JP3353308B2 - 生体用金属およびその表面処理方法 - Google Patents

生体用金属およびその表面処理方法

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JP3353308B2 JP20397791A JP20397791A JP3353308B2 JP 3353308 B2 JP3353308 B2 JP 3353308B2 JP 20397791 A JP20397791 A JP 20397791A JP 20397791 A JP20397791 A JP 20397791A JP 3353308 B2 JP3353308 B2 JP 3353308B2
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重光 木原
隆夫 塙
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、人工歯根、人工骨等
の生体内に埋入されるインプラント用の生体用金属及び
その表面処理方法に関し、生体親和性、骨形成能、細胞
誘導性などを改良するとともに、製作を容易にしたもの
である。
【0002】
【従来の技術】生体機能材料としての金属は、筋・骨格
系のように、動的な荷重を受ける整形外科用材料や歯科
用補綴材として需要が高まっており、最近、ステンレス
鋼やコバルト−クロム合金などのほか、優れた耐蝕性を
持っていることからチタンやチタン合金が使用されるよ
うになってきている。
【0003】これら生体機能材料としての金属材料に要
求される特性の一つに、これら材料を骨や歯根の代替材
として使用する場合の骨細胞との親和性などの問題があ
る。
【0004】そこで、従来から生体用金属材料の骨細胞
との親和性などを向上するため、骨の主成分であるハイ
ドロキシアパタイトを溶射法などでコーティングするこ
とが行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、生体用金属
材料にハイドロキシアパタイトを溶射法などでコーティ
ングする場合に、ハイドロキシアパタイトの分解が生じ
たり、生体用金属材料の種類によってはハイドロキシア
パタイトと金属材料との界面で有害物質が生成されるな
どの問題がある。
【0006】また、生体内に埋設使用した場合に、金属
材料とハイドロキシアパタイトとの溶射界面の強度が弱
く、この部分から剥離してしまうという現象が起こると
いう問題がある。
【0007】この発明は、前記従来の技術における欠点
を解決して、有害物質の生成や剥離などの強度上の問題
がなく、骨細胞との親和性を向上することができる生体
用金属およびその表面処理方法を提供しようとするもの
である。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明の生体用金属
は、金属基材表面に骨の主成分のカルシウムとリンの少
なくともいずれかと金属基材の原子とでなり当該金属基
材の表面を他の成分で覆うこと無く、当該金属基材の原
子とともに存在する状態の1ミクロン以下の厚さの表面
処理層、あるいは骨の主成分のカルシウムとリンの少な
くともいずれかと酸素および金属基材の原子とでなり当
該金属基材の表面を他の成分で覆うこと無く、当該金属
基材の原子とともに存在する状態の1ミクロン以下の厚
さの表面処理層を設けたことを特徴とするものである。
【0009】また、この発明の生体用金属の表面処理方
法は、金属基材の表面を研磨した後、この金属基材を陽
極とし、リン酸イオンを含む溶液中で通電して金属基材
表面に骨の主成分のリンと金属基材原子とでなり当該金
属基材の表面を他の成分で覆うこと無く、当該金属基材
の原子とともに存在する状態の1ミクロン以下の厚さの
表面処理層を形成したことを特徴とするものである。
【0010】さらに、この発明の生体用金属の表面処理
方法は、前記請求項2で表面処理層が形成された金属の
表面にイオン注入法、スパッタリング法により骨の主成
分のカルシウムとリンの少なくともいずれか一方、ある
いはこれらと酸素とを複合して1ミクロン以下の厚さの
表面処理層を形成するようにしたことを特徴とするもの
である。
【0011】また、この発明の生体用金属の表面処理方
法は、前記請求項2〜3のいずれかあるいは両方で表面
処理された金属の表面にリン酸イオンとカルシウムイオ
ンの少なくともいずれか一方を含む溶液中に浸漬して1
ミクロン以下の厚さの表面処理層を形成するようにした
ことを特徴とするものである。
【0012】さらに、この発明の生体用金属の表面処理
方法は、上記各金属基材としてチタンに骨の主成分の
ルシウムを10原子%以下、リンを0.005〜6.0
原子%、酸素を24原子%以下を添加したチタン合金を
用いることを特徴とするものである。
【0013】
【作用】この発明の生体用金属によれば、骨の主成分で
あるカルシウムまたはリン、あるいはカルシウムとリン
の両方、さらにこれら3種類の成分と酸素とを組み合わ
せた6種類の異なる成分と、金属基材の原子とでなる1
ミクロン以下の厚さの表面処理層を金属基材の表面に設
けるようにしており、金属基材の表面を他の成分で覆う
こと無く、金属基材の原子と骨の主成分とが存在する状
態の表面処理層として骨細胞との親和性を高めるように
している。なお、金属基材としては、従来から使われて
いる金属インプラント材やここで新たに提案しているチ
タン合金などを使用できる。そして、このコーティング
層の形成はこの発明の種々の表面処理方法によって作る
ことができる。
【0014】この発明の生体用金属の表面処理方法で
は、(a)リン酸イオンを含む溶液中での通電、(b)
カルシウムまたはリン、あるいは両方、さらにこれらと
酸素を組み合わせたイオン注入法などによる表面処理、
(c)リン酸イオンまたはカルシウムイオン、あるいは
両方のイオンの含有溶液への浸漬を金属基材、チタン合
金自体あるいは、これら(a)〜(c)の表面処理を少
なくともいずれか1つを行った材料に対して組み合わせ
て行うようにして、合計14種類の表面処理法を提案し
ており、これらによって金属基材の表面を他の成分で覆
うこと無く、金属基材の原子と骨の主成分とが存在する
状態の1ミクロン以下の厚さの表面処理層を形成して骨
細胞との親和性に優れた材料を効果的に作ることができ
るようにしている。
【0015】
【実施例】以下、この発明の生体用金属及びその表面処
理方法について、具体的に説明する。この生体用金属
は、図6にその表面構造を示すように、母材となる金属
基材21と、この金属基材21の表面に形成されるカル
シウム(Ca)、リン(P)、のいずれか1つ、または
両方、あるいは、これら3種類((Ca),(P),
(Ca+P))の成分に酸素を加えた合計6種類の成分
が金属基材21の金属元素(M)とともに存在する表面
処理層22とで構成され、表面処理層22はカルシウム
などで金属基材21を完全に覆う状態で存在する必要は
なく、最表面にカルシウムが1原子存在するような状態
であっても良い。
【0016】金属基材21としては、従来から生体用金
属として使用されている純チタンやチタン合金、ステン
レス鋼、コバルト−クロム合金のほか、形状記憶合金
(チタン−ニッケルなど)等を用いることができる。
【0017】これら金属基材21の表面に形成するカル
シウム等の6種類の組み合わせで成る成分と金属基材2
1の成分とで形成される表面処理層22は、骨の主成分
であるカルシウム、リン、の少なくともいずれか1つ、
あるいはこれらに酸素を加えた形で金属基材21の最表
面層が形成されることになり、これによって生体との親
和性を向上させるものである。たとえば図7に示すよう
に、金属基材21としての純チタンにカルシウムの表面
処理層22を形成する場合には、この表面処理層22に
より、骨の主成分と同一のカルシウムをチタン及び酸素
とともに表面に配置することで、有機物、PO4 - 等の
誘導をよりスムーズに行わせることができ、親和性が向
上する。この場合のチタン、カルシウムおよび酸素で構
成される表面処理層22は表面から500オングストロ
ーム以下の部分に形成されて金属基材21の厚さ自体の
変化はなく、いわゆる通常のコーティング層と異なり金
属基材21上を別のもので完全に覆う場合と大きく異な
っている。
【0018】このような表面処理層22を形成すべき厚
さは金属基材21によって異なるが、この表面処理層2
2が形成されても金属基材21の電子の場の影響が表面
に及ぶ状態とする必要があり、通常、表面から1ミクロ
ン以下の範囲であれば良く、たとえば上記チタン、カル
シウム、酸素の場合には500〜1000オングストロ
ーム以下であり、1ミクロン以上に厚くなると、電子の
影響が及ばなくなってしまう。
【0019】この生体用金属では、金属基材21とカル
シウム等の表面処理層22との密着性や強度などがその
特性に大きく影響することから、その表面処理方法が重
要となる。すなわち、従来のハイドロキシアパタイトを
コーティングする場合に用いた溶射法などコーティング
の際の温度条件が高いもの等は金属基材からの有害成分
の溶出などの問題を招くことから使用することができな
い。
【0020】そこで、生体用金属の表面処理層22の形
成に適したこの発明の表面処理方法について、図1〜図
5により具体的に説明する。この表面処理方法が行われ
る金属基材としては、既に説明した通常のインプラント
材料21、たとえば純チタンやチタン合金、ステンレス
鋼、コバルト−クロム合金、形状記憶合金(チタン−ニ
ッケルなど)等が使用されるほか、図5に示した新規な
骨細胞との親和性に優れたインプラント用のチタン合金
23が用いることができるので、まず、このチタン合金
23について説明しておく。この生体用チタン合金23
は、チタンにカルシウムを10原子%以下、リンを0.
005〜6.0原子%、酸素を24原子%以下を添加し
てなるものである。
【0021】このような生体用チタン合金23を構成す
るために添加される各元素の添加量は、次のようにして
定められる。 リン:P リンは単独添加でもチタンの生体親和性を向上させるこ
とが期待される元素であり、チタンにリンを添加する場
合、固溶する原子%は、高温(1200℃程度以上)で
約0.2%、またそれ以下の温度ではほとんど0%であ
る。これ以上のリンをチタンに添加させた場合には、T
iPという相が現れ、このTiPが少量であればチタン
合金の硬度を上昇させる効果があるが、多量に存在する
と、チタン合金を脆くさせる。そこで、チタン合金とし
て期待されるべき機械的性質を損なわない程度に添加可
能なリンの最大量は6.0原子%である。
【0022】一方、リンの添加によって生体親和性の向
上の効果がみられる最低量は0.005原子%である。
したがって、リン:Pの添加量は、0.005〜6.0
原子%の範囲となる。
【0023】 カルシウム:Ca カルシウムはチタンに対してほとんど溶解度を持たない
元素であり、元素単独としての添加はあまり期待できな
い。また、このカルシウムを添加しなくとも、既に述べ
たリンの添加によってチタン合金の生体親和性を向上す
ることが期待できるが、カルシウムは骨の主成分として
不可欠なものであり、親和性の一層の向上のためには添
加することが望ましい。
【0024】そこで、チタンへの添加は、元素単独でな
く、カルシウムの化合物の形として行うことで可能であ
り、機械的強度、金属組織学的に好ましいのは、リン酸
カルシウムの形での添加である。
【0025】どのようなリン酸カルシウムの形で添加し
ても生体親和性は向上されるが、最大量はリン酸カルシ
ウム(Ca10( PO4 ) 6 )を添加した場合のカルシウ
ム:Caの1.67倍、すなわち10原子%である。
【0026】 酸素:O 酸素は、リンまたはカルシウムを化合物としてチタンに
添加する際に必要であるが、必ずしも意図的に添加する
必要はない。したがって、最大添加量はリン酸カルシウ
ム(Ca10( PO4 ) 6 )を添加した場合の24原子%
である。
【0027】 アルミニウム:Al アルミニウムは、リンの添加をAlPO4 として行う場
合に添加される元素である。したがって、アルミニウム
の添加量の最低量は0原子%であり、最大量は6原子%
である。
【0028】このような骨細胞を構成する元素を添加し
た生体用チタン合金の具体的な製造方法は、例えば、粉
末冶金法によって作ることができる。
【0029】このような生体用チタン合金23によれ
ば、生体用チタン合金の成分として骨の主成分であるリ
ン、カルシウム、酸素などが添加してあるので、従来、
骨細胞とチタン合金インプラント材の間には、ほとんど
存在しなかった化学的な結合が期待され、化学的な結合
が生じない場合でもより優れた接着性が期待される。
【0030】次に、これら一般のインプラント材料21
または上記生体用チタン合金23を金属基材として行わ
れる表面処理方法は、図1に示すように、3つのプロセ
スa,b,cを1つ乃至3つ組み合わせることで各金属
基材21,23について7つずつ合計14種類(1〜1
4)の異なる処理が行われる。まず、それぞれのプロセ
スa,b,cについて説明する。
【0031】プロセス a (リン酸イオンを含む溶液
中での通電) このプロセスaは、図2に示すように、金属基材21,
23の表面を研磨した後、リン酸イオンを含む溶液中に
て、金属基材21,23を陽極(+)とし、陰極(−)
との間に電圧をかけ、電流を流すことによってリンと金
属基材21,23の原子とが存在する表面処理層22を
形成するものである。
【0032】具体的には、純チタンを金属基材21とし
てリン酸溶液中において、電圧を6V、電流を1Aとし
て通電を行って表面処理層22を形成した。そして、生
体のとの親和性を確かめるため、表面処理層22を形成
した生体用金属と純チタンの板を人工体液(有機物を含
まないHanks'溶液)に30日間浸漬し、その表面の生成
物を分析した。
【0033】この分析の結果、チタンに表面処理層22
を形成した生体用金属では、表面に骨の主成分であるハ
イドロキシアパタイトが純チタンの板の数倍量生成して
いることが確認された。したがって、生体内にこの生体
用金属を埋入した場合の骨形成能は、従来の純チタンの
インプラント材等よりも格段に向上されることが期待さ
れ、有効性が確認された。
【0034】プロセス b (Ca,Pのイオン注入
等) このプロセスbは、図3に示すように、イオン注入法や
スパッタリング法などの表面処理法を用い、CaとPは
単独あるいは複合して金属基材表面に注入するように
し、このとき酸素(O)を同時に注入する場合も含む表
面処理方法である。すなわち、この場合に用いる成分
は、カルシウム、リン、カルシウム及びリンの3種類の
組合わせに加え、これらに酸素を組合わせた合計6種類
となる。
【0035】たとえば、イオン注入法によれば、Caイ
オンまたはPイオン等が金属基材表面にに打ち込まれた
状態となって金属基材の原子と結合して密着性が高く、
従来の溶射法により溶融材料の被膜を基材表面を覆うよ
うに形成する場合より、強い表面処理層22を得ること
ができるとともに、金属基材21,23の表面の温度も
溶射法に比べて低く、金属基材23の合金成分の溶出を
防止することもできる。 また、スパッタリング法によ
ってCaまたはP等で形成したターゲットから飛散した
CaまたはPを金属基材21,23に打ち込んで凝固さ
せる場合にも、同様に金属基材の成分との密着性が高
く、高温により金属基材の成分の溶出を招くことの無
い、Ca,Pなどの表面処理層22を形成することがで
きる。
【0036】なお、カルシウム等の表面処理法として
は、これらイオン注入法やスパッタリング法に限らず、
他の物理蒸着法などを用いるようにして金属基材表面に
打ち込むようにしても良い。具体的には、純チタン及び
Ti−AlPO4(5wt%)を金属基材21とし、イ
オン注入法によるCaイオンの注入を行った。このイオ
ン注入条件は、10KV、50μA/cm2 で、注入量は
1015〜18個/cm2 である。
【0037】こうして純チタンまたはTi−AlPO4
(5wt%)にカルシウムをイオン注入した生体用金属
は、既に説明した図7に示した生体用金属に相当し、金
属基材21,23の最表面から10〜100オングスト
ロームの範囲では、イオン注入にともなって注入される
酸素とカルシウムがチタン中に存在し、表面から50〜
500オングストロームの範囲では、カルシウムが所定
個数注入された状態となってチタン及び酸素とともに表
面処理層22を形成する。さらに、1000オングスト
ローム以上の部分は、金属基材21,23としての純チ
タンのみとなっている。
【0038】このようなカルシウムの表面処理層22が
形成されたチタン及びチタン合金を基材21,23とし
た生体用金属の生体親和性を確かめるため、上記と同様
の実験を行った。得られた生体用金属と市販されている
純チタンの板を人工体液(有機物を含まないHanks'溶
液)中に30日間浸析したのち、これらの表面の生成物
を分析した。 この分析の結果、カルシウムを打ち込ん
で表面処理したいずれの生体用金属でも、表面に骨の主
成分であるハイドロキシアパタイトが純チタンの数倍量
生成していることが確認された。したがって、生体内に
この発明の生体用金属材料を埋入した場合の骨形成能
は、従来の純チタン材等よりも格段に向上されることが
期待され、有効性が確認された。
【0039】また、イオン注入条件を変え、表面処理層
の厚さを3〜5000オングストロームまで種々変化さ
せた試料を製作し、同様に浸漬試験を行ったが、200
0オングストローム以上の厚さの表面処理層の試料で
は、純チタン以上のハイドロキシアパタイトの生成は確
認できなかった。
【0040】こうして金属基材21,23の表面にカル
シウム等の表面処理層22を形成することで、金属基材
21,23は金属基材21の原子と結合してと密着した
カルシウム及び金属基材成分などで覆われた状態とな
り、表面処理層22が骨の主成分であることから生体内
において、骨などとの親和性が向上する。
【0041】また、金属基材21,23とカルシウム等
の表面処理層22との間に境界面がなく連続した状態と
なっているので、表面処理層22の剥離が生じることも
なく、強度的に優れた生体用金属材料となる。
【0042】プロセス c (リン酸イオン、カルシウ
ムイオン含有溶液への浸漬) このプロセスcは、図4に示すように、金属基材21,
23をリン酸イオンあるいはカルシウムイオンまたはそ
れらの両方を含む溶液中に浸漬することによって表面処
理層22を形成するものである。
【0043】具体的には、純チタン及びTi−AlPO
4 (5wt%)を金属基材とし、上記プロセスa,bで
生体親和性の実験に用いた有機イオンを含まないHanks'
溶液での浸漬をおこなった。この場合にも金属基材2
1,23の表面に表面処理層22が形成されることが確
認された。そして、上記実験の場合と同様に長期間浸漬
すれば、表面処理層22の上面に骨の主成分であるハイ
ドロキシアパタイトが純チタンの板の数倍量生成するこ
とが確認された。したがって、生体内にこの生体用金属
を埋入した場合の骨形成能は、従来の純チタンのインプ
ラント材等よりも格段に向上されることが期待され、有
効性が確認された。
【0044】以上のプロセスa,b,cを組み合わせ、
2つの材料21,23に対して図1に示すような表面処
理を行い生体用金属1〜14を得る。 生体用金属 1 従来の生体用金属21を金属基材としてプロセスaの表
面処理を行ったもの。
【0045】生体用金属 2 従来の生体用金属21を金属基材としてプロセスaとプ
ロセスbの2つの表面処理を行ったもの。
【0046】生体用金属 3 従来の生体用金属21を金属基材としてプロセスbの表
面処理を行ったもの。
【0047】生体用金属 4 従来の生体用金属21を金属基材としてプロセスaとプ
ロセスcの2つの表面処理を行ったもの。
【0048】生体用金属 5 従来の生体用金属21を金属基材としてプロセスcの表
面処理を行ったもの。
【0049】生体用金属 6 従来の生体用金属21を金属基材としてプロセスbとプ
ロセスcの2つの表面処理を行ったもの。
【0050】生体用金属 7 従来の生体用金属21を金属基材としてプロセスaとプ
ロセスbとプロセスccの3つの表面処理を行ったも
の。
【0051】生体用金属 8 新規の生体用金属23を金属基材としてプロセスaとプ
ロセスbとプロセスccの3つの表面処理を行ったも
の。
【0052】生体用金属 9 新規の生体用金属23を金属基材としてプロセスbとプ
ロセスcの2つの表面処理を行ったもの。
【0053】生体用金属 10 新規の生体用金属23を金属基材としてプロセスcの表
面処理を行ったもの。
【0054】生体用金属 11 新規の生体用金属23を金属基材としてプロセスaとプ
ロセスcの2つの表面処理を行ったもの。
【0055】生体用金属 12 新規の生体用金属23を金属基材としてプロセスbの表
面処理を行ったもの。
【0056】生体用金属 13 新規の生体用金属23を金属基材としてプロセスaとプ
ロセスbの2つの表面処理を行ったもの。
【0057】生体用金属 14 新規の生体用金属23を金属基材としてプロセスaの表
面処理を行ったもの。
【0058】これら生体用金属1〜14のうち従来の生
体用金属21を用いた生体用金属1〜7については、上
記プロセスa,b,cで説明した具体例にしたがってこ
れらの表面処理を行った。そして、得られた生体用金属
1〜7について、比較用の純チタンの板とともに人工体
液(有機物を含まないHanks'溶液)中に30日間浸析し
たのち、これらの表面の生成物を分析した。
【0059】この分析の結果、いずれの生体用金属1〜
7においても、表面に骨の主成分であるハイドロキシア
パタイトが純チタンの数倍量生成していることが確認さ
れた。これにより、生体内にこれら生体用金属1〜7を
埋入した場合の骨形成能は従来材よりも各段に向上され
ることがで期待できる。
【0060】また、これら生体用金属1〜14のうち新
規の生体用金属23を用いた生体用金属9,10,12
については、上記プロセスa,b,cで説明した具体例
にしたがってこれらの表面処理を行った。そして、得ら
れた生体用金属9,10,12について、比較用の純チ
タンの板とともに人工体液(有機物を含まないHanks'溶
液)中に30日間浸析したのち、これらの表面の生成物
を分析した。
【0061】この分析の結果、いずれの生体用金属9,
10,12においても、表面に骨の主成分であるハイド
ロキシアパタイトが純チタンの数倍量生成していること
が確認された。これにより、生体内にこれら生体用金属
9,10,12を埋入した場合の骨形成能は従来材より
も各段に向上されることがで期待できる。このようにし
て表面処理が施された生体用金属では、従来のインプラ
ント金属やチタン合金にない優れた生体親和性が付与さ
れる。すなわち、金属基材の最表面にカルシウムまたは
リンのいずれか、あるいは両方、さらにこれらに酸素を
組み合わせた合計6種類の成分と、金属基材の原子を含
んだ表面処理層が形成されるので、骨細胞との化学的な
結合が生じたり、化学的な結合にまで至らなくても接着
性が向上し、生体親和性が向上する。
【0062】
【発明の効果】以上実施例とともに具体的に説明したよ
うに、この発明の生体用金属によれば、骨の主成分の一
つであるカルシウムまたはリンあるいは両方、さらにこ
れらに酸素を加えた成分で金属基材の表面に、金属基材
原子との1ミクロン以下の厚さの表面処理層として設け
るようにしたので、従来のインプラント材やチタン合金
に無い優れた骨細胞との親和性のある材料とすることが
できる。そして、この1ミクロン以下の厚さの表面処理
層の形成はこの発明の種々の表面処理方法によって得る
ことができる。
【0063】また、この発明の生体用金属の表面処理方
法によれば、(a)リン酸イオンを含む溶液中での通
電、(b)カルシウムまたはリンのいずれか、あるいは
両方、さらにこれらに酸素を加えたイオン注入法などに
よる表面処理、(c)リン酸イオン,カルシウムイオン
含有溶液への浸漬を金属基材、チタン合金自体あるい
は、これら(a)〜(c)の表面処理を少なくともいず
れか1つを行った材料に対して組み合わせて行うように
したので、合計14種類のコーティング法によって骨細
胞との親和性に優れた表面処理層を効果的に作ることが
できる。
【0064】このような生体用金属材料によれば、従来
骨細胞と金属製インプラント材との間では、ほとんど存
在しなかった化学的な結合が期待される。また、化学的
な結合が起こらない場合でもより優れた接着性が期待さ
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の生体用金属の表面処理方法の一実施
例にかかるフローチャートである。
【図2】この発明の生体用金属の表面処理方法の一実施
例にかかるプロセスaの説明図である。
【図3】この発明の生体用金属の表面処理方法の一実施
例にかかるプロセスbの説明図である。
【図4】この発明の生体用金属の表面処理方法の一実施
例にかかるプロセスcの説明図である。
【図5】この発明の生体用金属の一実施例にかかる説明
図である。
【図6】この発明の生体用金属の一実施例にかかる説明
図である。
【図7】この発明の生体用金属の一実施例にかかる断面
説明図である。
【符号の説明】
1〜14 生体用金属 21 金属基材(従来のインプラント材) 22 コーティング層 23 金属基材(新規なチタン合金インプラント材)
フロントページの続き (72)発明者 太田 守 札幌市北区新琴似11条9丁目1−4 (56)参考文献 特開 昭62−221360(JP,A) 特開 昭62−34566(JP,A) 特開 昭60−92761(JP,A) 特開 平1−86975(JP,A) 特開 昭63−24952(JP,A) 特開 平2−114960(JP,A) 米国特許4846837(US,A) 米国特許4261063(US,A) 米国特許3410766(US,A) 米国特許4944754(US,A) 米国特許4722870(US,A) 欧州特許出願公開277450(EP,A 1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61F 2/00 WPI(DIALOG)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属基材表面に骨の主成分のカルシウム
    とリンの少なくともいずれかと金属基材の原子とでな
    当該金属基材の表面を他の成分で覆うこと無く、当該金
    属基材の原子とともに存在する状態の1ミクロン以下の
    厚さの表面処理層、あるいは骨の主成分のカルシウムと
    リンの少なくともいずれかと酸素および金属基材の原子
    とでなり当該金属基材の表面を他の成分で覆うこと無
    く、当該金属基材の原子とともに存在する状態の1ミク
    ロン以下の厚さの表面処理層を設けたことを特徴とする
    生体用金属。
  2. 【請求項2】 金属基材の表面を研磨した後、この金属
    基材を陽極とし、リン酸イオンを含む溶液中で通電して
    金属基材表面に骨の主成分のリンと金属基材原子とでな
    り当該金属基材の表面を他の成分で覆うこと無く、当該
    金属基材の原子とともに存在する状態の1ミクロン以下
    の厚さの表面処理層を形成したことを特徴とする生体用
    金属の表面処理方法。
  3. 【請求項3】 前記請求項2で表面処理層が形成された
    金属の表面にイオン注入法、スパッタリング法により骨
    の主成分のカルシウムとリンの少なくともいずれか一
    方、あるいはこれらと酸素とを複合して1ミクロン以下
    の厚さの表面処理層を形成するようにしたことを特徴と
    する生体用金属の表面処理方法。
  4. 【請求項4】 前記請求項2〜3のいずれかあるいは両
    方で表面処理された金属の表面にリン酸イオンとカルシ
    ウムイオンの少なくともいずれか一方を含む溶液中に浸
    漬して1ミクロン以下の厚さの表面処理層を形成するよ
    うにしたことを特徴とする生体用金属の表面処理方法。
  5. 【請求項5】 前記請求項2ないし4のいずれかにおけ
    る金属基材としてチタンに骨の主成分のカルシウムを1
    0原子%以下、リンを0.005〜6.0原子%、酸素
    を24原子%以下を添加したチタン合金を用いることを
    特徴とする生体用金属の表面処理方法。
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