JP3301348B2 - 熱延高張力鋼板の製造方法 - Google Patents
熱延高張力鋼板の製造方法Info
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Description
ル鋼管あるいはUO鋼管等の素材として最適な“耐水素
誘起割れ性と靱性に優れた熱延高張力鋼板”の製造方法
に関するものである。
は“熱延鋼板を成形・溶接して製造した鋼管”で構築さ
れたパイプラインが重要な役割を担うようになったが、
最近では原油,天然ガス資源の安定供給を求めて条件の
厳しい地域にまで採掘の手が延びるようになり、その結
果パイプラインも厳しい環境下に敷設されることが多く
なって、寒冷地での使用や硫化水素を含むサワ−オイ
ル,サワ−ガスを輸送することが珍しくない状況となっ
ている。また、厳しい環境下で大規模なパイプライン建
設が強いられるようになったことから、軽量化による作
業性向上の観点より、ラインパイプ用鋼板に対する高張
力化の要望も強くなってきている。従って、ラインパイ
プの素材である熱延鋼板は、造管のために成形性の良い
ことは勿論、高強度,優れた低温靱性,優れた耐サワ−
性(つまり優れた耐水素誘起割れ性)を兼ね備えること
が必要となってきた。
策に関しては、例えば特開昭63−227715号公報
に「熱間圧延を終了した鋼板の巻取温度を500℃を下
回る低い温度域にまで下げる方法」が開示されている。
しかし、低温で巻き取るこの方法は、鋼板が硬くなるた
め巻取り装置の能力の面から製造可能範囲が限定される
ばかりか、温度ムラが発生して平坦さが崩れやすく、そ
のため巻取った際の形状(姿)が不良となってその後の
作業に支障を来たす懸念が拭えないものであった。
介在物の減少に加えて偏析の抑制が重要であることが知
られており、例えば特開平6−81034号公報には、
ラインパイプ用熱延鋼板の耐水素誘起割れ性改善策とし
て「連続鋳造鋳片を熱延用加熱炉にダイレクトチャ−ジ
すると共にここで1250℃以上の高温域に10時間以
上加熱して偏析を拡散させる方法」が開示されている。
しかし、鋳片の高温長時間加熱を行うこの方法では、加
熱によってオ−ステナイト粒が通常方法での圧延では十
分に細粒化できないほどに大きくなり、そのため得られ
る熱延鋼板の靱性が低下するという問題があった。
のは、前述したような従来技術の問題点を解決し、ライ
ンパイプ用として必要な高強度と優れた低温靱性,耐水
素誘起割れ性を備えると共に、良好な成形性をも有した
熱延高張力鋼板の製造方法を提供することである。
記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、次に示すよ
うな知見を得ることができた。即ち、熱延鋼板の素材鋼
として強度,靱性,成形性,耐水素誘起割れ性に留意し
て特定化学組成に成分調整したNb添加鋼を用いると共
に、その熱間圧延においては、粗圧延の工程で十分な圧
下率を加えた後に一旦再結晶促進のための“待機時間”
を確保し、続いて再度粗圧延を1パスだけ施して再結晶
粒の完全細粒化とフェライト粒微細化の下地を強化した
後、熱間仕上圧延を開始するまでの間で更に“待機時
間”を確保して未再結晶粒を十分に微細再結晶粒化さ
せ、熱間仕上圧延,加速冷却,適量のフェライト生成の
ための加速冷却途中の空冷,再度の加速冷却を施してか
ら巻取りを行うと、スラブの高温加熱による靱性劣化を
懸念することなく、また巻取温度を過度に低下させて靱
性改善を図る必要もなく、ラインパイプ用として必要な
高強度,優れた低温靱性,優れた耐水素誘起割れ性,良
好な成形性を兼備した熱延高張力鋼板の安定製造が可能
になることを見出したのである。
されたものであって、 「 C:0.04〜0.12%(以降、 成分割合を表す%は重量%とする), Si: 0.5%以下, Mn: 1.0〜 1.8%, P:0.03%以下, S: 0.005%以下, Al: 0.005〜0.08%, N:0.0080%以下, Nb:0.02〜0.06%, Ti:0.04%以下 を含むか、 あるいは更に Cu: 0.5%以下, Ni: 0.5%以下, Cr: 0.5%以下, Mo: 0.5%以下, V:0.10%以下, Ca:0.01%以下 のうちの1種又は2種以上をも含むと共に残部がFe及び
不可避不純物から成る鋼片を、 1150〜1250℃に
加熱し、 まず圧下率の累計が40%以上となる粗圧延を
行った後、 一旦30〜180秒間保持し、 引き続いて9
50〜1050℃の温度域で圧下率15%以上の粗圧延
を更に1パス行って熱間粗圧延を終了し、次いで、 この
粗圧延終了の5〜120秒後から熱間仕上圧延を開始し
て750〜850℃で該仕上圧延を終えた後、 3〜50
℃/sの冷却速度で550〜700℃まで冷却し、 ここで
2〜10秒間の空冷を行ってから、 再度500〜620
℃の温度域まで3〜80℃/sの冷却速度で冷却して巻取
ることによって、 強度,低温靱性,耐水素誘起割れ性,
成形性に優れた熱延高張力鋼板を安定製造できるように
した点」を特徴とするものである。
の製造に際し、1150〜1250℃の高熱延加熱温度
や500〜620℃での高温巻取りを採用しても寒冷地
で使用するラインパイプ用等として十分に満足できる靱
性が確保されるように、「粗圧延での再結晶促進のため
の“待機工程”」を取り入れたことを1つの大きな特徴
点としているが、以下、本発明において素材たる鋼片の
化学組成並びに鋼片の処理条件を前記の如くに限定した
理由をその作用と共に詳述する。
分であるが、その含有量が0.04%未満では必要な強度を
確保することができず、一方、0.12%を超えてCを含有
させると靱性低下を招く。このため、C含有量は0.04〜
0.12%と定めたが、好ましくは0.05〜0.09%に調整する
のが良い。
と熱延鋼板の靱性を低下させることから、その含有量は
0.5%以下と定めた。
分であるが、その含有量が 1.0%未満では必要な強度を
確保することができず、一方、 1.8%を超えてMnを含有
させると偏析が強くなって耐水素誘起割れ性が低下す
る。従って、Mn含有量は 1.0〜 1.8%と定めた。
を及ぼす好ましくない不純物元素であり、本発明では所
望の靱性及び耐水素誘起割れ性を確保するためにP含有
量を0.03%以下と定めた。
起割れ性を劣化させる好ましくない不純物元素であるた
め、本発明では所望の耐水素誘起割れ性を確保すべくS
含有量を 0.005%以下と定めた。ただ、好ましくはS含
有量を0.0015%以下にまで低減するのが良い。
量が 0.005%未満では脱酸効果が十分でなく、一方、0.
08%を超えて含有させても脱酸効果は飽和してしまうの
で経済的に不利となる。従って、Al含有量は 0.005〜0.
08%と定めた。
成分であるが、0.04%を超えて添加してもその効果が飽
和することから、Ti含有量の上限を0.04%と定めた。
鋼片(スラブ)のひび割れの原因となる好ましくない不
純物元素であるため、その弊害を除くべくN含有量は0.
0080%以下と定めた。
に寄与すると共に、細粒化作用によって鋼板の靱性を改
善する効果を発揮する。しかし、これらの効果はNb含有
量が0.02%未満では十分に現れず、一方、0.06%を超え
て含有させても効果が飽和して経済的に不利となる。従
って、Nb含有量については0.02〜0.06%と定めた。
0.5%以下,Ni:0.5%以下,Cr:0.5%以下,Mo:0.5%以
下,V:0.10%以下あるいはCa:0.01%以下を単独又は
複合で含有させても良い。Cu,Ni又はCrは、何れも熱延
鋼板の強化に有効であるだけでなく、水素吸収量の低減
にも効果を発揮する成分である。ただ、何れの成分も
0.5%を超えて含有させても前記効果が飽和して経済的
でないので、それらの含有量は 0.5%以下と定めた。ま
た、Moは変態強化を通じて熱延鋼板の強化に有効である
ばかりか、降伏比を下げて成形性を改善する効果を発揮
する成分でもある。しかし、 0.5%を超えて含有させる
とその効果は飽和してしまい、更にHAZ部の靱性が劣
化するようにもなる。従って、Mo含有量は 0.5%以下と
定めた。更に、Vは析出強化によって熱延鋼板を強化す
る作用を有しているが、0.10%を超えて含有させても効
果が飽和してしまい経済的に不利となる。従って、V含
有量は0.10%以下と定めた。そして、Caは鋼中の介在物
を制御して水素割れの原因となるMnSの量を減少するの
に効果を発揮する成分であるが、0.01%を超えて含有さ
せてもその効果が飽和し経済的でないので、Ca含有量は
0.01%以下と定めた。
物であるが、これら組成の鋼は例えば転炉,電気炉ある
いは平炉等によって溶製すれば良く、リムド鋼,キャッ
プド鋼,セミキルド鋼又はキルド鋼の何れの鋼種であっ
ても良い。また、鋼片の製造も“連続鋳造法”あるいは
“造塊−分塊圧延法”等の何れの手段によっても良い。
件) 本発明では、熱間圧延に供する鋼片は1150〜125
0℃に加熱保持してから粗圧延を開始する。なぜなら、
加熱温度が1150℃未満であると強度向上に有効でな
い未固溶のNbCが多くなって目標とする強度の確保が困
難であり、一方、1250℃を超える温度域に加熱する
とオ−ステナイト粒が大きくなりすぎ、その後の圧延条
件を調整しても細粒化が十分に達成されずに靱性が低下
するためである。なお、好ましい加熱温度の範囲は11
50〜1190℃である。ところで、加熱炉に挿入する
鋼片は、鋳造後の“高温のままのスラブ”でも、室温で
放置されたスラブでも構わない。
条件が重要である。粗圧延では、まず累積圧下率40%
以上まで圧延されるが、これは再結晶を利用して十分に
細粒化を図るために必要な条件である。そして、再結晶
を十分に行わせるためには、次の圧延まで30〜180
秒間の待機時間を確保する必要がある。この場合、待機
時間が30秒未満では再結晶が不十分となり、また18
0秒を超えるとその効果が飽和すると共に生産能率が低
下する。なお、この待機時間は60〜120秒とするの
が好ましい。
0〜1050℃で圧下率15%以上の圧延を1パス行
う。この圧延では、前の粗圧延で粗大に残った未再結晶
粒を再結晶により細粒化させる効果が発揮され、また十
分に細かくなっていた再結晶粒はこの圧延では再結晶せ
ずにフェライト生成核となる変形帯等を蓄積することと
なる。上記粗圧延の最終パスでは、圧延温度が1050
℃を超えていると粒成長による粗大化が生じ、一方、圧
延温度が950℃未満であると再結晶促進作用が小さす
ぎるので、950〜1050℃で圧延すると定めたが、
好ましい範囲は950〜1000℃である。
延)を実施するが、粗圧延から仕上圧延までの間には5
〜120秒の待機時間を設ける必要がある。なぜなら、
この待機時間が5秒未満では前述の粗圧延前段までの未
再結晶粒の再結晶が不十分であり、120秒を超えても
効果が飽和するからである。ただ、より好ましい待機時
間は5〜30秒である。
テナイトが加工硬化し、その後のフェライト変態で変形
帯等から微細なフェライトが生成する。仕上圧延の仕上
温度は750〜850℃とする。これは、仕上温度が8
50℃を超えると回復によりオ−ステナイトの加工硬化
が不十分となり、一方、750℃未満では変態したフェ
ライトに歪が加わって延性や靱性が劣化する原因となる
からである。仕上圧延のより好ましい仕上温度は750
〜800℃である。
ず冷却速度3〜50℃/sで加速冷却する。これは、この
段階での冷却速度が3℃/s未満であるとバンド状パ−ラ
イトが生成して耐水素誘起割れ性が低下し、一方、50
℃/sを超える冷却速度ではベイナイト量が多くなって延
性が低下するからである。
ましくは550〜650℃)から2〜10秒間の空冷を
実施する。この空冷によって適量のフェライトが生成す
るので、降伏比を下げると共に延性を向上させることが
可能となる。この場合、空冷時間が2秒未満ではフェラ
イトの生成量が不足するため降伏比低下,延性向上の効
果が十分でなく、一方、空冷時間が10秒を超えると材
質劣化を招くようになる。
℃/sで加速冷却が行われる。この第2段目の加速冷却で
の冷却速度が3℃/s未満であるとフェライト粒界に過度
にセメンタイトが析出して靱性が劣化し、一方、80℃
/sを超える冷却速度で冷却してもその効果は飽和する。
施し、加速冷却後は巻取りを行う。この場合、500℃
を下回る温度まで加速冷却を行うと、鋼板が硬くなって
巻取りが困難になるため製造範囲が狭くなると共に、平
坦さが崩れて巻取った際の形状(姿)が不良となる。一
方、加速冷却を620℃よりも高い温度域で終了する
と、粒界へのセメンタイトの析出量が多くなったり、パ
−ライトバンドが生成したりして、靱性や耐水素割れ性
が低下する。なお、加速冷却終了の好ましい温度範囲
(好ましい巻取温度範囲)は500〜590℃である。
製した後、連続鋳造によりスラブとした。
し、表2及び表3に示す条件で処理して10.2mm厚の熱延
鋼板を製造した。
れぞれ板幅方向に“API規格引張試験片”と“2mmV
ノッチシャルピ−試験片”とを採取し、その機械的性質
を調べた。更に、前記各熱延鋼板からそれぞれ「5mm厚
×20mm幅×100mm長さ」の試験片を採取し、NAC
E条件{pH:3.0で液温が25℃のH2S飽和溶液(3000pm)
を使用}で96時間浸漬した後、超音波探傷法により割
れを測定し、水素誘起割れ性を評価した。これらの試験
による“機械的特性”と“水素誘起割れ性”の調査結果
を、表4及び表5にまとめて示した。
事項を確認することができる。本発明法に従った試験番
号1〜10及び試験番号26〜35からは、得られた熱延鋼板
は何れもパイプライン用として満足できる強度,伸び及
び降伏比を有すると共に、シャルピ−衝撃試験での遷移
温度が−50℃以下の優れた靱性を示し、超音波探傷法
での割れ率(Cスキャン割れ率)も1%以下であって良
好な耐水素割れ性を有していることが分かる。
号11,粗ロ−ル最終パス前の待ち時間の少ない試験番号
12,粗ロ−ル最終パス圧下率の低い試験番号13,粗ロ−
ル最終パスの温度が高い試験番号14,粗ロ−ル最終パス
の温度が低い試験番号15,粗ロ−ル最終パスから連続仕
上圧延までの待ち時間の長い試験番号16,連続仕上圧延
の仕上温度の高い試験番号17では、得られた熱延鋼板は
何れも靱性が劣っている。また、連続仕上圧延での仕上
温度の低い試験番号18では、得られた熱延鋼板は伸びが
低いと共に靱性も劣った結果となっている。
9,巻取温度の高い試験番号24では、得られた熱延鋼板
は水素誘起割れ性に劣る結果となっている。一方、第1
段冷却速度の速い試験番号20では、得られた熱延鋼板は
伸びが低い結果となっている。更に、空冷開始温度の高
い試験番号21,空冷開始温度の低い試験番号22,空冷時
間を設けなかった試験番号23では、得られた熱延鋼板は
何れも伸びが低く、降伏比が高い結果となっている。
得られた熱延鋼板の特性は良好であったものの、“平坦
さの不良”と“巻き姿不良”が生じた。そして、Nb添加
を行わなかった試験番号36及び37では、得られた熱延鋼
板は細粒化が不十分で靱性が劣る結果となっている。
ば、強度,低温靱性,耐水素誘起割れ性,成形性(延
性,低降伏比)に優れた熱延高張力鋼板を作業性良く安
定製造することが可能となり、ラインパイプ等の母材性
能の性能向上に大きく寄与することができるなど、産業
上有用な効果がもたらされる。
Claims (2)
- 【請求項1】 重量割合にて C:0.04〜0.12%, Si: 0.5%以下, Mn: 1.0〜 1.8%, P:0.03%以下, S: 0.005%以下, Al: 0.005〜0.08%, N:0.0080%以下, Nb:0.02〜0.06%, Ti:0.04%以下 を含むと共に残部がFe及び不可避不純物から成る鋼片
を、1150〜1250℃に加熱し、まず圧下率の累計
が40%以上となる粗圧延を行った後、一旦30〜18
0秒間保持し、引き続いて950〜1050℃の温度域
で圧下率15%以上の粗圧延を更に1パス行って熱間粗
圧延を終了し、次いで、この粗圧延終了の5〜120秒
後から熱間仕上圧延を開始して750〜850℃で該仕
上圧延を終えた後、3〜50℃/sの冷却速度で550〜
700℃まで冷却し、ここで2〜10秒間の空冷を行っ
てから、再度500〜620℃の温度域まで3〜80℃
/sの冷却速度で冷却して巻取ることを特徴とする、耐水
素誘起割れ性と靱性に優れた熱延高張力鋼板の製造方
法。 - 【請求項2】 重量割合にて C:0.04〜0.12%, Si: 0.5%以下, Mn: 1.0〜 1.8%, P:0.03%以下, S: 0.005%以下, Al: 0.005〜0.08%, N:0.0080%以下, Nb:0.02〜0.06%, Ti:0.04%以下 を含み、更に Cu: 0.5%以下, Ni: 0.5%以下, Cr: 0.5%以下, Mo: 0.5%以下, V:0.10%以下, Ca:0.01%以下 のうちの1種又は2種以上をも含むと共に残部がFe及び
不可避不純物から成る鋼片を、1150〜1250℃に
加熱し、まず圧下率の累計が40%以上となる粗圧延を
行った後、一旦30〜180秒間保持し、引き続いて9
50〜1050℃の温度域で圧下率15%以上の粗圧延
を更に1パス行って熱間粗圧延を終了し、次いで、この
粗圧延終了の5〜120秒後から熱間仕上圧延を開始し
て750〜850℃で該仕上圧延を終えた後、3〜50
℃/sの冷却速度で550〜700℃まで冷却し、ここで
2〜10秒間の空冷を行ってから、再度500〜620
℃の温度域まで3〜80℃/sの冷却速度で冷却して巻取
ることを特徴とする、耐水素誘起割れ性と靱性に優れた
熱延高張力鋼板の製造方法。
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