JP3333731B2 - 透過形電子顕微鏡用薄片試料作製方法 - Google Patents

透過形電子顕微鏡用薄片試料作製方法

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JP3333731B2
JP3333731B2 JP02709498A JP2709498A JP3333731B2 JP 3333731 B2 JP3333731 B2 JP 3333731B2 JP 02709498 A JP02709498 A JP 02709498A JP 2709498 A JP2709498 A JP 2709498A JP 3333731 B2 JP3333731 B2 JP 3333731B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、集束イオンビーム
を使って塊状の試料を透過形電子顕微鏡(以下、TEM
という)観察用薄片試料に加工する方法に関するもので
あり、特にアーテイファクトを低減して試料を薄片化す
ることのできる透過形電子顕微鏡用試料作製方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】TEM用試料は電子線透過の必要性か
ら、通常は0.1μm程度に薄い必要がある。このよう
に薄い試料を作るため、従来は、検体を機械的切削で小
さい薄片にした後、その表面を電解研磨やイオン照射研
磨で削り、厚さ0.1μm程度の極薄片に仕上げる方法
が使われてきた。この方法では、観察したい部分を丁度
その薄片の中に納めた試料を作り上げることが難しい。
【0003】そこで近年は、集束イオンビームを使って
薄片試料に加工する方法が採用されている。すなわち、
細く絞ったイオンビームで試料の目的とする場所の両側
を削り、薄壁を形成して厚さ0.05μm程度のTEM
用試料に仕上げる。この方法によれば、観察したい部分
を高信頼度で含んだ試料を作り上げることが出来る。ま
た、通常は30keVから50keVの高エネルギーの
イオンビームが使われるので、高速度で加工が行われ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、この集束イ
オンビームを用いる方法にも問題点がある。それは、イ
オンビームで薄片化を進める過程において、イオンビー
ムが薄壁の内部に侵入し、試料を構成している原子(以
下、試料原子)を動かして、その位置を変えさせ、試料
原子の配置状態を変えてしまうことである。このため試
料が結晶性のものであった場合には原子の転位や空孔な
ど種々の結晶欠陥が発生し、もし、この程度が激しけれ
ば、イオンビームの侵入部分が非晶質の構造に変わって
しまう。
【0005】イオンが試料中に侵入する深さは、例えば
“MICROSCOPY RESEARCH AND TECHNIQUE”第35卷32
0−333頁によれば、約0.01μmであり、従来の
集束イオンビーム加工法で作られた厚さ約0.1μmの
極薄試料はその両面に約0.01μmのアーテイファク
ト層を有している可能性がある。このアーティファクト
層は、電子顕微鏡像においてはバックグラウンドを形成
し、像のコントラストを低下させる。
【0006】本発明は、アーテイファクト層の厚さが従
来に比べて約1/2以下に小さいTEM観察用試料作製
方法を提供することを目的とする。また本発明は、アー
テイファクトの少ない試料を加工位置に関しては高精度
で、加工時間に関しては短時間で作製できるTEM用試
料作製方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】照射イオンの侵入深さを
浅くするため、本発明の透過形電子顕微鏡用薄片試料作
製方法では、従来のTEM用試料作製装置で使用されて
いるイオンビームエネルギーの1/2以下の低エネルギ
ーイオンビームを使って試料を最終形状に仕上げるよう
にした。低エネルギーのイオンビームで加工すると、加
工に要する時間が長くなる。そこで、試料作製に使われ
る全時間を短縮するため、素材からTEM用試料に仕上
げるまでの全加工を粗加工、中間加工、仕上げ加工、‥
‥等の複数の加工工程に分け、仕上げ加工工程以外の工
程では高エネルギーのイオンビームで加工するようにし
た。
【0008】厚さ約0.1μmの薄片試料を信頼度高く
作り上げるには、太さが薄壁の略30%以下、すなわ
ち、直径0.03μm以下のイオンビームを使う必要が
ある。太さが0.05μmのビームでは、作製中に薄片
がしばしば破れてしまうことがある。ところが、イオン
ビームの特徴として、仕上げ加工に使用しようとする低
エネルギーのイオンビームは高エネルギーイオンビーム
に比べて細く絞り難い。そこで、低エネルギーのイオン
ビームによっても高精度の加工が出来るよう、仕上げ加
工用の低エネルギーイオンビームと、その他の加工用の
高エネルギーイオンビームとでは、ビームを集束する方
法を違えるようにした。
【0009】すなわち、本発明は、集束イオンビームを
用いて透過形電子顕微鏡用の薄片試料を作製する方法に
おいて、薄片試料に仕上げる最後の工程が15keV以
下のエネルギーのイオンビームで薄片化する工程である
ことを特徴とする。最後の工程で用いる15keV以下
のエネルギーのイオンビームは直径が0.03μm以下
であることが望ましい。
【0010】また、本発明は、集束イオンビームを用い
て透過形電子顕微鏡用の薄片試料を作製する方法におい
て、塊状の素材から薄片試料に加工する工程が、エネル
ギーの異なるイオンビームで加工する複数の工程よりな
ることを特徴とする。薄片試料に仕上げる最終仕上げ工
程で使用するイオンビームは、他の工程で使用するイオ
ンビームよりも低いエネルギーを有するイオンビームで
ある。最終仕上げ工程で使用するイオンビームのビーム
集束方法、すなわち対物レンズの焦点距離、もしくは対
物レンズの動作モードを他の工程で使用されるイオンビ
ームのビーム集束方法と違えることによって、仕上げ工
程において他の工程におけるより低エネルギーで細いビ
ームを生成することが出来る。
【0011】本発明による集束イオンビームを用いた透
過形電子顕微鏡用の薄片試料作製方法は、各工程で使用
されるイオンビームのビーム集束方法の条件を予め記憶
しておき、複数工程にわたる試料作製作業の進捗に伴っ
て、記憶された集束条件でイオンビームを形成するよう
装置に指令する制御装置を備えたイオンビーム加工装置
を使って実行することができる。
【0012】本発明による透過形電子顕微鏡用薄片試料
作製装置は、イオン源と、イオン源に接続された加速電
圧電源と、イオン源から発生されたイオンビームを集束
する対物レンズと、対物レンズに電圧を印加する対物レ
ンズ電源と、試料を載せる試料ステージと、試料ステー
ジを駆動するステージ駆動電源と、加速電圧電源、対物
レンズ電源及びステージ駆動電源を制御する制御装置
と、イオンビーム集束条件を記憶する記憶装置とを含
み、制御装置は記憶装置に記憶されたイオンビーム集束
条件に従って加速電圧電源、対物レンズ電源及びステー
ジ駆動電源を制御し、異なるビーム集束条件で集束され
たイオンビームを用いる複数の工程によって試料を薄片
化することを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態を説明する。まず、集束イオンビームを用いた
TEM用試料作製工程において、試料を照射するイオン
が試料を切削するとともに、その一部が試料内部に侵入
してゆく様子を図1を用いて説明する。
【0014】図1は、最初は一点鎖線で示されたような
直方体状である小片にイオンビーム1をその位置を制御
しながら照射し、薄壁2が形成されつつある様子を描い
ている。イオンビーム1が小片を照射すると、照射部に
あった試料原子3は真空中にはじき出されて試料が削ら
れる。一方、試料原子3をはじき出した照射イオン4
は、試料原子3をはじき出しても、まだ照射時と同程度
に大きなエネルギーが残っているので、例えば矢印に描
いたような軌跡をたどって薄壁内部に侵入する。そのエ
ネルギーは試料原子を動かすことにより失われ、エネル
ギーが零になると同図の4のように試料中に停止する。
すなわち、試料に侵入したイオンはその行路に沿って試
料原子を動かし、その位置を変えさせる。そこで、も
し、試料が結晶で出来ていたとすると、照射イオンの侵
入領域5の部分には、試料原子の転移や置換、空孔など
の結晶欠陥が発生する。照射イオンの侵入領域5の大き
さ(層の深さ)は、例えば30keVのガリウム・イオ
ンビームでシリコン素材を加工するような場合には従来
技術において述べたように約0.01μmである。
【0015】シリコンの結合エネルギーは約4.7eV
と小さいことに注意したい。すなわち、照射時に持って
いた30keVのエネルギーのうち、試料表面近傍の試
料原子をはじき出すのに使われるエネルギーはごく一部
であり、大部分のエネルギーは試料内部で試料原子を動
かすことで消費されている。このことを考えると、イオ
ンの侵入によって試料に発生する欠陥の数は照射時に有
していたエネルギーにほぼ比例して変化することと推定
される。そこで、もし、照射時のエネルギーが15ke
V以下のイオンビームを使って薄片化すれば、欠陥層の
厚さを0.005μm以下に抑えることが可能と思われ
る。
【0016】一方、照射時のエネルギーが高いほど、試
料原子をはじき出す速度、すなわち加工速度も大きい。
なるべく短時間で試料を作製したいことは言うまでもな
い。そこで、TEM用試料の作製時間はなるべく短く、
かつ、出来上がった試料の欠陥層はなるべく薄く仕上げ
るためには、イオンビーム加工の工程を照射エネルギー
の異なる複数の工程に分ければよいことと思われる。す
なわち、目的の部位から離れた部分の加工は欠陥が発生
してもよいので高エネルギーのイオンビーム照射で高速
度で行い、目的部位の近傍は低エネルギーのイオンビー
ムを使って加工する。つまり、目的部から10nm以上
離れた部分を切削加工するには、従来通り、高エネルギ
ーのイオンビームで加工し、TEM用試料を完成する最
後の工程では15keV以下のイオンビームで加工す
る。もし、TEM用試料作製時間短縮の必要がなけれ
ば、試料作製の全工程を低エネルギーのイオンビームで
加工してもよいことは言うまでもない。
【0017】図2は、本発明のTEM用試料作製方法を
実施するために使用する集束イオンビーム加工装置の一
例を示す概略図である。イオン源6より発射されたイオ
ンビーム1は、偏向器7を通って対物レンズ8に入る。
対物レンズ8は図示したように3枚の電極から構成され
ており、中央の電極に電圧(以下、レンズ電圧という)
を印加することによりイオンビーム1を集束することが
出来る。対物レンズ8により細く絞られたイオンビーム
1は、試料9を照射し、試料9の照射部を掘削する。図
2では偏向器7を用いてイオンビーム1の照射位置を制
御することにより、試料9がもともとは直方体状の小片
から薄壁状のTEM用試料に加工されつつある様子が示
されている。試料9は、ステージ駆動電源11によって
上下に移動出来る試料ステージ10に載せられている。
【0018】試料9の加工に必要な集束イオンビーム加
工装置の各部の制御は、全て全体制御器12が統轄して
行う。すなわち、全体制御器12は予めパーソナルコン
ピュータ13にプログラムされている手順に従って、所
定のイオンビームエネルギーと所定のイオンビーム走査
とを加速電圧電源14と偏向器電源15を中継してイオ
ンビーム1に与え、所定の試料−レンズ間距離(以下、
ワーキングディスタンスという)に試料9が位置するよ
うにステージ駆動電源11を駆動して調節する。対物レ
ンズ8には、全体制御器12によって制御される対物レ
ンズ電源16からレンズ電圧が印加される。
【0019】図2のイオンビーム加工装置を使用して、
本発明に従ってTEM用薄片試料を作製する方法の一例
を図3に示す。ここで説明するTEM用試料の作製工程
は粗加工の工程と仕上げ加工の工程とからなる。本発明
の方法の実施に必要な装置制御パラメータは、イオンビ
ームエネルギーE(keV)、レンズ電圧V(kV)、
ワーキングディスタンスW(mm)、イオンビーム直径
D(μm)、及びイオンビーム電流値I(nA)であ
る。
【0020】まず図3(1)に示すように、TEM用試
料作製者は、観察したい部分を内部に含む略2×0.3
×0.7mmの試料片17を機械的切削により作製し、
図2のイオンビーム加工装置の試料ステージ10に装填
する。加速電圧電源14により30keVのエネルギー
を与えられたイオンビーム1はワーキングディスタンス
Wが18mmの位置に置かれた試料片17を照射し、図
3におけるA部とB部をイオンビーム1で掘削する。
【0021】この時使用されるイオンビーム1は、図2
の対物レンズ8にレンズ電圧V=−32.18kVの電
圧を印加することによって得られたイオンビーム直径D
が約0.2μmのイオンビームである。また、その電流
値Iは9nAで、次に述べる仕上げ加工時の電流値に比
べ45倍大きい。この大電流ビームで約1.5時間加工
すると、厚さ約1μmの薄壁を有する試料18が得られ
る。この加工工程は、加工場所が目的部分から約0.4
μm以上離れた、欠陥発生の悪影響を受けない部分を大
電流イオンビームを使って高速加工する工程であるの
で、粗加工工程と呼ばれる。粗加工工程は、図3に示し
たように略20×20×300μm3の大きな体積を掘
削する工程であり、なるべく短時間で加工するには大電
流のイオンビームを利用することが不可欠である。
【0022】次に、図3(2)に示すように、粗加工で
作製した薄壁を、観察所望部位を含む厚さ約0.05μ
mの薄壁に仕上げるため、仕上げ加工が行われる。すな
わち、図3において、試料18の博壁両側のC部とD部
がイオンビーム1で削られる。仕上げ加工に使用される
イオンビーム1の必要条件は、(1)イオンビーム侵入
により発生する欠陥を極力押さえるため、低エネルギー
のイオンビームを使用することと、(2)約0.05μ
mという極薄の試料を作る必要性から細いビームを使用
することである。本実施の形態の仕上げ加工では10k
eVのエネルギーと0.02μmφのイオンビームが使
われている。すなわち、本実施の形態では、粗加工には
30keV、0.2μmφのイオンビームが使われ、仕
上げ加工では10keV、0.02μmφのイオンビー
ムが使われている。
【0023】仕上げ加工では粗加工に比べ低エネルギー
で、かつ、はるかに細いイオンビームを必要とするとい
う要件は、実は集束イオンビームを生成する点からは相
反的な課題である。というのは、イオンビームを細く絞
る限界は対物レンズの色収差で制約されているので、低
エネルギーのイオンビームは高エネルギーのイオンビー
ムに比べて細く絞り難いからである。
【0024】本発明では、粗加工に使用する30keV
ビームと仕上げ加工に使用する10keVビームとでレ
ンズの焦点距離を違えることにより、この問題に対処す
る。すなわち、図3に示した実施の形態では粗加工と仕
上げ加工とで、ワーキングディスタンスWを18mmか
ら3mmに変えて、仕上げ加工では短焦点距離のレンズ
条件でビームを絞るよう対物レンズが動作する。これは
丁度、光学顕微鏡を使用する際に、低倍率の広視野観察
から高倍率の高分解能観察に移行する際に長焦点距離の
対物レンズから短焦点距離の対物レンズにレンズを交換
して観察する方法と類似している。もちろん、粗加工に
おいてもワーキングディスタンスWを3mmに短くして
短焦点距離のレンズ動作条件で30keVのビームを生
成することが出来れば更に良いが、静電レンズでは、所
定の焦点距離を与えるに必要とする印加電圧がビームエ
ネルギーに比例する性質があるので、本実施の形態の場
合には装置実用上の不具合が発生する。すなわち、30
keVビームをワーキングディスタンスW=3mmの試
料上に絞りこもうとすると、−90.3kVの高電圧を
対物レンズに印加する必要が生じ、レンズが破損してし
まう。
【0025】この実施の形態では、粗加工用ビームと仕
上げ加工用ビームの集束方法を違える手段としてワーキ
ングディスタンスWを変えて焦点距離を違える方法を採
用したが、ワーキングディスタンスWは3mmの短焦点
距離側の値に保ち、30keVの粗加工用ビームと10
keVの仕上げ加工用ビームとで対物レンズの動作モー
ドを変える方法によっても、粗加工用ビームに比べて低
エネルギーで、かつ細い仕上げ加工用ビームを発生する
ことが出来る。
【0026】図4は、本発明の他の実施の形態の説明図
である。この実施の形態では、対物レンズの動作モード
を変えており、図3で説明した実施の形態と以下の2点
で異なっている。(1)粗加工においても仕上げ加工と
同じ短焦点距離の状態でレンズを駆動する。(2)粗加
工に使われるイオンビームと仕上げ加工に使われるイオ
ンビームとは対物レンズに異なった極性の電圧を印加す
ることによって生成される。
【0027】図4に示したように、粗加工においては、
イオンビームエネルギーE=30keV、ワーキングデ
ィスタンスW=3mm、対物レンズのレンズ電圧V=2
1.68kVの条件で、イオンビーム直径Dが約0.3
μm、電流値Iが10nAのイオンビームを生成する。
この大電流ビームを用いて図3に示した小片17のA部
とB部を掘削し、厚さ約2μmの壁を有する試料を作製
する。次の中間加工では、イオンビームエネルギーE=
30keV、ワーキングディスタンスW=3mm、対物
レンズのレンズ電圧V=23.03kVの条件で、イオ
ンビーム直径Dが約0.04μm、イオンビーム電流値
Iが1nAのイオンビームを生成する。このイオンビー
ムを用いて、粗加工で作製した試料薄壁の両面を削り、
厚さ0.2μmの薄壁を有する試料を作製する。最後の
仕上げ加工においては、イオンビームエネルギーE=1
0keV、ワーキングディスタンスW=3mm、対物レ
ンズのレンズ電圧V=−30.12kVの条件で、イオ
ンビーム直径Dが約0.02μm、イオンビーム電流値
Iが0.02nAのイオンビームを生成する。このイオ
ンビームを用いて、中間加工で作製した試料薄壁の両面
を削り、厚さ0.08μmの薄壁を有するTEM観察用
試料に仕上げる。
【0028】周知のように、イオンビームは静電レンズ
で構成された対物レンズに正極性の電圧を印加しても、
負極性の電圧を印加しても集束する。前者の集束方法は
減速モードの集束と称し、後者は加速モードの集束と呼
ばれている。粗加工用の30keVのイオンビームを加
速モードで焦点距離短くワーキングディスタンスW=3
mmの試料に集束しようとすると、先に述べたように−
90.3kVという極めて高いレンズ電圧を必要とする
が、これを減速モードで集束しようとすれば、+21.
7kVの電圧を対物レンズに印加すればよい。
【0029】減速モード動作は加速モード動作に比べて
収差が大きくビームが絞り難い欠点があるので、図3に
示した実施の形態でワーキングディスタンスWを大きし
て、対物レンズを加速モードで絞る方法を示したが、図
4に示した実施の形態ではワーキングディスタンスWは
3mmの短焦点距離に置き、イオンビームを絞る方法を
示している。ワーキングディスタンスWが小さいので減
速モードでも直径0.3μm程度に細く絞ることが出来
る。もちろん、仕上げビームは10keVという低エネ
ルギーなので、図3に示した実施の形態と同じ条件で負
極性の加速モードで絞られる。図4に示した実施の形態
では粗加工と仕上げ加工とで試料位置を変更する必要が
ない利点があるが、正と負の2つの極性の高電圧を発生
するレンズ電源を必要とする。
【0030】
【発明の効果】本発明によると、従来のイオンビーム加
工装置を使用して作製した透過形電子顕微鏡用試料に比
べて結晶欠陥の数を1/2以下に低減した透過形電子顕
微鏡用試料を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】イオンビーム応用TEM用試料加工方法の説明
図。
【図2】本発明の方法に使用するイオンビーム加工装置
の一例を示す概略図。
【図3】本発明に従ってTEM用薄片試料を作製する方
法の一例を示す説明図。
【図4】本発明に従ってTEM用薄片試料を作製する方
法の他の例を示す説明図。
【符号の説明】
1…イオンビーム、2…薄壁、3…試料原子、4…照射
イオン、5…照射イオン侵入領域、6…イオン源、7…
偏向器、8…対物レンズ、9…試料、10…試料ステー
ジ、11…ステージ駆動電源、12…全体制御器、13
…パーソナルコンピュータ、14…加速電圧電源、15
…偏向器電源、16…対物レンズ電源、17…試料片、
18…粗加工により得た薄壁を有する試料、19…TE
M観察用試料
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 1/28 G01N 1/32 JICSTファイル(JOIS)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 集束イオンビームを用いて透過形電子顕
    微鏡用の薄片試料を作製するための粗加工を行い、前記
    集束イオンビームを用いて粗加工後の試料を薄片試料に
    仕上げるための仕上げ加工を行う透過形電子顕微鏡用薄
    片試料作製方法において、前記薄片試料に仕上げる最後
    の工程が15keV以下のエネルギーのイオンビームで
    薄片化する工程であることを特徴とする透過形電子顕微
    鏡用薄片試料作製方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の透過形電子顕微鏡用薄片
    試料作成方法において、前記15keV以下のエネルギ
    ーのイオンビームは直径が0.03μm以下であること
    を特徴とする透過形電子顕微鏡用薄片試料作製方法。
  3. 【請求項3】 集束イオンビームを用いて透過形電子顕
    微鏡用の薄片試料を作製するための粗加工を行い、前記
    集束イオンビームを用いて粗加工後の試料を薄片試料に
    仕上げるための仕上げ加工を行う透過形電子顕微鏡用薄
    片試料作製方法において、塊状の素材から薄片試料に加
    工する工程が、エネルギーの異なるイオンビームで加工
    する複数の工程よりなり、前記仕上げ加工の工程が15
    keV以下のエネルギーのイオンビームによる加工であ
    ることを特徴とする透過形電子顕微鏡用薄片試料作製方
    法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の透過形電子顕微鏡用薄片
    試料作成方法において、薄片試料に仕上げる最終仕上げ
    工程で使用するイオンビームは、他の工程で使用するイ
    オンビームよりも低いエネルギーを有するイオンビーム
    であることを特徴とする透過形電子顕微鏡用薄片試料作
    製方法。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の透過形電子顕微鏡用薄片
    試料作成方法において、前記最終仕上げ工程で使用する
    イオンビームのビーム集束方法が他の工程で使用される
    イオンビームのビーム集束方法とは異なることを特徴と
    する透過形電子顕微鏡用薄片試料作製方法。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の透過形電子顕微鏡用薄片
    試料作成方法において、各工程で使用されるイオンビー
    ムのビーム集束方法の条件を予め記憶しておき、複数工
    程にわたる試料作製作業の進捗に伴って、前記記憶され
    た集束条件でイオンビームを形成するよう装置に指令す
    る制御装置を備えたイオンビーム加工装置を使って薄片
    試料を作製することを特徴とする透過形電子顕微鏡用薄
    片試料作製方法。
  7. 【請求項7】 イオン源と、前記イオン源に接続された
    加速電圧電源と、前記イオン源から発生されたイオンビ
    ームを集束する対物レンズと、前記対物レンズに電圧を
    印加する対物レンズ電源と、試料を載せる試料ステージ
    と、前記試料ステージを駆動するステージ駆動電源と、
    前記加速電圧電源、対物レンズ電源及びステージ駆動電
    源を制御する制御装置と、イオンビーム集束条件を記憶
    する記憶装置とを含み、 前記制御装置は前記記憶装置に記憶されたイオンビーム
    集束条件に従って前記加速電圧電源、対物レンズ電源及
    びステージ駆動電源を制御し、異なるビーム集束条件で
    集束されたイオンビームを用いる複数の工程によって試
    料を薄片化すると共に前記複数の工程のうち、前記薄片
    試料を仕上げる加工工程では、前記加速電圧が15ke
    V以下となるように前記加速電圧電源を制御することを
    特徴とする透過形電子顕微鏡用薄片試料作製装置。
JP02709498A 1998-02-09 1998-02-09 透過形電子顕微鏡用薄片試料作製方法 Ceased JP3333731B2 (ja)

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