JP3319796B2 - 表面燃焼バーナ - Google Patents

表面燃焼バーナ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は表面燃焼バーナに関し、
特に、高負荷希釈燃焼時における火炎のリフト現象の発
生を防止すると同時に燃焼共鳴音をも抑制することによ
り、広範囲にわたり安定した燃焼を可能とした表面燃焼
バーナに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、予混合ガスが拡散するに充分な表
裏連通した細孔を有する多孔質部材を有し、その裏面に
予混合ガスが供給され、該予混合ガスが拡散しつつ多孔
質部材を通過してその前面に達し、その前面近傍で着火
され燃焼するようになっている表面燃焼バーナは知られ
ている。この種の表面燃焼バーナは、多孔質部材を加熱
して赤熱させ、エネルギの一部が輻射熱として放出され
るものであり、かつ通常セラミック等の多孔質部材の熱
伝導率は小さく表面の燃焼温度を相当に高くしても裏面
の温度はあまり上昇しないことから逆火の発生を防止で
き、熱効率の高いまた安全なバーナとして家庭用燃焼機
器に限らず広い分野で用いられている。
【0003】表面燃焼バーナの基本的な構成の一例を図
7を参照しつつ説明するに、図7に示す表面燃焼バーナ
70において、方形状あるいは円形状の平面多孔質部材
71が、耐熱性パッキング72を介して筒状のケーシン
グ73の前方側に装着されている。ケーシング73の内
部にはスペーサ75が配置されており、該スペーサ75
を介して多孔質部材71が裏面板によりケーシング73
に一体に固定される。裏面板の中央には円筒管76が装
着されており、円筒管76は図示しない適宜の配管を介
して予混合ガス供給源に接続している。
【0004】図示しないガス源からの予混合ガスAは円
筒管76から圧入される。圧入された予混合ガスAは多
孔質部材71の裏面からその連続する多孔内を通過して
前面に達し、前面において着火され燃焼する。その燃焼
により平面多孔質部材71の前面は赤熱化し輻射熱を放
出する。このような表面燃焼バーナにおいて、多孔質部
材71は、多孔質セラミックスあるいは鉄、クロム、ケ
イ素、アルミニウム、イットリウム等の合金からなる長
繊維の焼結体であって1200℃以上の耐熱性をもつい
わゆる金属繊維マット等が用いられる。
【0005】上記のような表面燃焼バーナは、熱の有効
利用及び安全性の観点からきわめて有効なものである。
しかしながら、空気比を高くして高負荷希釈燃焼を行お
うとすると、火炎のリフト現象が生じ不安定燃焼となる
ことから一定限度を越えた高負荷希釈燃焼を行うことが
できず、燃焼負荷範囲に自ずと制限が課せられていた。
【0006】そのための解決手段として、例えは実開昭
62−63524号公報に開示されるように多孔質部材
2 の表面に対して垂直に多数の細孔b2 を設けること
により該細孔部分以外の燃焼面での混合ガスの流速を相
対的に小さくし、その部分に高負荷時での保炎機能を持
たせることによりリフト現象の発現を防止するようにし
たもの(図6参照)が知られている。
【0007】また、本出願人はさらに改良した多孔質部
材として、図5に示すように多孔質部材71の周辺域を
除く部分72の表面に略垂直に多数の径の異なる数種の
貫通孔73、74を一定のパターンで透設するようにし
たものを開発しすでに提案している(実願平4−336
73号)。上記のものにあっては、多孔質部材に径の異
なる数種の貫通孔を一定のパターンにしたがって透設す
るという比較的簡単な構造により、高負荷希釈燃焼時に
燃焼面上での予混合ガスの噴出流速を部分的に変化させ
ることが可能となり、それにより燃焼負荷が変わった場
合であっても燃焼面のいずれかの部分が安定した燃焼域
を形成することができ、その安定した燃焼域によって周
囲の不安定な燃焼部分が安定化させられることができる
ことから、高負荷希釈燃焼を広い負荷範囲で安定して行
わせることを可能とした。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本出願人は表面燃焼バ
ーナの高負荷希釈燃焼についてさらに実験を行う過程に
おいて、多数の貫通孔を多孔質部材に形成した場合、一
定の高負荷希釈燃焼を安定した状態で継続させることが
可能となるもののその貫通孔を形成する作業が困難なこ
と、また高負荷希釈燃焼時にかなり強い燃焼共鳴音が発
生することを知覚した。
【0009】本発明の目的は、表面燃焼バーナに用いる
多孔質部材のもつ上記のような不都合を解決し一層の高
負荷希釈燃焼を可能とした表面燃焼バーナを得ることを
を目的としており、より具体的には、高負荷希釈燃焼時
において燃焼共鳴音の発生を抑制して静かな燃焼を行う
ことのできる表面燃焼バーナを得ること、及び構成する
ことがきわめて容易な高負荷希釈燃焼可能な多孔質部材
を持つ表面燃焼バーナを得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決しかつ
目的を達成するために、本発明は、その一つの態様とし
て、燃焼面を構成する多孔質部材と、該多孔質部材の裏
面側に形成される混合ガス室と、該混合ガス室を包囲す
るケーシングとを有する表面燃焼バーナにおいて、該多
孔質部材は複数本の細長い間隙を有していることを特徴
とする表面燃焼バーナを開示する。
【0011】本発明は、さらに他の態様として、燃焼面
を構成する多孔質部材と、該多孔質部材の裏面側に形成
される混合ガス室と、該混合ガス室を包囲するケーシン
グとを有する表面燃焼バーナにおいて、該多孔質部材は
複数の多孔質単位板を所定の間隔を保持して配列して構
成されていることを特徴とする表面燃焼バーナをも開示
する。
【0012】上記各態様の表面燃焼バーナにおいて、前
記多孔質部材の周辺部に所定幅の多孔質部材をさらに積
層することは好ましい態様であり、それにより高負荷希
釈燃焼時での保炎性を一層高めることが可能となり、燃
焼負荷をさらに高めることができる。また、前記間隙の
幅は0.5mm〜2mm程度が好ましいことが実験的に確認
されている。
【0013】さらに、間隙の形状は任意であるが、多孔
質部材の全幅にわたる細長い長方形の間隙として形成す
ることは構成を簡単なものとする観点から好ましい。多
孔質部材に不連続な長方形状の間隙を形成するようにし
てもよくその場合には多孔質部材を強度的に安定なもの
とすることができる。上記多孔質部材の素材としては、
多孔質セラミックス材、又は鉄、クロム、ケイ素、アル
ミニウム、イットリウム等の合金からなる長繊維の焼結
体であることが好適であるが、それに限ることなく従来
知られたものを適宜使用しうる。
【0014】また、多孔質部材の形状を除くその他のバ
ーナの構造は例えば図7に示したような従来知られた表
面燃焼バーナにおいて用いられる構造をそのまま用いる
ことができる。
【0015】
【作 用】本発明の表面燃焼バーナにおいては、多孔質
部材に細長い長方形の間隙を形成したことにより間隙か
らの火炎は長くかつ安定したものとなる。それにより燃
焼共鳴音の発生は大幅に抑制される。さらに多孔質部材
そのものの燃焼面は前記間隙からの火炎に対する保炎機
能を果たすことから高負荷希釈燃焼時における火炎リフ
ト現象の発生も抑制される。また、多孔質部材の4周縁
をさらに他の多孔質材料で積層することによりその部分
の予混合ガスに対する抵抗(圧損)は一層高くなる。そ
れにより4周縁の積層部分はさらに高負荷希釈燃焼時に
おいての火炎保持機能を果たすことから燃焼面での火炎
リフト現象の発生は一層抑制される。
【0016】
【実施例】以下、実施例に基づき本発明をより詳細に説
明する。なお、上記したように本発明において多孔質部
材の構成を除いてバーナの他の構成は例えば図7に示し
た従来知られたものをそのまま用いることができるの
で、以下の説明においては多孔質部材の構成のみを説明
し、ケーシング等のバーナの他の構成は省略する。
【0017】図1は本発明による多孔質部材の第1の実
施例を示す斜視図である。この多孔質部材1は基本的に
直方体形状に裁断された多孔質単位板11・・を一定の
間隙12・・を保って複数個配列し、さらにその4周縁
に多孔質単位板11とほぼ同じ幅であるがそれより薄く
形成された第2の多孔質単位板13・・を配置して、図
示しないネジ止め手段により圧着係止している。
【0018】このように形成した多孔質部材1を図7に
示すようにケーシング73に対して従来の手法により装
着することにより表面燃焼バーナが組み立てられる。こ
の多孔質部材1の予混合ガス通過抵抗(圧損)は4周縁
においては多孔質材料が2重に積層されているので最も
高く、次いでそれ以外の多孔質単位板11部分、間隙部
分12と順となる。低負荷燃焼時には多孔質材料が2重
に積層された4周縁部分では予混合ガスの通過はほとん
どなく、予混合ガスは間隙12及び多孔質単位板11の
単層部分を通過して表面で燃焼する。その際に、前記多
孔質単位板11の単層部分が間隙12を通過する予混合
ガスに対する保炎機能を奏することから安定した燃焼が
維持される。
【0019】高負荷希釈燃焼時には多孔質材料が2重と
なった4周縁部分をも予混合ガスが通過する。しかしそ
の通過量は多孔質単位板11の単層部分を通過する量よ
りも少なくリフトの発生は生じない。そのためにその部
分の火炎が前記単層部分及び間隙部分12を通過する予
混合ガスに対する保炎機能として作用し、燃焼面全体に
火炎リフトが発生するのをかなりの高負荷時まで抑制す
ることが可能となる。
【0020】また、間隙12はその形状が細長い形状を
なしていることから長い安定した火炎が形成され、従来
の複数の細孔に短い火炎が多数形成される場合と比較し
て燃焼共鳴音の発生が抑制されまた低減される。図2は
他の実施例の多孔質部材2を示す斜視図である。この実
施例においては一枚の多孔質材料21に対して図におい
て左右方向から一定の幅を持つ間隙22・・が中央部分
を除いて形成されると共に、第1の実施例と同様その4
周縁には第2の多孔質単位板13・・を適宜の手段によ
り接合している。この実施例による多孔質部材2の燃焼
時における作用は第1の実施例のものとほぼ同様である
が、主燃焼面をなす多孔質材料21が一枚の材料により
構成されかつ中央部において連続していることから機械
的強度が向上する利点がある。
【0021】第1及び第2の実施例いずれの場合であっ
ても、多孔質部材に前記従来例のように細孔を多数形成
して高負荷時でのリフト発生を抑制するものと比較し
て、細長い間隙を形成するという簡単な構成によりその
目的を達成することが可能となり、さらに、従来の多孔
質部材において主に生じがちであった外周縁からのリフ
トの発生を多孔質材料を2重に積層するという簡単な構
成により抑制することが可能となる。それにより、燃焼
共鳴音の抑制とともに表面燃焼バーナとして一層安定し
た高負荷希釈燃焼を行うことが可能となる。
【0022】なお、上記の実施例は多孔質部材の4周縁
を薄く形成した第2の多孔質単位板13・・により2重
に積層したものを示したが、この第2の多孔質単位板1
3・・は必ずしも必須の構成ではない。すなわち特に図
示しないが、多孔質単位板11を一定の間隙を保つよう
にして適宜の手段で複数個接合したもの、あるいは図2
に示すものから第2の多孔質単位板13・・を除去した
ものであっても、従来の多孔質部材を持つ表面燃焼バー
ナと比較して燃焼共鳴音を抑制しつつ火炎リフトの発生
を防止して高負荷希釈燃焼を行うことが可能であり、構
成はさらに簡素化される。
【0023】また、第2の多孔質単位板を用いる場合に
それは主燃焼面を構成する多孔質材料と同一の材料であ
ってもよく異なった材料でもよい。さらに、第2の多孔
質単位板の厚さも任意であり、厚さを変更することによ
り赤熱燃焼範囲を変化させることができる。用途におい
て求められる負荷に応じて1〜4mm程度のものを適宜選
択して用いることができる。また、多孔質部材との積層
手段も任意であり焼結などにより一体に接合することも
できる。
【0024】間隙12あるいは22の形状及び形成方向
も図示のように多孔質材料の両側片に端部を開放したも
のに限るものでなく、図3あるいは図4に示すような両
端を閉塞した細長い開孔状の間隙12’、22’でも同
じ効果を奏することができる。さらに、間隙幅及びピッ
チも一定である必要はなく同一の多孔質部材において異
なった寸法の幅及びピッチの間隙を持つようにしてもよ
い。
【0025】次に、実際の例に基づき本発明による表面
燃焼バーナの多孔質部材にいて説明する。本発明による
多孔質部材を用いた場合と従来例による多孔質部材を用
いた場合の実際の燃焼試験結果を表1に示す。実験にお
いては、図7に示した形式の表面燃焼バーナであって燃
焼面が円形のバーナを用い、多孔質部材として、(a) 図
1に示した形式のもの(本発明のもの)、及び(b) 多孔
質部材の全てに均一な割合で貫通孔を形成したもの、の
2者について、同一の予混合ガスを用い、異なった空気
比でのリフトが発生する限界燃焼負荷を測定した。
【0026】なお、用いた多孔質部材は、共に鉄、クロ
ム、ケイ素、アルミニウム、イットリウムにより作製し
た厚さ2mmのもので、有効表面積は144cm2とした。
(a)において、間隙(t)は1.2mm幅としそのピッチ
(p)を12mmとした。また多孔質部材の周囲に10mm
幅で同一の部材を積層した。(b)は同じ多孔質材料に直
径(D)0.8mmの孔を平均2mmピッチ(P)で多数形成
した。なお、空気比は共に用いたバーナの多孔質部材の
中心部で測定した値である。
【0027】
【表1】
【0028】表1から、本発明による多孔質部材を用い
た平面燃焼バーナは、同様な空気比での燃焼状態におい
て、従来例のものと比べ高い燃焼負荷状態まで安定した
燃焼状態を維持できることが分かる。すなわち、本発明
による多孔質部材を用いた表面燃焼バーナにおいては、
従来のものと同じ大きさのバーナであっても、より高い
平面高負荷希釈燃焼を行うことが可能となり、燃焼負荷
範囲の増大化に加え、結果として低Nox 燃焼及び燃焼
室のコンパクト化という効果ももたらされる。
【0029】
【発明の効果】本発明による表面燃焼バーナは上記の構
成を有するので、構成が簡単でありながら火炎リフト発
生を抑制することが可能となり安定した高負荷希釈燃焼
を行うことができ、また、燃焼共鳴音の発生も大きく要
請される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 表面燃焼バーナの多孔質部材の一実施例を示
す斜視図。
【図2】 多孔質部材の他の実施例を示す斜視図。
【図3】 多孔質部材のさらに他の実施例を示す斜視
図。
【図4】 多孔質部材のさらに他の実施例を示す斜視
図。
【図5】 多孔質部材の先行例を示す図。
【図6】 多孔質部材の他の先行例を示す図。
【図7】 表面燃焼バーナを示す断面図。
【符号の説明】
1、2…多孔質部材、11…多孔質単位板、12…間
隙、13…第2の多孔質単位板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F23D 14/14 - 14/18

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 燃焼面を構成する多孔質部材と、該多孔
    質部材の裏面側に形成される混合ガス室と、該混合ガス
    室を包囲するケーシングとを有する表面燃焼バーナにお
    いて、該多孔質部材は複数本の細長い間隙を有している
    ことを特徴とする表面燃焼バーナ。
  2. 【請求項2】 燃焼面を構成する多孔質部材と、該多孔
    質部材の裏面側に形成される混合ガス室と、該混合ガス
    室を包囲するケーシングとを有する表面燃焼バーナにお
    いて、該多孔質部材は複数の多孔質単位板を所定の間隔
    を保持して配列して構成されていることを特徴とする表
    面燃焼バーナ。
  3. 【請求項3】 多孔質部材の周辺部に所定幅の多孔質部
    材が積層されていることを特徴とする、請求項1又は2
    記載の表面燃焼バーナ。
  4. 【請求項4】 前記間隙が0.5mm〜2mmであることを
    特徴とする、請求項1ないし3いずれか記載の表面燃焼
    バーナ。
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