JP3346713B2 - 抄紙機用フォイル - Google Patents

抄紙機用フォイル

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JP3346713B2 JP35139196A JP35139196A JP3346713B2 JP 3346713 B2 JP3346713 B2 JP 3346713B2 JP 35139196 A JP35139196 A JP 35139196A JP 35139196 A JP35139196 A JP 35139196A JP 3346713 B2 JP3346713 B2 JP 3346713B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抄紙機における抄
網を支持する抄紙機用フォイルに関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、
製紙工程で使用されている抄紙機の概略図を図3に示す
ように、回転ロール3によって矢印方向に回転する抄網
2と、この抄網2の下方に配置され、抄網2を支持する
支持部材11を備えた抄紙機用フォイル1とから構成さ
れており、上記抄網2の上部に設置されたヘッドボック
ス4よりパルプ原料からなるスラリー5を抄網2に供給
し、このスラリー5が供給された抄網2を支持部材11
の当接面11aで支持するとともに、スラリー5の脱水
を行うようになっている。
【0003】上記抄紙機用フォイル1の支持部材11を
構成する材質としては、超高分子ポリエチレン等のプラ
スチック系材料が広く使用されていたが、これらは、パ
ルプ原料中に含まれているクレーやタルクなどにより支
持部材1の当接面11aが傷付き易く、また、抄網2と
の摺動によって短期間で摩耗することから、その度に抄
紙機を停止して支持部材11を取り外し、当接面11a
の研磨修正や交換作業等のメンテナンスを行わなければ
ならず、作業効率が悪かった。
【0004】その為、支持部材11をプラスチック系材
料に代えて耐摩耗性に優れるアルミナ、ジルコニア、窒
化珪素等のセラミックスで形成することが提案されてい
る(特開昭55−80591号公報、特開昭58−20
8485号公報参照)。この中でも特にアルミナは高い
耐摩耗性を有するとともに、安価であることから最も多
く使用されていた。
【0005】ところが、近年、生産性の向上に伴って、
抄網2の速度が大幅に高速化された結果、セラミック製
の支持部材11が破損するといった課題があった。
【0006】即ち、支持部材11は高速で移動する抄網
2と常に摺接していることから摩擦熱に曝されている。
そして、パルプ原料からなるスラリー5が供給されてい
る状態では摩擦熱を抑えることができるものの、一度、
パルプ原料の供給を止めて再度投入する時に支持部材1
1が急冷されることから、この時生じる熱衝撃によって
セラミック製の支持部材11に割れが発生することがあ
った。
【0007】また、支持部材11がアルミナや窒化珪素
からなるものでは、支持部材11の先端エッジに欠けが
発生し易く、この欠けにより抄網2の寿命を低下させた
り、あるいは抄網2からの脱水作用が小さくなるため
に、抄紙の均一な品質を保つことができず、紙質を低下
させるといった課題もあった。
【0008】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明は上記課
題に鑑み、抄紙機の抄網を支持する抄紙機用フォイルの
少なくとも当接面を、アルミナを主体とし、ジルコニア
を5〜20容量%含有するとともに、アルミナマトリッ
クス中に上記ジルコニアの粒子が凝集せずに均一に分散
してなり、該ジルコニアの25〜80%が単斜晶ジルコ
ニアで、かつ気孔率が0.1以下であるアルミナ質焼結
体により構成したものである。
【0009】また、本発明は、上記ジルコニア粒子の平
均結晶粒子径を0.2〜1.5μmとしたものである。
【0010】即ち、本願発明者はセラミックスの中でも
安価に製造できるアルミナ質焼結体に着目し、種々研究
を重ねた結果、アルミナマトリックス中に相転移を伴う
ジルコニア粒子を分散させるとともに、室温(25℃)
において上記ジルコニア粒子の一部を単斜晶ジルコニア
の状態で存在させたものが、抄紙機用フォイルとして好
適であることを見出したものである。
【0011】即ち、アルミナマトリックス中に分散させ
るジルコニアは約1100℃以上の温度で準安定な正方
晶ジルコニアの状態で存在し、1100℃未満の温度で
は単斜晶ジルコニアの状態で存在する。また、ジルコニ
アは正方晶ジルコニアから単斜晶ジルコニアに相転移す
る時、体積膨張を伴うため、アルミナマトリックス中に
単斜晶ジルコニアを分散させることで、単斜晶ジルコニ
アの周囲に微細なマイクロクラックを形成することがで
き、このマイクロクラックにより熱応力に伴うクラック
の進行を防ぐことができるため、高い耐熱衝撃性を有す
るアルミナ質焼結体とすることができ、このアルミナ質
焼結体により抄紙機用フォイルの少なくとも当接面を形
成することで、パルプ原料の供給時の熱衝撃に伴う破損
を防ぐことができる。
【0012】ただし、そのためにはジルコニアを5〜2
0容量%の範囲で含有するとともに、アルミナマトリッ
クス中に分散させる単斜晶ジルコニアの割合を25〜8
0%とすることが重要である。
【0013】これは、ジルコニアの含有量が5容量%よ
り少ないと、全てのジルコニアが単斜晶ジルコニアであ
ったとしても焼結体内に形成されるマイクロクラックが
少な過ぎるため、熱衝撃に伴う応力を十分に吸収するこ
とがでず、強度が大幅に劣化するからであり、逆に、ジ
ルコニアの含有量が20容量%より多くなると、焼結体
内に形成されるマイクロクラックが多くなり過ぎるため
に、強度が大きく低下するからである。
【0014】また、単斜晶ジルコニアの割合が25%未
満では、焼結体内に形成されるマイクロクラックが少な
すぎるために、熱衝撃に伴う応力を吸収することがで
ず、アルミナ質焼結体の耐熱衝撃性を高めることができ
ないからであり、逆に、単斜晶ジルコニアの割合が80
%より多くなると、室温において焼結体内に形成される
マイクロクラックが多すぎるために焼結体そのものの強
度が大きく低下するとともに、耐摩耗性も大きく低下す
るからである。
【0015】また、アルミナマトリックス中に分散させ
る単斜晶ジルコニア粒子は、凝集させずにほぼ均一に分
散することが重要である。
【0016】これは、単斜晶ジルコニア粒子が凝集した
状態でアルミナマトリックス中に存在していると、各単
斜晶ジルコニア粒子の周囲に形成されるマイクロクラッ
クが結合し、大きなクラックが偏在した状態となるため
に、焼結体の強度を高める効果が小さく、また、熱衝撃
により強度が大きく低下するからであり、本発明のよう
に、単斜晶ジルコニア粒子を凝集させずにアルミナマト
リックス中に均一に分散することで、微細なマイクロク
ラックを均等に形成することができるため、熱衝撃に伴
う応力を吸収し、アルミナ質焼結体の耐熱衝撃性を高め
ることができる。
【0017】ただし、ジルコニア粒子の平均結晶粒子径
が1.5μmより大きくなると、単斜晶ジルコニアの周
囲に微細なマイクロクラックを均一に形成することがで
きないために強度を高めることができず、また、十分な
耐熱衝撃性も得られない。また、ジルコニア粒子の平均
結晶粒子径を0.2μmより小さくすることは製造上難
しい。
【0018】その為、アルミナマトリックス中に分散さ
せるジルコニア粒子の平均結晶粒子径は0.2〜1.5
μmとすることが良い。
【0019】一方、主体をなすアルミナは80〜95容
量%の範囲で含有すれば良く、さらには焼結性を高める
ためにSiO2 、MgO、CaO等の焼結助剤を1容量
%以下の範囲で含有しても良い。
【0020】また、アルミナの平均結晶粒子径は1〜2
0μmとすることが良く、これは、アルミナの平均結晶
粒子径を1μmより小さくすることは製造上難しいから
であり、アルミナの平均結晶粒子径が20μmより大き
くなるとアルミナ質焼結体の強度が大きく低下するから
である。
【0021】さらに、本発明のアルミナ質焼結体は、気
孔率を0.1%以下とすることが必要である。これは、
気孔率が0.1%より大きくなると、抄網との当接面の
先端エッジ部をシャープエッジとすることができないば
かりか、アルミナ質焼結体の耐摩耗性そのものが低下す
るために、抄網との摺接により短期間で摩耗するととも
に、抄網を傷付ける恐れがあるからである。
【0022】なお、本発明において、単斜晶ジルコニア
の割合とは、アルミナ質焼結体の表面に存在する全ジル
コニア量に対する単斜晶ジルコニアの占める割合のこと
であり、X線回折装置によりアルミナ質焼結体の表面に
存在する単斜晶ジルコニアのピーク強度Im と単斜晶ジ
ルコニア以外のジルコニアのピーク強度IT をそれぞれ
求め、数1に基づいて算出することができる。
【0023】また、気孔率を測定するには、アルキメデ
ス法により算出すれば良い。
【0024】
【数1】
【0025】ところで、このようなアルミナ質焼結体を
得るには、平均粒子径0.5〜30μmのアルミナを8
0〜95容量%に対し、Y2 3 やCaO等の安定化剤
により安定化あるいは部分安定化していない平均粒子径
0.5〜2.0μmのジルコニアを5〜20容量%添加
し、振動ミル、ビーズミル等にて粉砕、混合する。
【0026】このように、出発原料としてY2 3 やC
aO等の安定化剤により安定化あるいは部分安定化して
いないジルコニア粉体を用いるのは、安定化あるいは部
分安定化されたジルコニア粉体を使用すると、5〜20
容量%の範囲で含有したとしてもアルミナマトリックス
中に存在する単斜晶ジルコニアの割合が少ないことか
ら、焼結体内に十分な量のマイクロクラックを形成する
ことができないからである。また、原料を混合する時
は、アルミナ粉体とジルコニア粉体とを均一に混合する
ために、振動ミル、ビーズミル等にて粉砕、混合するこ
とが重要である。即ち、アルミナ粉体とジルコニア粉体
とを均一に混合させることで、焼結体を形成した時にジ
ルコニア粒子が凝集することを防ぎ、アルミナマトリッ
クス中にジルコニア粒子を均一に分散することができる
からである。
【0027】そして、この混合原料にさらにバインダー
を加えて泥漿を作製し、スプレードライヤーにより噴霧
乾燥させて顆粒を形成したあと、この顆粒を金型内に充
填して一軸加圧成形法や等圧加圧成形法により成形体を
形成するか、あるいは泥漿をテープ成形法や鋳込成形
法、あるいは射出成形法などの通常のセラミック成形法
により成形体し、しかるのち、切削加工を施して成形体
を所望の形状に形成する。
【0028】そして、この所望の形状に形成した成形体
を、大気雰囲気や真空雰囲気中にて1500〜1650
℃の焼成温度で1〜数時間焼成すれば良い。
【0029】ここで焼成温度を1500〜1650とし
たのは、単斜晶ジルコニアの割合が焼成温度と相関関係
があるからであり、焼成温度を高くすることで単斜晶ジ
ルコニアの割合を多くすることができる。ただし、焼成
温度が1500℃より低いと単斜晶ジルコニアの割合を
25%以上とすることができず、また、焼結性が悪いた
めに緻密化することができないために強度を高めること
ができないからであり、逆に、1650℃より大きくな
るとジルコニアの異常粒成長をアルミナ粒子が抑えきれ
なくなり、アルミナ質焼結体の強度が低下するからであ
る。
【0030】このように形成したアルミナ質焼結体は、
気孔率が0.1%以下と小さく、アルミナマトリックス
中には平均結晶粒子径が0.2〜1.5μmのジルコニ
ア粒子が5〜20容量%の範囲で実質的に凝集せずに均
一に分散しており、ジルコニアの25〜80%を単斜晶
ジルコニアの状態で存在させることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
説明する。
【0032】図1は本発明に係る抄紙機用フォイル1を
示す斜視図であり、図2は上記抄紙機用フォイル1のう
ち抄網との当接面12aを構成する支持部材11を示す
斜視図である。
【0033】この抄紙機用フォイル1は、ステンレス鋼
やFPR(繊維強度プラスチィック)などからなる保持
台21の上部に、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒
化珪素などのセラミックスからなる支持部材11を接着
剤でもって固着一体化したものであり、上記支持部材1
1の表面には掻取部材12を固着して当接面12aを形
成するとともに、該掻取部材12の先端エッジ部13を
鋭角なシャープエッジとしてある。また、上記掻取部材
12は、アルミナを主体とし、ジルコニアを5〜20容
量%含有するとともに、アルミナマトリックス中に平均
結晶粒子径が0.2〜1.5μmのジルコニア粒子が凝
集せずに均一に分散してなり、上記ジルコニアの25〜
80%が単斜晶ジルコニアであって、かつ気孔率が0.
1%以下のアルミナ質焼結体により形成してある。
【0034】そして、この抄紙機用フォイル1を図3に
示す抄紙機に組み込むことにより、パルプ原料からなる
スラリー5を供給した抄網2を支持部材11の当接面1
2aで支持するとともに、掻取部材12の先端エッジ部
13で抄網2からの水滴を掻き取って脱水作用を行うよ
うになっている。
【0035】このように、本発明に係る抄紙機用フォイ
ル1は、支持部材11の当接面12aが、アルミナマト
リックス中で単斜晶ジルコニア粒子を凝集せずに均一に
分散したアルミナ質焼結体からなるため、耐摩耗性、摺
動性、耐チッピング性、耐熱衝撃性に優れており、支持
部材11及び抄網2の双方の寿命を長くすることができ
る。
【0036】なお、図1では支持部材11に表面に掻取
部材12を固着して当接面12aを構成した例を示した
が、他の実施形態として支持部材11の全体を上記アル
ミナ質焼結体で形成しても良い。また、本実施形態では
抄網2を支持するとともに、脱水作用を行う抄紙機用フ
ォイル1の例にとって説明したが、本発明と同様に耐摩
耗性ならびに耐熱衝撃性が要求される他の製紙用部材と
しても使用できることは言うまでもない。
【0037】
【実施例】
(実施例1)ここで、図2における掻取部材12を構成
する本発明のアルミナ質焼結体と従来のアルミナ質焼結
体を用意し、それぞれの耐摩耗性及び耐熱衝撃性につい
て実験を行った。
【0038】まず、各アルミナ質焼結体からなる抗折試
験片を15本ずつ用意し、各抗折試験片の表面をX線回
折装置にて測定して、単斜晶ジルコニアのピーク強度I
m と単斜晶ジルコニア以外のジルコニアのピーク強度I
t をそれぞれ求め、数1に基づいて単斜晶ジルコニアの
割合を算出したあと、室温(25℃)における抗折強度
を測定した。
【0039】次に、水温との温度差が200℃、250
℃、300℃になるように各抗折試験片を加熱し、その
後、水中に投下して熱衝撃を加えたあと、各温度におけ
る抗折強度を測定して耐熱衝撃性を測定した。さらに、
各アルミナ質焼結体からなる40×20×5mmの角材
を形成し、これらを直径10cmのロータ(不図示)か
ら先端が15mm出るように設置し、濃度33%のスラ
リー中(メディア:WA♯150〔粒径74μm〕)に
おいて1760rpmの回転速度で8時間回転させたあ
と、その摩耗量を測定することで耐摩耗性を測定した。
【0040】それぞれの結果は表1に示す通りである。
【0041】
【表1】
【0042】この結果、耐摩耗性については本発明品及
び従来品とも同程度であったが、本発明に係るアルミナ
質焼結体は、室温における抗折強度が519MPaと大
きく、250℃の熱衝撃に対しては528MPaと、さ
らに抗折強度が向上し、優れた耐熱衝撃性を有してい
た。
【0043】これに対し、従来のアルミナ質焼結体は、
250℃の熱衝撃に対して98MPaまで大きく低下し
た。
【0044】このように、本発明に係るアルミナ質焼結
体は、従来のものと比べて優れた耐熱衝撃性を有してお
り、抄紙機用フォイル1の抄網との当接面12aを構成
するのに最適であることが判る。
【0045】(実施例2)次に、図2の掻取部材12を
構成するアルミナ質焼結体のジルコニアの含有量及び単
斜晶ジルコニアの割合を変化させた時の耐摩耗性及び耐
熱衝撃性について実施例1と同様に実験を行った。
【0046】各アルミナ質焼結体は、まず、原料を作製
するためにアルミナ粉末とジルコニア粉末を表2に示す
割合で合計が1kgになるように計量して加え、振動ミ
ルにて24〜48時間程度湿式混合し、その後、バイン
ダーを加えて泥漿を作製し、スプレードライヤーで乾燥
させてアルミナ粉体とジルコニア粉体とが均一に混合し
た顆粒(原料)を作製した。なお、表1に示すNo.5
のジルコニア粉末には3molのY2 3 で部分安定化
したジルコニア粉末を使用し、それ以外は安定化剤によ
り安定化あるいは部分安定化していないジルコニア粉末
を使用した。
【0047】次に、顆粒を金型内に充填して一軸加圧成
形法により1ton/cm2 の圧力にて角柱状に成形
し、この成形体を1500〜1600℃の温度で焼成
し、得られた角柱状の焼結体に切削加工を施して3×4
×40mmの抗折試験片を各15本ずつ製作した。
【0048】そして、X線回折装置を用いて単斜晶ジル
コニアの割合を測定したあと、室温(25℃)における
抗折強度を測定し、さらに、水温との温度差が200
℃、250℃、300℃となるように各抗折試験片を加
熱し、水中に投下して熱衝撃を加えた時の抗折強度を測
定し、耐熱衝撃性を測定した。
【0049】さらに、各アルミナ質焼結体からなる40
×20×5mmの角材を形成し、これらを直径10cm
のロータ(不図示)から先端が15mm出るように設置
し、濃度33%のスラリー中(メディア:WA♯150
〔粒径74μm〕)において1760rpmの回転速度
で8時間回転させたあと、その摩耗量を測定することで
耐摩耗性を測定した。
【0050】各抗折試験片を構成するアルミナ質焼結体
の組成、及びそれぞれの結果は表2に示す通りである。
【0051】
【表2】
【0052】この結果、まず、ジルコニアの含有量及び
単斜晶ジルコニアの割合が多くなるにしたがって、摩耗
量が多くなることが判る。
【0053】また、室温における抗折強度と耐熱衝撃性
について観察すると、試料No.1,2は、ジルコニア
の含有量が5容量%より少なく、また、単斜晶ジルコニ
アの割合も25%未満であることから、試料No.1で
は250℃の熱衝撃で抗折強度が90MPaにまで低下
し、試料No.2では300℃の熱衝撃で抗折強度が7
2MPaにまで低下した。
【0054】一方、試料No.11では、ジルコニアの
含有量が35容量%と多く、単斜晶ジルコニアの割合も
91.2%と多いことから、室温における抗折強度が2
06MPaと低く、表面には単斜晶ジルコニアによる微
細なマイクロクラックが無数に存在するために気孔率が
0.15%であった。その為、摩耗試験による摩耗量が
0.125cm3 と最も摩耗した。
【0055】また、試料No.10は、試料No.11
に比べてジルコニアの含有量及び単斜晶ジルコニアの割
合が少ないことから、室温における抗折強度を高めるこ
とができたものの、ジルコニアの含有量が20容量%よ
り多く、また、単斜晶ジルコニアの割合も80%より多
いために、300℃の熱衝撃で抗折強度が78MPaに
まで低下した。
【0056】これに対し、本発明の試料No.3,4,
7〜10は、いずれもジルコニアの含有量が5〜20容
量%で、かつ単斜晶ジルコニアの割合が25〜80%で
あるために気孔率が0.1%以下であった。その為、摩
耗試験による摩耗量は0.05cm3 以下と少なく、充
分な耐摩耗性を有していた。しかも、アルミナ質焼結体
内には単斜晶ジルコニアによる微細なマイクロクラック
が均一に形成されていることから、室温における抗折強
度は500MPa以上を有し、250℃の熱衝撃に対し
ては450MPa以上、300℃の熱衝撃に対しても2
00MPa以上の抗折強度を有し、耐熱衝撃性に優れて
いた。
【0057】また、試料No.4,5を比較すると、い
ずれもジルコニアの含有量が同じであるにもかかわら
ず、試料No.5は原料に部分安定化ジルコニアを使用
していることから、室温における抗折強度は最も高かっ
たものの、焼結体内における単斜晶ジルコニアの割合が
少ないために250℃の熱衝撃を加えると抗折強度が1
68MPaにまで低下し、大幅に強度が劣化した。
【0058】これに対し、本発明の試料No.4は、室
温における抗折強度は試料No.4に比べて若干劣るも
のの、単斜晶ジルコニアの割合が55.1%と焼結体内
に微細なマイクロクラックを適量有することから250
℃の熱衝撃に対して400MPa以上、300℃の熱衝
撃に対しても200MPa以上の抗折強度を有してい
た。
【0059】さらに、試料No.4,6,7を比較する
と、試料No.6は単斜晶ジルコニアの割合が72.2
%と25〜80容量%の範囲にあるものの、ジルコニア
の平均結晶粒子径が1.5μmより大きいために室温に
おける強度が358MPaと低く、また、250℃の熱
衝撃を加えた時の抗折強度も108MPaと低いもので
あったが、本発明の試料No.4,7はジルコニアの平
均結晶粒子径が1.5μm以下であることから、室温に
おいて500MPa以上の抗折強度を有し、250℃の
熱衝撃を加えても大きな強度劣化は見られなかった。
【0060】このように、ジルコニアの含有量を5〜2
0容量%とするとともに、ジルコニア粒子を凝集させず
にアルミナマトリックス中に均一に分散させ、単斜晶ジ
ルコニアの割合を25〜80%とすることで、アルミナ
質焼結体の気孔率を0.1%以下とすることができるた
め、十分な耐摩耗性と非常に高い耐熱衝撃性が得られる
ことが判る。
【0061】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、抄紙機
用フォイルの抄網との当接面を、アルミナを主体とし、
ジルコニアを5〜20容量%含有するとともに、アルミ
ナマトリックス中に平均結晶粒子径0.2〜1.5μm
のジルコニアの粒子が凝集せずに均一に分散してなり、
該ジルコニアの25〜80%が単斜晶ジルコニアで、か
つ気孔率が0.1μm以下であるアルミナ質焼結体で形
成したことにより、抄網との摺接による当接面の摩耗を
大幅に抑えることができるとともに、パルプ原料の再投
入時における熱衝撃によって破損させることがないた
め、長期間にわたって安定した抄網の支持と、脱水作用
を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る抄紙機用フォイルを示す斜視図で
ある。
【図2】図1の支持部材を示す斜視図である。
【図3】一般的な抄紙機の構造を示す概略図である。
【符号の説明】
1・・・抄紙機用フォイル 、11・・・支持部材、
12a・・・当接面、12・・・掻取部材 、13・・
・先端エッジ部 、21・・・保持台

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】抄網との当接面を、アルミナを主体とし、
    ジルコニアを5〜20容量%含有するとともに、アルミ
    ナマトリックス中にジルコニアの粒子が凝集せずに均一
    に分散し、該ジルコニアの粒子の25〜80%が単斜晶
    ジルコニアを含む気孔率0.1%以下のアルミナ質焼結
    体により形成したことを特徴とする抄紙機用フォイル。
  2. 【請求項2】上記ジルコニア粒子の平均結晶粒子径が
    0.2〜1.5μmであることを特徴とする請求項1に
    記載の抄紙機用フォイル。
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