JP3321759B2 - プラスチック成形機 - Google Patents

プラスチック成形機

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、樹脂材料をスクリュに
より溶融・混練して押出又は射出成形する押出機,吹込
成形機及び射出成形機等のプラスチック成形機に係り、
特に樹脂材料の挙動の把握に関する。
【0002】
【従来の技術】プラスチック成形機において、スクリュ
により溶融・混練される樹脂材料の挙動を把握すること
は、最適スクリュを設計するためや最適運転条件を決定
する上で重要である。
【0003】そこで、従来、次のような方法が行なわれ
てきた。 (1)溶融ゾーン部分に樹脂圧力計を取付けてスクリュ
溝内の樹脂圧力プロファイルを求め、これを表示する
(特公平2−58092号)。 (2)試験運転中の機械を急停止後、直ちにバレルを急
冷し、スクリュを抜き出して樹脂の状態を観察する。 (3)バレルの所定部分に透明窓を設け(可視化バレ
ル)、運転中に直接内部の状態を観察する。 (4)Tadmor等の溶融モデルに基づいてコンピュ
ータによるシミュレーションを行い、主としてスクリュ
溝内のソリッドベッド幅とメルトプール幅の変化パター
ンをみる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
従来方法は次のような欠点を有している。 (1)樹脂圧力計による方法は、後述するように樹脂材
料の溶融状態を的確に把握することが困難である。 (2)スクリュを抜き出して観察する方法は、連続的な
観察ができない。また、引き抜く過程で状態が変化す
る。 (3)可視化バレルによる方法は、透明窓が壊れ易いと
共に、透明窓の面積が大きいと挙動が変化し、特に生産
機には採用し難い。 (4)コンピュータシミュレーションによる方法は、入
力データの誤差やモデリング誤差に起因するシミュレー
ション誤差を生じる。
【0005】本発明は、最適スクリュ設計や最適運転条
件設定のための試験用として用い得ることはもちろん、
特に生産機において樹脂材料の挙動をより的確に把持し
て最適運転条件を得るのに好適なプラスチック成形機を
提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、スクリュを嵌入しているバレルの少なくと
も溶融ゾーン部分に取付けられた樹脂温度測定用の放射
温度計と、スクリュのフライト位置を検出するための位
置センサと、前記放射温度計及び位置センサの出力から
スクリュ溝内の樹脂温度プロファイルを求めてグラフィ
ック表示するための信号変換処理系及び表示器とを具備
するにある。
【0007】また、本発明は、スクリュを嵌入している
バレルのスクリュ元部から先端にわたる部分に適宜な間
隔で取付けられた樹脂温度測定用の複数の放射温度計
と、スクリュのフライト位置を検出するための位置セン
サと、前記放射温度計及び位置センサの出力からスクリ
ュ軸方向の樹脂温度分布を求めてグラフィック表示する
ための信号変換処理系及び表示器とを具備するにある。
【0008】なお、このスクリュ軸方向の樹脂温度分布
の表示と合わせて少なくとも1つの放射温度計に対応す
る部分のスクリュ溝内の樹脂温度プロファイルをも求め
てグラフィック表示するように構成することが好まし
い。
【0009】また、放射温度計と対をなしてバレルに樹
脂圧力計を取付け、前記樹脂温度のプロファイル又は/
及び分布と対をなしてスクリュ溝内の樹脂圧力プロファ
イル又は/及びスクリュ軸方向の樹脂圧力分布をもグラ
フィック表示するように構成することが好ましい。
【0010】さらにまた、本発明は、スクリュを嵌入し
ているバレルの少なくとも溶融ゾーン部分の全長にわた
る部分に適宜な間隔で取付けられた樹脂温度測定用の複
数の放射温度計と、スクリュのフライト位置を検出する
ための位置センサと、前記放射温度計及び位置センサ
出力からスクリュ溝内のソリッドベッド幅又は/及びメ
ルトプール幅を求め、かつこれらのスクリュ軸方向の分
布をグラフィック表示するための信号変換処理系及び表
示器とを具備するにある。
【0011】
【作用】放射温度計は、バレル及びその中の樹脂材料に
ほとんど悪影響を及ぼすことがない。そのため、生産機
にも取付けることができ、その取付け個数を適宜に多く
することが可能である。その上、放射温度計は、バレル
内の溶融・非溶融等の挙動を比較的的確に把握すること
ができる。
【0012】そこで、放射温度計で測定したスクリュ溝
内の樹脂温度プロファイルやスクリュ軸方向の樹脂温度
分布をグラフィック表示することにより、最適スクリュ
設計が可能となることはもちろん、生産機における最適
運転条件の設定をより的確に行うことが可能となる。
【0013】また、放射温度計と共に樹脂圧力計を取付
けて、スクリュ溝内の樹脂圧力プロファイルやスクリュ
軸方向の樹脂圧力分布をも合わせてグラフィック表示す
れば、樹脂材料の挙動をより的確に把握することができ
る。
【0014】さらにまた、スクリュ溝内のソリッドベッ
ド幅又は/及びメルトプール幅を求めて、それらのスク
リュ軸方向分布をグラフィック表示すれば、樹脂材料の
挙動をより一層的確に把握することができる。
【0015】
【実施例】以下本発明の実施例について図1ないし図6
を参照して説明する。図1において、10はバレルであ
り、スクリュ12を嵌入している。バレル10の先端に
はTダイ14が取付けられている。スクリュ12は、減
速機16を介してモータ18により適宜な回転数で回転
されるようになっている。
【0016】バレル10の外周には複数のヒータ20が
装着され、バレル10の元端寄りにはホッパ22が設け
られている。これらのヒータ20に対しては、外部冷却
用ファン24が適宜に設けられ、各ヒータ20の部分毎
にバレル10の温度を所定値に保つようになっている。
【0017】バレル10の元端側から先端までにわた
り、適宜な間隔で複数の放射温度計26−1〜6が取付
けられている。これらの放射温度計26−1〜6は、図
2に一部を拡大して示すように、先端をバレル10内に
向けて取付けられ、バレル10内の樹脂温度を測定する
ようになっている。
【0018】バレル10には、放射温度計26−1〜6
と対をなすように、これらと軸方向の同一位置上に、樹
脂圧力計28−1〜6が取付けられている(図2参
照)。
【0019】スクリュ12の元端には、スクリュフライ
ト位置表示部材12aが取付けられ、これと対をなして
位置センサ30が取付けられている。
【0020】放射温度計26−1〜6と樹脂圧力計28
−1〜6は、それぞれ温度変換器32−1〜6と圧力変
換器34−1〜6を介してマルチプレクサ36により選
択的にA/D変換器38を経てCPU40に接続される
ようになっている。マルチプレクサ36はCPU40か
らの切換信号によって操作される。また、位置センサ3
0は信号処理器42を介してCPU40に接続されてい
る。
【0021】CPUは、放射温度計26−1〜6及び樹
脂圧力計28−1〜6からの出力を、位置センサ30か
らのフライト位置データに同期させて取出し、内部メモ
リ44に記憶させ、また、CRTディスプレイ46やプ
リンタ48等の出力機器及びフロッピディスク50等の
外部メモリに直接又は内部メモリ44を介して出力する
ようになってる。
【0022】なお、放射温度計26−1〜6は、スクリ
ュ先端部の放射温度計26−6と対をなして設けた図示
しない熱電対温度計の測定値を真値として放射率を自動
設定するように構成することが好ましい。
【0023】図3(a)は、放射温度計26−2の出力
をフライト位置に対応させてプリンタ48に記録したも
のであり、多数回の出力を重ね書きしたものである。図
3(b)は、同様に樹脂圧力計28−2の出力を重ね書
きしたものである。なお、図3は、樹脂材料がポリプロ
ピレン(PP)であり、スクリュ回転数は80γpmの
場合で、スクリュ12は、図2に示すように、副フライ
ト付のものを使用した例を示している。図2において、
56はソリッド溝、58はメルト溝、60は主フライ
ト、62は副フライトである。
【0024】図3(a)(b)は、フィードゾーンから
メルトゾーンまでのうちの溶融ゾーン部分におけるスク
リュ溝内の樹脂温度プロファイルと樹脂圧力プロファイ
ルとをグラフィック表示したものである。
【0025】図3(a)から明らかなように、ソリッド
溝内の樹脂温度に対し、メルト溝内の樹脂温度は2℃程
度高く、溶融・非溶融の状態を明らかに判別することが
できる。
【0026】このことは、樹脂材料として低密度ポリエ
チレン(LDPE)を用い、副フライトのないスクリュ
による例を示す図4(a)からも明らかである。すなわ
ち、図4(a)の副フライトのないスクリュ溝中の同図
において右側の高温部分は、溶融部であり、これより左
側が非溶融部である。このように、スクリュ溝内の樹脂
温度プロファイルから非溶融部であるソリッドベッド幅
と溶融部であるメルトプール幅を検出することができ
る。
【0027】図3(b),図4(b)は、スクリュ溝内
の樹脂圧力プロファイルを示すものであるが、これらの
図から明らかなように、樹脂材料の溶融状態は判別し難
い。しかし、図3(a),図4(a)に示す樹脂温度プ
ロファイルと対をなして表示することにより、スクリュ
溝内の樹脂の状態をより的確に把握できる。
【0028】すなわち、図3(a)(b)に示す例で
は、ソリッド溝内のメルト溝側に非溶融の樹脂材料がよ
り密に存在し、その温度はわずかながらメルト溝側が高
くなっている。メルト溝内の溶融樹脂は圧力60Kgf/
cm2 が示しているように、比較的密に充満した状態であ
る。
【0029】また、図4(a)(b)に示す例では、ス
クリュ溝内の同図において右側ほど樹脂材料が密に充填
され、ソリッドベッド部においては右側ほど温度が高
く、右端側に溶融部が集中していることがわかる。
【0030】そこで、各放射温度計26−1〜6及び樹
脂圧力計28−1〜6の出力を図3及び図4に示したよ
うに、プリンタ48やCRTディスプレイ46に順次又
は同時に表示させることにより、スクリュ12の元部か
ら先端までのスクリュ溝内における樹脂材料の挙動をよ
り的確に把握することができる。
【0031】CPU40は、図3(a)(b)及び図4
(a)(b)に示したスクリュ溝内の樹脂温度及び樹脂
圧力のプロファイルとは別に、各放射温度計26−1〜
6及び樹脂圧力計28−1〜6の出力からこれらの各測
定個所におけるスクリュ溝(ソリッド溝とメルト溝との
区分も可能)内の、平均樹脂温度,平均樹脂圧力,最高
及び最低の樹脂温度及び樹脂圧力を算出する機能を有し
ている。
【0032】CPU40により算出された平均樹脂温度
等の2次データは、内部メモリ44に記憶され、また、
CRTディスプレイ46やプリンタ48等の出力機器及
びフロッピディスク50等の外部メモリに直接又は内部
メモリ44を介して出力するようになっている。
【0033】さらにCPU40は、上記平均樹脂温度,
平均樹脂圧力,最高及び最低の樹脂温度及び樹脂圧力の
スクリュ軸方向分布をCRTディスプレイ46やプリン
タ48等の出力機器にグラフィック表示するようになっ
ている。
【0034】図5(a)は、平均樹脂温度のスクリュ軸
方向分布を折線Taで、スクリュ12の概要形状に対応
させてグラフィック表示した例を示している。なお、図
5(a)の階段状の線Tbは、バレル10の設定温度を
グラフィック表示している。
【0035】図5(b)は、樹脂圧力の最高と最低のス
クリュ軸方向分布を折線Pmax,Pminで、スクリ
ュ12の概要形状に対応させてグラフィック表示した例
を示している。
【0036】また、CPU40は、図3(a)又は図4
(a)に示したスクリュ溝内の樹脂温度プロファイルか
ら樹脂のソリッドベッド幅X又は/及びメルトプール幅
Yを求めるようになっており、その値及びそのスクリュ
軸方向分布を、前述した各測定値及び算出値と同様に記
憶及びグラフィック表示するようになっている。
【0037】図6は、図2に示した主フライト60間の
全スクリュ溝幅Wに対するソリッドベッド幅Xの比率
(X/W)のスクリュ軸方向分布を、破線Aによりスク
リュ12の概要形状と共にグラフィック表示した例であ
る。なお、図6において、実線Bは、図2に示した副フ
ライト62によって区分されるソリッド溝56とメルト
溝58の幅の分布を示すものである。
【0038】図5(a)(b)及び図6に示した樹脂温
度、樹脂圧力及びソリッドベッド幅等のスクリュ軸方向
分布を知ることにより、バレル10内における樹脂材料
の挙動をより的確に把握することができる。
【0039】さらに、前述した測定データ及びそれに基
づく各種2次データをプラスチック成形機の成形上の評
価データ、例えば、押出量、Tダイ14部分の樹脂圧力
/同変動幅,Tダイ14部分の樹脂温度/同変動幅,な
らびに成形品のデータ等と同時に収録してデータベース
化することにより、スクリュ設計や運転条件設定に大い
に役立てることができる。
【0040】また、放射温度計26−1〜6によれば、
スクリュ12の主フライト56及び副フライト58の温
度を測定することができ、図3(a)及び図4(a)か
ら明らかなように、正常運転時においては、スクリュ頂
部の温度が通常、他より低く現われ、かじりを生じると
顕著に高くなるため、かじりを予知することも可能であ
る。
【0041】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、バレ
ル内の樹脂材料の挙動を的確に把握することができ、最
適スクリュ設計や最適運転条件設定に役立てることがで
きる。また、該挙動の把握を放射温度計、さらには樹脂
圧力計を用いて行うため、バレルやヒータ等のプラスチ
ック成形機側及び樹脂材料に及ぼす悪影響はほとんどな
い。このため、本発明は生産機に適用可能であり、種々
の樹脂材料や成形品に対する最適運転条件の設定を的確
に行うことができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す概要構成図である。
【図2】図1の一部拡大断面図である。
【図3】本発明におけるスクリュ溝内の樹脂温度プロフ
ァイルと樹脂圧力プロファイルのグラフィック表示の一
例を示す図である。
【図4】本発明におけるスクリュ溝内の樹脂温度プロフ
ァイルと樹脂圧力プロファイルのグラフィック表示の他
の例を示す図である。
【図5】本発明におけるスクリュ軸方向の樹脂温度分布
と樹脂圧力分布のグラフィック表示の一例を示す図であ
る。
【図6】本発明におけるスクリュ溝幅Wに対するソリッ
ドベッド幅Xのスクリュ軸方向の分布のグラフィック表
示の一例を示す図である。
【符号の説明】
10 バレル 12 スクリュ 20 ヒータ 24 外部冷却用ファン 26−1〜6 放射温度計 28−1〜6 樹脂圧力計 30 位置センサ 32−1〜6 温度変換器 34−1〜6 圧力変換器 36 マルチプレクサ 38 A/D変換器 40 CPU 42 信号処理器 44 内部メモリ 46 CRTディスプレイ 48 プリンタ 50 フロッピディスク 56 ソリッド溝 58 メルト溝 60 主フライト 62 副フライト
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−133032(JP,A) 特開 昭63−31731(JP,A) 特開 平1−267022(JP,A) 特開 平2−58092(JP,A) 特開 平3−2027(JP,A) 実開 平2−31716(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 47/00 - 47/96 B29C 45/00 - 45/84

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 樹脂材料をスクリュにより溶融・混練し
    て押出又は射出成形するプラスチック成形機において、
    前記スクリュを嵌入しているバレルの少なくとも溶融ゾ
    ーン部分に取付けられた樹脂温度測定用の放射温度計
    と、前記スクリュのフライト位置を検出するための位置
    センサと、前記放射温度計及び位置センサの出力からス
    クリュ溝内の樹脂温度プロファイルを求めてグラフィッ
    ク表示するための信号変換処理系及び表示器とを具備す
    ることを特徴とするプラスチック成形機。
  2. 【請求項2】 樹脂材料をスクリュにより溶融・混練し
    て押出又は射出成形するプラスチック成形機において、
    前記スクリュを嵌入しているバレルのスクリュ元部から
    先端にわたる部分に適宜な間隔で取付けられた樹脂温度
    測定用の複数の放射温度計と、前記スクリュのフライト
    位置を検出するための位置センサと、前記放射温度計
    び位置センサの出力からスクリュ軸方向の樹脂温度分布
    を求めてグラフィック表示するための信号変換処理系及
    び表示器とを具備することを特徴とするプラスチック成
    形機。
  3. 【請求項3】 信号変換処理系及び表示器が、少なくと
    も1つの放射温度計に対応する部分のスクリュ溝内の樹
    脂温度プロファイルをも求めてグラフィック表示するよ
    うに構成されていることを特徴とする請求項2のプラス
    チック成形機。
  4. 【請求項4】 前記バレルに放射温度計と対をなして樹
    脂圧力計を取付け、前記樹脂温度のプロファイル又は/
    及び分布と対をなしてスクリュ溝内の樹脂圧力プロファ
    イル又は/及びスクリュ軸方向の樹脂圧力分布をもグラ
    フィック表示するように構成されていることを特徴とす
    る請求項1,2又は3のプラスチック成形機。
  5. 【請求項5】 樹脂材料をスクリュにより溶融・混練し
    て押出又は射出成形するプラスチック成形機において、
    前記スクリュを嵌入しているバレルの少なくとも溶融ゾ
    ーン部分の全長にわたる部分に適宜な間隔で取付けられ
    た樹脂温度測定用の複数の放射温度計と、前記スクリュ
    のフライト位置を検出するための位置センサと、前記
    射温度計及び位置センサの出力からスクリュ溝内のソリ
    ッドベッド幅又は/及びメルトプール幅を求め、かつ該
    幅のスクリュ軸方向の分布をグラフィック表示するため
    の信号変換処理系及び表示器とを具備することを特徴と
    するプラスチック成形機。
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