JP3321015B2 - レーザー切断方法 - Google Patents

レーザー切断方法

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JP3321015B2
JP3321015B2 JP03576197A JP3576197A JP3321015B2 JP 3321015 B2 JP3321015 B2 JP 3321015B2 JP 03576197 A JP03576197 A JP 03576197A JP 3576197 A JP3576197 A JP 3576197A JP 3321015 B2 JP3321015 B2 JP 3321015B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、レーザービーム
の集光およびアシストガスの酸素(O2 )の供給による
金属板等の切断加工において、従来よりも板厚が厚い場
合において加工条件の切り換え部などで切断を再開する
部分の切断面の品質劣化および溶損を発生させないレー
ザー切断方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】特開平7−232289号公報は、レー
ザー切断における加工条件の切り換え部や角部の加工に
おいて、切断面品質の劣化および溶損の発生を防止する
レーザー切断方法を開示する。前記方法においては、加
工条件の切り換え部では、一度切断した軌跡を後退し、
加工条件を切り換えた後、冷却を実施するかまたは冷却
無しに加工を継続して行う。角部の加工では角部先端ま
で加工した後、先端部から低入熱の加工条件で加工を行
った後、再度加工条件を変更する。そして、ピアシング
直後一旦冷却を行ない、その後切断加工を開始する。
(以下、「先行技術」という)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】切断を再開する部分の
被切断材の形状が良好でない場合には、先行技術を用い
た再切断開始を行なっても切断面品質は良好にはならな
い。従って、先行技術の方法により良好な品質を保てる
のは、板厚が薄い{t(板厚)<16mm程度}場合に
限定されるものであろうと思われる。即ち、板厚が薄い
場合においては、切断加工を途中で一旦停止してもその
停止の際に切断面品質に影響を及ぼさない。例えば、t
<16mmの範囲では、まず品質に影響がないことは実
証済みである。
【0004】しかしながら、板厚が厚い場合において
は、切断加工を途中で一旦停止すると、その停止の際の
切断面品質が悪くなる。例えば、t≧22mmの範囲に
おいては、特に切断面下部に切断面に段差が発生するい
わゆるノッチが発生する。
【0005】このようなことから、先行技術において
は、切断加工を途中で一旦停止する際に切断面品質が悪
くならないような切断方法を採らない限り、特に板厚が
厚い場合には、最終的な切断面品質は良好にならない。
【0006】参考としてレーザー切断に関する従来技術
の改良の経過を年代順にまとめると、表1のごとくであ
る。
【0007】
【表1】
【0008】表1に示すように、1994年頃以降で
は、出力6000Wで、切断可能板厚(SS材)は、t
<22〜28mmが限界であった。次に、なぜ、切断加
工を一旦停止したときに、切断面品質が悪くなり、切断
面下部にノッチが発生するのかについて検討する。表2
に、切断加工中および加工停止時の、切断速度、レーザ
ー出力、アシストガスのO2 の供給量およびエネルギー
バランスを比較して示す。
【0009】
【表2】
【0010】表2に示すように、切断加工中は、切断速
度、レーザー出力、アシストガス供給量およびエネルギ
ーバランスがすべて一定である。これに対して、切断加
工を停止する際のノズル減速中は、投入する熱量は一定
のため、実際の被切断材の単位切断長さ当たりに投入さ
れるエネルギーは増大し、エネルギーバランスが崩れる
(切断不良)。その結果ノッチが発生する。
【0011】上記を解決するには、減速中において投入
エネルギー(レーザー出力およびアシストガス供給量)
を減速に見合った量で減らすようにコントロールすれば
良い。
【0012】しかしながら、前記ノズルの減速は、50
msec(1/20秒)程度という極めて短時間で行わ
れるため、このような短時間内でレーザー出力およびア
シストガス供給量を正確にコントロールすることは不可
能であるといった問題がある。
【0013】従って、この発明の目的は、従来よりも板
厚が厚い場合の切断加工においても加工条件の切り換え
部などで切断を再開する部分の切断面の良好な品質を確
保すことができるレーザー切断方法を提供することにあ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、
被切断材上にレーザービームを集光させるとともに前記
レーザービームを集光した場所にアシストガスを供給
し、レーザーのエネルギーを利用して前記被切断材を切
断加工するレーザー切断方法において、前記被切断材の
A地点からB地点までを切断加工する工程において、ノ
ズルを所定速度で移動させながら前記レーザービームを
照射しおよび前記アシストガスを供給して前記A地点か
ら前記B地点まで前記被切断材を切断加工し、次いで、
前記ノズルが前記B地点に到達した時に、前記ノズルの
前記被切断材に対する相対速度を切断加工中の速度に保
ったまま前記レーザービームの照射を停止して前記被切
断材の切断加工を一旦停止し、次いで前記B地点を通過
した前記ノズルの移動を前記A地点から前記B地点まで
の切断加工によってできた軌跡の延長線上をそのまま所
定距離移動させた後C地点で停止し、次いで前記ノズル
を前記B地点に戻し、前記B地点から所定の切断形状に
従って前記被切断材の切断加工を再び開始することに特
徴を有するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】次に、この発明の実施の形態を図
面を参照しながら説明する。図1はこの発明の一実施態
様に係るレーザー切断機の全体構成を示す系統図、図2
はこの発明の一実施態様に係るレーザー切断機の加工ヘ
ッド部を詳細に示す模式図である。
【0016】図1、図2に示すように、レーザー切断機
1の機構自体は、従来のものと特に相違無く、レーザー
発振装置3、レーザーガス励起用電源部2、加工ヘッド
9を有する加工装置本体4および制御装置5を備えてい
る。レーザーガス励起用電源部2はレーザー発振装置3
に接続され、更に、レーザー発振装置3にはレーザーガ
ス供給装置7が接続されている。更に、レーザー発振装
置3は、加工装置本体4に接続されている。電源部2、
レーザー発振装置3および加工装置本体4の各々は制御
装置5に接続されている。電源部2および加工装置本体
4、更には制御装置5には冷却水供給装置6が接続さ
れ、それぞれを冷却するようになっている。加工装置本
体4には、アシストガス(O2 )供給装置8が接続され
ている。
【0017】レーザー発振装置3としては、CO2 レー
ザー発振装置が使用される。一般的に切断加工および溶
接加工等には、CO2 レーザーまたはYAGレーザーの
2種類が使用されるが、鋼板の切断加工には、発振効率
がより優れるCO2 レーザーを使用すべきである。鋼板
切断用CO2 レーザー発振装置としては、現状では、6
000Wが最大出力である。レーザーガス供給装置7か
ら供給されるレーザーガスは、例えば、He:40%、
N:55%、CO2 :5%の成分から組成される。
【0018】加工ヘッド9は、レーザビーム伝送装置を
備え、集合レンズ12によって伝送されたレーザービー
ム11をビーム集光部10に集光し、一方、アシストガ
ス供給装置8から供給されるアシストガス(O2 )13
はノズル14を介して前記ビーム集光部10にアシスト
ガス13を供給するようになっている。
【0019】加工装置本体4は、被切断材が平板の場合
には、3軸制御(X軸左右、Y軸前後、Z軸上下)、そ
して、被切断材が立体の場合には、多軸制御を行うよう
になっている。
【0020】制御装置5は、加工装置本体4(加工ヘッ
ド9)の動作、アシストガス13の吐出圧およびタイミ
ング、ならびに、レーザービーム11の発振条件(出
力、デューティーおよび周波数)および発振タイミング
をNC制御するようになっている。
【0021】このように構成されたレーザー切断機1
は、加工ヘッド9の光端に備えたノズル14を移動しな
がら、被切断材15上にレーザービーム11を集光させ
るとともにそのビーム集光部10にノズル14からアシ
ストガス13を吐出し、レーザーのエネルギーおよび被
切断材15との酸化反応によって得られるエネルギーを
利用して被切断材15を切断加工するようになってい
る。
【0022】本発明方法により鋼板の切断加工を実施す
ることにより、切断加工開始位置(A地点)から切断加
工一旦停止位置(B地点)まで、最良のエネルギーバラ
ンスによって切断加工が可能となり、切断加工一旦停止
位置(B地点)においてノッチが発生せず良好な切断面
品質を得ることができる次に、レーザー切断機1による
レーザー切断方法を説明する。
【0023】切断加工開始位置をA地点、切断加工一旦
停止位置をB地点とする。A地点からB地点までを切断
加工する工程において、A地点からB地点までノズル1
4を所定速度で移動させながらレーザービーム11をビ
ーム集光部10に照射するとともにアシストガス13を
供給(吐出)してA地点からB地点まで被切断材15を
切断加工する。次いで、ノズル14がB地点に到達した
時に、レーザービーム11の照射を停止して切断加工を
一旦停止する。このとき、ノズル14は停止しないで被
切断材に対する相対速度を切断加工中の速度に保ったま
まB地点を通過する。また、このとき、アシストガス1
3の供給は止めない。ノズル14は、A地点からB地点
までの切断加工によってできた軌跡の延長線上をそのま
ま移動させ、所定距離移動したC地点で停止する。以上
のように、本発明方法においては、切断加工一旦停止位
置のB地点においてノズル14がそのままの速度を保ち
ながら停止しないで通過するので、先行技術のような減
速による切断面品質の劣化等の問題が起こらない。
【0024】一旦切断加工を停止後、更に、作業を継続
する場合には、上記の停止位置C地点からノズル14を
B地点に戻し、再びB地点から所定の切断形状を、上記
と同様の方法によって切断加工を実施すればよい。
【0025】
【実施例】次に、この発明の実施例を説明する。本発明
の方法によって、板厚(t)が28mmの鋼板(SS
材)に対してレーザー切断加工を実施した。レーザービ
ーム発振装置3としては、最大出力6000WのCO2
レーザー発振装置を使用した。レーザーガスの成分組成
は、He:40%、N:55%、CO2 :5%であっ
た。
【0026】図3は、本実施例の切断加工工程を示す平
面図であり、加工ヘッドの切断加工一旦停止位置(B地
点)近辺における動作を示している。切断方向は、図3
中の矢印に示すように左側から右側に向けた方向であ
る。18は切断溝(切断によってできた溝)、10はノ
ズルの位置を示す。加工手順、即ち、加工速度(被切断
材に対する加工ヘッドの相対速度)、レーザービーム照
射または照射停止、ならびに、アシストガス供給または
供給停止(表3は「オン−オフ」で表示)は、図3およ
び表3に示す通りであった。
【0027】
【表3】
【0028】図3(1)は、切断加工を一旦中断する以
前の切断加工実施状態を示す。加工ヘッド(レーザービ
ーム集光部)を所定速度で移動しながら、レーザービー
ム照射オンおよびアシストガス供給オンとし切断加工を
実施した{表3中の(1)参照}。
【0029】図3(2)では、ノズル14が切断加工一
旦停止位置(B地点)に到達した時を示している。ここ
で、ノズル14の移動速度はそのままでレーザービーム
照射をオフとした。アシストガスはオンのままである
{表3中の(2)参照}。
【0030】図3(3)は、ノズル14がB地点を通過
した後、所定位置C地点で停止した状態を示している。
レーザービームの照射はB地点で停止しており、B地点
以降は切断されていない。アシストガスはC地点で供給
オフとする。{表3中の(3)参照}。
【0031】図4は、本実施例により切断加工を実施し
た場合の切断面を示す図である。図4において、16は
切断面を示す。板厚(t)が28mmの鋼板を切断し、
一旦切断加工を停止するB地点でレーザービームの照射
をオフとすることにより、図4に示すように、B地点に
おいてはノッチが無く良好な切断面品質が得られること
がわかる。
【0032】比較例として、実施例と同じ最大出力およ
びレーザーガスにより、実施例と同じ板厚の鋼板に対し
て、B地点でノズルの移動を一旦停止し、同時にレーザ
ービーム照射およびアシストガス供給もオフする従来の
切断方法によりレーザー切断を実施した。図5は、従来
の切断方法により切断を実施した鋼板の切断面を示す図
である。図5に示すように、一旦停止位置Bにおいて、
切断面品質上問題のある2〜3mmの凹みのノッチ17
ができ、切断面の大きな乱れが発生した。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれ
ば、レーザービームによる切断加工中に一旦切断を停止
し、再び、そこから切断を開始するレーザー切断加工に
おいて、一旦停止地点におけるノッチの発生等の切断面
の品質劣化および溶損を発生させずに板厚が比較的厚い
{t(板厚)≧16mm程度}以上においても良好な切
断面品質を得ることができ、かくして、工業上有用な効
果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施態様に係るレーザー切断機の
全体構成を示す系統図である。
【図2】この発明の一実施態様に係るレーザー切断機の
加工ヘッド部を詳細に示す模式図である。
【図3】本発明実施例の切断加工工程を示す平面図であ
る。
【図4】本発明実施例により切断加工を実施した場合の
切断面を示す図である。
【図5】比較例により切断を実施した場合の切断面を示
す図である。
【符号の説明】
1 レーザー切断機 2 レーザーガス励起用電源部 3 レーザー発振装置 4 加工装置本体 5 制御装置(NC) 6 冷却水供給装置 7 レーザーガス供給装置 8 アシストガス供給装置 9 加工ヘッド 10 レーザービーム集光部 11 レーザービーム 12 ビーム集合レンズ 13 アシストガス(O2 ) 14 ノズル 15 被切断材 16 切断面 17 ノッチ 18 切断溝(切断によってできた溝)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中山 正則 富山県東砺波郡福野町100番地 株式会 社日平トヤマ富山工場内 (56)参考文献 特開 平8−206858(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 26/00 - 26/38

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被切断材上にレーザービームを集光させ
    るとともに前記レーザービームを集光した場所にアシス
    トガスを供給し、レーザーのエネルギーを利用して前記
    被切断材を切断加工するレーザー切断方法において、 前記被切断材のA地点からB地点までを切断加工する工
    程において、ノズルを所定速度で移動させながら前記レ
    ーザービームを照射しおよび前記アシストガスを供給し
    て前記A地点から前記B地点まで前記被切断材を切断加
    工し、次いで、前記ノズルが前記B地点に到達した時
    に、前記ノズルの前記被切断材に対する相対速度を切断
    加工中の速度に保ったまま前記レーザービームの照射を
    停止して前記被切断材の切断加工を一旦停止し、次いで
    前記B地点を通過した前記ノズルの移動を前記A地点か
    ら前記B地点までの切断加工によってできた軌跡の延長
    線上をそのまま所定距離移動させた後C地点で停止し、
    次いで前記ノズルを前記B地点に戻し、前記B地点から
    所定の切断形状に従って前記被切断材の切断加工を再び
    開始することを特徴とするレーザー切断方法。
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