JP3241234B2 - 薄膜太陽電池およびその製造方法 - Google Patents

薄膜太陽電池およびその製造方法

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JP3241234B2 JP10672695A JP10672695A JP3241234B2 JP 3241234 B2 JP3241234 B2 JP 3241234B2 JP 10672695 A JP10672695 A JP 10672695A JP 10672695 A JP10672695 A JP 10672695A JP 3241234 B2 JP3241234 B2 JP 3241234B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薄膜太陽電池およびそ
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図4は従来の薄膜太陽電池の概略構造を
示す断面図である。
【0003】図4において、ガラス基板などの透光性絶
縁基板1上に表面に凹凸を有するSnO2やITOなど
よりなる透明導電膜2が形成され、その上に非晶質シリ
コン半導体のa−SiC:H(水素を含んだ非晶質シリ
コンカーボン)膜よりなるp層3、a−Si:H(水素
を含んだ非晶質シリコン)膜よりなるi層4、a−Si
C:H(水素を含んだ非晶質シリコンカーボン)膜より
なるn層5がこの順に積層されて光電変換活性層が形成
される。さらに、この光電変換活性層のn層5上に透明
導電膜6さらに裏面金属電極7が形成されている。
【0004】このように、透光性絶縁基板1の上方にp
−i−n層の順に積層された光電変換活性層を有する薄
膜太陽電池が構成され、この太陽電池では、太陽光など
の光は、透光性絶縁基板1側から入射されて光電変換活
性層で光−電流変換が行われる。また、一部の光は光電
変換活性層を透過して裏面金属電極7に至るが、裏面金
属電極7で反射されて再び光電変換活性層に返り、光電
変換活性層で光−電流変換が行われる。
【0005】また、従来の他の構造の薄膜太陽電池とし
て、図示はしていないが、凹凸を設けた金属基板電極上
に非晶質半導体のn層、i層、p層を順次形成し、その
上に透明導電膜を形成した逆構造のものもある。この薄
膜太陽電池の光電変換活性層はn−i−p層で構成され
ており、図4のp−i−n層の光電変換活性層とは逆構
造となっている。
【0006】これらの従来例のうち、図4の構造の薄膜
太陽電池では、透光性絶縁基板1が太陽電池表面のカバ
ーガラスを兼ねることができること、また、SnO2
どの耐プラズマ性透明導電膜が開発されて、透明導電膜
2上に非晶質半導体光電変換活性層をプラズマCVD法
で容易に積層することが可能となったことなどから多用
されるようになり、現在の主流になっている。このプラ
ズマCVD法による光電変換活性層の形成は、大面積の
薄膜形成が可能であるという利点も有している。 これ
らの従来例において、凹凸状の透明導電膜や金属基板電
極上に光電変換活性層を形成すると、光電変換活性層は
その下の凹凸を反映して凹凸状に形成される。この光電
変換活性層の凹凸は、薄膜太陽電池の光−電流変換の高
効率化を図る上で重要である。つまり、光電変換活性層
を凹凸状にすると、表面から入射した光は、凹凸状の光
電変換活性層界面で散乱されて、光−電流変換される光
電変換活性層中に斜め方向に入射し、光の光路長がその
分増加するために、光−電流変換に寄与する光吸収が増
加して電池効率が向上する。
【0007】また、上記した裏面金属電極や金属基板電
極は、光電変換活性層を透過して電池裏面から漏れ出る
光を反射させて光電変換活性層に再び返すことにより、
光電変換活性層で再度光−電流変換に寄与させることで
光の有効活用を図るもので、上記した光電変換活性層の
凹凸と同様に、電池効率が向上する。さらに、金属膜で
反射した光が光電変換活性層に再入射するときにも凹凸
による散乱効果が働くため、光電変換活性層の表裏両面
に凹凸が形成されることが望ましいことになる。もちろ
ん、この凹凸は極端に小さくても、逆に極端に大きくて
も光散乱効果が低下することは明かで、適当な大きさの
凹凸を設けることが必要となる。
【0008】以上の従来例以外に、凹凸を設けるという
意味では、特開平5−267698号公報「光起電力装
置」や特開平5−235389号公報「光起電力装置」
に開示されているように、光電変換活性層に用いている
非晶質シリコンゲルマニュウムに直接凹凸を設けるとい
う方法もあった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の非晶質薄膜
太陽電池では、これまでの上記凹凸技術の精力的な研究
・開発にも拘らず、光−電流変換効率が、10cm角の
素子で10〜12%というレベルに留まっているが、そ
れは以下の理由によるものである。
【0010】即ち、例えば図4のように、透明導電膜2
に適切な凹凸を形成し、この凹凸状の透明導電膜2上に
p層3、i層4、n層5の光電変換活性層として非晶質
膜を順次堆積させる方法では、この非晶質膜はその下地
の形状を順次反映して凹凸状に形成されるものの、次第
に凹凸が鈍ってきて光電変換活性層の金属膜側の面での
凹凸は、その深さが浅くなって光散乱効果が低下するこ
とによる光−電流変換効率の低下が問題になっていた。
このとき、p層3は、通常、膜厚15nm〜20nmと
薄いため、その影響は少ないが、i層4は膜厚300n
mと厚く形成するため、特に、CVD法では凹凸が殆ど
無くなるような場合もあり深刻な問題であった。
【0011】また、図4とは逆構造の薄膜太陽電池にお
いて、金属基板電極に適切な凹凸を直接形成する場合
は、通常、基板を300〜500℃程度の高温に保って
金属膜を真空蒸着することで行われる。しかし、この方
法は、基板材料として耐熱性の材料に制約されるととも
に、昇温や降温に時間がかかるという製造プロセス上の
問題があった。
【0012】さらに、特開平5−267698号公報
「光起電力装置」や特開平5−235389号公報「光
起電力装置」に開示されているような方法では、光電変
換活性層としての非晶質シリコンゲルマニュウムを用い
ているため、バンドギャップが1.6eV以下と小さ
く、そのために光吸収が大きく、さらに、その構造上、
反射を利用した高効率化を図ることができず、結局、薄
膜太陽電池としての効率を上げることはできなかった。
【0013】本発明は、上記従来の問題を解決するもの
で、低温プロセスによって製造することができ、かつ、
良好な光散乱効果と裏面での反射効果とを合わせ持たせ
ることにより、光電変換効率の高い薄膜太陽電池および
その製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の薄膜太陽電池
は、透光性絶縁基板上に光散乱用の凹凸のある透明導電
膜を設け、該透明導電膜上に半導体光電変換活性層を設
けた薄膜太陽電池において、該半導体光電変換活性層の
裏面側のn層またはp層として、該半導体光電変換活性
層の少なくともi層における凹凸よりも大きい、深さが
300nm〜700nmの光散乱用の凹凸のある凹凸非
晶質または凹凸微結晶シリコン膜が設けられており、該
凹凸非晶質膜または凹凸微結晶シリコン膜上に透明導電
膜、さらに金属反射膜が設けられており、そのことによ
り上記目的が達成される。
【0015】この本発明の薄膜太陽電池の製造方法は、
透光性絶縁基板上に光散乱用の凹凸のある透明導電膜を
形成し、該透明導電膜上に半導体光電変換活性層を形成
する薄膜太陽電池の製造方法において、該半導体光電変
換活性層の裏面側のn層またはp層として、気相成長法
の製膜条件において、SiH4とH2の流量比が1:10
から1:50である第1製膜条件、SiH4とB26
流量比が1:0.0002から1:0.0003、また
は、1:0.01から1:0.02である第2製膜条
件、および、入力パワー密度を0.1W/cm2から
0.5W/cm2とした第3製膜条件の全ての製膜条件
を用いて凹凸非晶質または凹凸微結晶シリコン膜を作製
する工程と、該凹凸非晶質膜または凹凸微結晶シリコン
膜上に透明導電膜、さらに金属反射膜を形成する工程と
を有するものであり、そのことにより上記目的が達成さ
れる。
【0016】また、本発明の薄膜太陽電池は、光性絶縁
基板上に光散乱用の凹凸のある透明導電膜を設け、該透
明導電膜上に半導体光電変換活性層を設けた薄膜太陽電
池において、該半導体光電変換活性層の裏面側のn層ま
たはp層上に、該半導体光電変換活性層の少なくともi
層の凹凸よりも大きい、深さが300nm〜700nm
光散乱用の凹凸のある凹凸非晶質または凹凸微結晶
リコン膜が設けられており、該凹凸非晶質膜または凹凸
微結晶シリコン膜上に透明導電膜、さらに金属反射膜が
設けられており、そのことにより上記目的が達成され
る。
【0017】この本発明の薄膜太陽電池の製造方法は、
透光性絶縁基板上に光散乱用の凹凸のある透明導電膜を
形成し、該透明導電膜上に半導体光電変換活性層を形成
した薄膜太陽電池において、該半導体活性層の裏面側の
n層またはp層上に、気相成長法の製膜条件において、
SiH4とH2の流量比が1:10から1:50である第
1製膜条件、SiH4とB26の流量比が1:0.00
02から1:0.0003、または、1:0.01から
1:0.02である第2製膜条件、および、入力パワー
密度を0.1W/cm2から0.5W/cm2とした第3
製膜条件の全ての製膜条件を用いて凹凸非晶質または凹
凸微結晶シリコン膜を作製する工程と、該凹凸非晶質膜
または凹凸微結晶シリコン膜上に透明導電膜、さらに金
属反射膜を形成する工程とを有するものであり、そのこ
とにより上記目的が達成される。
【0018】さらに、好ましくは、本発明の薄膜太陽電
池における凹凸非晶質または凹凸微結晶膜は、1.7e
V以上のバンドギャップを持つ。
【0019】さらに、本発明の薄膜太陽電池の製造方法
は、透光性絶縁基板上に光散乱用の凹凸のある透明導電
膜を形成し、該透明導電膜上に半導体光電変換活性層と
して、p層、i層さらにn層、または、n層、i層さら
にp層を形成する薄膜太陽電池の製造方法において、該
半導体光電変換活性層の裏面側のn/i界面近傍または
p/i界面近傍は凹凸を積極的に付けない製膜条件で該
半導体光電変換活性層の裏面側のn層またはp層を形成
する工程と、該裏面側のn層またはp層に比べて次第に
大きい凹凸のできる条件に製膜条件を変えて、該裏面側
のn層またはp層上に、気相成長法の製膜条件におい
て、SiH4とH2の流量比が1:10から1:50であ
る第1製膜条件、SiH4とB26の流量比が1:0.
0002から1:0.0003、または、該SiH4
26の流量比が1:0.01から1:0.02である
第2製膜条件、および、入力パワー密度を0.1W/c
2から0.5W/cm2とした第3製膜条件の全ての
膜条件を用いて凹凸非晶質または凹凸微結晶シリコン膜
を作製する工程と、該凹凸非晶質膜または凹凸微結晶シ
リコン膜上に透明導電膜、さらに金属反射膜を形成する
工程とを有するものであり、そのことにより上記目的が
達成される。
【0020】さらに、本発明の薄膜太陽電池の製造方法
は、基板上に、気相成長法の製膜条件において、SiH
4とH2の流量比が1:10から1:50である第1製膜
条件、SiH4とB26の流量比が1:0.0002か
ら1:0.0003、または、1:0.01から1:
0.02である第2製膜条件、および、入力パワー密度
を0.1W/cm2から0.5W/cm2とした第3製膜
条件の全ての製膜条件を用いて凹凸非晶質または凹凸微
結晶シリコン膜を作製する工程と、該凹凸非晶質膜また
は凹凸微結晶シリコン膜上に金属反射膜を形成する工程
と、該金属反射膜上に半導体光変換活性層を形成する工
程とを有するものであり、そのことにより上記目的が達
成される。
【0021】
【作用】上記構成により、透光性絶縁基板の表面から入
射した光は凹凸のある透明導電膜で散乱し、半導体活性
層に入射する。そこで光の一部は吸収されて光−電流変
換に寄与し、吸収されなかった光は金属反射膜で反射
し、この反射光は逆の順序で進み、再び光は半導体光電
変換活性層で吸収されて光−電流変換に寄与する。この
とき、凹凸状の透明導電膜で散乱した入射光、および、
この半導体光電変換活性層の裏面側のn層またはp層と
して、少なくともi層における凹凸よりも大きい光散乱
用の凹凸のある凹凸非晶質膜または凹凸微結晶膜で大き
く散乱した反射光は共に、半導体光電変換活性層を入射
方向および反射方向だけではなく、様々な方向に散乱し
て横切るために半導体光電変換活性層中での光の光路長
が増加して、光の吸収量は増加し、太陽電池の光−電流
変換効率は向上することになる。
【0022】この半導体光電変換活性層の裏面側のn層
またはp層として、気相成長法の製膜条件において、S
iH4とH2の流量比が1:10から1:50である第1
製膜条件、SiH4とB26の流量比が1:0.000
2から1:0.0003、または、1:0.01から
1:0.02である第2製膜条件、および、入力パワー
密度を0.1W/cm2から0.5W/cm2とした第3
製膜条件のうち少なくともいずれかの製膜条件を用いて
凹凸非晶質または凹凸微結晶シリコン膜を作製すれば、
所望の光散乱に適した、深さが300nm〜700nm
の大きい適切な凹凸が得られて、光電変換効率の高い薄
膜太陽電池が得られる。
【0023】また、半導体光電変換活性層の裏面側のn
層またはp層上にさらに、少なくともi層の凹凸よりも
大きい光散乱用の凹凸のある凹凸非晶質膜または凹凸微
結晶膜を設けるようにするか、または、その裏面側のn
層またはp層に比べて次第に大きい凹凸のできる条件に
製膜条件を変えて、凹凸非晶質膜または凹凸微結晶膜を
設けるようにすれば、半導体光電変換活性層の裏面側の
n層またはp層は通常の凹凸を積極的に付けない製膜条
件で形成できるので、半導体光電変換活性層裏面側のn
/i界面またはp/i界面へのダメージを与えにくい低
パワーで製膜可能となり、半導体光電変換活性層の光電
変換特性は良くなる。
【0024】さらに、半導体光電変換活性層の裏面側の
n層またはp層として、または、半導体活性層の裏面側
のn層またはp層上に、1.7eV以上のバンドギャッ
プを持つ凹凸非晶質膜または凹凸微結晶膜を用いれば、
この凹凸非晶質膜または凹凸微結晶膜における光吸収が
少なく、反射光はより多く半導体光電変換活性層に戻っ
てくることになる。これにより、太陽電池の光−電流変
換効率の向上がより図られる。
【0025】さらに、基板上に大きい凹凸のある凹凸非
晶質膜または凹凸微結晶膜によりp層またはn層を設
け、このp層またはn層上にその凹凸を反映させるよう
に光散乱用の凹凸のある金属反射膜を設けるようにすれ
ば、透明導電膜や金属反射膜に直接的に凹凸を設ける必
要がなくなるので、透明導電膜や金属反射膜に直接的に
凹凸を設ける場合には高温度にする必要があり、そのた
めに昇温や降温に時間がかかるという製造プロセス上の
問題は解消されるとともに、耐熱性の基板材料に制約さ
れるといったことも無くなる。
【0026】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0027】(実施例1)図1は本発明の実施例1にお
ける薄膜太陽電池の概略構造を示す断面図である。
【0028】図1において、透光性絶縁基板11上に凹
凸を有する透明導電膜12を設け、この透明導電膜12
上に半導体光電変換活性層としてa−SiC:Hのp層
13、a−Si:Hのi層14、さらに、その下地層と
してのi層14の凹凸よりも大きく、光散乱効果の大き
い適切な光散乱用凹凸のある、1.7eV以上のバンド
ギャップを持つ凹凸微結晶n層15を設ける。さらに、
この凹凸微結晶n層15に接して透明導電膜16さらに
裏面金属電極17が順次設けられて薄膜太陽電池が構成
されている。
【0029】上記構成の薄膜太陽電池の製造方法につい
て説明する。
【0030】まず、透光性絶縁基板11として厚さ1m
m程度のガラス基板を用いる。この透光性絶縁基板11
上に凹凸状の透明導電膜12が約1μmの膜厚で形成さ
れる。この透明導電膜12としてはSnO2を用いる。
次に、プラズマCVD装置により気相成長法で、この凹
凸状の透明導電膜12上に半導体光電変換活性層として
p層13、i層14、n層15を順次それぞれ形成す
る。これらp層13、i層14およびn層15は透明導
電膜12の凹凸が順次反映されて形成されることになる
が、このn層15については、光散乱に最適な凹凸形状
を付けて形成する。このときのガス流量条件を下記の
(表1)に示している。
【0031】
【表1】
【0032】この(表1)において、各ガス流量の単位
は、S,c,c,m(Standard cubic
cm per minuits)である。ここで、p層
13およびi層14のガス流量条件は従来の一般的なガ
ス流量条件と同じであり、p層13のガス流量条件で
は、SiH4とH2のガス流量比が高々1:2.5であっ
たが、本発明による凹凸微結晶n層15のガス流量条件
では、SiH4とH2のガス流量比を1:25としてH2
のガス流量を極端に多くしている。このようにすること
により、凹凸の深さが約400nm、凹凸のピッチが平
均で約700nmの表面凹凸形状が得られた。一方、光
散乱効果を効率よく実現するためには、凹凸形状はその
幅が400nm〜1μmで、その深さが300nm〜7
00nm程度が好ましい。本実施例1の凹凸深さおよび
凹凸ピッチはこの範囲内にあって光散乱効果が良好であ
り、SiH4とH2のガス流量比が1:25を中心に、
1:10から1:50程度であればよいという実験結果
が得られている。
【0033】また、原料ガスにB26を極微量加える
と、表面凹凸形状が上記範囲内に入るさらに好ましい結
果が得られた。このB26の量はSiH4との流量比で
決まり、通常はp層13のガス流量条件に記したよう
に、B26とSiH4の流量比が、1:0.001程度
であるが、1:0.0002から1:0.0003、ま
たは1:0.01から0.02で光散乱に適切な凹凸が
得られることが分かった。このとき、通常のp層形成条
件に比べてB26の流量が極端に多くなったり、少なく
なったりしているが、B26とSiH4の流量比が1:
0.0002から1:0.0003がn層で、B26
SiH4の流量比が1:0.01から0.02がp層の
場合の製造条件である。
【0034】さらに、n層15の凹凸形状を上記所定の
範囲内に入れ、十分に光を散乱させるためには、n層1
5の膜厚を約300nmにすると良い。この膜厚は10
0nm〜500nm程度でよい結果が実験から得られた
が、この層を通常のn層の厚みの30nmよりも大幅に
厚く作ることが一つのポイントである。即ち、通常のプ
ラズマCVDにおける入力パワー密度は0.02W/c
2程度であるが、それは光電変換活性層を痛めないた
めである。ところが、このn層15のように膜厚を10
0nm〜500nmにすれば、最初は0.02W/cm
2程度の入力パワー密度で積層を開始し、すぐに入力パ
ワー密度を0.1W/cm2〜0.5W/cm2になるよ
うに多くして製膜することで、その下地層であるi層1
4を痛めずに、つまり光電変換効率を落とさないで光電
変換活性層を作ることができる。これによって、n層1
5の表面凹凸形状を所定の大きさの光散乱用の凹凸形状
にすることができる。
【0035】以上のSiH4とH2のガス流量比、SiH
4とB26の流量比、および、プラズマCVDの入力パ
ワー密度はそれぞれ独立に用いても適切な凹凸を得る効
果があったが、2つ以上の条件を組み合わせると、さら
に凹凸の大きさの制御が容易になるというメリットがあ
った。この凹凸の大きさの制御は上記3つの条件を組み
合わせると最も良くなる。
【0036】続いて、光電変換活性層裏面側の所定の凹
凸を持つn層15上に透明導電膜16を20nm程度形
成し、最後に、裏面金属電極17として、例えば銀(A
g)などの膜を形成した。この透明導電膜16は、裏面
金属電極17の反射率を上げるためのものであり、これ
により金属反射膜としての裏面金属電極17の反射効果
を十分に高めることができる。
【0037】このように、本実施例1における薄膜太陽
電池の製造方法は、透光性絶縁基板11上に凹凸状の透
明導電膜12が形成され、この透明導電膜12上に光電
変換活性層として非晶質膜が形成される。この非晶質膜
の裏面側のn層15に、1.7eV以上のバンドギャッ
プを持ち、少なくともi層14の凹凸よりも大きい光散
乱用の凹凸のある微結晶膜を用い、この微結晶膜上に透
明導電膜16さらに金属裏面電極17を形成している。
【0038】上記構成により、以下、その作用を説明す
る。
【0039】まず、透光性絶縁基板11としてのガラス
基板表面から入射した光は凹凸のある透明導電膜12で
散乱してp層13さらにi層14に入射する。このi層
14で光の一部は吸収されて光−電流変換され、また、
i層14で吸収されなかった光は、光散乱用の凹凸を付
けたn層15に入射して大きく散乱し、裏面側の透明導
電膜16を通過して裏面金属電極17で反射する。次
に、この反射光は逆の順序で進み、光の散乱効果の大き
いn層15を介して再び光はi層14で吸収されて光−
電流変換される。このように、光散乱用の凹凸状の透明
導電膜12およびn層15などにより光が散乱して、i
層14中への入射方向が斜め方向となってi層14中で
の光路長が増加するために光の吸収量は増加し、さら
に、裏面金属電極17からの反射光も効率よくi層14
で吸収されて光の吸収量はより増加することになる。こ
のため、薄膜太陽電池の効率向上が図られる。
【0040】ここで、本発明では、光散乱用の凹凸のあ
る透明導電膜12上にアモルファス層としてp層13さ
らにi層14、さらにn層15を透明導電膜12の凹凸
が順次反映されるように順次形成するが、このn層15
は、鈍った凹凸を大きくするように、即ち、その下地層
であるi層14の凹凸よりも大きい適切な光散乱用凹凸
のある凹凸微結晶n層15を形成する。このときの凹凸
微結晶n層15は、従来の凹凸のあるシリコンゲルマニ
ュウムのようにバンドギャップが狭いと、ここでの光吸
収が大きくなって十分な反射光による効果が得られな
い。また、この凹凸微結晶n層15は、従来の非晶質膜
裏面側において、バンドギャップが1.4〜1.6eV
と狭いと、ここでの光吸収が大きくなって十分な反射光
による効果が得られない。このため、バンドギャップは
アモルファスシリコンと同程度以上のバンドギャップ、
即ち1.7eV以上のバンドギャップ以上であることが
必要であり、望ましくは1.9eV以上のバンドギャッ
プがよい。この凹凸微結晶n層15を形成するために
は、100〜500nm程度の膜厚が必要となるため、
バンドギャップは広いほうがここでの光の吸収が少なく
なり、その分、反射光が増加して薄膜太陽電池の効率向
上が図られる。
【0041】このとき、上述したように、適切な光散乱
用の凹凸のある凹凸微結晶n層15を得るためには、上
記した所定範囲内のSiH4とH2のガス流量比、SiH
4とB26のガス流量比、および、プラズマCVDの入
力パワー密度のうち少なくとも何れかを用いることが必
要である。このような凹凸膜で、バンドギャップの広い
ものを得るためには通常のアモルファスシリコンの作製
条件の数倍のパワーと高水素希釈条件で形成することが
必要であり、条件により非晶質または微結晶膜が得られ
ることになる。
【0042】したがって、以上のようにしてプラズマC
VD法による低温プロセスによって製造した凹凸微結晶
n層15を半導体光電変換活性層の裏面側に形成するこ
とにより、大きく適切な光散乱用凹凸で反射光の散乱効
果をより大きくし、また、バンドギャップが広いn層1
5で光吸収を少なくして薄膜太陽電池の光−電流変換効
率の向上を図ることができる。この単層の薄膜太陽電池
の具体的特性は、光スペクトルAM(エアマス)1.5
(100mW/cm2)において、出力電流Isc:2
4.1mA/cm2、開始電圧Voc:0.67V、曲
線因子F.F.:0.62、最大出力Pmax:10.
0mW/cm2であった。一方、この光散乱用凹凸がな
い場合は、出力電流Isc:23.3mA/cm2、開
始電圧Voc:0.67V、曲線因子F.F.:0.6
3、最大出力Pmax:9.8mW/cm2であった。
【0043】なお、本実施例1では凹凸微結晶シリコン
n層15を用いたが、凹凸非晶質シリコンn層、凹凸非
晶質シリコンp層または微結晶シリコンp層を用いて凹
凸を形成してもよい。
【0044】また、本実施例1では、基板としてガラス
を用いたが、透光性絶縁基板であれば高分子フィルムで
あってもよく、また、本実施例1では透明導電膜12と
してSnO2を用いたが、SnO2に代えてZnOなどを
用いてもよく、さらに、本実施例1では裏面金属電極1
7として銀を用いたが、アルミニウムなどを用いても良
い。
【0045】さらに、本実施例1では、光電変換活性層
が単層であるが、タンデム構造のように積層されたもの
であっても、その効果を十分発揮できることは当然であ
る。さらに、本実施例1では、基板側からp層、i層、
n層の順で光電変換活性層を形成したが、基板側から光
電変換活性層をn層、i層、p層と順次形成した場合に
は、金属反射膜側のp層を適切な光散乱用凹凸のあるp
層で形成すれば良い。この場合にも凹凸n層15と同様
な製造条件であるが、B26のガス流量については、上
記したようにp層にするか、またはn層にするかで、ど
ちらかの製造条件を選択する必要がある。
【0046】(実施例2)図2は本発明の実施例2にお
ける薄膜太陽電池の概略構造を示す断面図である。
【0047】図2において、透光性絶縁基板21上に光
散乱用の凹凸を有する透明導電膜22を設け、この透明
導電膜22上に半導体光電変換活性層としてp層23、
i層24さらにn層28を順次それぞれ設ける。この半
導体光電変換活性層の裏面側のn層28上に、その下地
層であるn層28の凹凸よりも大きい最適な光散乱用の
凹凸を有し、かつ1.7eV以上のバンドギャップを持
つn層25がさらに別に設けられている。このn層25
上に接して透明導電膜26さらに裏面金属電極27が順
次設けられて薄膜太陽電池が構成される。
【0048】上記構成の薄膜太陽電池の製造方法につい
て説明する。
【0049】まず、透光性絶縁基板21としてガラス基
板を用いる。この透光性絶縁基板21上に光散乱用の凹
凸のある透明導電膜22を約1μmの膜厚で形成する。
この透明導電膜22としては通常SnO2を用いた。次
に、プラズマCVD装置によりこの凹凸状の透明導電膜
22上に半導体光電変換活性層としてp層23、i層2
4さらにn層28をそれぞれ気相成長法で順次形成す
る。これらp層23、i層24およびn層28は、下記
の(表2)のように通常のガス流量条件(凹凸を積極的
に付けない製膜条件)で形成され、透明導電膜22の凹
凸が順次反映されて形成されることになる。このガス流
量条件では、n層28は光散乱用の適切な凹凸状に形成
されないが、その代わりに、このn層28上に、1.7
eV以上のバンドギャップを持つ光散乱効果の大きい適
切な凹凸のある凹凸n層25を、下記の(表2)のよう
なガス流量条件にて形成する。また、十分光を散乱させ
る凹凸を形成するために凹凸状のn層25は、膜厚を1
00nm以上望ましくは300nm程度にする。
【0050】
【表2】
【0051】この凹凸n層25上に透明導電膜26を2
0nm程度形成し、最後に、裏面から裏面金属電極27
を、例えば銀(Ag)を用いて形成する。
【0052】上記構成により、以下、その作用を説明す
る。
【0053】上記非晶質膜のn層28上に、さらに1.
7eV以上のバンドギャップを持つ光散乱効果の大きい
適切な凹凸のある凹凸n層25を形成し、この凹凸n層
25上に透明導電膜26さらに金属裏面電極27を形成
するため、上記実施例1のように、この凹凸n層25を
非晶質膜の裏面側(i層上)に直接形成するよりも、n
/i界面に熱的なダメージを与えにくい低パワーで作製
できる通常の凹凸のない成膜条件によるn層28を用い
た方が望ましいからである。これにより、上記実施例1
の薄膜太陽電池の光電変換特性をさらに改善することが
できる。
【0054】本実施例2では、裏面金属電極27の金属
膜に近いn層を2層にして、一方のn層を通常のガス流
量条件で製膜し、他方のn層を、最適な光散乱用凹凸を
付けるガス流量条件で製膜する以外は、実施例1と同様
の製膜条件が用いられる。上記実施例1では、金属膜側
の凹凸n層とi層側のn層との界面(境界)が不鮮明で
あったが、本実施例2では、金属膜側の凹凸n層とi層
側のn層との界面(境界)がはっきりしており、n層か
ら凹凸n層への製造条件の切り替えが一定時間後に行わ
れるために、制御が容易であるという効果がある。
【0055】したがって、以上のようにしてプラズマC
VD法による低温プロセスによって製造したn層28さ
らに、凹凸を大きくしたn層25を半導体光電変換活性
層の裏面側に形成することにより、n/i界面へのダメ
ージが少なく光の散乱効果をより大きくして薄膜太陽電
池の光−電流変換効率の向上を図ることができる。この
単層の薄膜太陽電池の具体的特性は、光スペクトルAM
1.5(100mW/cm2)において、出力電流Is
c:24.3mA/cm2、開始電圧Voc:0.67
V、曲線因子F.F.:0.67、最大出力Pmax:
10.9mW/cm2であった。一方、この光散乱用凹
凸がない場合は、出力電流Isc:23.3mA/cm
2、開始電圧Voc:0.67V、曲線因子F.F.:
0.63、最大出力Pmax:9.8mW/cm2であ
った。
【0056】なお、本実施例2では光電変換層が単層で
あるが、タンデム構造のように積層されたものであって
もよい。また、本実施例2では、基板側から光電変換活
性層としてp層、i層、n層と非晶質膜を順次形成した
が、基板側から光電変換活性層としてn層、i層、p層
と非晶質膜を順次形成した場合には、1.7eV以上の
バンドギャップを持つ光散乱用の凹凸のあるp層を、こ
の非晶質膜の裏面側のp層上にさらに形成することにな
る。
【0057】さらに、基板側からp層、i層、n層と順
次形成されたn層上に凹凸状のp層を形成してもよく、
また、基板側からn層、i層、p層と順次形成した場合
には凹凸状のn層をp層上に形成してもよい。
【0058】さらに、本実施例2のように、裏面側のn
/i界面にダメージを与えにくくするため、n/i界面
近傍は通常の凹凸のない製膜条件でn層を形成し、次第
に凹凸のできる条件に圧力および流量などの製膜条件を
変えて形成しても同様の特性を持った太陽電池が形成で
きるが、基板側からn層、i層、p層と順次形成した場
合に、p/i界面近傍は通常の凹凸のない条件でp層を
形成し、次第に凹凸のできる条件に製膜条件を変えて形
成しても同様の特性を持った薄膜太陽電池が形成でき
る。
【0059】さらに、本実施例2では、基板としてガラ
スを用いたが、透光性絶縁基板であれば高分子フィルム
であってもよく、また、本実施例2では透明導電膜22
としてSnO2を用いたが、SnO2に代えてZnOなど
を用いてもよく、さらに、本実施例2では裏面金属電極
27として銀を用いたが、アルミニウムなどを用いても
良い。
【0060】(実施例3)本実施例3では、実施例1に
よる凹凸非晶質膜または凹凸微結晶膜上に金属電極を形
成して金属電極に凹凸を付け、この金属電極の凹凸を反
映させて、その上に設ける半導体光電変換活性層のn
層、i層、p層を凹凸化する場合である。
【0061】図3は本発明の実施例3における薄膜太陽
電池の概略構造を示す断面図である。
【0062】図3において、金属基板31上に凹凸状の
n層またはp層35を設け、このn層またはp層35上
に裏面金属電極37さらに透明導電膜36を順次設け、
裏面金属電極37の裏面金属膜の凹凸を、凹凸状n層ま
たはp層35により光散乱用にはっきりさせる。この透
明導電膜36上に半導体光電変換活性層としてn層3
8、i層34、p層33を順次それぞれ設ける。このp
層33に接して透明導電膜32が設けられて薄膜太陽電
池が構成される。
【0063】上記構成の薄膜太陽電池の製造方法につい
て説明する。
【0064】まず、金属基板31としてステンレス基板
を用いる。この金属基板31上にプラズマCVD装置に
より、上記実施例1の凹凸非晶質膜または凹凸微結晶膜
の製造方法による凹凸状のn層またはp層35を気相成
長させる。この場合にも、n層とp層でB26のガス流
量を変えることは上記実施例1で示した場合と同様であ
る。
【0065】さらに、この凹凸状のn層またはp層35
上に高反射率の裏面金属電極37として、例えば銀(A
g)を用いて膜を形成し、裏面金属電極37の裏面金属
膜の凹凸を光散乱用にはっきりさせる。その上に透明導
電膜36を30nm形成する。次に、プラズマCVD装
置によって透明導電膜36上に半導体光電変換活性層と
してn層38、i層34、p層33を順次形成する。さ
らにその上に透明導電膜32を形成し、最後に金属集電
極(図示せず)を形成する。
【0066】上記構成により、以下、その作用を説明す
る。
【0067】透明導電膜32側から入射した光は、p層
33、i層34、n層38を順次通過し、透明導電膜3
6を経て高反射率の裏面金属電極37で反射する。さら
に、この反射光は逆方向に進んでn層38、i層34、
p層33を順次通過する。このとき、これらp層33、
i層34、n層38および裏面金属電極37の適切な光
散乱用の大きい凹凸によって、入射光および反射光が大
きく散乱することで、i層34を光の入射方向および反
射方向だけではなく様々な方向に通過し、これにより、
i層34における通過光路長が長くなって光の散乱効果
が向上し、薄膜太陽電池の光−電流変換効率を向上させ
ることができる。
【0068】したがって、上記実施例1で述べた、光散
乱用の最適な凹凸を付けるためのプラズマCVD法の製
膜条件を用いて凹凸状のp層またはn層35を設け、そ
の上に裏面金属電極37を設けることで、裏面金属電極
37に直接的に凹凸を設ける高温製造プロセスの必要が
なくなるので、100℃程度の低温製造プロセスによっ
て、昇温や降温に時間がかかるという製造プロセス上の
問題を解消することができるとともに、耐熱性基板材料
に制約されるといったことも無くなる。
【0069】以上のようにして作製した単層の薄膜太陽
電池の特性は、光スペクトルAM1.5(100mW/
cm 2 )において、出力電流Isc:23.7mA/c
2、開始電圧Voc:0.66V、曲線因子F.
F.:0.65、最大出力Pmax:10.2mW/c
2であった。一方、この光散乱用凹凸がない場合は、
出力電流Isc:16.6mA/cm2、開始電圧Vo
c:0.68V、曲線因子F.F.:0.66、最大出
力Pmax:7.45mW/cm2であった。
【0070】なお、p層またはn層35の凹凸の度合い
は、本発明による製膜条件で大きくすることができるの
で、本実施例3では、裏面金属電極37の凹凸は適切な
光散乱用凹凸になるようにしたが、これに加えて、裏面
金属電極37を介して設けられる半導体光電変換活性層
のn層38、i層34、p層33のうちn層38および
p層33にも、上記実施例1のように適切な光散乱用の
凹凸を独立して得るようにすれば、より光散乱効果が向
上する。
【0071】また、本実施例3に加えて、p層33およ
びn層38のうち少なくともいずれかを、1.7eV以
上のバンドギャップを持つ適切な光散乱用の凹凸のある
非晶質膜または微結晶膜としてもよい。さらに、本実施
例3に加えて、上記実施例2のように、1.7eV以上
のバンドギャップを持つ光散乱用の凹凸のある非晶質膜
または微結晶膜を別に設けてもよい。さらに、本実施例
3では、裏面金属電極37として説明したが、裏面金属
電極37は単に金属反射膜であってもよい。
【0072】なお、上記各実施例1〜3において、透光
性絶縁基板としては、ガラスまたは耐熱性プラスチック
など、非透光性基板としてはステンレスなどの金属基
板、さらに、透明導電性膜としては、SnO2、In
3、ZnO、ITOなどを用いることができる。ま
た、上記各実施例1〜3において、非晶質半導体層は、
非晶質シリコン(a−Si:H)、非晶質シリコンゲル
マニウム(a−SiGe:H)、非晶質シリコンカーバ
イト(a−SiC:H)などのa−Si系半導体の薄膜
で形成されるが、これ以外の半導体光電変換材料を用い
ることもできる。
【0073】また、上記各実施例1〜3の凹凸p層また
はn層の製膜条件において、ガス圧力15Torrで、
基板温度は200℃である。このように、本発明の製造
方法では、基板温度を低く抑えることができるという大
きな効果がある。実際に、本発明の製造方法で形成され
た膜を結晶解析すると、大部分が非晶質であり、その条
件によっては微結晶の場合もあったが、基本的な光電変
換特性に変化はなく良好な光電変換特性が得られた。
【0074】さらに、上記各実施例1〜3では、シリコ
ンについて説明したが、一部炭素に置き換えた、非晶質
シリコンカーボンの膜でもシリコンの場合と同様な結果
が得られた。この場合、バンドギャップが1.9〜2.
0eVであり、シリコンのバンドギャップ1.75eV
に比べて大きくなっており、さらに好ましい結果とする
ことができた。
【0075】本発明の主旨は、適切な大きさの凹凸を有
する膜を製造することにあり、適切な凹凸を必要としな
い層か、容易に凹凸が形成される層の場合(例えば適切
な凹凸が付いた金属膜上の光電変換活性層のような場
合)は、非晶質シリコンゲルマニウムなどを用いても良
い。ただし、それが薄いことが必要であることは本発明
の主旨から明かである。
【0076】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、半導体活
性層の裏面側のp層またはn層として、適切な大きさの
凹凸を形成することができ、この凹凸の光散乱効果と、
反射膜の反射効果の両方を利用することによって、太陽
電池の光−電流変換効率を向上して短絡電流を増加させ
ることができる。
【0077】また、半導体活性層の裏面側のn層または
p層上に、適切な大きさの凹凸のあるn層またはp層を
形成することにより、界面の熱によるダメージがなく同
様に裏面での光の散乱効果を向上できて太陽電池の短絡
電流を増加させることができる。
【0078】さらに、1.7eV以上のバンドギャップ
を持つ凹凸非晶質膜または凹凸微結晶膜を用いることに
より、光吸収が少なく、反射光をより多く半導体活性層
に戻すことができて、太陽電池の光−電流変換効率の向
上を図ることができる。
【0079】さらに、金属電極を適切な凹凸状に形成す
る場合にも利用することができ、特にこの適切な凹凸形
状が容易に行えるため、基板材料の選択範囲を広げるこ
とができ、この薄膜太陽電池の応用面での拡大を図るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における薄膜太陽電池の概略
構造を示す断面図である。
【図2】本発明の実施例2における薄膜太陽電池の概略
構造を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例3における薄膜太陽電池の概略
構造を示す断面図である。
【図4】従来の薄膜太陽電池の概略構造を示す断面図で
ある。
【符号の説明】
11、21 透光性絶縁基板 12、22、32 透明導電膜 13、23、33 a−SiC:Hのp層 14、24、34 a−Si:Hのi層 15 凹凸微結晶n層 16、26、36 透明導電膜 17、27、37 裏面金属電極 25 凹凸a−Si:Hのn層 28、38 a−Si:Hのn層 31 金属基板 35 凹凸a−Si:Hのn層またはp層

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透光性絶縁基板上に光散乱用の凹凸のあ
    る透明導電膜を設け、該透明導電膜上に半導体光電変換
    活性層を設けた薄膜太陽電池において、 該半導体光電変換活性層の裏面側のn層またはp層とし
    て、該半導体光電変換活性層の少なくともi層における
    凹凸よりも大きい、深さが300nm〜700nmの
    散乱用の凹凸のある凹凸非晶質または凹凸微結晶シリコ
    ン膜が設けられており、該凹凸非晶質膜または凹凸微結
    シリコン膜上に透明導電膜、さらに金属反射膜が設け
    られている、薄膜太陽電池。
  2. 【請求項2】 透光性絶縁基板上に光散乱用の凹凸のあ
    る透明導電膜を形成し、該透明導電膜上に半導体光電変
    換活性層を形成する薄膜太陽電池の製造方法において、 該半導体光電変換活性層の裏面側のn層またはp層とし
    て、気相成長法の製膜条件において、SiH4とH2の流
    量比が1:10から1:50である第1製膜条件、Si
    4とB26の流量比が1:0.0002から1:0.
    0003、または、1:0.01から1:0.02であ
    る第2製膜条件、および、入力パワー密度を0.1W/
    cm2から0.5W/cm2とした第3製膜条件の全ての
    製膜条件を用いて凹凸非晶質または凹凸微結晶シリコン
    膜を作製する工程と、 該凹凸非晶質膜または凹凸微結晶シリコン膜上に透明導
    電膜、さらに金属反射膜を形成する工程とを有する薄膜
    太陽電池の製造方法。
  3. 【請求項3】 透光性絶縁基板上に光散乱用の凹凸のあ
    る透明導電膜を設け、該透明導電膜上に半導体光電変換
    活性層を設けた薄膜太陽電池において、 該半導体光電変換活性層の裏面側のn層またはp層上
    に、該半導体光電変換活性層の少なくともi層の凹凸よ
    りも大きい、深さが300nm〜700nmの光散乱用
    の凹凸のある凹凸非晶質または凹凸微結晶シリコン膜が
    設けられており、該凹凸非晶質膜または凹凸微結晶シリ
    コン膜上に透明導電膜、さらに金属反射膜が設けられて
    いる、薄膜太陽電池。
  4. 【請求項4】 前記凹凸非晶質または凹凸微結晶膜は、
    1.7eV以上のバンドギャップを持つ請求項1または
    3記載の薄膜太陽電池。
  5. 【請求項5】 透光性絶縁基板上に光散乱用の凹凸のあ
    る透明導電膜を形成し、該透明導電膜上に半導体光電変
    換活性層を形成した薄膜太陽電池において、 該半導体活性層の裏面側のn層またはp層上に、気相成
    長法の製膜条件において、SiH4とH2の流量比が1:
    10から1:50である第1製膜条件、SiH4とB2
    6の流量比が1:0.0002から1:0.0003、
    または、1:0.01から1:0.02である第2製膜
    条件、および、入力パワー密度を0.1W/cm2から
    0.5W/cm2とした第3製膜条件の全ての製膜条件
    を用いて凹凸非晶質または凹凸微結晶シリコン膜を作製
    する工程と、 該凹凸非晶質膜または凹凸微結晶シリコン膜上に透明導
    電膜、さらに金属反射膜を形成する工程とを有する薄膜
    太陽電池の製造方法。
  6. 【請求項6】 透光性絶縁基板上に光散乱用の凹凸のあ
    る透明導電膜を形成し、該透明導電膜上に半導体光電変
    換活性層として、p層、i層さらにn層、または、n
    層、i層さらにp層を形成する薄膜太陽電池の製造方法
    において、 該半導体光電変換活性層の裏面側のn/i界面近傍また
    はp/i界面近傍は凹凸を積極的に付けない製膜条件で
    該半導体光電変換活性層の裏面側のn層またはp層を形
    成する工程と、 該裏面側のn層またはp層に比べて次第に大きい凹凸の
    できる条件に製膜条件を変えて、該裏面側のn層または
    p層上に、気相成長法の製膜条件において、SiH4
    2の流量比が1:10から1:50である第1製膜条
    件、SiH4とB26の流量比が1:0.0002から
    1:0.0003、または、該SiH4とB26の流量
    比が1:0.01から1:0.02である第2製膜条
    件、および、入力パワー密度を0.1W/cm2から
    0.5W/cm2とした第3製膜条件の全ての製膜条件
    を用いて凹凸非晶質または凹凸微結晶シリコン膜を作製
    する工程と、 該凹凸非晶質膜または凹凸微結晶シリコン膜上に透明導
    電膜、さらに金属反射膜を形成する工程とを有する薄膜
    太陽電池の製造方法。
  7. 【請求項7】 基板上に、気相成長法の製膜条件におい
    て、SiH4とH2の流量比が1:10から1:50であ
    る第1製膜条件、SiH4とB26の流量比が1:0.
    0002から1:0.0003、または、1:0.01
    から1:0.02である第2製膜条件、および、入力パ
    ワー密度を0.1W/cm2から0.5W/cm2とした
    第3製膜条件の全ての製膜条件を用いて凹凸非晶質また
    は凹凸微結晶シリコン膜を作製する工程と、 該凹凸非晶質膜または凹凸微結晶シリコン膜上に金属反
    射膜を形成する工程と、 該金属反射膜上に半導体光変換活性層を形成する工程と
    を有する薄膜太陽電池の製造方法。
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