JP3301439B2 - 析出硬化性工具鋼 - Google Patents
析出硬化性工具鋼Info
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Description
製造するための析出硬化性工具鋼に関する。工具鋼は溶
液加熱処理及び室温への冷却後で工具製造時及び時効処
理による硬化前は、ロックウェルかたさ40HRC未満
であるが、工具製造及び続く時効硬化処理後、即ち析出
硬化状態においては、ロックウェルかたさ45HRC以
上である。鋼は非常に耐腐食性及びプラスチック成形工
具として十分な強靭さも有する。
ラスチック製品の成形例えば射出成形及び圧縮成形に使
用される。これらの工具はしばしば非常に大きいと同時
に、非常に複雑な形状でありうる。プラスチック成形作
業中、工具は非常に大きなストレス(応力):最初に機
械的応力、更に化学的侵食を受ける。これは特に下記の
ような、様々なタイプの工具の損傷の原因となる。 −摩耗 −塑性変形 −破壊(疲労)、及び −腐食
具の抵抗性にとって非常に重要性がある。主として、完
璧な工具鋼は、高容量であると同時に高信頼性を有する
プラスチック成形工具を製造するためには硬く、強靭で
耐腐食性であるべきである。他の重要なことは複雑な工
具が、比較的単純な方法、例えば切断作業で製造できる
ことであろう。これは、工具鋼がもし可能ならば、以下
の条件を満足することを意味する。 ・工具が製造されるとき(即ち初期条件)柔らかである
(ロックウェルかたさ40HRC未満)。 ・完成工具の簡単な熱処理手段によって、複雑な調整が
必要な工具の寸法あるいは形を変化させることなく鋼を
硬く(ロックウェルかたさ45HRC以上)することが
できる。
ック成形用の理想的工具鋼には、下記望ましい特性の組
み合わせが列記される。 1.初期条件でロックウェルかたさ40HRC未満。 2.簡単な熱処理でロックウェルかたさ45HRC以
上、好ましくは約50HRC以上、が達成される。 3.非常に大きな寸法(大きな工具)の場合にも同一の
硬度を有することが可能である。 4.硬度の上昇は、形または容量の複雑な変化を伴わず
に達成される。 5.鋼は、高耐食性、即ちステンレス型、である。 6.鋼は、十分強靭である。 7.鋼は、例えば簡単な表面処理などで非常に良好な耐
摩耗性を有する。
の鋼は、ステンレス鋼を含む鋼のカテゴリー(即ちクロ
ム含量が10%以上を有する鋼)に見出されなければな
らない。今日、非常に多くの市販の既成ステンレス鋼が
ある。既存の鋼型の徹底的技術評価は、所望特性に関す
る限り、以下のようにまとめることができる。 − オーステナイト、フェライト及びフェライト−オー
ステナイトステンレス鋼は、析出硬化性変化でなくと
も、硬度(2)に関する限り要件を満たす資質をもって
いない。 − 炭素マルテンサイトを基材とするマルテンサイトス
テンレス鋼(いわゆる13%クロム鋼など)はより優れ
た条件を有し、所望の特性の組合わせを提供する。これ
らの鋼は硬度(1及び2)に関する要件を満たすために
焼入れ及び焼戻しをしなければならないという事実のた
め、形状及び寸法安定性(4)に関する要件を満足しな
いだろう。その上、これらの鋼は通常耐食性が低い。 − 低炭素マルテンサイトを基材とする析出硬化性ステ
ンレス鋼(いわゆるPH・鋼)は、一般に所望の特性組
み合わせを満たすための最も近い条件を持っている。今
日、少なくとも約20種のこれらのタイプの鋼がある。
一般には、主要な3つのタイプ17−4PH,17−7
PH及び15−5PHがあり、最初の数字がクロム含量
を示し、2番目の数字がニッケル含量を示す。通常、析
出硬化性合金添加物として銅またはアルミニウムが使用
される。一般にこれらの鋼は優れた耐食性を持ってい
る。しかし、既成のPH−鋼の研究は、事実として、現
在のところ上記の要件をすべて満足しうる鋼は存在しな
いことを示している。これらの鋼の共通の欠点は、通常
析出硬化効果を提供することができない。即ち、それら
は重要な硬化条件(2)を満たすことができないことで
ある。
の特性を満足させうる入手可能な好適な鋼はない。
な、特に、上記の全ての要件(1−7)を満足させう
る、低炭素マルテンサイトを基材とするステンレス析出
硬化性鋼を提供することである。
ために、鋼は以下の特性を有する。 ・高温(900℃以上)でオーステナイトマトリックス ・低含有量の第一フェライト(δ−フェライト)、即ち
5%未満そして好ましくは測定不能量の第一フェライ
ト。 ・非常に高い硬化性、即ち、製品が非常に大きい寸法を
持つ場合でさえも、高温からの冷却によってマルテンサ
イトを形成しうる能力。 ・非焼戻し条件で得られたマルテンサイトの十分低い硬
度(ロックウェルかたさ40HRC以下) ・非焼戻しマルテンサイトの簡単な熱処理(例えば、か
なり低い温度での時効処理)によって十分な硬度(ロッ
クウェルかたさ45HRC以上)が達成しうる。 ・十分な強靭さを有するために時効処理された条件にお
いて、残っているオーステナイトの好適含量、好ましく
は5〜20%。
大きな寸法をもつ場合に鋼の熱間加工(鍛造,ローリン
グ)における問題とともに不均一な硬度の原因となる。
一方、残留オーステナイト含量が高すぎる場合は非常に
低い硬度の原因となり、残留オーステナイト含量が低す
ぎる場合は強靭さが不充分となる。
記の所望の特性を全て達成するには、いくつかの重要な
合金成分と鋼の組織中のそれらの含量の最適性との間に
複雑な相互作用を有する必要がある。一番大きな問題は
この最適性を有することであるが、以下の組成により十
分に達成された:最高0.08C,最高1Si,最高2M
n,9−13Cr,7−11Ni,最高1Mo,1.4〜2.
4Al及び残りは主として鉄、通常量の微量元素及び不
純物のみ。
されうる方法で相互に作用するので、各々の単独成分の
重要性と評価するのは難しい。それにも拘わらずこのよ
うな分析をする試みが以下の如くなされている。
温度域から室温に冷却すると得られる非焼戻しマルテン
サイトの硬度、にとって非常に重要である。硬度は炭素
含量を増やすと非常に増加する。この理由により炭素含
量は低く保たれなければならず、0.08%を超えては
ならず、好ましくは0.06%を超えない。しかし、鋼
製造に関する冶金上の理由から、そして鋼が柔らかくな
いようにというためにもある程度の量の炭素は鋼中に存
在するべきである。従って鋼は少なくとも0.01%の
炭素を含むであろう。炭素は、好ましいフェライトの形
成も妨げる、最適な炭素含量は0.02〜0.06%であ
る。
レス鋼製造実務の慣用法において、溶融鋼に脱酸化剤と
して添加されうる。しかし、ケイ素は強力なフェライト
安定剤である。従ってケイ素含量は約1%未満に制限さ
れるべきである。
成分である。マンガンはニッケル同様オーステナイト安
定剤であることは事実であるが、ニッケルほどの効果は
ない。更にマンガンはニッケルよりもMs及びMf温度を
低下させ、そのことも好ましくない。従って鋼中のマン
ガンの役割は、それ自体公知であるスルホン酸マンガン
を形成することによる脱硫剤としての使用に限られる。
しかし、合金がイオウとの合金を意図するのであれば
(それは、鋼の切断性を改良する常套手段である)、マ
ンガン含量を増やすことが考慮されるだろう。従って本
発明の鋼は、微量から2%までのマンガンを含むであろ
う。
優れた硬化性を与えることである。鋼に十分な耐食性を
与えるには、少なくとも9%のクロムが必要であり、好
ましくは少なくとも10%であり、この量は同時に高い
硬化性に対する基礎を与える。しかし、鋼中の合金成分
としてのクロムは、高温でのフェライト安定化であり、
低温での(Ms点及びMf点を減ずる)マルテンサイトへ
のオーステナイトの転換にも作用する。これはクロムが
好ましくない方法で残っているオーステナイトとδ−フ
ェライトを増加させる傾向があることを意味する。この
理由から、クロム含量は最高13%に制限されなければ
ならない。クロム含量の最適含量は11〜12%であ
る。
のように、ニッケルは硬化性を増し、耐食性を改善す
る。更にマルテンサイトの強靱さは本成分の添加によっ
て上昇する。しかし、本発明によればニッケルの使用を
必須にするものは、一方で、鋼中のδ−フェライト量を
減少させるというオーステナイト安定効果であり、他方
では、ニッケルとアルミニウムとの組み合わせは析出硬
化性に重要である点である。これはニッケル含量の下限
を設定する。しかし、クロム同様ニッケルも残留オース
テナイトを増加させるMs 点及びMf 点を減ずる。これ
が、予測的にニッケル含量の上限を設定する。ニッケル
のδ−フェライトと残留オーステナイトの存在に対する
効果は、それぞれ表2(それぞれ鋼1−4及び6〜7と
比較)に示されている。従って本発明によればニッケル
含量の有効範囲は、7〜11%、好ましくは8〜10
%、より好ましくは8.5〜9.5%と狭い。
であり、この点が、この成分の含量を最高1%に制限す
る。しかし、存在しないと時効処理中にマルテンサイト
構造の破壊(再生)を妨げるので、モリブデンの少量の
添加は好ましい。従って本発明の鋼は好ましくは0.1
〜0.6%のモリブデンを含有する。
Al)を形成しうる。この相はオーステナイトに高い溶
解性を持つが、時効処理によりマルテンサイト及びフェ
ライトに強力な析出硬化性効果(硬度の増加)をひきお
こす優れた分散析出物を与える。これが、本発明におい
てアルミニウムを重要成分にし、アルミニウム含量の下
限を少なくとも1.4%、好ましくは少なくとも1.6%
にする。しかし、アルミニウムはフェライトを安定化
し、従って鋼中に望ましくない量のδ−フェライトが存
在する危険を容易に高める。これがアルミニウム含量を
強く制限する。従って鋼は、最高2.2%より多いアル
ミニウム、好ましくは最高2.0%より多いアルミニウ
ムは含むべきではない。
る場合に好ましくない、鋼の研磨性を損なう硬いチッ化
物を形成するので、製造中に不可避的に溶解される以上
の量のチッ素を鋼は含んではならない。
炭化物及びチッ化物形成による鋼の安定化は、非常に硬
い炭化物粒子及びチッ化物粒子の形成をひきおこす。こ
のような粒子はプラスチック成形工具としての鋼の使用
目的には好ましくない。工具は優れた表面仕上げとなる
ようにみがかれうるべきだからである。従って、鋼は不
可避な極微量より多いニオブ,チタン,タンタルまたは
ジルコニウムを含んではならない。
良するためにできるだけ鋼に含まれるだろう。しかし、
イオウ含量は0.1%を超えるべきではない。
鋼が含まないことは経済的な観点から重要である。銅は
この点から鋼には望ましくない成分である。事実鋼に銅
を添加することなく前文で述べた特性(1−7)を提供
することが本発明の目的である。銅は析出硬化性に効果
的な強い影響を与えるという事実に拘わらず、鋼が不可
避な不純物として以上に銅を含まないことが本発明の特
長である。
分以外には鋼は鉄、不純物及び通常量の微量元素のみを
含む。合金は50kg実験溶融物の形で製造され、50kg
インゴットに鋳造された。 インゴットは、約1200
℃から熱いうちに鍛造し、断面が125×40mmの平た
い棒状にした。その後棒を大気中に放置し室温に冷却し
た。
で時効処理条件(500〜525℃/2h、次に室温に
空冷)で測定した。更に、合金中のフェライト及び残留
オーステナイトの量を測定した。測定値を表2に示し
た。
要求(上記1−3)を満たしうることは表2から明らか
である。他の要求(上記4−7)も満たしうるかどうか
を試験するために、主に表1のNo.2及び 3の鋼につい
て、時効処理、腐食試験、強靱さ試験及びチッ素実験に
ついては容量を変えて測定した。その結果は以下のよう
にまとめられる。
には0.05%)のほぼ均一な収縮をもたらす。これは
鋼が硬化、高温にさらされた従来の工具鋼に比較して非
常に優れた寸法安定性を持つことを示す。
腐食試験及びタイプ記録式分極グラフ(type registerin
g polarization graph)の腐食試験は、本発明の鋼が非
常に優れた腐食耐性、例えば17%クロム含有の17−
4PH級よりも優れた腐食耐性を有する。この驚くほど
高い腐食耐性は、本発明を特徴づけるCr,Ni及びA
l含量の特異な組み合わせの好ましい相乗効果になるよ
うである。
のいろいろな硬度について時効処理の後で行った。衝撃
強度は普通の鋼の様に硬度が高くなるにつれ低くなっ
た。強靱さのレベルは、通常のレベル(例えば、強靱
鋼)であり、プラスチック成形工具に使用するには全く
十分である。
処理方法である)を試験した。結果は本発明による鋼は
非常に優れたチッ化力を有しかつ非常に硬い(ビッカス
かたさ1400HV)耐摩耗性チッ化層が形成されうる
ことを示している。ステンレス鋼のこの特異な特徴の原
因は、アルミニウム含量が多いことであり、それは事実
本発明の鋼をステンレス“チッ化鋼”にする。
法としてチッ化を用いることの興味深い点は、時効処理
とチッ化が多くの応用例で実質的に簡素化を意味する一
工程として行いうることである。
た含量で表わされる)では、実験が比較的小規模の実験
室規模でなされたことを考慮した。量産段階ではより大
きい寸法が低い析出硬化効果、即ち、表2に示したのよ
りいく分低い時効処理後の硬度を与えるであろうことを
理解しなければならない。例えば、鋼製品が大きい寸法
であるならば表1,2の鋼No.11は硬度(ロックウェル
かたさ45HRC以上)に関して要求を満たしていな
い。
Claims (14)
- 【請求項1】 加熱処理及び室温への冷却後、工具製造
時及び時効処理による硬化前は、ロックウェルかたさ4
0HRC未満の硬度であるが、工具製造後及び、続く時
効硬化処理後、即ち、析出硬化状態においてはロックウ
ェルかたさ45HRCより硬く、高い耐食性及びプラス
チック成形工具として十分な強靱さを有し、 を含み、残りは鉄及び不純物であり、不可避な不純物で
存在する以上の量のNb、Ti、Ta及びZrからなる
群から選ばれる元素を含まず、析出硬化処理後、5〜2
0%の残留オーステナイト及び5%未満のフェライトを
含む実質的にマルテンサイト構造を有する、プラスチッ
ク成形工具製造用析出硬化性工具鋼。 - 【請求項2】 0.01〜0.07重量%Cを含む、請求
項1記載の鋼。 - 【請求項3】 少なくとも、10重量%Crを含む、請
求項1記載の鋼。 - 【請求項4】 11〜12重量%Crを含む、請求項1
記載の鋼。 - 【請求項5】 8〜10重量%Niを含む、請求項1記
載の鋼。 - 【請求項6】 8.5〜9.5重量%Niを含む、請求項
5記載の鋼。 - 【請求項7】 0.1〜0.6重量%Moを含む、請求項
1記載の鋼。 - 【請求項8】 1.6〜2.0重量%Alを含む、請求項
1記載の鋼。 - 【請求項9】 鋼の切断性を改善するために最高0.1
%の量のイオウを含む、請求項1から8のいずれか1項
記載の鋼。 - 【請求項10】 475〜550℃の温度で少なくとも
30分そして4時間未満の時効により析出処理後、5〜
20%の残留オーステナイト及び5%未満のフェライト
を含む実質的にマルテンサイト構造を有する、請求項1
から8のいずれか1項記載の鋼。 - 【請求項11】 請求項1から10のいずれか1項記載
の鋼で製造されたプラスチック成形工具。 - 【請求項12】 請求項10記載の鋼で製造されたプラ
スチック成形工具。 - 【請求項13】 硬い耐摩耗性チッ化表面層を有する請
求項11記載の工具。 - 【請求項14】 硬い耐摩耗性チッ化層を有する請求項
12記載の工具。
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