JP3270654B2 - 多孔質油ちょう菓子およびそれを利用した冷菓 - Google Patents
多孔質油ちょう菓子およびそれを利用した冷菓Info
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Description
ステアリンを主要グリセリドとして含有する油脂で油ち
ょうした多孔質菓子およびそれを被覆または混合させた
冷菓に関する。本発明の油ちょう菓子およびこれを用い
た冷菓は、低カロリーで、かつ、油ちょう菓子の吸湿性
が低いために、保存中もクリスピー性を保持し、風味と
食感の良好なものである。
は、新規な食感や形態の他に、カロリーの低いものを要
求する傾向が強まっている。従来から新規な食感や形態
を有する菓子を素材として冷菓と組み合わせた、いわゆ
る複合冷菓が提案されている。例えば、特開昭53−6
465号公報や特開昭63−304949号公報に記載
されている冷菓は、多孔質の菓子と冷菓用ミックス等を
混合して冷凍し、新規な風味や食感を有する冷菓とする
ものである。しかし、一般的に、多孔質菓子は吸湿し易
く、上記のように単に冷菓と混合したり組合せて複合冷
菓とした場合、保存中や流通段階で冷菓の水分が多孔質
菓子に移行し、菓子本来のパリパリ感(クリスピー性)
が失われるといった問題がある。
孔質菓子への水分移行を防止することが種々検討されて
いる。例えば、特開昭62−296832号公報には、
アイスクリームやソフトクリーム等の冷菓に用いる菓子
容器(コーンカップ)を製造するにあたって、菓子容器
の原料となるバッターにα化澱粉を添加したり、あるい
はドウに、キサンタンガム、ローカストビーンガム等の
増粘剤やカラギーナン等のゲル化剤を加えて、菓子容器
の吸湿防止を図ることが記載されている。また、特開昭
57−170147号公報には冷菓用可食容器を食用油
脂で全面コーティングして耐湿性を付与することが記載
されている。
465号公報や特開昭63−304949号公報に記載
されている冷菓は、多孔質菓子特有の吸湿性を利用して
凍結することにより、菓子の吸湿を防止しようとするも
のであるが、製造段階で冷菓ミックスの水分が菓子に移
行して軟弱な組織となり、凍結して得られる冷菓は、菓
子本来のクリスピー性が回復することがなく、食感を低
下させることが避けられない。また、特開昭62−29
6832号公報に記載されている冷菓は、水性バッター
にα化澱粉を添加したり、ドウにゲル化剤を添加して、
増粘やゲル化の作用で菓子容器を固く締まったものに
し、水分の移行を防止しようとするもであるが、これら
の添加物は、水に対して親和性を有する原料であるため
吸湿防止効果が乏しく、保存中に水分が移行して食感を
悪くするといった問題がある。特開昭57−17014
7号公報に記載されている冷菓用可食容器は、食用油脂
で全面コーティングしているため、特開昭62−296
832号公報に記載されている冷菓よりやや吸湿防止効
果が高くなるが、十分な吸湿防止効果を期待するために
は可食容器に厚く塗布する必要があり、そのために可食
容器の風味を変えてしまうばかりでなく、食感も著しく
損ねられるといった問題がある。また、可食容器に対す
る食用油脂の含有比率が高くなるために、極めて高カロ
リーの冷菓になってしまうといった問題があって、近年
の低カロリーを指向する要求には応えられないといった
問題がある。本発明者らは、上記の問題点に鑑み、冷菓
と複合させる多孔質菓子について検討した結果、多孔質
菓子をトリステアリングリセリドを多く含む油脂で油ち
ょうし、これを冷菓に用いることにより、上記問題点を
解決できることを見出し、本発明を完成させるに至っ
た。すなわち、本発明は、低カロリーで、かつ吸湿性の
低い油ちょう菓子とそれを用いた冷菓を提供することを
課題とするものである。
成中トリステアリンを30重量%以上含有する油脂で多
孔質菓子を油ちょうすることによって菓子中に前記油脂
を5〜20重量%含有させたことを特徴とする多孔質油
ちょう菓子である。また、本発明は、上記の多孔質油ち
ょう菓子を被覆または混合させたことを特徴とする冷菓
である。
多孔質油ちょう菓子は、公知の方法によって得られた、
例えば、クッキー、ビスケット、スポンジケーキ、シュ
ー皮、ポップコーン、煎餅、あられ、おこし、ウエファ
ー、パン、ドーナッツ、モナカ皮、アイスコーン等の多
孔質菓子をグリセリド組成中トリステアリンを30重量
%以上含有する油脂で油ちょうしたものである。上記の
グリセリド組成中トリステアリンを30重量%以上含有
する油脂は、そのままの形では天然にほとんど存在しな
い油脂で、トウモロコシ油、大豆油、ナタネ油、ひまわ
り油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、オ
リーブ油等の炭素数18の脂肪酸(ステアリン酸、オレ
イン酸、リノール酸、リノレン酸等)を多く含む油脂の
群から一種以上を選択して、常法に従って、極度に水素
添加することよって得られた極度硬化油を主成分とする
ものである。
セリドの1分子の脂肪酸が全てステアリンとなっている
トリステアリンをグリセリド組成中30重量%以上含有
するものである。また、その融点は約70℃と通常の食
用油脂より高く、約50℃で固化し、それ以下の温度で
はほとんど液体脂肪が存在しない。従ってサラダ油のよ
うに保存中の流動性は全くなく、その他複数の油脂と混
在させても相溶共融現象、もしくは共晶現象を示さない
ものである。また、油脂中のトリステアリンは、体内で
リパーゼの作用を受けず、実質的に消化されない低カロ
リー油脂である。尚、本発明で上記油脂に対していう低
カロリーとは、栄養成分上計算されたカロリーが低いこ
とではなく、体内での消化吸収性が低いことである。計
算上は、トリステアリンも37.6kJ/g(9kcal/g) であ
るが、消化吸収性が低くほとんどエネルギー源とならな
いものである。
油脂を単独、あるいは他の油脂と混合して調製したグリ
セリド組成中トリステアリンを30重量%以上、好まし
くは50〜95重量%含有する油脂を用いて、上記のよ
うな多孔質菓子を120〜220℃、好ましくは160
〜200℃で、10〜120秒間、好ましくは30〜6
0秒間油ちょうする。このようにして多孔質菓子を油ち
ょうすることにより、トリステアリンを含む油脂を5〜
20重量%含有する油ちょう菓子となる。なお、多孔質
菓子中のトリステアリンを含む油脂の量は、菓子から常
法により油脂を抽出し、油脂中のトリグリセリドをガス
クロマトグラフィー等で分析することにより測定でき
る。その多孔質油ちょう菓子の表面組織は、菓子の表面
の微細な空隙部分に油脂が入り込んで表面と表面直下の
空隙を埋め、極めて密に被覆されているものである。そ
してこの多孔質油ちょう菓子の風味は、トリステアリン
を含む油脂で被覆されているため、濃厚感があって良好
なものである。しかし、油脂で被覆されていても、上記
したように油脂がほとんど消化吸収されないためカロリ
ーの低い菓子で、油脂由来のカロリーは、実質的に0に
近いものである。
ンが30重量%未満の油脂を用いた場合は、本発明の目
的とする低カロリーの多孔質油ちょう菓子とならず、一
方、95重量%以上になると、高度な精製が必要となっ
て容易に調製できず、コストの上昇を伴い、また、低カ
ロリー油脂としての効果も精製度に伴って得られないの
で実用的ではない。また、上記の油ちょう条件におい
て、温度が120℃より低い場合は、油脂の流動性が不
足し、多孔質菓子への油脂の移行が少なくなるだけでな
く、菓子中の水分蒸発が少なくなり、吸湿防止の効果も
小さいものとなる。また加熱処理後の油ぎれが悪く、菓
子表面への油脂が残って食感を悪くする原因となる。一
方、油ちょう温度が220℃を越えると、加熱処理中に
菓子に焦げが発生し、風味と食感を損ねることになる。
また、油ちょう時間が10秒未満では、菓子の水分の蒸
発が充分行われず、吸湿防止の効果が乏しく、120秒
を越えると、油脂の浸透が多くなり、菓子本来の風味と
食感を損ねる結果となる。
油ちょう菓子を用いて冷菓を被覆するか、または冷菓と
混合するものである。冷菓を多孔質油ちょう菓子で被覆
する場合は、従来、モナカアイス等の冷菓を被覆してい
たモナカと同様に調製したモナカの皮等を、上記の方法
に従って油ちょう(加熱処理)してから余剰の油脂を除
去し、放冷後、常法により冷菓を被覆する。また冷菓と
混合する場合は、多孔質菓子を油ちょう後に余剰の油脂
を除去して放冷し、適度の大きさにした本発明の多孔質
油ちょう菓子を攪拌羽根付きのホッパー等で冷菓用ミッ
クスと混合して凍結用モールドや適当な容器に詰めて凍
結するか、または、冷菓用ミックスをアイス用フリーザ
ーで適量の空気を含有させて半凍結状態にしてから、多
孔質油ちょう菓子と一緒に凍結用モールドや容器に充填
し、凍結する。冷菓と多孔質油ちょう菓子との混合比
は、最終製品中(冷菓中)で多孔質油ちょう菓子が50
〜90容量%であることが好ましい。多孔質油ちょう菓
子の含有比率が50容量%未満であると、食したときの
菓子本来の食感や風味が十分得られず、菓子の食感や風
味を楽しむという本発明の目的を達成できない。一方、
菓子の比率が90容量%を超すと、冷菓ミックスによっ
て菓子同士を接着できず、結果として含有する油ちょう
菓子がバラバラになりやすく、食しにくくなる。
すると共に、本発明の効果を確認するための比較例を示
す。
量%含有するナタネ極度硬化油2kgをテンプラ鍋に入
れ、ガスレンジで180℃に加温した。これに、クッキ
ー(多孔質菓子)を120g 入れ、30秒間油ちょう後
直ちに取り出し網の上で室温まで放冷した。放冷後のク
ッキーの重量は132g であった。クッキーへの油脂付
着量は、10重量%であった。また、処理前のクッキー
の比重は約0.3であったが、処理後のクッキーの比重
は約0.33であった。 (冷菓用ミックスの調製)脂肪率40%の生クリーム2
0.0重量%、全脂練乳10.0重量%、脱脂粉乳7.
0重量%、グラニュー糖7.0重量%、粉末水飴(DE
30)5.0重量%、グリセリン脂肪酸エステル0.2
重量%、ローカストビーンガム0.10重量%、グアー
ガム0.05重量%、カラギナン(κタイプ)0.01
重量%、水50.54重量%、およびバニラエキス0.
1重量%を混合して65℃まで加温し、攪拌して予備乳
化液を調製した。この予備乳化液を150kg/cm2で均質
して85℃で20秒間殺菌し、直ちに冷水浴にて5℃ま
で冷却し、5℃で一夜エージングしてミックスとした。
これをバッチ式フリーザーでオーバーラン20%、温度
−4.0℃の半凍結状態の冷菓用ミックスとした。 (多孔質油ちょう菓子含有冷菓の調製)上記で調製した
油ちょうクッキーと半凍結状の冷菓用ミックスとを容積
比で3:2となるように計量し、緩やかに攪拌して混合
した。その混合物を凍結用モールドに充填し、スティッ
クを挿して直ちにモールドを−36℃の塩化カルシウム
ブラインに浸漬して凍結硬化した。完全に硬化した後、
モールドの外壁を40℃の温水で融解し、抜き取ってピ
ロー包装後−25℃の冷凍庫で保存した。
じクッキーを、市販のナタネ油で同一条件で油ちょうし
て油ちょうクッキーを得た。これを実施例1と同一方法
で調製した冷菓ミックスと同一比率で混合して冷凍し、
包装した。このクッキーに対するナタネ油の付着量は8
%であった。
と同じく冷菓ミックスと混合して冷凍し、包装した。
られた3種類の冷菓について、製造直後と、−14℃の
冷凍庫で1か月保存後の2回について、男女31名(男
12名、女19名)のパネラーによって官能評価を行っ
た。評価方法は、風味、組織、クリスピー性について7
点法で評価した。その結果を表1に示した。尚、評価
は、7点:極めて優れている、5点:標準、1点:極め
て劣るとし、中間に評価されるものは、中間の評価点と
し、数値は評価者全員の平均値とした。また、表中にク
ッキーを100g 摂取した時の吸収されるカロリーを示
した。
ステアリンを含有する油脂で油ちょうしたクッキーを配
合した冷菓は、保存後1ヵ月後であっても、各評価項目
において製造直後と比べてほとんど変化していないのに
対して、比較例1および2では、保存後1ヵ月で各評価
項目とも標準以下になっており、実施例1で得られた冷
菓よりはるかに劣ることが判る。特に、比較例1のクッ
キーの吸湿性は、油ちょうしているにもかかわらず、保
存性があまり改善されておらず、クッキー本来の風味や
食感が損なわれていた。また、比較例2の冷菓は、油ち
ょうしていないためクッキーの吸湿性が高く、風味、食
感共に劣化が著しく、製品としての価値が全くないもの
であった。
有する大豆極度硬化油を用いて180℃で30秒間油ち
ょうを行った。このポップコーンには、トリステアリン
含有油脂を25重量%含有していた。実施例1に示した
のと同じ方法で調製した冷凍ミックス100部に対し、
上記のポップコーン300部を混合して冷凍し、包装し
た。
製した。 油脂で油ちょう処理せず(比較例3−) 大豆極度硬化油(実施例2と同じ)を用い、100℃
で30秒間油ちょう処理(比較例3−) 大豆極度硬化油(実施例2と同じ)を用い、250℃
で30秒間油ちょう処理(比較例3−) 尚、上記で調製したポップコーンのトリステアリンを含
む油脂の含有量は、それぞれ比較例3−で0、比較例
3−で12重量%、比較3−で8%であった。そし
て、実施例1に示したのと同じ方法で調製した冷菓ミッ
クス100部と、上記で調製したそれぞれのポップコー
ンを300部混合して冷凍し、包装した。
れの冷菓について、製造直後と、−14℃で1か月保存
後の2回、官能による評価を行った。その結果を表2に
示す。尚、評価方法については、上記の実施例1および
比較例1、2で行った方法に準じた。
ン配合冷菓は、保存1ヵ月後であっても製造直後の風
味、組織等の製品としての機能が維持されていることが
明らかである。しかし、比較例3−のように油脂によ
って油ちょう処理しなかったものは、製造直後において
風味や食感がよくても、ポップコーンの吸湿性が高く、
保存中に食感、組織共に劣化して製品化ができないもの
である。また、比較例3−は、ポップコーンに付着し
た油脂の比率が高いために、製造直後であっても風味、
組織共製品としての価値を有していない。一方、比較例
3−は、ポップコーンが油ちょう処理中に熱を過剰に
受けて、本来の形や色等の外観的好ましさはもちろん、
風味、組織とも劣るものとなる。
含有する油脂て多孔質菓子を油ちょうし、これを用いて
冷菓を被覆したり、または冷菓と混合しているため、多
孔質菓子の保存中における吸湿性が低下し、クリスピー
性が維持され、組織、および風味や食感に優れているも
のである。また、多孔質油ちょう菓子に含まれるトリス
テアリン含有油脂は、ほとんど消化吸収性されない油脂
であるため、油ちょう菓子が配合された冷菓は、濃厚感
があって美味みを有しながら低カロリーである。
Claims (2)
- 【請求項1】 グリセリド組成中トリステアリンを30
重量%以上含有する油脂で多孔質菓子を油ちょうするこ
とによって菓子中に前記油脂を5〜20重量%含有させ
たことを特徴とする多孔質油ちょう菓子。 - 【請求項2】 請求項1記載の多孔質油ちょう菓子を被
覆または混合させたたことを特徴とする冷菓。
Priority Applications (1)
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JP09527795A JP3270654B2 (ja) | 1995-04-20 | 1995-04-20 | 多孔質油ちょう菓子およびそれを利用した冷菓 |
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JP09527795A JP3270654B2 (ja) | 1995-04-20 | 1995-04-20 | 多孔質油ちょう菓子およびそれを利用した冷菓 |
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JPH08289732A JPH08289732A (ja) | 1996-11-05 |
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JP09527795A Expired - Fee Related JP3270654B2 (ja) | 1995-04-20 | 1995-04-20 | 多孔質油ちょう菓子およびそれを利用した冷菓 |
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1995
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