JP3284692B2 - 金属銅の溶解方法 - Google Patents

金属銅の溶解方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は金属銅(Cu)の溶解方
法、さらに詳しくは原子力プラントやボイラプラントな
どに付着生成するスケールの溶解除去に利用できる金属
銅の溶解方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】加圧水型原子炉(PWR)の蒸気発生器
の二次側や火力発電ボイラなどでは、金属銅や酸化鉄な
どを含むスケールが付着生成する。このようなスケール
が付着すると、熱伝導が阻害されて熱効率が低下した
り、管材表面温度を上昇させて管材を損傷させたり、あ
るいは腐食を促進させて安全性に影響を及ぼすなどの問
題が生じる。このため化学洗浄によるスケールの溶解除
去が一般に行われている。
【0003】従来の金属銅を含むスケールの溶解方法と
しては、アンモニアアルカリ性の水溶液を用いる方法が
提案されており、例えば次のような方法がある。 1)アンモニア水溶液に過硫酸アンモニウムまたは過酸
化水素などの酸化剤を添加した溶解液を用いる方法。こ
の方法は火力発電ボイラの洗浄で実績が多いが、溶解液
のpHが11前後と強いアルカリ性であるため溶解液か
らのアンモニアガスの揮散が激しく、アンモニア臭気が
作業環境を悪化させるという問題点がある。また、銅の
溶解容量が小さくてアンモニアの使用効率が低く、廃液
の中和に多量の中和剤が必要となるなどの問題点もあ
る。
【0004】2)エチレンジアミンの水溶液にアンモニ
アを加えてアルカリ性にした後、さらに過酸化水素など
の酸化剤を添加した溶解液を用いる方法。この方法は加
圧水型原子炉の蒸気発生器の二次側の洗浄で実績が多い
が、前記1)と同様に、アンモニア臭気が作業環境を悪
化させ、また多量の中和剤が必要となるなどの問題点が
ある。
【0005】3)クエン酸やエチレンジアミン四酢酸
(EDTA)などのキレート剤を溶解した水溶液にアン
モニアを加えてpH約10のアルカリ性にした後、さら
に過酸化水素などの酸化剤を添加した溶解液を用いる方
法。この方法は加圧水型原子炉の蒸気発生器の二次側ま
たは火力発電ボイラの洗浄で実績が多いが、前記2)と
同様の問題点がある。
【0006】4)アンモニアと、過硫酸アンモニウムな
どの酸化剤と、無機質陽極抑制剤とを含む溶解液を用い
る方法(特公昭47−8362号)。この方法も前記
2)と同様の問題点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
問題点を解決するため、金属銅の溶解容量が大きくて、
効率よく金属銅を溶解することができ、しかもアンモニ
アの揮散を防止してアンモニア臭気による作業環境の悪
化を大幅に低減することができる金属銅の溶解方法を提
案することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、重炭酸アンモ
ニウムおよび酸化剤を含み、アンモニアを含まない溶解
液を、金属銅と接触させることを特徴とする金属銅の溶
解方法である。
【0009】本発明の方法は原子力プラント、ボイラプ
ラントまたは一般プラントなどにおいてスケールとして
付着生成した金属銅を溶解して除去するのに適している
が、これに限定されず、他の金属銅の溶解に適用するこ
とができる。
【0010】溶解液に用いる重炭酸アンモニウム(NH
4HCO3)は、水溶液のpHが約7.8の中性領域にあ
り、このpHでの水溶液からはアンモニアはほとんど揮
散しない。このため作業環境を悪化させることはない。
そして重炭酸アンモニウムは酸化剤と併用した場合、ア
ンモニアあるいはリン酸塩、塩酸塩または硫酸塩等の他
のアンモニウム塩に比べて金属銅の溶解容量が大きく、
このためアンモニアの使用効率が高くなり、効率よく金
属銅を溶解することができる。溶解液中の重炭酸アンモ
ニウムの濃度は1〜15重量%、好ましくは2〜10重
量%とするのが望ましい。
【0011】本発明で使用する酸化剤としては、過酸化
水素、過硫酸アンモニウムなどがあげられる。原子力プ
ラントのスケールを溶解除去する場合には、過酸化水素
を使用するのが好ましい。酸化剤の使用濃度と量は酸化
剤の種類または溶解温度などの溶解条件に応じて、金属
銅の溶解容量が大きくなるように選択する。各々の酸化
剤の使用濃度と量は予備試験により容易に決定すること
ができる。
【0012】例えば、酸化剤として過酸化水素を用いる
場合は、溶解液中の濃度が0.03〜0.5重量%が適
当である。ただし、溶解温度が低くなるに従って金属銅
の溶解量を高く維持できる濃度範囲が狭くなる傾向が認
められるので、予備試験により銅の溶解量が大きくなる
濃度を予め求めておくのが好ましい。例えば60℃前後
では0.03〜0.5重量%、40℃前後では0.03
〜0.4重量%、20℃前後では0.03〜0.25重
量%の濃度範囲から選択するのが望ましく、特にこのよ
うな濃度範囲にあって、かつ過酸化水素/重炭酸アンモ
ニウムの重量比が0.02/1ないし0.1/1(モル
比としては0.046/1ないし0.23/1)となる
濃度を選択するのが望ましい。この過酸化水素/重炭酸
アンモニウムの重量比は溶解温度が高くなるに従って範
囲を広くとることができ、例えば60℃前後では0.0
2/1ないし0.2/1の範囲から選択できる。
【0013】また酸化剤として過硫酸アンモニウムを用
いる場合は、溶解液中の濃度が0.3〜2重量%とする
のが適当である、特にこのような濃度範囲にあって、か
つ過硫酸アンモニウム/重炭酸アンモニウムの重量比が
0.05/1ないし0.15/1(モル比としては0.
017/1ないし0.052/1)となる濃度を選択す
るのが望ましい。
【0014】このような溶解液は金属銅の溶解容量が大
きく、溶解液を例えば20〜60℃で金属銅と接触させ
ることにより、金属銅を溶解除去することができる。接
触方法は特に限定されず、例えば原子力プラント、ボイ
ラプラントまたは一般プラントなどで金属銅を含むスケ
ールが生成した系に溶解液を導入して循環する方法など
が採用できる。なお、溶解液はpHが中性領域にあるた
め、使用後の廃液を中和するのに必要な中和剤の量は、
アンモニアを用いた場合に比べて大幅に低減できる。
【0015】本発明の方法で金属銅を溶解した場合、金
属銅は2価のイオンで溶出し、安定な銅アンミン錯体
{[Cu(NH342+(HCO3 -2}を形成して溶
液中に存在するものと思われる。アンモニアを用いた場
合も銅アンミン錯体{[Cu(NH342+(O
-2}を形成して溶存しており、溶解機構は両者とも
同じであると思われる。従って、[Cu(NH342+
の安定性は対応するアニオンの種類により異なるものと
思われるが、その理由は明らかではない。
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、重炭酸アンモニウムお
よび酸化剤を含み、アンモニアを含まない溶解液を用い
て金属銅を溶解するようにしたので、アンモニアの揮散
は防止され、これによりアンモニア臭気による作業環境
の悪化を大幅に防止することができる。また上記溶解液
は金属銅の溶解容量が大きいので、効率よく金属銅を溶
解することができる。さらに上記溶解液はpHが中性領
域にあるため、廃液を中和するのに使用する中和剤の量
を少なくすることができる。
【0017】
【実施例】次に本発明の実施例について説明する。なお
各例中、%は重量%を示す。 参考例1 5%重炭酸アンモニウム水溶液(pH7.82)にアン
モニアを加え、pHを8、8.5、9、9.5に調整し
た。これらの水溶液をビーカーに入れてポリ塩化ビニリ
デンフィルムで覆い、40℃でスターラ攪拌し、ビーカ
ー内の気相中のアンモニア濃度を検知管法で測定した。
結果を図1に示す。
【0018】図1の結果から、pH7.82の重炭酸ア
ンモニウム水溶液からのアンモニアの揮散は小さいが、
pHが高くなるに従って急激に揮散量が多くなることが
わかる。
【0019】実施例1、比較例1〜3 アンモニウムイオンを0.43%の濃度で含む下記溶解
液1000mlに30cm2の銅片1枚(33ml/c
2)を入れ、60℃、大気開放条件で、攪拌しながら
金属銅の溶解量を求めた。結果を図2に示す。 (溶解液) 実施例1:NH4HCO3 2% + H22 0.35% 比較例1:NH4HCO3 2% 比較例2:NH3 0.43% 比較例3:NH3 0.43% + H22 0.35%
【0020】なお、比較例2および比較例3では、2時
間後に沈澱が生じた。図2の結果から、重炭酸アンモニ
ウムおよび過酸化水素を含む溶解液を用いた実施例1の
場合は、アンモニアおよび過酸化水素を含む比較例3よ
りも金属銅の溶解容量が大きく、しかも溶解安定性に優
れていることがわかる。
【0021】実施例2、比較例4〜6 中性の各種アンモニウム塩をアンモニウムイオンとして
0.43%、および過酸化水素を0.35%含む溶解液
1000mlに30cm2の銅片1枚(33ml/c
2)を入れ、pH7.9、40℃、大気開放条件で、
攪拌しながら金属銅の溶解試験を行った。結果を図3に
示す。なお、使用したアンモニウム塩は次の通りであ
る。 実施例2:重炭酸塩 比較例4:リン酸塩 比較例5:塩酸塩 比較例6:硫酸塩
【0022】図3の結果から、各種アンモニウム塩の中
で、重炭酸塩が最も金属銅の溶解量が多く、最良である
ことがわかる。
【0023】実施例3 重炭酸アンモニウムの濃度を変えて、下記条件で金属銅
の溶解試験を行った。結果を図4に示す。 NH4HCO3 1〜10% H22 0.35% 銅 片 30cm2 1枚/l 温 度 20〜60℃ 時 間 1時間
【0024】実施例4 過酸化水素の濃度を変えて、下記条件で金属銅の溶解試
験を行った。結果を図5に示す。 NH4HCO3 2% H22 0〜0.35% 銅 片 30cm2 1枚/l 温 度 20〜60℃ 時 間 1時間
【0025】また図4および図5の結果を、H22/N
4HCO3の重量比と金属銅の溶解量との関係で示し
た。結果を図6に示す。
【0026】実施例5 酸化剤として過硫酸アンモニウムを用いて金属銅の溶解
試験を行った。まず重炭酸アンモニウム濃度を5%で一
定にし、過硫酸アンモニウムの濃度を変えて銅の溶解量
を求めた。また過硫酸アンモニウム濃度を0.5%で一
定にし、重炭酸アンモニウムの濃度を変えて金属銅の溶
解量を求めた。結果を図7に示す。 銅 片 30cm2 1枚/500ml 温 度 40℃ 時 間 1時間 スターラ攪拌、大気開放系
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1の結果を示すグラフである。
【図2】実施例1および比較例1〜3の結果を示すグラ
フである。
【図3】実施例2および比較例4〜6の結果を示すグラ
フである。
【図4】実施例3の結果を示すグラフである。
【図5】実施例4の結果を示すグラフである。
【図6】実施例3および実施例4からの結果を示すグラ
フである。
【図7】実施例5の結果を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // C11D 7/12 C11D 7/12 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23G 1/24 C09K 13/04 G21F 9/28 525 G21F 9/28 ZAB G21F 9/30 561 C11D 7/12

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重炭酸アンモニウムおよび酸化剤を含
    み、アンモニアを含まない溶解液を、金属銅と接触させ
    ることを特徴とする金属銅の溶解方法。
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