JP3302790B2 - 半導体発光装置 - Google Patents

半導体発光装置

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JP3302790B2
JP3302790B2 JP18940493A JP18940493A JP3302790B2 JP 3302790 B2 JP3302790 B2 JP 3302790B2 JP 18940493 A JP18940493 A JP 18940493A JP 18940493 A JP18940493 A JP 18940493A JP 3302790 B2 JP3302790 B2 JP 3302790B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、半導体レーザ,発光ダ
イオード等の半導体発光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より種々の化合物半導体が半導体レ
ーザに用いられているが、近年、ZnSeなどのワイド
ギャップ II-VI族化合物半導体が注目されている。これ
はこの種の化合物半導体が可視波長領域の光の波長に相
当するエネルギーと同等以上の広いバンドギャップを有
するので、可視発光素子材料としての利用が可能だから
である。
【0003】特に、GaAlAs、InGaAlPなど
の III-V族化合物半導体材料による半導体レーザや発光
ダイオードの動作波長域が緑色より長い波長域であるの
に対し、ワイドギャップ II-VI族化合物半導体の場合に
はより波長の短い青色や紫外光までの動作が可能性とな
る。このため、小型,軽量,低動作電圧,高信頼性など
従来の半導体発光装置の有する利点をそのまま短波長領
域に適用できるようになる。これによって、光ディスク
の高密度化、更には、屋外メッセージボードなどのフル
カラー化も実現できるようになる。
【0004】図10は、ワイドギャップ II-VI族化合物
半導体(ZnSe)を用いた従来の電流注入型の青緑色
半導体レーザ装置の概略構造を示す断面図である。
【0005】図中、81はn型GaAs基板を示してお
り、このn型GaAs基板81上には、n型GaAsバ
ッファ層82を介して、n型ZnSe層83,n型Zn
SSe層84,n型ZnSe層85,CdZnSe量子
井戸層86,p型ZnSe層87,p型ZnSSe層8
8,p型ZnSe層89が順次積層されている。このp
型ZnSe層89上には、開口部を有するポリイミド層
90を介して、p側Au電極91が設けられ、一方、n
型GaAs基板81には、n側In電極92が設けられ
ている。
【0006】このように構成された青緑半導体レーザ装
置によれば、液体窒素温度での連続発振や、室温でのパ
ルス発振を行なえると報告されている( Applied Physi
cs Letters, Vol.59, pp.1272-1274 (1991))。
【0007】しかしながら、実用的な半導体レーザ装置
として必要な室温以上での連続発振は実現されていな
い。これは、ZnSeなどのワイドギャップ II-VI族化
合物半導体を用いた場合には、 III-V族化合物半導体を
用いた場合に比べて、n型ZnSe層85,p型ZnS
e層87(クラッド層)とCdZnSe量子井戸層86
(発光層)との間のバンドギャップ差が小さく、発光層
内に電子や正孔を良好に閉じ込めることができないから
である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述の如く、ZnSe
などのワイドギャップ II-VI族化合物を用いた従来の青
緑色半導体レーザ装置にあっては、クラッド層と発光層
との間のバンドギャップ差が小さく、発光層内に電子や
正孔を良好に閉じ込めることができず、室温以上での連
続発振は実現されていないなかった。
【0009】本発明は、上記事情を考慮してなされたも
ので、その目的は、短波長(青色)の光に対しても良好
な発光特性を示す半導体発光装置を提供することにあ
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、本発明の半導体発光装置(請求項1)は、半導体
基板上に形成された半導体発光層と、この半導体発光層
の片面または両面に設けられ、半導体超格子層により形
成され、屈折率が前記半導体発光層よりも小さく、且つ
多重量子障壁層が形成されている光ガイド半導体層を備
えたことを特徴とする。
【0011】ここで、上記の如きの特徴を持っている半
導体超格子層は、例えば、2種類の半導体超格子を交互
に積層することで実現できる。また、上記2種類の半導
体超格子を形成する二つ半導体材料の少なくとも一方の
格子定数は、または上記多重量子井戸層の格子定数、ま
たは両方の格子定数が、上記半導体基板の格子定数と
0.5%以上異なっていることが好ましい。
【0012】また、上記半導体基板はGaAs、上記2
種類の半導体超格子を形成する二つの半導体材料は、Z
nSe、CdZnSeであることが好ましい。この場
合、半導体発光層は、上記半導体超格子を形成するCd
ZnSeより厚いCdZnSeからなる量子井戸層と、
ZnSeからなる量子障壁層とで構成される単一量子井
戸層または多重量子井戸層であることが好ましい。
【0013】また、本発明の他の半導体発光装置(請求
項2)は、半導体基板上に形成された第1導電型のクラ
ッド層と、この第1導電型のクラッド層上に形成され、
VI族元素を含む発光材料からなる活性層と、この活性層
上に形成され、前記第1導電型のクラッド層、前記活性
層とともにダブルヘテロ接合部を形成する第2導電型の
クラッド層と、前記二つのクラッド層の少なくも一方に
挿入され、タイプIIの半導体超格子により形成され、且
つ多重量子障壁層が形成されている半導体超格子層とを
備えたことを特徴とする。
【0014】ここで、VI族元素を含む発光材料として、
カルコゲナイド半導体(II-VI 化合物半導体、I-III-VI
族半導体)を用いることが好ましい。また、II族元素と
してはZnが好ましい。
【0015】また、p型クラッド層の形成に用いるp型
不純物としては、N、P、As、Liが好ましい。p型
クラッド層は2.7eV以上の禁止帯幅を持ち、且つ半
導体超格子層はTeを含む亜鉛化合物からなることが好
ましい。
【0016】
【作用】本発明の半導体発光装置(請求項1)によれ
ば、半導体超格子層により形成された光ガイド層に多重
量子障壁構造を持たせているので、光ガイド層の発光層
のキャリアに対するバリアは、量子井戸効果によって増
加する。
【0017】このため、光ガイド層に、半導体超格子層
により光り閉じ込めの役割だけでなく、半導体発光層内
にキャリアを閉じ込める役割も持たせることができる。
【0018】したがって、例えば、半導体発光層として
青色発光に必要なワイドギャップ半導体層を用いて、ダ
ブルヘテロレーザを形成する場合に、半導体発光層とク
ラッド層との間のバンドギャップが小さくても、本発明
の光ガイド層によるキャリアの閉じ込め効果によって、
従来よりも半導体発光層のキャリアの漏れを少なくで
き、短波長(青色)の光に対しても良好な発光特性を示
す半導体発光装置が得られる。
【0019】また、本発明の他の半導体発光装置(請求
項2)によれば、クラッド層に半導体超格子層が挿入さ
れているので、クラッド層内の不純物は上記半導体超格
子層によってトラップされる。
【0020】したがって、クラッド層内の不純物が活性
層に拡散することによる特性劣化を抑制できる。
【0021】更に、上記半導体超格子層は、タイプIIの
超格子により形成されているので、タイプIの超格子に
より形成された半導体超格子層に比べて、活性層に対す
るバリアは高いものとなる。しかも、上記半導体超格子
層には多重量子障壁層が形成されているので、多重量子
障壁効果によって更にバリアは高くなる。
【0022】したがって、青色光の発生に必要なワイド
ギャップ半導体からなる活性層を用いても、活性層内に
キャリアを十分に閉じ込めることができ、短波長(青
色)の光に対しても良好な発光特性を示す半導体発光装
置が得られる。
【0023】
【実施例】以下、図面を参照しながら実施例を説明す
る。
【0024】図1は、本発明の第1の実施例に係る半導
体レーザ装置の概略構造を示す断面図である。なお、括
弧内の具体的な材料名、厚さ、ドーピングキャリア濃度
は一例であってこれに限定されるものではない。
【0025】図中、1はp型GaAs基板を示してお
り、このp型GaAs基板1上にはp型InGaP基板
表面層2(厚さ100nm、キャリア濃度2×1018
-3)、p型InGaAlPワイドギャップ層3(厚さ
100nm、キャリア濃度1×1018cm-3)、p型I
nGaP表面層4(厚さ5nm、キャリア濃度2×10
18cm-3)が順次形成されている。
【0026】p型InGaP表面層4上には、p型Zn
Seバッファ層5(厚さ100nm、キャリア濃度1×
1018cm-3)を介して、下部クラッド層6、下部半導
体超格子光ガイド層7、下部半導体障壁層8、半導体発
光層9、上部半導体障壁層10、上部半導体超格子光ガ
イド層11、上部クラッド層12が順次設けられ、発光
領域となる多重ヘテロ構造部が形成されている。
【0027】上部クラッド層12上には、MgSeエッ
チング停止層13が形成され、このMgSeエッチング
停止層13(厚さ2nm)上には、p型ZnSe電流阻
止層14(厚さ1μm、キャリア濃度1×1018
-3)が形成されている。このp型ZnSe電流阻止層
14およびMgSeエッチング停止層13の開口部に当
たる上部クラッド層12およびp型ZnSe電流阻止層
14上には、n型ZnSe埋め込み層15(厚さ3μ
m、キャリア濃度1×1018cm-3)が形成されてい
る。
【0028】n型ZnSe埋め込み層15上には、n型
ZnSeキャップ層16(厚さ500nm、キャリア濃
度1×1019cm-3)が形成され、このn型ZnSeキ
ャップ層16上には、全面にわたって、Al層(厚さ1
00nm)、Ti層(50nm)、Pt層(50n
m)、Au層(300nm)がこの順で積層されてなる
n側電極17が形成されている。また、p型GaAs基
板1側にはAuZn/Auからなるp側電極18が形成
されている。
【0029】図2は、図1の半導体レーザ装置の多重ヘ
テロ構造部の詳細な構造を示す伝導帯のエネルギーバン
ド図である。
【0030】下部クラッド層6は、p型ZnSe層(厚
さ2μm、キャリア濃度1×1018cm-3)からなり、
また、上部クラッド層12は、n型ZnSe層(厚さ
0.5μm、キャリア濃度1×1018cm-3)からな
る。
【0031】下部半導体超格子光ガイド層7および上部
半導体超格子光ガイド層11は、それぞれ、CdZnS
e(Cd組成0.3)超格子7aとZnSe超格子7b
とが交互に積層した構造、およびCdZnSe(Cd組
成0.3)超格子11aとZnSe超格子11bとが交
互に積層した構造になっており、CdZnSe超格子7
a、11aおよびZnSe超格子7b、11bの厚さは
伴に2nm、そして、CdZnSe超格子7a、11a
およびZnSe超格子7b、11bの層数は伴に5層で
ある。
【0032】下部半導体障壁層8および上部半導体障壁
層10は伴にZnSe層(厚さ10nm)からなり、ま
た、半導体発光層9はCdZnSe(Cd組成比0.
3、厚さ10nm)で形成された単一の量子井戸層から
なる。
【0033】このように構成されたレーザ素子を共振器
長500μmに劈開し、銅製のヒートシンクにIn半田
を用いてマウントし、その特性を室温において評価し
た。その結果、発振波長は525nmであり、また、連
続発振での発振しきい値電流は40mAであった。この
ときの動作電圧は2.75で、また、連続発振の最高発
振温度は90℃であった。すなわち、本実施例によれ
ば、従来困難であった室温での連続発振ばかりでなく、
室温での実用に十分な信頼性を確保するのに必要な高温
までの発振が得られた。
【0034】このような良好な結果が得られたのは次の
ように考えられる。
【0035】本実施例では、下部半導体超格子光ガイド
層7および上部半導体超格子光ガイド層11を、半導体
発光層9より薄いCdZnSe超格子とZnSe超格子
とで形成している。
【0036】これにより、図3に示すように、下部半導
体超格子光ガイド層7および上部半導体超格子光ガイド
層11の屈折率を、半導体発光層9の屈折率と下部クラ
ッド層6(上部クラッド層12)の屈折率との間にする
ことができる。また、半導体発光層9からの発光に対し
て下部半導体超格子光ガイド層7および上部半導体超格
子光ガイド層11が透明になっている。
【0037】このため、半導体発光層9への光り閉じ込
めを大幅に改善できる。例えば、本実施例の半導体レー
ザ装置の光閉じ込め量は、下部半導体超格子光ガイド層
7および上部半導体超格子光ガイド層11が無いものに
比べて、約3倍も増加するようになる。
【0038】また、CdZnSe超格子とZnSe超格
子とは極薄なものなので、格子定数差による転位の発生
を抑制できる。
【0039】このため、下部半導体超格子光ガイド層
7、上部半導体超格子光ガイド層11の転位が半導体発
光層9に伸張し、非発光再結合が増加するという問題は
生じない。このような超格子構造の光ガイド層を用いる
ことで、転位の発生の防止と屈折率の制御の両立が困難
なCdZnSe/ZnSe系などのワイドギャップ II-
VI族化合物半導体の青色光材料の使用が可能なる。
【0040】また、下部半導体超格子光ガイド層7、上
部半導体超格子光ガイド層11は、それぞれ、下部半導
体障壁層8、上部半導体障壁層10によって、半導体発
光層9と隔てられている。
【0041】このため、半導体発光層9から下部半導体
超格子光ガイド層7、上部半導体超格子光ガイド層11
へのキャリアの熱的放出に対するバリアは高く保持さ
れ、同様に、トンネル電流によるキャリアの放出も抑制
できる。したがって、半導体発光層9内にキャリアを良
好に閉じ込めることができ、動作電圧を低くできる。
【0042】また、下部半導体超格子光ガイド層7、上
部半導体超格子光ガイド層11が高い反射率を有するよ
うに、CdZnSe超格子およびZnSe超格子の厚さ
を設定しているので、つまり、下部半導体超格子光ガイ
ド層7、上部半導体超格子光ガイド層11がMQB効果
を発揮できるように、CdZnSe超格子およびZnS
e超格子の厚さをしている。
【0043】このため、下部半導体障壁層8、上部半導
体障壁層10の伝導帯レベルよりも大きなエネルギーを
有するキャリアに対しも、下部半導体超格子光ガイド層
7、上部半導体超格子光ガイド層11は有効なバリアと
して機能する。
【0044】図4は、動作時における伝導帯電子のう
ち、漏れ電流の原因となるクラッド層下端よりも大きな
エネルギーを有する電子の分布状態を示す図である。
【0045】図4から下部半導体超格子光ガイド層7、
上部半導体超格子光ガイド層11による電子の多重反射
により、半導体発光層9に分布する電子の数が大きくな
っていることが分かる。
【0046】すなわち、下部半導体超格子光ガイド層
7、上部半導体超格子光ガイド層11の存在によって、
定常状態において電子分布は共鳴状態を形成し、半導体
発光層9の量子井戸層上で電子数が大きい分布が形成さ
れる。このため、特に大きな漏れ電流の低減に効果があ
った。
【0047】かくして本実施例によれば、光ガイド層と
して、超格子からなり、且つMQB効果を持つ下部半導
体超格子光ガイド層7、上部半導体超格子光ガイド層1
1を使用しているので、発振に必要な利得を生じる半導
体発光層9への光および注入キャリアの閉じ込めが効果
的に行なわれる結果、青色光材料であるワイドギャップ
II-VI族化合物半導体を用いても、室温以上の高温でも
連続発振できる半導体装置が得られる。
【0048】次に本実施例の変形例や他の利点・特徴に
ついて説明する。
【0049】まず、本実施例では、半導体発光層9とし
て、CdZnSeからなる単一量子井戸構造のものを用
いたが、CdZnSe/ZnSe多層構造からなる多重
量子井戸構造でも同様な効果が得られる。
【0050】また、本実施例では、半導体発光層9の両
側に半導体障壁層8,10および半導体超格子光ガイド
層7,11を設けたが、どちらか一方であっても良い。
特に下部クラッド層(p型クラッド層)6側に設けるこ
とにより電子の漏れを防ぎやくなりその効果は大きかっ
た。
【0051】また、半導体発光層9、半導体障壁層8,
10、半導体超格子光ガイド層7,11、クラッド層
6,12の組み合わせについては、いろいろな組み合わ
せが可能であり、例えば、半導体発光層9をCdZnS
とし、半導体超格子光ガイド層7,11をCdZnS/
ZnSとしたものや、グラッド層6,12をZnMgS
eSとし、半導体超格子光ガイド層7,11を組成の異
なる2種類のZnMgSeSとしたものや、クラッド層
6,12をCdZnMgSeとし、半導体超格子光ガイ
ド層7,11を組成の異なる2種類のCdZnMgSe
としたものなどでも同様の効果がみられた。
【0052】また、本実施例では、p型GaAs基板1
上にp型InGaP基板表面層2、p型InGaAlP
ワイドギャップ層3、p型InGaP表面層4を形成し
た上に、p型ZnSeバッファ層5を介して、下部クラ
ッド層6を形成している。これは良好な結晶性と、電圧
降下の小さなヘテロ界面を提供するためのものであり、
同様の効果の得られる材料、構造であれば、本実施例と
異なっていても良い。
【0053】また、本実施例では、上部クラッド層12
上にMgSeエッチング停止層13、p型ZnSe電流
阻止層14およびn型ZnSe埋め込み層15による電
流狭窄構造を形成している。これは電流の横方向への拡
散による動作電流の増加を防ぐためのものであり、同様
の効果の得られる電流狭窄構造であれば、本実施例と異
なっていても良い。
【0054】また、本実施例の素子構造は、レーザ動作
に対し有利なものであるが、本構造を発光ダイオードに
適用しても、注入されたキャリアを半導体発光層に有効
に閉じ込められるという特性が得られ、発光ダイオード
を高効率に動作させることができた。
【0055】また、本実施例に示した構造は、その作成
上も大きな利点を有している。
【0056】すなわち、分子線エピタキシー法(MBE
法)などで成長する場合、本実施例の場合、素子構造が
ZnSeおよびCdZnSeの2種類の材料によっての
み構成されることから、蒸発源と基板との間のシャッタ
ーを開閉することで、原料ビームを切り替え、蒸発源の
温度を変えることなく、超格子の作成が可能となる。し
たがって、急峻な界面を持ち、制御性、安定性に優れた
超格子の作成が可能である。
【0057】このような事情は、水素化物などのガスや
有機金属などを用いたいわゆるCBE法(Chemical Bea
m Epitaxy)や有機金属気相成長法(MOCVD法)で
も、ガスや有機金属などの流量を変えることなく、バル
ブやシャッター操作のみで成長が可能であり、MBE法
と同等である。
【0058】特に、CdZnSe/ZnSeなどの場合
は、ZnおよびSeのビームを一定の強度で基板に照射
しながら、一定の強度のCdビームをシャッターの開閉
により、ある時間、基板に照射することにより半導体超
格子層を形成できることから、非常に優れた再現性を得
ることが可能となる。このような事情はCdZnS/Z
nSなどの超格子の成長においても同等である。
【0059】図5は、本発明の第2の実施例に係る発光
ダイオードの概略構造を示す断面図である。
【0060】図中、21はn型GaAs基板を示してお
り、このn型GaAs基板21上には、n型ZnS0.09
Se0.91クラッド層22、ZnSe活性層23、p型Z
nS0.09Se0.91クラッド層24a、ZnSSe/Zn
TeタイプII超格子層25、p型ZnS0.09Se0.91
ラッド層24bが順次成長されている。このp型ZnS
0.09Se0.91クラッド層24bにはAu電極26が設け
られ、また、n型GaAs基板21にはAuGe合金電
極27が設けられている。
【0061】ZnSSe/ZnTeタイプII超格子層2
5は、多重量子障壁構造を有し、超格子層を構成するZ
nSSe超格子、ZnTe超格子の厚さは伴に2nm
で、その周期は4で、そして、各超格子の平均の格子定
数はn型GaAs基板21に整合している。また、p型
ZnS0.09Se0.91クラッド層24bの厚さは20nm
である。
【0062】各層はMOCVD法により形成し、その成
長条件は、例えば、ジメチル亜鉛供給量20μmol/
min、ジメチルセレン供給量40μmol/min、
ジエチル硫黄供給量5〜20μmol/min、ジイソ
プロピルテルル供給量50μmol/min、ジブロモ
プロパン40μmol/min、アンモニア4000μ
mol/min、成長温度500℃、成長圧力1atm
とする。n型ZnS0.09Se0.91クラッド層22は塩素
を添加して形成し、p型ZnS0.09Se0.91クラッド層
24aは窒素原料としてアンモニアを用い窒素を添加し
て形成する。成長温度はいずれの層も500℃である。
【0063】図6は、本実施例の発光ダイオードの電流
−光出力特性を示し、比較例として、ZnSSe/Zn
TeタイプII超格子層25がない従来の発光ダイオード
のそれも示してある。
【0064】本実施例の場合には、順方向の立ち上がり
電圧が2.5Vと低く、ダイオード特性を現すn値も
1.7と小さい。また、光出力は数m〜100mAの範
囲で電流に比例して増大することが分かる。
【0065】このような良好が結果が得られたのは次の
ように説明される。
【0066】図7は、本実施例の発光ダイオードの電圧
印加時におけるエネルギーバンド図である。図中、25
a,25bはそれぞれZnSSe/ZnTeタイプII超
格子層25を構成するZnTe超格子、ZnSSe超格
子を示している。
【0067】本実施例の場合、価電子帯のホールは、Z
nSe活性層23とn型ZnS0.09Se0.91クラッド層
22との間のバンドオフセットが100meVであるた
め、ZnSe活性層23内に閉じ込められる。
【0068】一方、伝導帯の電子は、ZnSSe/Zn
TeタイプII超格子層25により、ZnSe活性層23
とp型ZnS0.09Se0.91クラッド層24a,24bと
の実効的なバンドオフセットが0.5eV程度大きくな
るために、ZnSe活性層23内に閉じ込められる。
【0069】このようにバンドオフセットが大きくなる
理由には大きく分けて二つある。
【0070】第1の理由、本実施例の場合、p型クラッ
ド層内にタイプII超格子層を挿入した構造になっている
からである。すなわち、ZnSSe/ZnTeタイプII
超格子層25はタイプII超格子で形成されているため、
その伝導帯レベルは、図7に示すように、ZnSe活性
層23のそれよりも高く、電子に対する十分なバリアが
形成されるからである。ここで、p型クラッド層内にタ
イプI超格子層を挿入した場合には、ZnSe活性層2
3の伝導帯レベルとタイプI超格子層とのそれは略等し
くなり、本実施例のように高いバリアは形成されない。
このように超格子として特にタイプIIを用いることによ
り、比較例に比べて、伝導帯のバンドオフセットを大き
くできる。
【0071】第2の理由は、ZnSSe/ZnTeタイ
プII超格子層25に多重量子障壁構造が形成されている
からである。すなわち、ZnSSe/ZnTeタイプII
超格子層25の実効的な伝導帯レベルは、ZnSSe/
ZnTeタイプII超格子の伝導帯レベルに多重量子障壁
効果による伝導帯レベルの増加を加えたものになる。
【0072】このようにタイプII超格子から形成され、
且つ多重量子障壁構造を有する超格子層が挿入されたp
型クラッド層を用いることにより、従来に比べて、大幅
に、伝導帯のバンドオフセットを大きくできる。
【0073】これに対して、比較例の場合には、光出力
自体が小さい上に、10mAを超えると既に光出力の飽
和傾向が見られる。この原因は、伝導帯のバンドオフセ
ットが小さく、電流レベルを上げると容易にキャリアオ
ーバーフローが生じ、発光に寄与しない電流成分が増大
するからである。
【0074】次に本発明に係る第3の実施例について説
明する。本実施例が第2の実施例と異なる点は、p型Z
nS0.09Se0.91クラッド層のp型不純物としてリチウ
ムを用いていることにある。
【0075】リチウムは結晶中を容易に拡散し得る不純
物ではあるが、ZnSe系の材料ではp型伝導を示すア
クセプタとして注目されている。しかし、リチウムはp
n接合を形成した場合に容易にn型半導体層中に拡散し
てしまうため、実際のデバイスに用いるには難しいとい
う問題があった。
【0076】このような問題があっても、本実施例によ
れば、p型ZnS0.09Se0.91クラッド層中に添加され
たリチウムは、図8のSIMS分析(任意単位)から分
かるように、ZnSe活性層23の近傍の超格子層中に
トラップされる。これは超格子界面におけるポテンシャ
ルの差によりリチウムの拡散が抑制されるためと説明さ
れる。
【0077】更に、Teを含むZnTe超格子25aの
場合、p型不純物の制御が容易でリチウムの添加により
高キャリア濃度が達成される。したがって、超格子層を
ホールが伝導する障壁とならない。
【0078】図9は、本実施例とその比較例として超格
子層を挿入しない素子とについての電流−電圧特性を示
す図である。
【0079】本実施例の場合、順方向の立ち上がり電圧
が2.5Vと低く、n値も1.7と良好なpn接合の形
成が示されているのに対して、比較例の場合、立ち上が
りで、電流が緩やかに増大する上に、n値が10以上と
pn接合の形成が認められず、MIS型のデバイス特性
を示した。
【0080】この違いは、本実施例ではリチウムの拡散
が無く、高濃度のリチウムによりpn接合が形成されて
いるのに対して、比較例ではリチウムの拡散によりn型
半導体層の高抵抗化が生じていることに起因する。
【0081】また、本発明者等の研究によれば、ZnS
Se/ZnTeタイプII超格子層25の厚さは10〜5
0nm程度、量子井戸層の厚さが1〜8nm程度、超格
子25a,25bの厚さが1〜8nm程度、周期数が4
〜10程度の場合に良好なキャリア閉じ込め効果を示す
ことが分かった。
【0082】次に第2および第3の実施例の変形例につ
いて説明する。
【0083】上記実施例では、活性層材料としてZnS
eを用いたが、その代わりにZnSSe、MgZnSS
e、CdZnSSe等の他のカルコゲナイド半導体を用
いても良い。
【0084】また、上記実施例では、p型ZnS0.09
0.91クラッド層24a,24bにZnSSe/ZnT
eタイプII超格子層を挿入したが、要はp型クラッド層
に電子親和力が活性層に比べて小さい材料を含むタイプ
2超格子からなる超格子層を挿入すれば良い。
【0085】また、超格子バリア層の構成材料も種々変
更可能であり、例えば、ZnTeの代わりに、ZnSe
Te,ZnSSeTe等を用いることもできる。
【0086】また、リチウム以外の不純物、例えば、
N、P、Asをp型クラッド層に添加しても良い。
【0087】また、n型クラッド層にタイプII超格子層
を挿入しても良い。
【0088】なお、本発明は上述した実施例に限定され
るものではない。例えば、上記第2および第3の実施例
では、発光ダイオードの場合について説明したが、本発
明(請求項2)は半導体レーザにも適用でき、室温で青
色のレーザ発振を得ることが可能であるまた、基板上に
バッファ層を形成しても良いし、基板についてGaAs
に限らず他の III-V族族半導体や、 II-VI族半導体を用
いても良い。
【0089】その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲
で、種々変形して実施できる。
【0090】
【発明の効果】以上詳述したように本発明(請求項1)
によれば、半導体超格子層により形成された光ガイド層
に多重量子障壁構造を持たせているので、光ガイド層の
発光層のキャリアに対するバリアは、多重量子障壁効果
によって増加し、光ガイド層に光り閉じ込めの役割だけ
でなく、キャリアの閉じ込めの役割も持たせることがで
きる。したがって、半導体発光材料として、青色発光に
必要なワイドギャップ半導体層を用いても、光ガイド層
によるキャリアの閉じ込め効果によって、従来よりも半
導体発光層のキャリアの漏れを少なくでき、短波長(青
色)の光に対しても良好な発光特性を示す半導体発光装
置が得られる。
【0091】また、本発明(請求項2)によれば、クラ
ッド層に半導体超格子層が挿入されているので、クラッ
ド層内の不純物は上記半導体超格子層によってトラップ
される。更に、上記半導体超格子層は、タイプIIの超格
子により形成されているので、活性層に対するバリアは
高いものとなり、しかも、上記半導体超格子層には多重
量子障壁構造を持たせているので、多重量子障壁効果に
よって更にバリアは高くなる。したがって、青色光の発
生に必要なワイドギャップ半導体からなる活性層を用い
ても、活性層内にキャリアを十分に閉じ込めることがで
き、短波長(青色)の光に対しても良好な発光特性を示
す半導体発光装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る半導体レーザ装置
の概略構造を示す断面図。
【図2】図1の半導体レーザ装置の多重ヘテロ構造部の
詳細な構造を示す伝導帯のエネルギーバンド図。
【図3】図1の半導体レーザ装置の多重ヘテロ構造部の
バンド構造と屈折率との関係を示す図。
【図4】多重ヘテロ構造部の漏れ電流の原因となる電子
の分布状態を示す図。
【図5】本発明の第2の実施例に係る発光ダイオードの
概略構造を示す断面図。
【図6】図5の発光ダイオードの電流−光出力特性と比
較例のそれを示す図。
【図7】図5の発光ダイオードの電圧印加時のエネルギ
ーバンド図。
【図8】SIMS分析によるリチウムの分布状態を示す
図。
【図9】本発明の第3の実施例に係る発光ダイオードの
電流−光出力特性と比較例のそを比較して示す図。
【図10】従来の青緑色半導体レーザ装置の概略構造を
示す断面図。
【符号の説明】
1…p型GaAs基板、2…p型InGaP基板表面
層、3…p型InGaAlPワイドギャップ層、4…p
型InGaP表面層、5…p型ZnSeバッファ層、6
…下部クラッド層、7…下部半導体超格子光ガイド層、
8…下部半導体障壁層、9…半導体発光層、10…上部
半導体障壁層、11…上部半導体超格子光ガイド層、1
2…上部クラッド層、13…MgSeエッチング停止
層、14…p型ZnSe電流阻止層、15…n型ZnS
e埋め込み層、16…n型ZnSeキャップ層、17…
n側電極、18…p側電極、21…n型GaAs基板、
22…n型ZnS0.09Se0.91クラッド層、23…Zn
Se活性層、24a,24b…p型ZnS0.09Se0.91
クラッド層、25…ZnSSe/ZnTeタイプII超格
子層、25a…ZnTe超格子、25b…ZnSSe超
格子、26…Au電極、27…AuGe合金電極。
フロントページの続き (72)発明者 鎌田 敦之 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (72)発明者 ジョン・レニー 神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内 (56)参考文献 特開 平4−273491(JP,A) 特開 平6−237039(JP,A) 特開 昭63−46788(JP,A) 特開 平4−114486(JP,A) 特開 平5−291687(JP,A) 特開 平5−175605(JP,A) 特開 平6−216460(JP,A) 特開 平6−196801(JP,A) Electron.Lett.22[19 ](1986)p.1008−1010 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01S 5/00 - 5/50 H01L 33/00 JICSTファイル(JOIS)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】第1導電型のクラッド層と、 この第1導電型のクラッド層上に形成された活性層と、 この活性層上に形成され、前記第1導電型のクラッド層
    および前記活性層とともにダブルヘテロ接合部を形成す
    る第2導電型のクラッド層と、 前記二つのクラッド層の少なくとも一方の内部に、前記
    活性層と所定距離離して設けられた、タイプIIの半導体
    超格子により形成されて前記クラッド層よりも屈折率の
    高い半導体超格子光ガイド層と、 を具備してなることを特徴とする半導体発光装置。
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