JP3365492B2 - 染料分散剤 - Google Patents

染料分散剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、染料分散剤に関するも
のであり、特に高温染色性に優れた性能を有する染料分
散剤に関する。
【0002】
【従来技術】従来からポリエステル繊維等の染色を目的
として分散染料が使用されている。これは分散染料の染
料原体自身は、水に不溶、あるいは難溶であるため、分
散剤を用いて水に安定に分散できるようにしたものであ
る。この場合の分散剤として、主として部分脱スルホン
化反応を行った精製リグニンスルホン酸やナフタレンス
ルホン酸ホルムアルデヒド縮合物などが使用されてき
た。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】亜硫酸パルプ排液を
限外濾過処理等の手段によってリグニン分のみを精製し
たものは、一般に精製リグニンスルホン酸塩と呼ばれ
る。分散染料用途には、この精製リグニンスルホン酸塩
を高温、アルカリ性下において部分脱スルホン化反応を
行った精製リグニンスルホン酸塩が用いられている。一
般に上市されている製品としては、日本製紙株式会社製
のパールレックスDPなどがある。
【0004】部分脱スルホン化反応を行った精製リグニ
ンスルホン酸塩の特徴は、ポリエステル繊維等の染色の
ような高温染色時における染色性(高温染色性)が、ナ
フタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の他の分
散剤と比べて優れていることである。
【0005】しかしながら、最近、分散染料の高濃度化
(分散染料に占める染料原体の割合を高め、分散剤の割
合を低減する)の観点から、より少量使用でも優れた高
温染色性を有する分散剤の要求が高まっている。
【0006】一方で、精製リグニンスルホン酸塩は、部
分脱スルホン化反応を行った精製リグニンスルホン酸塩
と比べて高温染色性が著しく悪い。
【0007】今回、本発明者らは、種々検討の結果、精
製リグニンスルホン酸塩水溶液、アミノフェノール類及
びホルムアルデヒドを水性下反応させて得られる反応物
が分散剤として、部分脱スルホン化反応を行った精製リ
グニンスルホン酸塩と比べて非常に良好な高温染色性を
有することを見出した。
【0008】従って、本発明の目的は、高温染色性が優
れた染料分散剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意検討
の結果、精製リグニンスルホン酸塩水溶液、アミノフェ
ノール類及びホルムアルデヒドを水性下反応させて得ら
れる染料分散剤により、高温染色性を大幅に改善できる
ことを見いだした。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明において、精製リグニンス
ルホン酸塩水溶液とアミノフェノール類の重量比(固形
分換算)は100:10〜100:40、アミノフェノール類とホ
ルムアルデヒドのモル比は1:1.0〜1:1.3であることが
好ましい。精製リグニンスルホン酸塩水溶液とアミノフ
ェノール類の重量比において、アミノフェノール類が10
0:10以下の場合、高温分散性の向上効果があまりみられ
ず、100:40以上では高温分散性の向上効果が頭打ちとな
り、コスト面で不利が生じる。
【0011】また、アミノフェノール類とホルムアルデ
ヒドのモル比において、ホルムアルデヒドのモル比が
1:1.0以下の場合、アミノフェノールの残モノマーが生
じることから好ましくなく、モル比が1:1.3以上ではホ
ルムアルデヒド過剰により縮合反応が進み反応物が高粘
性化するという問題を有する。
【0012】本発明に用いるアミノフェノール類は、等
モル量程度のアルカリ(苛性ソーダ等)によって溶解し
た水溶液として反応に用いるのが望ましい。アルカリが
等モル量より多すぎると染料分散剤のpHが上昇し好ま
しくなく、等モル量より少ないとアミノフェノール類が
溶解しないという問題がある。
【0013】本発明に用いるアミノフェノール類として
は、p−アミノフェノール、m−アミノフェノール、o
−アミノフェノールなどが挙げられるが、p−アミノフ
ェノールが性能面に優れ、安価であることから最も好ま
しい。
【0014】本発明に用いる精製リグニンスルホン酸塩
水溶液としては、通常、針葉樹亜硫酸パルプ排液を限外
濾過等の手段によってリグニン分を精製したものが用い
られる。リグニン分の精製度合いの指標としては、通常
メトキシル(OCH3)基が用いられるが、本発明に用いる
精製リグニンスルホン酸塩水溶液のメトキシル基の含有
量は、9〜12%(対固形分)程度のものが好ましい。塩
の形態は通常ナトリウム等のアルカリ金属塩である。高
温、アルカリ性下において部分脱スルホン化反応を行っ
た精製リグニンスルホン酸塩を用いれば、高温染色性能
を高める上で更に効果的である。部分脱スルホン化反応
を行った精製リグニンスルホン酸塩のスルホン化の程度
については、スルホン基態の硫黄量の含有量で2.0〜6.0
%(対固形分)程度のものが好ましい。
【0015】本発明の反応物は、反応終了後、ユーザー
の希望により、液状のままあるいはスプレードライヤー
等によって粉末状にした状態で製品化される。
【0016】本発明の反応物の塩の形態としては、通常
ナトリウム等のアルカリ金属塩が用いられる。
【0017】更に、反応時における条件を挙げておく
と、水性条件下(固形分濃度20〜40%)、常圧ないしは
加圧下、温度50℃〜140℃で通常4〜50時間で行われる。
また、ホルムアルデヒドの滴下は1〜2時間で行うことが
望ましい。
【0018】本発明の反応物は、従来の染料分散剤であ
る部分脱スルホン化反応を行った精製リグニンスルホン
酸やナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物など
と併用しても何等問題はない。
【0019】
【作用】本発明の反応物を用いると、高温染色性に優れ
た染料分散剤を得ることができる。本発明の染料分散剤
が、従来の部分脱スルホン化反応を行った精製リグニン
スルホン酸塩に比べて高温染色性を改善できた理由につ
いては、精製リグニンスルホン酸塩の化学構造に疎水性
のフェノール骨格をアミノ基を介して付加することで、
染料原体への吸着性が増し、高温染色性の改善に大きく
寄与したと推測している。
【0020】
【実施例】以下、本発明を実施例にしたがって更に詳述
するが、本発明はこれによって限定されるものではな
い。
【0021】反応例1 部分脱スルホン化反応を行った精製リグニンスルホン酸
ナトリウム塩水溶液(日本製紙(株)製パールレックス
DP、メトキシル基含有量9.8%(対固形分)、固形分
濃度30%に溶解)とp−アミノフェノール水溶液(p−
アミノフェノール粉末を等モルの苛性ソーダによって溶
解した固形分濃度20%の水溶液)とを、重量比(固形分
比)100:20で混合した。これを撹拌下90℃に加温し、ホ
ルムアルデヒド(37%ホルムアルデヒド水溶液)を1時
間かけて滴下し(p−アミノフェノールとホルムアルデ
ヒドのモル比で1:1.05)、その後90℃で19時間反応さ
せて反応例1の反応物を得た。
【0022】反応例2 精製リグニンスルホン酸ナトリウム塩水溶液(メトキシ
ル基含有量11.8%(対固形分)、固形分濃度25%)とp
−アミノフェノール水溶液(p−アミノフェノール粉末
を等モルの苛性ソーダによって溶解した固形分濃度25%
の水溶液)を、精製リグニンスルホン酸ナトリウム塩と
p−アミノフェノールの重量比(固形分比)100:35で混
合した。これを撹拌下80℃に加温し、ホルムアルデヒド
(37%ホルムアルデヒド水溶液)を2時間かけて滴下し
(p−アミノフェノールとホルムアルデヒドのモル比で
1:1.10)、その後120℃で12時間反応させて反応例2の
反応物を得た。
【0023】反応例3 精製リグニンスルホン酸ナトリウム塩水溶液(メトキシ
ル基含有量10.5%(対固形分)、固形分濃度35%)とm
−アミノフェノール水溶液(m−アミノフェノール粉末
を等モルの苛性ソーダによって溶解した固形分濃度15%
の水溶液)を、精製リグニンスルホン酸ナトリウム塩と
m−アミノフェノールの重量比(固形分比)100:20で混
合した。これを撹拌下70℃に加温し、ホルムアルデヒド
(37%ホルムアルデヒド水溶液)を1時間かけて滴下し
(m−アミノフェノールとホルムアルデヒドのモル比で
1:1.20)、その後70℃で40時間反応させて反応例3の
反応物を得た。
【0024】反応例4 精製リグニンスルホン酸ナトリウム塩水溶液(メトキシ
ル基含有量11.0%(対固形分)、固形分濃度25%)とo
−アミノフェノール水溶液(o−アミノフェノール粉末
を等モルの苛性ソーダによって溶解した固形分濃度25%
の水溶液)を、精製リグニンスルホン酸ナトリウム塩と
o−アミノフェノールの重量比(固形分比)100:8で混
合した。これを撹拌下70℃に加温し、ホルムアルデヒド
(37%ホルムアルデヒド水溶液)を1時間かけて滴下し
(o−アミノフェノールとホルムアルデヒドのモル比で
1:0.9)、その後75℃で8時間反応させて反応例4の反
応物を得た。
【0025】反応例5 精製リグニンスルホン酸ナトリウム塩水溶液(メトキシ
ル基含有量11.2%(対固形分)、固形分濃度30%)とm
−アミノフェノール水溶液(m−アミノフェノール粉末
を等モルの苛性ソーダによって溶解した固形分濃度15%
の水溶液)を、精製リグニンスルホン酸ナトリウム塩と
m−アミノフェノールの重量比(固形分比)100:50で混
合した。これを撹拌下90℃に加温し、ホルムアルデヒド
(37%ホルムアルデヒド水溶液)を1時間かけて滴下し
(m−アミノフェノールとホルムアルデヒドのモル比で
1:1.5)、その後95℃で30時間反応させて反応例5の反
応物を得た。
【0026】実施例(高温染色性試験) ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物と染料原
体(C.I.Disperse Red60)とが、固形分重量比で1:2.5
の混合物に水を加え、攪拌後、ジューサーミキサー及び
サンドミル(ガラスビーズ使用)で染料原体を微粒化
し、染料破砕溶液(固形分20%程度)を得る。次に各種
分散剤溶液(固形分換算0.5g)に、この染料破砕溶液
(固形分換算0.8g)及び水を加え、酢酸でpH5.0に調
整後、250mlにメスアップし、染色ポットに仕込む。次
にポリエステルジャージ布10gを内筒に巻き付けセット
した染色用ホルダーを染色ポットに投入し、カラーペッ
ト染色機(日本染色機械(株)製)で染色を行った(13
0℃、10分)。染色後急速に冷却し、直ちにポリエステ
ルジャージ布を取り出して水洗し、風乾する。風乾後、
ポリエステルジャージ布を取り出し、繊維上に付着した
染料凝集物の多少を目視で以下のように10段階評価し
た。
【0027】結果を表1に示す。表中、ランク10は最
良の評価で凝集物の付着性が見られないもの、ランク1
は最悪の評価で凝集物が著しく付着しているものを示
す。
【0028】なお、試験に用いた分散剤は、反応例1〜5
の反応物と、対照例としての部分脱スルホン化反応を行
った精製リグニンスルホン酸ナトリウム塩(日本製紙
(株)製パールレックスDPを使用、メトキシル基含有
量9.8%)、精製リグニンスルホン酸ナトリウム塩(メ
トキシル基含有量11.0%)、ナフタレンスルホン酸ホル
ムアルデヒド縮合物(日本製紙(株)製バニオールHD
−200を使用)である。
【0029】
【表1】表1
【0030】表1の結果より、本発明の染料分散剤が、
高温染色性に非常に優れていることがわかる。
【0031】
【発明の効果】本発明の反応物を用いると、高温染色性
が非常に良好な染料分散剤を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河村 昌信 山口県岩国市飯田町2−8−1 日本製 紙株式会社 化成品開発研究所内 (56)参考文献 特開 平7−224135(JP,A) 特開 平11−106675(JP,A) 特開 平10−212422(JP,A) 特開 平10−130524(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09B 67/46 B01F 17/50 C08G 8/20 C08G 16/02

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 精製リグニンスルホン酸塩水溶液、アミ
    ノフェノール類及びホルムアルデヒドを水性下反応させ
    て得られる染料分散剤。
  2. 【請求項2】 精製リグニンスルホン酸塩水溶液とアミ
    ノフェノール類の重量比(固形分換算)が100:10〜10
    0:40かつアミノフェノール類とホルムアルデヒドのモル
    比が1:1.0〜1:1.3である請求項1記載の染料分散剤。
  3. 【請求項3】 アミノフェノール類がp−アミノフェノ
    ールである請求項1又は2記載の染料分散剤
  4. 【請求項4】 部分脱スルホン化反応を行った精製リグ
    ニンスルホン酸塩水溶液を用いる請求項1〜3いずれか
    1項記載の染料分散剤
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