JP3252110B2 - 家蚕を用いた冬虫夏草の人工栽培方法 - Google Patents
家蚕を用いた冬虫夏草の人工栽培方法Info
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Description
ロマイセス属(Paecilomyces sp.)菌株、すなわち冬虫
夏草を人工栽培する方法に関し、より詳細には、生きて
いる家蚕の幼虫にペシロマイセス属菌株を接種して感染
を誘発させた後、このペシロマイセス属菌に感染した家
蚕の幼虫から子実体を形成させて冬虫夏草を人工的に栽
培する方法に関するものである。
草菌が昆虫に感染されて生じた一種の薬用茸であって、
中国、ネパール、日本、南アメリカ、韓国等、世界各国
で自生していることが知られている。
散して昆虫の表皮に取り付くことによりなされる経皮感
染に依存しており、胞子が昆虫の表皮に取り付いた後、
適当な温度、湿度等の条件に合うと、発芽して昆虫の表
皮を突き抜けてその体内に入り、体内で菌糸状態に発育
増殖し、昆虫が死んだ後には、寄主昆虫(host insect
s)の表皮上に子実体を形成する。この子実体は、柄部
と先端の結実部とから構成され、通常1.5〜10cm
のサイズになる。また、その形状は、糸状、棒状又は円
筒状を有し、色相は、白色、黒色、赤色、褐色等のよう
に多様である。
虫夏草は、各種疾病に対して薬理的な効能を有するの
で、最近多くの関心と研究の対象となっている。その例
として、中国では、昔から冬虫夏草が不老長生の秘薬と
して幅広く知られているだけでなく、肺を保護し、腎臓
を丈夫にする等の効能を有する貴重な薬剤として使用さ
れてきた。また、中国の古医書である「證類本草」に
は、蛹昆草、亜香棒虫草等の各種の冬虫夏草が種別に多
様に広範囲な疾病に効能を有すると記載されている。ま
た、日本の場合、1801年「本草書」に冬虫夏草に対
する記録が伝えられているところ、当時肺病や肋膜炎の
特効薬として販売されたりした。
ると、冬虫夏草には、免疫機能を強化させる成分が含有
されていて、冬虫夏草の抽出物を人体に投与する場合、
細胞免疫と体液免疫を促進させることにより、免疫機能
を著しく補強させて、各種腫瘍とビルス感染に対する抵
抗力を高める等の効果があると報告されている。また、
スイスの臨床実験では、冬虫夏草を麻薬中毒者に2週間
投与したところ、麻薬の深刻な不作用を除去し、誘惑さ
え振い落とすことができるようにすることにより、完全
な正常人に復帰させるに成功した。その他にも、冬虫夏
草は、酷い運動のため、体力消耗が多い場合、疲労を早
く直すことができるという効果があり、精神労働をする
人々のストレス解消にも効果が大きいので、利用分野が
非常に広い。
夏草は、全世界的に300余種が分布しており、多数の
種が相違する効能を有すると知られていて、天然医薬品
の原料として多くの期待を集めている。
植物に比べてサイズが小さく、分布密度も低くて、野外
や山中で発見、採取が困難であり、大衆的な需要は勿
論、薬効検索、臨床試験等の各種研究に必要な絶対量も
確保することができないという問題点を有している。
類、冬虫夏草別寄主昆虫、感染経路、子実体の形成条件
等を理解し、ひいては、冬虫夏草の種別特性を把握する
等の研究を通じた冬虫夏草の人工栽培方法について活発
な研究が進行されている。
れるものであって、本発明では、冬虫夏草の大量供給を
目的に、冬虫夏草の栽培寄主として、既に飼育技術が確
立されて有用に利用されている家蚕を選定することによ
り、冬虫夏草を人工栽培する方法を研究するに至った。
ており、天然高級繊維であるシルク(silk)を生産する
重要な昆虫として利用されているだけでなく、各種疾病
を治療するための尊い薬剤原料として使用されている昆
虫である。また、冬虫夏草は、生きている昆虫で成長す
る活物寄生性であるため、昆虫飼育技術が確立されて近
年人類が有用に利用している多数の昆虫中、家蚕を選定
したものである。しかし、すべての冬虫夏草が家蚕を寄
主として栽培されることができるものではないので、家
蚕を寄主として栽培されることができる冬虫夏草に対す
る研究が要求される。
は、家蚕を寄主として使用することができる冬虫夏草菌
株を探すために鋭意研究を重ねた結果、家蚕へのペシロ
マイセス属(Paecilomycessp.)菌株の感染を確認し、本
発明を完成するに至った。
あるペシロマイセス属(Paecilomyces sp.)菌株を人工栽
培する方法を提供することにある。
シロマイセス属(Paecilomyces sp.)菌株を人工栽培す
る方法であって、(1)ペシロマイセス属菌株の胞子の
希釈液を、温度26〜30℃、湿度約90%以上の条件
下で家蚕の4〜5齢期の幼虫に噴霧接種して感染させる
段階と、(2)感染された幼虫を、温度15〜30℃、
湿度約90%以上の条件下に保護して子実体を形成させ
る段階とを含む、ペシロマイセス属菌株の人工栽培方法
である。本発明の他の目的及び作用は、以下の発明の詳
細な説明から当業者に明らかであろう。
る。本発明は、人工栽培において冬虫夏草の寄主昆虫と
して家蚕を選定することに特徴がある。すなわち、本発
明による冬虫夏草の人工栽培において、適用される菌株
は、家蚕に対する各種冬虫夏草菌株の感染如何を調査す
ることにより選定されたものであって、その結果は、表
1に示した。
って適用される寄主が相異することがわかり、本発明で
は、家蚕を寄主として人工栽培に適用されることができ
る冬虫夏草としてペシロマイセス属(Paecilomyces s
p.)菌株を選定した。本発明で使用されるペシロマイセ
ス属菌株は、特に限定されないが、例えぱ、ペシロマイ
セスザポニカ(Paecilomyces japonica )、ペシロマイ
セス属J300(Paecilomyces sp. J300 )、ペシロマ
イセスパリノサ(Paecilomyces farinosa )等がある。
カは、韓国の野山で採取した野生冬虫夏草(図1参照)
に形成された胞子を培養して得たものである。具体的に
は、野生冬虫夏草に形成された胞子を取ってPDA(Po
tato Dextrose Agar)培地又は玄米培地に接種した後、
20〜25℃の温度を維持しつつ、30〜40日間培養
し、菌糸を形成して母菌株を製造した。その後、この母
菌株の胞子を家蚕の表皮に噴霧接種することにより感染
された蛹から黄色の子実体を得た。
マイセスザポニカは、1996年11月29日付で韓国
ソウルの韓国種菌協会(Korean Foundation of Culture
Collection) 付設の韓国微生物保存センター(Korean Cu
lture Collection f Microorganisms)に寄託され、受託
番号KFCC−10939が付与され、1997年11
月27日付でブダペスト条約下に国際奇託に転換して受
託番号KCCM−10117が付与されている。
117)菌株は、糸状菌のうち、不完全菌類に属し、鱗
翅目の多種の昆虫に寄生する広範囲な寄主域を有してい
る。また、1〜10個の枝状の黄色子実体を形成し、子
実体のサイズは、1.5〜4.7cm程度であり、結実
部には、白色粉のような裸生の分生胞子が無数に形成さ
れることが特微である(図2参照)。
属J300は、韓国の野山で採取した野生冬虫夏草(図
3参照)に形成された胞子を培養して得たものである。
具体的には、野生冬虫夏草に形成された胞子を取ってP
DA培地又は玄米培地に接種した後、20〜25℃の温
度を維持しつつ、30〜40日間培養し、菌糸を形成し
て母菌株を製造した。その後、この母菌株の胞子を家蚕
の表皮に噴霧接種して感染された蛹から子実体を得た。
子実体は、淡黄色の柄部と白色の頭部とを有し、そのサ
イズは、2.0〜3.0cm程度であり、頭部の子嚢果
は、裸生であることが特徴である。
命名され、1996年11月29日付で韓国ソウル韓国
種菌協会付設の韓国微生物保存センターに寄託され、受
託番号KFCC−10938が付与され、1997年1
1月27日付でブダベスト条約下に国際寄託に転換して
受託番号KCCM−10116が付与されている。
0116)は、糸状菌のうち、不完全菌類に属し、鱗翅
目の多種の昆虫に寄生する広範囲な寄主域を有してい
る。また、この菌は、主に鱗翅目の蛹胴体で数本の子実
体を形成する。
は、韓国の野山で採取した野生冬虫夏草(図5参照)に
形成された胞子を培養して得たものである。具休的に
は、野生冬虫夏草に形成された胞子を取ってPDA培地
又は玄米培地に接種した後、20〜25℃の温度を維持
しつつ、30〜40日間培養し、菌糸を形成して母菌株
を製造した。その後、この母菌株の胞子を家蚕の表皮に
噴霧接種することにより感染された蛹から白色の棒状子
実体を得た。
マイセスパリノサは、1997年11月27日付でブダ
ベスト条約下に韓国種菌協会付設の韓国微生物保存セン
ターに寄託され、寄託番号KCCM−10115が付与
されている。
うち、不完全菌類に属し、鱗翅目の多種の昆虫に寄生す
る広範囲な寄主域を有している。また、1〜5個の白色
棒状子実体を形成し、子実体のサイズは、1.0〜2.
0cm程度であり、結実部には、白色粉のような裸生の
分生胞子が棒状に無数に形成されることが特徴である
(図6参照)。
寄主として人工栽培されることができる。以下では、ペ
シロマイセス属菌株の人工栽培方法に対して具体的に記
述する。
に接種して菌の感染を誘導する。接種は、玄米培地で培
養した菌の胞子を水に希釈して107 〜108 個/ml
(胞子/ml)の濃度に合わせた後、温度26〜30
℃、湿度約90%以上、好ましくは、約95%の条件下
に家蚕の4〜5齢期の幼虫の表皮に等しく散布する。菌
の接種は、15〜24時間行う。
後、標準温度及び湿度に準じて1日当たり2〜4回給桑
して家蚕を飼い、上蔟後、10〜15日頃にまゆを採っ
てまゆを折肩して硬化された踊を選抜する。硬化された
蛹は、冬虫夏草菌に感染されたものであり、刀で切る
と、白色の冬虫夏草菌糸が体内に充ちていることが判明
した。
するため、硬化された蛹を、温度15〜30℃、湿度約
90%以上、好ましくは95%の条件下に保護するもの
である。1〜5日が経過すると、蛹の表皮に浅い白色の
菌糸が形成され、さらに1〜5日が経つと、子実体が形
成し始め、これから30〜40余日が経過すると、平均
2〜3cmのサイズを有する子実体が得られる。この際
が、収穫適期であって、収獲した冬虫夏草の重さは、1
個体当たり(蛹+子実体)1.2〜1.5g程度であ
る。
の冬虫夏草の人工栽培方法についてより具体的に説明す
るが、本発明は、これらの試験例及び実施例に限定され
るものではない。
め、95%の湿度条件下で菌接種方法、接種濃度、接種
時期及び接種温度を、表2に記載した条件で試験し、そ
の感染率に対する結果を表2に示した。
ilomyces japonica )、ペシロマイセス属J300(Pa
ecilomyces sp. J300 )及びペシロマイセスパリノサ
(Paecilomyces farinosa )の胞子を、108 個/ml
の濃度で水に希釈して温度29〜30℃、湿度95%の
条件下に5齢期の家蚕幼虫に噴霧接種した場合、最も高
い感染率を示すことが分かる。
の形成を誘導する条件を調べるため、表3に記載された
条件で子実体の形成程度を試験し、その結果を表3に示
した。
せた蛹を、温度15〜30℃、湿度95%の条件下に保
護すると、子実体が形成されることが分かる。特に、ペ
シロマイセスザポニカは20〜26℃の温度で、ペシロ
マイセス属J300は18〜24℃の温度で、ペシロマ
イセスパリノサは15〜24℃の温度で、それぞれ子実
体の形成率が92%以上に高く、子実体の成長も優秀で
あることが分かる。
株は、子実体の保譲期間が長くなるほど子実体はもっと
大きくなるが、寄主蛹の栄養損失に起因して重さが減
り、子実体もあまり完熟されて新鮮度を失うため、子実
体は、未熟段階(保護後20〜40日頃)で収獲するこ
とが好ましい。
夏草は、野生冬虫夏草に比べて多くの子実体を形成する
ので、大量生産が可能である。ひいては、多様な薬理効
果を有する冬虫夏草を大量生産して補給する場合、人類
健康増進及び体力向上等の効果を期待することができ
る。
を形成した野生雪花冬虫夏草(Paecilomyces japonica
)の写真である。
夏草(Paecilomycesjaponica )の写真である。
を形成した野生J300冬虫夏草(Paecilomyces sp. J
300 )の写真である。
冬虫夏草(Paecilomyces sp. J300 )の写真である。
を形成した野生蛹棒形雪花冬虫夏草(Paecilomyces far
inosa )の写真である。
花冬虫夏草(Paecilomyces farinosa )の写真である。
Claims (5)
- 【請求項1】 ペシロマイセス属(Paecilomyces sp.)
菌株を人工栽培する方法であって、(1)ペシロマイセ
ス属菌株の胞子の希釈液を、温度26〜30℃、湿度約
90%以上の条件下で家蚕の4〜5齢期の幼虫に噴霧接
種して感染させる段階と、(2)感染された幼虫を、温
度15〜30℃、湿度約90%以上の条件下に保護して
子実体を形成させる段階とを含むことを特徴とするペシ
ロマイセス属菌株の人工栽培方法。 - 【請求項2】 前記希釈液は、ペシロマイセス属菌株の
胞子を、水を用いて107 〜108 個/mlの濃度で希
釈したものであることを特徴とする請求項1に記載のペ
シロマイセス属菌株の人工栽培方法。 - 【請求項3】 前記菌株は、ペシロマイセスザポニカ
(Paecilomyces japonica 、KCCM−10117)で
あり、前記段階(1)は、菌株の胞子を、約108 個/
mlの濃度で希釈した希釈液を使用して家蚕の5齢期幼
虫に実施し、前記段階(2)は、温度20〜26℃、湿
度約95%の条件下で実施することを特徴とする請求項
1に記載のペシロマイセス属菌株の人工栽培方法。 - 【請求項4】 前記菌株は、ペシロマイセス属J300
(Paecilomyces sp.J300 、KCCM−10116)で
あり、前記段階(1)は、菌株の胞子を、約108 個/
mlの濃度で希釈した希釈液を使用して家蚕の5齢期幼
虫に実施し、前記段階(2)は、温度18〜24℃、湿
度約95%の条件下で実施することを特徴とする請求項
1に記載のペシロマイセス属菌株の人工栽培方法。 - 【請求項5】 前記菌株は、ペシロマイセスパリノサ
(Paecilomyces farinosa 、KCCM−10115)で
あり、前記段階(1)は、菌株の胞子を、約108 個/
mlの濃度で希釈した希釈液を使用して家蚕の5齢期幼
虫に実施し、前記段階(2)は、温度15〜24℃、湿
度約95%の条件下で実施することを特徴とする請求項
1に記載のペシロマイセス属菌株の人工栽培方法。
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