JP3240819B2 - 不織布及びその製造法 - Google Patents

不織布及びその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、不織布およびその製
造法に関し、芯鞘構造を有する太い繊度のポリエステル
系複合フィラメントからなり、高モジュラス、高強力で
あって特にアスファルトルーフィングやタフテッドカー
ペットの基布等に好適で、スパンボンド法により能率的
に生産可能な不織布を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】不織布の製造法としてスパンボンド法が
知られている。図1は、その一例を示し、1は紡糸ノズ
ル、2は紡糸筒であり、紡糸ノズル1から吐出された芯
鞘構造を有する多数本のポリエステル系複合繊維(芯成
分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分が低融点のポ
リエステル系ポリマー)からなるマルチフィラメント糸
条3が紡糸筒2を通って冷却され、紡糸ガイド4を経て
紡糸引取りロール5に引取られ、次いで3本の予熱ロー
ル6、7、8で予熱された後、下方の4本の延伸ロール
9、10、11、12との間で延伸され、しかるのち電
気開繊装置13で開繊され、エアサッカー14から下方
のネットコンベヤ15上に排出されてウエブ16に形成
される。そして、このウエブ16が上記のネットコンベ
ヤ15で矢印P方向に搬送され、目的に応じて必要枚数
が、その繊維方向が直角に交差するように重ねられ、し
かるのち熱風で処理されて上記複合繊維の鞘成分が溶融
され、複合繊維の交差部が熱融着されて不織布が形成さ
れる。
【0003】そして、従来は、ポリエチレンテレフタレ
ート繊維を製造する場合、延伸域における糸切れを少な
くし、安定した紡糸を可能にするためには、剪断速度
(ただし、剪断速度は、ノズル吐出量をQ(cm3/秒)、
ノズル孔径をd(cm)としたとき、32Q/πd3 で定
義される)が6000秒-1以上となるように紡糸ノズル
の孔径および紡糸引取り速度を設定することが常識とな
っていたので、上記のように芯鞘構造のポリエステル系
複合繊維を直接紡糸延伸する場合にも、ポリエチレンテ
レフタレート単一成分を紡糸する場合と同様に剪断速度
を6000秒-1以上に設定していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、複屈折
率0.15以上のポリエチレンテレフタレートを芯成分
とする複合繊維を上記のように直接紡糸延伸工程で生産
すると、糸斑が大きくなり、かつ延伸倍率を糸物性に必
要な4.0倍以上に設定すると、糸切れが多発するとい
う問題があった。
【0005】この発明は、複屈折率0.15以上のポリ
エチレンテレフタレートを芯成分とするポリエステル系
複合繊維からなり、該繊維の太さ斑が少なく、また延伸
時の糸切れを少なくして能率的に生産することが可能
で、かつ繊維間に大きな空隙を有していてアスファルト
やウレタン等の高粘度溶液と複合したり、また機械的性
質に優れていてタフテッドカーペット用基布に使用した
りするのに好適な不織布およびその製造法を提供するも
のである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明の不織布は、芯
成分と低融点の鞘成分とからなる芯鞘構造の複合繊維を
ウエブ状に堆積し、上記鞘成分を溶融して得られたスパ
ンボンド不織布であり、上記の複合繊維が複屈折率0.
15以上のポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、
融点200〜230℃のポリエステルを鞘成分とし、芯
鞘比率が5/5〜9/1、繊度8〜18デニールである
ことを特徴とする。
【0007】また、この発明に係る不織布の製造法は、
ポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、融点200
〜230℃のポリエステルを鞘成分とし、芯鞘比率が5
/5〜9/1の芯鞘構造を有する繊度8〜18デニール
の複合繊維を直接紡糸延伸法で製造し、得られた複合繊
維をウエブ状に堆積し、このウエブを熱風で処理してウ
エブ中の複合繊維の交差部を融着する不織布の製造法に
おいて、上記複合繊維の紡糸をノズル剪断速度1000
〜4000秒-1の条件で行い、延伸を延伸倍率4.0〜
6.0倍で行うことを特徴とする。
【0008】上記複合繊維の芯成分は、複屈折率0.1
5以上のポリエチレンテレフタレートで構成される。こ
の複屈折率が0.15未満の場合は、複合繊維の交差部
を熱融着する際の熱処理およびアスファルトルーフィン
グ製造の際のアスファルト含浸に耐えられる高融点が得
られず、またアスファルトルーフィングやタフテッドカ
ーペット用基布として必要な高モジュラスが得られな
い。
【0009】上記複合繊維の鞘成分は、融点200〜2
30℃のポリエステルで構成され、かかるポリエステル
としては、ポリエチレンテレフタレート・ポリテトラメ
チレンイソフタレートのブロック共重合体、リン含有共
重合ポリエステル、またはそれらの少なくとも2種以上
を含む共重合ポリエステル等が例示され、特にポリエチ
レンテレフタレート・ポリテトラメチレンイソフタレー
トのブロック共重合体が好ましい。上記の融点が200
℃未満の場合は、アスファルト含浸時に不織布が複合繊
維の融着部で分離する危険があり、また230℃を超え
た場合は、複合繊維の交差部を熱融着する際に芯成分が
熱劣化し、不織布としての強力が低下する。
【0010】上記の複合繊維における芯成分と鞘成分の
構成比率は、5/5〜9/1、好ましくは6/4〜8/
2であり、上記の比率が5/5未満の場合は芯成分の太
さが不足し、反対に9/1を超えた場合は接着強力が不
足し、いずれの場合も不織布として必要な強力が得られ
ない。
【0011】上記複合繊維の繊度は、8〜18デニー
ル、好ましくは10〜16デニールであり、8デニール
未満の場合は所望の単糸強力および不織布強力が得られ
ず、かつ不織布内に形成される空隙が狭くなり、アスフ
ァルトやウレタンの含浸が困難になる。反対に18デニ
ールを超えた場合は、単糸間の接点距離が疎になるため
不織布の強力が低下する。
【0012】この発明の不織布は、上記の複合繊維から
なるウエブを目的に応じた目付量となるように重ね、鞘
成分を溶融して製造されるが、上記の目付量は40〜3
00g/m2 、特に80〜200g/m2 が好ましい。
この目付量が40g/m2 未満の場合は、強力が不足
し、反対に300g/m2 を超えた場合は重くなり、作
業性が低下して好ましくない。なお、複合繊維の配列
は、方向性の少ないランダム配列および直交配列が好ま
しい。
【0013】上記の不織布を製造するには、直接紡糸延
伸法または紡糸同時延伸法を利用したスパンボンド法が
採用されるが、上記の不織布を得るためにはノズル剪断
速度を1000〜4000秒-1に設定する必要があり、
特に1000〜2500秒-1が好ましい。すなわち、従
来の常識とされていた6000秒-1に比して低く設定さ
れる。上記の剪断速度が1000秒-1未満の場合は、紡
糸工程や延伸工程において糸切れが発生したり、得られ
た複合繊維の繊度斑が大きくなったりする。反対に40
00秒-1を超えた場合は、ノズル直下において孔曲がり
吐出が生じたり、ノズル径と糸径との比率で定義される
ドラフト率が不十分になって複屈折率が0.15未満に
なったりしてこの発明の目的が達成されない。
【0014】また、この発明による不織布の製造方法で
は、紡糸工程に続く延伸工程における延伸倍率が4.0
〜6.0倍、好ましくは4.5〜5.5倍に設定され
る。この延伸倍率が4.0倍未満の場合は、所望の繊維
強力が得られず、反対に6.0倍を超えた場合は、延伸
工程最後の繊維速度が1500m/分を超える結果にな
り、複合繊維を堆積してウエブを形成する際、直交配列
が困難になる。
【0015】
【作用】この発明の不織布は、複屈折率0.15以上の
ポリエチレンテレフタレートを芯成分とし、融点200
〜230℃のポリエステルを鞘成分とする芯鞘構造の複
合繊維で構成されるので、上記の複合繊維からなるウエ
ブを200〜230℃に加熱して複合繊維の交差部を熱
融着することができ、この熱融着の際に芯成分を熱劣化
させることがなく、高温アスファルト(温度190〜2
10℃)やウレタンを含浸させる際にも、芯成分が損傷
されず、強力が保存される。また、上記複合繊維の芯鞘
比率が5/5〜9/1、繊度が8〜18デニールである
ため、繊維強力および複合繊維相互間の接着強力のバラ
ンスが良好であり、不織布としての強力とモジュラスが
高く、かつ複合繊維相互間に適度な空隙を有し、アスフ
ァルトの含浸が容易である。
【0016】この発明に係る不織布の製造法によれば、
複屈折率が0.15以上、好ましくは0.15〜0.1
9、特に好ましくは0.15〜0.18のポリエチレン
テレフタレートを芯成分とし、融点200〜230℃の
ポリエステルを鞘成分とし、芯鞘比率が5/5〜9/
1、繊度8〜18デニールの複合繊維からなる不織布が
得られる。そして、上記複合繊維がノズル剪断速度10
00〜4000秒-1の条件で紡糸されるので、複合繊維
であるにもかかわらず、延伸時の糸切れが少なく、かつ
繊度斑が少なくなり、生産性が向上する。また、上記の
とおりノズル剪断速度を1000〜4000秒-1に設定
し、かつ延伸倍率を4.0〜6.0倍に設定するので、
充分な繊維強力が得られ、しかも延伸後の複合繊維の最
終引取り速度を1500m/分以下に抑えることがで
き、そのためウエブとして堆積する際、直交配列が容易
となる。
【0017】
【実施例】芯成分としてポリエチレンテレフタレート
(固有粘度0.64)を使用し、鞘成分としてポリエチ
レンテレフタレート、イソフタル酸およびブタンジオー
ルのブロック共重合体を使用し、芯鞘比率8/2の複合
繊維からなる不織布を製造した。すなわち、上記のポリ
マーを277℃で溶融し、図1に示す多孔ノズル1から
吐出し、紡糸筒2で冷却固化し、得られた複合繊維糸条
3を紡糸引取りロール5により引取り、予熱ロール6、
7、8で予熱し、次いで延伸ロール9、10、11、1
2との間で5倍に延伸し、電気開繊装置14で開繊し、
エアサッカー14で牽引してネットコンベヤ15上に堆
積した。
【0018】ただし、ノズルの孔数を511個に、吐出
速度を1.33g/分・孔に、紡糸引取りロール5の引
取り速度を200m/分に、予熱ロール6、7、8によ
る予熱温度を85℃に、延伸ロール9による延伸倍率を
5倍にそれぞれ統一し、ノズル孔径、ノズル剪断速度お
よびノズルドラフト(紡糸引取りロール5の周速度と吐
出線速度との比率)を下記の表1に示すように変更して
実施例1〜3および比較例1、2の合計5種類のウエブ
を試作した。
【0019】 表 1 ノズル径 ノズル剪断速度 ノズルドラフト 実施例1 0.40(mm) 2991(秒-1) 22.3(倍) 実施例2 0.45 2101 28.2 実施例3 0.50 1532 34.8 比較例1 0.35 4465 17.1 比較例2 0.60 886 50.1
【0020】上記の実施例1〜3および比較例1、2の
ウエブを製造する際、延伸時の糸切れ本数(ノズル1個
当たり)を比較した。また、得られたウエブから複合繊
維を取出し、その単糸繊度および単糸強力を測定し、更
に芯成分の複屈折率(Δn)を測定した。その結果を下
記の表2に示す。ただし、複屈折率は、不織布から単糸
を引き抜き、コンペンセータ法により、10×20倍の
偏光顕微鏡を用いて測定した。また、単糸強力は引張り
試験器(オリエンテック社製、「テンシロンUTM−II
I L」)を使用し、チャック間距離20mm、引張速度2
0mm/分で測定した。ただし、試料数は10である。
【0021】 表 2 糸切れ 単糸繊度 単糸強力 複屈折率 実施例1 1.5 (件/日) 12(d) 5.2(g/d) 0.162 実施例2 0.5 12 5.3 0.157 実施例3 0.15 12 5.7 0.153 比較例1 12 12 4.7 0.143 比較例2 14 12 3.9 0.137
【0022】上記の表1〜2から明らかなように、この
発明の実施例1、2、3は、いずれも糸切れが少なく、
単糸強力に優れている。特に実施例2および実施例3
は、ノズル剪断速度を2100〜1500秒-1に、ノズ
ルドラフトを28〜40の範囲に調整したので、糸切れ
が非常に少なく、糸質も良好であった。これに対し、比
較例1はノズル剪断速度が過大であるため、複屈折率が
0.143となり、また比較例2はノズル剪断速度が過
小であるため、複屈折率が0.137となり、いずれも
糸切れが多く、単糸強力も低くなった。
【0023】上記の実施例1〜3および比較例1、2の
ウエブをネットコンベヤ15上に堆積する際、エアサッ
カー14を前後左右に振って繊維方向がほぼ直交するよ
うに、かつ目付量が120g/m2 となるように重ね、
これを温度240℃の熱風で処理して鞘成分を軟化さ
せ、次いでローラでプレスして複合繊維の交差部を接着
し、不織布とし、その乾強度(DT)および5%伸長時
応力(ST)を測定した。その結果を下記の表3に示
す。ただし、上記の乾強度(DT)および5%伸長時応
力(ST)は、引張試験機(オリエンテック社製、「テ
ンシロンUCT−500」)を使用し、チャック間距離
10cm、チャック掴みしろ5cm、引張り速度200mm/
分で測定した。なお、表中の(T)は縦方向の測定値
を、(W)は横方向の測定値をそれぞれ示す。
【0024】 表 3 DT(T) DT(W) ST(T) ST(W) (kgf/5cm) (kgf/5cm) (kgf/5cm) (kgf/5cm) 実施例1 61 34 34 24 実施例2 63 37 35 25 実施例3 65 38 35 25 比較例1 50 30 28 20 比較例2 45 26 24 17
【0025】上記の表3から明らかなように、この発明
の実施例1〜3は、いずれも高モジュラス、高強力を有
していた。これに対して比較例1および2は、いずれも
低強力の不織布であった。
【0026】
【発明の効果】請求項1に記載した発明は、複屈折率
0.15以上のポリエチレンテレフタレートを芯成分と
し、融点200〜230℃の熱可塑性ポリマーを鞘成分
とし、芯鞘比率が5/5〜9/1、繊度8〜18デニー
ルの芯鞘構造の複合繊維からなる不織布であるから、繊
維強力および複合繊維相互間の接着強力のバランスが良
好であり、不織布としての強力とモジュラスが高く、し
かも耐熱性に優れ、不織布内に適度な空隙を有し、アス
ファルトの含浸が容易であり、特にアスファルトルーフ
ィングやタフテッドカーペットの基布として好適であ
り、製造時の糸切れも少なく、生産が容易である。
【0027】また、請求項2に記載した発明は、ポリエ
チレンテレフタレートを芯成分とし、融点200〜23
0℃のポリエステルを鞘成分とし、芯鞘比率が5/5〜
9/1の芯鞘構造を有する繊度8〜18デニールの複合
繊維を直接紡糸延伸法で製造し、得られた複合繊維をウ
エブ状に堆積し、このウエブを熱風で処理してウエブ中
の複合繊維の交差部を融着する不織布の製造法におい
て、上記複合繊維の紡糸をノズル剪断速度1000〜4
000秒-1の条件で行い、延伸を延伸倍率4.0〜6.
0倍で行う方法であるから、上記請求項1記載の不織布
を製造することができ、しかも複合繊維であるにもかか
わらず、延伸時の糸切れが少なく、かつ繊度斑が少なく
なり、生産性が向上し、しかも延伸後の複合繊維の最終
引取り速度を1500m/分以下に抑えることができ、
そのためウエブとして堆積する際、直交配列が容易とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の正面図である。
【符号の説明】
1:ノズル 2:紡糸筒 3:複合繊維からなるマルチフィラメント糸条 4:紡糸ガイド 5:紡糸引取りロール 6、7、8:予熱ロール 9、10、11、12:延伸ロール 13:電気開繊装置 14:エアサッカー 15:ネットコンベヤ 16:ウエブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D04H 3/00 D04H 3/00 F (56)参考文献 特開 昭62−191511(JP,A) 特開 平1−162820(JP,A) 特開 平3−167338(JP,A) 特開 平4−65515(JP,A) 特開 平4−136216(JP,A) 特開 平5−106114(JP,A) 特開 昭57−89617(JP,A) 特開 平2−154010(JP,A) 特開 平2−154026(JP,A) 特開 平2−193603(JP,A) 特開 平3−76894(JP,A) 特開 昭60−199961(JP,A) 特開 昭57−167418(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D04H 1/00 - 18/00 D01D 1/00 - 13/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芯成分と低融点の鞘成分とからなる芯鞘
    構造の複合繊維をウエブ状に堆積し、上記鞘成分を溶融
    して得られたスパンボンド不織布であり、上記の複合繊
    維が複屈折率0.15以上のポリエチレンテレフタレー
    トを芯成分とし、融点200〜230℃のポリエステル
    を鞘成分とし、芯鞘比率が5/5〜9/1、繊度8〜1
    8デニールであることを特徴とする不織布。
  2. 【請求項2】 ポリエチレンテレフタレートを芯成分と
    し、融点200〜230℃のポリエステルを鞘成分と
    し、芯鞘比率が5/5〜9/1の芯鞘構造を有する繊度
    8〜18デニールの複合繊維を直接紡糸延伸法で製造
    し、得られた複合繊維をウエブ状に堆積し、このウエブ
    を熱風で処理してウエブ中の複合繊維の交差部を融着す
    る不織布の製造法において、上記複合繊維の紡糸をノズ
    ル剪断速度1000〜4000秒-1の条件で行い、延伸
    を延伸倍率4.0〜6.0倍で行うことを特徴とする不
    織布の製造法。
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