JP3240133B2 - 酸化物超電導体およびそれを用いた超電導線材 - Google Patents

酸化物超電導体およびそれを用いた超電導線材

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Description

【発明の詳細な説明】 [発明の目的] (産業上の利用分野) 本発明は、Bi系の酸化物超電導体およびそれを用いた
超電導線材に関する。
(従来の技術) 最近、非常に高い転移温度を示す超電導体として、酸
化物系の超電導体が注目されている。これらの中でも、
Bi−(Sr,Ca)−Cu−O等からなる、いわゆるBi系酸化
物超電導体と称される物質は、極めて高い転移温度を示
し、また水分等の外部環境に対する安定性も比較的良好
であり、さらには同様の特性を示すTl系酸化物超電導体
のような毒性を持たないことから、その産業上の利用価
値は極めて高いものと考えられている。
ところで、Bi系酸化物超電導体においては、3種類の
超電導体が存在することが知られている。それらは、結
晶のc軸長をもって、24Å相(転移温度約8K)、30Å相
(転移温度約80K)、36Å相(転移温度約110K)とそれ
ぞれ呼ばれている。これら3種類のBi系酸化物超電導体
は、結晶の単位胞の中に銅と酸素イオンとからなる平面
を、それぞれ1枚、2枚、3枚持っていることが構造上
の特徴となっている。
一方、これらBi系酸化物超電導体とほとんど同一の結
晶構造を有するTl系酸化物超電導体・TlmBa2Can-1CunOy
(式中、mは1あるいは2を示し、nは単位格子あたり
のCu−O面の枚数を表す値であって、1、2あるいは3
を示す)においては、nが1の組成で約20Kの転移温度
が報告されている。また、n=2の組成では約90K、n
=3の組成では120Kを超える転移温度が報告されてい
る。
これらの例に見られるように、酸化物超電導体におい
ては、結晶単位格子あたりのCu−O面の枚数と転移温度
との間に密接な関係があり、Cu−O面の枚数が多い組成
ほど高い転移温度を示すものと言われてきた。
しかし、最近の研究報告によると、このCu−O面数と
転移温度との関係は必ずしも固定的ではなく、物質中の
キャリア濃度を変化させることにより、Cu−O面の数が
少ない組成においても、高い転移温度が得られることが
分ってきた。例えば、Tl系酸化物超電導体のTlBa2CuO6
では、単位格子中のCu−O面は1枚であるが、酸素濃度
を変化させることにより、その転移温度は0Kから90Kま
で変化させることが可能であることが分っている。
これと同様の現象はBi系酸化物超電導体においても見
られる。Bi2Sr2CuO6(24Å相)において、Srの一部をNd
等の希土類元素で置き換えることによってキャリア濃度
を制御すると、転移温度が8Kから20K程度まで向上する
ことが知られている。しかし、ここで得られる転移温度
の最高値は、同様の結晶構造を有する、前述したTlBa2C
uO6の値に比べてかなり低いものであり、転移温度をさ
らに向上させることが強く望まれている。また、Bi2(S
r,Ca)3Cu2O8で表される30Å相のBi系酸化物超電導体に
ついても、SrやCaの一部を希土類元素で置き換えること
によってキャリア濃度を制御すると、転移温度が向上す
ることが知られている。しかし、この系においても転移
温度の向上は僅かであり、転移温度をさらに向上させる
ことが強く望まれている。
また、一般に酸化物超電導体においては、結晶構造が
単純なもののほうがより合成が簡単である。特に、スパ
ッタ法等の手法で薄膜を得ようとするときには、単純な
結晶構造、特にBi系酸化物超電導体では、そのc軸方向
の構造が単純であるものの方が、容易に品質の優れた薄
膜を得ることができる。この点においては、Bi系酸化物
超電導体のうち、c軸方向の格子定数が最も短いBi2Sr2
CuO6が再現性に優れ、次いでBi2(Sr,Ca)3Cu2O8の順と
なる。このような点を考慮した場合、Bi2Sr2CuO6やBi2
(Sr,Ca)3Cu2O8の転移温度を向上させることによっ
て、高品質で高転移温度のBi系酸化物超電導体薄膜を再
現性よく得られることとなる。この点からもBi系酸化物
超電導体の転移温度のさらなる向上が強く望まれてい
る。
一方、上述したようなBi系酸化物超電導体を用いて長
尺な導体を得ようとした場合、例えば金属被覆管内に超
電導体粉末を充填し、所定の径や形状まで線引きした
後、酸素含有雰囲気中で熱処理を施し、所望の超電導特
性を付与して目的とする線材やテープ材を得ることが試
みられている。ここで、金属被覆管の材質には、導電性
に優れることはもとより、Bi系酸化物超電導体は合成や
熱処理の際に高酸素分圧を必要とするため、酸素の透過
性に優れることが求められる。また、高温で熱処理した
際に、Bi系酸化物超電導体に対して安定であることが求
められる。これらの点から、金属被覆管の材質として
は、銀等の貴金属が多用されている。
しかし、貴金属材料は高価であると共に、超電導磁石
等を構成する際に考慮しなければならない機械的性質が
十分に得られないという問題がある。
これに対して、安価で機械的強度や導電性に優れた銅
や銅合金等は、酸素含有雰囲気中での熱処理によって容
易に酸化してしまうという問題がある。また、酸化物超
電導体への酸素供給も不十分となって、所望とする超電
導特性を得ることができないという問題もある。
そこで、銅や銅合金等の被覆管材料の劣化を抑制する
ために、十分に低い酸素分圧中で熱処理を行った場合に
おいても、優れた超電導特性を示すBi系酸化物超電導体
が強く求められている。このような要望は、超電導線材
を作製するときに限らず、酸化物超電導体薄膜と他の金
属薄膜とを積層して、超電導素子を作製するような場合
においても同様に求められるものである。
(発明が解決しようとする課題) 上述したように、Bi系酸化物超電導体においては、そ
のキャリア濃度を制御することによって、転移温度の向
上が図れるものの、その値は充分ではなく、同様の結晶
構造を有するTl系酸化物超電導体と同等の転移温度の向
上を達成することが強く望まれている。
また、従来の酸化物超電導体を用いた超電導線材にお
いては、被覆管材料として安価で機械的強度や導電性に
優れた銅や銅合金等を、超電導特性を得るための熱処理
との兼ね合いから使用することができないため、十分に
低い酸素分圧中で熱処理を行った場合においても、優れ
た超電導特性を示すBi系酸化物超電導体が強く求められ
ている。
本発明は、このような課題に対処するためになされた
もので、第1の目的はキャリア濃度制御による転移温度
の向上率を高め、転移温度をさらに向上させたBi系酸化
物超電導体を提供することにあり、また第2の目的は酸
素分圧が十分に低い雰囲気中における熱処理によって
も、優れた超電導特性を示すBi系酸化物超電導体を提供
することにあり、さらには安価で機械的強度や導電性に
優れた銅や銅合金等を被覆管材料として使用することを
可能とするために、被覆管材料が劣化しないような低い
酸素分圧中で熱処理を行った場合においても、優れた超
電導特性を示す超電導線材を提供することにある。
[発明の構成] (課題を解決するための手段) 本発明の酸化物超電導体は、Biと、Pbと、SrおよびCa
の少なくとも1種の元素と、RE元素(REはNd、Pr、Sm、
Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Yからなる群か
ら選ばれた少なくとも1種の希土類元素を示す)と、Cu
と、Oとを構成元素とし、結晶単位格子中に少なくとも
1層のCu−O面を含む結晶構造を有することを特徴とし
ている。
すなわち本発明のBi系酸化物超電導体は、従来から知
られているBi系酸化物超電導体の24Å相、30Å相、36Å
相それぞれのSrやCaの一部を上記RE元素で置き換えて、
キャリア濃度を制御すると共に、Biの一部をPbで置き換
えて、Bi系酸化物超電導体の転移温度と密接な関係を持
つ変調構造を緩和することによって、転移温度等の超電
導特性の大幅な向上を図ったものである。
本発明のBi系酸化物超電導体は、具体的には以下の2
種類が挙げられる。
Bi、Pb、Sr、REおよびCuを、原子比で2−x:x:a−
s:s:b(a、b、sおよびxは、それぞれ1.8≦a≦2.
2、0.8≦b≦1.2、0.01≦s≦0.3、0.2≦x≦1を満足
する数である。ただし、x>sである。以下同じ)で含
み、結晶単位格子中に1層のCu−O面を含む結晶構造を
有する酸化物超電導体であって、基本的には、 化学式:Bi2-xPbxSr2-sREsCuO6 ……(I) で実質的に表される酸化物超電導体。
Bi、Pb、(Sr,Ca)、REおよびCuを、原子比で2−
x:x:e−n:n:f(e、f、nおよびxは、それぞれ3.7≦
e≦4.3、2.8≦f≦3.3、0.01≦n≦0.4、0.2≦x≦1
を満足する数である。ただし、x>nである。以下同
じ)で実質的に含み、結晶単位格子中に3層のCu−O面
を含む結晶構造を有する酸化物超電導体であって、基本
的には、 化学式:Bi2-xPbx(Sr,Ca)4-nREnCu3O10 …(II) で実質的に表される酸化物超電導体。
なお、上記した(I)式〜(II)式における酸素数
は、必ずしも化学量論比としなければならないものでは
なく、多少の過不足が生じていても十分にその効果が得
られる。この酸素数は、化学量論比に対して±0.2の範
囲とすることが好ましい。
ここで、上記PbによるBiの置換量を1化学式当り0.2
〜1の範囲とした理由は、以下の通りである。Pbによる
置換量xが0.2未満では、Pb置換による変調構造の緩和
効果が充分に得られない。また、xが1を超えると単一
相からなるBi系酸化物超電導体が得られ難くなる。Pbに
よるBiのより好ましい置換量は、xの値として0.2〜0.6
の範囲である。
また、上記RE元素によるSrもしくはCaの置換量を、1
化学式当りでは0.01〜0.3、では0.01〜0.4の範囲と
した理由は、以下の通りである。RE元素による置換量が
それぞれの下限値未満では、キャリア濃度の調整効果が
充分に得られない。また、それぞれの上限値を超える
と、キャリア濃度が過度に減少して転移温度が逆に低下
する。上記RE元素の置換量の好ましい下限値は0.05であ
る。RE元素によるSrもしくはCaのより好ましい置換量
は、ではsの値として0.1〜0.15、ではnの値とし
て0.1〜0.3の範囲である。
上記のBi系酸化物超電導体のRE元素による(Sr,C
a)の置換のより好ましい形態は、以下の通りである。
すなわち、Srを置換する際には、La、Nd、Dy、Euおよ
びSmの少なくとも1種を選択する。Caを置換する際に
は、Nd、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu
およびYの少なくとも1種を選択する。これらSrおよび
Caの置換は、単独で行ってもよいし、双方とも置換して
もよい。
以上のことを考慮すると、上記のBi系酸化物超電導
体のより好ましい組成は、下記の化学式(III)とな
る。
化学式:Bi2-xPbxSr2-qCa2-rRE′qRE″rCu3O10 ……(III) (式中、qおよびrはそれぞれ0≦q≦0.3、0≦r≦
0.3、0.01≦q+r≦0.4を満足する数である。ただし、
x>q+rである。以下同じ) 本発明のBi系酸化物超電導体は、例えば以下に示す方
法によって作製される。
(a) 焼結体として得る場合には、まず、Bi、Pb、
(Sr,Ca)、RE、Cuの単体または炭酸塩や酸化物等の化
合物を所定のモル比で混合する。これら各構成元素の出
発原料は、基本的には上記(I)式または(II)式のい
ずれかの原子比を満足するように混合して原料組成物を
調製する。ただし、出発原料の原子比は、上述した範囲
内であれば本発明の効果が得られる。また、製造条件等
との関係でさらに10%程度ずれていても差支えない。
次いで、上記原料組成物を必要に応じて酸素雰囲気中
で仮焼した後、大気中、酸素を含むもしくは含まない不
活性雰囲気中等で、700℃〜900℃の温度で熱処理して焼
結させる。
(b) 薄膜として得る場合には、上記(a)による焼
結体、あるいは上記した出発原料等を用いて、蒸着法、
スパッタ法、クラスターイオンビーム法、分子線エピタ
キシ法、CVD法等を適用してBi系酸化物超電導体薄膜を
形成する。
なお、上述した製造方法における各種条件は、使用す
る希土類元素やその置換量、Pbによる置換量等によって
適宜最適条件を設定するものとする。
また、本発明のBi系酸化物超電導体を用いた超電導線
材は、例えば以下に示す方法によって作製される。
まず、上記(a)と同様にしてBi系酸化物超電導体を
合成し、これを粉砕することによってBi系酸化物超電導
体の粉末を作製する。用いる酸化物超電導体としては、
安定性等の点から上記のBi系酸化物超電導体が好まし
い。
次に、上記Bi系酸化物超電導体粉末を金属被覆管に充
填封入する。この金属被覆管は、機械的強度や導電性
(安定化材としての機能)、さらにはコスト等を考慮
し、目的に応じて適宜選択されるものである。上記観点
からは、一般に銅もしくは銅−ニッケル合金のような銅
合金が好ましく、またステンレス管等を用いることもで
きる。
また、上記したような金属被覆管を用いる場合には、
その内周面すなわち酸化物超電導体との接触面に銀や金
等の貴金属層を形成することが好ましい。これは、熱処
理時に酸化物超電導体と被覆管材料とが反応することを
防止するものであり、これによってより優れた超電導特
性が得られる。
上記貴金属層を有する金属被覆管は、例えば上記被覆
管内に肉厚の薄い銀管等を挿入し、線引きする等によっ
て貴金属層を形成する機械加工法や、メッキ法、液体被
覆法のような薄膜形成法等によって作製される。
この後、上記Bi系酸化物超電導体粉末が充填された金
属被覆管に、減面加工や伸線加工等を施して所望とする
線材形状とし、次いで超電導特性向上のための熱処理を
施し、目的とする超電導線材を得る。
上記熱処理は、窒素雰囲気やアルゴン雰囲気のような
不活性雰囲気や真空中で行うことが好ましく、これによ
り金属被覆管の劣化を防止することができる。また、本
発明のBi系酸化物超電導体を用いた超電導線材は、上述
したような雰囲気中での熱処理によっても、優れた超電
導特性を発揮することができる。例えば銅や銅合金等か
らなる被覆管を用いた場合には、熱処理温度によっても
異なるが、酸素濃度が1000ppm以下の雰囲気とすること
が好ましい。また、熱処理温度は、おおよそ750℃〜900
℃程度とすることが好ましい。
また、上記熱処理は、例えばコイルを作製するような
場合には、所定のコイル形状に巻回した後に行っても十
分にその効果を発揮する。
(作 用) Bi系酸化物超電導体の結晶構造には、特有の変調構造
が存在する。また、その変調構造はBi系酸化物超電導体
の転移温度と密接な関係を持つ。
そこで、本発明のBi系酸化物超電導体では、SrやCaの
一部をRE元素で置き換えることによって、キャリア濃度
を制御すると共に、Biの一部をPbで置き換えることによ
って、その変調構造を緩和している。これによって、上
記変調構造に由来すると考えられる転移温度の向上率の
低さが解消され、転移温度の大幅な向上が図れる。ま
た、アルカリ土類/希土類の置換は、転移温度の向上を
もたらすと共に、超電導体中に微小な常電導相の分散を
もたらす。これは、このような置換を行ったときに、反
磁化率の体積分率が若干減少することで確認されてい
る。この分散された常電導相は、高磁場下で進入した量
子磁束をピン止めし、ピンニングサイトとして有効であ
ることから、臨界電流密度の向上も図れる。
また、本発明によるBi系酸化物超電導体は、低酸素分
圧中あるいは純アルゴン等の不活性雰囲気中でも安定に
合成することができる。すなわち、合成や薄膜形成、あ
るいはデバイス作製に際して、活性な酸素イオン等を供
給する必要がない。これは、Pbおよび希土類元素による
置換によって、Bi系酸化物超電導体中で不安定な(親和
力の小さい)BiO層の過剰酸素がなくなり、残ったサイ
トの酸素は強い親和力を持っているためと考えられる。
したがって、従来、酸素雰囲気中での熱処理による酸化
や酸化物超電導体への酸素供給不足等によって、実用的
ではなかった銅や銅合金のような金属材料を線材の被覆
管材料等として用いることが可能となる。そして、これ
らを用いた場合でも、不活性雰囲気中や真空中で熱処理
を施すことにより良好な超電導特性が得られる。
さらに、同様な理由で合成後のBi系酸化物超電導体に
おいて、その含有する酸素が安定であることから、例え
ば電極としてAg等の蒸着膜を形成した際にも、界面にAg
O等の絶縁層が形成されることがない。これは、超電導
体の表面付近の組成が界面まで均一に保たれていること
を意味し、電極の界面抵抗の除去にはもちろん、近接効
果等を用いた素子形成に有利となる。
(実施例) 以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1、比較例1 前述した(I)式で表されるBi系酸化物超電導体の薄
膜を、以下に示す手順によりMBE法によって作製した。
まず、蒸着源としてBi、Pb、Sr、RE(Nd、La、もしく
はSm)およびCuをそれぞれ用意し、それらをるつぼに収
容してMBE装置の真空容器内に配置した。
一方、被着基板としてはMgO基板を用い、これを基板
ホルダにセットし、基板加熱用ヒータによって約400℃
〜500℃に加熱した。
次に、真空容器内を高真空状態まで排気した後、真空
容器内が1×10-3Torr程度の酸素雰囲気となるように調
節した。
そして、その状態で各蒸着源をその蒸発温度に見合っ
た温度まで加熱して成膜を開始し、第1表に示す組成の
Bi系酸化物超電導体薄膜をそれぞれ1000nmの膜厚で成膜
した。なお、それぞれのMBE条件は、各組成の薄膜が得
られるよう調整した。
このようにして得た各Bi系酸化物超電導体薄膜の超電
導特性を、DC四端子法ならびにSQUIDによる磁化測定に
よって評価した。その結果を第1表に併せて示す。ま
た、上記各Bi系酸化物超電導体薄膜の4.2Kにおけるマイ
スナー効果を測定したところ、各薄膜とも超電導性が確
認された。
また、比較例1としてPb置換を行わない組成、Pb置換
量が少ない組成についても同様に成膜し、それらの測定
結果も併せて第1表に示す。なお、Pb置換器がxの値と
して1より大きいときには、単一相からなる薄膜は得ら
れなかった。
実施例2、比較例2 前述した(II)式で表されるBi系酸化物超電導体薄膜
を、実施例1と同様な手順によりMBE法によって作製し
た。薄膜の組成は、第2表に示す通りである。
これらBi系酸化物超電導体薄膜についても、実施例1
と同様にして超電導特性を評価した。その結果を併せて
第2表に示す。また、各Bi系酸化物超電導体薄膜の4.2K
におけるマイスナー効果を測定したところ、各薄膜とも
超電導性が確認された。
実施例3、比較例3 前述した(III)式で表されるBi系酸化物超電導体薄
膜を、実施例1と同様な手順によりMBE法によって作製
した。薄膜の組成は、第3表に示す通りである。
これらBi系酸化物超電導体薄膜についても、実施例1
と同様にして超電導特性を評価した。その結果を併せて
第3表に示す。また、各Bi系酸化物超電導体薄膜の4.2K
におけるマイスナー効果を測定したところ、各薄膜とも
超電導性が確認された。
実施例4 まず、Bi1.6Pb0.4Sr1.9Nd0.1Ca0.90.1Cu2O8の組成
を有する超電導体を、通常の固相反応法により合成し、
上記組成のBi系酸化物超電導体粉末を得た。次に、この
粉末を加圧成形した後、N2中においてホットプレスして
焼結体を作製した。ホットプレス条件は、100kg/cm2、7
80℃×20時間とした。
上記焼結体から面積1mm2の試料を切り出し、磁場中で
の臨界電流密度を測定したところ、77K、5Tの磁場中で
3×104A/cm2と良好な値が得られた。
また、上記Bi系酸化物超電導体焼結体の4.2Kにおける
マイスナー効果を測定したところ、超電導性が確認され
た。
比較例4 Bi2Sr2Ca1Cu2O8、Bi1.6Pb0.4Sr2Ca1Cu2O8、Bi2Sr2Ca
0.80.2Cu2O8なる組成の超電導体試料を、それぞれ実
施例4と同様な手法により作製し、同じく磁場中での臨
界電流密度を測定したところ、それぞれ1×102A/cm2
8×102A/cm2、6×102A/cm2と低い値しか得られなかっ
た。
実施例5、比較例5 まず、Bi1.6Pb0.4Sr1.8Nd0.2Ca0.90.1Cu2O8の組成
を有する超電導体薄膜を、実施例2と同様な手法により
作製し、その表面に直径1mmの面積にわたってAg膜を真
空蒸着し、500℃×2時間の熱処理を施した。この後、2
0Kにて界面抵抗を測定したところ、2×10-8Ωと良好な
値が得られた。
一方、本発明との比較として、Bi2Sr2Ca1Cu2O8、Bi
1.6Pb0.4Sr2Ca1Cu2O8なる組成の超電導体薄膜をそれぞ
れ実施例5と同様な手法により作製し、同様にAg蒸着膜
の作製および熱処理を行い、20Kにて界面抵抗を測定し
たところ、それぞれ3×10-2Ω、5×10-5Ωと低い値し
か得られなかった 上記実施例においては、界面抵抗の低い良好な接合が
得られていることから、超電導体薄膜の表面状態が安定
で、Agとの反応によるAgO等の界面生成物がないことが
分る。
実施例6 まず、出発原料としてBi2O3、PbO、SrCO3、La2O3、Ca
CO3、Y2O3、CuOの各粉末を用意し、これらを陽イオンの
原子比が、Bi:Pb:Sr:La:Ca:Y:Cu=1.5:0.5:1.9:0.1:0.
9:0.1:2を満足するようにそれぞれ所定量評量し、これ
らを充分に混合した。次いで、上記混合粉末を空気中に
て、780℃×24時間の条件で仮焼し、この仮焼物をボー
ルミルで充分に粉砕して、Bi1.5Pb0.5Sr1.9La0.1Ca0.9
0.1Cu2O8で表される組成を有するBi系酸化物超電導体
粉末を得た。
一方、内側に薄い銀管を挿入した銅管を用意し、この
複合被覆管内に上記組成のBi系酸化物超電導体粉末を充
填した後、線引き加工および圧延加工を施して、幅6m
m、厚さ0.4mmのテープ状線材を作製した。
この後、上記テープ状線材に対して、窒素中で800℃
×100時間の熱処理を施して、目的とするテープ状超電
導線材を得た。
このようにして得た超電導線材の超電導特性を通常の
方法で測定したところ、94Kの転移温度を示し、また臨
界電流密度は3×105A/cm2で、それぞれ良好な値を示し
た。また、上記テープ状超電導線材の4.2Kにおけるマイ
スナー効果を測定したところ、超電導性が確認された。
比較例6 Bi2Sr2Ca1Cu2O8で組成が表されるBi系酸化物超電導体
粉末を実施例6と同様に固相反応法で作製し、この酸化
物超電導体粉末を用いて実施例6と同様にテープ状線材
を形成すると共に、同一条件で熱処理を施した。
このようにして得た線材の超電導特性を測定しようと
したところ、液体ヘリウム温度まで冷却しても超電導特
性を示さなかった。
比較例7 上記比較例6と同一条件で作製したテープ状線材に対
し、酸素中において熱処理を施したところ、シース材の
銅が酸化されて特性の測定が可能な試料を得るには至ら
なかった。
[発明の効果] 以上説明したように本発明によれば、Bi系酸化物超電
導体のキャリア濃度を制御すると共に、変調構造を緩和
しているので、転移温度を大幅に向上させたBi系の酸化
物超電導体を提供することが可能となる。また、合成が
より容易な構造を持つBi系酸化物超電導体の転移温度を
高めることが可能であり、さらに低酸素分圧中で安定に
合成ができ、また合成した超電導体の表面状態が安定で
あること等から、超電導素子や超電導線材等の材料とし
て極めて有用な酸化物超電導体を提供することが可能と
なる。さらに、本発明のBi系酸化物超電導体は、分散し
た常電導相がピンニングサイトとして働くため、臨界電
流密度の向上を図ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特表 平4−503051(JP,A) GROEN W.A.et a l.,”Hole concentra tion and Tc in Bi2 Sr2CaCu208+d,”Physi ca C,Vol.165,Jan.1990, pp.55−61 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 1/00 CA(STN) EPAT(QUESTEL) WPI(DIALOG)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Biと、Pbと、Srと、RE元素(REはNd、Pr、
    Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Yからなる
    群から選ばれた少なくとも1種の希土類元素を示す)
    と、Cuと、Oとを構成元素とすると共に、前記Bi、Pb、
    Sr、REおよびCuを、原子比で2−x:x:a−s:s:b(a、
    b、sおよびxはそれぞれ1.8≦a≦2.2、0.8≦b≦1.
    2、0.01≦s≦0.3、0.2≦x≦1を満足する数である。
    ただし、x>sである)で実質的に含み、結晶単位格子
    中に1層のCu−O面を含む結晶構造を有することを特徴
    とする酸化物超電導体。
  2. 【請求項2】請求項1記載の酸化物超電導体において、 化学式:Bi2-xPbxSr2-sREsCuO6 で実質的に表されることを特徴とする酸化物超電導体。
  3. 【請求項3】Biと、Pbと、SrおよびCaの少なくとも1種
    の元素と、RE元素(REはNd、Pr、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、
    Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Yからなる群から選ばれた少なく
    とも1種の希土類元素を示す)と、Cuと、Oとを構成元
    素とすると共に、前記Bi、Pb、(Sr,Ca)、REおよびCu
    を、原子比で2−x:x:e−n:n:f(e、f、hおよびxは
    それぞれ3.7≦e≦4.3、2.8≦f≦3.3、0.01≦n≦0.
    4、0.2≦x≦1を満足する数である。ただし、x>nで
    ある)で実質的に含み、結晶単位格子中に3層のCu−O
    面を含む結晶構造を有することを特徴とする酸化物超電
    導体。
  4. 【請求項4】請求項3記載の酸化物超電導体において、 化学式:Bi2-xPbx(Sr,Ca)4-nREnCu3O10 で実質的に表されることを特徴とする酸化物超電導体。
  5. 【請求項5】金属被覆管内に酸化物超電導体を充填して
    なる超電導線材において、 前記酸化物超電導体は、請求項1ないし請求項4のいず
    れか1項記載の酸化物超電導体であることを特徴とする
    超電導線材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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GROEN W.A.et al.,"Hole concentration and Tc in Bi2Sr2CaCu208+d,"Physica C,Vol.165,Jan.1990,pp.55−61

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