JPH05148547A - 加工性および耐食性に優れたCr含有鋼板の製造方法 - Google Patents

加工性および耐食性に優れたCr含有鋼板の製造方法

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JPH05148547A JP33964291A JP33964291A JPH05148547A JP H05148547 A JPH05148547 A JP H05148547A JP 33964291 A JP33964291 A JP 33964291A JP 33964291 A JP33964291 A JP 33964291A JP H05148547 A JPH05148547 A JP H05148547A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 5〜11重量%のCrを含有し、耐食性およ
び加工性に優れた鋼板を得る。 【構成】 1100〜1300℃の温度域に加熱したと
きγ単相への完全変態が生じるように5〜11重量%の
範囲で含有されるCr量と他の元素量との間に組成バラ
ンスさせた鋼材に、γ単相域で仕上げパスが終了する熱
間圧延を施し、高温巻取りした後、冷間圧延および仕上
げ焼鈍を施す。高温巻取りは、熱間圧延した鋼材の温度
が500℃を下る前に行うことが好ましい。また、冷間
圧延は、酸洗した熱延鋼板に対し70%以上の圧延率で
行うことが好ましい。 【効果】 γ単相に完全変態した鋼材に熱間圧延が施さ
れるため、熱延後の組織は、微細に整粒されたフェライ
ト組織となる。その結果、ランクフォード値が高く、加
工性および耐食性に優れた鋼板が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車用を始めとして
各種成形用素材として使用される加工性および耐食性に
優れたCr含有鋼板を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用車体の高防錆化,建築用材料の
耐食性および信頼性向上を図るため、従来の普通鋼鋼板
に代わる材料として、Znめっき鋼板等の各種表面処理
鋼板の使用量が増加の一途をたどっている。そして、使
用雰囲気が苛酷になるに伴って、各種表面処理鋼板の耐
食性に関する要求レベルがより高くなっている。
【0003】表面処理鋼板としては、溶融めっき鋼板,
電気めっき鋼板等が知られている。また、めっき目付け
量の増加,合金めっき,複層めっき等によって、表面処
理鋼板の耐食性を一層高くすることが行われている。こ
れらの手段が施された表面処理鋼板は、優れた耐食性を
呈するものの、深絞り等のプレス加工時にパウダリン
グ,フレーキング等の剥離がめっき層に生じ易く、プレ
ス加工上でのトラブルが発生する。また、表面処理鋼板
は、スポット溶接性,アーク溶接性等が必ずしも十分で
ない。このような加工性,溶接性等における欠点は、特
にめっき層を厚くして耐食性を向上させた鋼板に顕著に
現れる。
【0004】そこで、加工性,溶接性等の欠点を回避す
るため、表面処理ではなく素材の合金設計によって鋼板
の耐食性を改善することが検討されている。たとえば、
特開平2−156048号公報では、3〜12重量%の
Crを含有する鋼に比較的微量のCu,Ni,Al,T
i等を含有させることにより、耐食性を向上させたCr
鋼板が紹介されている。また、特公平1−53344号
公報では、TiおよびAlの併用添加によって成形性を
改善した耐食性Cr含有鋼板が紹介されている。更に、
特開平2−50940号公報では、NbおよびAlの併
用添加によって深絞り性を改善した耐食性Cr含有鋼板
が紹介されている。
【0005】他方、より多量のCrを主要な合金成分と
して含み、耐食性に優れ且つ成形加工用途に使用されて
いる材料として、フェライト系ステンレス鋼板がある。
フェライト系ステンレス鋼板のCr含有量についてみる
と、たとえばJIS G4305の「冷間圧延ステンレ
ス鋼板」では、11.00〜13.50重量%と最もC
r含有量が低いSUS410Lから28.50〜32.
00重量%と最もCr含有量が高いSUS447J1ま
で、多くのステンレス鋼板が規定されている。更に、耐
熱鋼に分類されているもののJIS G4312の「耐
熱鋼板」では、Cr含有量が10.50〜11.75重
量%と比較的低く、6×C%〜0.75重量%のTiを
含有するSUH409が規定されている。このSUH4
09は、実用的にはフェライト系ステンレス鋼と同様に
汎用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】特開平2−15604
8号公報で紹介されている鋼は、CuおよびNiの添加
によって耐食性が向上されている。しかし、実施例に掲
げられているように、何れも引張り強さが38kgf/
mm2 以下の低く、強度的な要求を満足する材料とはい
えない。また、CuおよびNiを添加した特公平1−5
3344号公報記載の鋼も、依然として強度的な要求を
満足する材料ではない。更に、Ti,Nb,Al等の炭
窒化物形成元素の添加によって成形性を向上させた特公
平1−53344号公報,特開平2−50940号公報
等に記載されている鋼も、強度および耐食性に関しては
必ずしも十分なものとはいえない。
【0007】このように、従来の低Cr含有鋼にあって
は、強度,加工性,耐食性の全てにわたり要求特性を満
足する鋼板が実用化されていない。特に、強度および耐
食性に優れた鋼板においては、常温での加工性に劣るも
のが多く、各種用途に応じた製品形状に成形加工するこ
とが困難である。
【0008】他方、SUS410L,SUH409等の
ステンレス系の鋼板は、耐食面では低Cr含有鋼に比較
して相当優れた性質を備えている。しかし、冷延鋼板の
ランクフォード値が必ずしも十分でなく、また成形加工
時におけるリジングの発生等にみられるように加工性に
難点がある。しかも、多量のCrを含有するため、コス
ト的な面から用途に制約が加わる。更に、この系統の鋼
板は、通常の冷延鋼板とは異なった局部的な孔食状の腐
食形態を採る。そのため、侵食深さが問題となる用途に
は、通常の冷延鋼板よりも使用形態に制約を受ける。
【0009】本発明は、このような問題を解消すべく案
出されたものであり、5〜11重量%のCrを含有する
鋼板において、Cr含有量とその他の合金元素の含有量
との間で成分バランスを図ることによって、優れた耐食
レベルを確保しながら、熱間および冷間での加工性を改
善したCr含有鋼板を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の製造方法は、そ
の目的を達成するため、1100〜1300℃の温度域
に加熱したときγ単相への完全変態が生じるように5〜
11重量%の範囲で含有されるCr量と他の元素量との
間に組成バランスさせた鋼材に、γ単相域で仕上げパス
が終了する熱間圧延を施し、高温巻取りした後、冷間圧
延および仕上げ焼鈍を施すことを特徴とする。
【0011】ここで、高温巻取りは、熱間圧延した鋼材
の温度が500℃を下る前に行うことが好ましい。これ
により、微細に整粒されたフェライト組織をもつ熱延鋼
帯が得られる。また、冷間圧延は、熱延鋼帯を酸洗した
後、70%以上の圧延率で行うことが好ましい。
【0012】
【作 用】本発明者等は、加工性に与える金属組織の影
響について詳細に検討した。Crを5〜11重量%の範
囲で含有する低Cr含有鋼は、熱間加工のために加熱さ
れた温度域でα単相組織を呈するもの、α相および
γ層の複相組織を呈するものおよびγ単相に完全変態
するものに類別される。〜の何れになるかは、Cr
含有量と他の合金元素との間の組成バランスによって定
まる。
【0013】従来のCr含有鋼板では、積極的にγ相へ
の完全変態が行われるように合金設計した材料は実用化
されていない。加熱前のα相が熱間加工時においても残
存するおよびの合金設計では、得られた冷延鋼板の
加工性が低いものとなっている。
【0014】他方、γ単相への完全変態により加熱前の
α相を完全に消失させるの合金設計では、組織的影響
を全く受けることがなく、非常に高いランクフォード値
を示す冷延鋼板が得られる。また、リジングの発生もな
く、加工性が極めて良好になるとの知見を得た。本発明
は、この知見を基に完成されたものである。
【0015】本発明が対象とする鋼は、基本的には11
00〜1300℃の熱間加工温度域に加熱された状態で
γ単相組織を呈するものである。この条件を満足する組
成範囲は、各成分間のバランスによって定まるものであ
り、Crを始めとする各合金成分の含有量を一義的に規
定することはできない。たとえば、純粋なFe−Cr二
元系で形成されるγループを想定するとき、1100〜
1300℃の温度域に加熱した場合にγ単相となる領域
は、Cr含有量が約10重量%以下である。
【0016】γループは、C,N,Ni,Mn,Cu等
のオーステナイト形成元素によって拡大される。この場
合、5〜11重量%の範囲でCr含有量を高めに設定し
ても、1100〜1300℃の温度域でγ単相への完全
変態が行われる。他方、Si,モリブデン等のフェライ
ト形成元素は、γループを狭くする作用を呈する。そこ
で、1100〜1300℃の温度域でγ単相への完全変
態を行わせるため、Si,モリブデン等の含有量に応
じ、5〜11重量%の範囲でCr含有量を低めに設定す
る。
【0017】本発明においては、主として耐食性の観点
からCr含有量を5〜11重量%の範囲に規定してい
る。すなわち、Cr含有量の下限5重量%は、表面処理
によることなく素材の耐食性を確保する上で必要な最低
量である。他方、Cr含有量が11重量%を超えると、
発錆率等の耐食性に一層の向上がみられるものの、腐食
形態が全面腐食から局部的な孔食状に変わる場合があ
り、耐孔開き性が劣化する。また、過剰のCr含有量
は、1100〜1300℃の温度域におけるγ単相への
完全変態を可能とするために、Cr含有量に見合って
C,N,Ni,Mn,Cu等のオーステナイト形成元素
を増量させることを必要とする。その結果、材質の硬化
および延性の低下等の欠点が表面化する。しかも、N
i,Mn,Cu等の合金元素の添加は、製品コストの上
昇を招き、経済的にも好ましくない。
【0018】1100〜1300℃の温度域でα層をγ
相に完全変態させた状態で熱間圧延を行うことは、冷間
圧延および焼鈍後に優れた加工性をもった鋼板を得るた
めに重要である。たとえ、通常の熱間加工温度域に加熱
されたときγ単相組織に完全変態するように成分調整し
た鋼であっても、加熱温度が適切でなく、γ単相組織を
経ずにα域や(α+γ)域で熱間圧延された場合、冷間
圧延および焼鈍後に高いランクフォード値が得られな
い。また、成形加工時におけるリジングの発生等、加工
性の劣化もみられる。したがって、本発明においては、
熱間圧延されるCr含有鋼の加熱温度を1100〜13
00℃の温度域に設定している。
【0019】加熱温度が1100℃未満であると、仮に
組織学的にはγ単相領域にあっても、γループの下方に
位置し、α相が残存することがある。残存するα相は、
製品の加工性を劣化させる原因となる。逆に、加熱温度
が1300℃を超えるとき、加工性に悪影響を与えるα
相が晶出することは勿論、ワークロールを始めとする熱
延設備の耐久性が劣化する。
【0020】γ単相に完全変態させた状態での熱間圧延
は、次の理由によってCr含有冷延鋼板の加工性を向上
させるものと推察される。ランクフォード値の向上に有
効な再結晶集合組織である{111}方位は、冷間圧延
工程で局所的に歪み集中の大きな粒界三重点等の近傍か
ら生成および成長する。このことは、冷間圧延前の粒径
が小さいほど、高いランクフォード値を示すことを意味
する。この点、本発明によるとき、γ単相への完全変態
によって、溶製されたスラブや鋼塊に存在している粗大
な鋳造組織が破壊され、冷間圧延前に微細で整粒された
α相組織が得られる。また、鋳造組織に由来するバンド
状組織が熱延板に形成されないことから、リジングの発
生も抑制される。このような組織の改善は、γ単相組織
に完全変態させることなく、α域や(α+γ)域で熱間
圧延した場合には得られない。
【0021】本発明で使用する鋼材は、γ相への完全変
態が行われる限り、5〜11重量%のCrに加えてC,
Si,N,Mn,Ni,Mo,Cu,Ti,Nb,V,
Zr等の合金元素を1種又は2種以上含有することがで
きる。これら各合金元素による性質改善は、それぞれ既
知のものである。また、得られた鋼板は、その表面をZ
n,Ni,Al,Pb,Sn,Fe,Bおよびこれらの
合金を単相又は複層で被覆する下地鋼板として使用する
こともできる。
【0022】
【実施例】表1に示した化学成分を有する鋼を溶製し、
表2に示した条件で熱間圧延して板厚4mmの熱延鋼板
を製造した。この熱延鋼板をデスケーリングした後、板
厚0.8mmに冷間圧延し、再結晶焼鈍を行った。得ら
れた冷延鋼板の引張り特性,ランクフォード値,リジン
グ特性および耐食性を調査した。調査結果を、表2に併
せて示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】なお、引張り特性は、JIS5号試験片を
使用して圧延方向,圧延方向に対して45度方向,圧延
方向に対して90度方向の三方向について測定し、その
平均値を表2に示した。ランクフォード値は、JIS1
3B号試験片を使用し、同様に三方向について測定し、
その平均値で表した。リジング特性は、圧延方向の引張
り特性の調査で破断した後の試験片について、リジング
発生の有無を目視観察によって判定した。また、耐食性
は、1000時間の塩水噴霧試験によって調査し、侵食
深さの大きな箇所5点の平均を最大侵食深さとして表2
に示した。
【0026】表2に示したように、本発明例の鋼板は、
何れも高いランクフォード値を示しており、深絞り性に
優れていると共にリジングの発生がなく、また耐食性も
良好である。これに対し、熱延時の金属組織が(α+
γ)の複相組織である比較例6,7および9の鋼板で
は、ランクフォード値が低く、しかもリジングが発生し
ている。また、熱延時の金属組織がγ単相組織となる比
較例8の鋼板では、加工性に優れているものの、Cr含
有量が低いため最大侵食深さが0.57mmと大きく、
耐食性が十分でないことが判る。
【0027】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明において
は、1100〜1300℃の温度域でγ単相組織に完全
変態するようにCr含有量と他の合金元素含有量との間
で成分調整した鋼材を熱間圧延することによって、熱延
後の組織を微細に整粒されたフェライト組織にしてい
る。これによって、鋼材の溶製時に発生した巨大な鋳造
組織やそれに由来するバンド状組織の発生が抑えられ、
高いランクフォード値をもち、深絞り等の高度の加工に
適した冷延鋼板が得られる。しかも、Cr含有量の規制
によって耐食性が確保されるため、高防錆化,高耐食化
が進められている自動車用鋼板,建築用材料等の各種成
形用素材として広範な分野で使用される材料が提供され
る。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1100〜1300℃の温度域に加熱し
    たときγ単相への完全変態が生じるように5〜11重量
    %の範囲で含有されるCr量と他の元素量との間に組成
    バランスさせた鋼材に、γ単相域で仕上げパスが終了す
    る熱間圧延を施し、高温巻取りした後、冷間圧延および
    仕上げ焼鈍を施すことを特徴とする加工性および耐食性
    に優れたCr含有鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の高温巻取りは、熱間圧延
    した鋼材の温度が500℃を下る前に行われることを特
    徴とする加工性および耐食性に優れたCr含有鋼板の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の冷間圧延は、70%以上
    の圧延率で行われることを特徴とする加工性および耐食
    性に優れたCr含有鋼板の製造方法。
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