JP3342615B2 - 油冷式スクリュ二連圧縮機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、油冷式スクリュ二
連圧縮機に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来公知の、ギヤケースの同一側面に対
し上下方向に、相互に平行する作動軸を備えた圧縮機本
体を並列・配置し、前記ギヤケース内空間を吸入空気の
流路として、それぞれの圧縮機本体の吸入口を前記ギヤ
ケース内空間に開口した油冷式スクリュ二連圧縮機にお
いては、前記圧縮機本体の稼働を停止して時間が経過す
ると、圧縮機本体のロータ作用空間内の潤滑油が流れ出
して、吸入口の下端部よりギヤケース内下部の油溜り及
び吐出口の下端部より吐出室内へ流下し、滞留する。そ
の状態で再度、圧縮機を始動すると、上側圧縮機本体の
ロータ作用空間内は無潤滑・無冷却状態なので、スクリ
ュロータ相互の滑動に伴う摩擦熱を除去することができ
ず、スクリュロータ相互のかじりが発生し、また、熱膨
張により圧縮機のシリンダ内面とスクリュロータ歯先と
が接触し、これらに基き生じるスクリュロータの振動
で、端板とスクリュロータ端面とが焼き付くおそれがあ
った。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、上記
形式の油冷式スクリュ二連圧縮機について指摘された上
記問題点を解消し、圧縮機始動時における上側圧縮機の
スクリュロータ歯面の温度上昇を抑え、もって、この種
形式の圧縮機につき、信頼性の向上、耐用期間の延長を
図った経済的で新規構成の油冷式スクリュ二連圧縮機を
開発・提供することを目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために、以下に述べるような各構成要件を具備す
る。 （１） ギヤケースの同一側面に対し略、上下方向に、
相互に平行する作動軸を備えた圧縮機本体を並列・配置
すると共に、前記ギヤケース内空間を吸入空気の流路と
し、それぞれの圧縮機本体の吸入口を前記ギヤケース内
空間に開口し、その吐出口に連らなる吐出室に略、上方
へ立ち上がる吐出管を接続した油冷式スクリュ二連圧縮
機において、前記上側圧縮機の吸入口近傍の上流側に連
接してギヤケース内に油溜りを設けると共に、前記油溜
りの上縁部を前記圧縮機の吸入口下端縁と吐出口の上端
縁との間の位置にあるよう設定したことを特徴とする油
冷式スクリュ二連圧縮機。

【０００５】

【発明の実施の形態】以下に、本発明油冷式スクリュ二
連圧縮機の一実施形態について、図面に従って説明する
が、本実施形態を構成する各部材の構成は、本出願当時
の当業界における技術レベルの範囲内で、当業者により
各種の変形が可能なものを含むから、格別の理由を示す
ことなく本実施形態が採用している特定構成のみに基づ
いて本発明の要旨を限定して解釈してはならない。

【０００６】図は、本発明油冷式スクリュ二連圧縮機の
一実施形態を示し、図１は、当該圧縮機の側断面図で、
図２は、図１におけるＡ−Ａ線断面矢視（正面）図、図
３は、図２におけるＢ−Ｂ線に沿う断面図、図４は、図
１におけるＣ−Ｃ線矢視図、図５は、図１におけるＤ−
Ｄ線矢視断面図である。

【０００７】図中、共通する一個のギヤケース１の同一
側面上、下方向に略、同一形式のスクリュ圧縮機本体の
シリンダ２、３を、それぞれのシリンダ軸心が相互に並
列するよう取り付けると共に、各シリンダ２，３内に、
それぞれ一対のおす・めすロータ４，４’及び５…を並
列・内装し、各ロータの回転軸41及び51を前記ギヤケー
ス１側と各端板部材６，７に、それぞれ設けた軸受42，
43及び52，53等によって、各一対のロータ４，４’及び
５，…を独立に軸支し、各ロータ４，４’及び５，…の
スクリュ歯形を互いに噛み合わせて両歯形面と端板面と
の間で、それぞれ作用空間を区画・形成し、いずれか一
方側のロータ４，５の回転軸41，51のギヤケース１側に
延長した端部に、それぞれ被駆動ギヤ44，55を取り付け
ると共に、それらをギヤケース１に設けた軸受61，62に
軸支された外部入力の大径駆動ギヤ８に噛み合わせ各増
速ギヤ手段を構成して油冷式スクリュ二連圧縮機とす
る。

【０００８】各ロータ４，４’または５，…間の回転伝
導は噛み合わせスクリュ歯形相互の滑動により行われ
る。上記各一対のロータの相互の噛み合わせスクリュ歯
形面、シリンダ内面及び端板により区画される作用空間
容積は、ロータの回転に従い圧縮機の吸入側から吐出側
に向かって縮小するよう構成され、作用空間内の空気
は、その間で圧縮される。図中、圧縮機の吸入口通路、
内部空間に示される先端に矢印を備えた曲線は、装置内
の空気、オイルミスト及びオイルの流れ方向を表わして
いる。以下、説明を簡略化するため、おす・めすロータ
関連機構については、符号が重なるものについて、片方
を省略する。

【０００９】ギヤケース１には、同ケース内に装架した
ギヤの噛み合わせ部に向かって、それぞれオイルクーラ
を通して冷却した高圧潤滑油を噴射・給油し、前記潤滑
油は、その他ギヤケース１に内装する軸受等を潤滑・冷
却する。上記潤滑油は、それぞれ所要の機能を果たした
後、ギヤケース１の底部に収集・滞溜し、下側圧縮機の
吸入口から吸い込まれて、吐出口、吐出管を介してレシ
ーバタンクへ回収される。

【００１０】図１，２を参照して、上段圧縮機は、その
シリンダ２のギヤケース１側端の一部に空気吸入口45が
開口し、その反対側端板６側には吐出口46が開口してい
る。前記吸入口45の通路は、吸入空気の容量制御装置
（アンローダ）９を介して外気と連通する。吐出口46か
ら排出される上段圧縮機の圧縮空気は、図４に示すベン
ドパイプ63、吐出管64を介し、下段圧縮機の吐出口に連
結するベンドパイプ71、吐出管72により排出される圧縮
空気と吐出部65において合流して、図示してないレシー
バタンク内に送られるようされている。

【００１１】シリンダ２の下側中央部にシリンダと一体
的に垂下する函状部材21（図１，５参照）は、その内部
空間をシリンダ２に穿設した孔22を通して、それぞれロ
ータの作用空間に連通し、当該孔22から冷却潤滑油を噴
射・供給し、ロータ相互の滑動に伴う摩擦熱と圧縮され
る空気の圧縮熱を除去し、また、ロータ面相互間のシー
ルと潤滑、シリンダ内面とロータ歯先間のシール、ロー
タ端面と端板間のシールを行うようにしたものである。

【００１２】図１，２及び３を参照して、上段圧縮機の
空気吸入口45に対向するギヤケース１側の一部には、同
口45に隣接して上側に開放したトレー状の油溜り12を軸
方向に沿って設置し、前記油溜りの上縁13の位置を、圧
縮機の吸入口45下端縁と同圧縮機の吐出口46の上端縁の
間ｈに相当する、いずれかの位置に設定する。また、前
記油溜りの下底の位置は、少なくとも圧縮機吸入口45の
下端縁と同一か、それよりも僅かに低く設定する。さら
に、上側、下側の圧縮機本体の吐出室には略、上方へ立
ち上がる吐出管64及び72とそれぞれチェックバルブを介
して連結され、さらに前記吐出管64，72の他端は吐出部
65で合流して、図示してないレシーバタンクに連結す
る。

【００１３】このため、本実施形態の圧縮機を稼働する
と、ギヤケース１内に供給・噴射される潤滑油がギヤ表
面を潤滑した後に飛沫になってケース１内に充満し、そ
のうち油溜り12に落下した飛沫が集まり、油溜り12に潤
滑油の溜りを形成する。しかし、圧縮機が稼働中は、潤
滑油が油溜り12に溜る暇もなく、吸入口45から作用空間
内に吸い込まれてしまう。本実施例圧縮機を停止する
と、潤滑油の吸い込みもなくなるので、ケース１内に充
満していた潤滑油飛沫、シリンダ、スクリュロータ表面
を潤した潤滑油などが流下、滞留する。なお、前記説明
においては油冷式スクリュ二連圧縮機の吐出管は上方に
立ち上がる構造として述べているが、例えば、吐出管が
吐出口の上端縁よりも上方に延設した構造もしくは斜め
方向に延設した構造等、その管路が前記吐出口の上端縁
よりも上方に位置する構造であれば、特に限定されるも
のではない。

【００１４】

【作用】本実施形態の圧縮機における上段圧縮機は、そ
の吸入口45を設けたギヤケース１側に、前記吸入口45に
隣接して前記吸入口下側縁よりも高い位置の上縁を有す
る潤滑油の油溜りを備えているので、当該油溜り12に滞
溜する潤滑油のレベルが圧縮機の吸入口45下側縁よりも
高い場合には、この潤滑油が圧縮機の吸入口45からロー
タの作用空間に流入する。圧縮機を始動すれば、前記潤
滑油が吸入口45からロータの作用空間に吸入されて、そ
れが、初動時からシリンダ面、端面、ロータ歯形間の潤
滑とシール及び冷却作用を奏するから、初動時、

【００１５】シリンダ、ロータ歯面等に対する初期給
油潤滑が行われるので、ロータ歯面の摩擦による急激な
温度上昇がなく、したがって、ロータ歯面温度を低く抑
えることができる。また、吐出空気温度を低く抑えるこ
とができる。 スクリュロータの熱膨張のため、ロータ歯先とシリン
ダ内周面とが接触するとか、ロータ端面と吐出側端面間
とで焼き付きを起こすことがない。加えて、初期潤滑が
良好に行われているので、二重に安全である。 圧縮機の始動時からシリンダ、ロータ相互間のシール
作用が良好なので、空気圧縮作用の立上りが良好であ
る。 故障のおそれがなく、圧縮機特性の信頼性を増す。

【００１６】ただし、油溜り12の上縁13の位置を吐出
口46の上端縁を超えて高くすると、油溜り12の潤滑油レ
ベルが吐出口46の上端を超えて高くなった場合に圧縮機
を始動すると、ロータの作用空間が実質的に非圧縮流体
を圧縮することになって故障の原因となるので、油溜り
12の上縁13の位置は、吐出口46の上端を超えはならな
い。 吐出口46などから圧縮空気と共に排出される潤滑油
は、差し当たり前記吐出口に連結するベンドパイプ63ま
たは吐出管64に滞留するが、そのために圧縮空気の流通
を妨げるおそれはない。圧縮機の稼働中、ギヤケース１
に設けた油溜り12には、ギヤケース内に供給される潤滑
油の一部が常に補給されている。また、ロータの作用空
間から圧縮空気と共に気液混合状態で吐出された潤滑油
は、下段圧縮機から吐出される同様な流体と合流して図
示してないチェックバルブを通り、レシーバタンクに移
送される。

【００１７】

【発明の効果】本発明油冷式スクリュ二連圧縮機は、以
上のとおりの構成よりなるから、 （１）始動時に、おす・めすロータのスクリュ歯面、シ
リンダ内面・端板などの接触部への初期給油がスムーズ
に行なわれるので、滑動面の摩擦に基づくロータ歯面の
急激な温度上昇が起こらない。また、吐出空気温度を低
く抑えることができるので、潤滑油、パッキン類などの
寿命を長くすることができる。 （２）そのため、温度上昇に伴なうロータの熱膨張を生
ぜず、ロータ歯先とシリンダ内周面とが接触することを
防止でき、また、端板とロータ吐出端面との焼き付きを
起こすことがない。

【００１８】（３）始動時から、潤滑油によってスクリ
ュロータ歯面相互、歯先とシリンダ内周面との間のシー
ルが行われるので、空気圧力の立ち上がりが良い。 （４）圧縮機本体の信頼性の向上を図ることができる。
等々、従来、公知の油冷式スクリュ二連圧縮機には期待
することができない、格別の作用、効果を奏するものと
なる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明油冷式スクリュ二連圧縮機の実施の形態
例の概略側断面図である。

【図２】図１におけるＡ−Ａ断面矢視図を示す。

【図３】図２におけるＢ−Ｂ線に沿う断面矢視図であ
る。

【図４】図１におけるＣ−Ｃ線に沿う矢視図を示す。

【図５】図１におけるＤ−Ｄ線に沿う断面図を示す。

【符号の説明】

１ ギヤケース ２ 上段側圧縮機シリンダ ３ 下段側圧縮機シリンダ ４，４’ 上段側圧縮機ロータ ５ 下段側圧縮機ロータ ６ 上段側圧縮機吐出側端板 ７ 下段側圧縮機吐出側端板 ８ 駆動ギヤ

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ギヤケースの同一側面に対し略、上下方
   向に、相互に平行する作動軸を備えた圧縮機本体を並列
   ・配置すると共に、前記ギヤケース内空間を吸入空気の
   流路とし、それぞれの圧縮機本体の吸入口を前記ギヤケ
   ース内空間に開口し、その吐出口に連らなる吐出室に
   略、上方へ立ち上がる吐出管を接続した油冷式スクリュ
   二連圧縮機において、前記上側圧縮機の吸入口近傍の上
   流側に連接してギヤケース内に油溜りを設けると共に、
   前記油溜りの上縁部を前記圧縮機の吸入口下端縁と吐出
   口の上端縁との間の位置にあるよう設定したことを特徴
   とする油冷式スクリュ二連圧縮機。