JP3336010B2 - 骨形成性蛋白の送達のための血餅−ポリマー・マトリックスの処方 - Google Patents

骨形成性蛋白の送達のための血餅−ポリマー・マトリックスの処方

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Description

【発明の詳細な説明】 発明の背景 本発明は、骨形成性蛋白およびその医薬処方の分野に
関する。さらに詳しくは、本発明は、骨形成性該蛋白が
軟骨および/または骨の形成を誘導するのに十分な時
間、当該蛋白をその場所に(in−situ)隔離するように
設計した医薬処方を含む。
骨形成性蛋白は、軟骨および/または骨の形成を誘導
できるか、あるいは誘導を助けることができる蛋白であ
る。近年、多くのかかる骨形成性蛋白が単離されて特徴
付けられており、いくつかは組換え法によって生産され
てきた。例えば、いわゆる骨形態発生蛋白(BMP)が無
機質脱落骨組織から単離されており(例えば、ウリスト
(Urist)の米国特許第4,455,256号参照);多数のかか
るBMP蛋白が組換え技術によって生産されており(例え
ば、ウァング(Wang)らの米国特許第4,877,864号およ
びウァング(Wang)らの米国特許第5,013,549号参
照);一群の形質転換成長因子(TGF−αおよびTGF−
β)が骨疾患の治療で有用でありうるとして同定されて
おり(例えば、デリンク(Derynck)ら、欧州特許第15
4,434号参照);Vgr−1と表される蛋白が骨形成性細胞
で高レベルで発現されることが見い出されており(リオ
ンズ(Lyons)ら、(1989)、プロシーディングズ・オ
ブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシズ(Pr
oc.Natl.Acad.Sci.)USA86,4554−4558);およびOP−
1、COP−5およびCOP−7と表される蛋白は骨誘導活性
を示している(オッペルマン(Opperman)らの米国特許
第5,001,691号参照)。
骨形成性蛋白を、骨形成の誘導が望まれる部位へ送達
するように設計された処方を開発しようとする種々の試
みがなされてきた。例えば、アクリル酸エステルポリマ
ー(ウリスト(Urist)の米国特許第4,526,909号)およ
び乳酸ポリマー(ウリスト(Urist)の米国特許第4,56
3,489号)のごときある種のポリマー材料が利用されて
きたが、これらの処方は、最適に骨形成を誘導するのに
十分な時間、骨形成性蛋白を隔離せず、さらに、最適な
骨形成には侵食するのが遅すぎることが判明している。
OPと表される骨形成性蛋白の送達のための多孔性粒子
の生分解性マトリックスがクーベラスアンパス(Kupera
sampath)の米国特許第5,108,753号に開示されている。
米国特許第5,108,753号は、OP用の成功した担体が当該
蛋白に結合し、徐放送達系として働き、骨発育の間の細
胞の応答の各段階を収容し、かつ当該蛋白を非特異的蛋
白分解から保護するにちがいないと開示しているが、骨
形成が望まれる部位においてOPを特異的に隔離する成分
を含有する処方は示唆されていない。
オカダ(Okada)らの米国特許第4,652,441号、米国特
許第4,711,782号、米国特許第4,917,893号およびヤマモ
ト(Yamamoto)らの米国特許第4,954,298号は、外部の
油層中のポリマー壁物質によって囲まれた内部の水性層
にカプセル化されたポリペプチド薬物および薬物保持物
質からなる徐放性マイクロカプセルを開示している。骨
形態形成性蛋白は、かかる形成が可能なポリペプチドと
してリストされているが、骨形成性蛋白のマイクロカプ
セル化は、最適な骨形成のために十分なかかる蛋白の制
御放出を妨げる。
また、コラーゲンマトノックスも骨形成性蛋白用の送
達ビヒクルとして使用されてきた(例えば、ジェフリー
ズ(Jeffries)の米国特許第4,394,370号)が、コラー
ゲンは、しばしば、蛋白において望まない抗原反応を引
き起こす。従って、かかる骨形成の安全で、効果的な誘
導を可能とするのに十分な時間、骨形成の誘導が望まれ
る部位に骨形成性蛋白を隔離できる医薬処方に対する要
求が依然存在する。
発明の概要 出願人は、驚くべきことに、抗フィブリン溶解剤の不
存在下で血餅を用いて、骨誘導活性が望まれる部位に骨
形成性蛋白が隔離できることを見い出した(但し、多孔
性粒子ポリマーマトリックスが処方に取り込まれてい
る)。従って、さらに詳しくは、本発明は、骨形成性蛋
白;多孔性ポリマーマトリックスおよび骨形成性蛋白隔
離量の血餅の医薬上許容される混合物からなる組成物を
提供する。
発明の詳細な記載 本発明の実施で有用な骨形成性蛋白は当業者によく知
られており、前記したものを包含する。ここで用いる好
ましい骨形成性蛋白は、米国特許第7,877,864号;米国
特許第5,013,649号;1990年10月4日に公開されたWO 90
/11366号および1991年11月28日に公開されたWP 91/180
98号においてBMP−1ないしBMP−8と表されているBMP
クラスのものである。最も好ましいものはBMP−2であ
り、全長cDNA配列および最終的な成熟蛋白の配列が'649
号の特許に詳細に記載されている。もちろん、骨形成性
活性を示すかかる蛋白の断片が用いることができるよう
に、かかる骨形成性蛋白の2またはそれ以上の組合せも
使用できる。かかる骨形成性蛋白はホモダイマー種であ
ることが知られているが、混合したヘテロダイマーとし
ても活性を示す。骨形成性蛋白のヘテロダイマー形もま
た本発明の実施で用いることができる。組換え蛋白は天
然に存在する単離された蛋白よりも好ましい。ここで有
用な骨形成性蛋白の量は、侵潤性祖先細胞の骨形成活性
の増大を刺激する量であり、それは、後記にて詳細に説
明するごとく、治療されるべき欠陥のサイズおよび性質
に依存し、かかる量は使用するポリマーマトリックスの
量よりも小さいオーダーであり、一般に、使用するポリ
マーマトリックス10mgにつき蛋白1−50μg、より好ま
しくは、使用するポリマーマトリックス1μgにつき0.
5−10μgの範囲である(推定0.2g/cc密度)。
骨形成性蛋白は(凍結乾燥形からの復元を含めた)医
薬上許容される溶液の形態で使用できる。医薬上効果的
な量の蛋白が必要な担体の不適切な容量なくして医薬上
効果的な量の蛋白が送達できるように、骨形成性蛋白を
少なくとも約1mg/ml、好ましくは約2mg/mlの濃度で可溶
化させるのが最適である。正味の正の電荷を有する(例
えば、アルギニン、ヒスチジン、リシンならびにグリシ
ンおよびベータ−アラニンのエチルエステルのごとき正
味で1+の種)を有するアミノ酸、好ましくは正味で2
+の電荷(例えば、ヒスチジンのエチルエステル、リシ
ンおよびアルギニンのメチルエステル、ならびにアグマ
チン)を有するアミノ酸がこの点で有用である。正味で
ゼロの電荷を有するアミノ酸はこの点で有用であるが、
当該化合物の正の電荷は中和する負の電荷から十分距離
があるものとする(少なくとも2−3個のCH2単位離れ
る)(例えば、ガンマ−アミノ酪酸、ベータ−アミノプ
ロピオン酸、およびグリシン−グリシンジペプチドのご
とき正味中性種)。ここで有用な他の可溶化剤は、ポリ
(ソルベート)、デキストランサルフェート、グアニジ
ン、ヘパリンおよび塩化ナトリウムを包含する。BMP−
2の可溶化で使用するには、好ましい可溶化剤はアルギ
ニンおよびヒスチジンであり(そのエステルを含む)。
アルギニンは50−600mM、好ましくは300−500mMの濃度
で用いる。ヒスチジンは、約1−100mM、好ましくは10
−50mMの濃度でアルギニンに加えてBMP−2を可溶化す
る。ヒスチジンを単独で可溶化剤として使用する場合、
約50−600mM、好ましくは300−500mMの濃度で用いる。
骨形成性蛋白および可溶化剤を配合するには種々のよく
知られた公知の方法を用いることができ、限外濾過、透
析、ゲル濾過および疎水性相互作用クロマトグラフィー
を含むそれらに限定されるものではない。
本発明の実施で用いるポリマーマトリックス成分は、
後記するごとく多孔性粒子に形成でき、それにより、新
しい骨成長によって置換される生分解特性を有しつつ、
骨形成製蛋白のin−situ足場を提供できるポノマーマト
リックスである。その例は、アミノ酸、オルトエステ
ル、無水物、プロピレン−コーフマレートのポリマー、
あるいはα−ヒドロキシカルボン酸モノマー(例えば、
α−ヒドロキシ酢酸(グリコール酸)および/またはα
−ヒドロキシピロピオン酸(乳酸))の1種またはそれ
以上のポリマーである。後者は、そのd−またはl−形
で、あるいはラセミ混合物として使用でき、ラセミ混合
物が好ましい。乳酸とグリコール酸のコポリマーを使用
する場合(PLGA)、モノマーのモル比は、目的とする臨
床症状に依存する所望の生分解半減期に応じて1:99ない
し99:1の範囲であり、いずれかのモノマーが50%を超え
ると、長い生分解半減期を与える(より遅い生分解)。
ポリマーの分子量は(CHCl3中のポリスチレンに対し
て)約1000ないし100000の範囲であり、50:50のコポリ
マーを使用する場合、30000ないし50000が好ましい。分
子量が高くなれば、それだけ生分解は遅くなる。
本発明のポリマーマトリックス成分は粒子を空洞とす
るために(表面多孔性)、高度に多孔性の形態で使用す
るが、以後集合的に「多孔性粒子」という。これらの多
孔性粒子は、一般に、150ないし850ミクロンの直径、好
ましくは150−500ミクロン、最も好ましくは150−300ミ
クロンの直径を有する球形である。この粒子サイズは粒
子間に十分なスペースを生じて、哺乳動物骨祖先細胞が
侵潤し、(骨形成活性/骨成長速度の増加によって証明
されるごとく)骨形成性蛋白によって良好な影響を受け
ることを可能とする。
一般に、骨形成性蛋白の送達用のマトリックスとして
適する粒子は多孔性であるべきとされているが、最適に
骨形成を誘導するのに必要な多孔度は従前には研究され
ていない。本発明者らは、多孔性粒子当たりの平均表面
積が骨形成を最適化するのに臨界的であることを発見し
た。具体的には、本発明において骨形成で有用な多孔性
粒子は約0.02ないし4m2/gの平均表面積を有するべきで
ある。本発明者らは、さらに、「孔形成剤(ポロシゲン
(porosigen))」(粒子表面積を増加させることによ
って多孔性を付与できる組成物)を多孔性粒子を生産す
るための溶液に導入することにより、所望の表面積を有
する多孔性粒子を生産できることを見い出した。また、
該多孔性粒子を滅菌用量のγ線に付すことによって生分
解速度を制御することも可能である。γ線の用量が高く
なると、生分解は速くなる。
ここに有用な粒子は、当該粒子の表面積が、匹敵する
サイズの非多孔性粒子の表面積の約2−250倍に増大し
た多孔性を有する。
本発明の多孔性粒子の生産の好ましい方法は、一般的
に言えば、ポリマーを、例えば、(CH2Cl2中に)溶解
し、固体および/または液体形態のNaCl、マンニトール
またはスクロースのごときポロシゲンを添加することよ
りなる溶媒蒸発プロセスである。ポロシゲンを固体形態
で添加する場合、マトリックス−ポロシゲン溶液は懸濁
液の形態を採る。本発明の多孔性粒子のもう1つの好ま
しい生産方法は溶媒抽出方法であり、そこでは、ポロシ
ゲンを同時ホモゲナイゼーションにて液体形態で添加す
る。ポロシゲンをホモゲナイゼーションにて液体形態で
添加する場合、マトリックス−ポロシゲン溶液はエマル
ジョンの形態を採る。いずれかの方法で、マトリックス
−ポロシゲンエマルジョンを、撹拌および温度を制御し
つつ、ポリ(ビニルアルコール)のごとき界面活性剤を
含有する過剰の水性溶液に添加する。得られた多孔性粒
子を、抽出しまたは残存する溶媒を蒸発させることによ
って固化させ、乾燥する。ポロシゲンとして50% NaCl
を利用する本発明で有用なPLGA粒子は約0.2および0.6m2
/gの間の表面積を有し;ポロシゲンとしてスクロースを
用いる粒子は約0.04および0.09m2/gの間の表面積を有す
る。ホモゲナイゼーションにて液体ポロシゲンを用いる
本発明のPLGA粒子は約0.02および4m2/gの間の表面積を
有する。
本発明の粒子の多孔性は、蛋白の吸着用の十分な表面
積を生成させ、生分解を増大させ、両者の望ましい程度
は目的とする臨床的症状に依存する。表面積は通常の技
術によって測定できる。例えば、BET表面積分析は、ミ
クロメリティクス(Micromeritics)のASAP2000システ
ムを用いて使用でき、固体試料内の表面および孔内にお
けるクリプトンガスの吸着および脱着に基いて表面積を
測定する。単位は表面積を計算し、それを指摘する: V=圧力Pにおける吸着容量 P0=飽和圧力 P/P0=相対圧力 P=圧力 C=定数 A=ガス断面積 Vm=単層キャパシティー 1/{VA[(P0/P)−1]}を(P/P0)に対してプロッ
トすることによって、傾きは(C−1)/VmCであって切
片は1/VmCであり、表面積St=VmNA/Vであり、ここにN
=アボガドロ数であってV=モル容量である。
個々の欠陥を処理するのに用いる多孔性粒子の量は、
もちろん、処理すべき欠陥のサイズ、および骨形成性蛋
白を吸着するのに要する有効量に依存する。
本発明の実施で有用な蛋白−隔離材料は医薬上許容さ
れるヒト血液、好ましくは自己由来の血液である。骨形
成性蛋白/多孔性粒子混合物に添加すると、血液は凝固
して展性複合体を形成し、吸着された蛋白は、当該蛋白
が哺乳動物祖先細胞を浸潤させる骨形成活性の天然の速
度を増大させるのに十分な時間、マトリックス内に隔離
される。かかる血餅の不存在下では、骨形成性蛋白は、
蛋白の骨誘導効果が臨床的に有意でない速度にて、in−
situでPLGA粒子から脱着する。ここに有用な多孔性粒子
に対する血液の比は1:0.5ないし1:10(v:v)、好ましく
は1:5(v:v)、より好ましくは1:2(v:2)であり、この
比はポリマーマトリックスからの脱着を防ぐのに必要な
量を表すが、祖先細胞はマトリックスに浸潤するのが妨
げられず、それにより、蛋白が祖先細胞の骨形成活性を
助力する機会を与える。従って、1mlの欠陥につき、必
要な血液量は、一般に、約0.5−1.0mlである。大用量の
骨形成性蛋白を使用する場合、トロンビンのごとき凝固
容易化剤を使用して骨形成性蛋白の希釈効果を補うこと
もできる。多孔性粒子の添加の前に、血液成分を骨形成
性蛋白の溶液と混合するのが好ましい。
本発明の実施で有用なさらなる任意の成分は、例え
ば、(凍結乾燥中の分解を防ぐための)マンニトール、
スクロース、ラクトース、グルコース、またはグリシン
のごとき低温保護剤、メチルおよびプロピルパラベンな
らびにベンジルアルコールのごとき抗菌性防腐剤、EDT
A、シトレート、およびBHT(ブチル化ヒドロキシトルエ
ン)のごとき抗酸化剤、およびポリ(ソルベート)およ
びポリ(オキシエチレン)等のごとき界面活性剤を包含
する。もちろん、医薬上許容される形態(すなわち、パ
イロジェン−フリー、適当なpHおよび等張性、滅菌性
等)における処方の伝統的製剤は当業者の技量内のもの
であり、本発明の処方に適用できる。処方の骨形成性蛋
白および多孔性粒子は、溶液または凍結乾燥形態として
の、単一のバイアルとしてのクリニックに提供できる
か、あるいは該処方は、例えば、骨形成性蛋白が1のバ
イアル中に供され、多孔性粒子が別のバイアル中に供さ
れる多成分キットとして供することができる。凝固時間
におけるよく知られた患者−患者間の変動を考慮して、
該処方で用いる血液は、凝固が可能となる十分な使用
前、一般に、使用の30ないし180分前に混合する。
本発明の処方は、骨誘導性蛋白の治療上有効量が軟骨
および/または骨の形成が望まれる負傷部位に送達され
るのを可能とする展性インプラントを提供する。かかる
インプラントは、整形分野において;頭蓋/顎顔面復元
において;補綴組み込みのための、特に、ヒドロキシア
パタイト被覆補綴のごとき補綴インプラントの固定を改
良するための表面コーティングとして;骨再生のための
骨髄炎において;および歯槽隆線および歯周疾患の侵食
のための歯科分野において、新しい偽関節の骨折、脊髄
固定、および骨欠損修復での自己由来骨移植の代替物と
して使用できる。骨髄炎を治療するのに使用する場合、
骨形成性蛋白は多孔性粒子および抗生物質と組み合わ
せ、自己由来の血液を隔離剤として添加して使用でき
る。低粘性処方もまた、閉鎖骨折の治癒を加速するため
に経皮注射として使用できる。これらの使用のうちある
場合は、本発明の組成物は、ポリ(プロピレン−共重合
−フマレート)のごとき侵食性骨セメントを含めた種々
の骨セメントと組み合わせて使用できる。また、これら
の使用のあるものは、侵食性プレート、ネジ等のごとき
生侵食性ハードウェアを利用できる。前記したごとく、
用量は目的とする臨床徴候によって、ならびに種々の患
者の変数(例えば、体重、年令、性別)および臨床的表
示(負傷の程度、負傷の部位等)によって決定される。
実施例I インプラントの調製 乳酸およびグリコール酸(50:50)のランダムコポリ
マー(PLGA)(平均分子量30〜40kD、ポリスチレン標準
物質に対するゲル透過クロマトグラフィーによる平均分
子量約20kD、固有粘度0.35〜0.45dL/g)をCH2CH2(15%
w/v)に溶解し、この溶液中に10gの孔形成剤(7.5%
w/v)を懸濁させた。得られた溶液を、過剰のポリ
(ビニルアルコール)水溶液(0.1% w/v)に添加し
た。減圧下(24インチHg)で数時間撹拌した後、粒子を
過剰の冷エタノール(95%)中で固化させた。得られた
粒子を注射用水で洗浄し、真空乾燥して浮遊物のない製
品を得た。前記したミクロメトリクス(Micrometrics)
ASAP2000システムを用いてBET表面積測定を行ったとこ
ろ、粒子は約0.2ないし1.0m2/gの表面積を有していた。
スクロースを孔形成剤として用いて調製した粒子は、約
0.04ないし0.09の間の表面積を有していた。該多孔性粒
子を使用前にγ線照射により滅菌する。ヒトに使用する
ための各インプラント(10mlの多孔性粒子)を滅菌カッ
プ中に置く。
凍結乾燥したヒト・BMP−2(rhBMP−2)(2mg)
を、1mlの注射用滅菌水(WFI)で復元する。rhBMP−2
(1mg)溶液0.5mlを3mlシリンジ中に吸い込み、ついで
その針を雌型ルエル・ロク・(Luer Lok)コネクターに
置き換える。
患者の静脈血5.5mlを10mlシリンジに吸い込み(ヘパ
リン処理したラインを通さずに)、その針を取り出し、
直ちにrhBMP−2溶液が入っている3mlシリンジについに
ルエル・ロク・コネクターの他方側に装着する。rhBMP
−2溶液を血液の入ったシリンジ中に徐々に移行させ、
得られた混合物を、シリンジ間を4回緩やかに移行させ
て均一に混合し、10mlシリンジ中で混合を終える。空に
なった3mlシリンジとルエル・ロク・コネクターを取り
外し、ついで血液/rhBMP−2混合物を、多孔性粒子の入
ったカップ中に移す。必要ならば、混合物全体を、ステ
ンレス鋼製薬さじでゆるやかに撹拌して均一粘度にす
る。カップに覆いをし、室温で約1時間放置する。その
インプラント混合物は、その後2時間のうちに使用すべ
きである。
所望の粘度の展性インプラントが得られた時点で、損
傷部位における骨欠損部を外科的切開により露出させ
る。外科医により、該インプラントが多孔性粒子/rhBMP
−2/血餅からなる展性コンポジットを形成して、治療す
べき骨欠損部位を埋めるように適用される。ついで切開
部を慣用的方法を用いて閉じる。欠損部位をX線分析す
ることにより治癒をモニターする。
実施例II イヌ・頭蓋冠欠損インプラントの分析 2匹のオスおよび2匹のメスのイヌを通常の麻酔下に
置き、アクラ−カットDG II・クラニアル・ドリル(Acr
a−cut DG II cranial drill)を用いて、下に示すよう
に約12mm径の4つのトレフィン穴をそれぞれ頭蓋骨にあ
けた。
rhBMP−2、PLGA多孔性粒子、および凝固させて展性
インプラントを形成した自己由来の血液からなるインプ
ラントですべての穴を満たした。rhBMP−2用量は、各
インプラント中約200μg/mlであった。外科手術4週間
後、1匹のオスと1匹のメスを屠殺し、残りの動物を外
科手術8週間後に屠殺した。
屠殺後、各動物の右の口側および左の尾側の頭蓋冠部
位を組織病理学試験に用いた。身体力学的試験により、
4週目および8週目に屠殺した動物において同様の圧迫
抵抗性(無処理の対照のイヌと統計的に有為な差異はな
い)が示された。組織学的試験により、外科手術4週間
後よび8週間後両方において、おそらく頭蓋欠損部を架
橋すると思われるインプラント中への骨の内方成長が起
こったことが示された。小柱が厚くなるにつれ、4ない
し8週の間に再形成が起こったと思われた。多孔性粒子
マトリックス物質は試験期間中消失し続け、8週間後に
は僅かに残っただけであった。
実施例III ラット・大腿骨インプラントの分析 前以て穴を明けたポリエチレン板を大腿骨前部に取り
付け、カーバイドの歯科用ドリルで骨の一部を切除する
ことにより、56日齢のオスのロング・エバンズ(Long E
vans)の交配適齢期経過後のラット(450〜550グラム)
それぞれの左大腿骨の骨幹中央部に臨界的な欠損(5m
m)を外科的に作成した。rhBMP−2(種々の量)、PLGA
多孔性粒子およびラット・静脈血を混合することにより
生分解性インプラントを調製し、血液を凝固させて成形
可能なインプラントを作った。各7匹からなる8群に以
下のごとく移植を行った:0μg rhBMP−2;0.93μg r
hBMP−2;3.1μg rhBMP−2;9.3μg rhBMP−2;0μg
rhBMP−2+2M ε−アミノカプロン酸;0.93μg rh
BMP−2+2M ε−アミノカプロン酸;3.1μg rhBMP−
2+2M ε−アミノカプロン酸;および9.3μg rhBMP
−2+ε−アミノカプロン酸(ε−アミノカプロン酸は
恒常性維持剤である)。この研究に用いたPLGA多孔性粒
子は、0.217m2/gの表面積を有していた。
動物のX線撮影を、0日目と3、6および9週目に行
った。9週目の動物を屠殺し、ポリエチレン板のまわり
の組織を組織学的試験用に取り出し、移植を受けた大腿
骨および移植を受けていない反対側の大腿骨を取り出し
た。各群の2本の大腿骨を組織学的に試験し、残りの大
腿骨を身体力学的試験に用いた。
0μgのrhBMP−2を与えられた動物には、骨の癒合
が見られず、それらの群においては新たな骨の形成も認
められなかった。0.93μg用量群のうち50(ε−アミノ
カプロン酸を与えられた動物)ないし80(ε−アミノカ
プロン酸を与えられなかった動物)パーセントにおいて
骨の癒合が起こった。3.1μg用量群のすべての動物に
は、9週目に癒合が起こった。9.3μg用量群の動物13
匹のうち12匹においては、9週目には癒合完了したまま
であった(9.3μgの動物のうち1匹において、6週目
に板が破損した)。
ε−アミノカプロン酸は、治癒応答に変化をもたらさ
ないと思われた。インプラントのまわりのいかなる軟組
織においても骨の形成は見られなかった。いくらかの軟
骨形成が、すべての移植群(0μgのrhBMP−2群を含
む)のポリエチレン板のまわりの繊維組織において見ら
れた。
9週目において、用量依存性の治癒応答が大腿骨に見
られた。rhBMP−2不含インプラントは、欠損部位にお
いて繊維組織を成長させた。rhBMP−2用量0.93μgの
群は、近位および遠位の骨と欠損部位とがほとんど配列
していない部分のほかに欠損部位にもいくらかの繊維組
織を有していた。3.1μgおよび9.3μgのrhBMP−2イ
ンプラントの群は、繊維組織がほとんどないかまたはな
く、近位および遠位の部分がうまく配列し、いくらかの
カルス形成が見られた。カルス形成は9.3μg群におい
てより大きかった。すべてのrhBMP−2投与群において
骨髄は正常と思われた。
rhBMP−2インプラントの群すべてにおいてPLGA多孔
性粒子は見られなかった。rhBMP−2用量3.1および9.3
μg/インプラントで最も好ましい骨の成長が見られた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 シャウブ,ロバート・ジョージ アメリカ合衆国ニューハンプシャー州 03076、ペルハム、ジェレミー・ヒル・ ロード118番 (72)発明者 トゥレック,トマス・ヨセフ アメリカ合衆国マサチューセッツ州 02124、ボストン、ベアーズ・アベニュ ー65番 (56)参考文献 特開 平1−232967(JP,A) 国際公開89/9787(WO,A1) 国際公開91/18098(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61L 27/00 A61K 35/14 A61K 38/00 A61K 47/30 MEDLINE(STN) BIOSIS(STN)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(i)骨形成性蛋白; (ii)多孔性粒子ポリマーマトリックス;および (iii)骨形成性蛋白隔離量の自己由来の血餅 の医薬上許容される混合物からなる骨または軟骨形成用
    の組成物。
  2. 【請求項2】該骨形成蛋白が、BMP−族のメンバーから
    なる群より選択される請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】該骨形成蛋白がBMP−2である請求項2記
    載の組成物。
  4. 【請求項4】該混合物が抗フィブリン溶解剤不含である
    請求項1、2または3記載の組成物。
  5. 【請求項5】該ポリマーマトリックスの成分が、ポリ
    (乳酸)、ポリ(グリコール酸)、および乳酸とグリコ
    ール酸のコポリマーからなる群より選択される請求項
    1、2または3記載の組成物。
  6. 【請求項6】該ポリマーマトリックスの成分がPLGAであ
    る請求項1、2、3、4または5記載の組成物。
  7. 【請求項7】該ポリマーマトリックスの成分が、ポリ
    (オルトエステル)、ポリ無水物およびポリ(プロピレ
    ン−コーフマレート)ポリマーから選択される請求項
    1、2、3または4記載の組成物。
  8. 【請求項8】(i)BMP−2; (ii)約150ないし850ミクロンの間の直径で、粒子表面
    積が約0.01ないし4.0m2/gであるような多孔度を有する
    ポリマー粒子であって、該ポリマーが、ポリ(乳酸)、
    ポリ(グリコール酸)、および乳酸とグリコール酸のコ
    ポリマーよりなる群より選択されるポリマー粒子からな
    るポリマーマトリックス成分;および (iii)骨形成蛋白隔離量の自己由来の血餅 の医薬上許容される混合物からなる骨または軟骨形成用
    の組成物。
  9. 【請求項9】(i)骨形成性蛋白;および (ii)多孔性粒子ポリマーマトリックス (iii)骨形成性蛋白隔離量の自己由来の血餅 からなる軟骨および/または骨損傷修復用キット。
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