JP3313391B2 - 果肉様ゼリー及びその製造方法 - Google Patents

果肉様ゼリー及びその製造方法

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史典 川端
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株式会社富士商事
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、果肉汁を含有し果肉状
組織を有する果肉様ゼリー及びその製造方法に関するも
のであり、特にキトサンを用いた果肉様ゼリー及びその
製造方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、様々な方法で果肉に類似したゼリ
ーを製造することが行われている。例えば、果肉汁を含
むフルーツゼリーを凍結し、ゼリー中の氷結晶を増大さ
せた後、解凍することにより離水を増加せしめて組織を
粗くして果肉感を出す方法が凍結解凍法として知られて
いる。
【0003】あるいは、ペクチンまたはアルギン酸ナト
リウムとカルシウム塩によりゲルを形成し、それを粉砕
してフルーツゼリー製造時に混ぜ込み、食感の違いによ
り果肉感を出すという方法も知られている。
【0004】しかしながら、前記方法のうち、凍結解凍
法では、大掛かりな設備が必要であり、設備投資の増加
やこれに伴う製造コストの上昇が問題となる。一方、ペ
クチンまたはアルギン酸ナトリウムとカルシウム塩によ
り形成されるゲルを混ぜ込む方法では、作業工程が煩雑
なものとなる他、食感上の問題が生ずる。
【0005】そこで、さらに従来、例えば特開平3−1
30043号公報に記載されるように、果肉様ゼリーの
製造にキトサンを使用することが検討されている。すな
わち、キトサン溶液とリン酸またはリン酸塩(リン酸ナ
トリウム)溶液とを混合し、ゲル化させて得られる綿状
ゲル化物質と、ゼリーミックスとを混合して果肉やフル
ーツプレパレーションを用いることなく味覚及び視覚上
嗜好に富んだ果肉様ゼリーを提供することが提案されて
いる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記特
開平3−130043号公報に記載される技術において
も、果肉様ゼリーを製造する際には、綿状ゲル化物質を
細分化し、これをゲル化剤含有ゼリーミックスに混合分
散させるようにしており、前記ペクチンまたはアルギン
酸ナトリウムとカルシウム塩により形成されるゲルを混
ぜ込む方法と同様、作業工程が煩雑なものとなり、食感
も十分なものと言えない。
【0007】さらに、前記キトサンを使用した場合、キ
トサン由来による収斂味や苦みが重大な問題となること
が判明した。前記収斂味や苦みが発現すると、食品とし
ては不適当である。キトサンの収斂味、苦みを抑える方
法としては、食品中の蛋白質濃度やpH等を調整するこ
とが考えられる。例えば、食品中の蛋白質濃度が高いほ
ど、またpHが中性に近づくほど、収斂味や苦みが弱く
なる傾向が見られる。
【0008】しかしながら、フルーツゼリーの場合、蛋
白質濃度は低く酸性が強いため、この方法では不可能で
ある。
【0009】そこで本発明は、かかる従来の実情に鑑み
て提案されたものであって、簡単な作業工程で製造する
ことができ、食感にも優れた果肉様ゼリー及びその製造
方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、キ
トサン由来の収斂味や苦みを抑え、味覚の点でも優れた
果肉様ゼリー及びその製造方法を提供することを目的と
する。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前述の目
的を達成せんものと様々な検討を行った。その結果、キ
トサン含有果肉汁溶液と増粘多糖類含有ゲル化剤溶液が
反応することにより繊維状の組織が発現し果肉と類似す
る食感を呈すること、さらにはカルシウム塩あるいは硫
酸塩を添加することによりキトサン由来の収斂味、苦み
の発現が抑えられることを見出すに至った。
【0011】本発明は、かかる知見に基づいて完成され
たものであって、キトサンとカルシウム塩及び/又は硫
酸塩と果肉汁溶液を含むゲル化剤溶液がゲル化され、果
肉状組織が形成されてなることを特徴とするものであ
る。さらに、本発明の製造方法は、キトサンを予め溶解
してなるキトサン溶液とカルシウム塩及び/又は硫酸塩
と果肉汁溶液とを混合して加熱し、これをゲル化剤溶液
に加熱下に加えて均一に混合した後、冷却することによ
りゲル化せしめ果肉状組織を形成することを特徴とする
ものである。
【0012】本発明の果肉様ゼリーは、キトサン、カル
シウム塩及び/又は硫酸塩、果肉汁、ゲル化剤よりな
り、これら成分が均一に混合され、全体がゲル化され果
肉状組織を有するものである。本発明の果肉様ゼリーで
は、キトサンにゲル化物質が吸着して生成する繊維状物
質が、キトサンと反応した残りのゲル化物質のゲル中に
形成され、果肉に非常に類似した組織感を有する。
【0013】ここで、キトサンは、水に不溶であり、ク
エン酸、リンゴ酸等の有機酸あるいはその水溶液を加え
ることではじめて溶解する。そこで、キトサンを有機酸
存在下で溶解する。この場合、キトサン粉末と有機酸粉
末を混合して水または湯等に溶解することができる。こ
のとき、溶解液温が高ければ溶解速度はより速くなる。
【0014】そして、これに果肉汁、カルシウム塩(ま
たは硫酸塩)、ビタミンC、色素等、目的に応じて添加
する。
【0015】このとき添加するカルシウム塩としては、
硫酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水
素カルシウム、リン酸三カルシウム、ピロリン酸二水素
カルシウム、クエン酸カルシウム、グリセロリン酸カル
シウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化
カルシウム等が挙げられるが、なかでも硫酸カルシウム
が最も好適である。
【0016】また、カルシウム塩ほどではないが、硫酸
ナトリウムや硫酸マグネシウム等の硫酸塩も効果があ
る。
【0017】一方、前記キトサン溶液と混合されるゲル
化剤溶液のゲル化剤としては、通常のゼリー剤として使
用されている増粘多糖類含有ゲル化剤であれば種類を問
わないが、その中でもアニオン系多糖類がキトサンとの
反応性が高い。アニオン系多糖類には、カラギーナン、
ペクチン、ジェランガム等があるが、条件、食感に応じ
て単独あるいは2種以上を選択して使用する。
【0018】前記ゲル化剤溶液には、必要に応じて天然
甘味料を添加してもよい。この場合も天然甘味料の種類
は問わないが、ソーマチン、グリチルリチン、ステビオ
サイド、レバウディオサイド、フィロズルチン、ミラク
リン、モネリン、エスゴサイド、L−ラムノース等が例
示される。
【0019】製造に際しては、基本的には前述のように
キトサン、有機酸の混合粉末を水または温湯に完全に溶
解し、これにカルシウム塩(または硫酸塩)含有果肉汁
溶液を添加しよく混合し、40〜70℃、望ましくは5
5℃前後に加温しておく。このとき、カルシウム塩また
は硫酸塩の添加は、果肉汁溶液、ゲル化剤溶液のどちら
でも良いが、ゲル化剤によってはカルシウムにより悪影
響を受けるものもあり、果肉汁溶液に添加する方が問題
は少ない。
【0020】次いで、これをゲル化剤を水に分散し80
℃以上で溶解したものに混合する。このとき、混合する
温度は80℃以下が望ましい。しかる後、良く撹拌し、
キトサンとゲル化剤との反応による繊維状組織の状態が
望むべきものになったら容器に充填して冷却する。
【0021】上記の条件の場合、キトサン、カルシウム
塩(または硫酸塩)、天然甘味料、ゲル化剤の配合率
は、キトサン0.01〜0.5重量%、好ましくは0.
1〜0.3重量%、カルシウム塩(または硫酸塩)0.
01〜0.3重量%、好ましくは0.03〜0.1重量
%である。天然甘味料は、種類によって最適配合率が異
なるが、例えばソーマチンの場合0.0001〜0.0
1重量%、好ましくは0.001〜0.005重量%で
あり、ステビアの場合0.01〜0.2重量%、好まし
くは0.04〜0.08重量%である。
【0022】また、ゲル化剤は、総量として0.8〜
2.5重量%程度が好ましい。
【0023】
【作用】キトサン及びカルシウム塩(または硫酸塩)含
有果肉汁溶液をゲル化剤溶液に加熱下で添加混合するこ
とにより、キトサンにゲル化物質が吸着した繊維状物質
が形成され、この繊維状物質がキトサンと反応した残り
のゲル化剤のゲル中に包含されて、果肉に類似した組織
(果肉状組織)が形成される。
【0024】このとき、カルシウム塩または硫酸塩を使
用することで、キトサン由来の収斂味、苦みの発現が抑
制される。
【0025】
【実施例】以下、本発明を適用した具体的な実施例につ
いて、官能試験の結果等をもとに詳細に説明する。
【0026】実施例1 本実施例における配合は、次の通りである。 キトサン 15g リンゴ酸 45g 水 1000ml 白桃ピューレ 2500g 硫酸カルシウム 5g ペクチン 40g カラギーナン 40g ソーマチン 0.1g 上白糖 200g 水 5000ml 上白糖 1000g 洋酒 400ml 香料 10ml (約10kg当たり 糖度20〜22 pH2.8〜
3.2)
【0027】先ず、キトサン、リンゴ酸を混合し、水に
完全に溶解した後、白桃ピューレ及び硫酸カルシウムを
加えて55℃に加温した。一方、ペクチン、カラギーナ
ン、ソーマチン、上白糖の一部を粉末状態で混合し、水
に分散させ沸騰溶解した。次いで、残りの上白糖を加え
て溶解し、液温が80℃以下になったところで先のキト
サン溶液を入れ、洋酒、香料を添加して良く撹拌した。
【0028】これを容器に充填し、80℃で30分間加
熱殺菌した後、冷却した。その結果、果肉感に優れ、収
斂味や苦みの少ない果肉様ゼリーを得ることができた。
【0029】実施例2 キトサン量を0.1重量%、0.2重量%の2種、硫酸
カルシウム(またはリン酸二水素ナトリウム:比較例に
相当する。)の量を0.05重量%、0.1重量%の2
種とし、下記の表1に示す組み合わせでゼリーを作成し
た。ゼリーの作成方法は先の実施例1と同じである。
【0030】
【表1】
【0031】なお、キトサン及び硫酸カルシウム(また
はリン酸二水素ナトリウム)以外の配合は下記の通りで
ある。 クエン酸 3g 水 150ml オレンジ1/7濃縮果汁 50g ゲル化剤 20g 上白糖 160g 水 600ml 洋酒 30ml 香料 1.0ml (約1kg当たり 糖度20〜22 pH3.0〜3.
4)
【0032】得られたゼリーについて、無作為に選出さ
れた男女20人により官能試験を行った。官能試験は、
同じ配合量の組み合わせ同士を比較することで行った。
結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】この表2を見ると、硫酸カルシウムを使用
した場合の方が、果肉感に優れ、味覚の点でも収斂味、
苦みが少ないことがわかる。
【0035】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明の製造方法によれば、キトサンと硫酸カルシウムをゲ
ル化剤に混合するだけで果肉感に優れた果肉様ゼリーを
得ることができ、量産性や製造コスト等の点で非常に有
利である。また、これによって得られる本発明の果肉様
ゼリーは、キトサン由来の収斂味、苦みが少なく、味覚
の点でも優れたものである。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−127954(JP,A) 特開 昭62−193638(JP,A) 特開 昭60−130346(JP,A) 特開 平2−249457(JP,A) 塙尚之他,キトサンの食品への応用, 食品工業,日本,株式会社光琳,1990年 8月30日,第33巻/第18号,P.25〜 32,2−5参照 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/05 - 109 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 キトサンとカルシウム塩及び/又は硫酸
    塩と果肉汁溶液を含むゲル化剤溶液がゲル化され、果肉
    状組織が形成されてなる果肉様ゼリー。
  2. 【請求項2】 カルシウム塩及び/又は硫酸塩が硫酸カ
    ルシウムであり、ゲル化剤溶液がさらに天然甘味料を含
    有することを特徴とする請求項1記載の果肉様ゼリー。
  3. 【請求項3】 キトサンを予め溶解してなるキトサン溶
    液とカルシウム塩及び/又は硫酸塩と果肉汁溶液とを混
    合して加熱し、これをゲル化剤溶液に加熱下に加えて均
    一に混合した後、冷却することによりゲル化せしめ果肉
    状組織を形成することを特徴とする果肉様ゼリーの製造
    方法。
JP07880492A 1992-03-02 1992-03-02 果肉様ゼリー及びその製造方法 Expired - Lifetime JP3313391B2 (ja)

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JP4215377B2 (ja) * 2000-05-01 2009-01-28 小林製薬株式会社 キトサン含有組成物
KR100447668B1 (ko) * 2002-06-28 2004-09-08 현대약품공업주식회사 불용성 생리활성물질을 함유한 분산성 조각 젤리타입입자혼입 기능성음료 제조방법
JP5770462B2 (ja) * 2010-07-22 2015-08-26 株式会社クワン 種子入りザクロジュースの製造方法、その製造方法から成る種子入りザクロジュース及び前記種子入りザクロジュースを使用して成るザクロ果汁入りゼリー
KR102207648B1 (ko) 2018-04-06 2021-01-25 미쯔칸 홀딩즈 씨오., 엘티디. 미립자 복합체 함유 조성물 및 그 제조법

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塙尚之他,キトサンの食品への応用,食品工業,日本,株式会社光琳,1990年 8月30日,第33巻/第18号,P.25〜32,2−5参照

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