JP3329578B2 - 低温じん性に優れた高強度Ni鋼厚鋼板の製造方法 - Google Patents
低温じん性に優れた高強度Ni鋼厚鋼板の製造方法Info
- Publication number
- JP3329578B2 JP3329578B2 JP11552794A JP11552794A JP3329578B2 JP 3329578 B2 JP3329578 B2 JP 3329578B2 JP 11552794 A JP11552794 A JP 11552794A JP 11552794 A JP11552794 A JP 11552794A JP 3329578 B2 JP3329578 B2 JP 3329578B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- toughness
- steel
- strength
- temperature
- less
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Heat Treatment Of Steel (AREA)
Description
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、低温じん性に優れた
高強度Ni鋼厚鋼板の製造方法に関し、とくに液化天然ガ
ス(以下、LNG と示す)の貯蔵用タンク用鋼板を典型例
とする、−160 ℃以下の極低温での使用においても、じ
ん性を失うことのない、低温じん性に優れた、しかも高
強度のNi鋼厚鋼板の有利な製造方法を与えるものであ
る。
高強度Ni鋼厚鋼板の製造方法に関し、とくに液化天然ガ
ス(以下、LNG と示す)の貯蔵用タンク用鋼板を典型例
とする、−160 ℃以下の極低温での使用においても、じ
ん性を失うことのない、低温じん性に優れた、しかも高
強度のNi鋼厚鋼板の有利な製造方法を与えるものであ
る。
【0002】近年のエネルギー需要の増大、あるいは原
子力発電の安全性に対する危惧などを背景として、クリ
ーンなエネルギー源であるLNG の需要が急増している。
これに伴って、LNG を貯蔵するためのタンクの建設が促
進されている。このLNG 貯蔵用タンクには、当然圧力容
器用鋼板を使用するが、タンク内は極低温雰囲気に晒さ
れるため、とくに低温じん性に優れた材料が推奨され
る。従って、LNG 貯蔵用タンクには、Ni鋼、中でも9wt
%Ni鋼鋼板が多用されている。また、LNG の貯蔵効率を
高めるためにタンクの容量を増大させる傾向にあり、LN
G 貯蔵タンク用材に供する9wt%Ni鋼鋼板には、その板
厚が在来鋼板の上限である30mmを越える、とりわけ40mm
以上の厚みを有するものが必要になってきている。
子力発電の安全性に対する危惧などを背景として、クリ
ーンなエネルギー源であるLNG の需要が急増している。
これに伴って、LNG を貯蔵するためのタンクの建設が促
進されている。このLNG 貯蔵用タンクには、当然圧力容
器用鋼板を使用するが、タンク内は極低温雰囲気に晒さ
れるため、とくに低温じん性に優れた材料が推奨され
る。従って、LNG 貯蔵用タンクには、Ni鋼、中でも9wt
%Ni鋼鋼板が多用されている。また、LNG の貯蔵効率を
高めるためにタンクの容量を増大させる傾向にあり、LN
G 貯蔵タンク用材に供する9wt%Ni鋼鋼板には、その板
厚が在来鋼板の上限である30mmを越える、とりわけ40mm
以上の厚みを有するものが必要になってきている。
【0003】
【従来の技術】さて、低温じん性の優れた9wt%Ni鋼鋼
板の製造方法に関しては、多くの提案がなされ、中で
も、特開昭47− 23317号や特公平4−40411 号各公報な
どに記載される、Ac1 〜Ac2 変態点間に加熱焼入れ後焼
き戻す処理を含んだ手法が、低温じん性の向上に有利で
ある。
板の製造方法に関しては、多くの提案がなされ、中で
も、特開昭47− 23317号や特公平4−40411 号各公報な
どに記載される、Ac1 〜Ac2 変態点間に加熱焼入れ後焼
き戻す処理を含んだ手法が、低温じん性の向上に有利で
ある。
【0004】しかしながら、これらの技術は、板厚が30
mm以下の鋼板に有効であるが、板厚が30mmをこえるよう
な厚鋼板に同様に適用することは難しい。すなわち、板
厚が30mmをこえる厚さになると、圧延による結晶粒の微
細化が困難となるとともに、焼入れ冷却時の冷却速度が
必然的に小さくなるなどの理由から、強度およびじん性
がともに低下する傾向にある。さらにLNG 貯蔵用タンク
の建設に不可欠の溶接は、板厚が厚くなると入熱量が大
きくなるため、溶接熱影響部(以下HAZ と示す)の材質
が変化してじん性が損なわれる。
mm以下の鋼板に有効であるが、板厚が30mmをこえるよう
な厚鋼板に同様に適用することは難しい。すなわち、板
厚が30mmをこえる厚さになると、圧延による結晶粒の微
細化が困難となるとともに、焼入れ冷却時の冷却速度が
必然的に小さくなるなどの理由から、強度およびじん性
がともに低下する傾向にある。さらにLNG 貯蔵用タンク
の建設に不可欠の溶接は、板厚が厚くなると入熱量が大
きくなるため、溶接熱影響部(以下HAZ と示す)の材質
が変化してじん性が損なわれる。
【0005】そこで、特開平3-264617号公報では、低温
スラブ加熱後に熱間圧延を施し、次いで焼入れ、中間焼
入れ、そして焼戻し処理を施すことによって、降伏強さ
の高い9wt%Ni鋼厚鋼板を製造する方法が提案された。
スラブ加熱後に熱間圧延を施し、次いで焼入れ、中間焼
入れ、そして焼戻し処理を施すことによって、降伏強さ
の高い9wt%Ni鋼厚鋼板を製造する方法が提案された。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の手法によって、
Ni鋼厚鋼板の降伏強さは確かに上昇するが、低温じん性
については未だ不十分であるところに問題が残る。従っ
て、この発明は、板厚が30mmをこえる、中でも40mm以上
の9wt%Ni鋼厚鋼板に対しても、高い強度および優れた
低温じん性を保証する技術について提案することを目的
とする。
Ni鋼厚鋼板の降伏強さは確かに上昇するが、低温じん性
については未だ不十分であるところに問題が残る。従っ
て、この発明は、板厚が30mmをこえる、中でも40mm以上
の9wt%Ni鋼厚鋼板に対しても、高い強度および優れた
低温じん性を保証する技術について提案することを目的
とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】 発明者らは、上記問題点
を解決するために、9wt%Ni鋼に種々の成分を添加した
ときの、降伏強さおよび低温じん性への影響を調べるた
め、C, Siを従来鋼より減らしてじん性を向上させ、こ
れらの含有量の減少による強度低下をNbおよびVによっ
て補償する試みを行ったところ、強度ばかりでなく、じ
ん性の大幅な改善効果も望外に得られることが新たに判
明した。また、圧延ならびに熱処理条件についても検討
したところ、焼戻し後に比較的に速い速度で冷却するこ
とによって、じん性改善に効果があることも見出し、こ
の発明を導くに到った。
を解決するために、9wt%Ni鋼に種々の成分を添加した
ときの、降伏強さおよび低温じん性への影響を調べるた
め、C, Siを従来鋼より減らしてじん性を向上させ、こ
れらの含有量の減少による強度低下をNbおよびVによっ
て補償する試みを行ったところ、強度ばかりでなく、じ
ん性の大幅な改善効果も望外に得られることが新たに判
明した。また、圧延ならびに熱処理条件についても検討
したところ、焼戻し後に比較的に速い速度で冷却するこ
とによって、じん性改善に効果があることも見出し、こ
の発明を導くに到った。
【0008】すなわち、この発明は、C:0.03〜0.06wt
%、Si:0.20wt%以下、Mn:0.30〜0.70wt%、Ni:7.5
〜12.0wt%、Al:0.01〜0.05wt%、Nb:0.005 〜0.030
wt%、P:0.005 wt%以下、S:0.002 wt%以下および
N:0.005 wt%以下を含有し、残部鉄及び不可避的不純
物の組成になる鋼スラブを、1100〜1300℃に加熱後、70
0 〜850 ℃での累積圧下率が30〜80%の熱間圧延にて、
厚さが30mmをこえる厚鋼板に仕上げ、次いでAc3 点〜85
0 ℃の温度域に加熱した後冷却し、さらにAc1点〜Ac3
点の温度域に加熱した後冷却し、その後 Ac1点+50℃以
下での焼戻しを行うことを特徴とする低温じん性に優れ
た高強度Ni鋼厚鋼板の製造方法である。
%、Si:0.20wt%以下、Mn:0.30〜0.70wt%、Ni:7.5
〜12.0wt%、Al:0.01〜0.05wt%、Nb:0.005 〜0.030
wt%、P:0.005 wt%以下、S:0.002 wt%以下および
N:0.005 wt%以下を含有し、残部鉄及び不可避的不純
物の組成になる鋼スラブを、1100〜1300℃に加熱後、70
0 〜850 ℃での累積圧下率が30〜80%の熱間圧延にて、
厚さが30mmをこえる厚鋼板に仕上げ、次いでAc3 点〜85
0 ℃の温度域に加熱した後冷却し、さらにAc1点〜Ac3
点の温度域に加熱した後冷却し、その後 Ac1点+50℃以
下での焼戻しを行うことを特徴とする低温じん性に優れ
た高強度Ni鋼厚鋼板の製造方法である。
【0009】また、この発明は、上記の方法において、
焼戻し処理後に、冷却速度が2℃/s以上となる冷却処
理を施すことを特徴とする低温じん性に優れた高強度Ni
鋼厚鋼板の製造方法である。なお、鋼スラブに、さらに
V:0.005 〜0.03wt%を添加することによって、じん性
の一層の向上をはかることが可能である。
焼戻し処理後に、冷却速度が2℃/s以上となる冷却処
理を施すことを特徴とする低温じん性に優れた高強度Ni
鋼厚鋼板の製造方法である。なお、鋼スラブに、さらに
V:0.005 〜0.03wt%を添加することによって、じん性
の一層の向上をはかることが可能である。
【0010】
【作用】以下、この発明の方法について詳細に説明す
る。まず、この発明においてスラブの成分組成を限定し
た理由について述べる。 C:0.03〜0.06wt% Cは強度を確保するのに0.03wt%以上は必要であるが、
0.06wt%をこえると母材およびHAZ のじん性低下をまね
くため、0.03〜0.06wt%の範囲とする。
る。まず、この発明においてスラブの成分組成を限定し
た理由について述べる。 C:0.03〜0.06wt% Cは強度を確保するのに0.03wt%以上は必要であるが、
0.06wt%をこえると母材およびHAZ のじん性低下をまね
くため、0.03〜0.06wt%の範囲とする。
【0011】Si:0.20wt%以下 Siは強度の上昇に寄与するため、好ましくは0.01wt%以
上は必要であるが、多量の含有はじん性の低下をもたら
すため、0.20wt%以下とする。
上は必要であるが、多量の含有はじん性の低下をもたら
すため、0.20wt%以下とする。
【0012】Mn:0.30〜0.70wt% Mnも強度の上昇に寄与する成分であり、0.30wt%以上の
含有が必要であるが、0.70wt%をこえる含有はじん性の
低下をまねくため、0.30〜0.70wt%の範囲とする。
含有が必要であるが、0.70wt%をこえる含有はじん性の
低下をまねくため、0.30〜0.70wt%の範囲とする。
【0013】Ni:7.5 〜12.0wt% Niは鋼に低温じん性を付与すると同時に焼入れ性を改善
し、焼入れ処理によりマルテンサイト組織を得るために
含有させる成分であり、7.5 wt%以上の含有が必要であ
るが、12.0wt%をこえて含有しても、その効果は飽和す
るため、12.0wt%を上限とする。
し、焼入れ処理によりマルテンサイト組織を得るために
含有させる成分であり、7.5 wt%以上の含有が必要であ
るが、12.0wt%をこえて含有しても、その効果は飽和す
るため、12.0wt%を上限とする。
【0014】Al:0.01〜0.05wt% Alは脱酸剤として含有され、また鋼中でAlN となって結
晶粒を微細化する効果があり、0.01wt%以上の含有が必
要であるが、0.05wt%をこえるとじん性の低下をまねく
ため、0.01〜0.05wt%の範囲とする。
晶粒を微細化する効果があり、0.01wt%以上の含有が必
要であるが、0.05wt%をこえるとじん性の低下をまねく
ため、0.01〜0.05wt%の範囲とする。
【0015】Nb:0.005 〜0.030 wt% Nbは最も重要な成分であって、強度および低温じん性の
いずれをも上昇する効果があり、とくにHAZ のじん性向
上に寄与するところが大である。ここに、HAZのじん性
とNb含有量との関係を図1に示すように、Nb含有量が0.
005 〜0.030 wt%の範囲で、HAZ のじん性向上が顕著で
あることがわかる。そこで、Nb含有量は、0.005 〜0.03
0 wt%の範囲に限定した。なお、図1に示す実験は、
C:0.05wt%、Si:0.08wt%、Mn:0.60wt%、Ni:9.4w
t %、Al:0.027 wt%を含む鋼スラブを、1240℃に加熱
後圧延仕上温度800℃で厚さ50mmの鋼板とした後に、800
℃で加熱焼入れし、さらに670 ℃で加熱焼入れし、次
いで550 ℃で加熱焼戻しして製造した厚鋼板における、
入熱量3.0kJ/mmの溶接によるHAZ のじん性を−196 ℃で
の吸収エネルギーで評価したものである。
いずれをも上昇する効果があり、とくにHAZ のじん性向
上に寄与するところが大である。ここに、HAZのじん性
とNb含有量との関係を図1に示すように、Nb含有量が0.
005 〜0.030 wt%の範囲で、HAZ のじん性向上が顕著で
あることがわかる。そこで、Nb含有量は、0.005 〜0.03
0 wt%の範囲に限定した。なお、図1に示す実験は、
C:0.05wt%、Si:0.08wt%、Mn:0.60wt%、Ni:9.4w
t %、Al:0.027 wt%を含む鋼スラブを、1240℃に加熱
後圧延仕上温度800℃で厚さ50mmの鋼板とした後に、800
℃で加熱焼入れし、さらに670 ℃で加熱焼入れし、次
いで550 ℃で加熱焼戻しして製造した厚鋼板における、
入熱量3.0kJ/mmの溶接によるHAZ のじん性を−196 ℃で
の吸収エネルギーで評価したものである。
【0016】P:0.005 wt%以下、S:0.002 wt%以下
およびN:0.005 wt%以下 PおよびSは、じん性を低下する成分であるため、各々
0.005 wt%および0.002 wt%以下に制限する。同様に、
Nもじん性を低下させるため、0.0050wt%以下に制限す
る。
およびN:0.005 wt%以下 PおよびSは、じん性を低下する成分であるため、各々
0.005 wt%および0.002 wt%以下に制限する。同様に、
Nもじん性を低下させるため、0.0050wt%以下に制限す
る。
【0017】この発明においては、上記の成分組成に加
えて、さらにV:0.005 〜0.03wt%を添加することも可
能である。すなわち、VはNbと同様に強度およびじん性
の改良に効果のある成分であり、0.005 wt%以上で有効
であるが、0.03wt%をこえると溶接部のじん性が低下す
るため、0.03wt%を上限とする。
えて、さらにV:0.005 〜0.03wt%を添加することも可
能である。すなわち、VはNbと同様に強度およびじん性
の改良に効果のある成分であり、0.005 wt%以上で有効
であるが、0.03wt%をこえると溶接部のじん性が低下す
るため、0.03wt%を上限とする。
【0018】次に、熱間圧延および熱処理条件の各限定
理由を述べる。上記の成分に調整した鋼スラブは、1100
〜1300℃に加熱するが、この温度域に限定したのは、次
工程の圧延工程において結晶粒を微細化するためであ
り、微細化効果を発現するのに必要なAlN を充分に固溶
するのには1100℃以上の加熱が必要であり、一方1300℃
をこえるとγ粒が著しく粗大化し、圧延後の結晶粒が微
細化しない。
理由を述べる。上記の成分に調整した鋼スラブは、1100
〜1300℃に加熱するが、この温度域に限定したのは、次
工程の圧延工程において結晶粒を微細化するためであ
り、微細化効果を発現するのに必要なAlN を充分に固溶
するのには1100℃以上の加熱が必要であり、一方1300℃
をこえるとγ粒が著しく粗大化し、圧延後の結晶粒が微
細化しない。
【0019】次の熱間圧延において、スラブは板厚が30
mmをこえる厚鋼板に仕上げられる。ここで、熱間圧延
は、700 〜850 ℃での累積圧下率を30〜80%で行う必要
がある。これは、圧延の主体を700 〜850 ℃の温度域で
行うことにあり、700 ℃未満の温度域における圧延では
じん性を阻害する集合組織が発達し、また850 ℃をこえ
る温度域における圧延ではγ粒の再結晶が瞬時に起るた
め、圧延による結晶粒の微細化が達成できないためであ
る。なお、仕上げ温度は、圧延生産性の観点から、700
〜800 ℃とすることが好ましい。
mmをこえる厚鋼板に仕上げられる。ここで、熱間圧延
は、700 〜850 ℃での累積圧下率を30〜80%で行う必要
がある。これは、圧延の主体を700 〜850 ℃の温度域で
行うことにあり、700 ℃未満の温度域における圧延では
じん性を阻害する集合組織が発達し、また850 ℃をこえ
る温度域における圧延ではγ粒の再結晶が瞬時に起るた
め、圧延による結晶粒の微細化が達成できないためであ
る。なお、仕上げ温度は、圧延生産性の観点から、700
〜800 ℃とすることが好ましい。
【0020】上記の圧延を経た鋼板は、一旦冷却された
後、Ac3 点〜850 ℃の温度域に加熱した後冷却する1次
焼入れ処理、さらにAc1 点〜Ac3 点の温度域に加熱した
後冷却する2次焼入れ処理をそれぞれ施し、次いでAc1
+50℃以下での焼戻し処理を行う。
後、Ac3 点〜850 ℃の温度域に加熱した後冷却する1次
焼入れ処理、さらにAc1 点〜Ac3 点の温度域に加熱した
後冷却する2次焼入れ処理をそれぞれ施し、次いでAc1
+50℃以下での焼戻し処理を行う。
【0021】ここで、1次焼入れ処理は、微細なマルテ
ンサイト組織を生成して、後工程の熱処理と組み合わせ
ることで優れた強度およびじん性を得るために行われ
る。従って、均一なオーステナイト組織から冷却する必
要があり、Ac3 点以上に加熱する必要があるが、850 ℃
をこえる温度ではオーステナイト粒の粗大化が生じてじ
ん性が低下するため、加熱温度をAc3 点〜850 ℃の範囲
に限定する。なお、加熱後の冷却速度は、1.0 ℃/s以
上とすることが好ましい。
ンサイト組織を生成して、後工程の熱処理と組み合わせ
ることで優れた強度およびじん性を得るために行われ
る。従って、均一なオーステナイト組織から冷却する必
要があり、Ac3 点以上に加熱する必要があるが、850 ℃
をこえる温度ではオーステナイト粒の粗大化が生じてじ
ん性が低下するため、加熱温度をAc3 点〜850 ℃の範囲
に限定する。なお、加熱後の冷却速度は、1.0 ℃/s以
上とすることが好ましい。
【0022】引き続いて行われる2次焼入れ処理は、焼
戻し処理後に安定な析出オーステナイトを多量に生成さ
せるために行うものである。すなわち、鋼板を二相域に
加熱することによって、フェライトとオーステナイトの
二相組織を生成させ、これを急冷することでフェライト
と高合金を含んだマルテンサイト組織を生成させるので
ある。そのため、加熱温度はAc1 点〜Ac3 点の温度域と
する必要がある。なお、加熱後の冷却速度は、1.0 ℃/
s以上とすることが好ましい。
戻し処理後に安定な析出オーステナイトを多量に生成さ
せるために行うものである。すなわち、鋼板を二相域に
加熱することによって、フェライトとオーステナイトの
二相組織を生成させ、これを急冷することでフェライト
と高合金を含んだマルテンサイト組織を生成させるので
ある。そのため、加熱温度はAc1 点〜Ac3 点の温度域と
する必要がある。なお、加熱後の冷却速度は、1.0 ℃/
s以上とすることが好ましい。
【0023】その後の焼戻し処理は、上記したマルテン
サイト組織の転位密度を低下させると同時に、安定な析
出オーステナイトを生成するために行われるものであっ
て、微細なオースナイトの析出を得るためにAc1 +50℃
以下の温度域で行われる必要がある。なお、下限は焼戻
し効果を確保するため、Ac1 −45℃以上とすることが好
ましい。
サイト組織の転位密度を低下させると同時に、安定な析
出オーステナイトを生成するために行われるものであっ
て、微細なオースナイトの析出を得るためにAc1 +50℃
以下の温度域で行われる必要がある。なお、下限は焼戻
し効果を確保するため、Ac1 −45℃以上とすることが好
ましい。
【0024】また、上記の焼戻し処理後にその温度から
2℃/s以上の速度で冷却を行うと、さらなるじん性の
改善をはかることが可能である。なぜなら、冷却速度が
遅いとPの粒界偏析あるいはFeリン化物の生成をまねい
て、これらがじん性に悪影響を及ぼすことになるからで
ある。
2℃/s以上の速度で冷却を行うと、さらなるじん性の
改善をはかることが可能である。なぜなら、冷却速度が
遅いとPの粒界偏析あるいはFeリン化物の生成をまねい
て、これらがじん性に悪影響を及ぼすことになるからで
ある。
【0025】ここで、鋼板の母材のじん性と焼戻し後の
冷却速度との関係を図2に示すように、冷却速度が速く
なるに従って、じん性が向上することがわかる。すなわ
ち、冷却速度が1℃/sをこえたところからじん性の向
上がみとめられ、とくに、2℃/s以上になるとじん性
の向上が顕著である。なお、図2の実験は、C:0.05wt
%、Si:0.18wt%、Mn:0.60wt%およびNi:9.4wt %を
含む鋼スラブを、1240℃に加熱後、仕上温度800 ℃で圧
延し、その後800 ℃で加熱焼入れし、さらに670 ℃で加
熱焼入れし、次いで550 ℃に加熱したのちの冷却速度を
種々に変化して得た鋼板について、その厚みの1/2 の位
置から採取した試験片によって、−196 ℃での吸収エネ
ルギーを調査したものである。
冷却速度との関係を図2に示すように、冷却速度が速く
なるに従って、じん性が向上することがわかる。すなわ
ち、冷却速度が1℃/sをこえたところからじん性の向
上がみとめられ、とくに、2℃/s以上になるとじん性
の向上が顕著である。なお、図2の実験は、C:0.05wt
%、Si:0.18wt%、Mn:0.60wt%およびNi:9.4wt %を
含む鋼スラブを、1240℃に加熱後、仕上温度800 ℃で圧
延し、その後800 ℃で加熱焼入れし、さらに670 ℃で加
熱焼入れし、次いで550 ℃に加熱したのちの冷却速度を
種々に変化して得た鋼板について、その厚みの1/2 の位
置から採取した試験片によって、−196 ℃での吸収エネ
ルギーを調査したものである。
【0026】焼戻し後の冷却速度を2℃/s以上にした
ときの効果は、とくに、板厚が40mm以上の鋼板を対象と
する場合に顕著であり、これは、30mm未満の鋼板に対し
て通常行われる焼戻し後の空冷処理では、冷却速度が0.
1 ℃/s 以下と極端に小さくなり、40mm以上の厚板では
じん性の向上が望めないことによる。
ときの効果は、とくに、板厚が40mm以上の鋼板を対象と
する場合に顕著であり、これは、30mm未満の鋼板に対し
て通常行われる焼戻し後の空冷処理では、冷却速度が0.
1 ℃/s 以下と極端に小さくなり、40mm以上の厚板では
じん性の向上が望めないことによる。
【0027】
【実施例】表1に示す化学成分組成になる鋼スラブを、
1140℃に加熱後、700 〜850 ℃での累積圧下率が50%と
なる熱間圧延を仕上げ温度750 ℃で終了し、800 ℃に加
熱した後水冷し、さらに670 ℃に加熱した後水冷し、次
いで550 ℃での焼戻し処理後に、表2に示す条件に従っ
て冷却し、板厚が40、60および100 mmの9wt%Ni鋼鋼板
(母材)を得た。かくして得られた母材を、引張り試験
およびシャルピー衝撃試験に供して、機械的特性および
−196 ℃における衝撃吸収エネルギーを調査した。さら
に、母材に対して、図3に示す溶接熱サイクルを与えて
HAZ を作りだし、HAZ の−196 ℃における衝撃吸収エネ
ルギーについても調査した。これらの調査結果を表2に
併記する。
1140℃に加熱後、700 〜850 ℃での累積圧下率が50%と
なる熱間圧延を仕上げ温度750 ℃で終了し、800 ℃に加
熱した後水冷し、さらに670 ℃に加熱した後水冷し、次
いで550 ℃での焼戻し処理後に、表2に示す条件に従っ
て冷却し、板厚が40、60および100 mmの9wt%Ni鋼鋼板
(母材)を得た。かくして得られた母材を、引張り試験
およびシャルピー衝撃試験に供して、機械的特性および
−196 ℃における衝撃吸収エネルギーを調査した。さら
に、母材に対して、図3に示す溶接熱サイクルを与えて
HAZ を作りだし、HAZ の−196 ℃における衝撃吸収エネ
ルギーについても調査した。これらの調査結果を表2に
併記する。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】表2に示すように、鋼板No. 1〜6はスラ
ブの化学組成ならびに圧延および熱処理条件のいずれも
がこの発明を満足するため、母材およびHAZ ともに優れ
た低温じん性が得られた。中でも、鋼板No. 1〜5は焼
戻し処理後の冷却速度を2℃/s以上としたことによ
り、一層優れた低温じん性が得られた。
ブの化学組成ならびに圧延および熱処理条件のいずれも
がこの発明を満足するため、母材およびHAZ ともに優れ
た低温じん性が得られた。中でも、鋼板No. 1〜5は焼
戻し処理後の冷却速度を2℃/s以上としたことによ
り、一層優れた低温じん性が得られた。
【0031】これに対して、鋼板No. 7はスラブのC量
が少ないため強度が不足し、鋼板No. 8および9はスラ
ブのC量あるいはSi量が多いためにじん性に劣り、鋼板
No.10はNb量が少ないため強度およびじん性が低く、鋼
板No. 11および12はスラブのNb量あるいはV量が多いた
めHAZ のじん性が低いものであった。
が少ないため強度が不足し、鋼板No. 8および9はスラ
ブのC量あるいはSi量が多いためにじん性に劣り、鋼板
No.10はNb量が少ないため強度およびじん性が低く、鋼
板No. 11および12はスラブのNb量あるいはV量が多いた
めHAZ のじん性が低いものであった。
【0032】
【発明の効果】この発明に従って製造された、9wt%Ni
鋼厚鋼板は、優れた母材強度と低温じん性を有するばか
りでなく、HAZ の低温じん性にも優れているため、板厚
が30mmをこえる、とりわけ40mm以上の厚鋼板において
も、実用に耐える強度および低温じん性を保証し得る。
鋼厚鋼板は、優れた母材強度と低温じん性を有するばか
りでなく、HAZ の低温じん性にも優れているため、板厚
が30mmをこえる、とりわけ40mm以上の厚鋼板において
も、実用に耐える強度および低温じん性を保証し得る。
【図1】鋼板のHAZ のじん性とNb含有量との関係を示す
図である。
図である。
【図2】鋼板の母材のじん性と焼戻し後の冷却速度との
関係を示す図である。
関係を示す図である。
【図3】溶接熱サイクルを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石井 裕昭 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 (72)発明者 谷川 治 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 (72)発明者 中野 善文 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎 製鉄株式会社 技術研究本部内 (72)発明者 楠原 祐司 東京都千代田区内幸町2−2−3 川崎 製鉄株式会社 東京本社内 (72)発明者 上村 尚志 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 審査官 小川 武 (56)参考文献 特開 平6−88165(JP,A) 特開 平2−194121(JP,A) 特開 昭51−92714(JP,A) 特開 昭60−174831(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/02,9/52 C22C 38/00 - 38/60
Claims (3)
- 【請求項1】C:0.03〜0.06wt%、Si:0.20wt%以下、 Mn:0.30〜0.70wt%、Ni:7.5 〜12.0wt%、 Al:0.01〜0.05wt%、Nb:0.005 〜0.030 wt%、 P:0.005 wt%以下、S:0.002 wt%以下および N:0.005 wt%以下 を含有し、残部鉄及び不可避的不純物の組成になる鋼ス
ラブを、1100〜1300℃に加熱後、700 〜850 ℃での累積
圧下率が30〜80%の熱間圧延にて、厚さが30mmをこえる
厚鋼板に仕上げ、次いでAc3 点〜850 ℃の温度域に加熱
した後冷却し、さらにAc1 点〜Ac3 点の温度域に加熱し
た後冷却し、その後 Ac1点+50℃以下での焼戻し処理を
行うことを特徴とする低温じん性に優れた高強度Ni鋼厚
鋼板の製造方法。 - 【請求項2】請求項1に記載の方法において、焼戻し処
理後に、冷却速度が2℃/s以上となる冷却処理を施す
ことを特徴とする低温じん性に優れた高強度Ni鋼厚鋼板
の製造方法。 - 【請求項3】 鋼スラブは、さらにV:0.005 〜0.03wt
%を含む組成になる請求項1または2に記載の高強度Ni
鋼厚鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11552794A JP3329578B2 (ja) | 1994-05-27 | 1994-05-27 | 低温じん性に優れた高強度Ni鋼厚鋼板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11552794A JP3329578B2 (ja) | 1994-05-27 | 1994-05-27 | 低温じん性に優れた高強度Ni鋼厚鋼板の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07316654A JPH07316654A (ja) | 1995-12-05 |
JP3329578B2 true JP3329578B2 (ja) | 2002-09-30 |
Family
ID=14664739
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP11552794A Expired - Fee Related JP3329578B2 (ja) | 1994-05-27 | 1994-05-27 | 低温じん性に優れた高強度Ni鋼厚鋼板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3329578B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
BR112013000436B1 (pt) | 2010-07-09 | 2018-07-03 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation | Chapa de aço com ni adicionado e método de produção da mesma |
US9260771B2 (en) | 2011-09-28 | 2016-02-16 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation | Ni-added steel plate and method of manufacturing the same |
CN103305750A (zh) * | 2012-03-09 | 2013-09-18 | 株式会社神户制钢所 | 极低温韧性优异的厚钢板 |
EP2871255B1 (en) * | 2013-06-19 | 2017-05-03 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation | Steel, process for manufacturing the same, and lng tank |
-
1994
- 1994-05-27 JP JP11552794A patent/JP3329578B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH07316654A (ja) | 1995-12-05 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CA2295582C (en) | Ultra-high strength, weldable steels with excellent ultra-low temperature toughness | |
EP1017862B1 (en) | Method for producing ultra-high strength, weldable steels with superior toughness | |
CA2295586C (en) | Ultra-high strength, weldable, essentially boron-free steels with superior toughness | |
AU8676998A (en) | Ultra-high strength, weldable, boron-containing steels with superior toughness | |
JPH01230713A (ja) | 耐応力腐食割れ性の優れた高強度高靭性鋼の製造法 | |
JP3550726B2 (ja) | 低温靱性に優れた高張力鋼の製造方法 | |
JPH09143557A (ja) | 低温靱性に優れた高強度含Ni厚鋼板の製造方法 | |
JP3329578B2 (ja) | 低温じん性に優れた高強度Ni鋼厚鋼板の製造方法 | |
JPH05271766A (ja) | 耐水素誘起割れ性の優れた高強度鋼板の製造方法 | |
JPH09256039A (ja) | 高降伏強さ、高靱性含Ni厚鋼板の製造方法 | |
JPH0920922A (ja) | 高靱性低温用鋼板の製造方法 | |
JP3274013B2 (ja) | 優れた低温靭性を有する耐サワー高強度鋼板の製造方法 | |
JP3009569B2 (ja) | 低温靭性の優れた耐co2腐食性耐サワー鋼板の製造法 | |
JPH05195156A (ja) | 溶接熱影響部靱性の優れた高マンガン超高張力鋼およびその製造方法 | |
JPH06179909A (ja) | 極低温用鋼材の製造方法 | |
JPH059575A (ja) | 耐食性の優れた高強度鋼板の製造法 | |
JPH05148544A (ja) | 板厚方向の硬さ分布が均一な高強度高靭性鋼板の製造法 | |
JPS5952207B2 (ja) | 低降伏比、高靭性、高張力鋼板の製造方法 | |
JP3009568B2 (ja) | 耐水素誘起割れ性および低温靭性の優れた高強度鋼板の製造法 | |
JPH06256842A (ja) | 耐サワー性の優れた薄手高強度鋼板の製造方法 | |
JPS6334205B2 (ja) | ||
JP3297107B2 (ja) | 溶接性の優れた低温用鋼の製造方法 | |
JPH1121625A (ja) | 強度、靱性に優れる厚鋼板の製造方法 | |
JPH11264017A (ja) | 材質ばらつきが小さく溶接性に優れた非調質高張力鋼の製造方法 | |
JPS62207B2 (ja) |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080719 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090719 Year of fee payment: 7 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |