JP3282433B2 - トグル機構を有する射出圧縮成形方法および装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、トグル機構を有する射
出圧縮成形方法および装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般的に射出圧縮成形による成形は可塑
化した樹脂を金型内に射出し、この金型内で冷却・固化
して所望形状の成形品を成形するものであるが、可塑化
した樹脂が固化する際収縮が発生し、この収縮によって
成形品に変肉・変形などが生ずるため型締側における圧
縮動作によりその補正を行っている。

【０００３】ところで、このトグル機構を設けた圧縮成
形は大別して、次のような２種類がある。

【０００４】その１つは、特開昭６３−１１６８２０
号に記載の如く、トグル式型締装置によって中間型締力
を作用させた状態で溶融樹脂の注入を行い、次いで最大
型締力を作用させることにより、スタンピング成形と同
等の精度の成形品を得るものである。

【０００５】他の１つは、特公平４−６４８５０号に
記載の如く、タイバにトグルサポートをネジ止めにして
金型の開閉量を調整可能にするとともに、固定盤などの
反金型取付面側とタイバとの圧縮シリンダを設けたもの
である。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところが前記の方法
では、型内圧力に係わらずトグル位置が決まるので、タ
イバを延伸させて両金型のキャビティ間隙を拡げる程型
内圧を上昇させることが必要となり、このため所望する
ような低圧成形ができないといった問題がある。

【０００７】他の前記の方法では、トグル機構が伸び
切った状態下で、圧縮シリンダを用いて直圧での圧力圧
縮制御であるため、型内圧の低圧化が可能であるが、直
圧による型締能力とトグル機構による型締能力が等しく
なり、トグル機構は縮退を防止する単なるロック手段と
して使用されるだけで直圧式型締装置と比べてトグル機
構がある分だけ構造が複雑で価格が嵩むといった問題点
がある。

【０００８】いずれにしても従来のトグル機構では、ト
グル比が非線形であるために、型締の位置制御と圧力制
御のいずれもが簡単にできないといった欠点があった。

【０００９】本発明は上記問題点に鑑みてなされたもの
で、本発明の目的はトグル機構だけでできなかった圧力
制御による型内圧の低圧化が可能な射出圧縮成形を提供
することである。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明に係る第１の発明では、トグル機構が伸び切
らない状態で可動金型と固定金型をタッチさせるととも
に、固定盤の反金型取付面側のタイバの端面に設けた低
圧型締シリンダのピストンロッド室側の油圧調整により
金型が開くことを許容する型締力に制御しておき、引続
く金型のキャビティ中への溶融樹脂の射出充填完了後に
トグル機構を伸び切った状態にして最終型締圧縮を行う
ようにし、第２の発明では、可動盤とリンクハウジング
との間に２組のトグル機構を設け、該トグル機構の作動
により可動盤を固定盤に対して前進させて型締動作を行
うトグル式の型締装置であって、前記リンクハウジング
と固定盤とを結ぶ複数のタイバを配設し、固定盤の反金
型取付面側のタイバの端面に低圧型締シリンダを装着
し、前記低圧型締シリンダ内にあって前記タイバに連設
されたピストンを配設し、前記ピストンのヘッドに対向
して低圧型締シリンダの軸線方向に前記ピストンの前後
進移動を規制するストローク調整ねじを配設した。

【００１１】

【作用】まず、低圧型締シリンダのピストンロッド室側
に高圧の圧油を導入し、次いでトグル機構を伸長させて
型開き状態から可動金型が固定金型を前進させてトグル
機構が伸び切っていない状態で可動金型を固定金型へ接
触させる。次いで、低圧型締シリンダのピストンロッド
側の油圧を低圧の油圧に切替えた後、射出充填動作を行
い、トグル機構を伸び切った状態にして最終型締完了を
行うようにしたので、従来できなかったトグル機構を有
したキャビティ内の圧力制御が可能となる。

【００１２】

【実施例】以下に、本発明に係るトグル機構を有する射
出圧縮成形方法および装置の具体的実施例を図面を用い
て詳細に説明する。

【００１３】図１はトグル機構を有した射出成形機の一
部切断正面図、図２〜図４は射出圧縮成形を説明するた
めの説明図、図５は射出圧縮成形時の低圧型締シリンダ
内の状態を示す正面断面図である。

【００１４】本実施例における射出成形機１００は、ト
グル式型締装置５０および射出装置４０から構成されて
いる。

【００１５】図１はトグル式の型締装置５０を備えた射
出成形機１００を示し、中心線より上半分はトグル機構
６が伸び切っていない状態を示し、中心線より下半分は
トグル機構６が伸び切った状態を示している。図１にお
けるトグル式型締装置５０は、リンクハウジング１、固
定盤（固定プラテン）２、可動盤（可動プラテン）３、
金型４（固定金型４ｂおよび可動金型４ａ）、キャビテ
ィ５、トグル機構６、クロスヘッド７、型締シリンダ
（ダイロックシリンダ）８、ピストンロッド９およびガ
イドロッド１０より構成される。

【００１６】ダブルトグル式の型締装置５０を備えた射
出成形機１００では、図１に示すように、可動盤３とリ
ンクハウジング１との間に３つのトグルリンク６ａ、６
ｂ、６ｃからなる上下一対のトグル機構６を備え、リン
クハウジング１の外端面の略中心部に型締シリンダ（ダ
イロックシリンダ）８を装着し、型締シリンダ８のピス
トンロッド９の先端をクロスヘッド７に連結し、該クロ
スヘッド７を進退自在に挿通したガイドロッド１０に沿
って前後進させるとともに、該クロスヘッド７を介して
前記トグル機構６を作動させ、固定盤２に対して可動盤
（可動プラテン）３を移動して型締動作を行うようにな
っている。符号１２はトグルブラケットを示す。

【００１７】符号１１はタイバでありリンクハウジング
１と固定盤２間に上下左右に４本離間して配設され、タ
イバ１１の一端部はリンクハウジング１側の背面部にナ
ットで固定されている。また、タイバ１１の他端部は図
５に示すように低圧型締シリンダ１３内のピストン１４
に固着されて低圧型締シリンダ１３内を前後進自在に設
けられている。

【００１８】低圧型締シリンダ１３のピストンヘッド面
１５と対向する低圧型締シリンダ１３の中心部にタイバ
１１の軸線方向に向かって移動自在に螺合されたストロ
ーク調整ねじ１７が設けられている。

【００１９】このストローク調整ねじ１７を回動して低
圧型締シリンダ１３内に突設した長さを調整可能となっ
ている。

【００２０】次に、射出装置４０について述べる。本実
施例における射出装置４０はバレル４１内にスクリュ４
２が配設され、ホッパ４３内の樹脂原料が供給ゾーン、
圧縮ゾーンにおいて加熱圧縮され、計量ゾーンにおいて
溶融計量され、そして射出ゾーンを経てノズル４４内へ
射出されるように構成されている。

【００２１】そして、バレル４１の外周面には樹脂原料
を外部加熱するためのヒータが設けられており、樹脂原
料がスクリュ４２の回転によって前方へ送られるように
なっている。

【００２２】符号４６は射出シリンダ、４７は正逆転用
モータであってスクリュ４２に直結されており、スクリ
ュ４２を正逆回転するようになっている。

【００２３】次に本発明のトグル機構を有した射出圧縮
成形機の作用について述べる。

【００２４】図１の中心線より上半分に示す型開き状態
において、ストローク調整ねじ１７を適宜回動してピス
トン１４の後退限規制位置を決定しておく。そしてピス
トンロッド側室１４ｂには例えばＰ0 の高圧の圧油を導
入させてピストンヘッド面１５をストローク調整ねじ１
７に当接させておく。

【００２５】この状態から、型締シリンダ８のピストン
（図示略）のヘッド側に圧油を供給すると、ピストンロ
ッド９が前進してクロスヘッド７に回転自在に連結され
たトグルリンク６ｃを介して引き伸ばされ、さらにこの
引き伸ばし力は、トグルリンク６ｃの先端の、トグルリ
ンク６ｂの略中心部にあるトグルピンを介してトグルリ
ンク６ｃおよびトグルリンク６ａに伝達される。

【００２６】また、トグルリンク６ａに連結ピンでトグ
ルブラケット１２に枢着され可動盤３は自由状態にある
ことから、トグルリンク６ｂの回転力によって第１トグ
ルリンク６ａが押し伸ばされ、可動盤３は前進移動を開
始し、両金型４ａ、４ｂは、トグルリンク６ａと第２ト
グルリンク６ｂとがまっすぐに伸長する前に一旦型閉じ
する（図２）（図５（１））。

【００２７】そして、図２に示すようなトグル式型締装
置５０のトグル機構６の状態を保持するために型締シリ
ンダ８のピストンヘッド側とピストンロッド側の圧油回
路を閉じ、型締シリンダ８のピストン位置を油圧でブロ
ックする。

【００２８】次に、図２に示すような状態から射出充填
動作に入る。すなわち、射出初期にはキャビティ５内の
流動抵抗が小さいので高速充填となり、射出後期にはキ
ャビティ５内の流動抵抗の増加に伴い、充填速度は自然
減速し、その結果連続的な速度勾配を有し、かつパック
圧を発生しない理想的な自然充填流れ（ナチュラルフロ
ー）となる。

【００２９】さらに、射出充填工程時には射出シリンダ
４６の圧力制御よりスクリュ４２が前進限に至るまでの
いわゆるクッション量を残さない射切り状態に射出制御
される。こうすることにより、後述する射出充填完了の
確認のための検知が極めて容易かつ正確となる上に計量
および射出充填制御も簡単となる。

【００３０】また、射切り状態であっても、ノズル４４
内からキャビティ５までの通路中には溶融樹脂が設定射
出圧力を有した状態で充満されているため逆流すること
はない。

【００３１】射出充填に対応して、低圧型締シリンダ１
３のピストンロッド側室１４ｂの圧油を例えばＰ0 から
Ｐへ変更すると、このＰ＜（Ａc ／Ａ1 ）・ＰR （ここ
でＡc はキャビティ５の投影面積、ＰR はキャビティ５
内に射出充填された樹脂圧、Ａ1 は低圧型締シリンダ１
３のピストンのタイバ側面１６の面積）の状態下では溶
融樹脂の射出圧に負けて図５（２）に示すようにピスト
ン１４が△ｘ左行すると同時に△ｘ分だけ図３に示すよ
うに両金型４間が型開きしてキャビティ５の型内圧が低
圧下されてバランスする。

【００３２】このような射出充填完了から型締シリンダ
８のピストンヘッド側の圧油を増圧してクロスヘッド７
を前進させてトグル機構６を伸張させるとともに、低圧
型締シリンダ１３のピストンロッド側室１４ｂの圧油を
抜き、ピストン１４を低圧型締シリンダ１３内の前進限
方向に移動させる。

【００３３】引続き型締シリンダ８のピストンヘッド側
に圧油を導入するため、トグル機構６は最後は伸び切る
とともに、ピストンヘッド面１５は図５（３）に示すよ
うに低圧型締シリンダ１３内の前進限まで移動し最終型
締圧縮動作を完了する。この後キャビティ５内に射出充
填した樹脂を固化後トグル機構６を後退して成形品を取
出すのである。

【００３４】

【発明の効果】以上説明したことからも明らかなよう
に、本発明では、射出圧縮時に型締力を与える型締装置
の型締能力のフルパワーは不要であり、しかも型締シリ
ンダと低圧型締シリンダの各役割分割を付すことによ
り、 比較的コンパクトな型締シリンダで所望の低圧型締
能力を発揮でき、コストダウンできる。 トグル機構だけではできなかった型内圧の低圧化制
御が可能となる。 ストローク調整ねじを用いることにより、圧力制御
をしながら最大型開量が規制できるので不用意なバリの
発生を防止できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】トグル機構を有した射出成形機の一部切断正面
図である。

【図２】射出圧縮成形開始前の状態を示す説明図であ
る。

【図３】キャビティ内に射出充填した時の状態を示す説
明図である。

【図４】型締が完了した時の状態を示す説明図である。

【図５】射出圧縮成形時の低圧型締シリンダ内の状態を
示す正面断面図である。

【符号の説明】

１ リンクハウジング ２ 固定盤 ３ 可動盤 ４ 金型 ４ａ 可動金型 ４ｂ 固定金型 ５ キャビティ ６ トグル機構 ６ａ、６ｂ、６ｃ トグルリンク ７ クロスヘッド ８ 型締シリンダ ９ ピストンロッド １０ ガイドロッド １１ タイバ １２ トグルブラケット １３ 低圧型締シリンダ １４ ピストン １４ａ ピストンヘッド側室 １４ｂ ピストンロッド側室 １５ ピストンヘッド面 １６ ピストンのタイバ側面 １７ ストローク調整ねじ ４０ 射出装置 ５０ トグル式型締装置 １００ 射出成形機

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】トグル機構が伸び切らない状態で可動金型
   と固定金型をタッチさせるとともに、固定盤の反金型取
   付面側のタイバの端面に設けた低圧型締シリンダのピス
   トンロッド室側の油圧調整により金型が開くことを許容
   する型締力に制御しておき、引続く金型のキャビティ中
   への溶融樹脂の射出充填完了後にトグル機構を伸び切っ
   た状態にして最終型締圧縮を行うようにしたことを特徴
   とするトグル機構を有する射出圧縮成形方法。
2. 【請求項２】 可動盤とリンクハウジングとの間に２組
   のトグル機構を設け、該トグル機構の作動により可動盤
   を固定盤に対して前進させて型締動作を行うトグル式の
   型締装置であって、前記リンクハウジングと固定盤とを
   結ぶ複数のタイバを配設し、固定盤の反金型取付面側の
   タイバの端面に低圧型締シリンダを装着し、前記低圧型
   締シリンダ内にあって前記タイバに連設されたピストン
   を配設し、前記ピストンのヘッドに対向して低圧型締シ
   リンダの軸線方向に前記ピストンの前後進移動を規制す
   るストローク調整ねじを配設したことを特徴とするトグ
   ル機構を有する射出圧縮成形装置。