JP3289992B2 - 建物の共用縦管収納部の構築方法とその方法に用いる収納部構成用の区画壁 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えば、ホテルや集合
住宅等の建物の共用縦管収納部の構築方法とその方法に
用いる収納部構成用の区画壁に関する。

【０００２】

【従来の技術】上記の共用縦管収納部には、水道管やガ
ス管、電線管、電話線管などの共用縦管が挿通され、か
つ、各住戸の水道やガス、電気などのメーター類が設置
されるもので、例えば二住戸分を外部廊下側に突出させ
て構築されたり、あるいは、各住戸分を廊下側の外壁に
凹入させて構築されたり、玄関扉を凹入させた部分に構
築されたりするもので、その大きさは、大きな二住戸分
のものであっても、内寸法が５００ｍｍ×１５００ｍｍ
程度のスペースしかない小さいものであり、各住戸分の
ものについては更に小さなものとなる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】このように小さな共用
縦管収納部の区画壁を構築するのに従来は、狭いスペー
スで配筋を施して型枠を設置し、かつ、コンクリートを
打設する現場構築の手段がとられていたが、小さくて膨
大な数の型枠の製作加工に非常に手間がかゝる上に、設
置部まわりのスペースが狭いことが影響して、型枠の組
立ならびに脱型にも非常に手間がかゝる作業となってい
た。

【０００４】更に、共用縦管の挿通位置や太さについて
は、建物の規模が高層や中層あるいは低層など住戸数に
よって決定されるが、それに合わせて膨大な数の縦管挿
通筒体を天井型枠に設置する現場作業も強いられるもの
で、全体として、工期が長くかゝる難点があった。

【０００５】本発明は、狭いスペースに設置される共用
縦管の収納部を、簡単な手間で且つ時間的に短工期で構
築できる方法と、その方法に用いる収納部構成用の区画
壁を提供することを目的としている。

【０００６】

【課題を解決するための手段】第１の発明である建物の
共用縦管収納部の構築方法は、共用縦管収納部を構成す
る区画壁を、少なくとも二壁面を有する立体形の自立可
能なプレキャスト製にして所定箇所に建て込み、この区
画壁の天井部分に共用縦管挿通用の筒体を保持させた型
枠を配置し、前記型枠上に打設されるコンクリートによ
って区画壁を建物に一体化させる点に特徴がある。尚、
前記型枠としては、後述する実施例のとおり、打込み式
の型枠（型枠の強度が構造体の強度計算に算入されてい
ない所謂捨て型枠と、現場打ちコンクリートと一体化し
て構造体の一部となる合成型枠とを包含する意味で使用
している。）である場合と、脱型を行う型枠である場合
とがある。

【０００７】この構築方法に用いる第２発明の収納部構
成用の区画壁は、少なくとも二壁面を有し、かつ、その
少なくとも二壁面を立体形のプレキャスト製にして、自
立可能に構成した点に特徴がある。

【０００８】

【作用】上記の構成によれば、予め工場生産されたプレ
キャスト製の区画壁を所定箇所に自立させて、これの天
井部分に型枠を配置するだけで、後は必然的に行われる
天井スラブ用や廊下用のコンクリートを打設する簡単な
手間で共用縦管収納部が構築される。

【０００９】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図１，２は集合住宅の外部廊下１側に突出させて
構築した二住戸分の共用縦管収納部２を示し、この共用
縦管収納部２は、当階の外部廊下１の一部を床面にし且
つ上階の外部廊下３の一部を天井面にする状態で、当階
の建物外壁４を利用して、この外壁４とプレキャスト製
の区画壁５とによって構成され、かつ、前記区画壁５の
前壁面６には観音開きの扉７が設けられている。

【００１０】工場で予め生産して現場に搬入される上記
のプレキャスト製の区画壁５は、図３〜図８に示すよう
に、扉枠装着用の開口部８が形成された前壁面６と、こ
れに隣合う左右の側壁面９，９とから成る、平面視でコ
の字状の自立可能な構成とされ、かつ、前壁面６の上面
を側壁面９の上面よりも低くして、その上面部に、図１
に示す上階廊下３の小梁１０を形成するための金属製の
打込み梁型枠１１の載置凹部１２を設けている。

【００１１】そして図９，１０に示すように、側面壁９
の上部には吊り具螺着用のナットａがインサートされ、
前壁面６の左右両側の上部側には支保具取り付けボルト
用のナットｂがインサートされ、前記開口部８のまわり
には、扉枠（図１を参照）１３をボルト止めするための
ナットｃ…がインサートされている。

【００１２】また側壁面９の上端面には、上階の共用縦
管収納部を構成する区画壁のレベル調整ボルトｄを螺着
するナットｅ，ｅがインサートされ、このナットｅ，ｅ
に対応させて側壁面９の下端部にはレベル調整プレート
ｆ，ｆがインサートされている。側壁面９の内面下部に
は、補強用のアングル金具１４をボルト止めするナット
ｈがインサートされている。

【００１３】更に、前記側壁面９の上部外面には、芯出
具（所謂下げふり）を垂下させるマグネットの取付けプ
レートｉと、上階廊下３の配筋に対する連結用のアンカ
ーボルト止着のためのナットｊとがインサートされ、側
壁面９の上下部の内面には、上下の区画壁を連結するた
めの連結プレート止着用のナットｍ，ｎがインサートさ
れている。

【００１４】上階の外部廊下３の一部でもある共用縦管
収納部２の天井部は、図１１，１２に示す打込み式の型
枠（捨て型枠である場合と、現場打ちコンクリートと一
体化して構造体の一部となる合成型枠である場合とがあ
る。）１５を区画壁５の天井部分に配置し、この上部の
配筋を埋入する状態でコンクリート１６を打設して構成
されるもので、このとき使用される打込み式の型枠１５
は、外壁捨て型枠１７の上端と前壁面６の凹部１２両側
の上面と梁型枠１１上端の三者にわたって載置される２
枚のデッキプレート１８に、それぞれ共用縦管挿通用の
筒体１９を貫通保持させて成る。

【００１５】打込み式の型枠１５の筒体１９に挿通され
る共用縦管は、水道管やガス管、電線管、電話線管など
であるが、これらの太さや配置位置は建物の規模によっ
て設計されるものであって、その設計に合わせて、所定
位置に筒体１９を備えた打込み式の型枠１５を予め工場
で製作し、これを現場に搬入する手段をとっている。外
壁捨て型枠１７としては、例えば、ガラス繊維等で補強
された薄肉のプレキャストパネル、金属パネル等が適宜
選択して使用される。

【００１６】次に、既に下階側に共用縦管収納部２が構
築されているものとして、その上階に上記構成の区画壁
５と打込み式の型枠１５とを用いて共用縦管収納部２を
構築する手順の一例について説明する。

【００１７】先ず図１３に示すように、建築現場に搬入
されたプレキャスト製の区画壁５のナットａに吊り具２
０のボルト２０ａを螺着して、この区画壁５をクレーン
等で吊り下げ、それの側壁面９下端部のレベル調整プレ
ートｆ，ｆを、既に構築された下階側の区画壁のレベル
調整ボルトｄ，ｄ上に自立させる。そして、側壁面９の
上部外面のプレートｉに芯出具２１を垂下させたマグネ
ット２２を取付けて、区画壁５の芯出しとレベル調整を
して後に、この区画壁５の側壁面９をボルト２３によっ
て連結プレート２４に止着させる。

【００１８】この区画壁５の建て込み姿勢を補助させる
ために、図１４に示すように、必要に応じて前壁面６上
部のナットｂにボルト２５を螺着し、このボルト２５と
廊下側のボルト２６とにわたって長さ調節自在な支保具
２７を連結する。尚、上記の自立によって不要となった
吊り具２０は取り外されている。

【００１９】次に、図１５に示すように、樋状に形成さ
れた小梁形成用の打込み梁型枠１１を、前壁面６の凹部
１２と外壁捨て型枠１７とにわたって架設すると共に、
区画壁５の周囲に合板製の廊下用型枠２８ａおよび外壁
型枠２８ｂを配置し、更に、外壁捨て型枠１７の上端と
前壁面６の凹部１２両側の上面と梁型枠１１上端の三者
にわたって、前記打込み梁型枠１１の両側に２枚の打込
み式の型枠１５，１５を配置すると共に、打込み梁型枠
１１の延長上の位置には合板製の梁型枠２８ｃを配置
し、図１２に示すように、この型枠１５のデッキプレー
ト１８隙間からのコンクリートの流れ出しを防止するた
めに、例えばガムテープなどのシール材２９を設ける。

【００２０】次いで、図１６に示すように、小梁用の鉄
筋籠３０と廊下用の配筋３１および大梁用の梁鉄筋籠３
２などを配置し、側壁面９の上部外面のナットｊに螺着
のアンカーボルト３３を番線などで廊下用の配筋３１に
結束し、更に、側壁面９の上部内面のナットｍに区画壁
連結用のプレート３４を止着する。

【００２１】以上の作業に続いて、鉄筋籠３０と配筋３
１と梁鉄筋籠３２などを埋入させる状態で、外壁捨て型
枠１７と外壁型枠２８ｂ間、外壁型枠２８ｂ，２８ｂ
間、各種の型枠１１，１５，２８ａ，２８ｃ上にコンク
リート１６を打設し、このコンクリート１６によって区
画壁５と打込み型枠１５とを一体化させると共に、更に
これらを、鉄筋籠３０，３３と配筋３１とを介して建物
（廊下３や外壁４など）に一体化させるのである。この
場合、型枠１５のデッキプレート１８に貫通保持させた
共用縦管挿通用の筒体１９上端を、コンクリート１６の
上面よりもやゝ突出させるように、その筒体長さを設定
することが重要である。

【００２２】後は、上下の区画壁５，５間の隙間ｔをモ
ルタルで埋め、かつ、シーリング仕上げを施し、上記の
筒体１９と先の工程で構築された廊下３を貫通する筒体
１９とにわたって、水道管やガス管、電線管、電話線管
などの各種の縦管３５を挿通させ、更に、前壁面６の開
口部８に扉枠１３を装着することによって、当階の外部
廊下１に対する共用縦管収納部２の構築を完了するので
ある。

【００２３】上記の実施例では、二住戸分の共用縦管収
納部２の構築について説明しているが、図１７に示すよ
うに、各住戸分の共用縦管収納部２を廊下側の外壁１に
凹入させて構築したり、あるいは図１９に示すように、
玄関扉３６を凹入させた部分に共用縦管収納部２を構築
したりする際に、本発明による構築方法をとることも可
能である。

【００２４】図１７に示す共用縦管収納部２の構築に
は、例えば図１８に示すように、扉枠装着用の開口部８
が形成された前壁面６と、これに隣合う側壁面９と、後
壁面３７から成り、かつ、Ｌ字状の部分で自立可能なプ
レキャスト製の区画壁５を採用でき、図１９に示す共用
縦管収納部２の構築には、例えば図２０に示すように、
建物の外壁４の一部を構成する後壁面３７に、隣合わせ
にして側壁面９，９を連設し、かつ、扉枠装着用の開口
部８を形成する前壁面６を連設した平面視でコの字状の
自立可能なプレキャスト製の区画壁５を採用できる。

【００２５】図２１と図２２は、本発明の他の実施例を
示す。この実施例は、外壁捨て型枠１７をハーフプレキ
ャストとして区画壁５と一体に成形した点に特徴があ
る。この場合、外壁捨て型枠１７の裏面は、現場打ちコ
ンクリートとの付着力を高めるために、図２２に示すよ
うに、粗面に形成しておくことが望ましい。区画壁５に
インサートされる各種ナットａ，ｂ，ｃ，ｅ，ｈ，ｊ，
ｍ，ｎ、レベル調整プレートｆ、取付けプレートｉ等
々、他の構成については、図９の実施例と同じであるた
め、説明を省略する。

【００２６】図２３は、本発明の他の実施例を示す。こ
の実施例は、区画壁５を前面壁６の無い形状とした点に
特徴がある。その他の構成は、図２１の実施例と同じで
あるため、説明を省略する。

【００２７】図２４、図２５は、本発明の他の実施例を
示す。この実施例は、２枚の平板状の側壁面９，９を仮
設の連結金物３８で連結して自立可能な区画壁５を構成
した点に特徴がある。この実施例では、共用縦管収納部
の天井部分を成形するための型枠１５が合板製であっ
て、図２５に示すように、合板製の廊下用型枠２８ａや
梁型枠２８ｃを延長することによって形成されており、
コンクリートの硬化後、脱型するようになっている。区
画壁５にインサートされる各種ナット、レベル調整プレ
ート、取付けプレート等々、他の構成は、先の実施例と
同じであるため、図示説明を省略する。

【００２８】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
収納部構成用の区画壁を予め工場生産された自立可能な
プレキャスト製にして、これを所定箇所に建て込み、か
つ、これの天井部分に型枠を配置するだけで、後は必然
的に行われる天井スラブ用や廊下用のコンクリートを打
設する簡単な手間で、狭いスペースに小さな共用縦管収
納部を簡易に構築することができる。

【００２９】而して、従来のように、小さくて膨大な数
の型枠を製作加工して、これを狭いスペースに配置して
配筋を施し、かつ、コンクリートの打設後に脱型する非
常に煩わしくて手間のかゝる作業から解放され、延て
は、工期の短縮と構築コストの低減が達成される。

【００３０】この場合、区画壁のみならず、これに天井
部分をも一体にプレキャスト製とすれば、更なる工期の
短縮を図ることができるのであるが、共用縦管は、それ
の太さや挿通位置が建物の規模などに対応して設計され
るので、これをもプレキャスト製にすると、設計ならび
に製作の手数が倍加して製作コストが高くつくことにな
り、このことから、本発明では、敢えて区画壁だけをプ
レキャスト製にして、天井部分を型枠にする形態をとっ
ているのであり、これによって、より一層のコストダウ
ンを図っているのである。

【００３１】即ち、本発明では、構築コストの低減を重
視して、建物ごとで太さや配置位置が異なる共用縦管挿
通部の天井部分については、共用縦管の太さや配置位置
に対応させて筒体を設けた型枠による構築手段をとり、
共用縦管収納部を構成する少なくとも二壁面の区画壁の
みを立体形の自立可能なプレキャスト製にして、これら
をコンクリートによって建物に一体化させているのであ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】集合住宅の二住戸分の共用縦管収納部を示す斜
視図である。

【図２】図１に示す共用縦管収納部の横断平面図であ
る。

【図３】収納部構成用の区画壁の平面図である。

【図４】区画壁の正面図である。

【図５】区画壁の底面図である。

【図６】区画壁の背面図である。

【図７】区画壁の側面図である。

【図８】区画壁の縦断側面図である。

【図９】区画壁の斜め上方からの斜視図である。

【図１０】区画壁の斜め下方からの斜視図である。

【図１１】区画壁の天井部分と打込み型枠の縦断正面図
である。

【図１２】区画壁の天井部分と打込み型枠の縦断側面図
である。

【図１３】区画壁吊り込みセットの説明図である。

【図１４】区画壁の所定箇所への建て込み説明図であ
る。

【図１５】各種型枠の配置説明図である。

【図１６】配筋説明図である。

【図１７】第１別実施例の共用縦管収納部の横断平面図
である。

【図１８】図１７に示した共用縦管収納部に用いる区画
壁の一例の斜視図である。

【図１９】第２別実施例の共用縦管収納部の横断平面図
である。

【図２０】図１９に示した共用縦管収納部に用いる区画
壁の一例の斜視図である。

【図２１】第３別実施例を示す区画壁の斜視図である。

【図２２】図２１に示した区画壁の平面図である。

【図２３】第４別実施例を示す区画壁の斜視図である。

【図２４】第５別実施例を示す区画壁の斜視図である。

【図２５】図２４に示した区画壁の所定箇所への建て込
み説明図である。

【符号の説明】

２…共用縦管収納部、５…区画壁、１５…型枠、１６…
コンクリート。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平６−102061（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−223568（ＪＰ，Ａ) 実開 平１−90935（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) E04F 17/08 E04B 2/86 601 E04B 2/86 611

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 建物の共用縦管収納部の構築方法であっ
   て、収納部を構成する区画壁を、少なくとも二壁面を有
   する立体形の自立可能なプレキャスト製にして所定箇所
   に建て込み、この区画壁の天井部分に共用縦管挿通用の
   筒体を保持させた型枠を配置し、前記型枠上に打設され
   るコンクリートによって区画壁を建物に一体化させるこ
   とを特徴とする建物の共用縦管収納部の構築方法。
2. 【請求項２】 請求項１の構築方法に用いられる収納部
   構成用の区画壁であって、少なくとも二壁面を有し、か
   つ、その少なくとも二壁面を立体形のプレキャスト製に
   して、自立可能に構成してあることを特徴とする収納部
   構成用の区画壁。