JP3285718B2 - 酸化物超伝導体およびその作製方法 - Google Patents
酸化物超伝導体およびその作製方法Info
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Description
びその製法に関するものである。さらに詳しくは、耐候
性および磁界下での特性に優れ、マグネット、ケ−ブ
ル、各種デバイスなど、幅広く応用することができる新
しい酸化物超伝導物質を提供するものである。
非常に多くの酸化物超伝導化合物が発見されているが、
なかでも水銀系酸化物超伝導体は臨界温度が高いことで
注目されている。これまでに発見されている水銀系超伝
導体のなかでは、 HgBa2Can-1CunOy(n=1,2,3,4,5,
6) という化学式で表される物質群は特に臨界温度が高く、
とくにn=3の物質は酸化物超伝導体中最高の135K
の臨界温度を示す。
化物を混合し石英管に真空封入後熱処理を行なう直接合
成法と、水銀を含まない原料の酸化物または硝酸塩をあ
らかじめ酸素雰囲気中で焼成したものをプリカーサーと
して、これに酸化水銀を加え、石英管に真空封入後熱処
理を行なうプリカーサー法がある。このほかに高圧合成
法があるが、これは最終的な熱処理を高圧装置中で行な
うもので、混合などの過程は先の2つの方法のどちらか
で行なわれている。
(4.2K)以上の温度において、超伝導マグネットな
ど磁場中での応用が期待されている。しかし、これまで
発見されている酸化物超伝導体は全て、銅、酸素からな
る2次元的な超伝導面と他の構成金属元素および酸素か
らなる面が積層した2次元的な構造を有しており、これ
に基づいて磁界中の特性に大きな異方性がある。
垂直に磁界が印加された場合の特性は多くの場合、この
面に平行に磁界が印加された場合より非常に劣る。この
ため、磁場中の超伝導材料の特性の向上には、結晶の方
位の制御が不可欠である。結晶方位の制御には、プレ
ス、方向凝固などの手法が有効である。
磁界の結晶に対する印加方向依存性は、銅、酸素からな
る超伝導面の間隔、超伝導面間に介在する面の性質の大
きく影響されることが知られている。即ち超伝導面の間
隔が短くなる、また介在する面の導電性が高まるにつれ
て超伝導面間の超伝導的結合が強くなり、磁界の印加方
向に対する特性の異方性も小さくなる。
CunOy(n=1,2,3,4,5,6)では、超伝導
面間に2枚のバリウム、酸素を含む面、1枚の水銀と少
量の酸素を含む面が存在しており、超伝導面間隔は約
9.5オングストロ−ムとTl−Ba−Ca−Cu−O
系とほぼ同じ長さである。
様、水銀系超伝導体は臨界温度は高いものの、c軸に平
行に磁界が印加された場合の不可逆磁界が低く、磁界中
での実用という観点からは魅力的材料ではない。
して含む、YBa2Cu3Oy系、Tl−Ba−Ca−C
u−O系などの酸化物超伝導体に共通する短所は、材料
中にバリウムを含む不安定な不純物が存在する場合、大
気中に存在する二酸化炭素、水分と不純物が容易に反応
し、超伝導体の特性が著しく劣化することである。
相を得るために少なくとも700℃以上の温度が必要で
あるが、高温では水銀の蒸気圧が高く水銀の量を制御す
ることが困難であり、結果として材料は多少のバリウム
を含む不安定な不純物相を含むことになる。このため、
試料を大気中に保存した場合、二酸化炭素、水分と不安
定な不純物相が速やかに反応し、数日でその超伝導性は
失われてしまう。
炭酸塩または水酸化物が存在する場合は、熱処理の際に
これらが水銀系超伝導体の生成を阻害する。このため出
発原料は直接合成法では酸化物、プリカーサー法では酸
化物または硝酸塩に限定され、原料の混合などの合成過
程は全て水分、二酸化炭素を含まない雰囲気下で行なう
必要がある。
化バリウム(BaO)を用いなければならないが、この
酸化バリウムは非常に水分、二酸化炭素との反応性に富
み、保存が困難である。この直接合成法による合成では
酸化バリウムを用いるかぎり、水分、二酸化炭素のない
雰囲気下での合成が要求される。
よる合成では、プリカーサー焼成時に炭酸バリウムの生
成を抑えなければならず、プリカーサーを合成過程では
これを大気に晒さないようにしなければならない。
ちらの合成法を選択しても、水銀系超伝導体の合成は非
常に限られた条件下でしか行えず、合成後も大気に対し
て不安定である。これらのことは、この物質の実用を考
えるうえで、好ましくない。
する不純物等の化学的な安定化ないし生成の抑制を図
り、超伝導特性の劣化を防ぎ、併せて、磁界中での超伝
導特性を向上させた水銀系酸化物超伝導体を得ることを
目的とする。
めに、水銀系酸化物超伝導体のプリカーサー法による合
成において、酸化レニウムを添加してプリカーサーを作
ったところ、水分、二酸化炭素に対して安定なプリカー
サーが得られた。このプリカーサーを用いればれば大気
中での合成が可能になる。
添加が非常に有効であり、レニウムの混在は超伝導相の
生成を抑制せず、超伝導特性にも影響しないことが明ら
かになった。
中に過剰の酸素を導入するため、バリウムをイオン半径
の小さいストロンチウムで置換しても、水銀系超伝導体
の構造は安定である。従前は不可能であったストロンチ
ウムでの置換により、結晶のc軸長が短くなり、超伝導
面間結合が強まるため、磁界中での特性が向上する。
導体の構成元素にレニウムを加えることにより、超伝導
体の合成過程で化学的に不安定な物質を安定化させ、あ
るいは合成により生成する不純物相を安定化することに
より、厳格な合成条件を緩和することができる。また、
合成後の水銀系酸化物超伝導体の超伝導特性を安定さ
せ、耐候性のある超伝導体を得ることができる。
体の構造を保持しながらバリウムからストロンチウムで
の置換を可能とし、c軸長が短い結晶構造を得て、磁界
が印加される場合の特性の異方性を改善することもでき
る。
によらず、酸化レニウムは空気中においてプリカーサー
の焼成温度より低温(約750℃)で、バリウム、カル
シウムと
合酸化物X)を形成する。レニウムの微量な添加により
複合酸化物Xが生成するため、プリカーサー中の残りの
組成ではバリウムが定比組成よりも不足し、バリウムの
化合物としては比較的安定なBaCuO2とカルシウ
ム、銅の酸化物が生成する。このためプリカーサーは合
成後も長期間の空気中保存に対しても安定である。
2Can-1CunOy(n=1,2,3,4,5,6)で、
n=1の場合はカルシウムを含まないため複合酸化物X
が生成せず、レニウムの添加は有効に作用しない。
反応式的にはバリウムの化合物はBaCuO2しか生成
しないが実際は微視的には組成のゆらぎによりバリウム
が過剰な部分がありこれが不安定性の原因になってい
る。
りある量のBaを捕捉してしまうことにより、組成のゆ
らぎによる影響をなくすことに作用している。このため
添加量が少なすぎると、混合の状態によっては、プリカ
ーサー中にバリウム過剰な不安定な部分が生成してしま
うことがあるが、ある一定量以上添加した場合は前述の
ようにプリカーサー全体が安定となる。
ル%以上のレニウムの添加が好ましく、5〜10%であ
ることがさらに好ましい。さらに、レニウムは炭酸バリ
ウムを低温で分解する作用があるため、出発物質として
炭酸塩を用いても問題はない。混合などの作業も大気中
で行なえばよく、水分、二酸化炭素がない雰囲気を特に
必要としない。
銀を空気中で混合し石英封管中で反応させることによ
り、HgBa2Can-1CunOy(n=1,2,3,4)
と表される水銀系超伝導相が生成する。前記のように、
高温での反応であるから水銀の量を制御することは困難
であり必ず欠損するが、残る組成はプリカーサーとほぼ
同じであり、ここでも複合酸化物Xが存在が不安定なバ
リウム化合物の生成を抑制する。
与するが、この化合物はバリウムを含む不純物相のなか
では最も安定で最後まで残るため、必ず生成物の安定化
に作用する。結果的に、大気中などに存在する二酸化炭
素、水分に侵されない耐候性に優れる材料が得られる。
置換することは、ストロンチウムのイオン半径がバリウ
ムに比べてかなり小さいことから不可能であった。高価
数であるレニウムの添加は、構造中に過剰な酸素を導入
するためストロンチウムで置換しても水銀系超伝導体の
構造が安定化される。ストロンチウムの置換により結晶
のc軸長が短くなり、即ち、超伝導面間の間隔が短くな
る。これは、超伝導面間の結合を強め、磁界下での特性
の向上を促す。
物超伝導体は、レニウムを含んでおり、これがバリウム
を含む化学的に不安定な化合物の生成を抑制するため、
大気中での合成が可能であり、最終生成物も耐候性に優
れる。また、レニウムの添加によりバリウムの一部をス
トロンチウムで置換することが可能となり、磁界下で優
れた特性を示す材料が得られる。
する。 (実施例1)炭酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化銅、
酸化レニウムをバリウム、カルシウム、銅、レニウムが
2:n−1:n:x(n=2,3,4;x=0.01,
0.05,0.1,0.2,0.3,0.4)のモル比
になるように秤取し、混合後、空気中920℃で12時
間焼成した。
よりバリウム、カルシウム、レニウムをほぼ2:1:1
で含む複合酸化物XとBaCuO2、カルシウム、銅か
らなる単酸化物および複合酸化物からなることがわかっ
た。
が1:2になるように加え、混合後、プレスによりペレ
ットに成型した。これを真空中で石英管に封入し820
℃で10時間焼成した。
り、粉末X線回折法により調べたところ、n=2,3,
4それぞれについてc軸の長さが約12.5、約15.
7、約18.9オングストロームの超伝導相が主相とし
て生成しており、不純物としては、複合酸化物Xとカル
シウム、銅からなる単酸化物および複合酸化物などが少
量認められた。
若干短いことから、構造中にレニウムが取り込まれてい
ることがわかったが、試料の臨界温度はn=2,3,4
それぞれについて、117K,135K,132Kであ
り、レニウムの混入による臨界温度の低下は認められな
かった。大気に数カ月さらした後でもこれらの試料の臨
界温度は変化せず、またX線回折のパタ−ンも全く変化
しなかった。
を用いても同様な試料が得られた。x=0.01の試料
には超伝導相と不純物相がほぼ同じ量生成しており、ま
たx≧0.4の試料は濃い緑黄色で超伝導相のほかに複
合酸化物Xを大量に含んでいることがわかった。
チウム、炭酸カルシウム、酸化銅、酸化レニウムをバリ
ウム、ストロンチウム、カルシウム、銅、レニウムが
1.8:0.2:2:3:0.1のモル比になるように
秤取し、混合後、空気中930℃で12時間焼成した。
よりバリウム、カルシウム、レニウムをほぼ2:1:1
で含む複合酸化物XとBaCuO2さらに、ストロンチ
ウム、カルシウム、銅からなる単酸化物および複合酸化
物からなることがわかった。
ンチウムのモル比が1:2になるように加え、混合後、
プレスによりペレットに成型した。これを真空中で石英
管に封入し860℃で10時間焼成した。試料は黒色で
あり、粉末X線回折法により調べたところ、c軸の長さ
が15.6オングストロームの超伝導相が主相として生
成しており、不純物としては、複合酸化物Xとカルシウ
ム、銅からなる単酸化物および複合酸化物などが少量認
められた。
料より短い。試料の臨界温度は130Kであった。大気
に数カ月さらした後でもこの試料の臨界温度は変化せ
ず、またX線回折のパタ−ンも全く変化しなかった。ま
た空気中に数カ月放置したプリカーサーを用いても同様
な試料が得られた。
窒素温度77.3Kと100Kにおける不可逆磁界はそ
れぞれ8.0テスラと2.0テスラで1000ガウスの
磁界下での臨界電流密度はそれぞれ43万A/cm2と
6万A/cm2であり、とくに不可逆磁界の値はこれま
で報告されている酸化物超伝導体のなかで最も高い。
ム、酸化銅をバリウム、カルシウム、銅が2:n−1:
n(n=2,3,4)のモル比になるように秤取し、混
合後、空気中920℃で12時間焼成した。得られたプ
リカーサーは粉末X線回折法によりBaCuO2とカル
シウム、銅からなる単酸化物および複合酸化物からなる
ことがわかった。
が1:2になるように加え、混合後、プレスによりペレ
ットに成型した。これを真空中で石英管に封入し820
℃で10時間焼成した。粉末X線回折法により得られた
試料を調べたところ、n=2,3については超伝導相は
全く生成しておらず、n=4のみ非常に微量のc軸の長
さが約15.8オングストロームの超伝導相の生成が認
められた。
の試料は全く超伝導性を示さず、n=4の試料は非常に
弱い超伝導に基づく反磁性を示したが、大気に1週間さ
らした後は超伝導性を示さなくなった。
ーブボックス中で酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化
銅をバリウム、カルシウム、銅が2:n−1:n(n=
2,3,4)のモル比になるように秤取し、混合後、酸
素気流中920℃で12時間焼成した。得られたプリカ
ーサーは粉末X線回折法によりBaCuO2とカルシウ
ム、銅からなる単酸化物および複合酸化物からなること
がわかった。
が1:2になるように加え、グローブボックス中で混合
後、プレスによりペレットに成型した。これを真空中で
石英管に封入し820℃で10時間焼成した。得られた
試料は全て黒色であり、粉末X線回折法により調べたと
ころ、n=2,3,4全て超伝導相が主相として生成し
ており、c軸の長さはそれぞれ約12.7,15.8,
15.8オングストロームであった。
について、117K,135K,135Kであったが、
大気に1週間さらした後は超伝導体積分率が10%以下
に低下し試料は灰色に変色した。
超伝導体の構成に含有されるレニウムにより、バリウム
を含む不純物相が化学的に安定するため、水分や二酸化
炭素に対して安定な耐候性に優れた超伝導体が得られ、
保存が容易になる。
は、直接合成法においては酸化物、プリカーサー法にお
いては酸化物ないし硝酸塩に限定されていたが、本発明
の超伝導体はレニウムの存在により、合成過程におい
て、水銀系超伝導体生成阻害物質となる炭酸塩、水酸化
物等が生成しないため、炭酸塩を出発原料として利用で
き、大気中での合成処理が可能となる。
ー法による合成では水分、二酸化炭素に対して安定なプ
リカーサーを得て、大気中でのプリカーサーの長期保存
が可能となる。
加して、水銀系酸化物超伝導体の結晶構造を安定化して
いるため、従来は不可能であったバリウムからストロン
チウムへの置換が可能となる。そのため結晶のc軸長が
短く、超伝導面間の結合が強い超伝導体が得られ、磁化
特性が向上して不可逆磁界が大きくなり、磁界中での超
伝導特性が向上する。以上のように、本発明の超伝導体
は、合成、取り扱いにおける制約を解消し、特性が改善
されているため、超伝導体の実用化が期待できる等の効
果がある。
Claims (5)
- 【請求項1】HgBa2Can-1CunOy (n=2,3,4) で表される水銀系酸化物超伝導体に、添加物としてレニ
ウムを構成元素として含む酸化物超伝導体において、 レニウムの含有量がバリウムおよびストロンチウムのモ
ル和に対して2%以上20%未満で、バリウムのモル量
がストロンチウムより多いことを特徴とする酸化物超伝
導体。 - 【請求項2】 水銀、バリウム+ストロンチウム、カル
シウム、銅の比が1:2:2:3であることを特徴とす
る請求項1記載の酸化物超伝導体。 - 【請求項3】 水銀、バリウム+ストロンチウム、カル
シウム、銅の比が1:2:1:2であることを特徴とす
る請求項1記載の酸化物超伝導体。 - 【請求項4】 水銀、バリウム+ストロンチウム、カル
シウム、銅の比が1:2:3:4であることを特徴とす
る請求項1記載の酸化物超伝導体。 - 【請求項5】 水銀系酸化物超伝導体をプリカーサー法
により製造する方法において、酸化レニウムを添加して
プリカーサーを作成することを特徴とする酸化物超伝導
体の作製方法。
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JP24997994A JP3285718B2 (ja) | 1994-09-19 | 1994-09-19 | 酸化物超伝導体およびその作製方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH0891843A JPH0891843A (ja) | 1996-04-09 |
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