JP3304988B2 - 無菌化放射線に対するメタクリル系重合体の安定化 - Google Patents

無菌化放射線に対するメタクリル系重合体の安定化

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の分野】本発明は、無菌化放射線に対する抵抗性
が増大したプラスチック製品を製造するのに使用するこ
とができるメタクリル系重合体組成物に関する。特に本
発明は、無菌化を目的として無菌化放射線、例えばガン
マ又は電子ビーム照射に暴露される際透明度を維持し黄
変しない、ポリ(メタクリル酸メチル)から形成される
物体に関する。
【0002】
【従来の技術】透明で耐衝撃性が改良されたものを含む
ポリ(メタクリル酸メチル)は、医療分野における物
品、例えば注射器、スパイク、コネクター及びルエル(l
uer)、吸引器具、尿量計、血漿分離器、点滴チャンバ
ー、キューヴェット、透析器ケーシング、胸部排液ユニ
ット、体液用びん、膣鏡、流れ弁、アスピレーター、ポ
ンプハウジング、手術器具用容器等を製造するのに有用
な重合体である。これら重合体は、澄明で、所望の形態
に容易に成型され、ポリ(塩化ビニル)(PVC)管状
物と相容性であり、他のプラスチックに結合可能であ
り、温条件下の変形に抵抗性を有し、十分靭性であり、
かつ有用な物品に容易に加工されるからである。このよ
うな物品は、更に寸法安定性を有し、設計が容易であ
り、かつ1回の使用の後焼却によって容易に処分するこ
とができる。
【0003】医療分野において多く使用するためには、
これらの物品の無菌化が必要となる。無菌化は低レベル
のガンマ又は電子ビーム放射線(「無菌化放射線」(ster
ilizing radiation)と称する)への物品の暴露を伴うこ
とが多い。この無菌化は、通常「1回使用」、すなわ
ち、使い捨て物品に対して行われるが、本発明はくり返
し使用に対してもあてはまる。
【0004】無菌化を行うのに用いられる放射線の量は
「バックグラウンド」放射線を超え、重合メタクリル酸
メチルの物体がこのような放射線に暴露される時には、
重合体は黄変する。この黄変は、ポリ(メタクリル酸メ
チル)の透明度を低下させ、その外観を不利に変える。
特に無菌化されたものが高められた温度、例えば約60
℃〜に保たれる場合には、黄色の多くが経時とともに失
われるが、非照射のものと比較すると残留する色のレベ
ルはなおみにくいものである。
【0005】ポリ(メタクリル酸メチル)は日光に暴露
しても、他のプラスチックよりはるかに退色及び特性喪
失をしにくいが、種々の紫外線安定剤、例えばベンゾト
リアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の立体障害型
アミン、サリチル酸フェニル等のサリチル酸エステル、
o−ヒドロキシベンゾフェノン等の任意のものを用いる
ことによって退色及び特性喪失が更に安定化することが
ある。しかし、これらのうちのあるものは、無菌化放射
線による退色に効力を有せず、ある種のものは退色を促
進する。
【0006】当該技術ではプロピルアルコールの添加に
よってポリ(メタクリル酸メチル)のガンマ放射線抵抗を
改善することが試みられた。「UV及びガンマ照射下の
重合体崩壊の機作について:振動交さ弛緩に関連する低
分子量添加剤の影響」という標題のA. S. Belichenkol
等の論文、Sixth Symposium on Radiation Chemistry,
(1986),535〜538頁には、5〜20%のn
−プロピルアルコールを配合したメタクリル酸メチルの
単量体組成物のバルクラジカル重合によって製造された
重合体試料が、UV吸着発色団の発生が非常におそいこ
とから判断して、ガンマ放射線に対する抵抗の改善を示
したことを開示している。しかし、少なくとも5%のプ
ロピルアルコールを大量に用いることによりこれらの重
合体の物理的及び機械的特性を劣化させることが予想さ
れる。この刊行物は、安定化と非安定化重合体との間の
比較データを示していないが、定性的記述で同じアルコ
ール含量の照射と非照射重合体を対比しているのみであ
る。
【0007】無菌化放射線に暴露する際黄変を抑制する
のに十分でない、0.5%未満の濃度のアルコールを含
有するメタクリル酸メチルの重合体がこれまで知られて
いる。近年、本発明に記載されているのと同様なアルコ
ールの同様な量を含有するメタクリル酸メチルの重合体
は、紫外線劣化に対する抵抗性を有することが見出され
た。このような組成物は米国特許出願385,139
(参照例として提示する)に開示されている。ポリ(メ
タクリル酸メチル)中の市販の紫外線安定剤は、紫外線
劣化に対して保護することができるが、無菌化放射線、
例えばガンマ照射に暴露した際無効であるか又はより濃
い色を生じさせることが知られている。即ち、異なった
波長及びエネルギーの異なった種類の放射線に暴露した
場合アルコール含有ポリ(メタクリル酸メチル)につい
て同様な安定化挙動を予期することはできない。
【0008】従って、無菌化放射線に暴露した際退色せ
ず、一方他の望ましい物理的特性を保持するポリ(メタ
クリル酸メチル)を得ることができれば望ましいことで
あり、このようなポリ(メタクリル酸メチル)を提供す
ることが本発明の目的である。
【0009】
【発明の要約】本発明は、まずアルキルメタクリレート
が全単量体ミックスの少なくとも50%を構成する1種
又はそれ以上の単量体を、少なくとも1種の1〜10個
の炭素原子を有する脂肪族アルコール約0.5〜約2重
量%(紫外線安定剤は存在しない)、遊離ラジカル重合
の開始剤及び場合によってはメルカプタン連鎖移動剤と
混合し、次に得られた混合物を重合させて少なくとも5
0%のアルキルメタクリレート単位の重合体を生成させ
ることにより、無菌化放射線に対する抵抗性が増大した
重合体を製造する方法に関する。この重合体は、重合し
たままの形態で直接使用してよい。他の場合には、当該
技術によく知られた方法によって処理して無菌化放射線
に抵抗性の有用な物体にしてよい。
【0010】本発明は更に、アルキルメタクリレート重
合体が別個に製造され、アルコール(紫外線安定剤は存
在しない)と組み合わせて所望のブレンドを形成させ、
これを次に当該技術によく知られた手段によって処理し
て無菌化放射線に抵抗性を有する有用な物体を製造する
方法に関する。本発明は、更にアルコールと混合する前
に耐衝撃性改良剤(impact modifier)を重合体と混合す
る方法に関する。本発明は、更にこのような重合体/ア
ルコール配合物を無菌化放射線に暴露することによる有
用な無菌化物体の製法に関する。本発明は更に、このよ
うな方法によって製造され、そして無菌化放射線に暴露
された、無菌化を必要とする有用な物品、例えば容器、
チューブ又は医療用器具に関する。
【0011】
【発明の説明及び好ましい実施態様】本発明を以下にそ
の明細及び非限定実施例について詳細に論述する。
【0012】アルキルメタクリレートとは、メタクリル
酸のアルキル、置換アルキル、シクロアルキル又は置換
シクロアルキルエステルを意味する。上記エステルは、
メチル、エチル、ブチル、オクチル、ステアリル等のア
ルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル等の置換ア
ルキル、例えば4−クロロブチル、2−フルオロエチ
ル、2−ヒドロキシエチル等、シクロヘキシル、イソボ
ルニル、フェンチル等のシクロアルキル及び4−フルオ
ロシクロヘキシル等の置換シクロアルキルを包含する。
好ましいのは1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル
エステル、シクロヘキシルエステル及びイソボルニルエ
ステルである。これらの単位を有する重合体は、室温以
上の温度において剛性で硬質のガラスであるのに十分な
高いガラス温度を有しているからである。特に好ましい
のは、比較的低コスト及び単量体の重合の容易性、並び
に得られる重合体の高いガラス温度及び耐衝撃性改良の
容易性からみてメタクリル酸メチルである。それは更
に、メタクリル酸エステルの量が重合させる単量体混合
物の約90〜約99重量%である得られる重合体の良好
な初期の色、熱安定性及び高い使用温度などの理由から
好ましい。
【0013】ビニル又はビニリデン単量体等の種々の他
の単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン等のビ
ニル芳香族単量体、アルキルアクリレートエステル(例
えばアクリル酸メチル、エチル、n−プロピル、n−ブ
チル、sec−ブチル、2−エチルヘキシル)等のアルキ
ルアクリレートエステル、(メタ)アクリル酸、(メ
タ)アクリロニトリル、酢酸ビニル等のビニルエステ
ル、N−4−クロロフェニルマレイミド及びN−シクロ
ヘキシルマレイミド等のマレイミド、メタクリル酸等の
不飽和酸等をアルキルメタクリレートエステルと共重合
させることができる。特に好ましいのは、得られる重合
体の良好な透明度、良好な紫外線安定性及び熱安定性の
向上などの理由から、低級アルキルアクリレート(ただ
し低級アルキルとは1〜4個の炭素原子を有するものを
いう)である。特に好ましいのは、C1〜C4第一アルコ
ールと共に約1〜約10重量%のアクリル酸の低級アル
キルエステルを使用することである。
【0014】主にアルキルメタクリレートエステルの単
位から誘導される重合体は、環状グルタルイミド又は無
水グルタル酸基を導入する条件下で更に反応させ、次に
アルキルメタクリレートの重合体の場合有効であるもの
と同様のアルコールを用いて無菌化放射線による劣化に
対して安定化させることができる。
【0015】「10個までの炭素原子を有するアルコー
ル」という用語は、1〜10個の炭素原子の1つ又はそ
れ以上のヒドロキシル基を有する脂肪族化合物を意味す
る。上記アルコールの例には、1価アルキルアルコー
ル、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノー
ル、i−プロパノール、sec−ブタノール、t−ブタノ
ール、2−エチルヘキサノール等、多価アルキルアルコ
ール、例えばエチレングリコール、グリセリン、トリメ
チロールプロパン、ペンタエリスリトール等及びヒドロ
キシエステル、例えば2−ヒドロキシエチルアセテー
ト、ジエチレングリコールモノアセテート、乳酸ブチル
等が包含される。
【0016】処理の間の重合体が高温に比較的暴露され
ない場合、例えばシートをキャスティング及び熱成形す
る場合には、アルコールは比較的揮発性、例えばメタノ
ール又はエタノールであってよい。重合体が100℃よ
りかなり上の温度における重合のような比較的高温に、
真空又は自然発生圧力下の上記温度での脱蔵、例えば単
量体−重合体シロップもしくは高沸点溶媒中重合体及び
単量体の溶液の脱蔵に、又は押出し等の処理の高温に暴
露される場合には、アルコールは、処理工程の間に追い
出されないように十分高沸点であるべきである。別法と
して、アルコールは、一連の処理工程において後期に、
例えば最終物品の押出し又は成型の直前に添加してよ
い。
【0017】得られた重合体を無菌化放射線に暴露させ
るためには、重合体は、「キャスティング」によって形
成されたシートであってよい。キャスティングは、ガラ
ス又は金属面の間での単量体のバルク重合であり、次い
で場合によっては得られたシートを熱成形する。これら
の目的のためには、重合体の分子量は、脆化が起こる最
小値、例えば約20,000の重量平均分子量より上で
なければならない。上記のセル−キャスティングは、後
に有用な物体に加工されるシート、例えばカバー、のぞ
き穴、容器等を形成させるための熱成形による有用な手
段である。
【0018】成型が用いられない処理において特に有用
なのは本質的に残存単量体のないセル−キャスティング
法であり、この方法は、開始剤並びに重合時間及び温度
の適当な選択によって達成することができる。
【0019】セル−キャスティング法に類似したのは重
合がバルク状態で、例えばポリ(ビニルアルコール)バ
ック中で行われ、そして重合体が押出し機中で処理され
て成型用ペレットを形成するエモーションである。残存
単量体があれば上記ペレット化の間に脱蔵によって除去
することができ、アルコールは、他の添加剤と共にその
時に添加することができる。
【0020】更に、ポリ(アルキルメタクリレート)、
特にポリ(メタクリル酸メチル)のイミド化誘導体も、
本発明のアルコールの添加によって無菌化放射線による
黄変に対して保護することができる。「イミド化」と
は、ポリ(アルキルメタクリレート)を押出し機中圧力
下にアンモニア又はアルキルアミンと反応させて式
【化1】 (式中、R1及び(又は)R2はCH3であり、R3はHで
ある)の環状単位を導入することを意味する。上記熱安
定性重合体及びそれらの製法は、Kopchik、米国特許4,
246,374に開示されている。上記重合体は、環状
無水物及び遊離酸基をも含有することが多く、Hollden-
Abberton等による米国特許4,727,117によって教
示されているように、更にアルキル化剤で処理して酸及
び無水物官能性を除去することができる。イミド化重合
体は、Kopchikの熱安定性基準に適合しているかぎり、
文献中既知の他の方法によって製造してよい。グルタル
イミド単位を含有する重合体の分子量は、好ましくは1
00,000〜500,000であるが、脂肪族アルコー
ルで安定化したこの分子量範囲外の重合体が無菌化を必
要とするある種の応用において有用であることがある。
【0021】イミド化重合体は、その製造の間に高温及
び脱蔵を受けるので、環化及びアルキル化が完了して後
にアルコール及び他の添加剤を溶融物に添加することが
好ましい。添加されるアルコールは、ポリ(アルキルメ
タクリレート)と組み合わせて有用なものであり、同様
のレベルで用いられる。
【0022】グルタルイミド単位を含有する重合体は、
それらが誘導されるメタ(アクリレート)重合体より高
い使用温度を示し、そのため特に高い使用温度が必要な
有用な物体、例えばランプカバー、自動車ヘッドライド
カバー、窓ガラス等に成型することができる。それら
は、上に教示されたメタクリレート重合体と同様に無菌
化を必要とする物体に成型することができる。それら
は、加熱及び無菌化を必要とする場合に有用である。
【0023】同様にして、無水グルタル酸から誘導され
る単位は、当該技術に既知の方法によって、特にHallde
n-Abberton等による、米国特許4,874,824によっ
て教示されているとおり、押出し機中ポリ(アルキルメ
タクリレート)をジメチルアミンで処理することによっ
て重合体中に組み入れることができる。無水物環との反
応が起こらないように安定化アルコールを添加するにあ
たって注意を払わなければならない。
【0024】大ていの目的に対しては、射出成型によっ
て最もよく達成することができる形態に重合体を形状化
する。その場合には、重合体の分子量は過度であるべき
ではない。有用な範囲は、約20,000〜約300,
000であるが、好ましい範囲は、約80,000〜約
150,000である。上記分子量のコントロールは、
重合条件のコントロールによって、特に連鎖移動剤の使
用によって行うことができる。約0.01〜0.5重量
%のレベルのアルキルメルカプタン、例えばn−ドデシ
メルカプタンを使用するのが好ましい。メルカプタン
は、重合の間に末端スルフィド基の形態で重合体中に化
合物に組み合わされ、その存在はアルコールの安定化効
果に有害には働かない。
【0025】本出願において有用である重合体は、セル
−又はバルク−キャスティング以外の多くの手段によっ
て製造することができる。このような方法としては、懸
濁、乳化、溶液及び連続バルク重合などがある。
【0026】想定される医療その他の用途の多くに対し
ては、メタクリレート重合体の靭性が十分でないことが
ある。メタクリレート重合体に対する既知の耐衝撃性改
良剤、例えばポリウレタンゴム、エチレン−プロピレン
又はエチレン−プロピレン−ジエン三元重合体へのメチ
ルメタクリレート又はスチレン/アクリロニトリルのグ
ラフト重合体、ポリ(ブタジエン)又はブタジエン−ス
チレンもしくはブタジエン−アクリロニトリル共重合体
等のブタジエンベース型ゴムへのメチルメタクリレート
又はメチルメタクリレート/スチレン又はスチレン/ア
クリロニトリルのグラフト重合体、又はアルキルアクリ
レートもしくはアルキルアクリレート/スチレン重合体
の第1ステージへのスチレン−アクリロニトリルの、も
しくはメチルメタクリレート重合体のステージ型共重合
体(staged copolymer)を添加することができる。これら
の耐衝撃性改良剤の大部分は、ポリ(メタクリレート)
マトリックスによってかこまれている場合でも、無菌化
放射線への暴露の結果退色し、かつ(又は)化学変化を
受ける。この理由により、ほとんどすべてメタクリル酸
及びアクリル酸のアルキルエステルから誘導される単位
を含有する耐衝撃性改良剤が、無菌化放射線への暴露を
必要とする用途の場合に好ましい。このような無菌化物
品のための主な用途は透明性を必要とするので、最も好
ましいのは、種々の耐衝撃性改良剤成分の屈折率及び粒
子径の調節により、例えば多段重合体のすべての成分の
屈折率をマトリックス重合体の屈折率に合わせることに
よって行われる、ポリ(メタクリレート)マトリックス
の澄明性を保持するように企図された耐衝撃性改良剤で
ある。処理又は種々の形態の放射線への暴露の間の退色
を避けるために特に好ましいのは、場合により多官能性
単量体、例えばアクリル酸又はメタクリル酸のグリコー
ルエステル、マレイン酸のジアリルエステル、メタクリ
ル酸又はアクリル酸のアリルエステル等を含有する、ス
チレンと共重合したアクリル酸ブチルの第1ステージ及
びメタクリル酸メチルの最終ステージをベースとした重
合体である。ポリ(アルキルメタクリレート)の硬質コ
ア、場合により多官能性単量体、例えばアクリル酸又は
メタクリル酸のグリコールエステル、マレイン酸のジア
リルエステル、メタクリル酸又はアクリル酸のアリルエ
ステル等を含有する、スチレンと共重合したアクリル酸
ブチルの中間ステージ及びメタクリル酸メチルの最終ス
テージを有する重合体も特に好ましい。
【0027】耐衝撃性改良剤は、溶融状態でアルキルメ
タクリレートの重合体とブレンドしてよく、又はエマル
ジョン状態で製造した場合には、エマルジョン形態で混
合し、例えばケトル中又は押出し機中で共凝固させてよ
い。更に、耐衝撃性改良剤は、重合体及び残存単量体の
溶融混合物に添加し、同時に残存単量体を脱蔵する。ア
ルコールは、その沸点、用いられる温度、圧力及び時間
によって、これらの処理の種々の段階において添加する
ことができる。
【0028】重合体は又、滑剤、例えばステアリルアル
コール、ステアリン酸、ステアリン酸ブチル等を慣用の
低レベルで含有することができる。ステアリルアルコー
ルは、C1〜C10アルキルアルコールではなく、無菌化
放射線による色の生成に対する抵抗を促進するのに有効
でないものであることを注意すべきである。他の紫外線
安定剤も用いてよいが、用いる場合には、それらが無菌
化放射線に暴露する際退色を惹起しないことを示す試験
を実施しなければならない。アルコールは有効な紫外線
安定剤であるので、第2の紫外線安定剤を添加すること
は一般に必要でない。
【0029】安定剤を含有する重合体は、成型、射出吹
込み成型、押出し吹込み成型、カレンダーがけ、熱成
形、異型押出し、シート押出し、真空補助型熱成形等を
含む種種の方法によって有用な物体に変換することがで
きる。多くの用途に対しては、特に医療用器具において
は、射出成型が選ばれる方法である。低レベルのアルコ
ールは、重合体のレオロジーその他の処理特性に対して
あまり影響がないので、アルキルメタクリレート重合体
を処理するための慣用の手段及び技術を用いることがで
きる。
【0030】形成された物体の無菌化は、種々の形態の
照射に暴露することによって行うことができる。最も多
く使用されるのはベータ−及びガンマ−線源である。ベ
ータ線源は物体に電子を送進し、いくつかの市販のベー
タ線源を使用することができる。大部分の線量は迅速に
送達されて同時に熱が蓄積されるので、それよりおそ
く、かつそれよりよく物体の温度をコントロールするこ
とができるガンマ放射線が好ましい。ガンマ線はコバル
ト−60等の材料の崩壊から発生し、この種の線源への
暴露は空気、水、又は窒素雰囲気中で行うことができ
る。線量は暴露の時間によってコントロールされる。
【0031】色に対する効果の測定は、当該技術に周知
の手段によって実施される。全光透過度及び曇り(AS
TM D−1003)を測定して透明度の保持を定量化
することができる。黄変度インデックスの変化を測定・
記録するための標準的な手段(ASTM D−100
5)によって、透過度が比較的はげしく影響を受けない
場合でも、起こる色の変化を測定する。
【0032】 実施例 1 この実施例は、無菌化放射線を受けるメタクリル酸メチ
ル/アクリル酸エチルの共重合体の製法を示す。これら
の混合物中、ミックス中に存在するメルカプタンは重合
体鎖中に組み入れられた。メルカプタンは、得られる重
合体が射出成型できるように分子量をコントロールし、
かつ低下させるために存在させた。重合体を射出成型す
る時、C16〜C18アルコールを離型剤として存在させ
た。
【0033】方法Aにおいては、メタクリル酸メチル
(MMA)94部、アクリル酸エチル(EA)5部、n
−ドデシルメルカプタン(n−DDM)0.472部、セ
チル−ステアリルアルコール(C16〜C18混合物)0.5
部、アゾ(ビスイソブチロニトリル)(AIBN)0.
1部、過酸化ピバル酸t−ブチル0.1部、過酸化酢酸
t−ブチル0.1部及び選択された量の安定化アルコー
ルを混合した。この混合物をガス抜きし、ポリ(ビニル
アルコール)バッグに入れ、オーブン中発熱が停止する
まで60℃において、次に80℃において4時間、そし
て次に120℃において少なくとも4時間重合させた。
バッグを重合体から取り除き、重合体をこわして小片と
し、ストランドダイス型及びストランドカッターを備え
た押出し機に供給して成型用ペレットを製造した。ペレ
ットを、厚さ3.18mmの試験棒にする場合の市販のア
クリル系成型用粉末について推薦されている条件下にA
STM鋳型中で成型した。往復スクリュー機の場合に
は、試料を87℃で乾燥して水を除去し、溶融温度約2
30℃そして成型温度約65℃で処理することになる。
【0034】方法Bにおいては、比較的高い分子量のキ
ャストシートを製造した。MMA 96、EA 4、AI
BN 0.0075及びアルコールの混合物をガス抜き
し、4.75mmのビニルスペーサーによって分離されて
いるガラス板の間に入れ、ガスケットシールを閉じ、混
合物を66℃で一夜加熱して後工程Aと同様にして重合
「完了」した。板ガラスを除いて照射のためのキャステ
ィングを得た。
【0035】工程Cにおいては、紫外線安定剤を含まな
い市販の成型用樹脂として得られたMMA/EA約9
5.5/4.5の重合体を二軸スクリュー押出し機で処理
し、エタノール2部中乳酸ブチル1部の混合物を溶融物
に添加した。溶融物をストランド状とし、切ってペレッ
トとし、方法Aにおけるようにして再成形した。この場
合には照射のために3.18(実施例11)及び4.75
mm(実施例12)の厚さの棒両方を得た。
【0036】実施例2〜12 これらの実施例においては研究された実際処方物(表
1)及び未知の形状の市販の放射源におけるガンマ照射
3メガラッド(実際の線量2.84〜2.98メガラッ
ド)の標的暴露を行った結果(表2)が示される。光学
的測定方法は前記したとおりである。アルコールの部数
は、実施例1に記載された単量体等の部数の外である。
EGはエチレングリコールであり、BLは乳酸ブチルで
ある。いくつかの実施例(4、7、10)は比較的高レ
ベルのアルコールを含有し、使用温度及びモジュラスを
低下させるようにそのレベルによって可塑化されている
が、無菌化放射線に対してむしろ比較的高度の安定化を
与える。ここに示したすべての場合、低レベルのアルコ
ールを使用することによって黄変に対する抵抗性にきわ
めて優れた利点を生じていることがわかる。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】Owensの米国特許第3,793,40
2号の実施例8の組成の耐衝撃改良剤をOwensによ
って教示されている方法によってエマルジョン中製造
し、噴霧乾燥によって単離し、Owensの実施例1で
教示されているMW約110,000のポリ(メタクリ
ル酸メチル)成型用粉末の当量とブレンドした。UV安
定剤は使用しなかった。このブレンドは、直径38.l
mmの一軸スクリューKillion押出し機で218
℃の溶融温度において製造された。
【0040】このブレンドに溶融段階において種々のレ
ベル(0.5、1及び2.5重量%)の乳酸ブチルを添
加した。押出しは試料の重なりをパージするのに十分な
時間実施された。乳酸ブチルの添加の前に、アルコール
を含まない重合体を押し出して対照とした。これら試料
を実施例1のとおり、しかし220℃の溶融温度及び7
6℃の成型温度で成型して試料片とした。これらは、市
販の耐衝撃性を改良したアクリル系プラスチックについ
て推薦されているものと同様の条件である。
【0041】実施例1のように、3メガラッドのガンマ
照射への暴露は、乳酸ブチルを含有する試料の方が色の
形成がより少なく、そしてよりよいUV及び可視光の透
過を保持することを実証した。
【0042】実施例 14メタクリル酸メチル95.2
6、アクリル酸エチル4.5及びn−ドデシルメルカプ
タン0.22%の混合物を、有機過酸化物を用いて約5
0%の変換まで連続流れ撹拌タンク反応器中で重合さ
せ、この重合体−単量体混合物をポンプで脱蔵二軸スク
リュー押出し機に送り、そこで残存単量体を除去し、次
に溶融重合体に種々のレベルの乳酸ブチル(BL)を混
合した。試料は、0%(対照)、1%、2%及び5%の
BLを用いて調製された。安定化された重合体を押出し
機によって押出しダイス型に送り、この重合体をストラ
ンド状とし、切ってペレットとした。材料は、実施例1
におけるように成型され無菌化照射に暴露されそして物
理的試験に付した。実施例1のように、3メガラッドの
ガンマ照射に暴露することにより、乳酸ブチルを含有す
る試料の方が、色の形成がより少なく、そしてよりよい
UV及び可視光の透過が保持されることが実証された。
【0043】実施例15〜20これらの実施例は、脂肪
族ヒドロキシ化合物によって無菌化放射線に対して安定
化されたポリグルタルイミドの処方物を示す。分子量約
150,000のポリ(メタクリル酸メチル)を押出し機
中メチルアミンで処理し、次に米国特許4,727,11
7の実施例32と同様にして後処理して酸及び無水物基
の含量を低減させた。得られた重合体のビカー軟化温度
は約145℃である。1つの調製物は安定剤を含有せ
ず、第2の調製物は、後処理の後、しかしストランド化
及びペレット化の前に添加されたトリス(ノニルフェニ
ルホスファイト)0.15重量%及び市販の紫外線安定
剤2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)
ベンゾトリアゾール0.25重量%を含有する。
【0044】重合体ペレットをエチレングリコールかま
たは乳酸ブチル(重合体に対し1.2重量%)とブレンド
し、次に一軸スクリュー押出し機中232℃の設定温度
で再度押出しし、ペレットを280℃の溶融温度及び1
04℃の成型温度において適当な試験片に成型する。添
加剤を含まない対照はペレットより直接成型されるの
で、受ける熱履歴が少ない。試験片は、実施例1におけ
るようにしてガンマ放射線に暴露される。
【0045】
【表3】 TNPPはトリス(ノニルフェニル)ホスファイトであ
り、C−5411は2−(2−ヒドロキシ−5−t−オ
クチルフェニル)ベンゾトリアゾールであり、EGはエ
チレングリコールであり、BLは乳酸ブチルである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ドナルド・エドワード・ロウチ アメリカ合衆国ニユージヤージー州 (08046)ウイリングボロ.タイドウオ ーターレイン23

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 a) アルキルメタクリレート単量体か
    ら誘導される単位、N−水素又はN−アルキルジメチル
    グルタルイミド単量体から誘導される単位及び場合によ
    りメタクリル酸又は無水グルタル酸単量体から誘導され
    る単位よりなる重合体;および b) 単量体に基づいて0.5〜2重量%の、少なくと
    も1種の脂肪族アルコール(このアルコールは10個以
    下の炭素原子を有する)を含む組成物から作られる放射
    線照射による被殺菌処理用成形物。
  2. 【請求項2】 アルコールが1価脂肪族アルコール又は
    多価脂肪族アルコールである請求項1記載の成形物。
  3. 【請求項3】 1価脂肪族アルコールがメチルアルコー
    ル又はエチルアルコールである請求項2記載の成形物。
  4. 【請求項4】 多価脂肪族アルコールがエチレングリコ
    ール、ジエチレングリコール又はグリセリンである請求
    項2記載の成形物。
  5. 【請求項5】 アルコールが乳酸ブチルである請求項2
    記載の成形物。
  6. 【請求項6】 アルキルメタクリレートがメタクリル酸
    メチルであり、ジメチルグルタルイミドがN−メチルジ
    メチルグルタルイミドである請求項1記載の成形物。
  7. 【請求項7】 重合体の重量平均分子量が100,00
    0〜500,000である請求項1記載の成形物。
  8. 【請求項8】 容器、チューブ又は医療用器具である、
    請求項1記載の成形物。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の容器、チューブ又は医療
    用器具を更に有意な退色なしに少なくとも3メガラドの
    ガンマ照射に暴露して得られる容器、チューブ又は医療
    用器具である、請求項1記載の成形物。
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