JP3270286B2 - 細胞培養容器とその製造方法、及び細胞培養方法 - Google Patents

細胞培養容器とその製造方法、及び細胞培養方法

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JP3270286B2 JP05427295A JP5427295A JP3270286B2 JP 3270286 B2 JP3270286 B2 JP 3270286B2 JP 05427295 A JP05427295 A JP 05427295A JP 5427295 A JP5427295 A JP 5427295A JP 3270286 B2 JP3270286 B2 JP 3270286B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、細胞培養容器とその製
造方法、及びそれを用いる培養方法に関するもので、更
に詳しくは、多数個のウェルを有するプレート内で、各
ウェルに単一の任意のサイズの細胞の三次元凝集体、即
ちスフェロイドを形成させる事が出来る細胞培養容器と
その製造方法、及びそれを用いる培養方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】近年肝臓の肝実質細胞を凝集させて形成
させた細胞凝集体の培養が盛んに行われる様になった。
これは細胞凝集体を形成させることにより、肝臓独自の
機能を長期に渡り維持できることから、生体由来の有用
物質の産成や生体機能の解明に重要な知見を与えるから
である。
【0003】細胞凝集体の形成容器としては、ポリビニ
ルベンジルラクトンアミドを塗布したポリスチレンシャ
ーレ(戸部ら,人工臓器,21巻,3号,1045−1
049頁,1992年)、アミノ基を導入したシャーレ
であるプライマリア3001(商品名)(高畠ら,人工
臓器,19巻,3号,18〜35頁,1990年)等が
知られている。
【0004】また、基材に接着せず培養液中に浮遊した
状態で細胞または細胞塊を培養するためには、培養容器
の表面にポリ−ヒドロキシエチルメタアクリレート等の
親水性の物質やプロテオグリカンをコートし、細胞の基
材への接着を阻害する方法(Cell Struct.Funct,13
巻,179頁,1988年)、培養容器中に細胞を入れ
た後、培養容器を振盪することにより細胞凝集体を作
り、その細胞凝集体を培養する方法や、冷却することに
より培養液に溶解する合成高分子化合物を、培養容器の
表面に塗布し細胞を接着させた後、培養容器を冷却し合
成高分子化合物を溶解して細胞のシートを作る方法(B
io/Technology,8巻,854頁,1990年)があ
る。
【0005】1番目の培養容器表面に物質をコートする
方法では、培養容器の表面を改質する一般的な方法を用
いているため、細胞凝集体はその培養容器上に径の異な
るものが多数形成されることになる。2番目の振盪によ
る方法は、振盪の速度を調節することにより細胞凝集体
の径を一定にすることが可能であるが、特別な大掛かり
な装置が必要で汎用性に欠ける。また、3番目の温度感
受性ポリマーを用いた方法では、細胞の単層培養時の細
胞シートの拡がりにより、細胞凝集体の径をある程度任
意に調節することが可能であるが、市販の培養容器では
容器の培養面積が一定で、作製できる細胞凝集体の径は
自ずと制約される。
【0006】このように細胞凝集体に関する研究は種々
実施されてきたが、これらの従来技術で形成される細胞
凝集体はいずれもその大きさが不均一であったり、形成
された細胞凝集体が安定せず崩れて基材に接着伸展して
しまい、常に一定の条件で利用すると言う事は極めて困
難であった。
【0007】例えば、医薬品等の肝毒性について評価し
ようとする場合、ラットの初代培養肝細胞を使用して、
そのアルブミンの分泌能を評価する方法があるが、ラッ
ト肝細胞のアルブミン合成能等の細胞機能の発現は、細
胞凝集体内部と表面部とでは異なる可能性が高く、細胞
凝集体の大きさにより細胞あたりのアルブミンの分泌能
が異なってくる。
【0008】また、癌組織に対するγ線などの放射線の
照射効果を評価する場合、癌細胞を単層培養しただけ、
あるいは三次元の凝集体にしたとしてもそのサイズを制
御することが出来なければ癌のモデルにはなり得ず、細
胞凝集体の中心部である程度のネクローシス(壊死)を
おこす様に凝集体のサイズを制御する必要がある。更
に、細胞の耐γ線性は細胞凝集体の内部と表面部では異
なり、内部ほど耐γ線性が高くなるため、細胞凝集体の
大きさにより耐γ線性の評価結果が異なるため、同時に
評価する細胞のサイズを均一に揃える必要がある。
【0009】従来の技術では均一なサイズの細胞凝集体
を同時に多数個作る事は出来ず、更にそのサイズも任意
に調節する事は困難であり、薬品や化粧品の原材料等の
安全性試験や、各種実験に細胞凝集体を使用する事は実
際上不可能であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、従来の
このような問題点を解決するための、均一な細胞凝集体
の形成方法について種々検討した結果、培養容器の底面
をロート状、半球状等の形状にし、容器内面の少なくと
も底面に親水性被覆を設けることによって、単一の細胞
凝集体を形成し得る事を見い出し、特開平6−3274
62号公報に開示した。
【0011】1度に多数個の細胞凝集体を形成出来る容
器を成形する場合、培養容器の形状が複雑になるため、
その基材として成形性に優れたポリスチレンが使用され
る事が多いが、従来の技術ではポリスチレン培養容器の
表面に親水性皮膜を設けた場合、その一部が剥離して培
養液中に混入したり、基材の一部の亀裂が生じる、など
の問題点があった。本発明はこのような問題点を克服
し、複雑な形状のマルチウェルプレートを用いて、均一
なサイズの細胞凝集体を多数個、同時に、容易に、かつ
長期間安定に形成させる事の出来る容器とその製造方
法、及びそれを用いる培養方法を提供しようとするもの
である。
【0012】
【課題を解決するための手段】即ち本発明は、細胞を培
養する領域となる複数個の穴(ウェル)を有する高分子
基材の細胞培養容器であって、各ウェルの底面が、角度
90度以下のロート状、曲率半径が5mm以下の半球
状、またはそれらの底面の中心部を平坦にした形状をな
し、各ウェル内面の少なくとも底面にスチレン系ポリマ
ーとリン脂質との混合組成物からなる親水性皮膜を設け
ることにより、細胞培養容器の複数個のウェル中に、そ
れぞれ同じサイズ(外径)の細胞凝集体を形成させる、
もしくはウェル内に播種する細胞の個数を変えることに
より形成される細胞凝集体のサイズ(外径)を制御する
ことを特徴とする細胞凝集体形成用細胞培養容器であ
り、更には、スチレン系ポリマーとリン脂質を、それぞ
80〜95重量%と5〜20重量%になる割合で、全
組成物の濃度が1〜3%になるように有機溶媒に溶解
し、請求項1に記載の複数個のウェルを有する高分子基
材の細胞培養容器の、各ウェルの少なくとも底面に塗布
し乾燥することを特徴とする細胞凝集体形成用細胞培養
容器の製造方法である。
【0013】また更には、このようにして得られた細胞
培養容器を用いて、複数個のウェル中に播種する細胞の
個数を同じにすることにより、それぞれ同じサイズ(外
径)の細胞凝集体を形成させ、あるいは、ウェル中に播
種する細胞の個数を変えることにより、形成される細胞
凝集体のサイズを適宜に制御することを特徴とする細胞
培養方法である。
【0014】以下、図面を参照して本発明を詳細に説明
する。図1は本発明の一実施例となる細胞培養容器のウ
ェル底面の形状を示す図で、図2は複数個のウェルを有
する細胞培養容器の例を示す図である。
【0015】本発明の細胞培養容器は、培養容器底面
の形状、培養面の親水性、培養面の滑らかさの3つ
の条件を満たす事ではじめて目的を達する事が出来る。
本発明において用いる培養容器としては、図2(a)に
示すように複数個のウェルを有するマルチプレートが用
いられるが、ウェルの数は特に限定されるものではな
い。ウェルの形状としては、図1(a)、図2(b)に
示すような断面がU字型のマルチプレートや、図1
(b)のような断面がV字型のテラサキプレートが使用
できる。
【0016】断面がU字型のウェルでは、底面を曲率半
径が10mm以下の半球状とし、また、V字型のウェル
では底面を角度120度以下のロート状とするのが好ま
しい。また、半球状やロート状の底面の中心部を平坦面
とした形状も使用可能で、図1(c)はその1例であ
る。
【0017】底面がロート状である場合には、その培養
面側の角度を120度以下、好ましくは90度以下とす
るのが良く、120度を越えると単一の細胞凝集体形成
が困難になり、1つの容器内に複数個の細胞凝集体が形
成される確率が高くなってしまう。底面が半球状の場合
は、曲率半径が10mm以下、好ましくは5mm以下と
するのがよい。10mmを越えるとやはり単一の細胞凝
集体の形成が困難になり、複数個の細胞凝集体が形成さ
れる確率が高くなってしまう。また、底面の中心部を平
面状にする場合、平面部が大きすぎると複数個の細胞凝
集体が形成される可能性が大きくなるので、平面部のサ
イズは50〜100μm以下とするのが好ましい。
【0018】次に、培養面となるウェル内面に親水性を
付与するには、スチレン系ポリマーとリン脂質との混合
組成物を塗布して親水性皮膜を設ける。親水性が必要な
のは培養容器の特に底面であり、各ウェルの底面及び側
面、少なくとも底面を表面処理して親水化することによ
っても一応の目的を達成することは可能であるが、リン
脂質の存在が特に良い結果をもたらす。
【0019】本発明において用いるリン脂質としてはホ
スファチジルコリンが挙げられるが、特にこれに限定す
るものではない。また、スチレン系ポリマーも特に限定
しないが、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−
エチレン−ブチレン3元共重合体(一般にSBESと呼
ばれる)等が利用出来る。本発明においては、スチレン
系ポリマーとリン脂質の割合が極めて重要であり、良好
な細胞凝集体が形成されるリン脂質の濃度範囲は、全組
成物に対して5〜20重量%である。20重量%を越え
ると培地中でリン脂質が膨潤し、剥離してくる事があ
り、また、重量%未満では基材に細胞が接着してしま
い、細胞凝集体を形成しない。コスト面からも上記の範
囲が好ましい。
【0020】リン脂質の濃度5〜20重量%の範囲で、
本発明の製造方法により、表面が滑らかで良好に細胞凝
集体を形成し得る細胞培養容器を製造する事が出来る。
即ち、スチレン系ポリマーとリン脂質の混合組成物であ
る親水性皮膜の均一な塗布表面を形成するためには、リ
ン脂質組成物の有機溶媒溶液中での濃度が非常に重要な
ファクターであり、有機溶媒に対する全組成物の濃度
を、1〜重量%の範囲とするのが良い。組成物の濃度
重量%を越えると、溶液の粘度が高くなるため塗布
層が厚くなって、乾燥後滑らかな表面を得る事が出来
ず、細胞の凝集を妨げる結果となる。また、1重量%よ
り濃度が低いと親水性皮膜表面のリン脂質の濃度が薄す
ぎて、その効果が発揮されない。
【0021】現在、細胞培養容器の材質としては、光学
的透明性、無毒性、良好な成形性、低コストなどの面か
らポリスチレンが広く使用されている。本発明に使用す
る有機溶媒としては、スチレン系ポリマーとリン脂質と
の共通溶媒である事が必須条件であるが、一方、耐溶剤
性の低いポリスチレンの培養容器に対しては、基材を溶
解したり変形を生じないものであることが要求される。
そのような条件を満たす溶媒としては、炭化水素系とア
ルコール系の混合溶媒を用いることが出来る。これらの
溶媒を用いたリン脂質組成物の溶液はポリスチレン基材
の他、メチルペンテン樹脂に対しても好適に塗布するこ
とが出来るが、さらに、他の高分子材料や、ガラス製、
金属製等の容器にも適用可能なことは勿論である。
【0022】本発明の製造方法において使用する炭化水
素系の溶媒としては特に限定するものではないが、石油
エーテル、リグロイン、ヘキサン、ヘプタン、オクタ
ン、ベンゼン、トルエン等が使用でき、それらは何種類
組み合わせてもかまわない。また、アルコール系の溶媒
も特に限定するものではないが、メタノール、エタノー
ル、プロパノール、ブタノール等が使用出来、それらは
何種類組み合わせてもかまわない。ここで重要な事は炭
化水素系及びアルコール系溶媒の混合比である。アルコ
ールの濃度が、全溶媒中0.5〜50容積%が好まし
く、50容積%を越えるとスチレン系ポリマーが溶解せ
ず、一方、0.5容積%未満であればリン脂質が溶解し
にくく、かつスチレン系ポリマーの基材に塗布した際
に、基材側に亀裂を生じる問題がある。
【0023】スチレン系ポリマー及びリン脂質を溶媒に
溶解する手順としては、先ず、アルコール系溶媒にリン
脂質を分散させておき、その後、炭化水素系溶媒を徐々
に加えてリン脂質が完全に溶解した事を確認した後、ス
チレン系ポリマーを加えて攪拌するのが好ましい。上記
の溶媒にリン脂質とスチレン系ポリマーを一度に溶解し
ようとすると、白濁して完全には溶解しない。
【0024】このようにして調製したリン脂質組成物の
溶液を基材に塗布する方法としては、分注器等を用いて
溶液を培養容器の各ウェルに注入し、基材表面を浸漬し
た後、直ちに過剰の溶液を吸引して除去し、乾燥させて
リン脂質を含むスチレン系ポリマー層を形成させる。乾
燥させる際に、容器を裏返して底面を上にする事で、塗
布した溶液がウェルの底面に溜まる事を防ぎ、より均一
な塗布表面を得る事が出来る。
【0025】また、乾燥させる際に自然に乾燥させる
と、乾燥速度が遅いため、乾燥の過程において低分子量
のリン脂質が塗布界面に凝集してきてしまい、リン脂質
とスチレン系ポリマーの均一な表面が得られない。その
結果、長期間の培養においては培地中にリン脂質が溶け
出してくるといった問題が生じる。このような問題を解
消するため、本発明の製造方法においては、乾燥時に培
養容器の表面に空気を吹き付けるか、もしくは吸引する
事によって、ウェル内に空気を流入させて強制的に乾燥
させる事で、リン脂質の界面への凝集を抑え、リン脂質
とスチレン系ポリマーの均一な表面を得るのが特徴であ
る。吹き付け、又は吸引する空気の強さとしては特に限
定するものではないが、弱すぎると効果が見られず、強
すぎると滑らかな表面が得られない。好適な条件として
は、0.5〜30m/sの範囲の流速で空気を溶媒が完
全に蒸散するまでの間1〜5分間吹き付けるか、又は吸
引するのが好ましい。
【0026】この様にして得られた細胞培養容器上に動
物細胞を播種した直後は、細胞は単細胞に分散した状態
であるが、12時間以上培養を続けると、培養容器のウ
ェル一つに付き1個の細胞凝集体が自然に形成される。
即ち培養容器が96個のウェルを有する場合、96個の
ウェル中にそれぞれ同じ個数の細胞を播種すれば、96
個の同一サイズの細胞凝集体が自然に形成される。細胞
凝集体の形状は、株化細胞を使用した際には完全な球状
であり、また、細胞凝集体を形成させる際に播種する細
胞数及び培養日数によってそのサイズを制御する事が出
来る。即ち、ウェル中に播種する細胞の個数を変えるこ
とにより、形成される細胞凝集体のイサズ(外径)を任
意に制御することが可能である。
【0027】また、本発明による細胞培養容器は、株化
細胞のみならず、初代培養系の正常細胞にも目的に応じ
て適用することが出来る。初代培養系の正常細胞のよう
な殆ど増殖しない細胞を使用する場合、その形状はやや
不均一な球状であり、そのサイズは播種細胞数によって
のみ制御する事が出来る。
【0028】本発明による細胞培養用容器を用いて形成
した細胞凝集体は、サイズ、形状共に非常に均一である
ため、機能性細胞を用いた機能維持の評価、化学物質の
毒性評価、細胞増殖因子の評価研究等に利用出来る。ま
た細胞凝集体が長期間安定であるという本発明の細胞培
養容器の特徴を活かして、癌細胞を用いてある一定の大
きさの凝集体を形成し、中心部にネクローシスを起こさ
せ、生体内の癌組織と同様の形態にする事により、癌の
耐γ線性の研究や、薬物感受性の研究といった動物代替
キットとしての応用も可能である。
【0029】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に具体的に
説明する。 溶液の作成 イソプロピルアルコール(特級:和光純薬工業(株)
製)10mlにジパルミトイルホスファチジルコリン
0.3gを分散させた溶液に、リグロイン(特級:和光
純薬工業(株)製)40mlを徐々に加えてホスファチ
ジルコリンを完全に溶解させた。その溶液にスチレン−
エチレン−ブチレン3元共重合体(旭化成(株)製タフ
テックH1041)を溶解し、1時間攪拌して均一な溶
液を得た。
【0030】溶液の塗布 上記にて作成した溶液をマルチプレート96U(住友
ベークライト(株)製スミロンMS−309UR)の、
1列8個の各ウェルに150μlずつ、8連ディスペン
サーを用いて注入し、直ちに吸引排出した後、プレート
を裏返し、2m/sの流速で空気を3分間吹き付けて乾
燥した。この操作を1列ずつ12回繰り返して、96ウ
ェル全ての塗布を終えると、クリーンベンチ内で裏返し
たまま24時間乾燥させた。その後、殺菌のため5分間
紫外線を照射した。
【0031】得られた実施例の細胞培養容器に、比較例
として未処理のスミロンMS−309UR(U底)、及
びMS−3096R(平底)を加えて、Hep G2細
胞を用いて形態の評価、及びラット初代培養肝細胞を用
いたアルブミン分泌能の評価を行った。 Hep G2(ヒト肝癌由来)細胞での評価 プレートの各ウェルに1×109細胞/mlの濃度で
0.1mlずつ細胞を播種した。その際培地はDMEM
(大日本製薬製)に子牛血清(大日本製薬製)を10%
添加したものを使用し、3日に1度培地交換を実施し
た。細胞の播種及び培地交換には8連ディスペンサーを
使用した。3,6,10日後に倒立顕微鏡にて細胞を観
察及び写真撮影し、細胞凝集体の直径を測定した。
【0032】結果は表1に示すとおりで、比較例のプレ
ートではウェル底面の形状には拘わりなく、細胞は敷石
状に増殖し、凝集体を形成しなかった。本発明のプレー
トでは全ウェルで単一の細胞凝集体が形成されており、
その直径は培養日数と共に増加していった。しかも96
個全ての細胞凝集体が同様に増殖していくので、増殖1
0日目においても、細胞凝集体の大きさは全てのウェル
でほぼ均一であり、ウェル底面のリン脂質処理が効果を
有することが明らかである。
【0033】
【表1】
【0034】ラット初代培養肝細胞での評価〔1〕 ラット肝細胞をコラゲナーゼ還流法にて採取し、プレー
トの各ウェルに1.5×105細胞/mlの濃度で0.
2mlずつ播種した。尚、培地はライホビッツL−15
(大日本製薬(株)製)に牛胎児血清(10%)、イン
シュリン(10 -7mol/1)、デキサメサゾン(10
-7mol/1)、上皮細胞成長因子(10μg/ml)
及びプロリン(30μg/ml)(全て大日本製薬
(株)製)を添加したものを使用した。培地交換は2日
に一度ずつ行い、7日後及び14日後に倒立顕微鏡にて
形態観察をすると共に、ELISA法を用いてアルブミ
ンの合成量を測定した。
【0035】結果は表2に示した通りで、比較例ではウ
ェル底面の形状がU底、平底共に凝集体を形成せず、ア
ルブミンの合成能も低く培養日数と共に減少していった
のに比べ、実施例では全てのウェルで細胞凝集体が形成
され、比較例に比べてアルブミンの合成能も高く安定し
ていた。
【0036】
【表2】
【0037】ラット初代培養肝細胞での評価〔2〕 麻酔をかけたウィスター系ラットの門脈よりコラゲナー
ゼ0.05%を含むハンクス緩衝液を還流し、肝臓内に
コラゲナーゼが十分に行き渡り酵素が効いていることを
確認した後、肝臓を取り出して細胞濾過器で単細胞に分
散した細胞を回収し、さらに低速遠心分離を繰り返すこ
とにより肝細胞のみに精製した。得られたラット初代培
養肝細胞を、播種個数がそれぞれ2.0、1.3、0.
7、0.3、0.1×105細胞/ウェルになるよう
に、前記で調製した培養底面断面形状がU字型のマル
チプレートの各ウェルに播種した。培養液はライホビッ
ツL−15を基本培養液とし、添加物として10%子牛
血清、インシュリン1×10-7M、デキサメサゾン1×
10-7M、L−プロリン30μg/ml、上皮細胞増殖
因子10ng/ml、及びジメチルスルホキシド2%を
加えたものを使用し、5%炭酸ガス、95%空気の炭酸
ガス培養装置で培養した。
【0038】培養液は定期的に交換し、培養31日目の
細胞凝集体の径を測定した。結果を図3に示す。さら
に、培養液中に肝細胞の分泌するアルブミン量を、抗ア
ルブミン抗体を用いたELISA法により求めた。結果
を図4に示す。
【0039】図3に示すように、播種細胞数を変えるこ
とにより得られる細胞凝集体の径を変えることが可能な
ことが証明された。また、図4には播種細胞数を変えて
形成させた細胞凝集体におけるアルブミン分泌能を示し
たが、径が大きくなるに従いアルブミン分泌能が高まる
ことを表している。
【0040】しかし本来ならば、播種細胞数に比例して
細胞のアルブミン分泌量は増加するはずであるが、本実
験においては播種細胞数が多くなるにつれて分泌量の増
加は少なくなっていく。これは細胞凝集体の径が大きく
なると、凝集体内部の細胞がネクローシスを生じ、正常
機能を果たさなくなるからである。従って、細胞機能を
見る実験系においては、本発明のように細胞凝集体の径
を揃えることが重要なことを表している。
【0041】
【発明の効果】本発明の培養容器を使用すれば、多数個
のウェルに細胞を播種するだけで、各ウェル毎に1個ず
つの細胞凝集体が形成されるので、一度に大量の細胞凝
集体を得ることが出来、なおかつそのサイズも均一で、
播種細胞数を変えることによって任意の大きさに制御で
きるので、従来の方法ではなし得なかった各種の分析、
評価、研究、例えば、薬品類や化学物質の細胞毒性判定
等、多岐にわたって細胞凝集体を有効に利用することが
可能になり、本発明の技術的な価値を極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】培養容器の底面の形状を示す断面図で、(a)
は底面が半球状、(b)はロート状、(c)はロート状
底面の中心部を平坦面にした形状を示す。
【図2】マルチプレートの一例を示す図で、(a)は全
体の斜視図、(b)は(a)図のA−A′断面の一部拡
大図である。
【図3】播種細胞数と得られる細胞凝集体の径の関係を
示す図である。
【図4】播種細胞数と培養液中に分泌されたアルブミン
量の関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−46831(JP,A) 実開 平2−49898(JP,U) 実開 昭63−129500(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12M 1/00 - 3/06

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞を培養する領域となる複数個の穴
    (ウェル)を有する高分子基材の細胞培養容器であっ
    て、各ウェルの底面が、角度90度以下のロート状、曲
    率半径が5mm以下の半球状、またはそれらの底面の中
    心部を平坦にした形状をなし、各ウェル内面の少なくと
    も底面にスチレン系ポリマーとリン脂質との混合組成物
    からなる親水性皮膜を設けることにより、細胞培養容器
    の複数個のウェル中に、それぞれ同じサイズ(外径)の
    細胞凝集体を形成させる、もしくはウェル内に播種する
    細胞の個数を変えることにより形成される細胞凝集体の
    サイズ(外径)を制御することを特徴とする細胞凝集体
    形成用細胞培養容器。
  2. 【請求項2】 リン脂質がホスファチジルコリンである
    請求項1記載の細胞凝集体形成用細胞培養容器。
  3. 【請求項3】 親水性皮膜が5〜20重量%のリン脂質
    を含有している請求項1又は2記載の細胞凝集体形成用
    細胞培養容器。
  4. 【請求項4】 スチレン系ポリマーとリン脂質を、それ
    ぞれ80〜95重量%と5〜20重量%になる割合で、
    全組成物の濃度が1〜3%になるように有機溶媒に溶解
    し、請求項1に記載の複数個のウェルを有する高分子基
    材の細胞培養容器の、各ウェルの少なくとも底面に塗布
    し乾燥することを特徴とする細胞凝集体形成用細胞培養
    容器の製造方法。
  5. 【請求項5】 有機溶媒が、石油エーテル、リグロイ
    ン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエ
    ンの中から選ばれた少なくとも1種の炭化水素と、メタ
    ノール、エタノール、プロパノール、ブタノールの中か
    ら選ばれた少なくとも1種のアルコールとからなり、ア
    ルコールの濃度が全溶媒中の0.5〜50容積%である
    請求項4記載の細胞凝集体形成用細胞培養容器の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 塗布し乾燥することは、スチレン系ポリ
    マーとリン脂質とからなる組成物の溶液を細胞培養容器
    の各ウェル内に塗布した後、塗布面に対して空気を吹き
    付け、もしくは吸引することにより、ウェル内に0.1
    〜30m/sの流速で空気を流入させて有機溶媒を飛散
    させ、乾燥することである請求項4又は5記載の細胞凝
    集体形成用細胞培養容器の製造方法。
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