JP3280639B2 - 超砥粒切断ホイール - Google Patents

超砥粒切断ホイール

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板の表面に、ダ
イヤモンド又は立方晶窒化硼素等の超砥粒を結合材によ
り結合した超砥粒層が、極めて強力に固着され、光学ガ
ラス、セラミックス、人造水晶、及び半導体材料を高速
度送り、深切り込みの過酷な重切断加工に用いても、超
砥粒層が基板から剥離することなく、長期間に亘って極
めて高い性能を発揮する超砥粒切断ホイールに関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来のダイヤモンドやCBNなどの超砥
粒を用いた超砥粒薄刃切断ホイールは超砥粒を含有する
超砥粒層を基板に接合して構成されている。超砥粒層
は、超砥粒と結合材からなる。そして基板材料は主とし
て鋼であり、例えば、炭素工具鋼、合金工具鋼及び高速
度鋼が用いられている。結合材としては、主として以下
の4種類が用いられている。フェノール樹脂、ポリイミ
ド樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とし、これに炭化珪
素、銅、アルミナ、黒鉛等のフィラーを添加したレジン
ボンド、また、銅、錫、鉄、コバルト及びニッケル等の
合金を主成分としたメタルボンド、ガラス質およびセラ
ミック質等の無機材料を主成分としたビトリファイドボ
ンド、電気メッキおよび化学メッキによって析出した金
属を主成分とした電着ボンド等が用いられている。基板
に超砥粒層を接合するには、基板上に超砥粒層を成形す
る方法と、成形した超砥粒層を基板に接合する方法があ
るが超砥粒薄刃切断ホイールの場合は、ほとんど前者の
方法が採られる。レジンボンドの場合は、基板の外周部
に凹凸を設けて接着面積を大きくし、その表面に強力な
接着剤を塗っておけばレジンボンドそれ自体の接着性で
基板に接合することができる。メタルボンドの場合は、
予め基板に銅めっきを施しておき、メタルボンドの焼結
時に発生する溶解成分が銅めっきに溶着し、焼結と同時
に基板に超砥粒層を接合することができる。電着ボンド
は基板上にニッケルめっきを析出させ、それと同時に超
砥粒を固着することができる。超砥粒切断ホイールがよ
く用いられる工作物としては、磁性材料、光学ガラス、
セラミックス、半導体材料などがあり、これらを加工す
る際には高精度で高能率な加工が要求される。特に、加
工精度に対する要求はますます厳しくなってきており、
数μmの精度を満足しなければならない。そこで基板に
求められる重要な特性は、大きな研削応力に対しても基
板の歪みの発生量が少ないことである。この超砥粒切断
ホイールにおいて、特に基板の薄いものについては、研
削応力に対する歪みの少ない優れた特性を有する、モリ
ブデンとタングステンの固溶体の炭化物(Mo
)C、(X+Y=1)、またはタングステンの炭化
物を硬質相として含む硬質材料からなる基板が適用され
るようになった。しかしながら、これらの基板は基板材
料として優れた物理的特性を有するものの、基板と超砥
粒層を接合することが困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
点を解決するためになされたものである。すなわち、モ
リブデンとタングステンの固溶体の炭化物(Mo・W
)C、(X+Y=1)、またはタングステンの炭化物
を硬質相として含む硬質材料からなる基板と超砥粒層を
強固に接合することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の超砥粒切断ホイ
ールは、モリブデンとタングステンの固溶体の炭化物
(Mo・W)C、(X+Y=1)、またはタングス
テンの炭化物を硬質相として含む硬質材料からなる円板
状の基板表面に、ニッケルめっき層が形成され、前記ニ
ッケルめっき層の表面に銅めっき層が形成され、さらに
前記銅めっき層の表面に超砥粒層を有することを特徴と
するものである。ここで、ニッケルめっき層および銅め
っき層は、超砥粒層の接合される部分だけでなく、基板
全面にわたって形成されていてもよい。
【0005】そして硬質材料は、硬質相を結合する結合
相を5重量%以上含み、結合相は、鉄、コバルト、ニッ
ケルおよびこれらの合金からなる群より選ばれた1種類
以上を含むものを特徴とするものである。硬質材料の例
としては、(Mo0.7・W0.3)C−Co−Ni系
合金、WC−Co系合金、WC−TiC−TaC−Co
系合金、WC−TaC−Co系合金、WC−NbC−C
o系合金、WC−Ni系合金が適用可能ある。ここで、
モリブデン−タングステンの複合炭化物とは(Mo
)C、(X+Y=1)で示され、モリブデンとタン
グステンの固溶体を炭化させたもので極めて高硬度の物
質である。十分な硬度を満足するためには、モリブデン
の含有率が60原子%以上であることが必要であり、6
8原子%以上であることが好ましい。複合炭化物の製法
について述べると、例えば、タングステンのアンモニウ
ム塩溶液とモリブデンのアンモニウム塩溶液を混合し
て、タングステンとモリブデンのパラ塩を共析させる
か、硝酸または塩酸にてWOもMoOも共沈させる
かによって微細混合した酸化物粉末を得て、これを還元
してモリブデンとタングステンの各組成からなる合金粉
末を得る。この合金粉末に炭素粉末を混合して1400
度以上の温度で炭化し(Mo・W)Cを得る。結合相に
適用できる金属は鉄、コバルト、ニッケルおよびこれら
の合金のほか、銅、錫なども用いることができるが、コ
バルト、ニッケルのうちいずれかひとつ、若しくは両者
を用いることが好ましい。結合相の金属の含有率は少な
くとも5重量%以上必要であり、好ましくは8重量%以
上含有させる。
【0006】そして、ニッケルめっき層の厚みが1μm
〜100μm、かつ銅めっきの厚みが1μm〜100μ
mであることを特徴とするものである。ニッケルめっき
層の厚みは好ましくは2μm〜80μm、より好ましく
は5μm〜50μmの範囲で適宜決定する。また、銅め
っき層の厚みは好ましくは2μm〜70μm、より好ま
しくは5μm〜50μmの範囲で適宜決定する。
【0007】そして、基板の外径はΦ30mm以上Φ3
00mm以下、厚みは0.1mm以上4.0mm以下で
あることを特徴とするものである。本発明は、基板のサ
イズに限定されることはない。磁性材料、光学ガラス、
セラミックス、人造水晶、及び半導体材料に精密切断に
用いられる超砥粒切断ホイールのサイズから上記の数値
限定をしたものである。特によく使われる基板のサイズ
は、外径Φ50mm〜250mm、厚み0.3mm〜3
mmのものである。
【0008】そして、超砥粒層は、ダイヤモンド砥粒、
立方晶窒化ホウ素砥粒、またはこれらの混合砥粒を含む
ことを特徴とするものである。工作物の種類、および加
工条件により超砥粒の種類、粒度、集中度、混合割合を
適宜決定する。例えば、フェライト、ガラスなどの一般
的な切断加工用としては、粒度#80〜#200のダイ
ヤモンド砥粒を用い、集中度は50〜150の範囲に設
定されることが多い。
【0009】そして、超砥粒層は、超砥粒と、レジンボ
ンド、メタルボンド、ビトリファイドボンド、電着ボン
ドのいずれかひとつの結合材を含むことを特徴とするも
のである。銅めっきの表面に上記の4種類の結合材を接
合するのは容易である。レジンボンド、メタルボンドを
接合するのに適しており、特に、表面の銅めっきにシア
ン化銅めっきを施しておけば、メタルボンドを強固に接
合することが可能である。
【0010】
【発明の実施の形態】発明実施の形態については、実施
例の項で説明する。
【0011】
【実施例】(基板素材の準備)外径Φ100mm、厚み
0.5mm、孔径Φ39mmのWC−Co系合金製の素
材を準備した。 (基板の仕上げ加工)外径、厚み、孔をダイヤモンドホ
イールにて研削加工して外径Φ94mm、厚み0.3m
m、孔径40mmに仕上げた。 (アルカリ脱脂)基板に付着している研削油剤を除去す
るため、苛性ソーダと炭酸ソーダを主としたアルカリ脱
脂液に基板を浸漬し、振動を加えて脱脂した。 (陰極電解脱脂)前工程のものを水洗した後、水酸化ナ
トリウム、オルソケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、
リン酸ナトリウムからなる洗浄液で電流密度5A/dm
液温60℃、電解時間1分で脱脂をおこなった。 (エッチング)前工程のものを水洗した後、エッチング
用溶液でエッチングを行った。電流密度0.3A/dm
2、液温50度、浸漬時間10分。 (酸処理)前工程のものを水洗した後、塩酸の20%水
溶液に20秒間浸漬した。 (Niストライクめっき)塩酸ニッケル浴にて、電流密
度15A/dm2、浸漬時間30分の条件で行った。 (電解ニッケルめっき)さらに電解ニッケルめっきで肉
盛りする。このめっき完了後、800℃〜1000℃の
真空中で熱処理を行うと基板とニッケルめっき層の密着
力がより強力になる。 (シアン化銅めっき)下地めっきを3〜5μm行った。 (硫酸銅めっき)肉盛りめっきを10〜15μm行っ
た。 (酸化防止処理)石鹸水で処理した。これで基板の処理
が完了した。 (メタルボンドとダイヤモンド砥粒の混合)80Cu−
20Snからなるメタルボンド粉末に粒度#200(平
均粒径76μm)のダイヤモンド砥粒を集中度100に
なるようにボールミルで乾式混合した。 (成形・焼結)ダイヤモンド砥粒とメタルボンドの混合
粉末を成形用金型に充填し、ホットプレス法により、基
板の外周縁に固着した。 (ツルーイング・ドレッシング)ダイヤモンド層をツル
ーイング・ドレッシングして本発明のダイヤモンド切断
ホイールを完成させた。サイズはΦ100mm−0.4
t−3x−40H、仕様は、SD200−100−MB
である。 (切断テストによる性能評価)本発明の切断ホイールを
用いて、フェライトをホイール周速度40m/秒送り速
度30mm/秒で切断加工を行ったが、切れ味・切断精
度ともに良好で、長期間使用してもダイヤモンド層が基
板から剥離することはなかった。
【0012】表1に、ニッケルめっきと銅めっきを施し
た実施例1、ニッケルめっき後に熱処理し銅めっきを施
した実施例2、従来例としてニッケルめっきのみの場合
と銅めっきのみの場合における、それぞれの接合強度の
比較を行ったものである。従来例に比較し、接合強度が
著しく向上していることがわかる。
【0013】
【発明の効果】本発明の超砥粒切断ホイールは、以上に
説明したように、基板と超砥粒層の固着力が極めて強力
なので、高速度送り、深切り込みの過酷な条件下でも、
超砥粒層が基板から剥離することなく、長期間に亘って
高性能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例の外観斜視図である。
【図2】一実施例の断面模式図である。
【図3】一実施例の超砥粒層の断面模式図である。
【図4】他の実施例の超砥粒層の断面模式図である。
【符号の説明】
P 超砥粒切断ホイール 1 超砥粒層 2 基板 3 ニッケルめっき層 4 銅めっき層
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B24D 3/00 310 B24D 3/00 320 B24D 5/12

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】モリブデンとタングステンの固溶体の炭化
    物(Mo・W)C(X+Y=1)、またはタングス
    テンの炭化物を硬質相として含む硬質材料からなる円板
    状の基板表面に形成されたニッケルめっき層と、 前記ニッケルめっき層の表面に形成された、シアン化銅
    めっきの下地めっきと硫酸銅めっきの肉盛りめっきから
    なる銅めっき層と、 さらに前記銅めっき層の表面に形成された、超砥粒層を
    有することを特徴とする超砥粒切断ホイール。
  2. 【請求項2】前記硬質材料は、前記硬質相を結合する結
    合相を5重量%以上含み、前記結合相は、鉄、コバル
    ト、ニッケルおよびこれらの合金からなる群より選ばれ
    た1種類以上を含む、請求項1記載の超砥粒切断ホイー
    ル。
  3. 【請求項3】前記ニッケルめっき層の厚みが1μm 〜1
    00μm 、かつ銅めっきの厚みが1μm 〜100μmであ
    ることを特徴とする請求項1または2記載の超砥粒切断
    ホイール。
  4. 【請求項4】前記基板の外径はΦ30mm以上Φ300
    mm以下、厚みは0.1mm以上4.0mm以下である
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の超砥粒切
    断ホイール。
  5. 【請求項5】前記超砥粒層は、ダイヤモンド砥粒、立方
    晶窒化ホウ素砥粒またはこれらの混合砥粒を含むことを
    特徴とする請求項1、2、3または4記載の超砥粒切断
    ホイール。
  6. 【請求項6】前記超砥粒層は、超砥粒と、レジンボン
    ド、メタルボンド、ビトリファイドボンド、電着ボンド
    のいずれかひとつの結合材を含むことを特徴とする請求
    項1、2、3、4または5記載の超砥粒切断ホイール。
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