JP3341350B2 - 非線形抵抗素子、液晶装置、及び液晶装置の製造方法 - Google Patents
非線形抵抗素子、液晶装置、及び液晶装置の製造方法Info
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Description
−金属層型非線形抵抗素子に関係し、特にその材料及び
特性に関連する。
形抵抗素子が現在実用化されている分野のひとつに、ア
クティブマトリクス型液晶表示の分野がある。図7にそ
の等価概念図を示す。非線形抵抗素子を用いたアクティ
ブマトリクス型液晶表示装置では、単位画素において走
査線とデータ線との間に加えられる電位差Vapに基づい
て、液晶層が表示状態および非表示状態あるいはその中
間状態に制御される事になる。この方式での動作原理の
基本は以下のとおりである。図8に示すように、非線形
抵抗素子においてはその名称のとおり印加電圧Vnlと電
流Inlとの間に非線形な関係がある。ここで非線形抵抗
素子のしきい値電圧をVth、液晶層の非表示上限電圧を
Vl1、同じく表示下限電圧を(Vl1+dVl)とすると、
選択期間では、Vap<=Vl1+Vthとする事によって液晶
層を非表示状態に、Vap=>Vl1+dVl+Vthとする事に
よって液晶層を表示状態にする事ができる。一方、非選
択状態では、単位画素に印加する電圧Vapを、選択期間
で液晶層に充電され残留している電位に接近させて設定
し、その差をVthよりも小さくできれば、非線形抵抗素
子は非選択期間内で遮断状態となり、選択期間で定めら
れた(充電された)状態を維持する事が可能になる。
(但し、以上の動作原理は、理想的な特性を仮定してデ
ータ振幅による表示変調(振幅変調)を行う場合の基本
動作を説明したものであり、実際には、表示変調の方式
(パルス幅変調)、交流反転の方法やバイアス電圧の操
作などについて、非線形抵抗素子や液晶層の特性に合わ
せていくつかの変更や改良が施されている。あわせて動
作原理にも、基本とは微妙に異なるポイントがこれまで
に出てきている。)この様に、非線形抵抗素子の特性
は、アクティブマトリクス型液晶表示装置の表示性能を
左右する。非線形抵抗素子の微妙な特性の違いは液晶層
に加わる電圧に大きな影響を与える。そしてこれ等を阻
止する為に、特性の高度な経時安定性、さらに電流電圧
特性の電流方向による違い(極性差)の解消が非線形抵
抗素子に要求されているのである。
属層型非線形抵抗素子は、図9にその断面を示すが、基
板表面に形成された下層側電極(金属層)と、その表面
に形成された金属酸化物層、さらにその表面に形成され
た上層側電極(金属層)とから構成されている。アクテ
ィブマトリクス型液晶表示装置用として最もポピュラー
な材料は、下層側電極としてはスパッタリングによるタ
ンタル、金属酸化物層としては下層側電極を陽極酸化に
より成長させた酸化タンタル、上層側電極としてはやは
りスパッタリングによるクロムなどである。
を用いた非線形抵抗素子は、例えば半導体の接合や界面
特性を応用したいわゆる「半導体ダイオ−ド」に比べ
て、素子形成プロセスが短く簡便である反面、電流電圧
特性が電流注入によって経時変化を起こすという欠点が
ある。酸化タンタルを用いた非線形抵抗素子における、
電流注入による電流電圧特性の経時変化の従来レベルを
図10に示す。図中実線が素子に約3A/cm2の電流注入
(印加電圧は20〜40V)を10秒間行った後、印加電圧を1
7Vに保持した場合の電流値経時変化、同じく点線が電流
注入を行わずに印加電圧を17Vに保持した電流値経時変
化である。従来レベルでは電圧印加初期値が、電流注入
によって20%低下している事がわかる。この電流値の差
は、アクティブマトリクス型液晶表示装置の表示画像に
於いて例えば残像や表示むらとして現れるが、別の実験
によれば、この低下率が1%程度以下であれば表示画像に
影響を与える事は殆ど無いという事が判っている。
子には、正負印加電圧に対して正負対称な電流特性を得
る事が難しい(極性差がある)というもうひとつの問題
点がある。一般に液晶表示装置では、液晶層に印加する
電圧は正負対称である必要があり、もしもこれが非対称
であれば、表示画像のちらつき(フリッカ)や液晶材料
の劣化を誘発する。電荷が液晶層に至るまでに経由する
非線形抵抗素子に極性差があれば、逆に外部からの印加
電圧値や波形自体を極性差に合わせて非対称にしなけれ
ばならない。これは外部電源数の増加やドライバICの
大型高コスト化につながり、液晶表示装置全体としては
好ましい方策ではない。一方、極性差のある非線形抵抗
素子を、逆直列型やリング型に接続する事によって正負
対称な特性を得る方法があるが、これも非線形抵抗素子
の製造プロセスでのコストを著しく増加させてしまう。
これら高コスト化を伴う方策をとらず、単一素子として
極性差の無い非線形抵抗素子を得ることは従来非常に困
難であった。図11に酸化タンタルを用いた非線形抵抗
素子における極性差の一例を示した。例えば熱処理等の
条件を最適化することによって電流値は部分的に一致す
るが、それも印加電圧全域にわたって重ねる事は殆ど不
可能である。別の実験では、表示画像とその安定性に影
響を与えない為には、極性差(絶対値の同じ正負電圧を
印加した場合の正、負電流値差)が0.5%以内である
必要が示唆されているが、この例では印加電圧全域で4
%を下回る事はない。
は、タンタル原子と酸素原子とを主成分とした金属酸化
物を金属で挾持して成る、金属層−金属酸化物層−金属
層型非線形抵抗素子を備えた非線形抵抗素子において、
前記金属酸化物層内にレニウム原子が含まれていること
を特徴とする。また、前記金属酸化物層内のレニウム原
子は、共有結合またはイオン結合よって酸素原子と結合
していることを特徴とする。更に、本発明の液晶装置
は、上記のいずれかの非線形抵抗素子を備えることを特
徴とする。更に、本発明の液晶装置の製造方法は、金属
層−金属酸化物層−金属層型非線形抵抗素子を備えた液
晶装置の製造方法において、レニウムが添加されて形成
された前記金属層を陽極酸化することにより前記金属酸
化物層を形成し、酸素を含むガス中で形成したRFプラ
ズマ中に前記金属酸化物層を曝すことを特徴とする。
晶表示装置に用いる非線形抵抗素子に対して適用した例
を以下に示す。先ず図1を用いて代表的な素子構造を説
明する。ガラス基板101上に、液晶表示装置のバスライ
ンを兼ねた下層側電極102が、レニウムを微量添加した
タンタルによって形成されている。下層側電極102上に
は下層側電極自身を陽極酸化する事によって形成された
金属酸化物層103、更にクロムによる上層側電極104が順
次積層され、金属層−金属酸化物層−金属層型非線形抵
抗素子が実現されている。この構造自体に従来のものと
の相違点はなく、金属酸化物層内におけるレニウム原子
の存在、あるいはレニウム原子と酸素原子との結合状態
が新しく提示される点である。すなわち、陽極酸化によ
って形成された金属酸化物層は、その材料である下部電
極層の金属元素構成を反映し、タンタルと微量のレニウ
ムを含む事になる。タンタルは主に5価、レニウムは主
に7価のいずれも遷移金属である。図2は、金属酸化物
層において本発明が提示する結合状態の例を部分的に二
次元に展開した模式図である。レニウム原子は酸素原子
と化学結合しておりその結合は共有結合とイオン結合の
中間状態にある。請求項2で特に提示したこの構成で
は、レニウム原子が酸化タンタル中でタンタル原子と置
換されてドナーとしてはたらく事になる。更に、やはり
ドナーとなる過剰タンタルの量も増加する。障壁中でイ
オン化されたドナーは空間電荷層幅を低下させる。一
方、金属層との界面で酸化タンタルの縮退度が増加する
事によって障壁エネルギーが低下する。これらはいずれ
も、非線形抵抗素子の電流電圧特性において、金属層と
金属酸化物層との界面電流制限効果を抑制し、低電界側
の電流値を増加させる。具体的には、低電界側で印加電
界の二乗根と素子導電率の対数とが比例せず、素子導電
率の対数がこの関係よりも大きくなるという特性を示す
(図3)。これまで極性差の原因であった界面電流制限
効果が抑制される事は直接極性差の低減につながり、障
壁エネルギーの低下や空間電荷層幅の低下は,電流電圧
特性の経時変化の主原因である電子(捕獲準位などに束
縛された電子)の掃引を助ける。本発明による非線形抵
抗素子の極性差を図4に、同じく電流電圧特性の経時変
化を図5に示す。また、レニウム原子と酸素原子との結
合の有無や結合状態は、例えばESCA信号のケミカルシフ
トによって測定される。下層側電極と金属酸化物層に添
加すべき金属元素としては、例えばタングステンやモリ
ブデン等のタンタルより価数の大きな遷移金属元素が同
様の効果を示す。しかしレニウム原子の場合には、添加
量に対する効果の割合が著しく大きい事が一連の実験に
よって明らかになっている。つまりタングステンやモリ
ブデンに比べ、比較的少ない添加量であっても大きな効
果を得る事ができるという事である。これによって、下
層側電極を製膜する際に使う多元素スパッタリングター
ゲットの作製(例えば焼成法による)が容易になり、コ
ストが削減されると共に、均質で生産性の高い非線形抵
抗素子製造プロセスの実現が助けられる事になる。
に提示した材料構成を用いた場合の非線形抵抗素子の電
流電圧特性である。レニウムを添加しない場合(図8)
に比べて急峻性が低下している事がわかる。そこで、こ
の急峻性を増加させる目的で追加する素子作製プロセス
を請求項3に提示した。具体的には、金属酸化物層を陽
極酸化法によって形成した後、例えば平行平板型電極を
持つ真空装置において、酸素を含む低圧ガス中で形成し
たRFプラズマ中に、金属酸化物表面を数分から数十分の
間曝すというプロセスである。このとき基板は、容量カ
ップリングによってRF電源と結合した電極の近傍にあれ
ば効率よく処理が進む。この様にして作製した金属層−
金属酸化物層−金属層型非線形抵抗素子の電流電圧特性
を図6に示す。詳しい原因については未だ議論の段階に
あるが、適切なプラズマ条件で処理を行うことによって
電流電圧特性の急峻性が増加する。
状態を含む)を非線形抵抗素子に適用する事によって、
電流電圧特性の経時変化と極性差とをいずれも大幅に低
減することができる。更に、本発明にて提示した製造方
法を用いる事によって、電流電圧特性の急峻性を向上さ
せる事ができる。
式図。
性図。
電圧特性の極性差を表す図。
電圧特性の経時変化を表す図。
電流電圧特性図。
図。
図。
性の経時変化を表す図。
性の極性差を表す図。
に対して比例する仮想線 401、1001:下層側電極を負極とした場合の電流
電圧特性 402、1002:下層側電極を正極とした場合の電流
電圧特性 501、1001:電流注入を行った後の電流値経時変
化(17V印加) 502、1002:電流注入を行わなかった場合の電流
値経時変化(17V印加) 701:非線形抵抗素子 702:液晶層 703:信号駆動回路 704:走査回路
Claims (4)
- 【請求項1】 タンタル原子と酸素原子とを主成分とし
た金属酸化物を金属で挾持してなる、金属層−金属酸化
物層−金属層型非線形抵抗素子において、前記金属酸化
物層内にレニウム原子が含まれていることを特徴とする
非線形抵抗素子。 - 【請求項2】 請求項1において、前記金属酸化物層内
のレニウム原子は、共有結合またはイオン結合によって
酸素原子と結合していることを特徴とする非線形抵抗素
子。 - 【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の非線形抵
抗素子を備えることを特徴とする液晶装置。 - 【請求項4】 金属層−金属酸化物層−金属層型非線形
抵抗素子を備えた液晶装置の製造方法において、レニウ
ムが添加されて形成された前記金属層を陽極酸化するこ
とにより前記金属酸化物層を形成し、酸素を含むガス中
で形成したRFプラズマ中に前記金属酸化物層を曝すこ
とを特徴とする液晶装置の製造方法。
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