JP3362143B2 - 電気摺動接点材料 - Google Patents
電気摺動接点材料Info
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Description
【０００１】
【産業上の利用分野】本発明は、マイクロモータの刷子
や整流子片などに使用される電気摺動接点材料に関する
ものである。
や整流子片などに使用される電気摺動接点材料に関する
ものである。
【０００２】
【従来の技術】図１はマイクロモータの刷子と整流子を
示す斜視図である。図において１は刷子、２は摺動面、
３は刷子基部、４は刷子端部、５は整流子である。前記
刷子１は、例えばＣｕ−Ｂｅ系合金の刷子母材１ａに、
刷子接点１ｂを所謂クラッド法などにより埋設した薄帯
を打ち抜き加工したものである。また整流子５は、複数
の整流子片５ｎを絶縁部材５ａに埋設したものである。
そして刷子接点１ｂと整流子片５ｎとが摺動することに
より、モータの電機子に供給される電流を整流し、電機
子に発生する回転磁界によりマイクロモータが駆動され
る。その際の摺動による摩耗特性がマイクロモータの駆
動特性に重大な影響を及ぼすことが知られている。
示す斜視図である。図において１は刷子、２は摺動面、
３は刷子基部、４は刷子端部、５は整流子である。前記
刷子１は、例えばＣｕ−Ｂｅ系合金の刷子母材１ａに、
刷子接点１ｂを所謂クラッド法などにより埋設した薄帯
を打ち抜き加工したものである。また整流子５は、複数
の整流子片５ｎを絶縁部材５ａに埋設したものである。
そして刷子接点１ｂと整流子片５ｎとが摺動することに
より、モータの電機子に供給される電流を整流し、電機
子に発生する回転磁界によりマイクロモータが駆動され
る。その際の摺動による摩耗特性がマイクロモータの駆
動特性に重大な影響を及ぼすことが知られている。
【０００３】そこで、摺動面の摩耗に対処すべき種々の
電気摺動接点材料が提案されている。
電気摺動接点材料が提案されている。
【０００４】すなわち、刷子接点１ｂや整流子片５ｎと
しては、弾性係数や電気伝導性などの特性を考慮し、Ａ
ｕ，Ａｇ，Ｐｄ，Ｐｔ，Ｒｕ，Ｒｈ，Ｃｕ，Ｉｒ，Ｉ
ｎ，Ｎｉ，Ｓｎ，Ｚｎ，Ｂｅなどから選ばれた２種以上
の金属を成分とする合金薄帯体が使用されている。例え
ば、特開昭６３−２５７４３７号公報に記載されている
ように、刷子母材１ａにはＢｅ0.5〜0.15 ，Ｆｅ
〈=0.2 ，Ｃｏ0.15〜0.6 ，Ｓｉ〈=0.2 ，Ａ
１〈=0.2 ，Ｃｕ残部のようなＣｕ−Ｂｅ系合金、刷子
接点１ｂには、Ａｇ30，Ｐｄ35，Ｃｕ14，Ｐｔ10，Ａｕ
10，Ｚｎ1 からなるＡｇ−Ｐｄ系合金、整流子片５ｎと
しては、Ａｕ65〜75，Ｐｔ3〜7 ，Ａｇ7〜13，Ｃｕ
11〜17，Ｎｉ0.5〜1.5 からなる合金が使用されてい
る。
しては、弾性係数や電気伝導性などの特性を考慮し、Ａ
ｕ，Ａｇ，Ｐｄ，Ｐｔ，Ｒｕ，Ｒｈ，Ｃｕ，Ｉｒ，Ｉ
ｎ，Ｎｉ，Ｓｎ，Ｚｎ，Ｂｅなどから選ばれた２種以上
の金属を成分とする合金薄帯体が使用されている。例え
ば、特開昭６３−２５７４３７号公報に記載されている
ように、刷子母材１ａにはＢｅ0.5〜0.15 ，Ｆｅ
〈=0.2 ，Ｃｏ0.15〜0.6 ，Ｓｉ〈=0.2 ，Ａ
１〈=0.2 ，Ｃｕ残部のようなＣｕ−Ｂｅ系合金、刷子
接点１ｂには、Ａｇ30，Ｐｄ35，Ｃｕ14，Ｐｔ10，Ａｕ
10，Ｚｎ1 からなるＡｇ−Ｐｄ系合金、整流子片５ｎと
しては、Ａｕ65〜75，Ｐｔ3〜7 ，Ａｇ7〜13，Ｃｕ
11〜17，Ｎｉ0.5〜1.5 からなる合金が使用されてい
る。
【０００５】しかしながら、このような電気摺動接点
（刷子接点１ｂや整流子片５ｎ）で摺動面を構成する刷
子１と整流子５は、起動停止の頻繁な摺動動作において
は金属間凝着に起因した摩耗が激しく、これがマイクロ
モータの駆動特性を阻害して、短寿命となる欠点があっ
た。
（刷子接点１ｂや整流子片５ｎ）で摺動面を構成する刷
子１と整流子５は、起動停止の頻繁な摺動動作において
は金属間凝着に起因した摩耗が激しく、これがマイクロ
モータの駆動特性を阻害して、短寿命となる欠点があっ
た。
【０００６】この点を改善するため、Ｎｂ、Ｉｎなどの
１種または２種以上を付加した合金が考えられるが、塑
性加工性が悪く均質な薄帯化が困難で、また摩耗と共に
添加元素の酸化物の量が増し、接触抵抗が増加するとい
う問題がある。
１種または２種以上を付加した合金が考えられるが、塑
性加工性が悪く均質な薄帯化が困難で、また摩耗と共に
添加元素の酸化物の量が増し、接触抵抗が増加するとい
う問題がある。
【０００７】そこで例えば、合金組成Ａｕ10，Ｐｔ10，
Ｐｄ35，Ａｇ30，Ｃｕ14，Ｚｎ1 の刷子接点１ｂと、合
金組成Ａｕ70，Ｐｔ5 ，Ａｇ10，Ｃｕ14，Ｎｉ1 の整流
子片５ｎにおいて、スパッタリングやイオンプレーティ
ング、蒸着、またはＣＶＤ（Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ｖａｐ
ｅｒ Ｄｅｐｏｓｉｔｉｏｎ）などの手法により、０．
０１〜３μｍ程度の異種金属を成膜し、更に水素雰囲気
中５００度〜６００度で熱拡散させることにより、摺動
時の金属間凝着を抑制し耐摩耗性を向上させようとする
試みがなされている。
Ｐｄ35，Ａｇ30，Ｃｕ14，Ｚｎ1 の刷子接点１ｂと、合
金組成Ａｕ70，Ｐｔ5 ，Ａｇ10，Ｃｕ14，Ｎｉ1 の整流
子片５ｎにおいて、スパッタリングやイオンプレーティ
ング、蒸着、またはＣＶＤ（Ｃｈｅｍｉｃａｌ Ｖａｐ
ｅｒ Ｄｅｐｏｓｉｔｉｏｎ）などの手法により、０．
０１〜３μｍ程度の異種金属を成膜し、更に水素雰囲気
中５００度〜６００度で熱拡散させることにより、摺動
時の金属間凝着を抑制し耐摩耗性を向上させようとする
試みがなされている。
【０００８】このような熱拡散で合金化する方法におけ
る拡散元素としては、Ｎｂ，Ｉｎ，Ｂａ，Ｃｄ（特開昭
６３−８９０３５号公報）や、Ｓｂ，Ｔｅ，Ｐｂ，Ｓ
ｅ，Ａｓ，Ｚｎ（特開昭６３−８９０３６号公報）や、
Ｂ，Ｓｉ，Ｇｅ，Ｔｌ（特開昭６３−８９０３７号公
報）や、Ａｌ，Ｇａ，Ｍｎ（特開昭６３−８９０３８号
公報）や、Ｃｏ，Ｓｎ，Ｔｉ（特開昭６３−８９０３９
号公報）や、Ｃｒ，Ｍｇ，Ｚｒ，Ｐ（特開昭６３−８９
０４０号公報）などがある。
る拡散元素としては、Ｎｂ，Ｉｎ，Ｂａ，Ｃｄ（特開昭
６３−８９０３５号公報）や、Ｓｂ，Ｔｅ，Ｐｂ，Ｓ
ｅ，Ａｓ，Ｚｎ（特開昭６３−８９０３６号公報）や、
Ｂ，Ｓｉ，Ｇｅ，Ｔｌ（特開昭６３−８９０３７号公
報）や、Ａｌ，Ｇａ，Ｍｎ（特開昭６３−８９０３８号
公報）や、Ｃｏ，Ｓｎ，Ｔｉ（特開昭６３−８９０３９
号公報）や、Ｃｒ，Ｍｇ，Ｚｒ，Ｐ（特開昭６３−８９
０４０号公報）などがある。
【０００９】しかし異種金属を熱拡散するものにおいて
は、拡散元素の材料表面からの濃度勾配が避けられず経
時的に安定した駆動特性が本質的に得にくいという欠点
がある。
は、拡散元素の材料表面からの濃度勾配が避けられず経
時的に安定した駆動特性が本質的に得にくいという欠点
がある。
【００１０】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、刷子接点と
整流子片との関係におけるように、起動停止の頻繁な摺
動動作を行う電気摺動接点の材料についての上記諸問題
点を解決し、金属間凝着に起因した摩耗を抑制すること
ができると共に、継時的に安定した摺動特性が得られ、
加工性にも優れた電気摺動接点材料を提供することを目
的とする。
整流子片との関係におけるように、起動停止の頻繁な摺
動動作を行う電気摺動接点の材料についての上記諸問題
点を解決し、金属間凝着に起因した摩耗を抑制すること
ができると共に、継時的に安定した摺動特性が得られ、
加工性にも優れた電気摺動接点材料を提供することを目
的とする。
【００１１】
【課題を解決するための手段】本発明の電気摺動接点材
料は、基礎材がＡｕ，Ａｇ，Ｐｄ，Ｐｔ，Ｒｕ，Ｒｈ，
Ｃｕ，Ｉｒ，Ｉｎ，Ｎｉ，Ｓｎ，Ｚｎ，Ｂｅのいずれか
の金属またはこれら２種以上からなる合金で形成され、
基礎材の摺動面に炭素イオンを注入した電気摺動接点材
料であって、炭素イオンの注入量が１０ 17 〜１０ 20 ｄｏ
ｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ 2 ）であることを特徴とする。
料は、基礎材がＡｕ，Ａｇ，Ｐｄ，Ｐｔ，Ｒｕ，Ｒｈ，
Ｃｕ，Ｉｒ，Ｉｎ，Ｎｉ，Ｓｎ，Ｚｎ，Ｂｅのいずれか
の金属またはこれら２種以上からなる合金で形成され、
基礎材の摺動面に炭素イオンを注入した電気摺動接点材
料であって、炭素イオンの注入量が１０ 17 〜１０ 20 ｄｏ
ｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ 2 ）であることを特徴とする。
【００１２】
【００１３】上記構成に加え、基礎材の摺動面に炭素イ
オンと共に、周期律表の第ＩＶａ、Ｖａ、ＶＩａ族から
選ばれたいずれかの金属元素をイオン注入すると好適で
ある。
オンと共に、周期律表の第ＩＶａ、Ｖａ、ＶＩａ族から
選ばれたいずれかの金属元素をイオン注入すると好適で
ある。
【００１４】基礎材の摺動面に炭素イオンと共にイオン
注入される金属元素がＴｉ，Ｈｆ，Ｖ，Ｎｂ，Ｔａ，Ｃ
ｒ，Ｍｏ，Ｗ，Ｒｅ，Ｒｕ，Ｏｓ，Ｒｈ，Ｉｒ，Ｐｔの
いずれかであり、その金属イオンの注入量が１０10〜１
０20ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）であると好適である。
注入される金属元素がＴｉ，Ｈｆ，Ｖ，Ｎｂ，Ｔａ，Ｃ
ｒ，Ｍｏ，Ｗ，Ｒｅ，Ｒｕ，Ｏｓ，Ｒｈ，Ｉｒ，Ｐｔの
いずれかであり、その金属イオンの注入量が１０10〜１
０20ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）であると好適である。
【００１５】
【作用】本発明によると、Ａｕ，Ａｇ，Ｐｄ，Ｐｔ，Ｒ
ｕ，Ｒｈ，Ｃｕ，Ｉｒ，Ｉｎ，Ｎｉ，Ｓｎ，Ｚｎ，Ｂｅ
のいずれかの金属またはこれらの２種以上からなる合金
で形成された基礎材の摺動面に、炭素イオンを注入する
ことで、材料表面に上記合金内に炭素が取り込まれた皮
膜が形成され、これが潤滑作用を行うものとなり、機械
的金属間凝着に起因した摩耗を防止すると共に、放電に
よる電気的な金属間凝着に起因した摩耗を防止する作用
を営む。
ｕ，Ｒｈ，Ｃｕ，Ｉｒ，Ｉｎ，Ｎｉ，Ｓｎ，Ｚｎ，Ｂｅ
のいずれかの金属またはこれらの２種以上からなる合金
で形成された基礎材の摺動面に、炭素イオンを注入する
ことで、材料表面に上記合金内に炭素が取り込まれた皮
膜が形成され、これが潤滑作用を行うものとなり、機械
的金属間凝着に起因した摩耗を防止すると共に、放電に
よる電気的な金属間凝着に起因した摩耗を防止する作用
を営む。
【００１６】そして、炭素イオンの注入は比較的均質に
行うことができ、材料表面からの濃度勾配を少なくで
き、継時的に安定した特性を示す電気摺動接点の材料と
なる。
行うことができ、材料表面からの濃度勾配を少なくで
き、継時的に安定した特性を示す電気摺動接点の材料と
なる。
【００１７】さらに本発明の電気摺動接点材料は、上記
成分で構成されるので、加工性がよい。
成分で構成されるので、加工性がよい。
【００１８】前記炭素イオンの注入量は、１０17ｄｏｓ
ｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）以下であれば炭素注入効果が少な
く、一方１０20ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）以上であれ
ば表面の注入イオン濃度が飽和してしまう為、１０17〜
１０20ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）であることが必要で
ある。
ｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）以下であれば炭素注入効果が少な
く、一方１０20ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）以上であれ
ば表面の注入イオン濃度が飽和してしまう為、１０17〜
１０20ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）であることが必要で
ある。
【００１９】さらに炭素イオンの注入深度を、表面から
０．８μｍ以上とすることで、より一層継時的に安定し
た摺動特性が得られ、例えばマイクロモータの整流子片
や刷子接点に適用すれば、その耐久性をより一層向上さ
せることができる。
０．８μｍ以上とすることで、より一層継時的に安定し
た摺動特性が得られ、例えばマイクロモータの整流子片
や刷子接点に適用すれば、その耐久性をより一層向上さ
せることができる。
【００２０】また、周期律表の第ＩＶａ、Ｖａ、ＶＩａ
族から選ばれたいずれかの金属元素を炭素と共にイオン
注入することで、上記炭素イオンの注入による潤滑作用
と共に前記金属による表面改質によって、摺動動作に伴
う放電による電気的な金属間凝着に起因した摩耗に対し
てより一層優れた特性を有する電気摺動接点材料とな
る。
族から選ばれたいずれかの金属元素を炭素と共にイオン
注入することで、上記炭素イオンの注入による潤滑作用
と共に前記金属による表面改質によって、摺動動作に伴
う放電による電気的な金属間凝着に起因した摩耗に対し
てより一層優れた特性を有する電気摺動接点材料とな
る。
【００２１】また基礎材の摺動面に炭素イオンと共にイ
オン注入される金属元素が、Ｔｉ，Ｈｆ，Ｖ，Ｎｂ，Ｔ
ａ，Ｃｒ，Ｍｏ，Ｗ，Ｒｅ，Ｒｕ，Ｏｓ，Ｒｈ，Ｉｒ，
Ｐｔのいずれかであり、その金属イオンの注入量が１０
10〜１０20ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）であれば、上記
元素は高融点の元素であり、起動停止の頻繁な摺動動作
に伴う放電による電気的な金属間凝着に起因した摩耗を
大幅に改善する接点材料となる。
オン注入される金属元素が、Ｔｉ，Ｈｆ，Ｖ，Ｎｂ，Ｔ
ａ，Ｃｒ，Ｍｏ，Ｗ，Ｒｅ，Ｒｕ，Ｏｓ，Ｒｈ，Ｉｒ，
Ｐｔのいずれかであり、その金属イオンの注入量が１０
10〜１０20ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）であれば、上記
元素は高融点の元素であり、起動停止の頻繁な摺動動作
に伴う放電による電気的な金属間凝着に起因した摩耗を
大幅に改善する接点材料となる。
【００２２】
【実施例】以下本発明の実施例について、図面を参照し
ながら詳細に説明する。図１は本発明の電気摺動接点材
料をマイクロモータの刷子接点に適応した第１実施例を
示す。
ながら詳細に説明する。図１は本発明の電気摺動接点材
料をマイクロモータの刷子接点に適応した第１実施例を
示す。
【００２３】図１に示す刷子接点１ｂは、厚さ８０μｍ
の合金組成がＢｅ1 ，Ｆｅ0.1 ，Ｃｏ0.3 ，Ｓｉ0.2 ，
Ａｌ0.1 ，Ｃｕ残部の刷子母材１ａに埋設したものであ
る。
の合金組成がＢｅ1 ，Ｆｅ0.1 ，Ｃｏ0.3 ，Ｓｉ0.2 ，
Ａｌ0.1 ，Ｃｕ残部の刷子母材１ａに埋設したものであ
る。
【００２４】そして刷子接点１ｂは、厚さ２０μｍの合
金組成がＡｇ30，Ｐｄ35，Ｃｕ14，Ｐｔ10，Ａｕ10，Ｚ
ｎ1 である薄帯状の基礎材に対してイオン注入が行われ
ている。一方整流子５は、最外層が１μｍのＡｕ60，Ａ
ｇ40の合金で、中間層が厚さ３０μｍのＡｇ99，Ｃｄ1
合金、更に内層を厚さ１ｍｍのＣｕとした整流子片５ｎ
を外径３ｍｍの円環状とし、絶縁部材５ａに埋没固定さ
れている。
金組成がＡｇ30，Ｐｄ35，Ｃｕ14，Ｐｔ10，Ａｕ10，Ｚ
ｎ1 である薄帯状の基礎材に対してイオン注入が行われ
ている。一方整流子５は、最外層が１μｍのＡｕ60，Ａ
ｇ40の合金で、中間層が厚さ３０μｍのＡｇ99，Ｃｄ1
合金、更に内層を厚さ１ｍｍのＣｕとした整流子片５ｎ
を外径３ｍｍの円環状とし、絶縁部材５ａに埋没固定さ
れている。
【００２５】図２はイオン注入装置を示す構成図で、Ｂ
ＲＯＷＮ．Ｇ，；”Ｔｈｅ Ｍｅｔａｌ Ｖａｐｏｒ
Ｖａｃｕｕｍ Ａｒｃ（ＭＥＶＶＡ） Ｈｉｇｈ Ｃｕ
ｒｒｅｎｔ Ｉｏｎ Ｓｏｕｒｃｅ”．ＩＥＥＥ Ｔｒ
ａｎｓ．ｏｎ Ｎｕｃｌｅａｒ Ｓｉｅｎｃｅ Ｖｏ
ｌ．ＮＳ−３２，Ｎｏ．５（１９８５）に記載されてい
るＭＥＶＶＡ型イオンビーム発生装置である。
ＲＯＷＮ．Ｇ，；”Ｔｈｅ Ｍｅｔａｌ Ｖａｐｏｒ
Ｖａｃｕｕｍ Ａｒｃ（ＭＥＶＶＡ） Ｈｉｇｈ Ｃｕ
ｒｒｅｎｔ Ｉｏｎ Ｓｏｕｒｃｅ”．ＩＥＥＥ Ｔｒ
ａｎｓ．ｏｎ Ｎｕｃｌｅａｒ Ｓｉｅｎｃｅ Ｖｏ
ｌ．ＮＳ−３２，Ｎｏ．５（１９８５）に記載されてい
るＭＥＶＶＡ型イオンビーム発生装置である。
【００２６】この装置を用いて刷子接点１ｂの基礎材に
その摺動面２からイオン注入を行う原理は、例えば真空
中１０-3〜１０-8Ｔｏｒｒでカソード６とアノード７間
にアーク放電を起こして、カソード６上に設けられた材
料を蒸発させてイオン化させる。
その摺動面２からイオン注入を行う原理は、例えば真空
中１０-3〜１０-8Ｔｏｒｒでカソード６とアノード７間
にアーク放電を起こして、カソード６上に設けられた材
料を蒸発させてイオン化させる。
【００２７】これは、カソード６とアノード７の間にア
ーク放電が起こると、炭素の固溶体などのカソード材が
蒸発してイオン化するものである。
ーク放電が起こると、炭素の固溶体などのカソード材が
蒸発してイオン化するものである。
【００２８】次に、高電圧をグリッド電極８に印加する
とイオンは加速されて、加速された状態のイオンをイオ
ンビーム１０として引き出して、刷子接点１ｂの材料表
面（摺動面）２に照射することでイオン注入を行うこと
ができる。
とイオンは加速されて、加速された状態のイオンをイオ
ンビーム１０として引き出して、刷子接点１ｂの材料表
面（摺動面）２に照射することでイオン注入を行うこと
ができる。
【００２９】表１はイオン注入を施した刷子接点１ｂの
基礎材と、一般的材料で構成された整流子片５ｎの摺動
動作を繰り返した実験結果を示すものである。
基礎材と、一般的材料で構成された整流子片５ｎの摺動
動作を繰り返した実験結果を示すものである。
【００３０】
【表１】
【００３１】刷子接点１ｂのイオン注入条件は、サンプ
ルＡが炭素Ｃを加速電圧４０ＫＶ（約４０ｋｅＶ）で
１．２×１０18ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）の濃度で注
入したもの、サンプルＢが炭素Ｃを加速電圧４０ＫＶ
（約４０ｋｅＶ）で、０．８×１０18ｄｏｓｅ（ｉｏｎ
／ｃｍ2 ）の濃度で注入したもの、サンプルＣが炭素Ｃ
を加速電圧４０ＫＶ（約４０ｋｅＶ）で、０．４×１０
18ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）の濃度で注入したもので
ある。
ルＡが炭素Ｃを加速電圧４０ＫＶ（約４０ｋｅＶ）で
１．２×１０18ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）の濃度で注
入したもの、サンプルＢが炭素Ｃを加速電圧４０ＫＶ
（約４０ｋｅＶ）で、０．８×１０18ｄｏｓｅ（ｉｏｎ
／ｃｍ2 ）の濃度で注入したもの、サンプルＣが炭素Ｃ
を加速電圧４０ＫＶ（約４０ｋｅＶ）で、０．４×１０
18ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）の濃度で注入したもので
ある。
【００３２】また、サンプルＤは上記同様刷子接点１ｂ
に対し、Ｔｉを加速電圧７０ＫＶ（約１４７ｋｅＶ）
で、５×１０17ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）の濃度で注
入し、更に炭素Ｃを加速電圧４０ＫＶ（約４０ｋｅｖ）
で、１．２×１０18ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）の濃度
で注入したものである。
に対し、Ｔｉを加速電圧７０ＫＶ（約１４７ｋｅＶ）
で、５×１０17ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）の濃度で注
入し、更に炭素Ｃを加速電圧４０ＫＶ（約４０ｋｅｖ）
で、１．２×１０18ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）の濃度
で注入したものである。
【００３３】なお、従来例としてサンプルＥにイオン注
入を施さない基礎材（Ａｇ30，Ｐｄ35，Ｃｕ14，Ｐ
ｔ10，Ａｕ10，Ｚｎ1 ）のみのものを示す。
入を施さない基礎材（Ａｇ30，Ｐｄ35，Ｃｕ14，Ｐ
ｔ10，Ａｕ10，Ｚｎ1 ）のみのものを示す。
【００３４】以上のように形成された、刷子接点１ｂと
整流子片５ｎとを備えたマイクロモータを図３に示す起
動停止の動作（一周期０．８ｓｅｃ）で運転させたとき
動作不良で停止に至るまでの駆動回数を表１に示す。
整流子片５ｎとを備えたマイクロモータを図３に示す起
動停止の動作（一周期０．８ｓｅｃ）で運転させたとき
動作不良で停止に至るまでの駆動回数を表１に示す。
【００３５】表１から明かなようにサンプルＡ，サンプ
ルＢ，サンプルＣは、Ａｇ，Ｐｄを主とした合金の基礎
材に炭素イオンを注入したことで、当該材料が整流子片
５ｎと摺動する際に、刷子接点１ｂの材料表面に炭素が
取り込まれた皮膜を形成し、これが潤滑作用をすること
で摺動面の摩耗を防ぐため、その結果起動停止の激しい
マイクロモータ駆動回数を従来例であるサンプルＥの２
倍以上とすることができる。
ルＢ，サンプルＣは、Ａｇ，Ｐｄを主とした合金の基礎
材に炭素イオンを注入したことで、当該材料が整流子片
５ｎと摺動する際に、刷子接点１ｂの材料表面に炭素が
取り込まれた皮膜を形成し、これが潤滑作用をすること
で摺動面の摩耗を防ぐため、その結果起動停止の激しい
マイクロモータ駆動回数を従来例であるサンプルＥの２
倍以上とすることができる。
【００３６】特にサンプルＡのように炭素注入量を１．
２×１０18ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）とした場合には
炭素イオン注入深度が表面から０．８μｍ以上となり、
サンプルＢやサンプルＣの０．４μｍ以上より深く入り
込んでいる。このことがマイクロモータ駆動回数を４倍
以上にできるものである。
２×１０18ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）とした場合には
炭素イオン注入深度が表面から０．８μｍ以上となり、
サンプルＢやサンプルＣの０．４μｍ以上より深く入り
込んでいる。このことがマイクロモータ駆動回数を４倍
以上にできるものである。
【００３７】また、サンプルＤのようにＴｉイオンと炭
素イオンを二重に注入すると、Ｔｉ元素は高融点の元素
であり、起動停止の頻繁な摺動動作に伴う放電による電
気的な金属間凝着に起因した摩耗を大幅に改善する接点
材料となり、多様な駆動モードであってもマイクロモー
タ駆動性能を長時間安定して維持することができる。
素イオンを二重に注入すると、Ｔｉ元素は高融点の元素
であり、起動停止の頻繁な摺動動作に伴う放電による電
気的な金属間凝着に起因した摩耗を大幅に改善する接点
材料となり、多様な駆動モードであってもマイクロモー
タ駆動性能を長時間安定して維持することができる。
【００３８】このためサンプルＤは、従来例（サンプル
Ｅ）と比較して５倍以上の駆動回数を実現することがで
きた。
Ｅ）と比較して５倍以上の駆動回数を実現することがで
きた。
【００３９】なお、本実施例においては合金組成が、Ａ
ｇ30，Ｐｄ35，Ｃｕ14，Ｐｔ10，Ａｕ10，Ｚｎ1 の刷子
接点１ｂにイオン注入する例を示したが、上記に示すよ
うに他の合金組成であってもかまわない。また、金属イ
オンはＴｉ以外のものであってもよい。さらに、炭素イ
オンの注入は加速電圧４０ＫＶ（約４０ｋｅｖ）で１．
２×１０18ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）に限定するもの
ではない。また同様に金属イオンの注入は注入加速電圧
７０ＫＶ（約１４７ｋｅＶ）を５×１０17ｄｏｓｅ（ｉ
ｏｎ／ｃｍ2 ）に限定するものではない。また上記実施
例においては、刷子接点１ｂに本発明を適用させた例を
示したが、最外層がＡｕ60，Ａｇ40からなる基礎材に対
して上記イオン注入を行って整流子片５ｎを形成しても
よい。さらに、刷子接点１ｂと整流子片５ｎの両方に対
して上記イオン注入を行うものであってもかまわない。
すなわち本発明は上記実施例に限定されるものではな
く、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、こ
れらを本発明の範囲から排除するものではない。
ｇ30，Ｐｄ35，Ｃｕ14，Ｐｔ10，Ａｕ10，Ｚｎ1 の刷子
接点１ｂにイオン注入する例を示したが、上記に示すよ
うに他の合金組成であってもかまわない。また、金属イ
オンはＴｉ以外のものであってもよい。さらに、炭素イ
オンの注入は加速電圧４０ＫＶ（約４０ｋｅｖ）で１．
２×１０18ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）に限定するもの
ではない。また同様に金属イオンの注入は注入加速電圧
７０ＫＶ（約１４７ｋｅＶ）を５×１０17ｄｏｓｅ（ｉ
ｏｎ／ｃｍ2 ）に限定するものではない。また上記実施
例においては、刷子接点１ｂに本発明を適用させた例を
示したが、最外層がＡｕ60，Ａｇ40からなる基礎材に対
して上記イオン注入を行って整流子片５ｎを形成しても
よい。さらに、刷子接点１ｂと整流子片５ｎの両方に対
して上記イオン注入を行うものであってもかまわない。
すなわち本発明は上記実施例に限定されるものではな
く、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、こ
れらを本発明の範囲から排除するものではない。
【００４０】
【発明の効果】本発明によれば、金属間凝着に起因した
摩耗を抑制することができると共に、継時的に安定した
摺動特性が得られ、加工性も優れた電気摺動接点材料を
提供することができる。
摩耗を抑制することができると共に、継時的に安定した
摺動特性が得られ、加工性も優れた電気摺動接点材料を
提供することができる。
【図１】本発明の実施例を示す斜視図。
【図２】そのイオン注入装置を示す構成図。
【図３】その駆動チャート。
１ 刷子
１ａ 刷子母材
１ｂ 刷子接点
２ 摺動面
３ 刷子基部
４ 刷子端部
５ 整流子
５ａ 絶縁部材
５ｎ 整流子片
６ カソード
７ アノード
８ グリッド電極
１０ イオンビーム
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 市古 修身
神奈川県相模原市淵野辺５丁目10番１号
新日本製鐵株式会社 エレクトロニク
ス研究所内
(72)発明者 林 和範
神奈川県相模原市淵野辺５丁目10番１号
新日本製鐵株式会社 エレクトロニク
ス研究所内
(72)発明者 佐々木 純
神奈川県相模原市淵野辺５丁目10番１号
新日本製鐵株式会社 エレクトロニク
ス研究所内
(56)参考文献 特開 平１−298666（ＪＰ，Ａ)
特開 昭57−148559（ＪＰ，Ａ)
特開 昭63−89039（ＪＰ，Ａ)
特開 昭63−257437（ＪＰ，Ａ)
(58)調査した分野(Int.Cl.7，ＤＢ名)
H02K 13/00 - 13/14
H01R 39/00 - 39/64
H01B 5/00 - 5/16
C23C 8/00 - 14/58
Claims (5)
- 【請求項１】 基礎材がＡｕ，Ａｇ，Ｐｄ，Ｐｔ，Ｒ
ｕ，Ｒｈ，Ｃｕ，Ｉｒ，Ｉｎ，Ｎｉ，Ｓｎ，Ｚｎ，Ｂｅ
のいずれかの金属またはこれら２種以上からなる合金で
形成され、 基礎材の摺動面に炭素イオンを注入した電気摺動接点材
料であって、 炭素イオンの注入量が１０ 17 〜１０ 20 ｄｏｓｅ（ｉｏｎ
／ｃｍ 2 ）である ことを特徴とする電気摺動接点材料。 - 【請求項２】 炭素イオンの注入深度が表面から０．８
μｍ以上である請求項１記載の電気摺動接点材料。 - 【請求項３】 基礎材の摺動面に炭素イオンと共に、周
期律表の第ＩＶａ、Ｖａ、ＶＩａ族から選ばれたいずれ
かの金属元素をイオン注入した請求項１または２記載の
電気摺動接点材料。 - 【請求項４】 金属元素がＴｉ，Ｈｆ，Ｖ，Ｎｂ，Ｔ
ａ，Ｃｒ，Ｍｏ，Ｗのいずれかであり、その金属イオン
の注入量が１０10〜１０20ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ2 ）
である請求項３記載の電気摺動接点材料。 - 【請求項５】 基礎材の摺動面に炭素イオンと共に、Ｒ
ｅ，Ｒｕ，Ｏｓ，Ｒｈ，Ｉｒ，Ｐｔのいずれかの金属元
素をイオン注入したものであり、その金属イオンの注入
量が１０ 10 〜１０ 20 ｄｏｓｅ（ｉｏｎ／ｃｍ 2 ）である
請求項１または２記載の電気摺動接点材料。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP05213295A JP3362143B2 (ja) | 1995-03-13 | 1995-03-13 | 電気摺動接点材料 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP05213295A JP3362143B2 (ja) | 1995-03-13 | 1995-03-13 | 電気摺動接点材料 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH08251877A JPH08251877A (ja) | 1996-09-27 |
| JP3362143B2 true JP3362143B2 (ja) | 2003-01-07 |
Family
ID=12906349
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP05213295A Expired - Fee Related JP3362143B2 (ja) | 1995-03-13 | 1995-03-13 | 電気摺動接点材料 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP3362143B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| AU2001233614A1 (en) * | 2000-02-18 | 2001-08-27 | Vestas Wind Systems A/S | Electrical machine |
| JP4252582B2 (ja) * | 2005-05-12 | 2009-04-08 | マブチモーター株式会社 | 直流小型モータ用整流子材料及び刷子材料、クラッド複合材並びにそれを使用した直流小型モータ |
-
1995
- 1995-03-13 JP JP05213295A patent/JP3362143B2/ja not_active Expired - Fee Related
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| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH08251877A (ja) | 1996-09-27 |
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