明図である。
図示するように、操作量uは、搬送波(ディザ波)と同
じ波形となり、図5に例示する搬送波としてノコギリ波
を用いる場合と違って、切換面σの値は反映されない。
これが実施例の制御装置における搬送波としてディザ波
が適していない理由である。 【0013】次に、上述した実施例の摺動抵抗を有する
制御系の制御装置をクラッチ制御系に適用した場合につ
いて説明する。次式(1)は、制御対象を線形2次シス
テムとして表わしたものである。ここで、x1はクラッ
チのスリップ速度[rpm]であり、x2はスリップ速
度x1の時間微分[rpm/s]であり、uは操作量、
即ちコントローラ出力[%]であり、a1やa2,bは
状態変数である。 【0014】 【数1】 【0015】この式(1)を目標値追従を考慮すると共
にサーボ系への拡大を考えると、次式(2)のようにな
る。ここで、rはスリップ速度x1の目標値であり、v
はスリップ速度x1と目標値rとの誤差の時間積分値で
ある。 【0016】 【数2】 【0017】式(2)の状態量に対して次式(3)ない
し式(5)のローパスフィルタをかけて切換面σを計算
すると、切換面σは次式(6)で表わされる。ここで、
式(3)ないし式(5)中のFやG,H,Lは係数であ
り、式(6)中のS1やS2はスライディングモード制
御法における係数である。なお、式(6)中の括弧内の
計算は図1のステップ1の偏差の計算に該当し、式
(6)の計算が図1のステップ2の切換面σの計算に該
当する。 【0018】 【数3】 σ=S1(x1’−k・v’)+S2・X2’
(6) 【0019】そして、次式(7)に示すように切換面σ
に搬送波f(ω,t)を付加して修正切換面σ’を計算
し、この修正切換面σ’の値に基づいてフィードバック
出力としての操作量uを次式(8)により出力する。な
お、式(7)による修正切換面σ’の計算が図1のステ
ップ3に該当し、修正切換面σ’の値に基づいて操作量
uを求めるのが図1のステップ4に該当するのは勿論で
ある。 【0020】σ’=σ+f(ω,t) (7) 【数4】 【0021】搬送波f(ω、t)として振幅120周期
0.168秒(5.95Hz)のサイン波を用い、0r
pmのスリップ速度x1の状態のときに目標値rを20
rpmを与えたときのシミュレーション結果を図7ない
し図10に示す。図7はクラッチのスリップ速度x1の
時間変化を表わすグラフであり、図8はスリップ速度X
1の微分値であるX2の時間変化を示すグラフであり、
図9は操作量uの時間変化を示すグラフであり、図10
は修正切換面σ’の時間変化を示すグラフである。図7
に示すように、実施例の制御装置では、図13ないし図
16に例示した従来例の制御装置と違い、クラッチのス
リップ速度x1は目標値rの値20rpmに収束してい
る。 【0022】以上説明したように、実施例の摺動抵抗を
有する制御系の制御装置によれば、スライディングモー
ド制御法における切換面σに波形に有限の傾きを有する
搬送波を付加して修正切換面σ’を求め、この修正切換
面σ’の値に基づいて操作量uを出力することにより、
摺動抵抗を有すると共にむだ時間を有する制御系に対す
る制御性を向上させることができると共に高いロバスト
性を保持することができる。 【0023】実施例の制御装置では、クラッチ制御系を
サーボ系での構成として式を用いて一例を説明したが、
サーボ系の構成にしないものとしてもよい。この場合、
式(6)に代えて次式(9)を用いればよい。 【0024】 σ=S1(x1’−r)+S2・x2’ (9) 【0025】実施例の制御装置では、操作量uの一例と
して式(8)を用いて出力したが、次式(10)を用い
て出力するものとしてもよい。 【0026】 【数5】 【0027】 【0028】以上、本発明の実施の形態について実施例
を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限
定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲
内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例である摺動抵抗を有する制
御系の制御装置の概念を例示するブロック図である。 【図2】 実施例で使用可能な搬送波の一例としてのサ
イン波の波形を例示するグラフである。 【図3】 実施例で使用可能な搬送波の一例としてのノ
コギリ波の波形を例示するグラフである。 【図4】 実施例で使用不可の搬送波の一例としてのデ
ィザ波(矩形波)の波形を例示するグラフである。 【図5】 搬送波としてノコギリ波を用いた際の本実施
例の制御方法における切換面σと修正切換面σ’と操作
量uの関係を例示する説明図である。 【図6】 搬送波としてディザ波(矩形波)を用いた際
に比較例の制御装置における切換面σと切換平面σ’と
操作量uとの関係を例示する説明図である。 【図7】 シミュレーション結果としてのクラッチのス
リップ速度x1の時間変化を表わすグラフである。 【図8】 シミュレーション結果としてのスリップ速度
X1の微分値であるX2の時間変化を示すグラフであ
る。 【図9】 シミュレーション結果としての操作量uの時
間変化を示すグラフである。 【図10】 シミュレーション結果としての修正切換面
σ’の時間変化を示すグラフである。 【図11】 スライディングモード制御法における切換
関数σと操作量uとの関係を示すグラフである。 【図12】 スライディングモード制御法における切換
関数σと操作量uとの関係を飽和関数に置き換えた際の
関係を示すグラフである。 【図13】 従来例の切換関数σと操作量uを用いたシ
ミュレーション結果としてのクラッチのスリップ速度x
1の時間変化を表わすグラフである。 【図14】 従来例の切換関数σと操作量uを用いたシ
ミュレーション結果としてのスリップ速度X1の微分値
であるX2の時間変化を示すグラフである。 【図15】 従来例の切換関数σと操作量uを用いたシ
ミュレーション結果としての操作量uの時間変化を示す
グラフである。 【図16】 従来例の切換関数σと操作量uを用いたシ
ミュレーション結果としての切換面σの時間変化を示す
グラフである。
御系の制御装置の概念を例示するブロック図である。 【図2】 実施例で使用可能な搬送波の一例としてのサ
イン波の波形を例示するグラフである。 【図3】 実施例で使用可能な搬送波の一例としてのノ
コギリ波の波形を例示するグラフである。 【図4】 実施例で使用不可の搬送波の一例としてのデ
ィザ波(矩形波)の波形を例示するグラフである。 【図5】 搬送波としてノコギリ波を用いた際の本実施
例の制御方法における切換面σと修正切換面σ’と操作
量uの関係を例示する説明図である。 【図6】 搬送波としてディザ波(矩形波)を用いた際
に比較例の制御装置における切換面σと切換平面σ’と
操作量uとの関係を例示する説明図である。 【図7】 シミュレーション結果としてのクラッチのス
リップ速度x1の時間変化を表わすグラフである。 【図8】 シミュレーション結果としてのスリップ速度
X1の微分値であるX2の時間変化を示すグラフであ
る。 【図9】 シミュレーション結果としての操作量uの時
間変化を示すグラフである。 【図10】 シミュレーション結果としての修正切換面
σ’の時間変化を示すグラフである。 【図11】 スライディングモード制御法における切換
関数σと操作量uとの関係を示すグラフである。 【図12】 スライディングモード制御法における切換
関数σと操作量uとの関係を飽和関数に置き換えた際の
関係を示すグラフである。 【図13】 従来例の切換関数σと操作量uを用いたシ
ミュレーション結果としてのクラッチのスリップ速度x
1の時間変化を表わすグラフである。 【図14】 従来例の切換関数σと操作量uを用いたシ
ミュレーション結果としてのスリップ速度X1の微分値
であるX2の時間変化を示すグラフである。 【図15】 従来例の切換関数σと操作量uを用いたシ
ミュレーション結果としての操作量uの時間変化を示す
グラフである。 【図16】 従来例の切換関数σと操作量uを用いたシ
ミュレーション結果としての切換面σの時間変化を示す
グラフである。
フロントページの続き
(72)発明者 大澤 正敬
愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41
番地の1 株式会社豊田中央研究所内
(72)発明者 河野 克己
愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自
動車株式会社内
(72)発明者 鈴木 俊成
愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自
動車株式会社内
(72)発明者 田中 義和
愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自
動車株式会社内
(56)参考文献 特開 平6−343280(JP,A)
特開 平4−239902(JP,A)
特開 平3−7086(JP,A)
特開 平2−238508(JP,A)
特開 平9−274504(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
G05B 13/00 - 13/04
F16D 23/00
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 摺動抵抗を有するクラッチの制御系をス
ライディングモード制御法により制御する制御装置であ
って、クラッチのスリップ速度とスリップ速度の目標値との偏
差と、操作量とクラッチスリップ速度の関係を示すスラ
イディング制御におけるクラッチの状態量 に基づいて切
換面を演算する切換面演算手段と、 該演算された切換面に所定範囲の傾きを持つ波形の搬送
波を付加する搬送波付加手段と、 該搬送波が付加された切換面の値に基づいて操作量を設
定する操作量設定手段と、 を備える制御装置。
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