JP3325638B2 - 高強度高導電率銅合金の製造方法 - Google Patents

高強度高導電率銅合金の製造方法

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JP3325638B2 JP07478893A JP7478893A JP3325638B2 JP 3325638 B2 JP3325638 B2 JP 3325638B2 JP 07478893 A JP07478893 A JP 07478893A JP 7478893 A JP7478893 A JP 7478893A JP 3325638 B2 JP3325638 B2 JP 3325638B2
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邦浩 直江
輝之 高山
和素 鈴木
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高強度高導電率銅合金
であるCu−Ag合金の製造方法に関し、特にAg濃度
が1乃至10重量%のCu−Ag合金の強度を向上させ
た高強度高導電率銅合金の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子部品等の軽量化、薄型化及び小型化
に伴い、近年、電子部品用電線も細線化してきていると
共に、この電子部品用電線には高強度と高導電率を兼ね
備えた特性が要求されている。しかし、導電材料用銅合
金の導電率と強度とは相反するものであり、強度を高め
るべく合金成分を添加すると、導電率が低下し、純度を
高めて導電率を高めると、強度が不足するというよう
に、高強度と高導電率とを両立させることは困難であ
る。
【0003】而して、このような問題点を解決した高強
度高導電率銅合金として、4〜32at%(6.5〜52
重量%)のAgを含有する銅合金及びその製造方法が提
案されている(特開平4-120227号)。この銅合金は、C
uに4〜32at%のAgを添加することにより、初晶C
uと、Cu及びAgの共晶相とを均一且つ微細に晶出さ
せたものである。そして、伸線加工を行うことにより、
初相Cuと共晶相がフィラメント状に引き延ばされて、
Cu−Ag合金の強度を向上させることができる。更
に、加工途中において、真空雰囲気又は不活性ガス中で
温度300〜550℃、熱処理時間0.5〜40時間の
条件で多段熱処理を施すことにより、初晶及び共晶相中
に固溶しているAg及びCuを析出させ、強度と共に導
電率を向上させることを可能としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この従
来の製造方法により高強度高導電率銅合金を製造する場
合、4at%(6.5重量%)以上のように比較的高濃度
のAgを添加してあるものは問題ないが、6.5重量%
以下のようなAg添加量が少ないものは鋳造時のCuー
Ag合金の共晶相の晶出量が少ないため、伸線後に多段
熱処理を行う際に、1回目の熱処理時にCuマトリクス
が再結晶してしまうという難点がある。この再結晶によ
り、銅合金の強度が著しく低下する。更に、添加Ag量
が少ない場合、1回目の熱処理で初晶及び共晶相中に固
溶しているAg及びCuの大部分が析出してしまうた
め、2回目以降の熱処理での析出物の量は少なく、熱処
理を行う効果が殆ど認められない。このため、6.5重
量%以下のようにAg添加量が少ないCu−Ag合金に
おいては、熱処理によって強度を改善する効果が得られ
ず、高価なAgの添加及び熱処理コストが無駄であっ
た。
【0005】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
のであって、比較的低濃度のAgを含有する銅合金にお
いても、その強度を高めることができ、強度及び導電率
の双方を改善することができる高強度高導電率銅合金の
製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る高強度高導
電率銅合金の製造方法は、1乃至10重量%のAgを含
有し、残部がCu及び不可避的不純物からなる銅合金組
成の鋳塊に570乃至680℃で熱間加工を施し、更に
冷間加工を行い、この冷間加工の途中で、真空雰囲気又
は不活性ガス雰囲気中で、400乃至550℃の温度で
0.5乃至40時間にわたり熱処理を施すことを特徴と
する。
【0007】
【作用】本発明においては、1乃至10重量%のAgを
Cuに添加することにより初晶Cuと、CuとAgとの
共晶相を晶出させた鋳塊を熱間加工し、この熱間加工に
より、初晶及び共晶相中に固溶しているAg及びCuを
若干析出させながら、Cuマトリクスを再結晶させて粒
界を細かくする。その結果、その後工程で低温側での熱
処理を施した際に再結晶が起こらず、初晶及び共晶相中
に固溶している残りのAg及びCuを析出させて、強度
と共に導電率をも向上させることができる。
【0008】本発明においては、Agの添加量は1乃至
10重量%である。Ag含有量が1重量%未満の場合で
は、共晶相の晶出量が極めて少ない。また、Ag含有量
が1重量%未満の場合には、後工程のAg及びCuを析
出させるための熱処理において、Ag及びCuの析出量
が少なくなるため、熱処理による特性改善の効果を殆ど
得ることができない。逆に、Agの添加量が10重量%
を超えると、低温側の析出を目的とした熱処理を施した
際に再結晶が起こりにくいので、熱間加工を特に行わな
くても、強度の著しい低下は見られなくなり、高価なA
gの過剰の添加は無駄である。以上の点から、Agの添
加量は1乃至10重量%とする。なお、本願発明におい
ては、Ag以外の種々の成分の存在は、不純物量程度で
あれば、合金の特性上さしつかえない。
【0009】本願発明においては、熱間加工の温度範囲
が570乃至680℃である。570℃未満の温度で熱
間加工を行うと、固溶していたAg及びCuの析出量は
多いが、この熱間熱処理時に再結晶を起こし、次の低温
側での熱処理時にAg及びCuが殆ど析出しないため、
強度が上がらない。また、熱間加工温度が680℃を超
える場合には、Ag及びCuがいずれも固溶してしま
い、Ag及びCuの析出が全く生じないため、次の低温
側での熱処理時に再結晶が起こりやすくなり、低温側熱
処理で強度が著しく低下する。
【0010】このCu−Ag合金は鋳造後、570乃至
680℃の高温で熱間加工した後、冷間加工を行い、4
00乃至550℃の低温側での熱処理によってCu又は
Agを析出させ、強度と導電率を上昇させているが、高
温側の熱処理(熱間加工)を省くと次の低温側熱処理時
に再結晶が起こり、強度が著しく低下してしまう。この
ため、冷間加工に先立ち570℃〜680℃の温度で熱
間加工を行い、Agを若干析出させるが、この熱処理に
際しては、次の低温側での熱処理時の析出用として、全
てのAgを析出させることなく、固溶中に残しておくよ
うにするのが好ましい。
【0011】
【実施例】次に、本発明の実施例について、その比較例
と比較して説明する。Cuに1〜10重量%の範囲の種
々の割合でAgを添加し、真空又は不活性ガス雰囲気中
でCu−Ag合金の鋳塊を溶製した。次いで、この鋳塊
の表面を研削した後、スウェージングによる熱間加工を
570℃、600℃、680℃の温度で夫々減面率50
%まで行った。
【0012】更に、減面率70%まで冷間伸線加工を施
し、その後400℃〜500℃で0.5〜5時間の熱処
理を施した。更に、減面率80%まで冷間伸線加工を施
した後、再度400〜500℃で0.5〜1時間の熱処
理を施したものも作製した。熱処理後、再び伸線加工を
行い、所定の径で室温での引張試験及び導電率測定を行
った。
【0013】図1は、横軸にAg添加量(重量%)をと
り、縦軸に引張強さ(kgf/mm2)をとって、9
9.3%の減面率まで伸線加工した場合の、Ag添加量
と、引張強さ及び導電率との関係を示すグラフ図であ
る。図1中白抜き○、□は本発明にて規定した熱間加工
を行った後、冷間伸線加工した場合、黒●、■は従来の
ように熱間加工せずに冷間伸線とその途中の熱処理のみ
を施した場合である。本発明の場合は、従来法と比較す
ると、導電率が低下することなく、強度が大きく上昇し
ている。特に、Ag添加量が1〜7重量%という低Ag
含有量の場合にも引張強さが極めて高い。
【0014】また、図2はCu−5重量%Ag合金の伸
線加工の減面率に対する強度の変化を示したものであ
る。図中の曲線2は非熱処理材を示し、曲線3は減面率
70%まで冷間伸線加工し、その後450℃で1時間の
熱処理を行った後、再度伸線加工したもの、曲線1は本
実施例にて減面率50%まで600℃で熱間加工(スウ
ェージング)を行い、その後冷間伸線加工し、減面率7
0%において、450℃で1時間の熱処理を行った後、
再度伸線加工したものを示している。非熱処理材(曲線
2)及び低温側の熱処理のみを行ったもの(曲線3)と
比較して、熱間加工及び低温側の熱処理を併せて行った
もの(曲線1)は、最終製品において、強度が高いこと
がわかる。
【0015】また、下記表1はCu−3重量%Ag合金
の強度と導電率に及ぼす熱間加工及び熱処理の効果を示
したものである。熱間加工及び熱処理条件により強度及
び導電率が著しく変化し、熱間加工(スウェージング)
を行ってから低温側で熱処理を行ったものが導電率を低
下させずに強度を向上させていることがわかる。
【0016】
【表1】
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は鋳塊の熱
間加工(スウェージング)を570乃至680℃の温度
で行うことにより、低濃度のAgを添加したCu合金に
おいて、導電率を低下させることなく、強度を著しく向
上させることができる。その結果、比較的安価に高強度
及び高導電性を兼ね備えた線材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ag添加量と引張強さ及び導電率との関係を本
発明方法と従来方法との場合を比較して示すグラフ図で
ある。
【図2】減面率に対する強度の変化を、本発明方法、従
来方法及び熱処理なしの場合と比較して示すグラフ図で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−93398(JP,A) 特開 平6−93399(JP,A) 特開 平6−192801(JP,A) 特開 平6−192802(JP,A) 特公 昭51−34371(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22F 1/08 C22C 9/00 - 9/10

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1乃至10重量%のAgを含有し、残部
    がCu及び不可避的不純物からなる銅合金組成の鋳塊に
    570乃至680℃で熱間加工を施し、更に冷間加工を
    行い、この冷間加工の途中で、真空雰囲気又は不活性ガ
    ス雰囲気中で、400乃至550℃の温度で0.5乃至
    40時間にわたり熱処理を施すことを特徴とする高強度
    高導電率銅合金の製造方法。
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