JP3303848B2 - 目標追尾方法及び目標追尾レーダ装置 - Google Patents

目標追尾方法及び目標追尾レーダ装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーダ装置に関
し、特にドップラ補正及びパルス圧縮を行う目標追尾用
のレーダ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のレーダ装置は、探知能力を改善す
るために同一方向に複数のパルスを送信して探知する手
法が一般的に用いられている。一方、特許第28177
33号の明細書記載のレーダ装置(以下、従来例とい
う)の様に、単一ヒットの長いパルスで探知能力を改善
する方式が提案されている。
【0003】この種のレーダ装置は、探知範囲のスキャ
ン周期である所定の追跡データレートでビーム(以下、
「追尾ビーム」という。)を形成して一つの方向には単
一パルスを送信し、受信信号にドップラ補正を行った
後、指定した周波数範囲でドップラ偏移した信号毎のパ
ルス圧縮を行い目標を探知、追跡するように構成され
る。
【0004】一般に、レーダ装置においては、目標信号
以外に大地、海面及び雨雲等からの反射信号(クラッタ
という)が重畳されるため、目標信号のみを分離して抽
出する処理が必要となる。このような目標信号の分離に
は、通常、目標の反射信号とクラッタと間のドップラ周
波数の違いを利用している。つまり、目標の反射信号や
クラッタはドップラ周波数を持っており、一般に目標は
高い移動速度を有し目標からの反射信号のドップラ周波
数偏移は大きいが、クラッタはこれと比較して小さいの
で、この特性の違いを利用して目標信号を分離してい
る。
【0005】そして、複数のパルスを送信する従来のレ
ーダ方式においては、パルス間の位相変化からドップラ
周波数を検出して目標信号を分離しているが、単一パル
スで目標を検出する前記従来例においては、パルス内の
位相情報を利用してパルス圧縮処理により目標信号を分
離する。具体的には、パルス圧縮処理を行う前に、抽出
したいドップラ周波数の信号成分のみのパルス圧縮がさ
れるようにドップラ補正及びパルス圧縮処理を行う。こ
こで、ドップラ補正及びパルス圧縮処理とは、送信周波
数、パルス繰り返し時間、ドップラ周波数から決まるフ
ィルタ係数により決定される最適なフィルタバンク(最
適なフィルタの形状及びフィルタ周波数の間隔等から決
まる複数のバンドパスフィルタからなるパターン)を用
意し、このうち比較的高い周波数の通過特性を有するフ
ィルタを通過した特定の受信信号を抽出し、パルス圧縮
して抽出することにより、高い周波数で積み上がる目標
信号を低いドップラ周波数で積み上がるクラッタから分
離する処理である。
【0006】次に、ドップラ補正及びパルス圧縮処理に
ついて図面を参照して説明する。図5は、前記従来例に
示すようなレーダ装置におけるドップラ補正及びパルス
圧縮処理のブロックを示す図である。ドップラ補正器
1、パルス圧縮器2及び目標検出器4から構成される。
ドップラ補正器1では、受信信号を入力し予め指定され
た目標のドップラ周波数に基づいて、所定のフィルタ使
用して受信信号のドップラ補正を行う。パルス圧縮器2
は、ドップラ補正後の信号のパルス圧縮を行う。そし
て、目標検出器4では、パルス圧縮後の信号が予め定め
たスレッシュホールドの値以上か否か判別し、スレッシ
ュホールドの値以上の場合のみ目標信号として出力す
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】単一パルスを使用する
前記従来例のようなレーダ装置においては、目標信号の
ドップラ周波数を予め指定することを前提とするが、実
際にはドップラ周波数を予め指定することは困難であ
る。
【0008】このため通常はドップラ周波数の指定とし
て、目標が取りうる最大速度をv axとすると、図6
に示すようにドップラ周波数上で、−(2f/c)・v
ma から(2f/c)・vmaxの範囲(f:送信周
波数、c:光速、以下、この周波数範囲を「全ての周波
数範囲」という。)として指定する。
【0009】しかし、このような目標の最大速度による
全ての周波数範囲においてドップラ補正を行うためのフ
ィルタバンクを構成し、ドップラ補正及びパルス圧縮処
理を行うことは計算処理が膨大化し、レーダ装置として
の処理負荷が極めて大きなものとなるという問題があ
る。
【0010】(発明の目的)本発明の目的は、単一パル
スを使用した追尾における計算処理負荷を低減すること
を可能とする目標追尾方法及び目標追尾用レーダ装置を
提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の目標追尾方法
は、目標からの反射信号のドップラ偏移に応じたドップ
ラ周波数の所定範囲でパルス圧縮を行って目標を検出、
追尾する目標追尾方法において、現スキャン時のドップ
ラ周波数を検出し、想定される目標の最大加速度と追尾
データレートから次スキャン時の目標速度を予測し、前
記目標速度によって次スキャン時のドップラ周波数を予
測し、現スキャンのドップラ周波数を中心とする次スキ
ャン時のドップラ周波数との周波数差分に基づき設定し
た範囲を次スキャンの目標からの反射信号のドップラ周
波数の処理範囲幅とし、当該範囲内のドップラフィルタ
を使用してパルス圧縮を行い目標を追尾することを特徴
とする。
【0012】本発明の目標追尾レーダ装置は、受信信号
のドップラ偏移に応じたドップラ周波数の指定範囲でパ
ルス圧縮を行って目標を検出、追尾する目標追尾レーダ
装置において、パルス圧縮した信号の中から予め定めら
れたスレッシュホールド以上の振幅の信号を目標からの
反射信号として検出し、当該目標の距離及び当該反射信
号のドップラ周波数を算出する目標検出器と、前記ドッ
プラ周波数から現時点の目標速度を算出し、算出された
目標速度と、想定される目標の最大加速度と予め定めら
れた追尾データレートとから追尾データレート時間後の
目標速度を算出する追尾処理器と、前記追尾データレー
ト時間後の目標の速度からドップラ周波数上の処理範囲
を設定し、前記処理範囲内のドップラフィルタ番号を出
力するドップラ制御器と、を備え、前記ドップラフィル
タ番号により受信信号のドップラ補正を行った後パルス
圧縮を行うことを特徴とする。
【0013】目標が取りうる最大速度により決定される
ドップラ周波数の範囲を追尾開始時のドップラ周波数の
処理範囲として指定すること、また、想定される目標の
最大加速度は、目標の航跡の速度変化に基づいて決定す
ることを特徴とする。
【0014】(作用)目標の追尾において、次スキャン
の目標速度を自動的に予測し、予測した目標速度に応じ
てドップラ周波数上の処理範囲を特定することでドップ
ラ補正及びパルス圧縮処理の計算処理負荷を大幅に低減
する。つまり、現時点の目標の速度、想定される目標の
最大加速度及び追尾データレートから次スキャン時の目
標速度を自動的に予測する。予測した目標速度によって
求められたドップラ周波数上の処理範囲のみの処理を行
う。処理範囲はドップラ周波数上で現時点の目標のドッ
プラ周波数を中心に、想定される目標の最大加速度と追
尾データレートで決まる処理範囲幅の範囲とする。
【0015】
【発明の実施の形態】次に、本発明の目標追尾方法及び
目標追尾用レーダ装置の実施の形態について図面を参照
して詳細に説明する。本発明の目標追尾用レーダは、探
知範囲のスキャン周期である所定の追跡データレートで
追尾ビームを形成して一つの方向には単一パルスを送信
し、受信信号の指定した周波数範囲でドップラ補正を行
いパルス圧縮を行い目標を探知、追跡する。
【0016】図1は、本発明の一実施の形態を説明する
ためのブロック図である。本実施の形態の目標追尾用レ
ーダの基本構成は、図1に示すように、ドップラ補正器
1と、パルス圧縮器2と、最大値選択器3と、目標検出
器4と、追尾処理器5と、ドップラ制御器6とから構成
される。
【0017】次に、本実施の形態の動作を以下説明す
る。本実施の形態における処理動作は、追尾処理の開始
時等におけるような所要の覆域の目標を捜索するビーム
による受信信号に対する処理と、通常時の目標の追尾に
おける追尾ビームによる受信信号に対する処理とで処理
動作が異なる。
【0018】まず、所要の覆域を捜索するビームによる
受信信号に対する処理動作について説明する。この処理
動作においては、処理の周波数範囲は図6に示すような
処理範囲で行われる。受信信号は、ドップラ補正器1に
おいて目標の移動速度に応じて生じたドップラ偏移に応
じたドップラ補正を行い、フィルタバンクの前記周波数
範囲の複数のフィルタを通過した信号が出力される。パ
ルス圧縮器2においては前記各フィルタを通過した信号
に対するパルス圧縮が行われ、それぞれの積み上がった
信号が出力される。
【0019】つまり、目標捜索時はドップラ周波数上の
全範囲でドップラ補正及びパルス圧縮処理が行われる。
最大値選択器3においては、各フィルタの出力のパルス
圧縮後の信号のうち最大振幅の信号が選択される。そし
て、目標検出器4においては、前記最大値選択器3から
の選択された信号のうち、一定のスレッシュホールドを
越えた信号が目標信号(目標データ)として検出され
る。
【0020】次に、追尾ビームによる受信信号に対する
処理動作について説明する。この処理動作の概要は、ま
ず、追尾処理器5において、追尾ビームの受信信号から
得た現時点の目標の速度及び想定される目標の最大加速
度、並びに追尾データレートを用いて、次スキャンの目
標速度を予測する。そして、追尾処理器5からの目標速
度の予測出力はドップラ制御器6に入力され、ドップラ
制御器6においては、前記目標速度の予測出力からドッ
プラ周波数上の処理範囲を限定的に設定し、当該処理範
囲のドップラ周波数に応じたドップラフィルタ番号をド
ップラ補正器1に通知する。ドップラ補正器1及びパル
ス圧縮器2では指定された処理範囲でのみ前述のような
処理を行って目標信号を検出する。追尾ビームによる処
理では、スキャン毎に以上の手順を繰り返して目標信号
を検出し目標の追尾を行う。
【0021】次に、追尾処理器5及びドップラ制御器6
における処理動作を図2、3を参照して詳しく説明す
る。図2は、本実施の形態の追尾処理器5の構成を示す
図である。追尾処理器5は、速度算出器101と、加速
度設定器102と、予測速度算出器103と、追尾デー
タレート設定器104とから構成される。
【0022】速度算出器101は、目標検出器4から得
られた現時点の目標のドップラ周波数fdから現時点の
目標の速度vを次の式(1)により求め、予測速度算出
器103に出力する。
【0023】 v=(c・fd)/(2f) ……(1) c:光速 f:送信周波数 加速度設定器102は、目標に応じて想定される目標の
最大加速度aを算出、設定し、また、追尾データレート
設定器104は、レーダにより予め知られている追尾デ
ータレートtを設定し、それぞれ予測速度算出器103
に出力する。
【0024】予測速度算出器103は、目標の最大加速
度a及び追尾データレートtを用い、次の式(2)によ
り次スキャンの目標の速度v’を予測し、ドップラ制御
器6に出力する。
【0025】 v’=v+a・t ……(2) 図3は、本実施の形態のドップラ制御器6の構成を示す
図である。ドップラ制御器6は、処理範囲設定器105
と、フィルタ番号発生器106とから構成される。処理
範囲設定器105は、追尾処理器5において予測、算出
した次スキャンの目標の速度v’に基づいて、ドップラ
周波数の予測値fd’を次の式(3)により求める。
【0026】 fd’=(2f・v’)/c=(2f/c)・(v+a・t)……(3) 処理範囲設定器105は、ドップラ周波数上において、
現スキャンのドップラ周波数fdを中心とする次スキャ
ンのドップラ周波数の予測される周波数範囲として、
{fd−(2f/c)・a・t}から{fd+(2f/
c)・a・t}までの範囲をドップラ補正及びパルス圧
縮処理の処理範囲として設定し、該処理範囲の情報をフ
ィルタ番号発生器106に出力する。フィルタ番号発生
器106は、追尾する目標信号の前記処理範囲のドップ
ラフィルタ番号をドップラ補正器1に通知する。
【0027】ドップラ補正器1及びパルス圧縮処理2
は、ドップラ制御器6の前記処理結果に基づき、それぞ
れ指定されたドップラフィルタ番号のみのフィルタを使
用してドップラ補正及びパルス圧縮処理を行う。
【0028】図4は、本実施の形態による追尾処理にお
ける処理範囲を示す図である。同図から分かるように本
実施の形態の追尾ビームによる処理範囲は、周波数fd
を中心とした狭い範囲に特定され、図6に示すような全
ての範囲を対象とした従来の処理に対して処理範囲が減
少する。従って、本実施の形態の計算処理負荷は従来例
と比較してa・t/vmaxとなり、大幅に計算処理負
荷は低減される。
【0029】図2、3に示す実施の形態では、目標から
の反射信号のドップラ偏移に応じたドップラ周波数の所
定範囲でパルス圧縮を行って目標を検出、追尾する目標
追尾において、現スキャンのドップラ周波数を検出し、
想定される目標の最大加速度と追尾データレートから次
スキャンの目標速度を予測し、前記目標速度によって次
スキャンのドップラ周波数を予測し、現スキャンのドッ
プラ周波数を中心とする前記ドップラ周波数の周波数差
分により決まる範囲を次スキャンの目標からの反射信号
のドップラ偏移に応じたドップラ周波数の処理範囲幅と
するようにしているが、現スキャンのドップラ周波数を
検出し、想定される目標の最大加速度と追尾データレー
トから次スキャンの目標速度の速度差分を予測し、前記
目標速度の速度差分によって次スキャンのドップラ周波
数の周波数差分を算出し、現スキャンのドップラ周波数
を中心とする前記ドップラ周波数の周波数差分に基づい
て設定した範囲を次スキャンの目標からの反射信号のド
ップラ偏移に応じたドップラ周波数の処理範囲幅とする
実施の形態を構成することができる。
【0030】また、以上の実施の形態において、追尾処
理の開始時における目標情報の取得は、所要の覆域での
目標を捜索する広範な周波数範囲での処理手順を使用す
る例を示したが、この目標情報は他のレーダ等を使用し
て取得することができることは明らかである。また、前
記実施の形態の加速度設定器102における想定される
目標の最大加速度aの算出、設定は、例えば、航空機の
種類等、追尾対象となる目標のもつ傾向、特徴により合
理的範囲で決定することができる他、追尾による航跡毎
の速度の経緯データ基づいて算出又は設定することが可
能である。また、前記最大加速度aは目標の特性、目標
の航跡の速度変化又は他からのデータに基づいて経時的
な可変データとすることができる。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、目標速度の自動予測を
行うことにより、ドップラ周波数上でのドップラ補正及
びパルス圧縮の処理範囲を制限するように構成している
ので、追尾において、目標のドップラ補正及びパルス圧
縮の計算処理負荷を大幅に低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のレーダ装置の一実施の形態を示す構成
図である。
【図2】本実施の形態の追尾処理部の構成を示すブロッ
ク図である。
【図3】本実施の形態のドップラ制御器の構成を示すブ
ロック図である。
【図4】本実施の形態の動作を示す概念図である。
【図5】従来のレーダ装置の構成を示す図である。
【図6】従来のレーダ装置の動作を示す概念図である。
【符号の説明】 1 ドップラ補正器 2 パルス圧縮器 3 最大値選択器 4 目標検出器 5 追尾処理器 6 ドップラ制御器 101 速度算出器 102 加速度設定器 103 予測速度算出器 104 追尾データレート設定器 105 処理範囲設定器 106 フィルタ番号発生器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01S 7/00 - 7/42 G01S 13/00 - 13/95

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 目標からの反射信号のドップラ偏移に応
    じたドップラ周波数の所定範囲でパルス圧縮を行って目
    標を検出、追尾する目標追尾方法において、現スキャン
    時のドップラ周波数を検出し、想定される目標の最大加
    速度と追尾データレートから次スキャン時の目標速度を
    予測し、前記目標速度によって次スキャン時のドップラ
    周波数を予測し、現スキャンのドップラ周波数を中心と
    する次スキャン時のドップラ周波数との周波数差分に基
    づき設定した範囲を次スキャンの目標からの反射信号の
    ドップラ周波数の処理範囲幅とし、当該範囲内のドップ
    ラフィルタを使用してパルス圧縮を行い目標を追尾する
    ことを特徴とする目標追尾方法。
  2. 【請求項2】 目標が取りうる最大速度により決定され
    るドップラ周波数の範囲を追尾開始時のドップラ周波数
    の処理範囲とすることを特徴とする請求項1記載の目標
    追尾方法。
  3. 【請求項3】 受信信号のドップラ偏移に応じたドップ
    ラ周波数の指定範囲でパルス圧縮を行って目標を検出、
    追尾する目標追尾レーダ装置において、パルス圧縮した
    信号の中から予め定められたスレッシュホールド以上の
    振幅の信号を目標からの反射信号として検出し、当該目
    標の距離及び当該反射信号のドップラ周波数を算出する
    目標検出器と、前記ドップラ周波数から現時点の目標速
    度を算出し、算出された目標速度と、想定される目標の
    最大加速度と予め定められた追尾データレートとから追
    尾データレート時間後の目標の速度を算出する追尾処理
    器と、前記追尾データレート時間後の目標速度からドッ
    プラ周波数上の処理範囲を設定し、前記処理範囲内のド
    ップラフィルタ番号を出力するドップラ制御器と、を備
    え、前記ドップラフィルタ番号により受信信号のドップ
    ラ補正を行った後パルス圧縮を行うことを特徴とする目
    標追尾レーダ装置。
  4. 【請求項4】 目標が取りうる最大速度により決定され
    るドップラ周波数の範囲を追尾開始時のドップラ周波数
    の処理範囲とすることを特徴とする請求項3記載の目標
    追尾レーダ装置。
  5. 【請求項5】 想定される目標の最大加速度は、目標の
    航跡の速度変化に基づいて決定することを特徴とする請
    求項3又は4記載の目標追尾レーダ装置。
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