JP3302669B2 - 偏波共用アンテナ装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、移動体通信基地局
に使用される偏波共用アンテナ装置に関し、特に、６セ
クターアンテナとして、４５度および３１５度偏波にお
いて水平面半値幅が６０度または６０度以下の指向特性
が得られる偏波共用アンテナ装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】通常、移動体通信用のアンテナ装置につ
いて、例えば、自動車携帯電話では、１つの基地局がカ
バーするエリアを扇形状のセクタに分割することによ
り、周波数利用効率を向上させている。このように、該
エリアを扇形状に分割するためには、該基地局アンテナ
に、指向性アンテナ装置を用いて、希望する扇形状の範
囲のみに電波が放射されるようにする必要がある。例え
ば、前記エリアを６つに分割する場合には、水平面内ビ
ーム幅が６０゜であるビームアンテナ装置が用いられ
る。

【０００３】従来、この種のアンテナ装置について、例
えば、図１０（ａ）および図１０（ｂ）に示すような４
５度および３１５度偏波共用アンテナ装置がある。図１
０（ａ）において、前記偏波共用アンテナ装置１が、２
組、上下方向に並列して配設されており、該それぞれの
偏波共用アンテナ装置１は、直交型ダイポール素子２を
横幅約１波長（該直交型ダイポール素子２の共振周波数
の約１波長）の反射板３上に配設し、約１／４波長の平
衡不平衡変換器４を介して、給電線路５ａ，５ｂに接続
されている。

【０００４】すなわち、該アンテナ装置１については、
垂直方向に立設された誘電体基板６に平行する同一平面
内に、水平面に対して、それぞれ約４５度傾斜するとと
もに、十字形状に直行する前記直交型ダイポール素子２
の、２個の半波長のダイポール素子２ａ，２ｂが配設さ
れるとともに、前記誘電体基板６にほぼ垂直に立設され
た前記平衡不平衡変換器４，４で、その基板６側の一端
部が給電線路（誘電体基板６に形成）５ａ，５ｂにそれ
ぞれ接続された該変換器４，４の他端部に接続されてい
る。

【０００５】そして、該アンテナ装置１の前記直交型ダ
イポール素子２の、４５度方向と、３１５度方向とに対
応するそれぞれの前記ダイポール素子２ａ，２ｂは、前
記それぞれの給電線路５ａ，５ｂを経て、前記誘電体基
板６に設けられた接続端子７ａ，７ｂに接続されてい
る。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところで、前述のよう
な偏波共用アンテナ装置１は、８００ＭＨｚ帯の移動通
信用基地局アンテナとして使用する場合、比帯域１７％
の広帯域特性と、６セクターとして６０度の水平面指向
特性を得る必要がある。しかしながら、図１１および図
１２に示すように、前記アンテナ装置１の電圧定在波比
（V.S.W.R.）は、比帯域が約１０％、水平面指向特性は
約８０度しか得られず、また、８０度以下には設定でき
ないという問題点があった。

【０００７】本発明はかかる点に鑑みなされたもので、
その目的は前記問題点を解消し、電圧定在波比の広帯域
特性を有するとともに、６０度、またはそれ以下の水平
面指向特性が得られる偏波共用アンテナ装置を提供する
ことにある。

【０００８】本発明の他の目的は、水平面内指向性が、
所望に応じて設定できる偏波共用アンテナ装置を提供す
ることにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の本発明の構成は、ほぼ垂直方向に立設された誘電体基
板上に形成され、給電線路に接続される４個の平衡不平
衡変換器と、該平衡不平衡変換器にそれぞれ接続され、
前記基板にほぼ垂直に立設される４対の平衡２線線路
と、該平衡２線線路のそれぞれの先端に接続され、水平
面に対して、それぞれ約４５度傾斜するとともに、互い
に正方形状の菱形を形成するように、前記誘電体基板に
平行する同一平面内に配設される４個の折り返しダイポ
ール素子とからなるアンテナ装置であって、次のとおり
である。

【００１０】該アンテナ装置が、金属反射板の前方に近
接して配設される装置である。

【００１１】また、前記正方形状の菱形を形成するよう
に配設された４個の折り返しダイポール素子の対向する
該ダイポール素子の間隔が、水平面指向特性に応じて設
定される装置である。

【００１２】また、前記４個の平衡不平衡変換器が、前
記水平面に対して、それぞれ約４５度傾斜するととも
に、直交する十字状に形成され、該十字状の中心側が、
それぞれ前記給電線路に接続される装置である。

【００１３】そして、前記４個の平衡不平衡変換器のう
ち、それぞれ対向する２個の前記変換器の前記中心側
の、前記給電線路との接続部をそれぞれ接続して、対応
する前記折り返しダイポール素子の４５度方向と、３１
５度方向とに対するそれぞれの出力信号を、前記それぞ
れの給電線路に出力する装置である。

【００１４】さらに、前記アンテナ装置が、垂直方向に
複数段に配設され、前記折り返しダイポール素子の４５
度方向と、３１５度方向とに対応するそれぞれの出力信
号を出力する前記給電線路を、前記誘電体基板のそれぞ
れ左、右側に配置するとともに、該給電線路が、さら
に、並列給電方式またはコーポレート給電方式（トーナ
メント形）にて接続される装置である。

【００１５】本発明は、以上のように構成されているの
で、ほぼ垂直方向に立設される前記金属反射板の前方
に、該反射板に平行する同一平面内に、折り返しダイポ
ール素子を４個正方形状の菱形を形成するように配置
し、前記４個の平衡不平衡変換器を直行して配置するこ
とにより、電圧定在波比の広帯域特性が得られる。ま
た、前記４個の平衡不平衡変換器のうち、それぞれ対向
する２個の前記変換器の出力を中央付近で接続、合成
し、それぞれの前記ダイポール素子の４５度方向と３１
５度方向に対応する２つの出力端子を設け、菱形状に配
置した４組の折り返しダイポール素子の対向する間隔
を、所望する水平面指向特性に応じて設定することによ
り、水平面半値幅が６０度、または６０度以下にするこ
とができる。

【００１６】さらに、この様な偏波共用アンテナ装置を
垂直方向に多段に配置し、４５度方向および３１５度方
向の出力端子を、前記誘電体基板のそれぞれ左、右側に
配置し、これらの端子を、並列給電方式またはコーポレ
ート給電方式（トーナメント形）にて接続することによ
り、移動体通信用基地局に適した高利得で垂直面指向特
性のビーム成形が可能となる。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の好
適な実施の形態を詳しく説明する。

【００１８】（第１実施例）図１ないし図４は、本発明
の偏波共用アンテナ装置の第１実施例を示す図で、図１
（ａ）は、該偏波共用アンテナ装置の正面図、図１
（ｂ）は、図１（ａ）の底面図、図２は、図１（ａ）の
中心部分の接続を示す要部接続拡大図、図３は、図１
（ｂ）の拡大図、図４は、図２の斜視図である。

【００１９】図１ないし図４において、偏波共用アンテ
ナ装置１１の２組が誘電体基板１６に、上下方向に並列
して配設され、横幅（水平方向の幅）が、該アンテナ装
置１１の共振周波数のほぼ１波長の長さを有する、ほぼ
垂直に立設された金属反射板１３の前方に、該誘電体基
板１６が近接して配置されている。その間隔は、３／１
００ないし５／１００波長が好ましい。

【００２０】１組の前記偏波共用アンテナ装置１１につ
いては、水平面（前記水平方向の平面）に、ほぼ垂直方
向に立設された前記誘電体基板１６に、４個の平衡不平
衡変換器１４ａ，１４ｂ，１４ｃ，１４ｄが、該水平面
に対して、それぞれ約４５度傾斜するとともに、直交す
る十字形状に配設され、その十字形状の中心側端で、該
変換器１４ａ，１４ｃ；１４ｂ，１４ｄが、それぞれの
給電線路１５ａ，１５ｂを通して、接続端子１７ａ，１
７ｂに接続されている。そして、前記それぞれの平衡不
平衡変換器１４ａ，１４ｂ，１４ｃ，１４ｄの平衡出力
部に接続され、前記アンテナ装置１１の共振周波数のほ
ぼ１／４波長の長さを有するそれぞれの平衡２線路１８
ａ，１８ｂ，１８ｃ，１８ｄが、前記誘電体基板１６か
らほぼ垂直に突出されている。

【００２１】前記誘電体基板１６から突出された前記平
衡２線路１８ａ，１８ｂ，１８ｃ，１８ｄのそれぞれの
先端には、折り返しダイポール素子１２ａ，１２ｂ，１
２ｃ，１２ｄがそれぞれ接続されている。これら４個の
前記折り返しダイポール素子１２ａ，１２ｂ，１２ｃ，
１２ｄは、前記水平面に対して、それぞれ約４５度傾斜
するとともに、互いに正方形状の菱形を形成するよう
に、前記誘電体基板１６に平行する同一平面内に配設さ
れている。そして、前記菱形に配置された４個の折り返
しダイポール素子１２ａ，１２ｂ，１２ｃ，１２ｄのう
ち、対向する２個の折り返しダイポール素子１２ａ，１
２ｃ；１２ｂ，１２ｄに接続される、それぞれの平衡不
平衡変換器１４ａ，１４ｃ；１４ｂ，１４ｄの出力を、
その中心側端付近で、それぞれ給電線路１５ａ，１５ｂ
をそれぞれ共通にして接続かつ合成し、該折り返しダイ
ポール素子１２ａ，１２ｃ；１２ｂ，１２ｄの、４５度
方向と３１５度方向とに対応する２つの偏波出力用の接
続端子１７ａ，１７ｂを、前記誘電体基板１６のそれぞ
れ左、右側端に設けて、該接続端子１７ａ，１７ｂに導
出している。

【００２２】ここで、前記折り返しダイポール素子１２
ａ，１２ｃ；１２ｂ，１２ｄは、共振周波数（または中
心周波数）の約１／２波長の長さで形成され、前記誘電
体基板（プリント基板）１６上に形成されたマイクロス
トリッブラインからなる給電線路１５ａ，１５ｂから、
同じく前記誘電体基板（プリント基板）１６上に形成さ
れた、例えば、分岐導体を用いた平衡不平衡変換器(バ
ラン)１４ａ，１４ｃ；１４ｂ，１４ｄを介し、さらに
該変換器１４ａ，‥‥，１４ｄの前記平衡出力部より前
記平衡２線路１８ａ，１８ｃ；１８ｂ，１８ｄに接続さ
れている。

【００２３】そして、図３および図４に示すように、前
記平衡２線路１８ａ，１８ｃ；１８ｂ，１８ｄのそれぞ
れの線径ｄ1およびその間隔ｄ2を、適切に選択すること
により、前記折り返しダイポール素子１２ａ，１２ｃ；
１２ｂ，１２ｄおよび前記給電線路（マイクロストリッ
ブライン）１５ａ，１５ｂとの整合がとれ、図５に示す
ような電圧定在波比の比帯域２０％以上の特性が得られ
る。

【００２４】また、図６は、前記菱形状に配設された前
記４個の折り返しダイポール素子１２ａ，１２ｃ；１２
ｂ，１２ｄのそれぞれの間隔を前記共振周波数の約０．
７波長の距離に配置し、前記金属反射板１３の横幅を約
１波長にした場合の水平面指向特性を示す。このとき、
水平面半値幅は６０度が得られる。また、図７に示すよ
うに、前記折り返しダイポール素子１２ａ，１２ｃ；１
２ｂ，１２ｄのそれぞれの間隔Ｄを任意に設定すること
により、図８に示すような水平面半値幅（角度）を得る
ことができる。

【００２５】図９は、本発明の偏波共用アンテナ装置の
第２実施例を示す図で、前記偏波共用アンテナ装置１１
を、垂直方向に複数段(図では８段)配設した図である。
図８において、前記菱形状に配設された前記４個の折り
返しダイポール素子１２ａ，１２ｃ；１２ｂ，１２ｄの
４５度方向および３１５度方向の偏波出力用の接続端子
１７ａ，１７ｂをそれぞれの誘電体基板１６の左、右側
端に配置し、複数段のものをそれぞれ分岐ケーブル２０
を介して、４電力分配器２１に接続し、該４電力分配器
２１により並列給電方式またはコーポレート給電方式
（トーナメント形）にて接続した偏波共用アンテナ装置
３１で、４５度方向および３１５度方向の偏波出力を偏
波出力端子２２ａ，２２ｂからそれぞれ出力させてい
る。

【００２６】前記アンテナ装置１１を、垂直方向に数段
配列することにより、高利得の偏波共用アンテナ装置３
１が得られ、また、複数段の折り返しダイポール素子１
２ａ，１２ｃ；１２ｂ，１２ｄに、任意の振幅および位
相の所定周波数の放射電力を与えることにより、移動体
通信用基地局に適した垂直面指向特性を得ることができ
る。

【００２７】なお、本発明の技術は前記実施の形態にお
ける技術に限定されるものではなく、同様な機能を果た
す他の態様の手段によってもよく、また本発明の技術は
前記構成の範囲内において種々の変更、付加が可能であ
る。

【００２８】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明の
偏波共用アンテナ装置によれば、ほぼ垂直方向に立設さ
れた誘電体基板上に形成される４個の平衡不平衡変換器
と、該平衡不平衡変換器にそれぞれ接続される４対の平
衡２線線路と、該平衡２線線路のそれぞれに接続され、
水平面に対して、それぞれ約４５度傾斜し、互いに正方
形状の菱形を形成するように、前記誘電体基板に平行す
る同一平面内に配設される４個の折り返しダイポール素
子とからなるアンテナ装置であって、該アンテナ装置
が、金属反射板の前方に近接して配設されるので、電圧
定在波比の広帯域特性を有するとともに、６０度、また
はそれ以下の水平面指向特性を有するアンテナ装置が得
られる。

【００２９】また、本発明は、対向する２組の平衡不平
衡変換の出力を中央付近で合成し、ダイポール素子の４
５度方向と３１５度方向に対応する２つの出力端子を有
し、前記菱型状に配置した４組の折返し型ダイポール素
子の対向する間隔を、水平面指向特性に応じて設定する
ことにより、水平面半値幅が６０度または６０度以下の
特性が得られる偏波共用アンテナが実現できる。

【００３０】さらに、前記偏波共用アンテナ装置が、垂
直方向に複数段に、配設されるので、４５度方向と３１
５度方向の偏波出力用の接続端子を左右に配置し、該端
子を並列給電方式またはコーポレート給電方式（トーナ
メント形）に接続することにより、移動体通信用基地局
に適した高利得で垂直面指向特性のビーム成形が可能と
なるアンテナが実現できるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の偏波共用アンテナ装置の実施の形態の
第１実施例を示す図で、図１（ａ）は、該偏波共用アン
テナ装置の正面図、図１（ｂ）は、図１（ａ）の底面図
である。

【図２】図１（ａ）の要部接続拡大図である。

【図３】図１（ｂ）の拡大図である。

【図４】図２の斜視図である。

【図５】本発明の４５度および３１５度偏波共用アンテ
ナ装置の周波数に対する電圧定在波比特性図である。

【図６】本発明の４５度および３１５度偏波共用アンテ
ナ装置の水平面指向特性図である。

【図７】本実施例の４５度および３１５度偏波共用アン
テナ装置の水平面内指向性を設定するための説明図であ
る。

【図８】図７の間隔Ｄに対する水平面半値幅（角度）を
示す特性図である。

【図９】本発明の偏波共用アンテナ装置の第２実施例を
示す正面図である。

【図１０】従来の４５度および３１５度偏波共用アンテ
ナ装置を示す図で、図１０（ａ）は、その正面図、図１
０（ｂ）は、図１０（ａ）の底面図である。

【図１１】従来の４５度および３１５度偏波共用アンテ
ナ装置の周波数に対する電圧定在波比特性図である。

【図１２】従来の４５度および３１５度偏波共用アンテ
ナ装置の水平面指向特性図である。

【符号の説明】

１１，３１ 偏波共用アンテナ装置 １２ａ，１２ｂ，１２ｃ，１２ｄ 折り返しダイポール
素子 １３ 反射板 １４ａ，１４ｂ，１４ｃ，１４ｄ 平衡不平衡変換器 １５ａ，１５ｂ 給電線路 １６ 誘電体基板 １７ａ，１７ｂ，１７ｃ，１７ｄ 接続端子 １８ａ，１８ｂ，１８ｃ，１８ｄ 平衡２線路 ２０ 分岐ケーブル ２１ ４電力分配器 ２２ａ，２２ｂ 偏波出力端子

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平５−283926（ＪＰ，Ａ) 特開 平９−130141（ＪＰ，Ａ) 特開 平９−98109（ＪＰ，Ａ) 特開 昭53−54（ＪＰ，Ａ) 特開 平９−98019（ＪＰ，Ａ) 特開 昭55−117307（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−236703（ＪＰ，Ａ) 特開 昭47−28845（ＪＰ，Ａ) 特開 昭56−114403（ＪＰ，Ａ) 特許2989813（ＪＰ，Ｂ１) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H01Q 19/17 H01Q 9/18 H01Q 21/08 - 21/24

Claims (5)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ほぼ垂直方向に立設された誘電体基板上
   に形成され、給電線路に接続される４個の平衡不平衡変
   換器と、該平衡不平衡変換器にそれぞれ接続され、前記
   基板にほぼ垂直に立設される４対の平衡２線線路と、該
   平衡２線線路のそれぞれの先端に接続され、水平面に対
   して、それぞれ約４５度傾斜するとともに、互いに正方
   形状の菱形を形成するように、前記誘電体基板に平行す
   る同一平面内に配設される４個の折り返しダイポール素
   子とからなるアンテナ装置であって、 該アンテナ装置
   が、金属反射板の前方に近接して配設されることを特徴
   とする偏波共用アンテナ装置。
2. 【請求項２】 前記正方形状の菱形を形成するように配
   設された４個の折り返しダイポール素子の対向する該ダ
   イポール素子の間隔が、水平面指向特性に応じて設定さ
   れることを特徴とする請求項１に記載の偏波共用アンテ
   ナ装置。
3. 【請求項３】 前記４個の平衡不平衡変換器が、前記水
   平面に対して、それぞれ約４５度傾斜するとともに、直
   交する十字状に形成され、該十字状の中心側が、それぞ
   れ前記給電線路に接続されることを特徴とする請求項１
   に記載の偏波共用アンテナ装置。
4. 【請求項４】 前記４個の平衡不平衡変換器のうち、そ
   れぞれ対向する２個の前記変換器の前記中心側の、前記
   給電線路との接続部をそれぞれ接続して、対応する前記
   折り返しダイポール素子の４５度方向と、３１５度方向
   とに対するそれぞれの出力信号を、前記それぞれの給電
   線路に出力することを特徴とする請求項３に記載の偏波
   共用アンテナ装置。
5. 【請求項５】 前記偏波共用アンテナ装置が、垂直方向
   に複数段に配設され、前記折り返しダイポール素子の４
   ５度方向と、３１５度方向とに対応するそれぞれの出力
   信号を出力する前記給電線路を、前記誘電体基板のそれ
   ぞれ左、右側に配置するとともに、該給電線路が、さら
   に、並列給電方式またはコーポレート給電方式（トーナ
   メント形）にて接続されることを特徴とする請求項４に
   記載の偏波共用アンテナ装置。