JP3341702B2 - 分周回路 - Google Patents

分周回路

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JP3341702B2
JP3341702B2 JP6579499A JP6579499A JP3341702B2 JP 3341702 B2 JP3341702 B2 JP 3341702B2 JP 6579499 A JP6579499 A JP 6579499A JP 6579499 A JP6579499 A JP 6579499A JP 3341702 B2 JP3341702 B2 JP 3341702B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は分周回路に係わり、
詳細には差動増幅回路を備えた分周回路に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の分周回路は複数の差動増
幅回路によって構成されたマスタスレーブ方式のフリッ
プフロップから成り、マイクロ波無線通信装置の局部発
振器における周波数分周回路などの高周波信号の分周回
路に適用されている。差動増幅回路は、特性の揃った2
個のnpn型トランジスタ(Transistor:以下、Trと
略す。)のエミッタ端子同士を結合することによって構
成された差動Trであって、このエミッタ端子に定電流
源が接続される。そして、両Trのベース端子からの2
つの入力信号の差に対応して、両Trのコレクタ端子間
から出力信号が得られる。一方、このような差動増幅回
路は、出力電圧が定電流と差動入力電圧との積で表わす
ことができるという点で、乗算回路としても用いられ
る。双差動増幅回路は、このような差動増幅回路におけ
る両Trのコレクタ端子に更に差動Trを接続すること
で、正負の極での乗算を可能にしたり、入力信号の小さ
い振幅に対しても動作するようにし、耐雑音性を向上さ
せている。
【0003】図6は一般的な双差動増幅回路の構成の概
要を表わしたものである。双差動増幅回路は、差動入力
端子V1+、V1-およびV2+、V2-から2組の入力信号が
差動入力され、差動出力端子VO+、VO-から1組の出力
信号が差動出力される。この双差動増幅回路は、特性の
揃った2個のトランジスタを1組として計3組のTr1
1〜106からなる差動Trを備えている。Tr101
とTr102は互いに特性が揃っており、両Trのエミ
ッタ端子は結合され、Tr105のコレクタ端子に接続
されている。Tr103とTr104は互いに特性が揃っ
ており、両Trのエミッタ端子は結合され、Tr106
のコレクタ端子に接続されている。Tr105とTr1
6は互いに特性が揃っており、両Trのエミッタ端子
はそれぞれ同一抵抗値で同一特性の抵抗素子111、1
2を介して接続されている。抵抗素子111、112
接続点は定電流源12の一端に接続され、定電流源12
の他端は接地されている。Tr101およびTr104
コレクタ端子は、それぞれ同一抵抗値で同一特性の抵抗
素子131、132の一端と接続され、これら抵抗素子1
1、132の他端同士は結合され、電源電圧Vccの電
源に接続されている。差動入力端子V1+、V1-は、Tr
101 Tr104それぞれのベース端子に接続されてい
る。差動入力端子V2+、V2-は、Tr105、Tr106
それぞれのベース端子に接続されている。差動出力端子
O+は、Tr101およびTr103のコレクタ端子に接
続されている。差動出力端子VO-は、Tr102および
Tr104のコレクタ端子に接続されている。
【0004】このような構成の双差動増幅回路は、V1+
端子およびV1-端子間の入力信号をV1、V2+端子およ
びV2-端子間の入力信号をV2とし、さらに抵抗素子1
1、132それぞれの抵抗値をR1、抵抗素子111、1
2それぞれの抵抗値をR2とすると、VO+端子およびV
O-端子間の出力電圧VOは、次式で表わされる。なお、
ボルツマン定数をk(1.38×10-23[J/
K])、ジャンクション温度をT([K])、電子の電
荷をq(1.6×10-19[C])とする。
【0005】
【数1】
【0006】すなわち、上述した双差動増幅回路は、差
動入力された入力信号の乗算を行い、出力電圧VOは、
入力信号V1とV2の積に比例する。また、(1)式から
出力電圧VOは、この双差動増幅回路のコレクタ抵抗R1
とエミッタ抵抗R2によってその振幅が変更することが
できることを意味している。このような双差動増幅回路
については、例えば「集積回路工学(2)回路技術編」
(柳井久義、永田嬢著、コロナ社、p.47〜49)に
記載されている。
【0007】ところで上述したような高周波の分周回路
は、このような双差動増幅回路を2つ用いてマスタスレ
ーブ方式に接続することによって、フリップフロップを
構成することができる。このような双差動増幅回路によ
って高周波の分周回路を構成する技術については、例え
ば特開平10−107617号公報「周波数分周器回
路」に開示されている。
【0008】マイクロ波無線通信装置の局部発振器にお
ける周波数分周回路などの高周波信号の回路は、高周波
になればなるほど、後段の回路に入力される信号の振幅
を大きくすることができなくなるため、高い周波数で動
作させるためには、この入力信号の振幅を補償する必要
がある。一方、分周回路には内部の構成部品や配線の寄
生抵抗および浮遊容量に伴う発振周波数が存在し、その
周波数近傍で特性劣化が生じるため、適用する装置の動
作周波数に対応して内部の動作条件を変更する必要があ
る。
【0009】図7は図6に示した双差動増幅回路によっ
て構成した分周回路の特性の概要を表わしたものであ
る。横軸には単位をギガヘルツ([GHz])とした動
作周波数、縦軸には単位をデシベル([dBm])とし
た入力信号レベルによって表わされる入力感度特性を示
している。中域周波数付近で入力レベルの上限が落ち込
んでおり、これにより動作範囲が狭くなっている。この
ように、動作周波数に依存して、感度の悪くなる部分が
存在して動作範囲が変化してしまう。
【0010】そこで、このように動作周波数に応じて入
力信号レベルを補償したり、分周回路の動作条件を変更
する技術について種々提案されている。
【0011】例えば特開平10−107617号公報
「周波数分周器回路」には、上述したような双差動増幅
回路を2つ用いてマスタスレーブ方式に接続することに
よって分周回路を構成した分周回路の入力部に、出力制
限増幅器を設けることで、入力信号レベルが変動したと
きの動作範囲を広くする技術が開示されている。
【0012】また特開平3−255707号公報「プリ
スケーラIC」には、定電流源の電流量および差動増幅
回路の増幅度を変更することによって、広帯域化および
広ダイナミックレンジ化を図るようにした技術が開示さ
れている。
【0013】さらに特開平4−172716号公報「半
導体集積回路装置」には、入力信号の周波数帯域により
分周回路を選択できるようにすることによって、広帯域
にわたる分周動作を実現するようにした技術が開示され
ている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】従来提案されている分
周回路では、上述したような双差動増幅回路を複数備え
た分周回路を設計する際には、分周回路の動作周波数で
あるトグル周波数が所望の特性になるようにコレクタ抵
抗R1とエミッタ抵抗R2それぞれの抵抗値の組み合わせ
により各双差動増幅回路の出力電圧を最適な振幅に設定
するようにしていた。
【0015】しかしながら従来提案されていた分周回路
であって、特に高周波で用いられる分周回路で用いられ
る双差動増幅回路は、各差動トランジスタの特性が最大
に引き出せるようにするため、トグル周波数が最高にな
る点を最適点としたとき、この最適点で動作するように
電圧振幅を設計する。この場合、上述したコレクタ抵抗
1の論理振幅が小さくなってしまう。すなわち、動作
周波数を高くすればするほど入力信号レベルのダイナミ
ックレンジが減少してしまうという問題がある。また、
このような分周回路では図7に示したように中域周波数
付近で入力レベルの上限が落ち込んでおり、これにより
動作範囲が狭くなっている。このように、動作周波数に
依存して、感度の悪くなる帯域が存在して動作範囲が変
化してしまうという問題がある。
【0016】特開平10−1076147号公報に開示
されている技術では、分周回路の入力部に複雑な増幅器
を付加装置として新たに設ける必要があるため回路の大
型化とともに、増幅器の持つ周波数特性劣化によってト
グル周波数が下がってしまうことが避けられないという
問題がある。
【0017】また特開平3−255707号公報に開示
されている技術では、動作周波数ごとに制御電圧を決定
する必要があるため、適用することが煩雑なものとな
る。さらに、例えばトランジスタを5段積みする必要が
あるなど、高周波信号の分周回路を構成する場合には、
トランジスタのベース・エミッタ間電圧と論理振幅値を
考慮すると、電源電圧が6ボルト([V])以上とな
り、消費電力が増加してしまうという問題がある。
【0018】さらに特開平4−172716号公報に開
示されている技術では、回路内に動作周波数の範囲に応
じて例えば高周波用、中周波用、低周波用の回路を設け
る必要があるため、回路の大型化を招くという問題があ
る。
【0019】そこで本発明の目的は、簡素な構成で動作
周波数に応じて十分なダイナミックレンジを確保する分
周回路を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明で
は、(イ)第1および第2の入力端子と、(ロ)それぞ
れコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗の抵抗値およ
びエミッタ端子に接続されたエミッタ抵抗の抵抗値に応
じて動作電圧の振幅が決定される複数の双差動増幅回路
がマスタスレーブ接続されたフリップフロップであって
この第1の入力端子からの入力信号を分周する分周手段
と、(ハ)第2の入力端子からの入力信号に基づいて双
差動増幅回路のコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗
の抵抗値を変更する抵抗値変更手段とを分周回路に具備
させる。
【0021】すなわち請求項1記載の発明では、それぞ
れコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗の抵抗値およ
びエミッタ端子に接続されたエミッタ抵抗の抵抗値に応
じて動作電圧振幅が決定される複数の双差動増幅回路を
マスタスレーブ接続することによってフリップフロップ
を構成し、第1の入力端子から入力された信号を分周さ
せるようにする。さらに、これら双差動増幅回路のコレ
クタ端子にはコレクタ抵抗値を変更できる抵抗値変更手
段を設け、第2の入力端子から入力される入力信号に基
づいてこれらコレクタ抵抗値を変更できるようにするこ
とで、双差動増幅回路の電圧振幅を変更するようにして
いる。
【0022】請求項2記載の発明では、(イ)互いにエ
ミッタ端子が接続された第1および第2のトランジスタ
からなる第1および第2の差動トランジスタと、(ロ)
この第1の差動トランジスタの第2のトランジスタのベ
ース端子および第2の差動トランジスタの第1のトラン
ジスタのベース端子とに接続され互いに接続された第1
の差動トランジスタの第1のトランジスタのベース端子
および第2の差動トランジスタの第2のトランジスタの
ベース端子との間に入力信号を供給するための第1の入
力端子と、(ハ)これら第1および第2の差動トランジ
スタを構成する第1および第2のトランジスタのエミッ
タ端子と接続された第1および第2の定電流源と、
(ニ)互いにコレクタ端子が接続された第3および第4
のトランジスタからなりそれぞれのエミッタ端子が第1
の差動トランジスタを構成する第2および第1のトラン
ジスタのコレクタ端子と接続されている第3の差動トラ
ンジスタと、(ホ)互いにコレクタ端子が接続された第
5および第6のトランジスタからなりそれぞれのエミッ
タ端子が第1の差動トランジスタを構成する第1および
第2のトランジスタのコレクタ端子と接続され第5のト
ランジスタのベース端子は第3および第4のトランジス
タのコレクタ端子と接続され第5および第6のトランジ
スタのコレクタ端子は第2のトランジスタのベース端子
に接続されている第4の差動トランジスタと、(ヘ)互
いにコレクタ端子が接続された第7および第8のトラン
ジスタからなりそれぞれのエミッタ端子が第2の差動ト
ランジスタを構成する第2および第1のトランジスタの
コレクタ端子と接続され第7のトランジスタのベース端
子は第1のトランジスタのエミッタ端子と接続されてい
る第5の差動トランジスタと、(ト)互いにコレクタ端
子が接続された第9および第10のトランジスタからな
りそれぞれのエミッタ端子が第2の差動トランジスタを
構成する第1および第2のトランジスタのコレクタ端子
と接続され第9のトランジスタのベース端子は第7およ
び第8のトランジスタのコレクタ端子と接続され第9お
よび第10のトランジスタのコレクタ端子は第8のトラ
ンジスタのベース端子に接続され第10のトランジスタ
のベース端子は第5のトランジスタのベース端子に接続
されている第6の差動トランジスタと、(チ)第3ない
し第6の差動トランジスタのコレクタ抵抗値を変更する
ための制御信号が入力される第2の入力端子と、(リ)
第3ないし第6の差動トランジスタを構成する各トラン
ジスタ同士で接続されたコレクタ端子と電源との間に接
続され制御信号に基づいて抵抗値を変更する抵抗値変更
手段と、(ヌ)少なくとも第5の差動トランジスタを構
成する第7および第8のトランジスタのコレクタ端子か
あるいは第6の差動トランジスタを構成する第9および
第10のトランジスタのコレクタ端子に接続された出力
端子とを分周回路に具備させる。
【0023】すなわち請求項2記載の発明では、2つの
トランジスタからなる第1ないし第6の差動トランジス
タを組み合わせて図3に示すように2つの双差動増幅回
路の一方を他方に帰還させるようにしてフリップフロッ
プを構成するようにした。そして、第3ないし第6の差
動トランジスタを構成する各トランジスタ同士で接続さ
れたコレクタ端子と電源との間に接続された抵抗値を変
更する抵抗値変更手段と、第3ないし第6の差動トラン
ジスタのコレクタ抵抗値を変更するための制御信号が入
力される第2の入力端子とを設けるようにした。そし
て、この第2の入力端子から入力される制御信号に基づ
いて抵抗値変更手段によりその抵抗値を変更させること
で、これらの差動トランジスタのコレクタ抵抗値を変更
して、双差動増幅回路としての電圧振幅を変更するよう
にしている。このように制御信号によって適宜双差動増
幅回路としての動作電圧振幅の変更によって分周された
信号は、少なくとも第5の差動トランジスタを構成する
第7および第8のトランジスタのコレクタ端子かあるい
は第6の差動トランジスタを構成する第9および第10
のトランジスタのコレクタ端子に接続された出力端子か
ら出力させることによって得られるようにしている。
【0024】請求項3記載の発明では、請求項1または
請求項2記載の分周回路で、抵抗値変更手段は電源と第
3ないし第6の差動トランジスタを構成する各トランジ
スタ同士で接続されたコレクタ端子のうちのいずれか1
つとの間の電位を分圧する分圧抵抗と、一端がこの分圧
抵抗の分圧点に接続され他端が第2の入力端子と接続さ
れている抵抗素子とを備えることを特徴としている。
【0025】すなわち請求項3記載の発明では、電源と
双差動増幅回路のコレクタ端子との間に分圧抵抗を接続
し、さらにその一端がその分圧点に接続され他端が第2
の入力端子に接続された抵抗素子を設けるようにするこ
とによって、第2の入力端子を例えば電源と接続するか
否かで、容易に双差動増幅回路のコレクタ抵抗値を変更
することができる。さらに、出力端子側から見た寄生容
量について従来の分周回路と変わらないため、簡易な構
成で高周波動作に影響がなく、かつ動作周波数に対応し
てダイナミックレンジが広い分周回路を提供することが
できるようになる。
【0026】請求項4記載の発明では、請求項1または
請求項2記載の分周回路で、第2の入力端子には予め電
源電圧レベルが供給されていることを特徴としている。
【0027】すなわち請求項4記載の発明では、予め動
作周波数が固定であるときには、例えば抵抗値変更手段
の抵抗値のみを変更すれば良いようにその他の主要部に
ついては汎用的な分周回路を構成でき、入力感度に優
れ、かつ動作周波数に依存しない分周回路を提供するこ
とができるようになる。
【0028】請求項5記載の発明では、請求項1または
請求項2記載の分周回路で、第2の入力端子に供給する
信号レベルを分周動作中に動的に電源電圧レベルが供給
される状態かオープン状態かのいずれかに変化させるこ
とを特徴としている。
【0029】すなわち請求項5記載の発明では、動作周
波数に応じて、第2の入力端子から制御信号を入力させ
ることで、非常に簡素な構成で、動作周波数が高く、広
ダイナミックレンジの分周回路を構成することができ
る。
【0030】
【発明の実施の形態】
【0031】
【実施例】以下実施例につき本発明を詳細に説明する。
【0032】図1は本発明の一実施例における分周回路
を構成する双差動増幅回路の構成の概要を表わしたもの
である。本実施例における双差動増幅回路は、差動入力
端子V1+、V1-およびV2+、V2-から2組の入力信号が
入力され、差動出力端子VO+、VO-から1組の差動出力
信号が出力される。この双差動増幅回路は、特性の揃っ
た2個のトランジスタを1組として計3組の差動Trと
してのTr201〜206を備えている。Tr201とT
r202は互いに特性が揃っており、両Trのエミッタ
端子は結合され、この結合されたエミッタ端子はTr2
5のコレクタ端子に接続されている。Tr203とTr
204は互いに特性が揃っており、両Trのエミッタ端
子は結合され、この結合されたエミッタ端子はTr20
6のコレクタ端子に接続されている。Tr205とTr2
6は互いに特性が揃っており、両Trのエミッタ端子
はそれぞれ同一抵抗値で同一特性の抵抗素子211、2
2を介して接続されている。抵抗素子121、122
接続点は定電流源22の一端に接続され、定電流源22
の他端は接地されている。Tr201およびTr204
コレクタ端子は、第1および第2のコレクタ抵抗切替手
段231、232を介して電源電圧Vccの電源に接続さ
れている。第1および第2のコレクタ抵抗切替手段23
1、232は、それぞれVR1端子およびVR2端子と接続
されており、これらVR1端子およびVR2端子から入力
される切替制御信号により、第1および第2のコレクタ
抵抗切替手段231、232は互いに同一抵抗値で同一特
性の抵抗機能を有することができるようになっている。
差動入力端子V1+、V1-は、Tr201 Tr204それ
ぞれのベース端子に接続されている。差動入力端子
2+、V2-は、Tr205、Tr206それぞれのベース
端子に接続されている。差動出力端子VO+は、Tr20
1およびTr203のコレクタ端子に接続されている。差
動出力端子VO-は、Tr202およびTr204のコレク
タ端子に接続されている。
【0033】このような構成の双差動増幅回路で、V1+
端子およびV1-端子間の入力信号をV1、V2+端子およ
びV2-端子間の入力信号をV2とし、さらに第1および
第2のコレクタ抵抗切替手段231、232がそれぞれV
1端子およびVR2端子から入力される切替制御信号に
よって切り替えられた同一の抵抗値および特性を有する
抵抗機能の抵抗値をR1、抵抗素子211、212の抵抗
値をR2とする。VO+端子およびVO-端子間の出力電圧
Oは、上述したように(1)式で表わされる。一方、
VR1端子およびVR2端子から動作周波数に対応した切
替制御信号を入力させることによって、双差動増幅回路
のコレクタ抵抗値を変更することができるようになって
おり、最適なコレクタ抵抗値を得て、動作周波数の向上
と広ダイナミックレンジとの両立を実現している。
【0034】図2は図1に示した双差動増幅回路の構成
要部を具体的に表わしたものである。ただし、図1に示
した双差動増幅回路と同一部分には、同一符号を付して
いる。また、第1および第2のコレクタ抵抗切替手段2
1、232には、同一のVR端子から同一の切替制御信
号が入力されており、互いに同一構成となっている。第
1のコレクタ抵抗切替手段231は、一端がVR端子に
接続された抵抗素子241と、一端が電源Vccに接続
された抵抗素子251と、一端がTr201のコレクタ端
子と接続された抵抗素子261とを備えている。抵抗素
子241の他端と、抵抗素子251の他端とは接続されて
おり、この接続点は抵抗素子261の他端に接続されて
いる。第2のコレクタ抵抗切替手段232も、同様に一
端がVR端子に接続された抵抗素子242と、一端が電
源Vccに接続された抵抗素子252と、一端がTr2
4のコレクタ端子と接続された抵抗素子262とを備え
ている。抵抗素子242の他端と、抵抗素子252の他端
とは接続されており、この接続点は抵抗素子262の他
端に接続されている。
【0035】このような構成の双差動増幅回路は、VR
端子をオープン状態にすることでコレクタ抵抗値を抵抗
素子251、261および抵抗素子252、262からなる
直列抵抗値にする一方、VR端子を電源Vccと等電位
にすることでコレクタ抵抗値を抵抗素子241および抵
抗素子251からなる並列抵抗と抵抗素子261との直列
抵抗値、そして抵抗素子242および抵抗素子252から
R>なる並列抵抗と抵抗素子262との直列抵抗値とな
る。すなわち、VR端子をオープン状態にすることによ
ってコレクタ抵抗値を大きくして電圧振幅を大きくする
ことができ、VR端子を電源Vccと等電位にすること
でコレクタ抵抗値を小さくすることができる。
【0036】本実施例における高周波信号の分周回路
は、このような双差動増幅回路を基本構成とし、2つの
双差動増幅回路それぞれの差動Tr同士の接続を変更す
ることによって、マスタスレーブ方式のフリップフロッ
プとしている。
【0037】図3は図2に示した双差動増幅回路を基本
構成とする本実施例における分周回路の構成を表わした
ものである。この分周回路は、差動TrとしてのTr3
1〜306を備えている。Tr301とTr302は互い
に同一特性であり、コレクタ端子同士は結合され、これ
らコレクタ端子はコレクタ抵抗311を介して電源Vc
cおよびVR端子に接続されている。Tr303とTr
304は互いに同一特性であり、コレクタ端子同士は結
合され、これらコレクタ端子はコレクタ抵抗312を介
して電源VccおよびVR端子に接続されている。Tr
302とTr30 3のエミッタ端子同士は結合され、これ
らエミッタ端子はTr305のコレクタ端子に接続され
ている。Tr301とTr304のエミッタ端子同士は結
合され、これらエミッタ端子はTr306のコレクタ端
子に接続されている。
【0038】Tr301とTr302のコレクタ端子は、
出力バッファ用としての2段のエミッタフォロワ回路が
接続されている。すなわち、これらのコレクタ端子に、
そのコレクタ端子が電源Vccに接続されエミッタ端子
が抵抗素子313を介して接地されているTr307のベ
ース端子が接続されている。Tr307のエミッタ端子
には、そのコレクタ端子が電源Vccに接続されエミッ
タ端子が抵抗素子31 4を介して接地されているTr3
8のベース端子が接続されている。Tr303とTr3
4のコレクタ端子も同様に、そのコレクタ端子が電源
Vccに接続されエミッタ端子が抵抗素子315を介し
て接地されているTr309のベース端子が接続されて
いる。Tr309のエミッタ端子には、そのコレクタ端
子が電源Vccに接続されエミッタ端子が抵抗素子31
6を介して接地されているTr301 0のベース端子が接
続されている。これら2段のエミッタフォロワ回路の出
力端子であるTr308およびTr3010のエミッタ端
子は、それぞれTr303およびTr302のベース端子
に接続されている。
【0039】Tr305のベース端子は、高周波成分カ
ット用のコンデンサ32を介して接地されており、Tr
306のベース端子は、この分周回路の入力端子33が
接続されている。
【0040】Tr305およびTr306のエミッタ端子
は結合されており、Tr3011およびTr3012から成
るカレントミラー回路に接続されている。すなわち、電
源Vccと抵抗素子34、35を介してTr3011のコ
レクタ端子とベース端子は接続され、そのエミッタ端子
は抵抗素子361を介して接地されている。Tr301 2
は、そのコレクタ端子がTr305、306のエミッタ端
子と接続され、そのベース端子はTr3011のベース端
子と接続され、エミッタ端子は抵抗素子362を介して
接地されている。抵抗素子34と抵抗素子35の接続点
は、高周波成分カット用のコンデンサ32を介して接地
されている。
【0041】コレクタ抵抗311は、図2に示した第1
のコレクタ抵抗変更手段231に相当し、VR端子から
入力される振幅制御信号でその抵抗値を変更できるよう
になっている。すなわち、一端がVR端子に接続された
抵抗素子371と、一端が電源Vccに接続された抵抗
素子381と、一端がTr301、302のコレクタ端子
と接続された抵抗素子391とを備えている。抵抗素子
371の他端と、抵抗素子381の他端とは接続されてお
り、この接続点は抵抗素子391の他端に接続されてい
る。コレクタ抵抗312も同様に、図2に示した第2の
コレクタ抵抗変更手段232に相当し、VR端子から入
力される振幅制御信号でその抵抗値を変更できるように
なっている。すなわち、一端がVR端子に接続された抵
抗素子372と、一端が電源Vccに接続された抵抗素
子382と、一端がTr303、304のコレクタ端子と
接続された抵抗素子392とを備えている。抵抗素子3
2の他端と、抵抗素子382の他端とは接続されてお
り、この接続点は抵抗素子392の他端に接続されてい
る。
【0042】さらに本実施例における分周回路は、差動
TrとしてのTr401〜406を備えている。Tr40
1とTr402は互いに同一特性であり、コレクタ端子同
士は結合され、これらコレクタ端子はコレクタ抵抗41
1を介して電源VccおよびVR端子に接続されてい
る。Tr403とTr404は互いに同一特性であり、コ
レクタ端子同士は結合され、これらコレクタ端子はコレ
クタ抵抗412を介して電源VccおよびVR端子に接
続されている。Tr402とTr403のエミッタ端子同
士は結合され、これらエミッタ端子はTr405のコレ
クタ端子に接続されている。Tr401とTr404のエ
ミッタ端子同士は結合され、これらエミッタ端子はTr
406のコレクタ端子に接続されている。
【0043】Tr401とTr402のコレクタ端子は、
出力バッファ用としての2段のエミッタフォロワ回路が
接続されている。すなわち、これらのコレクタ端子に、
そのコレクタ端子が電源Vccに接続されエミッタ端子
が抵抗素子413を介して接地されているTr407のベ
ース端子が接続されている。Tr407のエミッタ端子
には、そのコレクタ端子が電源Vccに接続されエミッ
タ端子が抵抗素子41 4を介して接地されているTr4
8のベース端子が接続されている。Tr403とTr4
4のコレクタ端子も同様に、そのコレクタ端子が電源
Vccに接続されエミッタ端子が抵抗素子415を介し
て接地されているTr409のベース端子が接続されて
いる。Tr409のエミッタ端子には、そのコレクタ端
子が電源Vccに接続されエミッタ端子が抵抗素子41
6を介して接地されているTr401 0のベース端子が接
続されている。これら2段のエミッタフォロワ回路の出
力端子であるTr408およびTr4010のエミッタ端
子は、Tr403およびTr402のベース端子がそれぞ
れ接続されている。Tr405のベース端子は、Tr3
6のベース端子および入力端子33に接続されてい
る。
【0044】Tr406のベース端子は、Tr305のベ
ース端子に接続されており、高周波成分カット用のコン
デンサ32を介して接地されている。
【0045】Tr405およびTr406のエミッタ端子
は結合されており、Tr3011およびTr3013から成
るカレントミラー回路に接続されている。すなわち、T
r3013は、そのコレクタ端子がTr405、406のエ
ミッタ端子と接続され、そのベース端子はTr3011
ベース端子と接続され、エミッタ端子は抵抗素子36 3
を介して接地されている。
【0046】コレクタ抵抗411は、図2に示した第1
のコレクタ抵抗変更手段231に相当し、VR端子から
入力される振幅制御信号でその抵抗値を変更できるよう
になっている。すなわち、一端がVR端子に接続された
抵抗素子471と、一端が電源Vccに接続された抵抗
素子481と、一端がTr401、402のコレクタ端子
と接続された抵抗素子491とを備えている。抵抗素子
471の他端と、抵抗素子481の他端とは接続されてお
り、この接続点は抵抗素子491の他端に接続されてい
る。コレクタ抵抗412も同様に、図2に示した第2の
コレクタ抵抗変更手段232に相当し、VR端子から入
力される振幅制御信号でその抵抗値を変更できるように
なっている。すなわち、一端がVR端子に接続された抵
抗素子472と、一端が電源Vccに接続された抵抗素
子482と、一端がTr403、404のコレクタ端子と
接続された抵抗素子492とを備えている。抵抗素子4
2の他端と、抵抗素子482の他端とは接続されてお
り、この接続点は抵抗素子492の他端に接続されてい
る。
【0047】Tr302のベース端子とTr401のベー
ス端子は接続されている。Tr30 3のベース端子とT
r404のベース端子は接続されている。Tr304のベ
ース端子とTr402のベース端子は接続され、出力端
子50が接続されている。Tr301のベース端子とT
r403のベース端子は接続され、反転出力端子51が
接続されている。
【0048】このように本実施例における分周回路は、
2つの双差動増幅回路について一方から他方に帰還をか
けている。図2で示した基本構成の双差動増幅回路にお
けるTr201、202の差動Trは、図3に示した分周
回路ではTr302、303とTr402、403の差動T
rに相当する。同様に図2のTr203、204は、図3
のTr304、301と、Tr404、401の差動Trに
相当する。また、図2のTr205は、図3のTr3
5、405に相当し、図2のTr206は図3のTr3
6、406に相当する。また、図2におけるエミッタ抵
抗である抵抗素子211、212は、それぞれTr3
5、306と、Tr405、406のエミッタ寄生抵抗の
みで構成するようにしている。Tr301〜304、40
1〜404は、全て特性が揃っている必要がある。Tr3
5、306も特性を揃える必要があり、Tr405、4
6も特性を揃える必要がある。またカレントミラー回
路を構成するTr3012、3013も特性を揃える必要が
ある。
【0049】次に本実施例における分周回路の論理的動
作について説明する。まず、分周回路において動作観測
点をノードA〜Fとして設けている。ノードAは、Tr
30 6およびTr405のベース端子であり、入力端子3
3からの入力波形を示す。ノードBは、Tr305およ
びTr406のベース端子である。ノードCは、Tr3
1およびTr302のコレクタ端子である。ノードD
は、Tr303およびTr304のコレクタ端子である。
ノードEは、Tr401およびTr402のコレクタ端子
である。ノードFは、Tr403およびTr404のコレ
クタ端子である。本実施例における分周回路の論理的動
作については、VR端子が電源Vccに接続されていて
も、オープン状態であっても同様である。
【0050】図4は図3に示した本実施例における分周
回路の論理的動作を表わしたものである。図4(a)は
ノードAの論理波形、同図(b)はノードBの論理波
形、同図(c)はノードCの論理波形、同図(d)はノ
ードDの論理波形、同図(e)はノードEの論理波形、
同図(f)はノードFの論理波形をそれぞれ示してい
る。同図(a)に示すように入力端子33から論理レベ
ル“H”、“L”、“H”、“L”、・・・と信号が入
力されているものとする(波形60)。差動入力である
Tr305およびTr406のベース端子は、コンデンサ
32を介して接地されているため、同図(b)に示すよ
うに論理レベル“L”、“H”、“L”、“H”、・・
・という電位となる(波形61)。
【0051】いま、ある状態のとき、例えばノードAが
論理レベル“H”で、ノードBが論理レベル“L”の状
態のとき、ノードCが論理レベル“H”で、ノードDが
論理レベル“L”の状態であったものとする。ノードC
の論理レベルが“H”のため、コレクタ抵抗311には
電流が流れない。Tr302は、ノードDの論理レベル
が“L”のため、“オフ”となっている。コレクタ抵抗
311に電流が流れず、しかもTr306は“オン”とな
るため、Tr301は“オフ”とならなければならな
い。したがって、このTr301のベース端子に接続さ
れているエミッタフォロワ回路の入力側であるノードE
は論理レベル“L”となる。
【0052】また、ノードDが論理レベル“L”である
ため、コレクタ抵抗312に電流が流れていなければな
らない。ここでTr303は、ノードCの論理レベルが
“H”であるため“オン”となるが、ノードBの論理レ
ベルが“L”のためTr30 5が“オフ”となることか
ら、Tr303は電流が流れない。したがってTr30 4
が“オン”となっていなければならない。これにより、
Tr304のベース端子に接続されているエミッタフォ
ロワ回路の入力側であるノードFは論理レベル“H”で
ある。
【0053】次に入力端子33から入力される入力信号
の論理レベルが“L”となったときは、ノードAの論理
レベルが“L”、ノードBの論理レベルが“H”とな
る。これにより、Tr306が“オフ”となるため、T
r304が“オン”でも電流が流れなくなるが、実際に
はTr305が“オン”となるため、Tr303に電流が
流れる。すなわち、ノードDは引き続き論理レベルの
“L”状態が維持される。
【0054】これにより、ノードDをエミッタフォロワ
回路を介してベース端子に入力しているTr302は、
引き続き“オフ”となる。Tr301が“オン”であろ
うと“オフ”であろうと、Tr306はベース端子が論
理レベル“L”であるため、Tr306の“オフ”は維
持される。したがってTr301には電流が流れず、ノ
ードCの論理レベル“H”も維持される。
【0055】この状態で、Tr404、406は“オン”
となるため、ノードFの論理状態は“L”となる。
【0056】ノードDおよびノードFが論理レベル
“L”であるため、Tr401、402はともに“オフ”
となる。したがって、ノードEには電流が流れないこと
となるため、ノードEは論理レベルは“H”となる。
【0057】次に再び入力端子33から入力される入力
信号の論理レベルが“H”となったときは、Tr306
が“オン”となり、ノードEの論理レベル“H”により
Tr301も“オン”となっているため、ノードCに電
流が流れ、ノードCは論理レベル“L”となる。
【0058】同様にTr405が“オン”となり、ノー
ドEの論理レベル“H”によりTr403も“オン”と
なっているため、ノードFに電流が流れ、ノードFは論
理レベル“L”となる。
【0059】Tr305が“オフ”による電流が流れな
いためTr303は“オフ”、ノードFの論理レベルが
“L”のためTr304が“オフ”となるため、ノード
Dには電流が流れず、ノードDは論理レベル“H”とな
る。
【0060】ノードFの論理レベルが“L”のためTr
402が“オフ”、Tr401は“オン”であるがTr4
6が“オフ”のため、ノードEに電流は流れず、ノー
ドEは論理レベル“H”となる。
【0061】さらに再び入力端子33から入力される入
力信号の論理レベルが“L”となったときは、ノードB
が論理レベル“H”となる。したがって、Tr305
“オン”となり、ノードDの論理レベル“H”によりT
r302も“オン”となっているため、ノードCに電流
が流れ、ノードCは論理レベル“L”となる。
【0062】一方、Tr306が“オフ”、ノードCの
論理レベル“L”によるTr303の“オフ”により、
Tr303、304に電流が流れず、ノードDは論理レベ
ルが“H”となる。
【0063】Tr406は“オン”、ノードDの論理レ
ベル“H”によるTr401の“オン”により、ノード
Eに電流が流れ、ノードEは論理レベル“L”となる。
【0064】ノードAの論理レベル“L”によるTr4
3に電流が流れないためTr403は“オフ”となれな
ければならず、またノードCの論理レベル“L”による
Tr404の“オフ”となるので、ノードFに電流が流
れず、論理レベル“H”となる。
【0065】以上の論理動作についてまとめると、ノー
ドAが論理レベル“H”、“L”、“H”、“L”と変
化すると、ノードBが論理レベル“L”、“H”、
“L”、“H”と変化する。ノードC、ノードD、ノー
ドE、ノードFはそれぞれ、 ノードC:論理レベル“H”、“H”、“L”、“L”
(波形62) ノードD:論理レベル“L”、“L”、“H”、“H”
(波形63) ノードE:論理レベル“L”、“H”、“H”、“L”
(波形64) ノードF:論理レベル“H”、“L”、“L”、“H”
(波形65) と変化する。
【0066】このように入力信号の周波数の2分の1の
周波数がノードC、ノードD、ノードE、ノードFにあ
らわれる。本実施例における分周回路は、ノードF、ノ
ードEの信号を、それぞれ出力バッファ用であるエミッ
タフォロワ回路を介してそれぞれ出力信号と反転出力信
号として出力端子50と反転出力端子51から出力して
いる。
【0067】ところで、VR端子が電源Vccに接続さ
れている場合、その論理動作について上述した動作と同
じである。そこでこの場合における本実施例における双
差動増幅回路の出力電圧は、次式のように表わすことが
できる。ただし、V1+端子およびV1-端子間の入力信号
をV1、V2+端子およびV2-端子間の入力信号をV2
し、さらに第1および第2のコレクタ抵抗切替手段23
1、232の合成抵抗値をRc、エミッタ抵抗である抵抗
素子211、212の抵抗値をR2、ボルツマン定数をk
(1.38×10-23[J/K])、ジャンクション温
度をT([K])、電子の電荷をq(1.6×10-19
[C])とする。また、第1および第2のコレクタ抵抗
切替手段231、232を同一構成とし、抵抗素子241
〜242それぞれの抵抗値をRV1、抵抗素子251〜25
2それぞれの抵抗値をRV2、抵抗素子261〜262それ
ぞれの抵抗値をR1とする。VO+端子およびVO-端子間
の出力電圧VOは、上述した文献「集積回路工学(2)
回路技術編」より、次式で表わすことができる。
【0068】
【数2】 ただし、 Rc=R1+(RV1//RV2) ・・・(3) kT/q=26[mV] (T=300K) ・・・(4) である。
【0069】このように差動入力された入力信号の乗算
を行い、出力電圧VOは、入力信号V1とV2の積に比例
する。また、(2)式からは、出力電圧VOは、この双
差動増幅回路のコレクタ抵抗Rcとエミッタ抵抗R2
よってその振幅が変更することができることを意味して
いる。これにより、動作周波数に対応してVR1端子お
よびVR2端子から切替制御信号を入力させることで双
差動増幅回路のコレクタ抵抗値を変更でき、最適なコレ
クタ抵抗値を得て、動作周波数の向上と広ダイナミック
レンジとの両立を実現している。
【0070】図5は図3に示した本実施例における分周
回路の特性の概要を表わしたものである。横軸には単位
をギガヘルツ([GHz])とした動作周波数、縦軸に
は単位をデシベル([dBm])とした入力信号レベル
で、入力感度特性を示している。VR端子を電源Vcc
に接続した状態の入力感度特性を実線波形70、VR端
子をオープンにした状態の入力感度特性を破線波形71
でそれぞれ示している。また、コレクタ抵抗値について
は、VR端子をオープン状態のときの合成抵抗値が、V
R端子を電源Vccに接続したときの合成抵抗値の1.
5倍になるように第1および第2のコレクタ抵抗切替手
段311、312、411、412における各抵抗素子の抵
抗値を調整している。
【0071】実線波形70で示すように、VR端子を電
源Vccに接続することによってトグル周波数が最適に
なるように設定しているため、VR端子をオープン状態
とする場合に比べて動作周波数が高いが、中域周波数1
0GHzあたりで入力感度が劣化し、動作範囲が著しく
狭くなっている。一方、破線波形71で示すように、V
R端子をオープン状態にすることによって双差動増幅回
路のコレクタ抵抗値が大きくなり、電圧振幅を大きくす
ることができるので、破線波形71で示すVR端子を電
源Vccと接続してコレクタ抵抗値を抑えた場合に比べ
て、入力感度が向上して動作範囲が4.5dB程度広が
っている。しかし、トグル周波数が1.5GHz程度落
ちている。
【0072】したがって、ダイナミックレンジが広がら
ない動作周波数帯では電圧振幅を大きくさせ、ダイナミ
ックレンジが広い動作周波数帯ではコレクタ抵抗値を小
さくして電圧振幅を小さくさせるようにVR端子から振
幅制御信号を入力させることで、非常に簡素な構成で、
動作周波数が高く、広ダイナミックレンジの分周回路を
構成することができる。
【0073】また、高周波信号を扱う分周回路等では、
配線や抵抗素子等の寄生容量を無視することができない
が、本実施例における分周回路ではVR端子およびコレ
クタ抵抗変更用の素子を設けているものの、出力端子側
から見た寄生容量について従来の分周回路とほとんど変
わらないことも特徴としている。
【0074】
【発明の効果】以上説明したように請求項1または請求
項2記載の発明によれば、動作周波数に対応した第2の
入力端子から入力される入力信号によって双差動増幅回
路のコレクタ抵抗値を変更するように切替制御信号を入
力させることで、最適なコレクタ抵抗値を得るように
し、動作周波数の向上と広ダイナミックレンジとの両立
を実現している。
【0075】さらに請求項3記載の発明によれば、電源
と双差動増幅回路のコレクタ端子との間に分圧抵抗を接
続し、さらにその一端がその分圧点に接続され他端が第
2の入力端子に接続された抵抗素子を設けるようにした
ので、簡易な構成で抵抗値変更手段を実現でき、第2の
入力端子を例えば電源と接続するか否かで、容易に双差
動増幅回路のコレクタ抵抗値を変更することができる。
さらに、出力端子側から見た寄生容量について従来の分
周回路と変わらないため、簡易な構成で高周波動作に影
響がなく、かつ動作周波数に対応してダイナミックレン
ジが広い分周回路を提供することができるようになる。
【0076】さらにまた請求項4記載の発明によれば、
予め動作周波数が固定であるときには、例えば抵抗値変
更手段の抵抗値のみを変更すれば良いようにその他の主
要部については汎用的な分周回路を構成でき、入力感度
に優れ、かつ動作周波数に依存しない分周回路を提供す
ることができるようになる。
【0077】さらに請求項5記載の発明によれば、ダイ
ナミックレンジが広がらない動作周波数帯では電圧振幅
を大きくさせ、ダイナミックレンジが広い動作周波数帯
ではコレクタ抵抗値を小さくして電圧振幅を小さくさせ
るように第2の入力端子から制御信号を入力させること
で、非常に簡素な構成で、動作周波数が高く、広ダイナ
ミックレンジの分周回路を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例における分周回路を構成する双差動増
幅回路の構成の概要を示す構成図である。
【図2】本実施例における分周回路を構成する双差動増
幅回路の構成要部を具体的に示す構成図である。
【図3】本実施例における分周回路の構成の概要を示す
構成図である。
【図4】本実施例における分周回路の論理的動作の概要
を示す波形図である。
【図5】本実施例における分周回路の入力感度と動作周
波数との関係の概要を示す説明図である。
【図6】一般的な双差動増幅回路の構成の概要を示す図
である。
【図7】従来の分周回路の入力感度特性と動作周波数と
の関係の概要を示す説明図である。
【符号の説明】
101〜106、201〜206、301〜3013、401
4010 Tr 111〜112、131〜132、211〜212、241
242、251〜252、261〜262、34、35、3
1〜363、371〜372、381〜382、39 1 〜392、471〜472、481〜482、491〜492
抵抗素子 12、22 定電流源 231、311、411 第1のコレクタ抵抗切替手段 232、312、412 第2のコレクタ抵抗切替手段 32 コンデンサ 33 入力端子 50 出力端子 51 反転出力端子
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−307808(JP,A) 特開 昭63−42521(JP,A) 特開 平9−246957(JP,A) 特開 平7−222028(JP,A) 特開 平5−291944(JP,A) 特開 平5−110389(JP,A) 特開 平5−102843(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H03K 21/00 H03F 3/45

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1および第2の入力端子と、 それぞれコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗の抵抗
    値およびエミッタ端子に接続されたエミッタ抵抗の抵抗
    値に応じて動作電圧の振幅が決定される複数の双差動増
    幅回路がマスタスレーブ接続されたフリップフロップで
    あってこの第1の入力端子からの入力信号を分周する分
    周手段と、 前記第2の入力端子からの入力信号に基づいて前記双差
    動増幅回路のコレクタ端子に接続されたコレクタ抵抗の
    抵抗値を変更する抵抗値変更手段とを具備すること特徴
    とする分周回路。
  2. 【請求項2】 互いにエミッタ端子が接続された第1お
    よび第2のトランジスタからなる第1および第2の差動
    トランジスタと、 この第1の差動トランジスタの第2のトランジスタのベ
    ース端子および第2の差動トランジスタの第1のトラン
    ジスタのベース端子とに接続され互いに接続された第1
    の差動トランジスタの第1のトランジスタのベース端子
    および第2の差動トランジスタの第2のトランジスタの
    ベース端子との間に入力信号を供給するための第1の入
    力端子と、 これら第1および第2の差動トランジスタを構成する前
    記第1および第2のトランジスタのエミッタ端子と接続
    された第1および第2の定電流源と、 互いにコレクタ端子が接続された第3および第4のトラ
    ンジスタからなりそれぞれのエミッタ端子が前記第1の
    差動トランジスタを構成する第2および第1のトランジ
    スタのコレクタ端子と接続されている第3の差動トラン
    ジスタと、 互いにコレクタ端子が接続された第5および第6のトラ
    ンジスタからなりそれぞれのエミッタ端子が前記第1の
    差動トランジスタを構成する第1および第2のトランジ
    スタのコレクタ端子と接続され第5のトランジスタのベ
    ース端子は前記第3および第4のトランジスタのコレク
    タ端子と接続され第5および第6のトランジスタのコレ
    クタ端子は前記第2のトランジスタのベース端子に接続
    されている第4の差動トランジスタと、 互いにコレクタ端子が接続された第7および第8のトラ
    ンジスタからなりそれぞれのエミッタ端子が前記第2の
    差動トランジスタを構成する第2および第1のトランジ
    スタのコレクタ端子と接続され第7のトランジスタのベ
    ース端子は前記第1のトランジスタのエミッタ端子と接
    続されている第5の差動トランジスタと、 互いにコレクタ端子が接続された第9および第10のト
    ランジスタからなりそれぞれのエミッタ端子が前記第2
    の差動トランジスタを構成する第1および第2のトラン
    ジスタのコレクタ端子と接続され第9のトランジスタの
    ベース端子は前記第7および第8のトランジスタのコレ
    クタ端子と接続され第9および第10のトランジスタの
    コレクタ端子は前記第8のトランジスタのベース端子に
    接続され第10のトランジスタのベース端子は前記第5
    のトランジスタのベース端子に接続されている第6の差
    動トランジスタと、 前記第3ないし第6の差動トランジスタのコレクタ抵抗
    値を変更するための制御信号が入力される第2の入力端
    子と、 前記第3ないし第6の差動トランジスタを構成する各ト
    ランジスタ同士で接続されたコレクタ端子と電源との間
    に接続され前記制御信号に基づいて抵抗値を変更する抵
    抗値変更手段と、 少なくとも前記第5の差動トランジスタを構成する第7
    および第8のトランジスタのコレクタ端子かあるいは前
    記第6の差動トランジスタを構成する第9および第10
    のトランジスタのコレクタ端子に接続された出力端子と
    を具備することを特徴とする分周回路。
  3. 【請求項3】 前記抵抗値変更手段は電源と前記第3な
    いし第6の差動トランジスタを構成する各トランジスタ
    同士で接続されたコレクタ端子のうちのいずれか1つと
    の間の電位を分圧する分圧抵抗と、一端がこの分圧抵抗
    の分圧点に接続され他端が前記第2の入力端子と接続さ
    れている抵抗素子とを備えることを特徴とする請求項1
    または請求項2記載の分周回路。
  4. 【請求項4】 前記第2の入力端子には予め電源電圧レ
    ベルが供給されていることを特徴とする請求項1または
    請求項2記載の分周回路。
  5. 【請求項5】 前記第2の入力端子に供給する信号レベ
    ルを分周動作中に動的に電源電圧レベルが供給される状
    態かオープン状態かのいずれかに変化させることを特徴
    とする請求項1または請求項2記載の分周回路。
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