JP3344497B2 - 新規システインプロテアーゼインヒビター - Google Patents
新規システインプロテアーゼインヒビターInfo
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Description
アーゼインヒビターに関する。本発明の新規システイン
プロテアーゼインヒビターは破骨細胞の骨吸収作用に対
する阻害効果を有し、骨の老化抑制を目的とした食品原
料や医薬品として有用である。
は、活性中心にSH基を持つシステインプロテアーゼの
タンパク質分解活性を阻害する物質であり、動物組織、
細胞、血液中や尿中に見出されている。このようなシス
テインプロテアーゼインヒビターであって蛋白性の物質
はシスタチンと総称されている。これまでに見出された
システインプロテアーゼインヒビターであるシスタチン
は、その分子構造から3つのファミリーに分類されてい
る(Biochem.J., 236, 312 (1986))。この文献によれ
ば、ファミリー1(ステフィンファミリー)にはラット
肝臓由来のシスタチンβ(Biochem. Biophys. Res. Com
mun., 115, 902 (1983))、ラット表皮由来のシスタチン
α(Biochem. Biophys. Res. Commun., 121, 149 (198
4))やヒトの白血球に見出されたステフィンA (Hoppe-S
eyler's Z. Physiol. Chem., 364,1487 (1983))が含ま
れている。これらのシスタチンはいずれも分子量約12
KDaを示し、糖鎖を持たない。
スタチンC(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 79, 3024
(1982))、卵白シスタチン (Hoppe-Seyler's Z. Physio
l. Chem., 364, 1487 (1983)) がこのファミリーに分類
され、ウシ初乳由来のシスタチン (FEBS Lett., 186, 4
1 (1985)) もこのファミリーに属する。このファミリー
に属するものは分子量約13〜15KDaを示し、ファ
ミリー1と同様に糖鎖を有していない。
ーゲン (Biochemistry, 23, 5691 (1984))、ラットのT
キニノーゲン(Biochem. Biophys. Res. Commun., 129,
280(1985))など、キニノーゲン類がファミリー3を構
成している。キニノーゲン類は分子量78KDaの高分
子キニノーゲンと分子量45KDaの低分子キニノーゲ
ンが存在することが知られている。
用な作用の1つして、ウィルスの増殖阻害作用が確認さ
れている (Biochem. Biophys. Res. Commun., 127, 107
2(1985))。また、骨疾患モデルの動物の骨より、カルシ
ウムの遊離を抑制する作用を示すことから、特開平2−
223529号公報には抗アレルギー剤や骨疾患治療剤
としての用途が開示されている。また特開昭61−22
5130号公報には卵白由来のシスタチンを精製し、こ
れを抗ウイルス剤として使用する技術が開示されてい
る。
タチンαの合成遺伝子、特開平1−71492号公報に
はシスタチンBの合成遺伝子、特開平1−157390
号公報にはシスタチンAの合成遺伝子がそれぞれ開示さ
れており、遺伝子操作によりシスタチンを生産すること
も可能となってきた。
の骨吸収に起因する骨粗鬆症が急増している。現在、破
骨細胞の吸収活性を押える医薬として、カルシトニン製
剤がある。しかしこの製剤は、医薬品として、サケやウ
ナギ由来のホルモンを利用したホルモン製剤であり、食
品素材から得られ、食品素材として使えるような安全な
物質についてはあまり検討されていないのが現状であ
る。
得られる安全でしかも食品素材として使えるような物質
について検索した。特に、乳中に存在することが知られ
ているシステインプロテアーゼインヒビターについて検
討をすすめたところ、従来乳由来のシスタチンとして知
られているものと明らかに異なる、新規なシスタチン様
物質を見出した。従って本発明は、乳由来の新規なシス
タチン様システインプロテアーゼインヒビターを提供す
ることを課題とする。
新規なシスタチン様システインプロテアーゼインヒビタ
ーは乳から得ることができるものであり、下記の特性に
より特定される。 (1)固定化したカルボキシメチル化パパインに結合性
を有する。 (2)パパインに対する阻害活性を有する。 (3)SDS−PAGEによる分子量測定で57±5K
Daを示す。 (4)パス染色陽性。 なお、等電点pIについては、通常5.5±0.1を示
す。
ンとして知られている物質の分子量が、上記したように
12KDaまたは13〜15KDaであるのと比較して
遙に大であり、さらに過ヨウ素酸シッフ染色法(periodi
c acid Schiff staining) によるパス染色陽性であるこ
とから糖鎖の存在が推定される。これに対して、乳由来
の既知のシスタチンは糖鎖が結合していない。またキニ
ノーゲンとして知られているシスタチンファミリーの物
質と比較した場合、本発明物質の分子量は57±5KD
aであり、これに対してキニノーゲンの分子量は78K
Daの高分子キニノーゲンと分子量45KDaの低分子
キニノーゲンが知られており、分子量測定により本発明
物質はこれらの物質と明確に区別できる。このように、
本発明により提供される物質は新規シスタチン様システ
インプロテアーゼインヒビターということができる。さ
らに後述するように本発明物質は乳中から分離されるシ
スタチンファミリー1の物質と比較して、システインプ
ロテアーゼの阻害活性が2倍程度高いという特徴を有し
ている。
から回収することができるが、特にウシ乳中から容易に
回収することができる。本発明物質は泌乳期間のうち特
に初乳中に大量に含有されるが、通常の乳中にも含有さ
れる。これらの乳を原料として、上述の文献に記載され
ているように、代表的なシステインプロテアーゼである
パパインなどの親和性によるアフィニティークロマトグ
ラフィー等の操作により分離することができる。
なるようにNaClを添加し、これをカルボキシメチル化パ
パイン固定化担体を用いたアフィニティークロマトグラ
フィーに供し、ウシ初乳シスタチンと共に、シスタチン
より高分子量のシステインプロテアーゼインヒビターの
濃縮画分を調製する。この画分には既知のシスタチンと
本発明物質を含有している。特に、NaClの添加により非
特異的吸着を抑制し、比活性の高い濃縮画分を調製でき
る。さらに、この画分をゲル濾過クロマトグラフィー等
のクロマトグラフィーによって、本発明物質であるシス
タチン様システインプロテアーゼインヒビターと既知の
シスタチンを分離することができる。精製にあたって
は、この他に蛋白質の精製方法として知られている逆相
クロマトグラフィーやHPLCなどの方法を組み合わせ
ても良い。
arrettらの方法 ("Methods in enzymology" Vol.80 198
1, pp771) に準じて測定することができる。即ち 0.
1Mベンゾイル-D,L- アルギニン-4- ニトロアニリド(B
ezoil-D,L-arginine-4-nitroanilide)ジメチルスルホキ
シド溶液を基質とし、測定用の緩衝液として、2mMの
EDTAを含む、20mMリン酸緩衝液に使用直前にシ
ステインを終濃度8mMとなるように添加した溶液を用
いて、比色法により酵素の活性を測定することによっ
て、酵素の阻害率を求める方法である。本発明の新規シ
ステインプロテアーゼインヒビターは乳中のシスタチン
の活性を上回っている。乳中のシスタチンを対照として
阻害活性を測定した場合、蛋白質あたりの阻害活性は2
倍程度の阻害率を示す。
インヒビターは、PAS染色で陽性を示し、糖鎖の存在
が確認される。SDS−PAGEによる分子量測定で
は、還元及び非還元状態でいずれも57KDaを示し
た。本発明物質をゲル等電点電気泳動法(Fast system
Pharmacia社製) により等電点を測定したところ、pI
が、5.4−5.6を示した。
り、その安全性は高いものと考えられる。従って、既知
のシスタチンに見出される、抗ウイルス剤、抗アレルギ
ー剤、骨疾患治療剤として用いることが可能であり、必
要に応じて製剤化するか、あるいは単独で用いることが
可能である。また食品や飲料中に混入させて用いること
もできる。医薬品として用いる場合には経口剤、座剤な
どが例示できる。また蛋白質製剤は通常注射剤として用
いられることが多いが、本発明物質においても同様に薬
学的に有効な量の本発明物質を含有させ、製薬学的に許
容しうる安定剤、賦形剤、等張化剤、無痛化剤、防腐
剤、緩衝剤などを含有させて注射剤とすることもでき
る。
説明する。
パパインに対する阻害活性を Barrett らの方法 ("Meth
ods in enzymology" Vol.80 1981, pp771) に準じて測
定した。0.1Mベンゾイル-D,L- アルギニン-4- ニト
ロアニリドジメチルスルホキシド溶液を基質とし、測定
用の緩衝液として、2mMのEDTAを含む、20mM
リン酸緩衝液に使用直前にシステインを終濃度8mMと
なるように添加した。パパインを0.5mg/mlの濃
度で、システインを含まない測定用緩衝液に溶解した。
また、反応停止用溶液として30%酢酸溶液を使用し
た。測定は、以下の手順で行った。測定用チューブに1
mlシステインを含むリン酸緩衝液と0.1mlのパパ
イン溶液を入れ、37℃で5分間インキュベートした。
次いで、試料溶液0.1ml基質溶液30μlを加え攪
拌した。37℃で30分間反応後、0.2mlの反応停
止液を加え、410nmの吸光度を測定した。インヒビ
ター活性は以下の数1式より求めた。
より脱脂乳を調製し、終濃度0.5MとなるようにNa
Clを添加した。カルボキシメチル化パパインをトレシ
ルトヨパール(Tresyl-Toyopearl, 東ソー製) に結合さ
せた担体を50φ×150mmのカラムへ充填後、0.
5M NaCl溶液で平衡化し、先のNaClを添加し
た脱脂乳を通液し、システインプロテアーゼインヒビタ
ーを吸着させた。通液後、0.5M NaCl 溶液と
0.1% Tween−20を含む0.5M NaCl
溶液で順次カラムを洗浄した。次いで、20mM酢酸−
0.5MNaCl溶液でシステインプロテアーゼインヒ
ビターを溶出させた。溶出画分を直ちに1M NaOH
溶液で中和し、446mlの濃縮画分を得た。
ロテアーゼインヒビターの単離法 (1)で調製した濃縮画分を分画分子量6KDaのフォ
ローファイバー型UF膜(旭化成製)により30mlに
濃縮した。次いで、あらかじめ充填し、0.1M炭酸水
素アンモニウム緩衝液で平衡化した Sephacryl S−2
00HR (Pharmacia 製) カラム (50φ×750m
m)に通液した。280nmの紫外部吸収をモニターし
たところ、タンパク質は3つの画分に分離され、その内
2つの画分にインヒビター活性が認められた。このイン
ヒビター活性を示す画分を回収し、凍結乾燥により、2
40mgの新規システインプロテアーゼインヒビターお
よび、6.4mgの乳由来シスタチンをそれぞれ得た。
表1に各精製過程の精製度を示す。
システインプロテアーゼインヒビター、乳由来シスタチ
ンのSDS−PAGEの結果を示した。また、新規シス
テインプロテアーゼインヒビターの特性を下記表2にま
とめた。
フィニティークロマトグラフィーによる濃縮画分の調製
では、精製倍率が約2000倍、回収率も70%を上回
っており、効率の良い方法であることが確認できた。ま
た、最終的に単離した新規システインプロテアーゼイン
ヒビターは、従来からその存在が認められていた初乳シ
スタチンより約1.6倍高い比活性を示した。図1か
ら、新規システインプロテアーゼインヒビターおよび乳
由来シスタチン共に単一バンドを示し、不純物は認めら
れず、還元及び非還元条件下でも変化が無いことから、
両者共に単一のポリペプチドから成ることが示された。
この結果から、本法により従来1種類と考えられていた
画分から純粋な2種のインヒビターを同時に単離できる
ることが確認された。
センター)の大腿骨より調製した。摘出した骨の軟組織
を取り除き,α-Modified minimun essentialmedium
(α-MEM, Flow Laboratories, (McLean, VA))で5分間
細かく破砕した。この破砕物を、さらに tube mixer で
30秒間激しく撹拌し、3分間静置することにより大き
な破砕物を除いて、破骨細胞を含む全骨細胞を用いた。
象牙片は、象牙塊をダイヤモンドカッターで厚さ150
μmに切断後直径6mmの円形に切り抜くことにより作
製した。次いで、75%エタノールで滅菌後、α−ME
Mで洗浄し96wellプレートに移した。
チン、乳由来シスタチン、乳由来高分子システインプロ
テアーゼインヒビターの骨吸収阻害効果を調べるため
に、200μlのα−MEMに5%牛胎児血清を補った
培地で3×105 の細胞を象牙片上で37℃、CO2 イ
ンキュベーター (5%CO2,95% air) で2時間培養
した。その後、卵白由来シスタチン、乳由来シスタチ
ン、乳由来高分子システインプロテアーゼインヒビター
を各1μg/mlの濃度含む培地に置き換え、2日毎に
培地交換しながら培養した。培養終了後、96well
プレート上で Handyengine (吉田精工)を10秒間作
用させることにより細胞を取り除き、酸性ヘマトキシリ
ン(sigma) で3分間染色した。破骨細胞によって、形成
された骨吸収窩の総面積は、画像解析装置(PIAS-LA55,
PIAS) を用いて計測した。象牙片上の骨吸収窩は、顕微
鏡 (対物レンズ, ×2TVカメラ接続レンズ,×14)
からビデオカメラにより画像として取り込み、フィルタ
ー処理および、ノイズ除去後2値化(黒、白)して、面
積を測定した。
チン(Ew−Cys)、乳由来シスタチン(Co−Cy
s)、新規乳由来システインプロテアーゼインヒビター
(HM−Cys)ともに、骨吸収を抑制しており、本発
明の新規システインプロテアーゼインヒビターの骨吸収
阻害効果が最も高かった。このことから、これらのタン
パク質は、破骨細胞に直接作用して骨吸収を抑制してい
ることが示唆された。また、これらの物質はいずれも繊
維芽細胞、骨芽細胞の増殖には全く影響を及ぼさず、毒
性も示さなかった。
ゼインヒビターが提供される。本発明により提供される
物質は既知のシスタチンと比較して高いシステインプロ
テアーゼ阻害活性を有し、破骨細胞に直接作用して骨吸
収を抑制するなどシスタチンと同様の生理活性を示す。
ステインプロテアーゼインヒビターのSDS−PAGE
のパターンを示す。
態) 8:新規システインプロテアーゼインヒビター(非還元
状態)
ゼインヒビター、卵白由来シスタチンの0.1マイクロ
モル当たりの骨吸収阻害活性を示す。
ー0.1μM添加 EW−Cys:卵白シスタチン0.1μM添加
Claims (1)
- 【請求項1】下記特性を有する乳由来のシステインプロ
テアーゼインヒビター。 (1)固定化したカルボキシメチル化パパインに結合性
を有する。 (2)パパインに対する阻害活性を有する。 (3)SDS-PAGEによる分子量測定で57±5KDaを示す。 (4)パス染色陽性。
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-
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