JP3310003B2 - 加工性および耐食性に優れたCr含有鋼板の製造方法 - Google Patents
加工性および耐食性に優れたCr含有鋼板の製造方法Info
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Description
各種成形用素材として使用される加工性および耐食性に
優れたCr含有鋼板を製造する方法に関する。
耐食性および信頼性向上を図るため、従来の普通鋼鋼板
に代わる材料として、Znめっき鋼板等の各種表面処理
鋼板の使用量が増加の一途をたどっている。そして、使
用雰囲気が苛酷になるに伴って、各種表面処理鋼板の耐
食性に関する要求レベルがより高くなっている。
電気めっき鋼板等が知られている。また、めっき目付け
量の増加,合金めっき,複層めっき等によって、表面処
理鋼板の耐食性を一層高くすることが行われている。こ
れらの手段が施された表面処理鋼板は、優れた耐食性を
呈するものの、深絞り等のプレス加工時にパウダリン
グ,フレーキング等の剥離がめっき層に生じ易く、プレ
ス加工上でのトラブルが発生する。また、表面処理鋼板
は、スポット溶接性,アーク溶接性等が必ずしも十分で
ない。このような加工性,溶接性等における欠点は、特
にめっき層を厚くして耐食性を向上させた鋼板に顕著に
現れる。
るため、表面処理ではなく素材の合金設計によって鋼板
の耐食性を改善することが検討されている。たとえば、
特開平2−156048号公報では、3〜12重量%の
Crを含有する鋼に比較的微量のCu,Ni,Al,T
i等を含有させることにより、耐食性を向上させたCr
鋼板が紹介されている。また、特公平1−53344号
公報では、TiおよびAlの併用添加によって成形性を
改善した耐食性Cr含有鋼板が紹介されている。更に、
特開平2−50940号公報では、NbおよびAlの併
用添加によって深絞り性を改善した耐食性Cr含有鋼板
が紹介されている。
して含み、耐食性に優れ且つ成形加工用途に使用されて
いる材料として、フェライト系ステンレス鋼板がある。
フェライト系ステンレス鋼板のCr含有量についてみる
と、たとえばJIS G4305の「冷間圧延ステンレ
ス鋼板」では、11.00〜13.50重量%と最もC
r含有量が低いSUS410Lから28.50〜32.
00重量%と最もCr含有量が高いSUS447J1ま
で、多くのステンレス鋼板が規定されている。更に、耐
熱鋼に分類されているもののJIS G4312の「耐
熱鋼板」では、Cr含有量が10.50〜11.75重
量%と比較的低く、6×C%〜0.75重量%のTiを
含有するSUH409が規定されている。このSUH4
09は、実用的にはフェライト系ステンレス鋼と同様に
汎用されている。
8号公報で紹介されている鋼は、CuおよびNiの添加
によって耐食性が向上されている。しかし、実施例に掲
げられているように、何れも引張り強さが38kgf/
mm2 以下の低く、強度的な要求を満足する材料とはい
えない。また、CuおよびNiを添加した特公平1−5
3344号公報記載の鋼も、依然として強度的な要求を
満足する材料ではない。更に、Ti,Nb,Al等の炭
窒化物形成元素の添加によって成形性を向上させた特公
平1−53344号公報,特開平2−50940号公報
等に記載されている鋼も、強度および耐食性に関しては
必ずしも十分なものとはいえない。
は、強度,加工性,耐食性の全てにわたり要求特性を満
足する鋼板が実用化されていない。特に、強度および耐
食性に優れた鋼板においては、常温での加工性に劣るも
のが多く、各種用途に応じた製品形状に成形加工するこ
とが困難である。
ステンレス系の鋼板は、耐食面では低Cr含有鋼に比較
して相当優れた性質を備えている。しかし、冷延鋼板の
ランクフォード値が必ずしも十分でなく、また成形加工
時におけるリジングの発生等にみられるように加工性に
難点がある。しかも、多量のCrを含有するため、コス
ト的な面から用途に制約が加わる。更に、この系統の鋼
板は、通常の冷延鋼板とは異なった局部的な孔食状の腐
食形態を採る。そのため、侵食深さが問題となる用途に
は、通常の冷延鋼板よりも使用形態に制約を受ける。
出されたものであり、5〜11重量%のCrを含有する
鋼板において、Cr含有量とその他の合金元素の含有量
との間で成分バランスを図ることによって、優れた耐食
レベルを確保しながら、熱間および冷間での加工性を改
善したCr含有鋼板を提供することを目的とする。
の目的を達成するため、5〜11重量%のCrを含有す
ると共に、他の合金元素を、1100〜1300℃に加
熱したときγ単相に完全変態するように含有Cr量と組
成バランスして含有させた鋼材を、1100〜1300
℃に加熱して完全にγ単相に相変態させ、γ単相温度域
で終了する熱間圧延を施し、500℃以上の温度で巻き
取った後、冷間圧延および仕上げ焼鈍を施すことを特徴
とする。
℃を下回る前の高温下で巻き取る。これにより、微細に
整粒されたフェライト組織をもつ熱間圧延鋼帯が得られ
る。また、冷間圧延は、熱延鋼帯を酸洗した後、70%
以上の圧延率で行なうことが好ましい。
響について詳細に検討した。Crを5〜11重量%の範
囲で含有する低Cr含有鋼は、熱間加工のために加熱さ
れた温度域でα単相組織を呈するもの、α相および
γ層の複相組織を呈するものおよびγ単相に完全変態
するものに類別される。〜の何れになるかは、Cr
含有量と他の合金元素との間の組成バランスによって定
まる。
の完全変態が行われるように合金設計した材料は実用化
されていない。加熱前のα相が熱間加工時においても残
存するおよびの合金設計では、得られた冷延鋼板の
加工性が低いものとなっている。
α相を完全に消失させるの合金設計では、組織的影響
を全く受けることがなく、非常に高いランクフォード値
を示す冷延鋼板が得られる。また、リジングの発生もな
く、加工性が極めて良好になるとの知見を得た。本発明
は、この知見を基に完成されたものである。
00〜1300℃の熱間加工温度域に加熱された状態で
γ単相組織を呈するものである。この条件を満足する組
成範囲は、各成分間のバランスによって定まるものであ
り、Crを始めとする各合金成分の含有量を一義的に規
定することはできない。たとえば、純粋なFe−Cr二
元系で形成されるγループを想定するとき、1100〜
1300℃の温度域に加熱した場合にγ単相となる領域
は、Cr含有量が約10重量%以下である。
のオーステナイト形成元素によって拡大される。この場
合、5〜11重量%の範囲でCr含有量を高めに設定し
ても、1100〜1300℃の温度域でγ単相への完全
変態が行われる。他方、Si,モリブデン等のフェライ
ト形成元素は、γループを狭くする作用を呈する。そこ
で、1100〜1300℃の温度域でγ単相への完全変
態を行わせるため、Si,モリブデン等の含有量に応
じ、5〜11重量%の範囲でCr含有量を低めに設定す
る。
からCr含有量を5〜11重量%の範囲に規定してい
る。すなわち、Cr含有量の下限5重量%は、表面処理
によることなく素材の耐食性を確保する上で必要な最低
量である。他方、Cr含有量が11重量%を超えると、
発錆率等の耐食性に一層の向上がみられるものの、腐食
形態が全面腐食から局部的な孔食状に変わる場合があ
り、耐孔開き性が劣化する。また、過剰のCr含有量
は、1100〜1300℃の温度域におけるγ単相への
完全変態を可能とするために、Cr含有量に見合って
C,N,Ni,Mn,Cu等のオーステナイト形成元素
を増量させることを必要とする。その結果、材質の硬化
および延性の低下等の欠点が表面化する。しかも、N
i,Mn,Cu等の合金元素の添加は、製品コストの上
昇を招き、経済的にも好ましくない。
相に完全変態させた状態で熱間圧延を行うことは、冷間
圧延および焼鈍後に優れた加工性をもった鋼板を得るた
めに重要である。たとえ、通常の熱間加工温度域に加熱
されたときγ単相組織に完全変態するように成分調整し
た鋼であっても、加熱温度が適切でなく、γ単相組織を
経ずにα域や(α+γ)域で熱間圧延された場合、冷間
圧延および焼鈍後に高いランクフォード値が得られな
い。また、成形加工時におけるリジングの発生等、加工
性の劣化もみられる。したがって、本発明においては、
熱間圧延されるCr含有鋼の加熱温度を1100〜13
00℃の温度域に設定している。
組織学的にはγ単相領域にあっても、γループの下方に
位置し、α相が残存することがある。残存するα相は、
製品の加工性を劣化させる原因となる。逆に、加熱温度
が1300℃を超えるとき、加工性に悪影響を与えるα
相が晶出することは勿論、ワークロールを始めとする熱
延設備の耐久性が劣化する。
は、次の理由によってCr含有冷延鋼板の加工性を向上
させるものと推察される。ランクフォード値の向上に有
効な再結晶集合組織である{111}方位は、冷間圧延
工程で局所的に歪み集中の大きな粒界三重点等の近傍か
ら生成および成長する。このことは、冷間圧延前の粒径
が小さいほど、高いランクフォード値を示すことを意味
する。この点、本発明によるとき、γ単相への完全変態
によって、溶製されたスラブや鋼塊に存在している粗大
な鋳造組織が破壊され、冷間圧延前に微細で整粒された
α相組織が得られる。また、鋳造組織に由来するバンド
状組織が熱延板に形成されないことから、リジングの発
生も抑制される。このような組織の改善は、γ単相組織
に完全変態させることなく、α域や(α+γ)域で熱間
圧延した場合には得られない。
態が行われる限り、5〜11重量%のCrに加えてC,
Si,N,Mn,Ni,Mo,Cu,Ti,Nb,V,
Zr等の合金元素を1種又は2種以上含有することがで
きる。これら各合金元素による性質改善は、それぞれ既
知のものである。また、得られた鋼板は、その表面をZ
n,Ni,Al,Pb,Sn,Fe,Bおよびこれらの
合金を単相又は複層で被覆する下地鋼板として使用する
こともできる。
表2に示した条件で熱間圧延して板厚4mmの熱延鋼板
を製造した。この熱延鋼板をデスケーリングした後、板
厚0.8mmに冷間圧延し、再結晶焼鈍を行った。得ら
れた冷延鋼板の引張り特性,ランクフォード値,リジン
グ特性および耐食性を調査した。調査結果を、表2に併
せて示す。
使用して圧延方向,圧延方向に対して45度方向,圧延
方向に対して90度方向の三方向について測定し、その
平均値を表2に示した。ランクフォード値は、JIS1
3B号試験片を使用し、同様に三方向について測定し、
その平均値で表した。リジング特性は、圧延方向の引張
り特性の調査で破断した後の試験片について、リジング
発生の有無を目視観察によって判定した。また、耐食性
は、1000時間の塩水噴霧試験によって調査し、侵食
深さの大きな箇所5点の平均を最大侵食深さとして表2
に示した。
何れも高いランクフォード値を示しており、深絞り性に
優れていると共にリジングの発生がなく、また耐食性も
良好である。これに対し、熱延時の金属組織が(α+
γ)の複相組織である比較例6,7および9の鋼板で
は、ランクフォード値が低く、しかもリジングが発生し
ている。また、熱延時の金属組織がγ単相組織となる比
較例8の鋼板では、加工性に優れているものの、Cr含
有量が低いため最大侵食深さが0.57mmと大きく、
耐食性が十分でないことが判る。
は、1100〜1300℃の温度域でγ単相組織に完全
変態するようにCr含有量と他の合金元素含有量との間
で成分調整した鋼材を熱間圧延することによって、熱延
後の組織を微細に整粒されたフェライト組織にしてい
る。これによって、鋼材の溶製時に発生した巨大な鋳造
組織やそれに由来するバンド状組織の発生が抑えられ、
高いランクフォード値をもち、深絞り等の高度の加工に
適した冷延鋼板が得られる。しかも、Cr含有量の規制
によって耐食性が確保されるため、高防錆化,高耐食化
が進められている自動車用鋼板,建築用材料等の各種成
形用素材として広範な分野で使用される材料が提供され
る。
Claims (2)
- 【請求項1】 5〜11重量%のCrを含有すると共
に、他の合金元素を、1100〜1300℃に加熱した
ときγ単相に完全変態するように含有Cr量と組成バラ
ンスして含有させた鋼材を、1100〜1300℃に加
熱して完全にγ単相に相変態させ、γ単相温度域で終了
する熱間圧延を施し、500℃以上の温度で巻き取った
後、冷間圧延および仕上げ焼鈍を施すことを特徴とする
加工性および耐食性に優れたCr含有鋼板の製造方法。 - 【請求項2】 冷間圧延を70%以上の圧延率で行なう
請求項1に記載の加工性および耐食性に優れたCr含有
鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33964291A JP3310003B2 (ja) | 1991-11-28 | 1991-11-28 | 加工性および耐食性に優れたCr含有鋼板の製造方法 |
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Publications (2)
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JPH05148547A JPH05148547A (ja) | 1993-06-15 |
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