JP3363740B2 - 窒化物系化合物半導体の電極および半導体素子 - Google Patents

窒化物系化合物半導体の電極および半導体素子

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、窒化物系化合物半
導体の電極に関する。
【0002】
【従来の技術】窒化ガリウム系化合物半導体(例えば、
GaN)は、p型の不純物(Mg,Zn,Cd,Be,
Li等)を添加すればp型半導体として機能し、n型の
不純物(Si,Sn,Ge等)を添加すればn型半導体
として機能するものであり、青色発光ダイオード、レー
ザーダイオード、或いは受光素子などのデバイスの半導
体層として用いられている。
【0003】これらのデバイスでは、低電圧駆動化や高
輝度化といった点での性能向上が求められているが、こ
の要求を実現するには、半導体膜と金属膜との接触(オ
ーミック接触)の良好化(電流−電圧特性における優れ
た直線性や対称性)が求められる。電流−電圧特性にお
いて直線性が得られない原因は、図3のバンド構造図に
示しているように、金属の仕事関数(qφm )と、半導
体の仕事関数(qφs)が異なるために、これらの界面
でエネルギー障壁(qφBn或いはqφBp)が生じ、空乏
層が形成されるためである。
【0004】そこで、従来より、n型の窒化物系化合物
半導体層に対しては、これよりも仕事関数が小さい金属
から成る電極を用い、p型の窒化物系化合物半導体に対
しては大きな仕事関数の金属から成る電極を用いるとい
った方法、或いは、金属と接する部分の窒化物系化合物
半導体の不純物濃度を高くするといった方法などが提案
されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記い
ずれの方法によっても、理想的なオーミック特性は得ら
れないというのが実情である。更に、不純物濃度を高く
する方法では、窒化物系化合物半導体の結晶性が低下す
るために却ってデバイスの特性を劣化させるおそれもあ
る。また、Al等の活性な金属材料を電極に用いると、
酸化等の影響が生じてデバイスの信頼性を低下させてし
まう。また、GaNにあっては、導電型がn型かp型か
によって最適な金属材料が異なると言われており(アプ
ライト・フィジックス・レター第69巻(1996)P
1477参照)、最適材料を見いだすために試行錯誤的
な実験を繰り返さねばならず、開発コストが嵩むといっ
た欠点もある。また、窒化物系化合物半導体の電極に
は、前述のオーミック特性の他、半導体膜に対する強い
付着力が求められる。
【0006】この発明は、上記の事情に鑑み、半導体膜
に対して高い付着力を有し得る窒化物系化合物半導体の
電極を提供することを目的とする。また、窒化物系化合
物半導体の不純物濃度を過度に増加させることなく、良
好なオーミック特性を得ることができ、更に、電極とし
てAl等の金属を用いる場合に生じがちなデバイスの信
頼性の低下や、最適な金属を見いだすための開発コスト
が嵩むといった不具合を生じない窒化物系化合物半導体
の電極を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明の窒化物系化合
物半導体の電極は、金属窒化物から成ることを特徴とす
る。前記金属窒化物は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、
Ta、Cr、Mo、Wのうちから選ばれた金属元素の窒
化物であることが好ましい。なお、当該電極は、Ti、
Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wのうちか
ら選ばれた一つの元素の窒化物である他、二つ以上の元
素の窒化物からなる場合もこの発明に含まれる。また、
前記窒化物系化合物半導体における被窒化物は、Ga、
In、Al、GaIn、GaAl、InAl、GaIn
Alのうちから選ばれることが好ましい。
【0008】金属窒化物は比抵抗が低く、電極として使
用することが可能であるとともに、窒化物系化合物半導
体および電極には共に窒素が介在するという共通点があ
るため、当該電極の窒化物系化合物半導体に対する付着
力を高め得る。更に、当該電極の組成を、窒化物系化合
物半導体に近い組成から金属窒化物組成まで容易に変化
させ得るので、後述するように、半導体層/電極界面に
生じるエネルギー障壁を小さくすることが容易である。
【0009】即ち、当該電極が、窒化物系化合物半導体
の構成元素である被窒化物を含有していることが前記エ
ネルギー障壁を小さくする上で好適である。特に、金属
元素をaとし、電極が形成されるp型および/またはn
型の窒化物系化合物半導体における被窒化物をbとし、
電極材料が下記の条件 aX 1-X N (ただし、前記Xは0≦X≦1の範囲に存在し、前記窒
化物系化合物半導体から遠ざかるほどXは大きい)を満
たすように構成されていることが望ましい。
【0010】ここで、例えばGaN層上に形成される電
極構造として、TiN/Ti0.5 Ga0.5 Nといった2
層構造、TiN/Ti0.5 Ga0.5 N/Ti0.2 Ga
0.8 Nといった3層構造、4層以上の構造、或いは層と
は言えないような徐々にXが変化する構造がこの発明の
電極構造に含まれるものである。そして、前記層の数を
多くし、究極的には層とは言えないような徐々にXが変
化する構造に近づけるほど、窒化物系化合物半導体と上
記構成の電極との間でバンド構造を滑らかに変化させる
ことが可能となる。このような電極構造は、CVD法、
プラズマCVD法、スパッタ法、蒸着法などを用いるこ
とで得ることができる。
【0011】前記の電極材料上に、金属電極膜が形成さ
れていてもよい。図1(a)はn型の窒化物系化合物半
導体上に、前記Xを徐々に変化させた構造の電極材料を
形成するとともに当該電極材料上に金属電極膜を形成し
た電極構造のバンド図であり、図1(b)はp型の窒化
物系化合物半導体上に、前記Xを徐々に変化させた構造
の電極材料を形成するとともに当該電極材料上に金属電
極膜を形成した電極構造のバンド図である。これらの図
から分かるように、窒化物系化合物半導体と上記金属電
極膜との間において、前記Xを徐々に変化させた構造の
電極材料は、バンド構造を滑らかにする傾斜層として機
能する。なお、図1において、qφm は金属の仕事関
数、qφs は半導体の仕事関数、qxは電子親和力をそ
れぞれ示している。
【0012】前述したaX 1-X Nにおけるbが例えば
GaInAlであるとき、これをGaE InF AlG
ごとく表すと、1−X=E+F+Gとなる。そして、X
の増加に伴ってE,F,Gが一律に減少する場合の他、
これらが異なった比率で減少したり、これらのうちの一
つ又は二つが減少し、残りの二つ又は一つが、あるとき
までは一定でその後に減少するといった場合などもこの
発明に含まれる。
【0013】前記窒化物系化合物半導体から最も離れた
位置での前記Xが、比抵抗で表して10-3Ωcmより大
きく10-1Ωcm以下となるような場合には、前述した
ように、当該電極材料上に金属電極膜を形成すること
で、電極表面に十分な導電性を確保することが望まし
い。
【0014】前記窒化物系化合物半導体から最も離れた
位置での前記電極材料のXが、比抵抗で表して10-3Ω
cm以下となるように設定されていてもよい。一般に、
このような比抵抗が得られるときには、そのまま電極と
して利用可能となる。なお、かかる構造においても、前
述のごとく電極材料上に金属電極膜を形成してもよいも
のである。
【0015】前記窒化物系化合物半導体から最も離れた
位置での前記電極材料のXは、その値が必ずしも1であ
る必要はないが、1であることが望ましいと言える。ま
た、前記窒化物系化合物半導体に接する位置での前記電
極材料のXは、その値が必ずしも0である必要はない
が、0に極めて近いことが望ましいと言える。
【0016】p型の窒化物系化合物半導体上に形成され
た電極(p電極)と、n型の窒化物系化合物半導体上に
形成された電極(n電極)とが同一構造であってもよ
い。例えば、p電極がTiNであり、n電極もTiNで
ある構造が挙げられる。かかる構造であれば、p電極と
n電極とを同一工程で作製し得るので、製造工程数を削
減することが可能となる。また、例えば、p電極を薄膜
電極(透光性電極)として形成し、n電極を厚膜電極と
する場合には、これらを同一工程で作製することは困難
であるが、p電極とn電極をスパッタ法にて作製する場
合等において、ターゲット(TiN)の入替えの手間を
省略できるといった利点がある。
【0017】また、この発明の半導体素子は、上述した
の窒化物系化合物半導体の電極を備えたことを特徴とす
る。かかる構成であれば、良好なオーミック特性を得て
優れたデバイス特性を発揮することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
に基づいて説明する。
【0019】図2は、この発明の窒化物系化合物半導体
の電極が形成されたLEDチップの縦断側面図である。
このLEDチップは、サファイア基板1上に形成された
n型の窒化物系化合物半導体としてのAlNバッファ層
(膜厚5nm)2及びn型GaN層(膜厚2μm)3
と、発光層としてのIn0.35Ga0.65N層(膜厚2.5
nm)4と、p型の第1窒化物系化合物半導体としての
p型Al0.2 Ga0.8 N層(膜厚0.1μm)5と、p
型の第2窒化物系化合物半導体としてのp型GaN層
(0.4μm)6とがこの順に積層された構造を有して
おり、前記n型GaN層3におけるメサエッチングで露
出された表面上に、この発明のn電極7が形成され、前
記p型GaN層6上に、この発明のp電極8が形成され
ている。
【0020】この発明の電極が用いられる半導体素子と
しては、上記LEDの他、トランジスタ、ダイオード、
或いはフォトディテクタ等が挙げられる。
【0021】(1)Tiをa、Gaをbとし、n電極7
及び/又はp電極8の電極材料が、 aX 1-X N (ただし、前記Xは0≦X≦1の範囲に存在し、前記窒
化物系化合物半導体から遠ざかるほどXは大きい)を満
たすとともに、電極が形成されるGaN層から最も離れ
た位置での前記電極材料のXを1とし、前記GaN層に
接する位置での前記電極材料のXを0に極めて近づけた
電極の成膜方法について説明する。
【0022】成膜方法としてCVD法を用い、原料ガス
には、トリメチルガリウム(TMGa:Ga(CH3
3 )、TiCl4 、NH3 を用いる。成膜温度は約60
0℃とする。これら原料ガスの具体的な流量値は問わな
いが、TiCl4 の流量は略0から始まって徐々にその
値を大きくし、トリメチルガリウムの流量値は当初は大
きいが徐々にその値を小さくし、電極表面の形成時点で
は0とするように各ガス流量の制御を行うようにする。
【0023】なお、TiCl4 やトリメチルガリウムの
流量値を段階的に変化させれば、この段階数に応じた数
の多層構造の電極が得られることになる。また、窒化物
系化合物半導体層における被窒化物としてInを用いる
のであれば、トリメチルインジウムを用い、Alを用い
るのであれば、トリメチルアルミニウムを用いればよ
い。また、GaIn、GaAl、InAl、GaInA
lを用いるのであれば、トリメチルガリウム、トリメチ
ルインジウム、トリメチルアルミニウムを適宜用いれば
よい。
【0024】(2)n電極7、p電極8の電極材料をT
iNとする場合の電極成膜方法は、上記と同様、成膜方
法としてCVD法を用い、原料ガスとしてTiCl4
NH3を用い、成膜温度は約600℃とすればよい。
【0025】なお、TiNは、酸化されにくく、且つ高
融点(3000℃)であるなど、優れた安定性を有する
から、当該電極が形成される半導体素子の信頼性(耐熱
性、耐環境性)を向上させることができる。
【0026】(3)CVD法を用いない電極成膜方法と
して、以下の方法がある。かかる方法は、まず、n型G
aN層3およびp型GaN層6の表面に、N(窒素)原
子をイオン注入し、N過剰状態とする。そして、このN
過剰状態とされた表面上にTiを蒸着する。次に、N2
雰囲気中でアニール(例えば、〜800℃)を行う。か
かる処理により、N過剰状態とされた表面上に堆積した
Tiが前記アニールによって窒化し、界面付近において
TiX Ga1-X Nが形成されるとともに、前記Xが界面
から離れるほど大きくされた電極構造が得られる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の電極
は、半導体膜に対して高い付着力を有し得る。更に、窒
化物系化合物半導体の不純物濃度を過度に増加させるこ
となく、良好なオーミック特性を得ることが可能とな
る。更に、電極としてAl等の金属を用いる場合に生じ
がちなデバイスの信頼性の低下や、最適な金属を見いだ
すための開発コストが嵩むといった不具合を生じないと
いう効果も奏する。また、この発明の半導体素子は、良
好なオーミック特性を得て優れたデバイス特性を発揮す
るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の窒化物系化合物半導体の電極を用い
た場合のバンド構造図であり、同図(a)はn型半導体
の場合を、同図(b)はp型半導体の場合をそれぞれ示
している。
【図2】この発明の窒化物系化合物半導体の電極を有す
るLEDチップの縦断側面図である。
【図3】従来の電極を用いた場合のバンド構造図であ
り、同図(a)はn型半導体の場合を、同図(b)はp
型半導体の場合をそれぞれ示している。
【符号の説明】
1 サファイア基板 2 AlNバッファ層 3 n型GaN層 4 In0.35Ga0.65N層 5 p型Al0.2 Ga0.8 N層 6 p型GaN層 7 n電極 8 p電極

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 p型またはn型の窒化物系化合物半導体
    上に金属窒化物から成る電極材料が形成され、該電極材
    料上に金属電極膜が形成された窒化物系半導体の電極で
    あって、前記金属窒化物の金属元素をaとし、前記窒化
    物系化合物半導体における被窒化物の構成元素をbとし
    た場合、前記電極材料が下記の条件 X 1-X (ただし、前記Xは0≦X≦1の範囲に存在し、前記窒
    化物系化合物半導体から遠ざかるほどXが大きくなるよ
    うに徐々に変化する) を満たし、前記窒化物系化合物半導体と上記金属電極膜
    との間において、前記Xを徐々に変化させた構造の電極
    材料がバンド構造を滑らかにする傾斜層として機能する
    ことを特徴とする窒化物系化合物半導体の電極。
  2. 【請求項2】 前記金属窒化物が、Ti、Zr、Hf、
    V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wのうちから選ばれた金
    属元素の窒化物であることを特徴とする請求項1に記載
    の窒化物系化合物半導体の電極。
  3. 【請求項3】 前記窒化物系化合物半導体が、Ga、I
    n、Al、GaIn、GaAl、InAl、GaInA
    lのうちから選ばれていることを特徴とする請求項1ま
    たは請求項2に記載の窒化物系化合物半導体の電極。
  4. 【請求項4】 金属窒化物の電極材料上に、金属電極膜
    が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項
    3のいずれかに記載の窒化物系化合物半導体の電極。
  5. 【請求項5】 前記窒化物系化合物半導体から最も離れ
    た位置での前記電極材料のXが、比抵抗で表して10 -3
    Ωcm以下となるように設定されていることを特徴とす
    る請求項1乃至4のいずれかに記載の窒化物系化合物半
    導体の電極。
  6. 【請求項6】 前記窒化物系化合物半導体から最も離れ
    た位置での前記Xが、比抵抗で表して10 -3 Ωcmより
    大きく10 -1 Ωcm以下となるように設定されているこ
    とを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の窒化
    物系化合物半導体の電極。
  7. 【請求項7】 前記窒化物系化合物半導体から最も離れ
    た位置での前記電極材料のXが、1であることを特徴と
    する請求項1乃至4のいずれかに記載の窒化物系化合物
    半導体の電極。
  8. 【請求項8】 前記窒化物系化合物半導体に接する位置
    での前記電極材料のXが、0に極めて近いことを特徴と
    する請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の窒化物系
    化合物半導体の電極。
  9. 【請求項9】 p型の窒化物系化合物半導体上に形成さ
    れた電極と、n型の窒化物系化合物半導体上に形成され
    た電極とが同一構造であることを特徴とする請求項1乃
    至請求項8のいずれかに記載の窒化物系化合物半導体の
    電極。
  10. 【請求項10】 請求項1乃至請求項9に記載の窒化物
    系化合物半導体の電極を備えたことを特徴とする半導体
    素子。
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