JP3287629B2 - レンズ付き石英系光ファイバとその製造方法 - Google Patents

レンズ付き石英系光ファイバとその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規構造のレンズ付き
石英系光ファイバとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、光通信システムに組込む発光素子
モジュールは、光源である半導体レーザと石英系光ファ
イバの間にそのレーザ光を石英系光ファイバのコアに集
光するレンズを介挿することにより構成されている。こ
のモジュールは、半導体レーザと石英系光ファイバとの
間における結合効率を高くすることが必要であるため、
両者の結合パワーが最大となるように半導体レーザとレ
ンズと石英系光ファイバのコアとを調心して組立てられ
る。
【0003】ところで、最近は、石英系光ファイバの端
面に直接レンズ部を形成したレンズ付き石英系光ファイ
バが提案されている。この石英系光ファイバは、それ自
体の端面がレンズ機能を備えているため、上記モジュー
ルの製造に際しては、部品点数が減少し、しかも調心作
業の工数を低減することができ、コスト低減に資すると
いう利点がある。
【0004】上記したレンズ付き石英系光ファイバは、
通常、次のようにして製造されている。すなわち、ま
ず、図1で示したように、被覆部を剥離して露出させた
石英系光ファイバ1を例えばバーナのような加熱手段で
局部加熱しながら図の矢印p方向に引張って加熱部を延
伸する。石英系光ファイバの延伸部1aの外径が約10
μm以下になった時点で延伸作業を停止してその部分を
例えばカッターで切断する。
【0005】ついで、図2で示したように、切断後の石
英系光ファイバの先端部1bを例えばバーナで加熱して
溶融する。このとき、先端部1bは表面張力によって球
面になり、その結果、この部分でレンズ機能が発現す
る。このレンズ付き石英系光ファイバ1を半導体レーザ
と結合する場合には、例えば図3で示したように、固定
台3の一方にレンズ付き石英系光ファイバ1を配置し、
他方に放熱板4を介して半導体レーザチップ5を配置
し、レンズ部1bとチップ5の光源部5aとを同軸とな
るように調心する。このような調心態様によって、レン
ズ付き石英系光ファイバ1と半導体レーザチップ5の間
では、約20%程度の結合効率を実現することができ
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記した方
法で製造されたレンズ付き石英系光ファイバの場合、先
端のレンズ部1bから延伸しない部分までの間はテーパ
状に外径が変化する。このテーパ部1cは、延伸時の条
件にもよるが、通常、数mm程度であり可成り長い。
【0007】したがって、図3で示したように、固定台
3の一方にレンズ付き石英系光ファイバ1を固定した場
合、その固定部から半導体レーザチップ5の光源にまで
突出している部分の長さは可成り長くなる。そのため、
例えば、固定台3に微振動が加わった場合でも、半導体
レーザチップ5の光源部5aと調心された状態で位置し
ている先端部1bの振動は大きくなり、芯ずれを起こす
場合がある。
【0008】また、上記した半導体レーザチップ5との
結合時に留意しなければならないことは、光源部5aか
ら発信したレーザ光が光ファイバ先端のレンズ部1bで
反射して、その反射レーザ光が再び光源部5aに戻らな
いようにすることである。反射レーザ光が光源部5aに
戻るような事態が起こると、半導体レーザチップ5の放
射光パワーが著しく不安定になるからである。
【0009】このような問題を防ぐために、従来は、光
ファイバ先端のレンズ部1bの表面を反射防止膜で被覆
することが行なわれている。しかしながら、この反射防
止膜の形成作業は非常に煩雑であるという問題がある。
更に、上記したレンズ部の形成方法は、石英系光ファイ
バへの局部加熱の条件や延伸条件の設定に高度の熟練を
要するため、安定した歩留りでレンズ付き石英系光ファ
イバを量産できる方法とはいいがたい。
【0010】本発明は、従来のレンズ付き石英系光ファ
イバにおける上記した問題を解決し、光ファイバのテー
パ部がなく、切断した光ファイバの端面に直接レンズ部
が形成され、しかもレンズ部表面へ反射防止膜を形成す
ることも不要であるレンズ付き石英系光ファイバとそれ
を製造する方法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明においては、ファイバ軸芯に対して傾斜
する端面の中心に、前記ファイバ軸芯に対して傾斜して
突出し、平滑面からなる頂部を有する円錐台形状のコア
から成るレンズ部が形成されていることを特徴とするレ
ンズ付き石英系光ファイバが提供され、また、コアと前
記コアよりもフッ酸溶液を用いたときのエッチング速度
が大きい組成のクラッドとから成る石英系光ファイバの
端面をファイバ軸芯に対する傾斜面として加工し、前記
端面をフッ酸溶液に浸漬して、前記石英系光ファイバの
端面に、前記端面と傾斜する方向に円錐台形状のコアを
突出させることを特徴とするレンズ付き石英系光ファイ
バの製造方法が提供される。
【0012】本発明のレンズ付き石英系光ファイバの製
造に際しては、まず、つぎのような光ファイバが用意さ
れる。すなわち、その光ファイバをフッ酸溶液に浸漬し
たときに、クラッドのエッチング速度がコアのエッチン
グ速度よりも大きくなるような光ファイバである。この
ような光ファイバとしては、次のようなものをあげるこ
とができる。
【0013】まず、最初の光ファイバは、コアを純粋な
石英ガラス(SiO2 )で構成し、その周囲を取り囲む
クラッドは、石英ガラスにフッ素成分をドープした組成
のガラスで構成したものである。また、別の光ファイバ
としては、コアを石英ガラスにGeO2 をドープしたも
ので構成したものである。この場合、クラッドは純粋の
石英ガラスであってもよいし、また、フッ素成分などが
ドープされているものであってもよい。
【0014】前者の光ファイバにおいて、クラッドへの
フッ素成分のドープ量は、この光ファイバの端面部をフ
ッ酸に浸漬したときにクラッドとコアのエッチング速度
に適正な差が生じて、形成されたコアの円錐台形状が適
正なレンズ機能を発揮するように調節されるが、同時
に、光ファイバの光伝送特性に悪影響を与えないように
調節される。通常、コアとクラッドの屈折率で0.3〜0.
4%程度であることが好ましい。
【0015】なお、クラッドは、フッ素成分に代えてリ
ン成分を混入したり、またはフッ素成分に加えてリン成
分を混入して形成してもよい。更に、コアが純粋の石英
ガラスではなく、例えばフッ素成分やGeO2 のような
ゲルマニウム成分が混入された組成であった場合は、ク
ラッドには、光伝送特性に悪影響を与えない範囲内で、
クラッドにより多くのフッ素成分を混入して、コアとク
ラッドとの間でフッ酸溶液に対するエッチング速度に差
をつけてもよい。
【0016】後者の光ファイバの場合も同様で、ゲルマ
ニウム成分のコアへのドープ量は、この光ファイバの端
面部を後述するフッ酸溶液に浸漬したときにコアとクラ
ッドのエッチング速度に適正な差が生じて、形成された
コアの円錐台形状が適正なレンズ機能を発揮するように
調節される。このような光ファイバを切断し、その切断
面を例えば研磨して端面加工を行なう。このときの切断
は、図4で示したように、光ファイバ10の軸芯方向に
対し、切断端面10aが傾斜面となるように切断する。
切断した端面10aとファイバ軸芯との傾斜角θは格別
限定されないが、通常6°以上であればよい。
【0017】ついで、この端面10aの部分をフッ酸溶
液に浸漬する。前者の光ファイバの場合はフッ酸に浸漬
される。フッ酸溶液としては、通常、フッ酸を水または
フッ化アンモニウムで希釈したものが用いられる。その
ときのフッ酸濃度は、クラッドやコアのエッチング速度
との関係で決められるが、通常、10〜50モル%程度
であればよい。
【0018】光ファイバの端面をフッ酸溶液に浸漬する
と、クラッド,コアはいずれも石英ガラスであるためエ
ッチングされる。このとき、クラッドのエッチング速度
はコアのエッチング速度よりも大きく、しかも、エッチ
ングは、光ファイバの軸長方向に進んで光ファイバを短
くするエッチングと光ファイバの径方向に進んで光ファ
イバを細くするエッチングとが合成された状態で進行し
ていくので、結局、所定の時間が経過すると、光ファイ
バ10の端面10aには、エッチングが遅れたコアの部
分が円錐台形状になって突出する。
【0019】この状態を図5に示す。すなわち、この光
ファイバ10の端面10aには、切断時と同じ傾斜角θ
でファイバ軸芯に対して傾斜している平滑なクラッド端
面11と、この端面11の中心に突出する円錐台形状の
レンズ部13が形成される。このレンズ部13は、突出
する方向がクラッド端面11に対し垂直の方向、すなわ
ち、ファイバ軸芯に対しては傾斜角θで傾斜する方向で
ある。そして、基部13aの直径はコア12の直径と同
径であり、また、頂部13bはクラッド端面11と平行
な平滑面になっている。
【0020】円錐台の形状は、コアとクラッドの組成や
用いるフッ酸溶液の濃度などによって多少変化するが、
例えば、コアが純粋の石英ガラスで構成されている場合
には、この円錐台形状の頂角は、100°〜120°の
範囲内におさまる。後者の光ファイバの場合は、フッ酸
とフッ化アンモニウムの混合水溶液に浸漬して、コアを
円錐台形状にする。このとき、フッ化アンモニウムの濃
度比を高くすると、形成される円錐台の傾斜角(頂角)
が小さくなり全体が先鋭な形状になるので、この濃度比
を適宜に設定することにより、所望の円錐台形状にコア
を仕上げることができる。
【0021】
【実施例】コアが純粋の石英ガラスから成り、クラッド
が、純粋石英ガラスにフッ素をドープさせた組成の石英
ガラスから成り、コア径が9μm,クラッド径が125
μmである石英系光ファイバを用意した。この光ファイ
バを、軸芯に対し傾斜角θが6°となるように斜めに切
断し、その切断面を研磨して端面加工を行なった。
【0022】ついで、その光ファイバの端面部分を、約
1mmの長さで、フッ酸水溶液(室温)に約30分間浸漬
した。光ファイバの端面には、頂角が110°で、頂部
13aの直径が6μmである図5で示したような円錐台
形状のレンズ部13が突出して形成された。この光ファ
イバを図3で示したように半導体レーザチップ5に結合
して、図6に示したように、光源部5aからレーザ光1
4を端面10aに照射すると、端面10aおよびレンズ
部13の頂部13bはレーザ光14の進行方向に対し6
°傾斜しているので、端面10aやレンズ部の頂部13
bで反射した反射レーザ光14’は、光源部5aに戻ら
ず別の方向に散乱していく。したがって、レンズ部13
の表面には、従来のような反射防止膜を形成することが
必要でなくなる。
【0023】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明方
法によれば、光ファイバのファイバ軸芯に対して傾斜す
る端面をフッ酸溶液に浸漬すると、クラッドはコアより
も早くエッチングされていくので、傾斜面である端面の
中心に円錐台形状をしたコアの部分がファイバ軸芯と傾
斜した状態で端面に突出する。そのため、この突出した
コアの部分がレンズとして機能する。
【0024】レンズを形成する作業は、光ファイバの端
面を所定時間フッ酸溶液に浸漬するだけでよいので、従
来の延伸溶融によってレンズを形成する場合よりも簡単
であり、量産性に富む。また、本発明の光ファイバは、
延伸溶融で製造したもののようにテーパ部は存在せず、
光ファイバの端面がそのままレンズ部になっている。そ
のため、図3で示したように、レンズ部を半導体レーザ
光源と結合する場合でも、光ファイバの固定台から突出
する部分は短くてすみ、したがって、外部からの振動が
あっても、相互の軸芯がずれるという問題も少なくな
り、同時に結合効率を大幅に高めることができる。
【0025】しかも、レンズ部の光軸方向は、半導体レ
ーザの光軸方向と傾斜しているので、レンズ部における
反射レーザ光は半導体レーザに戻らないことになる。し
たがって、従来のように、レンズ部の表面を反射防止膜
で被覆する必要はなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光ファイバを溶融延伸している状態を示す斜視
図である。
【図2】光ファイバの切断部を溶融してレンズ部を形成
する状態を示す斜視図である。
【図3】レンズ付き石英系光ファイバを半導体レーザチ
ップに結合する状態を示す斜視図である。
【図4】石英系光ファイバを斜めに切断した状態を示す
側面図である。
【図5】本発明方法で形成したレンズ部を示す側面図で
ある。
【図6】本発明の光ファイバを半導体レーザチップに接
続したときのレーザ光の挙動を示す側面図である。
【符号の説明】
5 半導体レーザチップ 10 石英系光ファイバ 10a 石英系光ファイバ10の端面 11 クラッド端面 11a クラッド11の端面 12 コア 13 円錐台形状のレンズ部 13a レンズ部13の基部 13b レンズ部13の頂部 14 レーザ光 14’反射レーザ光
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−261604(JP,A) 特開 平4−318503(JP,A) 特開 昭57−169715(JP,A) 実開 平4−55007(JP,U) 米国特許5101457(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02B 6/10;6/16 - 6/22 G02B 6/26;6/30 - 6/34;6/42

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ファイバ軸芯に対して傾斜する端面の中
    心に、前記ファイバ軸芯に対して傾斜して突出し、平滑
    面からなる頂部を有する円錐台形状のコアから成るレン
    ズ部が形成されていることを特徴とするレンズ付き石英
    系光ファイバ。
  2. 【請求項2】 コアと前記コアよりもフッ酸溶液を用い
    たときのエッチング速度が大きい組成のクラッドとから
    成る石英系光ファイバの端面をファイバ軸芯に対する傾
    斜面として加工し、前記端面をフッ酸溶液に浸漬して、
    前記石英系光ファイバの端面に、前記端面と傾斜する方
    向に円錐台形状のコアを突出させることを特徴とする
    求項1記載のレンズ付き石英系光ファイバの製造方法。
  3. 【請求項3】 前記コアが純粋石英ガラスにゲルマニウ
    ム成分をドープして成り、前記フッ酸溶液が、フッ酸と
    フッ化アンモニウムとの混合水溶液から成る請求項2の
    レンズ付き石英系光ファイバの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記クラッドが、フッ酸によるエッチン
    グ速度を大きくする元素を含有している請求項2のレン
    ズ付き石英系光ファイバの製造方法。
  5. 【請求項5】 前記元素がフッ素または/およびリンで
    ある請求項4のレンズ付き石英系光ファイバの製造方
    法。
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CN110957637A (zh) * 2014-12-10 2020-04-03 特拉迪欧德公司 用于波长光束组合激光系统的光学交叉耦合抑制系统

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